特許第6222874号(P6222874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6222874
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/06 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   B66B29/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-231134(P2016-231134)
(22)【出願日】2016年11月29日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】手塚 暁則
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131691(JP,A)
【文献】 特開昭63−300092(JP,A)
【文献】 特開2006−27790(JP,A)
【文献】 特開2014−80267(JP,A)
【文献】 特開平9−2771(JP,A)
【文献】 特開2016−98114(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0252724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に接続され、走行路に沿って前後方向に走行する複数の踏段と、
前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、
前記欄干の乗降口に設けられた乗降板と、
前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出、又は、侵入するコムと、
前記コムの先端に設けられた櫛部と、
前記コムの下方に配され、隣接する前記踏段の隙間から前記櫛部の複数の櫛歯を撮影して検証画像を取得するカメラと、
前記検証画像から前記櫛歯が破損しているか否かを判断する制御部と、
を有する乗客コンベア。
【請求項2】
前記カメラは、隣接する前記踏段の前記隙間が通過する度に前記検証画像を撮影し、
前記制御部は、前記検証画像が入力する度に、前記櫛歯が破損しているか否かを判断する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記制御部は、
複数の前記踏段の中の一つの特定の踏段が所定距離走行した時間から、隣接する前記踏段の前記隙間が通過する間隔時間を演算し、
前記カメラを用いて前記間隔時間毎に前記検証画像を撮影する、
請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記走行路上に設けられた第1スイッチと、
前記走行路上であって、前記第1スイッチとは所定距離離れた位置に設けられた第2スイッチと、
をさらに有し、
前記制御部は、
前記特定の踏段が前記第1スイッチを動作させてから前記第2スイッチを動作させるまでの第1動作時間を計時し、
前記所定距離を前記第1動作時間で割って第1現実走行速度を演算し、
前記第1現実走行速度から前記間隔時間を演算する、
請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記第1スイッチから前記第2スイッチまでの走行距離と、前記第2スイッチから前記第1スイッチまでの走行距離とが同じになるように前記第1スイッチと前記第2スイッチが設けられ、
前記制御部は、
前記特定の踏段が前記第2スイッチを動作させてから前記第1スイッチを動作させるまでの第2動作時間を計時し、
前記所定距離を前記第2動作時間で割って第2現実走行速度を演算し、
前記第2現実走行速度から前記間隔時間を演算し、
前記特定の踏段が、前記第1スイッチから前記第2スイッチへ走行するまでは、前記第1現実走行速度から演算した前記間隔時間で前記検証画像を撮影し、
前記特定の踏段が、前記第2スイッチから前記第1スイッチへ走行するまでは、前記第2現実走行速度から演算した前記間隔時間で前記検証画像を撮影する、
請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記制御部は、
前記櫛部の前記櫛歯が正常な状態の基準2値化画像を予め記憶しておき、
前記検証画像を2値化して検証2値化画像を生成し、
前記検証2値化画像と前記基準2値化画像とを比較し、前記櫛部が破損しているか否かを判断する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記制御部は、前記2値化画像と前記基準2値化画像とを比較する場合に、
前記2値化画像の白色領域が前記基準2値化画像の白色領域より多い場合に、前記櫛歯部が破損していると判断する、
請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記制御部は、前記櫛歯が破損していると判断した場合には、外部に警告信号を出力する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記カメラは、前記コムの上方からの外光のみによって前記検証画像を撮影する、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記乗客コンベアは、エスカレータ、又は、動く歩道である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいては、踏段が進出、又は、侵入する部分には、コムが設けられている。このコムは、乗降板の先端に設けられた合成樹脂製のものであり、その先端には複数の櫛歯からなる櫛部が設けられている。この櫛部は、踏段に乗った異物が、乗客コンベアの機械室内部に入るのを防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−27790号公報
【特許文献2】特許2012−18205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コムの櫛部の櫛歯は、折れて破損し易いため、従来より係員、又は、保守員が点検を行っている。しかし、この点検を行うまでに乗客の足が、踏段と破損した櫛部の間に挟まれたりする可能性があるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、コムの櫛歯が破損した場合に、直ちにその破損を判断することができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、無端状に接続され、走行路に沿って前後方向に走行する複数の踏段と、前記踏段の左右両側に設けられた左右一対の欄干と、前記欄干の乗降口に設けられた乗降板と、前記乗降板の先端に設けられ、前記踏段が進出、又は、侵入するコムと、前記コムの先端に設けられた櫛部と、前記コムの下方に配され、隣接する前記踏段の隙間から前記櫛部の複数の櫛歯を撮影して検証画像を取得するカメラと、前記検証画像から前記櫛歯が破損しているか否かを判断する制御部と、を有する乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態のエスカレータの側面説明図。
図2】上カメラ近傍の機械室の拡大説明図。
図3】上階側のコムの平面図。
図4】上カメラで撮影した検証画像。
図5】検証2値化画像。
図6】エスカレータのブロック図。
図7】櫛歯の破損を判断するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態のエスカレータ10を図1図7に基づいて説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、図1に基づいて説明する。図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の駆動スプロケット24,24、左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27が設けられている。駆動装置18は、誘導電動機(インダクションモータ)よりなるモータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により駆動スプロケット24が回転する。左右一対の駆動スプロケット24,24と左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御装置50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、従動スプロケット26が設けられている。上階側の駆動スプロケット24と下階側の従動スプロケット26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。すなわち、左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30の車輪301が取り付けられている。踏段30の車輪301はトラス12に固定された不図示の案内レールに沿って走行すると共に、駆動スプロケット24の外周部にある凹部と従動スプロケット26の外周部にある凹部に係合して、踏段30が上下に反転する。また、車輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対のスカートガード44,44と左右一対の欄干36,36が立設されている。欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。スカートガード44は、欄干36の側面下部に設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0014】
手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内に侵入し、案内ローラ群64を介して手摺り駆動スプロケット27に掛け渡され、その後、案内ローラ群66を介してスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、手摺り駆動スプロケット27が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。また、回転する手摺り駆動スプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68を有する。
【0015】
上階側の機械室14の天井面にある乗降口には、上階側の乗降板32が水平に設けられ、下階側の機械室16の天井面にある乗降口には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60から踏段30が進出、又は、侵入する。また、乗降板34にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0016】
(2)コム60,62の詳しい構造
次に、上階側のコム60の詳しい構造について図2図3を参照して説明する。乗降板32の先端に設けられた合成樹脂製のコム60は、図3に示すように複数の分割コム600が左右方向に乗降板32にネジでそれぞれ固定されている。各分割コム600のコム本体602から複数の櫛歯604が前方に等間隔で突出し、櫛部606を形成している。この櫛歯604は、図2に示すように、先端に行くほど下方に屈曲し、かつ、その先端は丸みをおびて細くなっている。
【0017】
下階側のコム62についても、コム60と同様の構成を有している。
【0018】
(3)踏段30の構造
踏段30の構造について図2図3に基づいて説明する。金属製の踏段30は、側面形状が三角形のフレーム303、フレーム303の上面に設けられたクリート面304、フレーム303の後面に設けられたライザ面305より形成されている。フレーム303、クリート面304、ライザ面305は、例えば一体に鋳造されている。
【0019】
フレーム303の前端部には左右一対の前輪301が設けられ、フレーム303の後部下端、すなわち、ライザ面305の下端には左右一対の後輪302が設けられている。
【0020】
クリート面304の上面には、前後方向に沿って延びる山部306と、前後方向に沿って延びる谷部308が交互に形成されている。クリート面304の谷部308に、上記で説明したコム60の櫛歯604が侵入する。
【0021】
踏段30は、前輪301の位置で、無端の踏段チェーン28によって連結されている。この複数個の踏段30の中で、図2に示すように、1個の踏段に関してのみ、フレーム303の側方から突部312が突出している。この突部312が突出した特定の踏段30を、以下では「検証踏段300」という。
【0022】
前後方向に隣接する踏段30において、図3に示すように、前部の踏段30の山部306と、後部の踏段30の谷部308とが交互に組み合わさり、前部の踏段30と後部の踏段30との間には隙間310が形成されている。この隙間310の前後方向の寸法としては、約2mmである。
【0023】
(4)櫛部606の破損を検出するための部材
次に、コム60、62の櫛部606の破損を検出するための部材について図2図4を参照して説明する。
【0024】
複数台の上カメラ104が、上階側のコム60の下方、すなわち、機械室14の内部に左右方向に設けられている。これら上カメラ104は、下から櫛歯604の先端を図4に示すような検証画像を撮影できる。左右方向に複数台の上カメラ104を設ける理由は、櫛歯604が左右方向に等間隔に複数本存在し、1台の上カメラ104では全ての櫛歯604を撮影できないからである。これら複数台の上カメラ104は、トラス12に取り付けられ、踏段30の走行範囲よりも下方に設けられている。
【0025】
第1位置リミットスイッチ(以下、単に「第1スイッチ」という)100が、検出踏段300の突部312に接触するように、案内レール25には取り付けられている。第1スイッチ100は、検証踏段300が通過したときのみ突部312が当たり、オフからオンとなる。それ以外の踏段30が通過する場合には第1スイッチ100に接触せず、オフ状態が維持される。
【0026】
図1に示すように、複数台の下カメラ106が、下階側のコム62の下方、すなわち機械室16の内部に左右方向に設けられている。これら下カメラ106も、上階側の上カメラ104がコム60を撮影するのと同様に、コム62から突出した複数の櫛歯604の先端を撮影する。
【0027】
第2位置リミットスイッチ(以下、「第2スイッチ」という)102が、下階側の機械室16内の従動スプロケット26の近傍の案内レール25に取り付けられている。第2スイッチ102は、検証踏段300が通過したときのみ突部312が当たり、オフからオンとなる。それ以外の踏段30が通過する場合には第2スイッチ102に接触せず、オフ状態が維持される。
【0028】
上記したように踏段30、検証踏段300は、踏段チェーン28に無端状に連結され、走行路を循環走行する。そして、第1スイッチ100から第2スイッチ102までの走行距離と、第2スイッチ102から第1スイッチ100までの走行距離が同じになるように、第1スイッチ100と第2スイッチ102が取り付けられている。以下この距離を、「検証距離L」という。
【0029】
(5)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10の電気的構成について図6を参照して説明する。
【0030】
制御装置50には、インバータ装置201、電源回生ユニット202、リアクトル203、ノイズフィルタ204が接続されている。不図示の三相交流電源から供給された三相の交流電源は、高周波対策として設けられたノイズフィルタ204及びリアクトル203を経て、電源回生ユニット202に至る。電源回生ユニット202が、エスカレータ10が下降運転した場合に発生するエネルギーを三相交流電源に回生する。インバータ装置201が、電源回生ユニット202に接続されている。インバータ回路201は、制御装置50からの駆動信号に基づいて、モータ20をインバータ制御するものであり、運転速度、上昇、又は、下降の方向を変更する。
【0031】
また、制御装置50には、操作盤52、操作盤56、スピーカ54、スピーカ58が接続されている。
【0032】
制御装置50は、制御回路501、画像解析回路502、通信回路503を有している。制御回路501には、第1スイッチ100と第2スイッチ102が接続されている。画像解析回路502には、上階側に設けられた複数の上カメラ104、下階側に設けられた複数の下カメラ106が接続されている。
【0033】
制御回路501は、第1スイッチ100が検証踏段300によってオンされ、第2スイッチ102が検証踏段300によってオンされるまでの第1動作時間T1を計時する。制御回路501は、検証距離Lを第1動作時間T1で割って、現実の第1現実走行速度V1を演算する。すなわち、V1=L/T1である。次に、制御回路501が、第1現実走行速度V1に踏段30(300)の前後方向の長さをかけて、踏段30が通過する間隔時間を演算する。また、制御回路501は、第2スイッチ102が検証踏段300によってオンされ、第1スイッチ100が検証踏段300によってオンされるまでの第2動作時間T2を計時する。制御回路501は、検証距離Lを第2動作時間T2で割って、現実の第2現実走行速度V2を演算する。すなわち、V2=L/T2である。次に、制御回路501が、第2現実走行速度V2に踏段30(300)の前後方向の長さをかけて、踏段30が通過する間隔時間を演算する。このような第1現実走行速度V1と第2現実走行速度V2を演算する理由は、踏段30、検証踏段300が定格速度V0で走行していても、現実の走行速度とはずれるため、踏段30の隙間310を撮影するためのより正確なタイミングを取るためである。
【0034】
画像解析回路502は、複数台の上カメラ104でそれぞれ撮影した画像を図4に示すように1枚の検証画像に合成する。次に、画像解析回路502は、所定の閾値で黒色と白色で2値化を行い、図5に示すように検証2値化画像を生成する。次に、画像解析回路502は、予め記憶している櫛歯604が正常な状態を示す基準2値化画像と検証2値化画像の白色領域の面積比率を比較し求める。そして、この白色領域の面積比率が、所定の閾値内であれば櫛歯604は正常であると判断し、閾値以上に白色領域が多い場合には、櫛歯604が破損して光が入り白領域が増えたものとして、破損信号を制御回路501に出力する。
【0035】
制御回路501は、画像解析回路502から破損信号が入力すると、通信回路503を用いて外部に櫛歯604が破損したことを示す警告信号を送信する。
【0036】
(6)櫛歯306が破損しているか否かの判断方法
次に、制御装置50が、コム60、又は、コム62の櫛歯604が破損しているか否かの判断方法について図7のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
ステップS1において、操作盤52、又は、操作盤56の操作によってエスカレータ10の運転を開始し、ステップS2に進む。
【0038】
ステップS2において、制御装置50は、踏段30の走行速度が定格速度V0に到達すると通常運転を開始する。そしてステップS3に進む。
【0039】
ステップS3において、検証踏段300が第1スイッチ100を動作させた場合にはステップS5に進み(YESの場合)、動作させていない場合にはステップS4に進む(NOの場合)。
【0040】
ステップS4において、検証踏段300が第2スイッチ102を動作させた場合にはステップS5に進み(YESの場合)、動作させていない場合にはステップS3に戻る(NOの場合)。
【0041】
ステップS5において、制御回路501は、第1動作時間T1、又は、第2動作時間T2を計測し始める。そしてステップS6に進む。
【0042】
ステップS6において、検証踏段300が第1スイッチ100を動作させた場合にはステップS8に進み(YESの場合)、動作させていない場合にはステップS7に進む(NOの場合)。
【0043】
ステップS7において、検証踏段300が第2スイッチ102を動作させた場合にはステップS8に進み(YESの場合)、動作させていない場合にはステップS6に戻る(NOの場合)。
【0044】
ステップS8において、制御回路501は、第1動作時間T1、又は、第2動作時間T2の計時を終了し、計測した時間を基に撮影する間隔時間を演算する。なお、図7中では、間隔時間を簡単に「間隔」と記載する。第2動作時間T2においても同じように間隔時間を演算する。そしてステップS9に進む。
【0045】
ステップS9において、制御回路501は、演算した間隔時間で上カメラ104と下カメラ106で検証画像を撮影する。この検証画像は、図4に示すように、隣接する踏段30の隙間310を下から撮影したものであり、櫛歯604がその隙間310を貫通して遮っている。そのため、この隙間310を撮影すると、櫛歯604が正常な場合には全ての隙間310を等間隔に櫛歯604が貫通し、一本でも櫛歯604が折れている場合にはその部分だけ等間隔にならず、外からの光によって白色領域となる。この場合に、乗客がこの櫛歯604を踏んでいても、横からの外光によって明るく撮影できる。そしてステップS10に進む。なお、図4において隙間310が明確に判るように実際の寸法よりも大きく記載している。実際の隙間310の大きさとしては、例えば約2mmである。
【0046】
ステップS10において、画像解析回路502が、図4に示す検証画像から図5に示す検証2値化画像を生成し、基準2値化画像の白色領域の面積比率を比較する。そしてステップS11に進む。
【0047】
ステップS11において、画像解析回路502が、白色領域が閾値以上であれば櫛歯604が折れているとして破損信号を制御回路501に出力し、ステップS12に進み(YESの場合)、閾値以下であれば櫛歯304が正常であるとしてステップS10に戻る(NOの場合)。
【0048】
ステップS12において、制御回路501は、破損信号が入力したため、櫛歯604が破損していると判断して、ステップS13に進む。
【0049】
ステップS13において、制御回路501は、通信回路503を介して櫛歯604が破損したことを示す警告信号を出力する。そして必要な場合には、エスカレータ10の通常運転を停止する。
【0050】
(7)効果
本実施形態によれば、図4図5に示すように、隣接する踏段30の隙間310を通して櫛歯604の破損状態を判断するため、その破損状態を確実に判断できる。
【0051】
また、機械室14、16内部は暗く、その内部に上カメラ104と106が設けられ、その位置から上方にある隙間310を撮影するため、外からの光が隙間310を通じて入射するため、隙間310の形状を確実に撮影できる。
【0052】
また、検証画像を2値化して基準2値化画像と比較するため、より確実に比較を行うことができる。
【0053】
また、検証踏段300が第1スイッチ100と第2スイッチ102を動作させた時間に基づいて、隣接する踏段30の隙間310の位置を判断するため正確な間隔時間で撮影できる。すなわち、踏段30、又は、検証踏段300の現実の走行速度にあわせて間隔時間を演算するため、撮影位置がずれたりしない。
【0054】
また、隣接する踏段30の全ての隙間310において櫛歯604が破損したか否かを判断するため、櫛歯604がいつ折れても直ぐにその破損を検出し、外部に通報できる。
【0055】
(8)変更例
上記実施形態では、検証画像を2値化したが、2値化せずそのままの画像を用いて基準画像と比較してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では外向からの光のみによって検証画像を撮影したが、これに限らずコム60、62の両側にあるスカートガード44にライトを設けることにより櫛歯604の部分を明るくしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では検証2値化画像と基準2値化画像の白色領域で比較したが、これに代えて黒色領域で比較してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0059】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10・・・エスカレータ、14・・・機械室、16・・・機械室、20・・・モータ、30・・・踏段、32・・・乗降板、34・・・乗降板、50・・・制御装置、100・・・第1スイッチ、102・・・第2スイッチ、104・・・上カメラ、106・・・下カメラ、501・・・制御回路、502・・・画像解析回路、503・・・通信回路、300・・・検証踏段、310・・・隙間、312・・・突部、604・・・櫛歯、606・・・櫛部
【要約】
【課題】コムの櫛歯が破損した場合に、直ちにその破損を判断することができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】コム60の下方に配され、隣接する踏段30の隙間310から櫛部606を撮影して検証画像を取得する上カメラ104と、検証画像から櫛歯604の破損状態を判断する制御回路501とを有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7