(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置の構成を説明する。
図1は、実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置を適用したハイブリッド車両Aの全体システムを示すシステム構成図である。
【0012】
ハイブリッド車両Aは、
図1に示すように、システムコントローラ(充電制御部:発電許容量設定部)1と、エンジンコントローラ2と、エンジン3と、発電機コントローラ4と、発電機5と、発電機インバータ6と、バッテリコントローラ7と、バッテリ8と、駆動モータコントローラ9と、駆動インバータ10と、駆動モータ(走行用電動機)11と、減速機12と、駆動輪13,13と、を備えている。
【0013】
このハイブリッド車両Aは、エンジン3を発電のみに使用し、駆動モータ11を駆動輪13,13の駆動と回生のみに使用するシリーズ方式(直列方式)のハイブリッド車両である。簡単に言うと、発電システムを搭載した電気自動車である。よって、走行モードとしては、エンジン3の駆動力を用いる走行モードが無く、電気自動車走行モード(=EV走行モード)のみであるが、エンジン3を駆動させて発電をしながら走行する場合を、本明細書ではHEV走行モードという。また、ハイブリッド車両Aは、いわゆるプラグイン方式を採用し、家庭用電源、専用電源などの外部電源から電力を供給しバッテリ8に充電できるようになっている。
【0014】
エンジン3は、発電のための駆動力を発電機5へ伝達する。
発電機5は、エンジン3の駆動力によって回転して発電する。つまり、主にエンジン3と発電機5から発電装置が構成される。また、発電機5は、モータとしての機能も併せて有し、エンジン始動時にクランキングさせることや、エンジン3を発電機5の駆動力を用いて力行回転させることで、電力を消費することができる。
【0015】
発電機インバータ6は、発電機5とバッテリ8と駆動インバータ10とに接続され、発電機5が発電する交流の電力を直流に変換、あるいは、逆変換を行う。
バッテリ8は、発電機5と駆動モータ11それぞれの回生電力の充電、駆動電力の放電を行う。
駆動インバータ10は、バッテリ8と発電機インバータ6から供給される直流の電力を、駆動モータ11の交流電流に変換、あるいは、逆変換を行う。
【0016】
駆動モータ11は、駆動力を発生し減速機12を通して駆動輪13,13に駆動力を伝達する。そして、車両の走行時、駆動輪13,13に連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させることでエネルギを回生する。
【0017】
エンジンコントローラ2は、システムコントローラ1から指令されるエンジントルク指令値を実現するために、エンジン3の回転数や温度などの信号に応じて、エンジン3のスロットル開度、点火時期、燃料噴射量を調整する。
【0018】
発電機コントローラ4は、システムコントローラ1から指令される発電機トルク指令値を実現するために、発電機の回転数や電圧などの状態に応じて、発電機インバータ6をスイッチング制御する。
【0019】
バッテリコントローラ7は、バッテリ8へ充放電される電流や電圧を元にバッテリ充電量(以下、バッテリSOCとする:SOCは「State Of Charge」の略)を計測し、システムコントローラ1へ出力する。また、バッテリ8の温度、バッテリ8の充電効率、バッテリSOCに応じた入力可能パワー、バッテリSOCに応じた出力可能パワーを演算し、システムコントローラ1へ出力する。
【0020】
駆動モータコントローラ9は、システムコントローラ1から指令される駆動トルクを実現するために、駆動モータ11の回転数や電圧などの状態に応じて、駆動インバータ10をスイッチング制御する。
【0021】
システムコントローラ1は、運転者のアクセルペダル操作量、車速、(路面)勾配などの車両状態、バッテリコントローラ7からのバッテリSOC、入力可能パワー、出力可能パワー、発電機5の発電電力などに応じて、駆動モータ11へ駆動トルクを指令する。また、システムコントローラ1は、バッテリ8へ充電し、駆動モータ11へ供給するための発電電力指令値を演算する。
【0022】
さらに、システムコントローラ1は、走行時に、バッテリSOCが所定の充電量であるバッテリSOC中央値(
図6のSOCM)となるように充電量制御を行う。この充電量制御については、特許文献1に記載された技術と同様であり、バッテリSOCが予め設定されたバッテリSOC中央値よりも低下すると、エンジン3を駆動させて発電を行うHEV走行モードとし、バッテリSOC中央値を超えると、駆動モータ11のみの駆動により走行するEV走行モードとする。
【0023】
この充電量制御の実行により、後述する
図6において距離L0の前後に示すように、バッテリSOCはバッテリSOC中央値の近傍に維持される。なお、このバッテリSOC中央値は、ある程度上下に幅を有した値であってよい。
【0024】
また、システムコントローラ1には、位置情報取得部としてのナビゲーションシステム20が接続され、現在地点や目的地などの位置情報が入力される。なお、ナビゲーションシステム20は、表示装置20aを備えており、システムコントローラ1は、表示装置20aを用いて画像表示や音声出力などにより、種々の情報や制御状態をユーザに知らせる。
【0025】
そして、システムコントローラ1は、この位置情報に基づいて、充電量下限制御を実行する。この充電量下限制御は、予め設定された充電予定地点Ptに到達時にバッテリSOCが予め設定された下限値であるSOC下限値となるようエンジン3および駆動モータ11の駆動を制御するものである。すなわち、エンジン3の駆動制御により発電機5からバッテリ8への充電量を制御するとともに、駆動モータ11の駆動制御によりバッテリ8からの放電量を制御し、バッテリSOCの制御を行う。
なお、充電予定地点Ptとは、例えば、自宅や充電ステーションである。これらの充電予定地点Ptとしての設定は、運転者が予め手動入力により行ってもよいし、走行中にシステムコントローラ1が自動的に行ってもよい。
【0026】
以下に、システムコントローラ1において、充電量下限値制御を実行する充電制御部における処理の流れを、
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
この充電量下限値制御は、現在の走行地点(現在地点Pn)から、これから向かう充電予定地点Ptまでの距離Lnが、予め設定された設定距離Lset以下となると実行される。また、現在地点Pnは、ナビゲーションシステム20のGPS機能により検出する他、路上に配置したビーコンなどから得られる情報を用いることもできる。また、設定距離Lsetは、EV走行のみにより充電予定地点Ptまで走行できる距離よりも長い距離に設定される。
【0027】
上記のようにして開始された充電量下限値制御では、まず、ステップS1において、バッテリSOC中央値よりも低いSOC下限値を設定しステップS2に進む。なお、このとき、SOC下限値としては、後述するように本実施の形態1では、駆動力不足となるリスクマージン分を考慮せずに設定するため、後述する比較例のSOC下限値と比較して、20%程低い値に設定する。
【0028】
次に、ステップS2では、現在地点Pnから充電予定地点Ptまでの各区間における目標バッテリSOCを設定し、ステップS3に進む。すなわち、本実施の形態1では、現在地点Pnから充電予定地点Ptまでの走行予定区間を複数区間に分割する。そして、区間毎に目標バッテリSOCを設定する。このとき、目標バッテリSOCは、現在地点PnのバッテリSOC(バッテリSOC中央値)から、充電予定地点PtのSOC下限値に向けて、各区間において徐々に低くなるように設定される。
【0029】
ステップS3では、現在地点Pnから充電予定地点Ptまでの残距離Lzを取得し、ステップS4に進む。なお、この残距離Lzは、エンジン3の駆動による発電機5の最大発電量であるエンジン発電許容量を決定するファクタの1つである。
【0030】
ステップS4では、各区間において目標バッテリSOCと、実際のその区間走行時のバッテリSOCとから、その区間走行終了時の両者の差(以下、これを差ΔSOCとする)を演算し、ステップS5に進む。なお、この差ΔSOCも、エンジン発電許容量を決定するファクタの1つである。
【0031】
ステップS5では、現在地点Pnから充電予定地点Ptまでの各区間における他車の平均車速を取得して他車の車速分散を算出し、ステップS6に進む。なお、他車の平均車速は、車両間の通信ネットワークや、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication Systemの略)などの車両と公共施設間の通信ネットワークなどを介して取得することが可能である。
また、他車の車速分散は、走行予定区間の交通状況を把握するためであり、エンジン発電許容量を決定するファクタの1つである。
【0032】
ステップS6では、ステップS3で得られた残距離Lz、ステップS4で得られた差ΔSOC、ステップS5で得られた車速分散から、エンジン発電許容量を決定し、ステップS7に進む。なお、本実施の形態1では、エンジン発電許容量として、許容発電量係数を0〜1の範囲で決定する。この許容発電量係数の設定により、車速に応じたエンジン発電許容量が、
図3に示すように、増減される。
【0033】
ステップS7では、ステップS6において設定したエンジン発電許容量を越えない発電量により区間目標バッテリSOCを達成するように走行し、ステップS8に進む。
ステップS8では、充電予定地点Ptに到達したか否か判定し、到達すれば目標バッテリSOC下限充電制御を終了し、到達前であればステップS9に進む。
ステップS9では、現在地点Pnから充電予定地点Ptまでの各区間目標バッテリSOCの更新を行った後、ステップS3に戻る。したがって、充電予定地点Ptに到達するまでS3〜S9の処理を繰り返す。
【0034】
(エンジン発電許容量(係数)の設定)
次に、ステップS7における、エンジン発電許容量(係数)の設定について説明を加える。
まず、本実施の形態1におけるエンジン発電許容量の設定規則a,b,cを説明する。
a.エンジン発電許容量は、
図4に示すように、残距離Lzが短くなるほど大きく設定する。すなわち、残距離Lzが短くなると、交通状況の変化など不確定要素が少なくなり、目標バッテリSOCの予測精度が高くなるため、このようにエンジン発電許容量を大きく設定する。
b.エンジン発電許容量は、各区間における目標バッテリSOCと現在のバッテリSOCとの差ΔSOCが大きい程、エンジン発電許容量を大きく設定する。すなわち、目標バッテリSOCよりもバッテリSOCを使用し過ぎると駆動力不足の可能性が高くなるため、エンジン発電許容量を大きくする。
c.エンジン発電許容量は、他車の車速分散が小さいほどエンジン発電許容量を大きくする。すなわち、車速分散が小さい場合、車速の信頼度が高いため、目標バッテリSOCの予測精度が高くなる。加えて、車速分散が小さい場合というのは、事故や渋滞発生の可能性がある。このため、補機消費などにより予想よりも出力が必要になる可能性が高くなるため、エンジン発電許容量を大きくする。
【0035】
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の作用を、その動作例に基づいて説明する。
(比較例)
実施の形態1の作用を説明するのにあたり、まず、実施の形態1が解決しようとする課題について説明する。
図6において、点線は、比較例によるバッテリSOCの変化を示している。
この比較例は、上述の特許文献1に記載されたように、通常の走行時は、バッテリSOCがバッテリSOC中央値(SOCM)となるように、EV走行モードとHEVモードとを繰り返している。そして、充電予定地点Ptまでの走行距離が設定距離[この設定距離は、EV走行モードによりバッテリSOC中央値からSOC下限値(
図6のSOCLh)となるまでに走行できる距離である]となった地点である開始地点P0sからEV走行モードにより走行している。
【0036】
しかしながら、EV走行モードでの走行によるバッテリSOCの消費では、渋滞、事故などの不確定要素によりバッテリSOCの消費が予定通り行われない場合がある。
すなわち、走行途中で渋滞や事故などがあった場合、予想よりもバッテリSOCの消費量が増え、図においてCom1に示すように、充電予定地点Ptへの到達前にSOC下限値まで使い切るおそれがある。この場合、エンジン駆動による発電が必要になり、駆動力不足を招くおそれがあるとともに、燃料消費量が増加する。
【0037】
一方、走行経路中に、下り坂などが存在し、バッテリSOCの消費量が予想よりも減った場合、この場合、図においてCom2に示すように、バッテリSOCをSOC下限値まで使い切れない可能性がある。
さらに、このように従来は、SOC下限値まで低下させる精度が低いため、バッテリSOCが低くなり過ぎて駆動力不足となり難くするために、そのリスク回避のためのマージン分を、SOC下限値に含んで高めに設定することになる。
【0038】
そこで、本実施の形態1では、SOC下限値に向けてバッテリSOCを制御する際に、SOC下限値の達成精度を向上させて、上述の駆動力不足や、バッテリSOCの使い残りが生じないようにすること、および、この精度向上により、SOC下限値をより低く設定することを可能とし、エネルギ効率の向上を図ることを目的としている。
【0039】
(実施の形態1によるエンジン発電許容量の設定例)
まず、実施の形態1によるエンジン発電許容量の設定例を具体的に説明する。
ここで、充電量下限値制御の開始時点でのエンジン発電許容量Kytを0(kW)、充電予定地点Ptに到達時のエンジン発電許容量をKy4(kW)とすると、まず、
図4に示すように、残距離Lzに対して0からKy4まで、一次比例でエンジン発電許容量が大きくなるように設定する。
【0040】
さらに、この一次比例のエンジン発電許容量に、ステップS4で得られた差ΔSOCおよびステップS5で得られた車速分散に応じた寄与を加える。この寄与を与えたエンジン発電許容量の一例を
図5に示す。
前述したように、エンジン発電許容量Kytは、まず、現在地点Pn(
図5のL0)から充電予定地点Pt(
図5のL25)に向けて、エンジン発電許容量Kytとして、0からKy4に向けて一次比例のエンジン発電許容量を設定している(
図4参照)。
【0041】
そして、
図5の例では、L0の制御開始地点から、その直後の距離L5の手前の地点との走行区間において、バッテリSOCと目標バッテリSOCとの差ΔSOC(図において点線で示す)が大きくなっている。このため、上記bの特性に基づいて、距離L5の付近では、エンジン発電許容量Kytを、上記の一次比例の直線に対して増加側に設定している。
【0042】
また、距離L5から距離L10の間では、差ΔSOCが一旦低下した後、僅かに増加している。よって、この区間では、エンジン発電許容量Kytを、一旦、減少させ、その後、距離L10の付近で増加させている。
【0043】
さらに、
図5の例では、距離L15〜距離L20の間で分散の値が小さくなっている。そこで、この区間では、エンジン発電許容量Kytを、分散の値が低くなっているのに応じて増加させている。
このように、分散が小さい場合というのは、多くの車両が同じ速度で走行していることを示しており、事故や渋滞の可能性があり、補機消費が増加する可能性が高くなるため、エンジン発電許容量Kytを高める。
【0044】
このような車速分散による寄与を与えた現区間エンジン発電許容量Kynは、下記の式(1)により求める。
Kyn=(Ky4−Ky
(n−1))
×[0.5×(1/σ)/Σ(1/σ)+(ΔSOC/ΣΔSOC)]+Ky
(n−1)
・・・(1)
なお、上記式において、Ky
(n−1)は、前区間のエンジン発電許容量、σは車速分散である。
【0045】
(バッテリSOCの制御例)
図6は、上記のような制御を行って、現在地点Pnから充電予定地点Ptへ走行した場合のバッテリSOCの変化を実線により示している。
この図において、距離がL0以前の区間は、通常のバッテリSOC制御を行っている。この場合、比較例と同様に、バッテリSOCをバッテリSOC中央値(SOCM)に制御している。
【0046】
そして、現在の走行地点(現在地点Pn)と充電予定地点Ptとの距離Lnが、予め設定された設定距離Lset以下となると、充電量下限値制御を開始する。
図6において、距離L0の地点で充電量下限値制御を開始している。図に示すように、本実施の形態1の制御開始地点P0は、比較例の開始地点P0sよりも手前となっている。すなわち、本実施の形態1では、充電予定地点Ptに向けてEV走行モードのみの走行ではないため、設定距離Lsetは、比較例よりも長くなる。
また、この時点でSOC下限値(
図6のSOCL)を設定するが(S1)、前述のように、SOC下限値は、比較例のSOC下限値(SOCLh)よりも低い値に設定する。
【0047】
充電量下限値制御の開始に伴い、本実施の形態1では、まず、現在のバッテリSOCから、SOC下限値に向けて、区間目標バッテリSOCを設定し、各区間の走行時に、バッテリSOCが区間目標バッテリSOCとなるように走行する(S7)。
【0048】
したがって、本実施の形態1では、L0の時点から、バッテリSOCがSOC下限値に向けて徐々に低下し、かつ、その低下勾配は比較例よりも緩やかになる。
また、充電量下限値制御の開始時点では制御終了時点と比較して、エンジン発電許容量が相対的に小さく設定される。このため、図示の例では、制御開始直後は、バッテリSOCの低下勾配が一定ではなく、上下に変化が生じている。
すなわち、制御開始直後は、エンジン発電許容量が相対的に小さいことから、発電量が抑えられる。このため、例えば、
図5に示す距離L5の近傍の区間のように、区間目標バッテリSOCに対する差ΔSOCが大きくなり易く、このため、バッテリSOCの低下勾配に変化が生じやすい。しかし、この時期は、バッテリSOCの回復に必要な走行距離が確保されているため、エンジン発電許容量を抑えて、走行性能を確保できる。
【0049】
その後、充電予定地点Ptに近付くに連れてバッテリ発電許容量が大きく設定されるため、充電予定地点Ptでは、高精度でSOC下限値に向けて制御することができる。
したがって、
図6に示すように、充電予定地点Ptの近くでは、バッテリSOCの勾配は一定となり変化が殆ど生じていない。
【0050】
すなわち、充電予定地点Ptの近くでは、バッテリ発電許容量が相対的に高く設定されているため、バッテリSOCが目標バッテリSOCよりも低くなって差ΔSOCが生じた場合に、エンジン3の駆動により短時間に目標バッテリSOCに近付けることができる。また、このとき、発電機5の電力を駆動用に回すことのできる量は少なくなるが、短時間で済むため、走行性能の低下は極力抑えることができる。
【0051】
このように、充電量下限制御では、常時、バッテリSOCを区間目標バッテリSOCに向けて制御し、充電予定地点Ptの近くでは、エンジン発電許容量を高く設定するため、SOC下限値に精度高く制御することができる。
よって、比較例のSOC下限値(
図6のSOCLh)と比べ、図においてHで示す幅だけSOC下限値(
図6のSOCL)をより低く設定することが可能となる。
【0052】
(実施の形態1の効果)
以下に、実施の形態1の効果を列挙する。
1)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
発電機5と、
この発電機5を駆動するエンジン3と、
発電機5により充電されるバッテリ8と、
このバッテリ8により駆動される走行用電動機としての駆動モータ11と、
車両の走行地点に関する情報を取得する位置情報取得部としてのナビゲーションシステム20と、
エンジン3の駆動による発電機5の発電および駆動モータ11の駆動に基づいてバッテリSOCを制御し、かつ、予め設定された充電予定地点Ptに到達した時に、バッテリSOCが予め設定されたSOC下限値に達するよう駆動モータ11およびエンジン3の駆動を制御する充電量下限値制御を実行する充電制御部(
図2のフローチャートを実行する部分)としてのシステムコントローラ1と、
システムコントローラ1に含まれ、充電量下限値制御の実行時に、発電機5による最大発電量であるエンジン発電許容量を、充電予定地点Ptに近付くほど高く設定する発電許容量設定部(ステップS6)と、
を備えていることを特徴とする。
充電予定地点Ptまでの距離が長いときには、交通状況の変化など不確定要素が多いためにエンジン3を駆動させての発電機5による発電頻度が高くなるが、バッテリSOCとSOC下限値との差が大きいため、時間あたりの発電量はさほど必要がない。
このような場合は、発電許容量を抑えることにより、走行性能を悪化させることなく発電することができる。
一方、充電予定地点Ptまでの距離が短いときには、バッテリSOCとSOC下限値との差も小さくなっている。
このような場合は、発電許容量を大きくし、短時間に必要な発電量を得ることにより、短時間に目的とするバッテリSOCに到達し、発電許容量の増大による走行性能が悪化する時間を短くできる。
加えて、発電許容量を大きくすることにより、バッテリSOCとSOC下限値とが乖離するのを抑えて高い精度でSOC下限値に制御可能である。このため、バッテリSOCが低下し過ぎて、駆動不足となるリスクマージンを抑えることが可能となり、SOC下限値をより低い値に設定可能となる。これにより、バッテリSOCによる走行距離を長くし、エンジン3の駆動量を低減させることができ、環境保護に寄与することができる。
【0053】
2)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
充電制御部としてのシステムコントローラ1は、充電量下限値制御の実行時に、現在地点Pnから充電予定地点Ptとの間を複数区間に分割し、区間毎にSOC下限値に向けて徐々に低くなるように目標バッテリSOCを設定し(ステップS2)、各区間の走行時に、バッテリSOCが目標バッテリSOCとなるように、バッテリ8の放電および発電機5による充電を制御する(ステップS7)
ことを特徴とする。
走行区間を複数区間に分割し、区間毎に設定した目標バッテリSOCと実際のバッテリSOCとの差に基づいて充電および放電を行うようにしたため、EV走行による放電のみでSOC下限値に制御するものと比較して、SOC下限値への制御精度を向上できる。
これにより、上記1)のように、SOC下限値をより低い値に設定してバッテリSOCによる走行距離を長くでき、エンジン3の駆動量の低減による環境保護への寄与が可能となる。
【0054】
3)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
発電許容量設定部(ステップS6)は、現在の走行区間における目標バッテリSOCと実際のバッテリSOCとの差に応じ、この差が大きいほど発電許容量を大きく設定することを特徴とする。
走行区間の目標バッテリSOCと実際のバッテリSOCとの差が大きい場合、電力の使用し過ぎにより駆動力不足になる可能性がある。したがって、この場合には、発電許容量を大きくして最大発電量を大きくすることにより、駆動力不足になるようなバッテリSOCの低下を防止できる。
【0055】
4)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
発電許容量設定部(ステップS6)は、充電予定地点Ptへの走行経路上の交通状況に関する道路情報を入力し、この道路情報が持つ目標バッテリSOCへの信頼性に応じ、この信頼性が高いほど発電許容量を大きく設定することを特徴とする。
交通情報により目標バッテリSOCの信頼性が高い場合、この信頼性が低い場合よりも目標バッテリSOCの演算精度が高まり、実際のバッテリSOCと目標バッテリSOCとの差を小さくできる。このため、発電許容量を大きくして短時間に必要な発電量を得ることにより、短時間に目標バッテリSOCに到達し、発電許容量の増大による走行性能が悪化する時間を短くできるとともに、燃料消費を抑えることができる。
【0056】
5)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
発電許容量設定部(ステップS6)は、道路情報として、他車の車速分散を入力し、この分散が低いほど前記目標バッテリ充電量への信頼性が高いとして前記発電許容量を大きく設定することを特徴とする。
ある区間における他車の車速分散が小さければ、車速信頼度が高いため、その区間での目標バッテリSOC演算精度も高まる。よって、上記4)のように、発電許容量を大きくして短時間に必要な発電量を得ることにより、短時間に目標バッテリSOCに到達し、発電許容量の増大による走行性能が悪化する時間を短くできるとともに、燃料消費を抑えることができる。
【0057】
6)実施の形態1のハイブリッド車両の制御装置は、
充電制御部としてのシステムコントローラ1は、充電予定地点Ptまでの距離が、予め設定された設定距離Lset以下になったら、充電量下限値制御を実行することを特徴とする。
したがって、充電予定地点Ptまで設定距離Lsetを走行する間に、エンジン3を駆動させての発電機5によるバッテリ8への充電と、駆動モータ11の駆動によるバッテリ8の放電とを適宜制御して、バッテリSOCをSOC下限値まで低下させることができる。
【0058】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
例えば、実施の形態では、本発明のハイブリッド車両の制御装置を発電モータと駆動モータ(2モータ)を備えたシリーズ方式のハイブリッド車両に適用する例を示した。しかし、本発明の制御装置を適用するハイブリッド車両としては、2モータを備えたパラレル方式のプラグイン・ハイブリッド車両や発電/駆動兼用のモータジェネレータ(1モータ)を備えたパラレル方式のハイブリッド車両等に対しても適用することができる。
【0060】
また、実施の形態では、走行経路上の交通状況に関する道路情報として、車速分散を用いるようにした例を示したが、これに限定されない。例えば、道路情報としては、道路勾配情報、渋滞情報などを用いることもできる。すなわち、正確な道路勾配情報が得られた場合、目標バッテリSOCの信頼性も高まるため、発電許容量を大きく設定することが可能である。
【0061】
また、実施の形態では、車両の走行地点に関する情報を取得する位置情報取得部としてのナビゲーションシステムを示したが、これに限定されず、本装置専用のGPS装置を搭載することも可能であり、かつ、VICS(登録商標)からの情報を用いて位置を特定することも可能である。