(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フリー層は、前記第一の方向と直交する第二の方向に磁化容易軸が誘導され、又は、前記第二の方向に磁化が誘導されることを特徴とする請求項1記載の多軸磁気センサ。
前記フリー層の磁化が、前記磁気抵抗効果素子の近傍に配置されたバイアス磁石により誘導されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の多軸磁気センサ。
前記フリー層の磁化が、前記磁気抵抗効果素子の近傍に配置された電気配線を流れる電流によって生成された磁場により誘導されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の多軸磁気センサ。
前記フリー層は、前記第一の方向と直交する第二の方向に磁化容易軸が誘導され、又は、前記第二の方向に磁化が誘導されることを特徴とする請求項13記載の多軸磁気センサの製造方法。
前記磁気収束手段は、磁場によって所定の領域における磁化の向きおよび大きさが変化する磁気収束体であることを特徴とする請求項13又は14記載の多軸磁気センサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1にあるような方法では、センサチップ自体のコストに加え、特別な組立技術が必要になることから、コスト高になるという課題がある。
【0006】
また、特許文献2にある方法においては、水平方向の2軸の磁場を検出するセンサを作製するために、各センサチップ内において、N極、S極を組み合わせた永久磁石のアレイを用いて、4つの異なる方向(±x軸、±y軸)にピンド層の磁化を固定する処理を行っている。またz軸の磁場を検出するために、基板に傾斜部を設け、その上に磁気抵抗効果素子を形成する方法をとっている。こうしたチップ毎の処理や特殊なプロセスは、製造工程を複雑化し、コスト高となる課題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡便なプロセスにより、3軸の磁場成分を検出可能な、磁気抵抗効果素子からなる3軸磁気センサ、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明において、
3軸の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサであって、磁化が第一の方向に固定されたピンド層と、磁化の向きを前記第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子と、複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に配設された磁気収束手段とを具え、複数の磁気抵抗効果素子は、磁気収束手段の下において、平面視で磁気収束手段の領域内に配置され
、各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定されることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明において、フリー層は、第一の方向と直交する第二の方向に磁化容易軸が誘導され、又は、第二の方向に磁化が誘導されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明において、前記磁気収束手段は、外部磁場に対して、所定の領域の磁場の向き及び大きさを変化させる磁気収束体であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明において、磁気抵抗効果素子は、単抵抗体として構成され、該単抵抗体を定電流源により駆動することにより、少なくとも2つの単抵抗体から得られる端子間電圧の差を出力することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明において、磁気抵抗効果素子は、ホイートストンブリッジとして構成され、該ホイートストンブリッジを定電流源により駆動することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明において、LSIが形成されたSiを含む基板をさらに具え、LSIと磁気抵抗効果素子とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明において、磁気抵抗効果素子は、TMR素子からなることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明において、磁気抵抗効果素子は、GMR素子からなることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明において、フリー層の磁化が、磁気抵抗効果素子の近傍に配置されたバイアス磁石により誘導されることを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明において、フリー層の磁化が、磁気抵抗効果素子の近傍に配置された電気配線を流れる電流によって生成された磁場により誘導されることを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の発明において、フリー層の磁化容易軸が、形状異方性により誘導されることを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の発明において、複数の磁気抵抗効果素子を用いて、3軸の磁場を検出することが可能であることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載の発明において、
3軸の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサの製造方法であって、一つの基板の平面上に、磁化が第一の方向に固定されたピンド層を形成する工程と、磁化が第一の方向に固定されたピンド層上に、中間層を介して磁化の向きを前記第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層を形成し、これによって複数の磁気抵抗効果素子を作成する工程と、複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に、磁気収束手段を配設する工程とを具え、複数の磁気抵抗効果素子を作成する工程では、複数の磁気抵抗効果素子は、磁気収束手段の下において、平面視で磁気収束手段の領域内に配置され
、各磁気抵抗効果素子における前記ピンド層の磁化の向きは、前記第一の方向に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁化が第一の方向に固定されたピンド層と、磁化の向きを第一の方向とは異なる第二の方向へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子と、複数の磁気抵抗効果素子の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域内に配設された磁気収束手段とを具えたので、製造プロセスにおいてピンド層の磁化方向が1方向のみの磁気抵抗効果素子を用いて多軸磁気センサを作製することが可能となり、これにより、多軸磁気センサを構成する基板上に複数の向きにピンド層の磁化が固定された、複数の磁気抵抗効果素子を設ける必要がなくなり、簡便な製造プロセスを用いて多軸の磁場成分を検出可能な磁気抵抗効果素子からなる多軸磁気センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である、磁気抵抗効果素子の基本構成を示す説明図である。
【
図2】磁気抵抗効果素子の構成を示し、(a)はピンド層の磁化方向と直交する方向に磁化容易軸が誘導された場合の説明図、(b)はピンド層の磁化方向と直交する方向に磁化が誘導された場合の説明図である。
【
図3】磁気抵抗効果素子の抵抗値の磁場に対する依存性を示す説明図である。
【
図5】磁気収束板の底面から5um下方における磁場の分布を示し、X軸方向に外部磁場1Oeを印加したときのX軸方向に発生する磁場を示す説明図である。
【
図6】磁気収束板の底面から5um下方における磁場の分布を示し、Y軸方向に外部磁場1Oeを印加したときのX軸方向に発生する磁場を示す説明図である。
【
図7】磁気収束板の底面から5um下方における磁場の分布を示し、Z軸方向に外部磁場1Oeを印加したときのX軸方向に発生する磁場を示す説明図である。
【
図8】
図4の磁気収束板に対する位置関係を表す代表的な点を示す説明図である。
【
図9】
図8の点の座標値と、磁場の大きさを示す説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態である、磁気抵抗効果素子を単抵抗体として用いた場合の磁気センサの構成を示す説明図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態である、磁気抵抗効果素子を組み合わせたホイートストンブリッジ型の磁気センサの構成を示す説明図である。
【
図12】本発明の第4の実施の形態である、3軸方向の磁場を検出可能な3軸磁気センサの構成例を示す平面図である。
【
図13】本発明の第5の実施の形態である、3軸方向の磁場を検出可能な3軸磁気センサの構成例を示す平面図である。
【
図14】本発明の第5の実施の形態である、3軸方向の磁場を検出可能な3軸磁気センサの構成例を示す断面図である。
【
図15】本発明の第6の実施の形態である、磁気抵抗効果素子のフリー層の近傍に形成されたバイアス磁石により、フリー層の磁化がピンド層の磁化と直交する方向に誘導されていることを示す説明図である。
【
図16】本発明の第7の実施の形態である、磁気抵抗効果素子のフリー層の近傍に形成された電気配線により、フリー層の磁化がピンド層の磁化と直交する方向に誘導されていることを示す説明図である。
【
図17】磁気抵抗効果素子のフリー層の近傍に形成された電気配線の他の構成例を示す説明図である。
【
図18】本発明の第8の実施の形態である、フリー層の磁化容易軸が形状異方性により、ピンド層の磁化と直交する方向に誘導される構成を示し、(a)は形状異方性を有する磁気抵抗効果素子の長軸方向に磁場を印加することにより、長軸方向に垂直な断面に磁極が誘導された状態を示す説明図であり、(b)は形状異方性を有する磁気抵抗効果素子の短軸方向に磁場を印加することにより、短軸方向に垂直な断面に磁極が誘導された状態を示す説明図である。
【
図19】ピンド層の磁化方向と直交する方向に磁化容易軸が誘導された磁気抵抗効果素子の構成を示す説明図である。
【
図20】本発明の第9の実施の形態である、磁気抵抗効果素子の感磁面に垂直な方向から見た構成を示し、(a)は矩形を示す平面図、(b)はメアンダー形状の磁気抵抗効果素子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の例]
本発明の第1の実施の形態を、
図1〜
図9に基づいて説明する。
【0024】
<概要>
まず、多軸磁気センサの概略構成について説明する。
【0025】
本例では、2軸以上の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサを構成する、
図1〜
図3に示す複数の磁気抵抗効果素子1と、
図4〜
図9に示す磁気収束手段10について説明する。
【0026】
各磁気抵抗効果素子1は、磁化が第一の方向Xに固定されたピンド層2と、磁化の向きを第二の方向Yを含む第一の方向Xとは異なる方向へ変えることが可能なフリー層4とを有する。フリー層4は、第一の方向Xと直交する第二の方向Yに磁化容易軸が誘導され、又は、第二の方向に磁化が誘導されるように構成してもよい。
【0027】
磁気収束手段10は、複数の磁気抵抗効果素子1の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う領域内に配設される。この磁気収束手段10は、磁性体により構成される。この磁性体は、外部磁場によって磁性体の磁化が変化することにより、所定の領域における磁場の向きおよび大きさが変化する磁気収束体として構成してもよい。
【0029】
<具体例>
図1は、磁気抵抗効果素子1の基本構成を示す。
【0030】
磁気抵抗効果素子1は、大きくは、ピンド層2と、中間層3と、フリー層4とからなる。磁化の固定されたピンド層2と、磁化の向きを変えることのできるフリー層4との、相対的な磁化の角度によって膜面に水平方向の、又は膜面に垂直方向の抵抗値が変化する特徴を持つ。
【0031】
磁気抵抗効果素子1がGMR(Giant Magnetic Resistance)素子の場合には、中間層3はCuなどの導電層から構成される。
【0032】
磁気抵抗効果素子1がTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子の場合には、中間層3はAl
2O
3、MgOなどの絶縁層から構成される。磁気抵抗効果の膜を形成した後、磁場中での熱処理(アニール処理)を行うことにより、その磁場方向にピンド層の磁化が固定される。
【0033】
図2は、単独の磁気抵抗効果素子1の構成例を示す。
【0034】
図2(a)は、フリー層4の磁化容易軸がピンド層2の磁化の向きと直交する方向に誘導された状態を示す。
図2(b)は、フリー層4の磁化がピンド層2の磁化の向きと直交する方向に誘導された状態を示す。この第1の例において、磁気抵抗効果素子1はX軸の方向に1um、Y軸の方向に10umの矩形形状を有する。
【0035】
図3は、磁気抵抗効果素子1の抵抗の磁場に対する依存性を示す。
【0036】
磁場はピンド層2の磁化の方向に印加し、ピンド層2の磁化の向きを正とする。無磁場の状態では、ピンド層2とフリー層4の磁化は直交している。正の向きに弱い磁場を印加した場合、フリー層4の磁化がピンド層4の向きに揃う方向に動くことから、抵抗値が減少していき、一定以上の磁場では飽和する。一方で、負の向きに弱い磁場を印加した場合、フリー層4の磁化がピンド層2の向きと逆方向に動くことから、抵抗値が上昇していき、一定以上の磁場では飽和が見られ、さらに強い磁場を印加すると、固定されていたピンド層の磁化が負の向きを向き始めるため、抵抗値が減少する。従って、ピンド層2の向きを感度軸としてとることで、上記一定の正負の磁場よりも小さい外部磁場に対して、線形に変化する特性を得ることができる。
【0037】
<磁気収束板>
図4〜
図7は、磁気収束板10の形状と、磁気収束板10の底面から5um下方(z軸方向)における、磁場分布を示す。
【0038】
図4は、磁気収束板10の模式図である。
【0039】
図5は、X方向へ1Oeの磁場を印加した場合の、X方向の磁場分布を示す(単位:Oe)。
【0040】
図6は、Y方向へ1Oeの磁場を印加した場合の、X方向の磁場分布を示す(単位:Oe)。
【0041】
図7は、Z方向へ1Oeの磁場を印加した場合の、X方向の磁場分布を示す(単位:Oe)。
【0042】
外部から印加された磁場は、磁気収束板10の磁化により、その向きや大きさが変化する。X軸方向のみではなく(
図5)、Y軸(
図6)、あるいはZ軸方向(
図7)に磁場を印加した場合でも、X軸方向の磁場成分が、その形状に依存してある割合で発生する。
【0043】
従って、この磁気収束板10の下に、X軸方向に感度軸を持つ磁気抵抗効果素子1を配置することによって、3軸方向すべてに感度を持つ磁気抵抗効果素子1を作ることができる。
【0044】
なお、この磁気収束板10の役割は、外部磁場を歪ませることで磁気抵抗効果素子1の感度軸方向の磁場を発生させることであるから、その形状は本例のように直方体に限らず、円柱、楕円柱、あるいは複数の磁気収束板を組み合わせるなど、目的を達成する範囲で変更することができる。また、磁気収束板の材料としては保磁力の小さく、透磁率の高い軟磁性体を用いることが好ましく、パーマロイ(NiFe)を用いることが好適である。
【0046】
図9は、その領域11の各点((1)〜(10))におけるX軸方向の磁場の大きさを示す。
【0047】
ここでは、
図8の各点((1)〜(10))の座標値(X,Y)と(単位:um)、磁場の大きさを示す(単位:Oe)。いずれの点もZ座標は、−5(磁気収束板の底面から5um下方)である。
【0048】
一例として、領域11の点(1)の位置においては、X軸方向に外部磁場を1Oe印加したときに、1.07 OeのX軸方向の磁場が発生し、Y軸方向に外部磁場1Oeを印加したときに、−0.08 OeのX軸方向の磁場が発生し、Z軸方向に外部磁場1Oeを印加したときに、0.02 OeのX軸方向の磁場が発生したことを示す。
【0049】
磁気収束手段としての磁性体である磁気収束板10の形状は、第一の方向X及び第二の方向Yに対して略線対称の形状としてもよい。また、複数の磁気抵抗効果素子1は、第一の方向Xに対して線対称の位置に2つと、第二の方向Yに対して線対称の位置に2つとを含んでもよい。
【0050】
上述したように、磁化が第一の方向Xに固定されたピンド層2と、磁化の向きを第一の方向Xとは異なる第二の方向(本例では、第一の方向Xと直交する第二の方向)へ変えることが可能なフリー層とを有する複数の磁気抵抗効果素子1と、複数の磁気抵抗効果素子1の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う領域内に配設された磁気収束手段10とを具えたので、製造プロセスにおいてピンド層の磁化方向が1方向のみの磁気抵抗効果素子1を用いて、多軸磁気センサを作製することが可能となる。その結果、多軸磁気センサを構成する基板上に複数の向きにピンド層の磁化が固定された、複数の磁気抵抗効果素子1を配置するための傾斜部を従来のように設ける必要がなくなるため、簡便な製造プロセスを用いて多軸の磁場成分を検出可能な磁気抵抗効果素子1からなる多軸磁気センサを得ることができる。
【0051】
[第2の例]
本発明の第2の実施の形態を、
図10に基づいて説明する。なお、前述した第1の例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0052】
本例は、磁気抵抗効果素子1を単抵抗体21,22として構成した例である。
【0053】
図10は、単抵抗体21,22を有する磁気センサ20の構成である。この磁気センサ20の出力電圧Voutは、以下の式で表される。
Vout=V1−V2
=(ΔR1−ΔR2)×Iin … (1)
【0054】
この単抵抗体21,22は、定電流源Iinにより駆動されており、その端子間電圧V1,V2が初期の抵抗値R、及び磁気抵抗変化分ΔRによる影響を含む出力電圧Voutである。
【0055】
単抵抗体21,22とは、ホイートストンブリッジのような4端子素子としてではなく、2端子素子として使用することを指し、磁気抵抗効果素子1を単独で使用する、あるいは複数個を直列、並列に並べた上で、2端子素子として使用する場合も含む。
【0056】
X軸のみに感度を有する磁気センサ20は、
図8における、領域11の点(10)と点(5)の位置に磁気抵抗効果素子1である単抵抗体21,22を配置し、その出力差をとることで構成される。
【0057】
このとき、X軸方向の外部磁場1Oeを印加した場合には、
図9の表より、領域11の点(10)の位置においては、1.03Oeの磁場が発生し、また点(5)の位置においては0.41Oeの磁場が発生する。従って点(10)と点(5)の位置にある単抵抗体からの出力差をとることにより、1.03−0.41=0.62 Oeの磁場変化に相当する出力電圧が得られる。一方、Y軸方向、Z軸方向の外部磁場に対しては、領域11の点(10)、点(5)の位置におけるX軸成分はいずれも同じ(ゼロ)であり、出力差はゼロとなる。
【0058】
また、Y軸のみに感度を有する磁気センサは、領域11の点(3)と点(1)との差をとることで構成される。このとき、Y軸方向の外部磁場1Oeを印加した場合には、0.08−(−0.08)=0.16Oeの磁場変化に相当する出力電圧が得られる。一方、X軸、Z軸方向の外部磁場に対しては、出力差がゼロとなる。
【0059】
同様に、Z軸のみに感度を有する磁気センサ20は、領域11の点(2)と点(8)との差をとることで構成される。このとき、Z軸方向の外部磁場1Oeを印加した場合には、0.08−(−0.08)=0.16Oeの磁場変化に相当する出力電圧が得られる。一方、X軸、Y軸方向の外部磁場に対しては出力差がゼロとなる。
【0060】
なお、本例では、定電流源Iinにより駆動された各単抵抗体21,22の端子間電圧の差を利用することが特徴であるから、
図10に示すように、各抵抗体21,22の一端が接地(Gnd)されていることは必須要件ではない。
【0061】
[第3の例]
本発明の第3の実施の形態を、
図11に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0062】
本例は、磁気抵抗効果素子31〜34を組み合わせたホイートストンブリッジ型の磁気センサ30の構成例を示す。
【0063】
電源として、定電圧源Vinで駆動したときの出力電圧Voutは、以下の式で表される。
Vout=V1−V2
=(ΔR/R)×Vin … (2)
【0064】
電源として、定電流源Iinで駆動したときの出力電圧は、以下の式で表される。
Vout=V1−V2
=ΔR×Iin … (3)
【0065】
Rは初期の抵抗値であり、ΔRは磁場を印加したときの抵抗変化量である。
【0066】
定電圧源Vinにより駆動した場合には、(2)式のように、出力はΔRに比例し、Rに反比例する形をとる。
【0067】
本例における磁気抵抗効果素子31〜34は、磁気収束板の影響により、一般に3軸方向全てに感度を有する。特に磁気抵抗効果素子31〜34自体の感度軸方向である、X軸方向の磁場を印加した場合には、必ず抵抗値が変化することになる。従って、Y軸またはZ軸のみに感度を有するセンサを構成した場合でも、X軸方向のオフセット磁場が存在する場合には、初期の抵抗値Rに影響を与え、Rに反比例する出力電圧Voutは、オフセット磁場の大きさによって変化を受ける。
【0068】
一方、定電流源Iinにより駆動した場合には、(3)式のように、出力はRには依存せず、ΔRにのみ比例する形をとる。従って、オフセット磁場の影響を受けず、検出しようとする磁場変化による抵抗変化分ΔRに比例した出力電圧Voutを得ることができる。
【0069】
[第4の例]
本発明の第4の実施の形態を、
図12に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0070】
本例は、3軸磁気センサ40の構成例を示す。
【0071】
3軸磁気センサ40において、矩形の磁気収束板10の下部及び外部に、形状異方性を有する6つの磁気抵抗効果素子1が配置されている。各磁気抵抗効果素子1の一端の電極41が共通のグランドに接続され、もう一方の端の複数の電極42は互いに開放されている。
【0072】
各磁気抵抗効果素子1と電極41,42との間は、電気的な配線43で接続されている。配線43は、基板44上において配線されている。
【0073】
そして、電極42の開放端に定電流源の出力を接続してその端子電圧を検出し、他の素子との差をとることによって、3軸の磁場を検出することが可能な3軸磁気センサ40を構成することができる。
【0074】
[第5の例]
本発明の第5の実施の形態を、
図13および
図14に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0075】
本例は、2軸以上の磁場を検出することが可能な多軸磁気センサ50の製造方法の例である。
【0076】
まず、多軸磁気センサ50の製造方法の流れについて説明する。
【0077】
ステップS1では、LSIを有する半導体の基板44の平面上に、磁化が第一の方向Xに固定されたピンド層2を形成する。ここで
図14には、LSI配線51をあらわに示した。
【0078】
ステップS2では、磁化が第一の方向Xに固定されたピンド層2上に、中間層3を介してフリー層4を形成し、これを加工することよって複数の磁気抵抗効果素子1を作成する。このフリー層4は、磁化の向きを第一の方向Xとは異なる第二の方向Y(例えば、第一の方向と直交する第二の方向)へ変えることが可能である。
【0079】
ステップS3では、LSI配線51と複数の磁気抵抗効果素子1とを、配線43を用いて電気的に接続する。
【0080】
ステップS4では、複数の磁気抵抗効果素子1の少なくとも1つが配置された位置を空間的に覆う所定の領域11内に、磁性体である磁気収束体としての磁気収束板10を配設する。これにより、
図13および
図14に示す多軸磁気センサ50を作製する。
【0081】
以下、具体的な製造方法について説明する。
【0082】
図13および
図14は、多軸磁気センサとしての3軸磁気センサ50の構成例を示す。
【0083】
この3軸磁気センサ50は、以下の製造プロセスにより作製される。
【0084】
まずLSI及びLSI配線51が形成され、SiO
2、SiNなどの絶縁膜52により覆われた基板44上に、TMR膜を磁場中のスパッタにより形成する。
【0085】
続いて、磁場中での熱処理を行うことにより、ピンド層2の磁化を固定する。さらに、フォトリソグラフィー、イオンミリングなどを用いて、磁気抵抗効果素子1を形成する。
【0086】
次に、LSI配線51との接続部分の絶縁膜52を、RIE、ドライエッチングなどの方法により取り除き、配線43を構成する金属のスパッタ、リフトオフを行う。これにより、LSI配線51と磁気抵抗効果素子1とを接続する引き回し配線を形成する。
【0087】
次に、SiO
2などの絶縁膜53を形成する。
【0088】
最後に、磁気収束板10を形成し、外部との電気的接続に使用する部分を再度、開口する。
【0089】
なお、
図13において、55はLSI配線51と配線43との接続点、56は外部との接続のための電極パッドである。
【0090】
以上により、LSIの形成された基板44上に、磁気抵抗効果素子1からなる磁気センサ50を作製することができる。
【0091】
上述した製造プロセスにより、ピンド層の磁化方向が1方向のみの磁気抵抗効果素子を用いて多軸磁気センサを作製することが可能となり、多軸磁気センサを構成する基板上に複数の向きにピンド層の磁化が固定された、複数の磁気抵抗効果素子を設ける必要がなくなる。従って、従来に比べて簡便な製造プロセスにより、多軸の磁場成分を検出可能な磁気抵抗効果素子からなる多軸磁気センサを得ることができる。
【0092】
[第6の例]
本発明の第6の実施の形態を、
図15に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0093】
本例は、フリー層2が、第一の方向Xと直交する第二の方向Yに磁化が誘導される例である。
【0094】
具体的には、
図15において、フリー層2の磁化が、磁気抵抗効果素子1の近傍に配置されたバイアス磁石60,61により、ピンド層の磁化の向きと直交する方向に誘導される。
【0095】
なお、
図15の構成においては、前述した
図14に示すような磁束収束板10が近接して配設されるが、ここでの説明は省略する。
【0096】
図15は、磁気抵抗効果素子1の近傍に形成されたバイアス磁石60,61によって、ピンド層2の磁化方向Xと直交する方向Yにフリー層2の磁化が誘導されている状態を示す。
【0097】
このような構造は、磁気抵抗効果素子1を形成した後、SiO
2などの絶縁膜を形成し、スパッタ−リフトオフ・プロセスにより保磁力の高い強磁性体のパターンを形成後、ピンド層2の磁化方向を固定したときよりも低温での磁場中熱処理を行うことにより形成される。
【0098】
[第7の例]
本発明の第7の実施の形態を、
図16および
図17に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0099】
本例は、フリー層2の磁化が、第一の方向Xと直交する第二の方向Yに誘導される例である。
【0100】
具体的には、
図16において、フリー層2の磁化が、磁気抵抗効果素子1の近傍に配置された電気配線70を流れる電流によって生成された磁場により、ピンド層の磁化の向きと直交する方向に誘導される。
【0101】
なお、
図16の構成においては、前述した
図14に示すような磁束収束板10が近接して配設されるが、ここでの説明は省略する。
【0102】
図16は、磁気抵抗効果素子1の近傍に形成された電気配線70を流れる電流によって生成された磁場により、ピンド層2の磁化と直交する方向Yにフリー層2の磁化が誘導されている状態を示す。
【0103】
電気配線による磁場の誘導は、
図16に示すように単独の電気配線70を用いる方法に限らず、
図17に示すようなプレーナーコイル71や、あるいはソレノイドコイルを用いることで、より強いバイアス磁場を印加することができる。
【0104】
[第8の例]
本発明の第8の実施の形態を、
図18および
図19に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0105】
本例は、フリー層2が、第一の方向Xと直交する第二の方向Yに磁化容易軸が誘導される例である。
【0106】
具体的には、
図19において、フリー層2の磁化容易軸が、形状異方性により、ピンド層の磁化の方向と直交する方向に誘導される。
【0107】
図18(a)は、形状異方性を有する磁気抵抗効果素子80の長軸方向に外部磁場を印加したときに、長軸方向に垂直な断面に磁極が誘導された状態を示す。81は、磁極の発生する面である。
【0108】
強磁性体に外部磁場が印加された場合、表面に誘導される磁極により形成される反磁界の影響によって、静磁エネルギーが増加する。
図18(a)に示すように、アスペクト比の高い(細長い)方向に磁場を印加する場合、長軸方向においては、その垂直方向に磁場を印加した場合と比較して、磁極の発生する面積が小さく、静磁エネルギーが小さくなる。
【0109】
一方、
図18(b)に示すように、アスペクト比の低い短軸方向に磁場を印加する場合、短軸方向の表面積が広い側に磁極が発生するため、長軸方向に磁場を印加する場合と比較して静磁エネルギーが高くなる。その結果、長軸方向に平行な方向が、より磁化しやすい方向となり、従って磁気抵抗効果素子に形状異方性を導入することによって、その長軸方向に磁化容易軸が誘導される。
【0110】
図19は、ピンド層2の磁化の向きと直交する方向に高アスペクト比の形状とすることにより、ピンド層2の磁化の向きと磁化容易軸とを直交させた場合の磁気抵抗効果素子80の構成である。フリー層2に磁化容易軸を誘導させるための、アスペクト比は、1:2〜1:200が好ましく、1:5〜1:100がより好ましい。
【0111】
なお、
図19の構成においては、前述した
図14に示すような磁束収束板10が近接して配設されるが、ここでの説明は省略する。
【0112】
[第9の例]
本発明の第9の実施の形態を、
図20に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0113】
本例は、フリー層2が、第一の方向Xと直交する第二の方向Yに磁化容易軸が誘導される例である。
【0114】
具体的には、
図20において、ピンド層2の磁化方向と、フリー層2の磁化容易軸を直交させるための、磁気抵抗効果素子90,91の形状の例を示す。
【0115】
図20(a)(b)は、磁気抵抗効果素子90,91の感磁面に垂直な方向から見た図であり、
図20(a)は矩形であり、
図20(b)はメアンダー形状を示す。
【0116】
この磁気抵抗効果素子90,91の形状の目的は、ピンド層2の磁化方向を短軸方向、ピンド層2の磁化方向に直交する方向に長軸方向となるように形状異方性を設けることで、ピンド層2の磁化方向と磁化容易軸とを直交させることであるから、その形状は、本例における矩形、メアンダー形状に限らず、六角形、楕円形、あるいはそれらを組み合わせるなど、目的を達成する範囲で変更することができる。
【0117】
なお、
図20の構成においては、前述した
図14に示すような磁束収束板10が近接して配設されるが、ここでの説明は省略する。