特許第6222869号(P6222869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6222869無溶剤液状アクリル樹脂組成物及び無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222869
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】無溶剤液状アクリル樹脂組成物及び無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20171023BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171023BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20171023BHJP
   C09D 183/10 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20171023BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20171023BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20171023BHJP
   E01B 37/00 20060101ALI20171023BHJP
   E01B 19/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C09D7/12
   C09D133/04
   C09D183/10
   C08L33/14
   C08L101/10
   C08F230/08
   C08F220/12
   C08F2/38
   E01B1/00
   E01B37/00 B
   E01B19/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-150396(P2016-150396)
(22)【出願日】2016年7月29日
【審査請求日】2016年9月15日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105877
【氏名又は名称】サイデン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】金台 修一
(72)【発明者】
【氏名】小塚 淳平
(72)【発明者】
【氏名】村上 信幸
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−501263(JP,A)
【文献】 特開平07−011602(JP,A)
【文献】 特開2003−192888(JP,A)
【文献】 特開平06−167002(JP,A)
【文献】 特開平08−188604(JP,A)
【文献】 特開昭60−060119(JP,A)
【文献】 特開2003−268020(JP,A)
【文献】 特表平10−510858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
C08L 1/00−101/14
C09D 1/00−201/10
E01B 1/00− 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び揮発性有機溶剤を溶媒として含まない、砂利或いは骨材の固定用の無溶剤の液状アクリル樹脂組成物であって、
反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを、前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、前記A成分が質量基準で、50部以上99部以下の範囲内であり、且つ、前記B成分が質量基準で、1部以上50部以下の範囲内で、
連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下である液状化合物(C成分)中で共重合してなる反応物を含み、
前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、前記C成分の量が質量基準で10〜900部であり、且つ、下記式(1)に示したR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満であることを特徴とする流動性の良好な無溶剤液状アクリル樹脂組成物(但し、前記反応物にポリシロキサンを混合させてなる組成物である場合を除く)。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
但し、粘度比=(B型粘度計最低回転2rpmの粘度/B型粘度計最高回転20rpmの粘度)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や有機溶剤を溶媒として有さないのも拘らず、液状で硬化性が良好な、建築関連用途や土木関連用途などの幅広い用途に対応した塗料やバインダーに適用できる、流動性の良好な無溶剤液状アクリル樹脂組成物及び無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法に関する。より詳しくは、室温で空気中の水分と化学反応して硬化する常温湿気硬化性を示し、より機能性に優れる1液型又は2液型の常温湿気硬化型にできる、(加熱)乾燥の必要がない、溶剤による臭気の問題がなく、温水中に長時間放置しても形成した皮膜が白化することがない、耐候性等に優れ、流動性及び接着性も良好な無溶剤液状アクリル樹脂組成物を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全や安全性などの観点から、VOC(揮発性有機化合物)を低減する動きが高まっており、塗料やバインダーにおいても、従来の溶剤系から水系のものへの移行がなされてきている。しかしながら、従来の水性エマルションを用いた水性塗料や水性バインダーは、造膜性や塗膜特性(耐水性・密着性・耐ブロッキング性・耐候性)等が溶剤系に比し不十分であり、また、時間をかけて乾燥させなければ十分な塗膜性能が得られないため、屋外での使用には適していない。そのため、建築や土木関連用途など、屋外で使用される場合には、耐候性等を考慮して、溶剤系の塗料やバインダーが使用されることが多い。
【0003】
そして、屋外用途の塗料やバインダーでは、常温下、短時間での塗膜性能(造膜、架橋工程)が要求される。屋外用途としては、例えば、近年、公園や道路や駐車場等で、透水性を確保することの重要性が再認識されており、施工の際に、化粧砂利や天然石や人工骨材を使用することが多くなってきており、また、従来より、鉄道の路線や軌道で砂利が使用されており、屋外用に調製された樹脂バインダーや接着剤等を用い、砂利等を固着させている(特許文献1、2参照)。以下、鉄道の路線や軌道での効果を代表例にとって、その利用状況や課題について説明する。
【0004】
一般に、鉄道の路線や軌道には、コンクリート路盤上に軌道スラブと呼ばれるコンクリート製の板を設置し、その上にレールを敷くスラブ軌道の道床(以下、スラブ道床)と、路盤上に砕石や砂利といった、いわゆるバラスト(砂利或いは骨材)を敷いた上部に枕木を並べ、さらに、その上にレールを敷設する構造の「バラスト軌道の道床」(以下、バラスト道床)とがある。バラスト道床は、枕木に伝わった列車の荷重や振動を効率よく分散させ、路盤に伝えることができるため、スラブ道床に比べて、低振動・低騒音であり、バラスト道床を走る電車は乗り心地がよく、また、雨等の排水性(水はけ)が良好であり、建設費が安いといった利点もあり、多くの路線で活用されている。その一方で、バラスト道床は、列車の通過頻度や荷重により、バラスト自体が振動を受け、バラスト同士が擦れて摩耗することで、バラスト道床の密度が低下してしまい、弛緩し、流動化が起こり、枕木等の沈下に繋がるおそれがある。また、粒径の小さい砕石や砂利は、車両の通行により飛散するおそれがあり、危険であるといった問題がある。
【0005】
上記した流動化や沈下現象や、バラストの飛散を防ぐ方法として、定期的に、バラストに樹脂バインダーや接着剤等を散布し固着させており、この際に用いるバラスト固定用の材料について、種々の提案がされている。例えば、特許文献3には、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーからなる主剤と硬化剤とからなる二液型のウレタン系接着剤をバラスト固定剤として注入し、硬化させることでバラスト道床を補強する方法についての提案がされている。また、特許文献4では、エポキシオリゴマーと、1分子中に複数個の1級または(及び)2級アミンを含有するアミン系化合物とからなるエポキシ樹脂組成物を、バラスト上部より散布、固化せしめてバラストを固着する、道床バラストの安定化方法についての提案がされている。
【0006】
実際に行われているバラストの固定方法としては、例えば、バラスト道床自体に適当な大きさの網目を有する飛散防止用のネットを張る方法や、ゴムラテックス、合成樹脂エマルション、モルタル等を散布し、バラストを固着する方法や、1液性湿気硬化型ウレタン樹脂を散布し、バラストを固着する方法が挙げられる。これらの中でも、湿気硬化型のウレタン樹脂は、硬化が速く作業性に優れており、終電後の深夜の道床補修時に用いた場合、常温数時間で硬化させることが可能であるため、数多くの現場で採用されている。
【0007】
湿気硬化型の樹脂組成物に関していえば、例えば、特許文献5に、アルコキシシリル基を有するバインダーと架橋触媒とを少なくとも含有している、非プロトン性溶剤をベースとする湿気硬化性被覆剤についての提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−266886号公報
【特許文献2】特開2008−31781号公報
【特許文献3】特開2002−38401号公報
【特許文献4】特開2005−307585号公報
【特許文献5】特表2012−522850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、下記に述べるように、上記した従来技術には種々の課題があり、砕石や砂利(バラスト)を固定するための、より最適な樹脂組成物の開発が求められている。まず、特許文献3及び4のウレタン樹脂は、造膜性、耐水性は良好であるが、揮発性の有機溶剤(トルエンやキシレン等)を含有しているため、作業者や周辺住民への身体的影響、乾燥時の有機溶剤の揮散に伴う大気汚染といった環境への影響、揮発した有機溶剤への引火などが懸念される。また、樹脂の耐候性には限界があるため、樹脂でバラストを固めたとしても、数年間隔で交換する必要がある。ここで、従来用いられているウレタン樹脂は、他の樹脂に比べて耐候性が低いため、より短期間でメンテナンスを行う必要があり、多大な手間と費用がかかるという問題がある。また、特許文献5の技術は、アルコキシシリル基を有するバインダーを含んでおり、これはいわゆるシリコーン樹脂であり、シリコーン樹脂は他の樹脂に比べて高価であるため、特に、在来線のバラストに対して広く使用することは価格的に難しい、という実用上の解決すべき問題がある。
【0010】
上記のことから、揮発性有機溶剤を使用しない環境への影響が少ないエマルション系の接着剤であって、造膜性、耐候性等に優れたものの開発が望まれている。しかし、エマルション系の接着剤は乳化重合により得られるものが多く、乾燥性が劣るため、例え、造膜性、耐候性等に優れた接着剤が得られたとしてもバラスト固定用としては不向きであり、実用に足るものは提案されていない。以上のことから、安価で経済的であるにもかかわらず、接着性に優れ、必要に応じて透明性にも優れた塗膜を形成でき、例えば、定期的にメンテナンスが必要になるバラストの固定に使用したような場合にも、優れた耐候性を示し、且つ、揮発性溶剤を使用しない、作業性や環境に配慮した無溶剤系の樹脂組成物の開発が求められている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上記事由に鑑み、建築関連用途や土木関連用途などの幅広い用途に対応した屋外用の塗料やバインダーに有用であり、例えば、バラスト道床のバラストを固定するための樹脂組成物として適用した場合に、塗工や塗布が可能な流動性を有することは勿論、耐候性及び接着性に優れ、必要に応じて透明性にも優れた皮膜が形成でき、揮発性の有機溶剤を含有しないため、作業性に優れ、環境への影響が少なく、しかも従来品に比べてメンテナンスの頻度を低減できる経済的な、無溶剤で液状の、適度な流動性を有する樹脂組成物を提供することにある。本発明の目的は、例えば、バラスト(砂利或いは骨材)の固定用として広く使用されているシリコーン樹脂やウレタン樹脂に代替し得る、水及び揮発性有機溶剤を溶媒として含まない、無溶剤で液状の、適度な流動性を有する新規なアクリル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、水及び揮発性有機溶剤を溶媒として含まない、無溶剤の液状アクリル樹脂組成物であって、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを、連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下である液状化合物(C成分)中で共重合してなる反応物を含み、前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、前記C成分の量が質量基準で10〜900部であり、且つ、下記式(1)に示したR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満であることを特徴とする流動性の良好な無溶剤液状アクリル樹脂組成物を提供する。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
但し、粘度比=(B型粘度計最低回転の粘度/B型粘度計最高回転の粘度)
【0013】
上記した本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。前記C成分が、少なくとも加水分解性アルコキシシリル基含有の液状化合物を含むこと;前記A成分が、前記(a1)と共重合可能な、反応性官能基を有していてもよい単量体(a2)(但し、加水分解性アルコキシシリル基を有するものを除く)をさらに含むこと;前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、前記A成分が質量基準で、50部以上99部以下の範囲内であり、且つ、前記B成分が質量基準で、1部以上50部以下の範囲内であること;さらに、触媒(硬化剤)を含み、1液型又は2液型の湿気硬化型であること;砂利或いは骨材の固定用であること;が挙げられる。
【0014】
本発明は、別の実施形態として、単量体成分として、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを少なくとも用い、前記単量体成分を、連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下である液状化合物(C成分)中で共重合させる反応工程を有し、該反応工程における前記C成分の量が、前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、質量基準で10〜900部であり、前記反応工程で共重合して得られた反応物の下記式(1)に示したR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満であることを特徴とする流動性の良好な無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法を提供する。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
但し、粘度比=(B型粘度計最低回転の粘度/B型粘度計最高回転の粘度)
【0015】
上記した本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。前記C成分として、加水分解性アルコキシシリル基含有の液状化合物を用いること;前記反応工程を2段階で行い、1段階目で、前記A成分の一部と前記B成分の一部とを単量体成分とし、前記連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記液状化合物(C成分)中で共重合反応させて液状のアクリル樹脂を得、2段階目で、前記1段階目で得られた液状のアクリル樹脂を含む反応系に、単量体成分として、前記A成分の残りと前記B成分の残りを加えて(但し、D成分は加えない)共重合反応を行うことが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水や有機溶剤を含有せず、高固形でありながら良好な流動性を示す液状樹脂で、建築関連用途や土木関連用途などの塗料やバインダーに適用でき、例えば、従来、バラスト(砂利或いは骨材)の固定用として広く使用されているウレタン樹脂やシリコーン樹脂に代替し得る、皮膜形成に加熱乾燥が不要な常温硬化性を有し、溶剤による臭気の問題がなく、温水中に長時間放置しても形成した皮膜が白化することがない、耐水白化性に優れ、耐候性に優れ、必要に応じて透明性にも優れた皮膜が形成でき、適度な流動性を有し、接着性も良好な、無溶剤液状アクリル樹脂組成物が提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、触媒(硬化促進剤)を含有させることで、上記した種々の機能性により優れる1液型又は2液型の常温湿気硬化型の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の提供も可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明の特許請求の範囲及び明細書における「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」及び「メタクリル」の双方を意味し、また、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を意味する。
【0018】
本発明者らは、安価に提供可能で、ウレタン樹脂に比べて優れた耐候性を有するアクリル樹脂に着目し、例えば、バラスト(砂利或いは骨材)を固定するための樹脂組成物として有用な機能を発現し得る製品を開発すべく、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明者らは、連鎖移動剤(D成分)の存在下、特定の液状化合物(C成分)中で、少なくとも、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(A成分)と、前記A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体(B成分)とを共重合することで、揮発性の有機溶剤や水を使用していない液状のアクリル樹脂組成物が得られ、該組成物は、下記の優れた特性を有することを見出した。具体的には、常温硬化性を有し、溶剤による臭気の問題がなく、温水中に長時間放置しても形成した皮膜が白化することがない耐水白化性に優れる、耐候性に優れ、流動性及び接着性も良好である、建築関連用途や土木関連用途の塗料、バインダーに適用可能な、所望性能を有するものになることを見出した。すなわち、本発明では、幅広い屋外用途に対応可能な、機能性に優れる塗料やバインダーとして利用できる、環境適用性及び経済性にも優れる、無溶剤で液状の新規なアクリル樹脂組成物の提供を可能にできる、アクリル樹脂とシリコーン系樹脂とを複合化する技術を提供する。
【0019】
上記したように、本発明では、単量体成分として、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリルエステル単量体を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを、特定の液状化合物(C成分)中で重合することで得られた反応物である、その構造中にアルコキシシリル基が導入された共重合体を含む無溶剤液状アクリル樹脂組成物であることを規定している。すなわち、本発明を特徴づける特定の共重合体(反応物)を、原料として特定の2種のモノマーを用い、特定の条件下で反応させるプロセス(製法)で製造している。ここで、重合体が、分子量の異なる種々のポリマー分子の集合体(混合物)であることは、当該技術分野において周知の事実である。上記したアルコキシシリル基が導入されたアクリル樹脂は、使用するモノマーの構造やモノマー同士の配合比や、中間体である樹脂と上記特有の化合物との配合比等々の相違により、分子量だけでなく、分子構造も相違する様々なポリマー分子の複雑な集合体になる。そのような複雑な集合体(混合物)に含まれる個々のポリマー分子の構造を直接特定することは不可能であるとともに、およそ実際的でもなく、その特定は、重合体を得るためのプロセス(製法)によって初めて特定することが可能になる。また、本発明においては、最終的な無溶剤液状アクリル樹脂組成物の形態とするために、連鎖移動剤(D成分)の存在下、特定の液状化合物(C成分)中で共重合反応を行うことが必要になるが、この点についてもプロセス(製法)によって初めて特定が可能になる。これらの不可能・非実際的な事情から、本発明では、無溶剤液状アクリル樹脂組成物を、当該樹脂を得るためのプロセス(製法)によって特定している。
【0020】
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、連鎖移動剤(D成分)の存在下、後述する特定の液状化合物(C成分)中で重合することを特徴とし、これにより得られるアクリル樹脂は、C成分である液状化合物中に存在しており、水及び揮発性有機溶剤を溶媒として含まないものになる。本発明では、これを「無溶剤液状」と表現する。
【0021】
≪無溶剤液状アクリル樹脂組成物≫
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、水及び揮発性有機溶剤を含まず、少なくとも、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)を含むA成分と、前記A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを、連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下の液状化合物(C成分)中で重合してなる反応物を含み、前記A成分と前記B成分の合計量を質量基準で100部とした場合に、前記C成分の量が質量基準で5〜900部であり、且つ、その25℃におけるR粘度が100mPa・s以上、20000mPa・s未満であることを特徴とする。以下、各構成についてさらに詳細に説明する。なお、上記R粘度は、下記式(1)に示す値である。式(1)中の粘度比は、(B型粘度計最低回転の粘度/B型粘度計最高回転の粘度)を意味する。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
【0022】
[A成分]
<(a1)>
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)(以下、単に「(a1)」と記載する場合がある)を少なくとも含むA成分と、後述するA成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体(B成分)とを、共重合して得たアクリル樹脂を主成分として含むことを特徴とする。また、上記(a1)を含むA成分の使用量は、後述するB成分とA成分の合計量を質量基準で100部とした場合に、質量基準で、50部以上99部以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
上記(a1)としては、特に制限なく、従来公知の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を使用することができる。より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどを挙げることができ、いずれも使用できる。これらは単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<(a2)>
また、本発明では、A成分として、上記した(a1)に加えて、本発明の所期の目的に反さない範囲内で、前記(a1)と共重合可能な、反応性官能基を有していてもよいその他の単量体(a2)(但し、加水分解性アルコキシシリル基を有するものを除く)(以下、単に「(a2)」と記載する場合がある)を使用することができる。必要に応じて使用する(a2)としては、前記(a1)と共重合可能であれば、特に制限はなく、下記に挙げるようなものが使用できる。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、イソプレン等の不飽和基含有化合物、及び/又は、(メタ)アクリル酸、スルフォン酸ビニル、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和酸及び/又はその無水物などが挙げられる。これらは、単独であっても2種以上を併用してもよい。上記したように、(a2)としては、スルフォン基やカルボキシ基といった反応性官能基をもつものも使用できる。本発明で規定する反応物を得るためのモノマーに、(a1)に加え、上記した中の(メタ)アクリル酸やスルフォン酸ビニルといった(a2)を併用することで、本発明を構成するアクリル樹脂は、その骨格にスルフォン基やカルボキシ基が導入された構造のものになる。発明者は、アクリル樹脂の骨格に、適宜にこれらの基を導入した構造とすることで、後述する触媒(硬化促進剤)と同様の機能を発揮し得るものにできれば、触媒(硬化促進剤)をさらに添加することなく、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を、より機能性に優れる1液型又は2液型の常温湿気硬化型にできるのではないかと考えている。
【0025】
A成分中に占める、その主成分である前記した(a1)と共重合可能な(a2)の使用量は、後述する特有の液状化合物(C成分)中で、連鎖移動剤(D成分)の存在下、(a1)及び(a2)を、後述するB成分と共重合して最終的に得られる本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物における25℃におけるR粘度が、本発明で規定する100mPa・s以上、20000mPa・s未満となる範囲内であればよい。例えば、(a2)がスルフォン基やカルボキシ基といった反応性官能基を有する場合、その使用量が多くなり過ぎてA成分全量に占める反応性官能基が多くなってしまうと、A成分とB成分とを、C成分中で共重合した際に、これらの反応性官能基がC成分である液状化合物と反応して、重合物がゲル化してしまい、その25℃におけるR粘度が本発明で規定する範囲内である無溶剤液状アクリル樹脂組成物を得ることができなくなるので避けなければならない。
【0026】
[B成分:A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体]
本発明においては、上記A成分と共に、B成分として、A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体を用い、特定の条件下でこれらの単量体成分を共重合することで、アルコキシシリル基を有するアクリル樹脂が反応物として得られ、該反応物を主成分として無溶剤液状アクリル樹脂組成物が構成される。
【0027】
上記B成分である、A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体としては、加水分解性アルコキシシリル基を有するものであれば従来公知のものを使用することができる。例えば、以下に挙げるようなものが使用できる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。好ましくは、以下のものを使用することができる。シランカップリング剤として市販されている、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン〔KBM−503(商品名)、信越化学工業社製〕、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン〔KBM−502(商品名)、信越化学工業社製〕などを挙げることできる。これらは単独であっても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
B成分の使用量としては、A成分とB成分の合計量を質量基準で100部に対して、1〜50部で使用することもできるが、安価な製品を提供する観点からは、1〜30部の範囲内となる割合であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、B成分の使用量が1〜20部の範囲内であっても本発明の顕著な効果を実現できる共重合体が得られる。B成分の割合が、1部未満であると、主成分であるアクリル樹脂中に存在するアルコキシシリル基の割合が少な過ぎてしまい、特に、1液型又は2液型の常温湿気硬化型とした場合に十分な性能を示さないおそれがある。一方で、B成分の割合が、50部を超えると、相対的にA成分の割合が少なくなり過ぎてしまい、脆化が進み、十分な塗膜性能を得ることができなくなるおそれがあるので好ましくない。
【0029】
[C成分:特定の液状化合物]
本発明では、上記したようなA成分とB成分とを、後述する連鎖移動剤(D成分)の存在下、A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下の液状化合物(以下、単に「C成分」と呼ぶ場合がある)中で共重合してなる反応物を含むことを特徴とする。本発明者らの検討によれば、単量体成分として、前記したA成分とB成分とを、連鎖移動剤(D成分)の存在下、上記したような特定の液状化合物(C成分)中で共重合することで、水及び揮発性有機溶剤を含まない無溶剤で液状のアクリル樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0030】
上記C成分の好適なものとしては、例えば、主鎖、側鎖、末端等の骨格の少なくとも1つに加水分解性アルコキシシリル基を含有する、下記一般式1に示したような、加水分解性アルコキシシリル基含有の液状ポリシロキサン類や、下記一般式2に示すような、加水分解性アルコキシシリル基含有の液状オリゴマーが挙げられる。本発明で規定する「液状化合物」とは、これらのものをいずれも含む概念である。
【0031】
(一般式1中、Xは、メチル基、フェニル基、反応性官能基のいずれかであり、SiORは、アルコキシシリル基を示す。)
(一般式2中、Meはメチル基であり、SiORは、アルコキシシリル基を示す。)
【0032】
本発明を構成するC成分は、上記したように「主鎖、側鎖、末端等の骨格の少なくとも1つに加水分解性アルコキシシリル基を含有する」ことが好ましい。しかし、本発明を構成するC成分は、その基本適性として、「A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下の液状化合物」の要件を満たすものであればよく、それ以外は特に限定されない。このため、以下に挙げるようなものも好適に使用することができる。例えば、フェニルプロピレングリコール、フェニルグリコール、テキサノール、フェニルジグリコール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、オクタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びブチルカルビトールアセテートなどの液状化合物、或いは、加水分解性アルコキシシリル基を含有しないシリコーンオイル類等が挙げられ、いずれも使用し得る。本発明でC成分として使用し得る市販品としては、下記のものが挙げられる。
【0033】
市販されているポリプロピレングリコール系の液状化合物としては、例えば、D−2000〔商品名、日油株式会社製、分子量2000、粘度270mPa・s/25℃(測定値)、沸点150℃以上(測定値)〕や、D−4000〔商品名、日油株式会社製、分子量4000、粘度850mPa・s/25℃(測定値)、沸点150℃以上(測定値)〕などが挙げられる。
【0034】
また、本発明を構成するC成分として好適な、市販されている加水分解性アルコキシシリル基含有液状ポリシロキサン類としては、例えば、KR−510〔商品名、信越化学工業社製、メチル/フェニル基含有シリコーンオリゴマー、粘度=100mPa・s/25℃、沸点=150℃以上(測定値)〕などが挙げられる。
【0035】
また、本発明を構成するC成分として好適な、市販されている加水分解性アルコキシシリル基含有液状ポリエーテル系化合物としては、例えば、SAT010〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度640mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕や、SAX115〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度25000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕や、SAT200〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度640mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕や、SAX220〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度46000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕や、SAT350〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度6000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕や、SAT400〔商品名、カネカ社製、末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂、粘度24000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕などが挙げられる。上記に挙げた各製品は、いずれも、25℃における粘度が50000mPa・s以下のものである。また、沸点は、本発明者らが確認したところ、いずれも150℃以上であった。
【0036】
本発明における上記C成分の使用量は、原料単量体である前記A成分とB成分との合計量を、質量基準で100部とした場合に、10〜900部とすることを要する。本発明者らの検討によれば、C成分の量が、10部よりも少ないと、重合したアクリル樹脂液の粘度が高くなり流動性がなくなり、ゲル化が発生し易くなるので好ましくない。また、重合の進行が損なわれ、重合率が低下し、単量体が残るおそれがあり、この場合は、単量体の臭気が残ってしまい、製品化することが困難になるといった問題を生じることになる。一方で、C成分の量が900部を超えると、組成物中に占めるアクリル樹脂の割合が少なくなり、塗膜を形成する際に時間がかかる上、十分な塗膜性能を得ることができない。すなわち、C成分の使用量を適宜に設計することで、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物中に、本発明で規定する特定の共重合反応物(アクリル樹脂)が、質量基準で、少なくとも10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上と、高固形分で含有されるように構成するとよい。具体的には、C成分の量を、質量基準で、10〜300部、さらには、10〜100部とするとよい。後述する連鎖移動剤(D成分)の存在下、上記の割合のC成分中で、A成分とB成分とを共重合した反応物を含有してなる本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、重合が十分に進行するため、臭気の問題は生じず、形成した塗膜は耐候性に優れたものとなる。
【0037】
上記したC成分である液状化合物は、その種類により、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の物性に少なからず影響するため、その用途・スペックに合わせて適宜選択することが好ましい。例えば、前記した一般式2に示したような、両末端に加水分解性アルコキシシリル基が導入された液状オリゴマーでは、その種類により架橋点間距離が異なり、その距離が短いものに比べて、長い架橋点間距離をもつものの方が、得られる皮膜は柔軟性に富んだものとなる。ここで、前記したバラスト軌道の道床のバラスト固定用とする場合には、前記したように、列車の通過による振動や荷重による摩耗を防ぐ目的から柔軟性に優れたものが好適である。したがって、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を適用する場合には、本発明で規定するC成分として、前記した一般式2に示したような、架橋点間距離が長く、さらには直鎖的な液状化合物を利用することが好ましい。
【0038】
一方、共重合する際に用いるC成分として、前記した一般式1に示したような、末端と側鎖に複数の架橋点がある構造のものを使用した構成の、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を塗料やバインダーに適用した場合は、硬い皮膜が得られる。したがって、その用途に応じて、C成分である液状化合物を適宜に選択すればよい。また、C成分である液状化合物の種類に加え、C成分中で共重合させるA成分であるアクリル系単量体や、アクリル樹脂中に加水分解性アルコキシシリル基を含有させる目的のB成分である単量体の、種類や配合比率を適宜に調整することによって、形成される皮膜の硬さや柔軟性を自在に調整できるので、本発明によれば、各種用途に応じて最適な特性の皮膜形成が可能な無溶剤液状アクリル樹脂組成物を提供することができる。
【0039】
C成分中で共重合を行う方法としては、特に限定されず、下記に挙げるような方法で行えばよい。例えば、C成分中にA成分及びB成分を加えて、後述するような連鎖移動剤(D成分)の存在下、窒素雰囲気下で加熱撹拌する方法や、A成分及びB成分を別容器にあらかじめ混合しておいてから、連鎖移動剤(D成分)の存在下、窒素雰囲気下で加熱したC成分中に加えながら重合する方法などが挙げられる。
【0040】
[D成分:連鎖移動剤]
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を構成するA成分及びB成分を共重合してなる反応物は、連鎖移動剤(D成分)の存在下で、前記したC成分中で共重合したものであることを要する。すなわち、連鎖移動剤を使用して(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体等の原料を共重合することにより、得られるアクリル樹脂の重合度を適宜に調整することができ、本発明で規定する、適正な粘度で液状を保った適度な流動性を有するアクリル樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0041】
この際に使用する連鎖移動剤としては特に制限されないが、例えば、n−ドデシルメルカプタン(ラウリルメルカプタン)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル及び2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。中でも、ラウリルメルカプタン(L−SH)が好ましい。これらの連鎖移動剤の使用量は、A成分とB成分の合計100質量部あたり、0.1〜5.0質量部程度とすることが好ましい。
【0042】
[E成分:重合開始剤]
また、本発明を構成するA成分及びB成分を共重合してなる反応物は、重合開始剤(E成分)を使用して重合されることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられ、中でも、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好ましい。また、有機過酸化物系の重合開始剤も使用可能である。例えば、4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物を使用することができる。
【0043】
重合開始剤の使用量は、質量基準で、A成分とB成分の合計100部あたり、0.1〜5.0部程度とすることが好ましい。上記重合開始剤は、重合の各段階で用いることができ、各段階で所定量を添加して、重合反応を行わせることができる。なお、有機過酸化物系の重合開始剤は、グラフトしやすくなり、場合によっては重合時にゲル化してしまう場合があるので、その使用には注意が必要である。
【0044】
[無溶剤液状アクリル樹脂組成物の物性]
上記のようにして得られる本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を構成するA成分及びB成分を共重合してなる反応物(アクリル樹脂)は、その重量平均分子量が、例えば、5000〜500000程度であればよく、10000〜100000程度であることがより好ましい。
【0045】
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、本発明で規定する、その25℃におけるR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満の範囲内のものであることを要す。さらには、25℃におけるR粘度が、100〜10000mPa・s程度であることが好ましい。このようなR粘度の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、無溶剤であるにも拘わらず流動性が良好であり、塗布性が特に良好となる。このため、例えば、バラスト固定用として良好に使用することができるものになる。
【0046】
上記した25℃におけるR粘度は、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物中に占めるアクリル樹脂分の割合(固形分)が20〜60%の範囲内である際の粘度であることが好ましい。また、アクリル樹脂分の割合が上記範囲となるように、先に記載したC成分を配合で添加し、調整してもよい。本発明は、上記したような高固形分の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を提供できることも利点の一つである。
【0047】
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、揮発性の有機溶剤を含有しないので、環境に優しく、また、樹脂分はアクリル樹脂であるため、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等に比べて、耐候性に優れ、良好な接着性を示し、必要に応じて透明性にも優れた皮膜が形成でき、さらに、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などに比べて安価なものとなる。本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、そのまま接着剤や、コーティング塗料用に好適に使用することができるが、特に、前記したバラスト軌道の道床のバラスト固定用として有効に利用することができる。
【0048】
≪無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法≫
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法は、単量体成分として、反応性官能基を有さない共重合可能な(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(a1)を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを少なくとも用い、前記単量体成分を、連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃における粘度が50000mPa・s以下である液状化合物(C成分)中で共重合させる反応工程を有し、該反応工程における前記C成分の量が、前記A成分と前記B成分との合計量を質量基準で100部とした場合に、質量基準で10〜900部であり、前記反応工程で共重合して得られた反応物の下記式(1)に示したR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満であることを特徴とする。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
但し、粘度比=(B型粘度計最低回転の粘度/B型粘度計最高回転の粘度)
【0049】
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物の製造方法で使用する、A成分、B成分、C成分及びD成分は、いずれも先に説明したのと同様である。本発明の製造方法における好適な構成としては、前記反応工程を2段階で行うことも可能である。具体的には、1段階目で、前記A成分と前記B成分とを単量体成分とし、前記連鎖移動剤(D成分)の存在下、前記液状化合物(C成分)中で共重合反応させて相溶性良好で透明な液状のアクリル樹脂を得、2段階目で、前記1段階目で得られた液状のアクリル樹脂を反応系の分散剤として機能させ、この存在下、新たに単量体成分として、A成分とB成分を、滴下等して加えて(但し、D成分は加えない)共重合させる。このように、2段階目の反応系では、D成分を除くことで、1段階目のアクリル樹脂に比して、より高重合度タイプの共重合反応が行われるようにすることが好ましい。
【0050】
前記反応工程を2段階で行う構成とすることで、製造された無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、下記の効果が得られるものになる。例えば、後述する実施例7等のように、使用するA成分やB成分の種類によっては、得られる無溶剤液状アクリル樹脂組成物の粘度が高くなり、その流動性が劣る場合があった。流動性が劣ると、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を塗料として利用した場合に、良好な状態に小石等の表面を被覆できないことが生じるおそれがあり、また、用途によっては、形成した皮膜の強度を高める必要があった。このような場合には、後述する実施例9のように、共重合の反応工程を2段階で行い、1段階目で低重合度タイプの液状アクリル樹脂を得、2段階目で高重合度タイプの液状アクリル樹脂を重合して、白濁した分散タイプの無溶剤液状アクリル樹脂組成物を得ることが好ましい。さらに、2段階目の反応工程に使用するA成分の組成中に、使用するC成分に対してポリマー化した際に、溶解力に劣るアクリル樹脂組成の単量体が50%以上含まれるような構成とすることが特に有効である。この際に使用するC成分に対してポリマー化した際に、溶解力に劣るアクリル樹脂組成の単量体としては、例えば、MMA(メチルメタクリレート)、EMA(エチルメタクリレート)、AN(アクリロニトリル)、MAN(メタクリロニトリル)等が挙げられる。
【0051】
上記したように、前記反応工程を、上記したような2段階で行う構成とすることで分散タイプの液状アクリル樹脂を得ることができる。そして、このようにして得られる分散タイプの液状アクリル樹脂では、良好な流動性を示すように低く粘度を調整することが容易にできるようになるというメリットがある。また、先に述べたように、2段階目の共重合反応工程で用いるA成分に、1段階目の共重合反応工程で用いるA成分と比較して、より硬い皮膜形成が可能な単量体成分を適宜に用いれば、所望する強度の皮膜形成を可能にできる分散タイプの液状アクリル樹脂を得ることができる。また、2段階目の共重合反応工程で重合度を上げることで、より強靭な皮膜形成も可能になる無溶剤液状アクリル樹脂組成物を適宜に得ることもできる。
【0052】
≪触媒(硬化促進剤)≫
本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、さらに、触媒(硬化促進剤)を含有してなる混合物とすることで、より機能性に優れる1液型又は2液型の常温湿気硬化型とすることができる。このような形態とすることで、常温湿気硬化型の骨材固定用として、より好適なものになる。すなわち、触媒(硬化促進剤)が存在することで、空気中の湿気で、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を構成するB成分中のアルコキシシリル基が、より容易に加水分解し、さらに、加水分解したシラノール基が縮合することで、室温下でも、より容易に硬化できるようになったものと考えられる。このため、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を構成するC成分が、加水分解性アルコキシシリル基含有の液状オリゴマーである場合も、触媒(硬化促進剤)が存在することで、C成分中の加水分解性アルコキシシリル基が、空気中の湿気によって、より容易に加水分解するので、より機能性に優れる1液型又は2液型の常温湿気硬化型とすることができるようになる。
【0053】
上記で使用する硬化促進剤としては、従来公知の、錫、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド;有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物等、アミン化合物等が挙げられる。より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートエステル、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジネオデカノエート等の錫化合物;テトラブチルチタネート、ターシャリアミルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタン化合物、ジブチルアミン、ラウリルアミン、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のアミン化合物及びその塩などが挙げられる。さらに好ましくは、金属キレート化合物の硬化促進剤を使用するとよい。その添加量は、液状アクリル樹脂組成物100部に対して、0.001〜5部であり、より好ましくは、0.1部〜2部である。これらは、単独もしくは2種類以上の併用で使用することが可能である。上記硬化促進剤は、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を使用する直前に配合する、いわゆる2液型として用いてもよいし、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物に事前に配合しておく、いわゆる1液型として用いてもよい。
【0054】
上記、硬化促進剤の種類や添加量を変えて、適宜に調整することで、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を用いてなる塗料の、ポットライフや硬化速度を種々の用途に最適なものに設計することができる。
【0055】
上記した構成とすることにより、主に、屋外用途で乾燥工程に課題があった塗料(コーティング塗料)用途、バインダー関連用途、骨材の固定用として好適な、無溶剤液状アクリル樹脂組成物が提供される。すなわち、水系の場合、時間をかけて塗膜を乾燥させなければ充分な塗膜性能が得られず、一方、有機溶剤系では、乾燥時に、臭気、環境影響、引火性等の課題があったのに対し、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を利用することで、これらの課題が解決できる。より具体的には、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、(加熱)乾燥することなく常温で数時間後に硬化可能な、常温湿気硬化性を示す液状樹脂組成物であるため、作業性及び環境適応性に優れたものとなる。特に、触媒(硬化促進剤)を含むことで、1液型の湿気硬化型とした場合には、常温数時間で硬化するため、バラスト固定用のバインダーとして有用である。例えば、道床の修理保全で使用すれば、終電後の、深夜の道床補修時に散布しても、常温数時間で硬化するので、始発の運転に影響することがなく、メンテナンス作業が運行に及ぼす影響を低減できる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「部」とあるのは質量基準である。
【0057】
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに、下記のA成分、B成分、C成分、D成分を仕込み、下記のようにして、本実施例の液状アクリル樹脂を得た。具体的には、まず、A成分として、アクリル酸ブチル(BAと略記、SP値=9.0)を70部と、メタクリル酸メチル(MMAと略記、SP値=9.5)を25部用い、B成分として、KBM−502(商品名、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学工業社製)を5部用い、また、C成分として、KR−510〔商品名、信越化学工業社製、粘度100mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕を100部用い、D成分である連鎖移動剤として、ラウリルメルカプタン(L−SHと略記)を2部用い、これらの成分を撹拌混合して、単量体溶解液を調製した。そして、上記で調製した単量体溶解液を80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分の重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略記)を2部添加して、A成分及びB成分の反応を開始し、連鎖移動剤の存在下、C成分中でA成分とB成分との共重合反応を行い、8時間後に終了した。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、本実施例の液状アクリル樹脂組成物−1を得た。得られた液状アクリル樹脂組成物−1の粘度は、2500(mPa・s/25℃)であった。
【0058】
<評価>
上記で得た液状アクリル樹脂組成物−1を用い、以下の方法で評価用サンプルである塗料を作製し、該塗料を用いて、常温湿気硬化性、耐水白化性、接着性、流動性及び臭気についてそれぞれ評価した。評価結果は、表1−1にまとめて示した。
【0059】
1.常温湿気硬化性
液状アクリル樹脂組成物−1の100部に対して、硬化促進剤(ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン)を1.0部入れて、触媒(硬化促進剤)を含む評価用塗料を調製した。次いで、この評価用塗料を、ガラス基板上に、塗工厚が100μm厚になるようにして塗工し、常温(25℃)で3時間放置し、塗膜の硬化状態を観察し、以下の基準で評価し、その結果を表1−1に示した。なお、○を合格とし、△、×を不合格と評価した。
【0060】
(評価基準)
○:塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れない状態。
△:塗面の中央に指先で軽く触れて、指先に多少汚れがある状態。
×:塗面の中央に指先で軽く触れて、指先が汚れ、硬化していない状態。
【0061】
2.流動性
先の常温湿気硬化性の試験で使用した各評価用塗料を用い、その流動性の目安として、B型粘度計で25℃における粘度を測定し、B型粘度計最低回転の粘度の各測定値と、B型粘度計最高回転の粘度の各測定値とを用い、以下の式(1)でR粘度を算出した。そして、得られたそれぞれのR粘度の値を用い、下記の4段階で評価し、その結果を表1−1に示した。なお、◎、○、△を合格とし、×を不合格と評価した。
R粘度=粘度(mPa・s/25℃)×粘度比 (1)
粘度=BH型粘度計、回転数10rpm、25℃で測定(mPa・s/25℃)
粘度比=(B型粘度計最低回転2rpmの粘度/B型粘度計最高回転20rpmの粘度)
【0062】
(評価基準)
◎:R粘度が、100以上3500未満(mPa・s)である。
○:R粘度が、3500以上10000未満(mPa・s)である。
△:R粘度が、10000以上20000未満(mPa・s)である。
×:R粘度が、20000以上(mPa・s)である。
【0063】
3.耐水白化性
常温湿気硬化性の試験で使用した評価用塗料を、塗工厚が100μm厚になるように室温で塗工し、3時間放置して造膜させ、これを評価用サンプルとした。そして、このサンプルを60℃の温水中に24時間放置後、温水から取り出して直ちに室温の水に24時間放置し、その後、水より取り出して室温で乾燥させ、皮膜の白化具合を目視にて観察した。そして、以下の基準で評価し、その結果を表1−1に示した。なお、○を合格とし、×を不合格とした。
【0064】
(評価基準)
○:白化なし。
×:白化あり。
【0065】
4.接着性
常温硬化性の試験で使用した評価用塗料をそれぞれに用い、約10gを小石(粒径3〜6cm、約100g)に対して散布し、常温で3時間放置して被覆させて、評価用の被覆した小石サンプルとした。そして、この被覆小石サンプルを指で10回擦ったときの、剥離状況で接着性を評価した。具体的には、下記の基準で評価し、その結果を表1−1に示した。なお、◎、○、△を合格とし、×を不合格とした。
【0066】
(評価基準)
◎:剥離なし
○:10%未満剥離
△:30%未満剥離
×:30%以上剥離
【0067】
5.臭気
常温硬化性の試験で作製した試験用塗料を、塗工厚が100μm厚になるように基材フィルムに塗工し、常温(25℃)で3時間放置した。その後、塗膜の臭気を嗅いで、臭気の強弱を確認し、以下の基準で評価し、その結果を表1−1に示した。なお○を合格とし、×を不合格とした。
(評価基準)
○:塗膜に異臭臭気がない。
×:塗膜に異臭臭気がある。
【0068】
(実施例2〜8)
実施例1で使用した各成分を、表1−1及び表1−2に記載した種類及び使用量にした以外は、実施例1と同様にして、液状アクリル樹脂組成物−2〜液状アクリル樹脂組成物−8をそれぞれ作製した。そして、表1−1及び表1−2中に、実施例1の場合と同様に、得られた各液状アクリル樹脂の25℃における粘度を示した。また、液状アクリル樹脂組成物−2〜液状アクリル樹脂組成物−8について、液状アクリル樹脂組成物−1で行ったのと同様の評価を行い、表1−1及び表1−2中に、その結果をまとめて示した。
【0069】
(実施例9)
実施例1と同様に、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを反応容器として準備し、この容器を用いて下記に記載した通り、A成分とB成分との共重合を2段階で行った。まず、表1−2中の実施例9の左欄に記載したA成分、B成分、C成分、D成分、E成分を用いて1段階目の共重合反応を行い、続けて反応容器内に、表1−2中の実施例9の右欄に記載したA成分、B成分、及びE成分を用いて2段階目の共重合反応を行って、本実施例の白濁液状のアクリル樹脂組成物を得た。
【0070】
より具体的には、まず、1段階目の共重合反応では、A成分として、アクリル酸ブチル(BAと略記、SP値=9.0)27部と、アクリル酸エチル(EAと略記、SP値=9.5)27部の2種を用い、B成分として、KBM−502(商品名、信越化学工業社製)を6部用いた。そして、C成分として、KR−510〔商品名、信越化学工業社製、粘度100mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕を50部と、SAT010〔商品名、カネカ社製、粘度640mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕を50部と、SAX220〔商品名、カネカ社製、粘度46000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕を50部の3種の混合物を用いた。1段階目の共重合反応では、D成分である連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン(L−SHと略記)を2部用い、これらの、A成分、B成分、C成分及びD成分を撹拌混合して、単量体溶解液を調製した。そして、上記で調製した単量体溶解液を80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分の重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略記)を1.6部添加して、単量体成分であるA成分及びB成分の反応を開始し、D成分である連鎖移動剤の存在下、C成分中で、A成分とB成分との1段階目の共重合反応を4時間にわたって行い、液状のアクリル樹脂組成物を得た。
【0071】
次に、2段階目の共重合反応では、1段階目の共重合反応を開始してから4時間後に、下記のようにして、A成分とB成分とを用いて2段階目の共重合反応を行った。具体的には、反応容器内の内温を80℃に保ちながら、1段階目の重合で得た液状アクリル樹脂の存在下、E成分の重合開始剤としてAIBNを0.4部添加して、表1−2中の実施例9の右欄に記載したA成分であるメタクリル酸メチル(MMAと略記、SP値=9.5)36部と、B成分であるKBM−502(商品名、信越化学工業社製)4部とを、2時間掛けて滴下した。そして、2段階目の共重合反応を行い、4時間後に反応を完了させた。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、本実施例の白濁分散した液状アクリル樹脂組成物−9を得た。得られた白濁液状アクリル樹脂組成物−9の粘度は、4000(mPa・s/25℃)であった。実施例8で得た液状アクリル樹脂組成物と比較して、性状が白濁液になったものの、粘度が低い接着性に優れるものが得られた。得られた白濁液状アクリル樹脂組成物−9について、実施例1の液状アクリル樹脂組成物−1で行ったのと同様の評価を行い、表1−2中に、その結果をまとめて示した。
【0072】
【0073】
【0074】
表1中に示した成分の記号の詳細は、次の通りである。
(A成分)
●BA:アクリル酸ブチル
●EA:アクリル酸エチル
●MMA:メタクリル酸メチル
●MAAC:メタクリル酸
【0075】
(B成分)
●KBM−502(商品名):3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学工業社製
●KBM−503(商品名):3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製
【0076】
(C成分)
●D−2000(商品名):ポリプロピレングリコール(分子量2000)、粘度270mPa・s/25℃(測定値)、沸点150℃以上(測定値)、日油株式会社製、
●KR−510(商品名):メチル/フェニル基含有シリコーンオリゴマー(粘度100mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、信越化学工業社製
●KF−414(商品名):アルキル変性シリコーンオイル(加水分解性アルコキシシリル基なし)、粘度100mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)、信越化学工業社製
●SAT010(商品名):末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂(粘度640mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、カネカ社製
●SAX115(商品名):末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂(粘度640mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、カネカ社製
●SAX220(商品名):末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂(粘度46000mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、カネカ社製
●SAT350(商品名):末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂(粘度6000mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、カネカ社製
●SAT400(商品名):末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂(粘度24000mPa・s/25℃)、沸点150℃以上(測定値)、カネカ社製
【0077】
(D成分)
●L−SH:ラウリルメルカプタン(n−ドデシルメルカプタン)
【0078】
(E成分)
●AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0079】
(比較例1:B成分を不使用)
実施例で使用したのと同様の、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに下記のA成分、C成分、D成分を仕込み、下記のようにして、本比較例の液状アクリル樹脂を得た。具体的には、本発明で規定するA成分である、BAを80部、MMAを20部用い、本発明で規定するC成分である、D−4000〔商品名、日油株式会社製、粘度850mPa・s/25℃(測定値)、沸点150℃以上(測定値)、分子量4000のポリプロピレングリコール〕を50部、D成分である連鎖移動剤として、L−SHを1部、その他成分として、MA440〔商品名、カネカ社製、シリコーン変性アクリル樹脂、粘度75000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕を100部加えて撹拌混合し、単量体混合物を調製した。そして、上記で調製した単量体溶解液を80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分である重合開始剤として、AIBNを1部添加して、A成分の重合反応を開始し、連鎖移動剤の存在下、C成分中で2種の単量体からなるA成分の共重合反応を行い、8時間後に反応を終了した。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、本比較例の、B成分由来の加水分解性アルコキシシリル基を有さない、無溶剤液状のアクリル樹脂組成物を得た。
【0080】
上記で得られた本比較例の無溶剤液状のアクリル樹脂組成物の粘度は、85000(mPa・s/25℃)であり、高粘度で、流動性に欠けるものであった。また、本比較例の無溶剤液状のアクリル樹脂組成物について、実施例で行ったのと同様の評価を行い、表2中にこれらの結果を示した。
【0081】
(比較例2:D成分を不使用)
実施例で使用したのと同様の、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに、下記のA成分、B成分、C成分を仕込み、下記のようにして、本比較例の液状アクリル樹脂を得た。具体的には、本発明で規定するA成分である、アクリル酸エチル(EAと略記)を50部、MMAを40部、本発明で規定するB成分である、KBM−503を10部、本発明で規定するC成分である、SAT010(商品名:末端シリコーン変性ポリエーテル樹脂)を100部加えて撹拌混合して、単量体混合物を調製した。そして、上記で調製した単量体溶解液を80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分である重合開始剤として、過酸化ベンゾイル(BPO)を2部添加して、重合反応を開始し、上記C成分中でA成分及びB成分の共重合反応を行った。得られた反応物はゲル状であり、液状の樹脂を得ることができなかった。
【0082】
(比較例3:B成分、C成分を不使用)
実施例で使用したのと同様の、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに、下記のA成分とD成分と、その他成分として低沸点タイプのカップリング剤をC成分の代替として仕込み、下記のようにして、液状のアクリル樹脂組成物を得た。具体的には、本発明で規定するA成分である、BA80部、EAを20部用い、本発明で規定するB成分、C成分は使用せず、その他成分として、沸点150℃以下である加水分解性アルコキシシリル基含有カップリング剤KBM−22(商品名、信越化学工業社製、ジメチルジメトキシシラン、沸点82℃)を100部、さらに、D成分である連鎖移動剤として、L−SHを2部加えて撹拌混合し、単量体混合物を調製した。そして、80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分である重合開始剤として、AIBNを2部添加して、A成分とB成分の重合反応を開始し、連鎖移動剤の存在下、低沸点シランカップリング剤中で共重合反応を行い、8時間後に反応を終了した。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、本比較例の液状アクリル樹脂組成物を得た。
【0083】
上記で得られた本比較例の液状のアクリル樹脂組成物の粘度は、2300(mPa・s/25℃)であった。また、本比較例の液状のアクリル樹脂組成物について、実施例で行ったのと同様の評価を行い、表2中にこれらの結果を示した。
【0084】
(比較例4:B成分を不使用、溶媒にトルエンを使用)
実施例で使用したのと同様の、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに、下記のA成分、C成分、D成分と、トルエン(沸点:110.6℃)を仕込み、下記のようにして、溶剤液状のアクリル樹脂を得た。具体的には、本発明で規定するA成分である、BAを60部、EAを40部用い、C成分であるKF−414〔商品名、信越化学工業社製、アルキル変性シリコーンオイル(加水分解性アルコキシシリル基なし)、粘度100mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)〕100部、さらに、D成分である連鎖移動剤として、L−SHを1部とその他成分として、トルエンを100部加えて撹拌混合し、単量体混合物を調製した。そして、80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、E成分である重合開始剤として、AIBNを1部添加して、2種のA成分の重合反応を開始し、連鎖移動剤の存在下、トルエン中で共重合反応を行い、8時間後に反応を終了した。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、本比較例のトルエンを溶剤とする液状のアクリル樹脂組成物を得た。
【0085】
上記で得られた本比較例のトルエンを溶剤とする液状のアクリル樹脂組成物の粘度は、1450(mPa・s/25℃)であった。また、本比較例のトルエンを溶剤とする液状のアクリル樹脂組成物について、実施例で行ったのと同様の評価を行って、表2中に、これらの結果を示した。
【0086】
(比較例5:溶媒に水を使用)
実施例で使用したのと同様の、撹拌機、温度計、還流コンデンサー付の1Lの4つ口丸底フラスコを準備した。そして、このフラスコに、イオン交換水100部と、乳化剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(レベノールWX(商品名)、花王社製、以下「乳化剤A」と呼ぶ)2部を加え、その中に、本発明で規定するA成分である、BAを80部、MMAを9部、MAACを1部と、本発明で規定するB成分であるKBM−503を10部加え、さらに、C成分として、KF−414(商品名 信越化学工業社製、アルキル変性シリコーンオイル(加水分解性アルコキシシリル基なし)、粘度100mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値))100部と、D成分である連鎖移動剤として、L−SHを2部加えて撹拌混合して、単量体乳化混合物を調製した。そして、80℃まで昇温し、撹拌下に30分窒素ガスでバブリングすることにより、溶液中の溶存酸素を除去した。そして、内温を80℃に保ちながら、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APSと略記)を0.5部添加し、A成分及びB成分の重合反応を開始し、8時間後に反応を終了した。その後、凝集物を除去する目的でろ過をして、アクリル樹脂エマルションを得た。
【0087】
上記で得られた本比較例のアクリル樹脂エマルションの粘度は、200(mPa・s/25℃)であった。また、本比較例のアクリル樹脂エマルションについて、実施例で行ったのと同様の評価を行い、表2中にこれらの結果を示した。
【0088】
【0089】
表2中に示した成分の記号は、下記に示したもの以外は、表1中と同様である。
(C成分)
●D−4000(商品名):ポリプロピレングリコール(分子量4000)、日油株式会社製、粘度850mPa・s/25℃(測定値)、沸点150℃以上(測定値)
【0090】
(E成分)
●BPO:過酸化ベンゾイル
【0091】
(その他の成分)
●KBM−22(商品名):信越化学工業社製、ジメチルジメトキシシラン、粘度100mPa・s/25℃以下(測定値)、沸点82℃(沸点が低く、C成分としては適用範囲外)
●MA440(商品名):カネカ社製、シリコーン変性アクリル樹脂、粘度75000mPa・s/25℃、沸点150℃以上(測定値)(粘度が高く、C成分としては適用範囲外)
●乳化剤A:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、レベノールWX(商品名))
●APS:過硫酸アンモニウム(水溶性重合開始剤)
【0092】
上記したように、本発明の無溶剤液状アクリル樹脂組成物である実施例1〜9の液状アクリル樹脂組成物は、常温硬化性、耐水白化性、流動性、接着性及び臭気のいずれにおいても優れたものとなった。一方、本発明で規定する要件を満足しない比較例のアクリル樹脂組成物は、全てを満足するものではなかった。具体的には、表2に示したように、比較例1の、B成分由来の加水分解性アルコキシシリル基を有さない無溶剤液状のアクリル樹脂組成物は、常温硬化性であるものの、所望の流動性が得られず、接着性についても使用可能であるものの十分に良好なものでなかった。また、反応時に、連鎖移動剤であるD成分を使用していなかった比較例2のアクリル樹脂組成物は、ゲル化してしまった。また、B成分とC成分を使用せず、沸点150℃以下の加水分解性アルコキシシリル基含有化合物として、シランカップリング剤KBM−22中で共重合反応を行なった比較例3のアクリル樹脂組成物は、流動性はよいものの、臭気が強く、常温硬化性が得られなかった。また、B成分を使用せず、C成分として、加水分解性アルコキシシリル基を含有しないアルキル変性シリコーンオイルKF−414とその他成分として、トルエン中で反応させた比較例4の溶剤系のアクリル樹脂組成物は、流動性はよいものの、常温硬化性が得られず、臭気の点でも問題があった。また、比較例5のアクリル樹脂エマルションは、流動性や臭気の点では問題がないものの、常温硬化性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の活用例としては、本発明によって提供される無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、揮発性の有機溶剤を含有しないので、臭気の問題がなく、作業性や環境保護に優れ、しかも常温硬化性を有し、さらには湿気硬化型にもでき、温水中に長時間放置しても形成した皮膜が白化することがなく、耐候性に優れ、必要に応じて透明性にも優れた皮膜が形成でき、さらに、その主たる単量体成分が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であることから、安価で、接着性及び流動性も良好であるので、例えば、大量に戸外で使用され、樹脂皮膜が風雨に曝される、砂利や骨材の固定用の接着剤としての活用が期待される。また、本発明によって提供される無溶剤液状アクリル樹脂組成物は、天然又は人工の砂利或いは骨材を被覆して砂利等を固着させることができると同時に、弾性付与効果及び/又は振動音減衰効果が期待できる。すなわち、砂利や骨材の表面を樹脂で被覆することで、樹脂の粘弾性を利用した振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで、振動エネルギーを減衰させる振動減衰効果等々の発現が期待される。
【要約】
【課題】砂利或いは骨材の固定材料として有用な、耐候性及び接着性に優れ、適度な流動性を有し、揮発性の有機溶剤を含有しないため、作業性に優れ、環境への影響が少ない無溶剤液状アクリル樹脂組成物の提供。
【解決手段】水及び揮発性有機溶剤を溶媒として含まず、反応性官能基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を少なくとも含むA成分と、該A成分と共重合可能な加水分解性アルコキシシリル基含有単量体であるB成分とを、連鎖移動剤の存在下、A成分と共重合性を持たない、沸点が150℃以上で、且つ、25℃での粘度が50000mPa・s以下である液状化合物(C成分)中で共重合してなる反応物を含み、A成分とB成分との合計量を100質量部とした場合に、C成分の量が10〜900質量部であり、且つ、粘度×粘度比で算出されるR粘度が、100mPa・s以上、20000mPa・s未満である無溶剤液状アクリル樹脂組成物。
【選択図】なし