特許第6222889号(P6222889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧

特許6222889シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222889
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20171023BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20171023BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20171023BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20171023BHJP
   A61K 8/58 20060101ALI20171023BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20171023BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   B01J13/00
   A61K8/06
   A61K8/37
   A61K8/41
   A61K8/58
   A61K8/894
   A61Q17/04
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-526960(P2011-526960)
(86)(22)【出願日】2009年9月10日
(65)【公表番号】特表2012-501849(P2012-501849A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】US2009056466
(87)【国際公開番号】WO2010030748
(87)【国際公開日】20100318
【審査請求日】2012年8月6日
【審判番号】不服2015-20105(P2015-20105/J1)
【審判請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】61/096,397
(32)【優先日】2008年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ コーニング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ファブリッツィオ エス ガレオーネ
(72)【発明者】
【氏名】レオン アンドレ マルトー
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ツィンマーマン
【合議体】
【審判長】 川端 修
【審判官】 佐々木 秀次
【審判官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−500590号公報
【文献】 国際公開第2008/002637号
【文献】 特表2005−526025号公報
【文献】 特表2007−533747号公報
【文献】 特表2007−533830号公報
【文献】 国際公開第2007/000316号
【文献】 特開2000−313808号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも30%のマイクロカプセルの体積分率を有し、50℃で少なくとも1か月間ゲルを含まないシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液であって、
該シリケートシェルマイクロカプセルが、
I)油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、
II)テトラアルコキシシランを含む水反応性ケイ素化合物を該水中油型エマルジョンに添加し、
III)該エマルジョンの油/水界面でテトラアルコキシシランを重合させて油を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成することにより得られ、
コロイド状シリケート封鎖剤を含み、該コロイド状シリケート封鎖剤が塩化セトリモニウムプロピルトリメトキシシランである、シリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液。
【請求項2】
前記懸濁液が0.3質量パーセント未満の不揮発性固形分を有する請求項1に記載の水性懸濁液。
【請求項3】
前記懸濁液が0.3質量パーセント未満のコロイド状シリケート粒子を含有する請求項1に記載の水性懸濁液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2008年9月12日出願の米国特許出願第61/096397号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、50℃で少なくとも1か月間ゲルを含まないマイクロカプセルの少なくとも30%の体積分率を有するシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液、およびそれを得るための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリケートシェルおよび液体コアを有するマイクロカプセルの懸濁液は既知である。このタイプのコア−シェルマイクロカプセル懸濁液の代表例が、欧州特許第0934773号、同第0941761号、米国特許第6,303,149号、国際公開第03/066209号、および英国特許第2416524号に開示されている。
【0004】
現在の親油性液体コア/シリケートシェルマイクロカプセル懸濁液の重大な問題は、特定の条件下でのゲル化傾向である。例えば、ゲル化がマイクロカプセル径の増大によってまたは懸濁液中のマイクロカプセルの高い体積分率で起こることが多い。また、懸濁液の温度が上昇する場合、またはpHの変化とともにゲル化が起こり得る。しかしながら、ゲル化の原因は不明確であり、依然として優れた安定性を有するマイクロカプセルの懸濁液を提供する必要性がある。
【0005】
本発明者らは、かかるマイクロカプセルの懸濁液がゲル化し、限られた安定性を有するのは、懸濁液組成物中にコロイド状シリカの遊離ナノ粒子が存在するためであると考える。本発明者らは、これらコロイド状シリカ粒子が時間とともに、とくに高温および/または非中性pH条件で凝集してゲルを形成し得ると考える。従って、本発明者らは、懸濁液の連続相におけるコロイド状シリカの遊離ナノ粒子の濃度を低減または不活性化すれば、ゲル化を低減または解消することができることを見出した。よって、本発明は、優れた安定性を有するマイクロカプセル組成物の懸濁液に関する。また、本発明の方法は、高いマイクロカプセルの体積分率を有する優れた安定性のマイクロカプセル懸濁液を提供する。本発明の方法はまた、優れた懸濁液の熱およびpH安定性を有するマイクロカプセル懸濁液を提供する。本発明の方法はまたさらに、親油性液体コア/シリケートシェルマイクロカプセルのシェル厚をゲル化なしに大幅に増大させたことを特徴とする組成物を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、50℃で少なくとも1か月間ゲルを含まないマイクロカプセルの少なくとも30%の体積分率を有するシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液に関する。
【0007】
本発明はさらに、シリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の連続相の不揮発性固形分を0.3質量パーセント未満まで低減することを備えるシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の安定性を向上させる方法に関する。
【0008】
本発明はさらに、シリケートシェルマイクロカプセルおよびコロイド状シリケート粒子の水性懸濁液にコロイド状シリケート封鎖剤を添加することを備えるシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の安定性を向上させる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
シリケートシェルマイクロカプセルは、通常テトラアルコキシシランのようなシリケート前駆体の重合を含む水性懸濁法を用いて生成される。生成したシリケートシェルマイクロカプセル懸濁液組成物は、とくに温度およびpHの変化に関して限られた貯蔵安定性を有することが多い。
【0010】
いずれの理論に制約されることも望まないが、本発明者らは、シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液におけるコロイド状シリケート粒子の存在がこれら懸濁液の貯蔵不安定性の主な原因であり得ると考える。かかるコロイドシリケート粒子は、シリケートシェルマイクロカプセルを生成するテトラアルコキシシラン重合反応における副生物とみなすことができる。本発明者らは、懸濁液中のコロイド状シリケート粒子の量を低減するか、あるいはまた封鎖剤の添加により非反応性化する場合、シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液の貯蔵安定性が改善されることを見出した。
【0011】
本発明は、優れた貯蔵安定性を有するシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液を提供する。本発明のシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液は、少なくとも30%の体積分率を有し、50℃で少なくとも1か月間ゲルを含まない。
【0012】
ここで用いる「体積分率」とは、懸濁液におけるシリケートシェルマイクロカプセルの体積/体積基準の量を指す。体積分率は、各成分の用いる質量をその密度で割ることにより決定されるような懸濁液に添加した各成分が占める体積を合計することにより計算することができる。シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液は、マイクロカプセルの懸濁液中での少なくとも30%、あるいは40%、あるいはまた50%の体積分率を有する。
【0013】
ここで用いる「ゲルを含まない」とは、懸濁液の粘度が時間とともに大幅に上昇しないことを意味する。これは、初期対経年懸濁液の簡単な目視比較により評価することができる。一般に、懸濁液は水性ベースなので比較的低い粘度を有する。高温での経時変化により懸濁液がゲルのように作用する場合、これは安定性の欠如を示す。本発明においては、懸濁液が室温で流動しなければ、これをゲル化したとみなす。
【0014】
本発明者らは、コロイド状シリケート粒子がシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の連続相の不揮発分の大部分を占め得ると考える。本発明者らは、懸濁液の連続相の不揮発分の低減が貯蔵安定性を向上させることを見出した。ここで用いる「懸濁液」は、固体シリケートシェルマイクロカプセルの分散相を水性連続相に含有すると定義される。一般に、固体シリケートシェルマイクロカプセル径は1〜5マイクロメーターの範囲である。シリケートシェルマイクロカプセルに含有されない他の成分および物質は、懸濁液の「連続相」の一部であるとみなされる。よって、一つの実施形態において、本発明の方法は、シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液の連続相の不揮発性固形分を0.3質量パーセント未満、あるいは0.2質量パーセント未満、あるいはまた0.1質量パーセント未満まで低減することを含む。ここで用いる「不揮発性固形分」とは、懸濁液の連続相(マイクロカプセルから分離されたように)に組成物中の水および他の揮発性物質を蒸発させ得る条件を施した後に残る固体物質の質量を指す。本発明においては、かかる条件を、一定の質量が達成される(一定の質量を2時間1%未満の質量変化として定義する)まで2.5gの組成物を170℃のオーブン中に置いた開口容器内に入れることとして定義される。
【0015】
別の実施形態では、コロイド状シリケート粒子の少なくとも50%、あるいは70%、あるいはまた90%をシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の連続相から除去することにより懸濁液の連続相の不揮発性固形分を低減する。
【0016】
コロイド状シリケート粒子は、シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液から任意の技術または方法により除去することができる。コロイド状シリケート粒子は、平均400ナノメーター未満の粒径を有する「ナノ粒子」とみなすことができる。一つの実施形態では、コロイド状シリケート粒子を限外濾過によりシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の連続相から除去する。ここで用いる「限外濾過」とは、コロイド状シリケート粒子を含有するシリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液に水およびコロイド状シリケート粒子を適当な膜に強制的に通す液圧を加える分離方法を指す。こうして、コロイド状シリケート粒子を限外濾過処理中にシリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液から除去し、該限外濾過処理における透過物として回収する。一般に、膜は500nm、あるいは450nm、あるいはまた400nmの孔径を有する。適当な膜の代表例としては、Millipore(米国マサチューセッツ州ビルリカ)から市販されているものが挙げられる。一般に、限外濾過処理中少なくとも1.4MPa(200psi)または1.2MPaの液圧を懸濁液に加える。代表的な限外濾過実験装置としてはMillipore(米国マサチューセッツ州ビルリカ)より提供されるものがある。代表的な限外濾過製造装置としてはTami Industries(フランス、ニヨン)またはPall Corporation(ニューヨーク州11548、イーストヒルズ)より提供されるものがある。
【0017】
さらなる実施形態では、限外濾過がシリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液への水の並行添加で起きる。ここで用いる「水の並行添加」とは、限外濾過処理中に十分な量の水をシリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液に同時に添加して、限外濾過処理の透過物として除去される量の水を置き換えることを意味する。一般に、懸濁液への水の添加量は、限外濾過処理で透過物として除去される水の90〜110%の範囲とし得る。
【0018】
コロイド状シリカ粒子を除去するための代替方法として、本発明者らは、シリカ粒子の凝固および/または反応を防止することによりシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の安定性を向上することができると考える。よって、本発明はまた、コロイド状シリケート封鎖剤をシリケートシェルマイクロカプセルおよびコロイド状シリケート粒子の水性懸濁液に添加することを備えたシリケートシェルマイクロカプセルの水性懸濁液の安定性を改善する方法を提供する。ここで用いる「コロイド状シリケート封鎖剤」とは、コロイドシリカ粒子も含有するシリケートシェルマイクロカプセル懸濁液に添加すると、それらの反応または凝固を防止するような方法でコロイド状シリケート粒子と相互作用する任意の化合物または物質を指す。
【0019】
コロイド状シリケート封鎖剤は有機官能性シランとすることができる。一つの実施形態において、有機官能性シランは第四級官能性トリアルコキシシランである。適当な第四級官能性トリアルコキシシランの代表的な限定されない例としては、Dow Corning社のQ9−6346(登録商標)、すなわち塩化セトリモニウムプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0020】
コロイド状シリケート封鎖剤はシリコーンポリエーテルであってもよい。シリコーンポリエーテルは、次式
【化1】
により表される構造を有するものから選択することができる。
【0021】
これらの構造において、R1はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルのような1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し;R2は式−(CHO(CO)(CO)R3を有するポリエーテル基を表し;xは10〜1,000、あるいは20〜200、あるいはまた20〜100の値を有し;yは2〜500、あるいは2〜50、あるいはまた2〜10の値を有し;zは2〜500、あるいは2〜50、あるいはまた2〜10の値を有し;aは3〜6の値を有し;bは4〜30の値を有し;cは0〜30の値を有し;R3は水素、メチル基、またはアセチルのようなアシル基である。通常、R1はメチルである。ケイ素ポリエーテルは市販されている。適当なシリコーンポリエーテルの代表的な限定されない例としては、Dow Corning(登録商標)190、193、および2−5657が挙げられる。
【0022】
シリケートシェルマイクロカプセルの懸濁液は、当業界で既知のあらゆる方法により調製することができる。一般に、シリケートシェルマイクロカプセルを調製するのに通常用いる2つの方法または技術がある。第1の技術は、まずシリケート前駆体を油相と混合した後のシリケート前駆体の現場重合(ゾルゲル法と称されることもある)を含む。代表的な限定されない例としては、米国特許第6159453号、同第6238650号、同第6303149号および国際公開第2005/009604号に教示されるものが挙げられる。
【0023】
第2の技術は、シリケート前駆体の重合が乳化重合方法によって起こる実験施設内のプロセスを含む。こうした技術の代表的な限定されない例については、国際公開第03/066209号に教示されている。
【0024】
一つの実施形態において、シリケートシェルマイクロカプセルを、
I)油相およびカチオン界面活性剤の水溶液を混合して水中油型エマルジョンを形成し、
II)テトラアルコキシシランを含む水反応性ケイ素化合物を水中油型エマルジョンに添加し、
III)テトラアルコキシシランをエマルジョンの油/水界面で重合して油を含有するコアおよびシリケートシェルを有するマイクロカプセルを形成する
ことにより調製する。
【0025】
ここで用いる「油相」は、疎水性である任意の化合物、または化合物の混合物を包含する。一般に、油相は水中油型エマルジョンを形成する際の液体である。油相は、有機のケイ素またはフルオロカーボン系油のいずれか単独または組み合わせで含有することができる。油相はまた、固体疎水性化合物を溶解してエマルジョンの形成中に液状油相を形成する目的のために添加し得るあらゆる溶剤または希釈剤を含有することもできる。
【0026】
一つの実施形態において、油相は日焼け防止剤を含有する。この実施形態に用いる日焼け防止剤は、液体日焼け防止剤およびそのブレンドとすることができる。本発明の同一実施形態では、固体の有機日焼け防止剤をカプセル化の前に良好な溶剤に溶解することができる。本発明の日焼け防止剤は、例えばメトキシケイ皮酸DEA、ジエチルヘキシルブタミドトリアジン、ケイ皮酸ジイソプロピルメチル、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオン、ドロメトリゾールトリシロキサン、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−4,3−ベンジリデンカンファー、3−ベンジリデンカンファースルホン酸、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、カンファーベンズアルコニウムメトサルフェート、ジイソプロピルケイ皮酸エチル、プロピオン酸2−エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジン、エチルヘキシルジメチルPABA、エチルヘキシルサリシレート、エチルヘキシルトリアゾン、エチルPABA、ホモサレート、p−メトキシケイ皮酸イソアミル、アントラニル酸メンチル、4−メチルベンジリデンカンファー、メチレン−ビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、オクトクリレン、PABA、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、ポリケイ素15、スルホン酸フェニルベンズイミダゾールカリウム、スルホン酸フェニルベンズイミダゾールナトリウム、TEA−サリシレート、テレフタリデンジカンファースルホン酸、2,2−(1,4−フェニレン)ビス−1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステルであってもよいが、この紫外線吸収剤のリストに限定されない。
【0027】
本方法の油相に用い得る活性物質の他の例としては、耐候性および耐退色性を向上させるための被覆剤、塗料、プラスチック材料、シーラントまたは織物仕上げ剤に用いる紫外線吸収剤が挙げられる。
【0028】
油相は、他の油相成分で実質的に可溶性で、逆に水にほぼ不溶なシリコーン、有機物またはパーソナルケア活性物質のような他の成分を含有することができる。よって、他の典型的なエモリエント成分としては、シリコーンエラストマーおよび樹脂を含む揮発性シロキサン、ポリジメチルシロキサン液、高分子量(すなわちM>1000)シロキサンのようなシリコーン;炭化水素油、ワックス、エモリエント剤または香料組成物のような有機化合物;ならびにビタミンのようなパーソナルケア有機活性物質を挙げることができる。
【0029】
油相をカチオン界面活性剤の水溶液と混合して、水中油型エマルジョンを形成する。
【0030】
本発明に有用なカチオン界面活性剤は、水酸化オクチルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウム、水酸化へキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化デシルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化ジドデシルジメチルアンモニウム、水酸化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、水酸化タロートリメチルアンモニウムおよび水酸化ココトリメチルアンモニウムのような水酸化第四級アンモニウム並びにこれら物質の対応する塩、脂肪族アミンおよび脂肪酸アミドならびにそれらの誘導体、塩基性ピリジニウム化合物、ベンズイミダゾリンおよびポリプロパノールポリエタノールアミンの第四級アンモニウム塩基であってもよいが、このカチオン界面活性剤のリストに限定されない。好適なカチオン界面活性剤は塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0031】
本発明においては、カチオン界面活性剤をコカミドプロピルベタイン、ヒドロキシ硫酸コカミドプロピル、ココベタイン、ココアミド酢酸ナトリウム、ココジメチルベタイン、N−ココ−3−アミノ酪酸およびイミダゾリニウムカルボキシル化合物のような両性界面活性剤から選択することができるが、この両性界面活性剤のリストに限定されない。
【0032】
上記界面活性剤は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。カチオンまたは両性界面活性剤を水に溶解し、生成した水溶液を工程Iの水中油型エマルジョンの水相または連続相中の成分として用いる。
【0033】
いずれの理論に制約されることも望まないが、本発明者らは、カチオンまたは両性界面活性剤の使用が日焼け防止剤組成物の乳化液滴の界面でのテトラアルコキシシランの縮合および重合を促進し、非分散型マイクロカプセルをもたらすと考える。テトラアルコキシシランは、エマルジョン中での反応により加水分解し、縮合する。アニオン荷電加水分解生成物は、界面でカチオンまたは両性界面活性剤に引き付けられ、ここでケイ素系ポリマーシェルを形成する。
【0034】
水中油型エマルジョン形成中のカチオン界面活性剤の濃度は、用いる油相濃度の0.1質量%〜0.3質量%とすべきである。本発明者らは、油相の乳化およびアルコキシシランとの反応中に低レベルのカチオンまたは両性界面活性剤の使用がマイクロカプセルから油相が分散または浸出するのにより一層耐えるマイクロカプセルをもたらすことを見出した。
【0035】
水中油型エマルジョンの形成中に補助界面活性剤、とくに非イオン性界面活性剤を添加することができる。適当な非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール長鎖(12〜14C)アルキルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、エチレングリコールプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコールおよびアルキルポリサッカリド、例えば米国特許第5,035,832号に記載されるような構造R−O−(RO)−(G)を有する物質があり、ここでRは直鎖または分岐鎖アルキル基、直鎖または分岐鎖アルケニル基またはアルキルフェニル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Gは還元糖を表し、mは0または正の整数を表し、nは正の整数を表し、この非イオン性界面活性剤のリストに限定されない。
【0036】
カチオンまたは両性界面活性剤の水溶液は、水溶性であるという条件で追加/任意の成分を含有することができる。例えば、アルコールまたはラクタムのような水混和性有機溶剤を添加することができる。さらに、パーソナルケア製剤に通常用いる他の水溶性成分を水相に添加することができる。こうした成分としては、追加の界面活性剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、ならびに水溶性活性物質および香料が挙げられる。
【0037】
油相およびカチオンまたは両性界面活性剤の水溶液を一緒に混合して水中油型エマルジョンを形成する。混合およびエマルジョン形成は、エマルジョン業界で既知のあらゆる技術を用いて行うことができる。一般に、油相およびカチオンまたは両性界面活性剤の水溶液を単純な撹拌技術を用いて混合してエマルジョンを形成する。次に、水中油型エマルジョンの粒径をテトラアルコキシシランの添加前に当業界で既知の任意の乳化装置により低減することができる。本発明に有用な乳化装置は、ホモジナイザー、ソノレーター、ローターステータータービン、コロイドミル、マイクロ流動化装置、ブレード、へリックスおよびこれらの組み合わせとすることができるが、この乳化装置のリストに限定されない。このさらなる処理工程は、出発カチオン水中油型エマルジョンの粒径を0.2〜500マイクロメーターの範囲の値まで低減し、代表的な粒径は0.5マイクロメーター〜100マイクロメーターの範囲である。
【0038】
エマルジョン中の油相の水相に対する質量比は、一般に40:1〜1:50とすることができるが、水相の割合が高くなると、特にマイクロカプセルの懸濁液を形成する際に経済的に不利になる。通常、油相の水相に対する質量比は2:1〜1:3である。油相組成物が著しく粘稠な場合、位相反転処理を用いて、油相を界面活性剤および少量、例えば油相に対し2.5〜10質量%の水と混合し、せん断されると水中油型エマルジョンに反転する油中水型エマルジョンを形成することができる。次いで、追加の水を添加して、エマルジョンを所要の濃度まで希釈することができる。
【0039】
本発明方法の第2および第3工程は、テトラアルコキシシランを含む水反応性ケイ素化合物を水中油型エマルジョンに添加し、テトラアルコキシシランをエマルジョンの油/水界面で重合することを含む。いずれの理論に制約されることも望まないが、本発明者らは、第3工程が「実験施設内乳化重合」を行うもので、これによりテトラアルコキシシラン前駆体が油/水界面で加水分解および縮合し、前駆体の相間移動によるコア−シェルマイクロカプセル形成をもたらすと考える。
【0040】
テトラエトキシシラン(TEOS)のようなテトラアルコキシシランをモノマー形態でまたは液状部分縮合物として用いることができる。テトラアルコキシシランは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のSi−OH基、すなわちケイ素に結合した加水分解性基を有する一つ以上の他の水反応性ケイ素化合物、例えばメチルトリメトキシシランのようなアルキルトリアルコキシシランまたはアルキルトリアルコキシシランの液体縮合物と併せて用いることができる。加水分解性基は、例えばケイ素に結合したアルコキシまたはアシルオキシ基とすることができる。水反応性ケイ素化合物は、例えば75〜100質量%テトラアルコキシシランおよび0〜25質量%トリアルコキシシランからなることができる。テトラアルコキシシランまたは他のシラン中のアルキルおよびアルコキシ基は、好適には1〜4個の炭素原子、もっとも好適には1〜2個の炭素原子を有する。テトラアルコキシシラン、並びにもし使用する場合の他の水反応性ケイ素化合物は加水分解および縮合して、網状ポリマー、すなわち親油性活性物質組成物の乳化液滴の周りにケイ素系材料の三次元網目を形成する。水反応性ケイ素化合物は、好適には少なくとも75%、もっとも好適には90〜100%テトラアルコキシシランからなる。本発明者らは、テトラアルコキシシランがほぼSiO4/2単位からなる三次元網目を形成する不透過性マイクロカプセルを効果的に形成することを見出した。
【0041】
テトラアルコキシシラン、並びにもし使用する場合の他の水反応性ケイ素化合物は、不希釈液体としてまたは有機溶剤もしくはエマルジョン形態の溶液として活性物質組成物のエマルジョンに添加することができる。テトラアルコキシシランおよび水中油型エマルジョンを添加およびその後の重合中に混合して、乳化液滴の表面上にケイ素系ポリマーシェルを形成する。混合は通常撹拌技術で行う。普通の撹拌技術が、通常テトラアルコキシシランを油水界面で重合および縮合させながら出発水中油型エマルジョンの粒径を維持するのに十分である。
【0042】
工程IIで添加するテトラアルコキシシランの量は、一般にエマルジョン中に存在する油相の質量に対し6/1〜1/13、あるいは1.2/1〜1/7.3、あるいはまた1.3〜1/6.1の範囲である。
【0043】
油/水界面でのテトラアルコキシシランの重合は、通常酸性、中性または塩基性pHで行うことができる縮合反応である。縮合反応は、一般に大気温度および圧力で行われるが、高温、例えば最高95℃、および高圧または低圧、例えば真空下で行って、縮合反応中に生成する揮発性アルコールをストリッピングすることができる。
【0044】
テトラアルコキシシランの重合を促進するのに既知の任意の触媒を工程IIIに添加して、マイクロカプセルのシェルを形成することができる。触媒は、好適には油溶性有機金属化合物、例えば有機スズ化合物、とくにジオルガノスズジエステルのようなオルガノスズ化合物、例えばジメチルスズジ(ネオデカノエート)、ジブチルスズジラウレートもしくはジブチルスズジアセテート、あるいは第一スズオクトエートのようなスズカルボキシレート、またはテトラブチルチタネートのような有機チタニウム化合物である。オルガノスズ触媒は、例えば水反応性ケイ素化合物に対し0.05〜2質量%で用いることができる。オルガノスズ触媒は、中性pHで効果的な触媒作用の利点を有する。触媒は、乳化油相液滴の表面での水反応性ケイ素化合物の縮合を促進するので、通常乳化する前に油相成分と混合する。或いはまた、水反応性ケイ素化合物の添加前に、若しくはテトラアルコキシシランと同時に、またはテトラアルコキシシランの添加後に、触媒をエマルジョンに添加して、形成したケイ素系ポリマーのシェルを硬化し、より不透過性にすることができる。しかし、カプセル化を触媒なしに達成することができる。触媒は、用いる場合、未希釈のままか、若しくは炭化水素、アルコールまたはケトンのような有機溶剤の溶液として、またはエマルジョンまたは懸濁液のような多相系として添加することができる。
【0045】
一つの実施形態では、工程IIIの重合反応を、少なくとも18ナノメーター厚であるマイクロカプセルのシェルを形成する、あるいはシェルが18〜150ナノメーター、あるいはまた18〜100ナノメーターの厚さを有するように進めることが可能である。
【0046】
シェル厚は、懸濁液中で生成したマイクロカプセルの粒径(PS)ならびにそれらを調製する方法で用いる油相およびテトラアルコキシシランの量から下記の式に従って割決定することができる。
シェル厚(nm)=[(PS/2)−[(PS/2)(総重量/100)1/31000
式中のPSはマイクロメーターで表す粒径(Dv0.5)、
総重量=油相体積100/(油相体積+シェル体積)
油相体積=油相質量/油相密度
シェル体積=シェル質量/シェル密度
【0047】
この式は、平均粒径(Dv0.5)により決定されるような平均直径を有する球形状マイクロカプセルに基づく。よって、シェル厚はマイクロカプセルの半径とマイクロカプセル中のコア物質の半径との差である。
シェル厚=rマイクロカプセル−rコア
ここでrマイクロカプセル=(PS)/2および
コア=(PS/2)(総重量/100)1/3
【0048】
総重量は、エマルジョン中に存在する油相の量により決定されるように、コア物質により占められるマイクロカプセルの割合を表す。よって、総重量は関係式:
総重量=油相体積100/(油相体積+シェル体積)
により計算される。
【0049】
油相体積=油相質量/油相密度である。この式における油相の質量は、マイクロカプセルを調製する方法(工程Iのように)に用いる量と同じである。本発明の一実施形態において、油相は1.011g/mLの密度を有するメトキシケイ皮酸エチルヘキシル(EHMC)である。
【0050】
シェルの体積=シェルの質量/シリカの密度である。シェルを構成するケイ素系ポリマーは、実験式SiOの平均化学組成を有すると予測される。従って、シェルの密度はシリカ(SiO)の密度に近い2g/mLであると予測される。シェルの質量は該方法(工程IIのように)で添加したテトラアルコキシシランの量から計算される。さらに具体的には、シェルの質量は、該方法で用いるテトラアルコキシシランのタイプおよび量を考慮して実験式SiOのケイ素系ポリマーの化学量論的期待収率に基づく。一つの実施形態において、テトラアルコキシシランは0.934g/mLの密度を有するテトラエトキシシラン(TEOS)である。この実施形態では、1gのTEOSの推定完全加水分解および縮合は、0.288gのSiOポリマー(シリカ)を生成する。
【実施例】
【0051】
これらの実施例は、本発明を当業者に例示することを意図するものであり、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。すべての測定および実験は、とくに指示のない限り23℃で行った。すべての%は、とくに指定のない限り質量パーセントを指す。
【0052】
(試験方法)
体積分率は、添加する各成分の体積を合計することにより決定した。体積は質量を密度で割ることにより計算した。
【0053】
固形分は、懸濁液の連続相2.5gを170℃のオーブン中に置き、一定の質量が得られるまで試料を観察することにより決定した。
【0054】
(実施例1:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))350gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤1.4gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.9gを含有する水540.9g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。12%のテトラエトキシシラン(TEOS)をエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.23マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は2.71%だった。マイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0055】
(実施例2)
実施例1と同じマイクロカプセル懸濁液を調製した。しかし、懸濁液を水の並行添加で限外濾過した。生成した懸濁液の固形分は0.29%まで低減した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0056】
(実施例3:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))350gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤1.4gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.9gを含有する水540.9g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。12%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.23マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は2.71%だった。水を懸濁液に並行添加することなくその後に行った懸濁液の濾過により、54.8%のマイクロカプセル体積分率を得た。この著しく濃縮した懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0057】
(実施例4)
実施例3と同じマイクロカプセル懸濁液を調製した。しかし、懸濁液を水の並行添加で濾過した。生成した懸濁液の固形分を0.29%まで低減した。次に、懸濁液を限外濾過により濃縮して、54.8%のマイクロカプセル体積分率を得た。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく耐える。
【0058】
(実施例5:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))250gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.7gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.46gを含有する水172.5g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。17.14%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.35マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率は55%である。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は3.56%だった。この著しく濃縮した懸濁液は50℃で1日後にゲル化する。
【0059】
(実施例6)
実施例5に類似しているが、3.43マイクロメーター(μm)の体積平均粒径(Dv0.5)および55%の体積分率を有するマイクロカプセル懸濁液を調製した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の連続相の初期固形分は3.56%だった。懸濁液への水の並行添加でその後に行った懸濁液の限外濾過は、連続相の固形分を0.11%まで低減した。濾過処理中に高濃度懸濁液のゲル化は観察されなかった。生成したマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0060】
(実施例7:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))250gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.7gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.46gを含有する水172.5g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。17.14%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.43マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率は52%だった。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は3.92%だった。水を懸濁液へ並行添加することなくNaOH0.1MによるpH8までの懸濁液の中和は、濃縮懸濁液の急速なゲル化をもたらした。
【0061】
(実施例8)
実施例7と同じマイクロカプセル懸濁液を調製した。しかし、懸濁液を水の並行添加で限外濾過した。生成した懸濁液の固形分を0.15%まで低減した。懸濁液マイクロカプセル体積分率は52%だった。水を懸濁液に並行添加することなくNaOH0.1MによるpH8までの懸濁液の中和は、濃縮懸濁液のゲル化をもたらさなかった。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0062】
(実施例9:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))175gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.7gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.46gを含有する水270.5g中で乳化した。粗エマルジョンを750バールで作動する「APV Model 1000」ホモジナイザーに1回通した。35%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)1.97マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率は36%だった。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は6.09%だった。水を懸濁液に並行添加することなくNaOH0.1MによるpH8までの懸濁液の中和は、濃縮懸濁液の急速なゲル化をもたらす。懸濁液は50℃で1日後にゲル化する。
【0063】
(実施例10)
実施例9と同じマイクロカプセル懸濁液を調製した。しかし、懸濁液を水の並行添加で限外濾過した。生成した懸濁液の固形分を0.08%まで低減した。計算したシェル厚は31nmだった。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0064】
(実施例11:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))242.04gをTEOS73.8gと混合した。有機相を塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)0.62gを有する水溶液155.45g中で、ミキサーIKA Ultra−Turax T 25 Basicを9600rpmで用いて高せん断力下で5分間乳化した。このエマルジョンを、2.5のpHを有する水溶液269.66gを含有する反応器に注いだ。混合物を400rpmでエマルジョンが完全に混合されるまで撹拌した後、60rpmまで低下させて24時間撹拌した。体積平均粒径(Dv0.5)=3.6μmを有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率=35%だった。親油性液体コアシェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は3.07%だった。このマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0065】
(実施例12:比較例)
実施例11の懸濁液に水の並行添加なしに限外濾過を施し、懸濁液の体積分率を55%まで増加させた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0066】
(実施例13)
実施例11の懸濁液に、水の並行添加で限外濾過を施し、連続相の固形分を0.03%まで減少させた。マイクロカプセル懸濁液は50℃で6日間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0067】
(実施例14:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))242.04gをTEOS73.8gと混合した。有機相を塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)0.62gを有する水溶液155.45g中で、ミキサーIKA Ultra−Turax T 25 Basicを9600rpmで用いて高せん断力下で5分間乳化した。このエマルジョンを、2.5のpHを有する水溶液269.66gを含有する反応器に注いだ。混合物を400rpmでエマルジョンが完全に混合されるまで撹拌した後、60rpmまで低下させて24時間撹拌した。体積平均粒径(Dv0.5)=3.6μmを有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率=35%だった。親油性液体コアシェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は3.07%だった。水を懸濁液に並行添加してその後に行った懸濁液の濾過は、連続相の固形分を0.03%まで低減した。その後、この懸濁液を水の並行添加なしに濾過して固形分55%まで濃縮した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0068】
(実施例15:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))250gを、TEOS63.19gと混合した。有機相を塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)0.45gを有する水溶液63.1g中で、ミキサーIKA Ultra−Turax T 25 Basicを9600rpmで用いて高せん断力下で5分間乳化した。このエマルジョンを、2.5のpHを有する水溶液109.45gを含有する反応器に注いだ。混合物を400rpmでエマルジョンが完全に混合されるまで撹拌した後、60rpmまで低下させて24時間撹拌した。体積平均粒径(Dv0.5)=4.2μmを有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。懸濁液マイクロカプセル体積分率=50%だった。親油性液体コアシェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の初期固形分は5.41%だった。このマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0069】
(実施例16:比較例)
実施例15のマイクロカプセル懸濁液を、水酸化ナトリウム(0.1M)を添加することにより7.5〜8.5のpHまで中和した。懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0070】
(実施例17)
実施例15の懸濁液に水の並行添加で限外濾過を施し、連続相の固形分を0.16%まで低減した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で6日間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0071】
(実施例18)
実施例15の懸濁液に水の並行添加で限外濾過を施し、連続相の固形分を0.16%まで低減した。懸濁液を、水酸化ナトリウム(0.1M)を添加することにより7.5〜8.5のpHまで中和した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で6日間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0072】
(実施例19:比較例)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))350.0gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤1.3gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤3.2gを含有する水540.9g中で乳化した。粗エマルジョンを100バールで作動する「APV Model 2000」ホモジナイザーに1回通した。12%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)1.99マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は2.17%だった。マイクロカプセル懸濁液は50℃で1日後にゲル化した。
【0073】
【表1】
【0074】
(実施例20)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))175.0gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.65gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤1.6gを含有する水270.45g中で乳化した。粗エマルジョンを100バールで作動する「APV Model 2000」ホモジナイザーに1回通した。12%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)1.99マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は2.17%だった。シリコーンポリエーテル(Dow Corning(登録商標)2−5657)50%溶液の2%を懸濁液に後添加した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0075】
(実施例21)
シリコーンポリエーテル(Dow Corning(登録商標)2−5657)50%溶液の2%を実施例19の懸濁液に後添加した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく安定していた。
【0076】
(実施例22)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))175.0gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.65gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤1.6gを含有する水270.45g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 2000」ホモジナイザーに1回通した。12%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.01マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は3.04%だった。シリコーンポリエーテル(EO=12)50%溶液の2%を懸濁液に0.1%メトセルK100M(プロピレングリコール中の10%スラリー)とともに後添加した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく耐えるが、沈殿および分離不安定性を示した。
【0077】
(実施例23)
EHMC(Parsol MCX(登録商標))175.0gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤0.65gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤1.6gを含有する水270.45g中で乳化した。粗エマルジョンを50バールで作動する「APV Model 2000」ホモジナイザーに1回通した。12%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、マイクロカプセルの粗エマルジョンを形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.01マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。親油性液体コア(EHMC)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は3.04%だった。シリコーンポリエーテル(EO=12)50%溶液の2%を懸濁液に0.4%メトセルK100M(プロピレングリコール中の10%スラリー)とともに後添加した。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化または沈殿および分離不安定性なしに耐える。
【0078】
(実施例24)
δ−ダマスコン280gを、パレス−3非イオン性ポリエチレングリコールラウリルエーテル界面活性剤1.6gおよび塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)カチオン界面活性剤0.93gを含有する水515.02g中で乳化した。粗エマルジョンをIKA Ultra−Turax T 25 Basicにおいて24000rpmで180秒間混合した。10%のTEOSをエマルジョンに撹拌しながら添加して、その加水分解および縮合後マイクロカプセルの懸濁液を形成した。体積平均粒径(Dv0.5)3.2マイクロメーター(μm)を有するマイクロカプセルを懸濁液中で生成した。マイクロカプセル含量は懸濁液の34.8質量/質量%だった。親油性液体コア(D−ダマスコン)/シリケート(シリカ)シェルマイクロカプセル懸濁液の濾過により得られた連続相の固形分は2.7%だった。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で3日以下ゲル化することなく耐える。
【0079】
(実施例25)
n−オクチルトリエトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Z−6341)0.32gを実施例24で得た懸濁液19.7gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は4.6質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で7日以下ゲル化することなく耐える。
【0080】
(実施例26)
n−オクチルトリエトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Z−6341)1.26gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は18質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で14日以下ゲル化することなく耐える。
【0081】
(実施例27)
イソブチルトリエトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Z−6403)0.16gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は2.3質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で11日以下ゲル化することなく耐える。
【0082】
(実施例28)
イソブチルトリエトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Z−6403)0.32gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は4.6質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で5日以下ゲル化することなく耐える。
【0083】
(実施例29)
塩化セトリモニウムプロピルトリメトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Q9−6346)0.08gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は1.1質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1か月間を超えてゲル化することなく耐える。
【0084】
(実施例30)
塩化セトリモニウムプロピルトリメトキシシラン(Dow Corning(登録商標)Q9−6346)0.20gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は2.9質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で50日間を超えてゲル化することなく耐える。
【0085】
(実施例31)
塩化グリシジルトリメチルアンモニウムPDMS(Dow Corning(登録商標)7−6030)0.06gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は0.9質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で7日以下ゲル化することなく耐える。
【0086】
(実施例32)
塩化グリシジルトリメチルアンモニウムPDMS(Dow Corning(登録商標)7−6030)0.16gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は2.3質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で7日以下ゲル化することなく耐える。
【0087】
(実施例33)
トリヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネート(Dow Corning(登録商標)Q1−6083)0.06gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は0.9質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日以下ゲル化することなく耐える。
【0088】
(実施例34)
トリヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネート(Dow Corning(登録商標)Q1−6083)0.32gを実施例24で得た懸濁液20gに混合しながら添加した。シラン/マイクロカプセル比は4.6質量/質量%である。室温で1日置いた後、懸濁液を50℃のオーブン中に置いた。該当するマイクロカプセル懸濁液は50℃で1日以下ゲル化することなく耐える。
【0089】
【表2】