【実施例】
【0027】
図1は、回転軸支持構造の一実施例であるスラスト軸受機構を備えるガスタービンの概略構成を示す模式図である。ガスタービン10は、
図1に示すように、圧縮機12と、燃焼器14と、タービン16と、軸受装置18と、軸受装置19と、回転軸20と、を有する。ガスタービン10の各部は、ケーシング24の内部に配置されている。ガスタービン10は、圧縮機12の一部とタービン16の一部とが回転軸20に固定され、回転軸20とともに回転する。圧縮機12は、空気を取り入れて圧縮する。圧縮機12で圧縮された空気は、燃焼器14に供給される。燃焼器14は、圧縮機12で圧縮された空気に燃料を混合して燃焼ガスGを発生させる。
【0028】
タービン16は、燃焼器14で発生した燃焼ガスGをその内部に導入して膨張させて回転軸20に設けられた動翼22に吹き付けることで、燃焼ガスGの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させる。
【0029】
具体的には、タービン16は、
図1に示すように、回転軸20と、回転軸20側に設けられた複数の動翼22と、回転軸20および動翼22を収容するケーシング24と、ケーシング24側に固定された複数の静翼26とを備える。タービン16は、動翼22と静翼26とが、回転軸20の軸方向に交互に配列されている。動翼22は、燃焼器14から噴射されて回転軸20の軸方向に流れる燃焼ガスGによって回転軸20を回転させる。回転軸20の回転エネルギーは、回転軸20に連結された機構、例えば発電機により取り出される。
【0030】
軸受装置18は、回転軸20の圧縮機12側の端部に設けられている。軸受装置18は、ジャーナル軸受機構30と、スラスト軸受機構40と、潤滑油供給機構41と、を有する。ジャーナル軸受機構30は、ケーシング24に固定されており、回転軸20の径方向の荷重を受け、ケーシング24に対する回転軸20の径方向の移動を規制する。スラスト軸受機構40は、ケーシング24に固定されており、回転軸20の軸方向の荷重を受け、ケーシング24に対する回転軸20の軸方向の移動を規制する。潤滑油供給機構41は、ジャーナル軸受機構30とスラスト軸受機構40に潤滑油を供給し、回収して、潤滑油を循環させる。
【0031】
軸受装置19は、回転軸20のタービン16側の端部に設けられている。軸受装置19は、ジャーナル軸受機構30と、潤滑油供給機構42と、を有する。ジャーナル軸受機構30は、ケーシング24に固定されており、回転軸20の径方向の荷重を受け、ケーシング24に対する回転軸20の径方向の移動を規制する。潤滑油供給機構42は、ジャーナル軸受機構30に潤滑油を供給し、回収して、潤滑油を循環させる。ガスタービン10は、以上のような構成であり、軸受装置18、19が回転軸20をケーシング24に対して支持されている。
【0032】
次に、
図2から
図12を用いて、回転軸を支持する回転軸支持構造の一例であるスラスト軸受機構40について説明する。なお、本実施例では、構成をわかりやすく示すために、各部の鉛直方向、水平方向に対して傾斜している部分を実際の傾斜よりも大きく、つまり傾斜角を大きくして示している。まず、
図2および
図3を用いて、スラスト軸受機構40の概略構成について、説明する。
図2は、本実施例のスラスト軸受機構の概略構成を示す断面図である。
図3は、本実施例のスラスト軸受機構の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、軸方向とは、回転軸が延びる方向(
図1に示すX軸方向)を指し、径方向とは回転軸に対して直交する方向(
図1におけるZ軸方向及びY軸方向)を意味する。また、径方向の外側とは、回転軸から離れる方向を言い、径方向の内側とは回転軸に近づく方向を意味する。更に、便宜上、
図1の紙面上で右側方向を、下流側(圧縮機側からタービン側を見る方向)と言い、左側方向を上流側(タービン側から圧縮機側を見る方向)と言う。また、鉛直方向とは、水平面に対して垂直な方向を言う。なお、本実施例のスラスト軸受機構40は、回転軸の中心よりも上流側に配置されている。したがって、回転軸20は、スラスト軸受機構40の設置位置よりも上流側の部分が短くなり、下流側の部分が長くなる。
【0033】
スラスト軸受機構40は、
図2および
図3に示すように、回転軸20に設けられたスラストカラー50に対応して配置されている。スラストカラー50は、回転軸20から径方向外側に突出している。また、スラスト軸受機構40は、軸方向の両端がケーシング24にはさまれている。つまり、スラスト軸受機構40は、軸方向の両端がケーシング24に固定されることで、軸方向の位置が固定される。スラスト軸受機構40は、スラスト軸受52、54と、支持機構56と、を有する。
【0034】
スラスト軸受52、54は、スラストカラー50を挟んで、軸方向の上流側および下流側に配置されている。スラスト軸受52は、軸方向において、スラストカラー50より下流側に配置されており、スラストカラー50の回転軸20に直交する面と対面している。スラスト軸受54は、軸方向において、スラストカラー50より上流側に配置されており、スラストカラー50の回転軸20の上流側の面と対面している。
【0035】
次に、
図4から
図6を用いて、スラスト軸受について説明する。なお、スラスト軸受52と、スラスト軸受54は、配置される位置が異なるのみで同様の構成であるので、スラスト軸受54を用いて説明する。
図4は、本実施例のスラスト軸受の概略構成を示す正面図である。
図5は、
図4に示すスラスト軸受の一部を示す斜視図である。
図6は、
図4に示すスラスト軸受の一部を示す側面展開図である。
【0036】
スラスト軸受54は、スラストカラー50の回転軸20に直交する面と対面して配置されており、軸方向のスラスト荷重を負担して、スラストカラー50の軸方向への移動を規制する。スラスト軸受54は、いわゆるレベリング機能つきティルティングパッド軸受であり、スラストカラー50からの荷重を支持する複数の軸受パッド(ティルティングパッド)70と、軸受パッド70を支持するレベリング機構72と、軸受を収納するハウジング74と、を有する。レベリング機構72は、軸受パッド70からの荷重を受ける上部レベリングプレート76と、上部レベリングプレート76からの荷重を受ける下部レベリングプレート78、上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78との間に配置され、両者から受ける荷重を伝達する接続ピン80と、ハウジング74に対する下部レベリングプレート78の移動を拘束する移動止めピン82と、を有する。
【0037】
複数の軸受パッド70は、同一形状であり、スラストカラー50と対面する位置に回転軸20を中心として周方向(円周方向)に等間隔に回転軸の中心Cに対して対称に配置されている。軸受パッド70には、潤滑油供給機構41から潤滑油が供給され、スラストカラー50と対面する面に潤滑油膜が形成される。これにより、軸受パッド70とスラストカラー50との間には、潤滑油膜が形成され、スラストカラー50の回転時にスラストカラー50と軸受パッド70との間で生じる摩擦等を低減することができる。軸受パッド70は、スラストカラー50と対面する面とは反対側の面、つまり、上部レベリングプレート76と対面する面の中央部付近にピボット71を有する。ピボット71は、凸球面状の支持具であり、上部レベリングプレート76と接触する。軸受パッド70は、ピボット71を介して上部レベリングプレート76と接触することで、上部レベリングプレート76に対してピボット71を中心に傾動可能となる。ここで、軸受パッド70と上部レベリングプレート76との間には後述する移動止めピン82と同様の連れ回り防止手段が設けられている。
【0038】
ハウジング74は、スラストカラー50から軸受パッド70に荷重が伝達され、更に上部レベリングプレート76、接続ピン80および下部レベリングプレート78を介して伝達された荷重を受け止める支持部材、支持構造物または支持基盤である。ハウジング74は、スラストカラー50と対面する面と軸方向で反対側の面に位置する部材である。調整ライナー60は、軸方向の上流側からハウジング74に固定されている。
【0039】
レベリング機構72は、軸受パッド70とハウジング74との間に配置され、上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78とを有する。上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78とは、回転軸の周方向において、交互に配置されている。下部レベリングプレート78は、ハウジング74側の面の中央部にピボット84を有する。ピボット84は、凸球面状の支持具であり、ハウジング74と接触している。下部レベリングプレート78は、ピボット84のハウジング74の上面との接点を中心にして傾動自由である。
【0040】
レベリング機構72は、上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78との間に接続ピン80を有する。上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78とは、それぞれ、回転軸の回転方向の端部に荷重受け突出部76a、78aが設けられている。接続ピン80は、円柱形状であり、上部レベリングプレート76と下部レベリングプレート78との荷重受け突出部76a、78aの間に、径方向が円柱の軸方向となる向きで配置されている。また、上部レベリングプレート76、各接続ピン80および各下部レベリングプレート78は回転軸を中心として対称に配置されている。下部レベリングプレート78の下面には凹孔78bが形成されており、この凹孔78bに入る形状の移動止めピン82がハウジング74に設けられている。
【0041】
レベリング機構72は、軸受パッド70からの荷重がピボット71、上部レベリングプレート76、接続ピン80、下部レベリングプレート78、ピボット84を介して、ハウジング74に伝達される。
【0042】
スラスト軸受54は、スラストカラー50からの荷重を軸受パッド70で受け、スラストカラー50の軸方向の位置を規制する。また、スラスト軸受54は、すべり軸受であり、軸受パッド70は、スラストカラー50が回転しても、軸方向に回転しない状態でスラストカラー50を支持する。また、スラスト軸受54は、上部レベリングプレート76、接続ピン80および下部レベリングプレート78の組合せにより、上部レベリングプレート76、下部レベリングプレート78が周方向に連動して、軸受パッドの位置を調整することができ、回転軸20の周方向において、軸受パッド70の負担荷重を均等化させることができる。
【0043】
次に、
図2および
図3に加え、
図7から
図12を用いて、支持機構56について説明する。
図7は、本実施例の第1支持機構に係る調整ライナーの概略構成を示す正面図である。
図8は、
図7に示す調整ライナーの概略構成を示す側面図である。
図9は、本実施例の第2支持機構に係る調整ライナーの概略構成を示す正面図である。
図10は、
図9に示す調整ライナーの概略構成を示す側面図である。
図11は、本実施例のスラスト軸受機構の機能を説明するための説明図である。
図12は、比較例のスラスト軸受機構の機能を説明するための説明図である。
【0044】
支持機構56は、2つの調整ライナー(第1支持機構)58と調整ライナー(第2支持機構)60とを組合せて用いる構造である。2つの調整ライナー58、60は、同じ形状でよいが、取付け方法が異なっている。すなわち、ケーシング24内にスラスト軸受52、54を取付ける際、軸の傾きに合わせて、調整ライナー58、60の径方向の厚み変化の方向が互いに逆方向となるように取付ける必要がある。なお、軸が傾く場合でも、スラスト軸受52、54を収納したケーシング24は、常に水平面(水平度)が維持されている。本実施例のケーシング24は、スラスト軸受52を軸方向に支持する軸方向の下流側の端面が水平面に直交する面となり、スラスト軸受54を軸方向に支持する軸方向の上流側の端面が水平面に直交する面となる。以下に調整ライナーの違いを含めて、調整ライナーの構造を説明する。
【0045】
調整ライナー58は、スラスト軸受52の軸方向の下流側の面に配置され、スラスト軸受52に固定されている。調整ライナー58は、軸方向の下流側の面がケーシング24と接触している。調整ライナー58は、軸方向の端部がそれぞれスラスト軸受52とケーシング24とに接触することで、ケーシング24に対するスラスト軸受52の軸方向の位置を所定の位置としている。
【0046】
調整ライナー58は、
図7及び
図8に示すように、回転軸を中心に環状に形成され、径方向の一方の周方向端面から他方の周方向端面に向けて、回転軸中心Cを通り、径方向両側の周方向端面を結ぶ線に沿って厚みが一様に変化する。調整ライナー58は、周方向において、環状部材58aと環状部材58bの2つに分割された部材である。調整ライナー58は、2つの環状部材58a、58bの径方向に形成された面である分割面59同士を接して配置することで、全体として1つのリング形状となる。ここで、分割面59は、水平方向(ケーシング24の水平面に平行な方向)90に対して所定角度傾斜した位置とする。これにより、取り付け時に、2つの環状部材58a、58bを正しい配置で装着しやすくすることができる。
【0047】
調整ライナー58は、
図8に示すように、径方向の一方の周方向端面から他方の周方向端面に向けて、回転軸中心Cを通り、径方向両側の周方向端面を結ぶ線に沿って厚みが変化する。具体的には、調整ライナー58は、
図8の紙面上で径方向上側から径方向下側に向かうに従って厚みが厚くなる形状であり、径方向上側の周方向端面の最少厚みL1と径方向下側の周方向端面の最大厚みL2との関係がL1<L2となる。また、調整ライナー58は、下流側を向く端面58mがケーシング24の水平面に垂直な面となり、下流側を向く端面58nがケーシング24の水平面に垂直な面に対して傾斜した面となる。端面58mは、調整ライナー58の軸方向の下流側の端面である。また、端面58nは、調整ライナー58の軸方向の上流側の端面である。
【0048】
これにより、調整ライナー58は、下流側を向く端面58mがケーシング24の水平面に垂直な面に接している。また、ケーシング24の水平面に垂直な面に対して傾斜した上流側に向く端面58nは、スラスト軸受52に固定される。従って、スラスト軸受52の軸方向の上流側および下流側を向く面は、ケーシングの水平面に対して傾斜した向きを持つことができる。
【0049】
調整ライナー60は、スラスト軸受52の軸方向の上流側の面に配置され、スラスト軸受54に軸方向から固定されている。調整ライナー60は、軸方向の上流側の面がケーシング24と接触している。調整ライナー60は、軸方向の端面60m、60nがそれぞれスラスト軸受54とケーシング24とに接触することで、ケーシング24に対するスラスト軸受54の軸方向の位置を所定の位置としている。
【0050】
調整ライナー60は、
図9及び
図10に示すように、回転軸20を中心に環状に形成され、径方向の一方の周方向端面から他方の周方向端面に向けて、回転軸中心Cを通り、径方向両側の周方向端面を結ぶ線に沿って厚みが一様に変化する。調整ライナー60は、周方向において、環状部材60aと環状部材60bの2つに分割された部材である。調整ライナー60は、2つの環状部材60a、60bの径方向に分割された面である分割面61が接して配置することで、全体として1つのリング形状となる。ここで、分割面61は、水平方向90(ケーシングの水平面に平行な方向)に対して所定角度傾斜した位置とする。これにより、取り付け時に、2つの環状部材60a、60bを正しい配置で装着しやすくすることができる。
【0051】
調整ライナー60は、
図10に示すように、径方向の一方の周方向端面から他方の周方向端面に向けて、回転軸中心Cを通り、径方向両側の周方向端面を結ぶ線に沿って厚みが変化する。具体的には、調整ライナー60は、
図10の紙面上で径方向上側から径方向下側に向かうに従って厚みが薄くなる形状であり、径方向上側の周方向端面の厚みL3と径方向下側の周方向端面の厚みL4との関係がL4<L3となる。また、調整ライナー60は、上流側を向く端面60nがケーシングの水平面に垂直な面に平行な面となり、下流側を向く端面60mケーシング24の水平面に垂直な面に対して傾斜した面となる。端面60mは、調整ライナー60の軸方向の下流側の端面である。また、端面60nは、調整ライナー60の軸方向の上流側の端面である。
【0052】
これにより、調整ライナー60は、上流側を向く端面60nがケーシングの水平面に垂直な面に接しつつ、下流側を向く端面60mは、ケーシングの水平面に垂直な面に対して傾斜した面を形成するスラスト軸受54に固定される。従って、スラスト軸受54の軸方向の上流側および下流側を向く端面は、ケーシングの水平面に対して傾斜した向きを持つことができる。
【0053】
スラスト軸受機構(回転軸支持構造)40は、2つの調整ライナー58、60の取付け位置を、回転軸中心Cを通る線に沿った径方向の厚み変化が互いに逆方向となるように取付ける。例えば、調整ライナー58の軸方向の最少厚みL1を有する周方向端部の位置と、調整ライナー60の最大厚みL3の周方向端部の位置が、周方向で一致するように調整ライナー58、60を取付ければよい。このように取り付ければ、調整ライナー58の軸方向の最大厚みL2を有する周方向端部の位置と、調整ライナー60の軸方向の最少厚みL4を有する周方向端部の位置も、周方向で一致する。すなわち、このように調整ライナー58、60を組み合わせて取り付けることにより、調整ライナー58のスラスト軸受52側の面(上流側を向く端面58n)と調整ライナー60のスラスト軸受54側の面(下流側を向く端面60m)とを傾斜させることができる。更に、調整ライナーの端面58n、60mを傾斜させることで、互いに平行な面が形成でき、スラスト軸受52、54のスラストカラー50との接触面をケーシングの水平面に垂直な面に対して傾斜させ、且つ互いに平行な面とすることができる。
【0054】
ここで、
図11に示すように、回転軸20は、水平方向90に配置しても熱伸びや自重等により撓む。このため、ケーシングの水平面に垂直な面92に対してスラストカラー50の回転軸20の軸方向の中心を通る回転軸に垂直な面(基準面)94が所定角度傾斜した状態となる。具体的には、回転軸20は、軸方向において、上流側から下流側に向かうにしたがって径方向下側に向かう向きで傾斜する。これにより、スラストカラー50は、回転軸に対して基準面94が、径方向上側から径方向下側に向かうにしたがって、回転軸20の上流側に移動する向きに傾斜している。
【0055】
ここで、スラスト軸受機構40は、調整ライナー58、60を、ケーシング24の水平面に垂直な面に設置し、かつ、スラスト軸受52、54と接触する面を基準面94と同様の向きに傾斜させている。すなわち、調整ライナー58、60のスラスト軸受52、54に接触する側の面が、回転軸が傾く方向に対して直交する方向に傾斜する。これにより、スラスト軸受52、54のスラストカラー50と対面する面を、スラストカラー50の傾斜に合わせて傾斜させることができる。
【0056】
これにより、スラスト軸受機構40は、スラストカラー50からスラスト軸受52、54、具体的には軸受パッド70にかかる荷重を、回転軸20の周方向において、より均一化することができる。
【0057】
例えば、
図12に示すように、調整ライナー96、98を周方向に厚みが一定となる形状にした場合、スラスト軸受52、54のスラストカラー50と対面する面がケーシングの水平面に垂直な面92と平行な面となり、対面するスラストカラーの径方向の面(軸方向に直交する面)とは平行にならない。従って、スラストカラー50からの荷重が、スラスト軸受52の径方向上側の一部とスラスト軸受54の径方向下側の一部に集中し、回転軸20の周方向において、荷重が不均一となる。
【0058】
これに対して、本実施例のスラスト軸受機構40は、上述したように、スラストカラー50からスラスト軸受52、54に対してかかる荷重を、回転軸20の周方向において、より均一化することができるため、スラスト軸受け52、54の一部に荷重が集中し、一部の軸受パッド70のメタル温度が上昇し、軸受が損傷することを抑制することができる。これにより、ガスタービン全体としての耐久性を向上させ、寿命を長くすることができる。
【0059】
図13は、変形例の調整ライナーの概略構成を示す正面図である。
図14は、
図13に示す調整ライナーの概略構成を示す側面図である。
図13および
図14に示す調整ライナー102は、上述した調整ライナーと同様に径方向の位置によって厚みが変化する傾斜部104と、傾斜部104に対して、厚みが薄くなり、径方向の位置によらず厚みが一定となる凹部106とが、周方向に交互に配置されている。調整ライナー102は、周方向の位置によって、スラスト軸受と接触する部分と接触しない部分とが交互に設けられる。このように、調整ライナーは、周方向の全周がスラスト軸受またはケーシングと接触している必要はなく、スラスト軸受とケーシングの相対位置を所定の位置とすることができ、スラスト軸受の軸を水平方向に対して、回転軸の自重等の傾きにあわせた方向に傾斜させることができればよい。なお、本変形例に示す調整ライナー102は、いずれの支持機構(第1支持機構、第2支持機構)にも使えるが、2つの調整ナイナーの取付方向を径方向の厚み変化が互いに逆方向となるように取付けた一組の調整ライナーを組み合わせて使用する必要がある。
【0060】
ここで、上記実施例では、調整ライナーにより、スラスト軸受の軸を水平方向に対して、回転軸の自重等による傾きにあわせた方向に傾斜させ、スラストカラーからスラスト軸受にかかる荷重が一部に集中することを抑制したが、位置を調整する機構は、これに限定されない。支持機構は、スラスト軸受のスラストカラーと接触する面を、ケーシングの水平面に垂直な面に対して、所定の方向(上述した方向)に傾斜させることができればよく、種々の機構を用いることができる。
【0061】
図15は、他の実施例のスラスト軸受機構の概略構成を示す断面図である。
図16は、
図15に示すスラスト軸受機構の支持機構を拡大して示す断面図である。
図15および
図16に示す支持機構110は、調整ライナー111と、ボルト112と、を有する。調整ライナー111は、厚みが一定のリング形状の部材である。ボルト112は、ケーシング114に形成されたボルト穴116に挿入されている。ボルト112とボルト穴116とは、周方向に所定の間隔で複数配置されている。本実施例では、ボルト112とボルト穴116が、スラスト軸受の向きを調整する調整機構となる。
【0062】
ボルト112は、調整ライナー111側の端部が、ケーシング114よりも調整ライナー111側に突出し、突出している端部が調整ライナー111と接触する。本実施例のボルト112は、調整ライナー111側の端部が、ケーシング114よりも距離L5、調整ライナー111側に突出している。支持機構110は、ボルト112がケーシング114から軸方向に突出する移動量を、周方向または径方向の位置によって変えることができる。その結果、ボルト112が接触する調整ライナー111のケーシング114の水平面に垂直な面に対する向きつまり傾斜を調整することができる。すなわち、支持機構110は、ボルト112の軸方向の移動量により調整ライナー111の向きを調整することで、スラスト軸受52の向きをケーシングの水平面に垂直な面に対して傾斜した向きとすることができる。
【0063】
このように、支持機構110は、ボルト112を用いた構成としても、上記と同様にスラスト軸受を傾斜させることができる。また、本実施例では、調整ライナー111を配置したが、調整ライナー111を設けずにボルト112をスラスト軸受52の軸方向の下流側の面に接触させてもよい。また、支持機構110は、ボルト112の周方向の位置によって、突出する移動量を変化させることで、傾斜を調整できるため、調整を簡単に行うことができる。なお、
図15において、本実施例に示す支持機構を機能させるためには、スラストカラーを挟んで軸方向の下流側に配置された支持機構110に対し、軸方向の上流側に支持機構120を設ける必要がある。但し、支持機構120は、支持機構110と同じ構造でよいが、ボルト112に相当するボルト122は、軸方向の
上流側から
下流側に向けて調整ライナー121に接触させる構造とする必要がある。ボルト122は、ケーシング124に形成されたボルト穴に挿入されている。上記2つの支持機構110、120を一組の支持機構として組み合わせて、スラストカラーを挟んで配置し、調整ライナーのボルトが接触する面の傾きを互いに径方向に逆向きとなるように調整して使用すればよい。
【0064】
図17は、他の実施例のスラスト軸受機構の概略構成を示す断面図である。
図17に示す支持機構150は、調整ライナー111と、ケーシング152の軸方向の
上流側の端面154と、を有する。調整ライナー111は、厚みが一定のリング形状の部材である。ケーシング152の端面154は、調整ライナー111と接触する面、つまり、スラスト軸受52と対面する面である。端面154は、ケーシングの水平面に垂直な方向に対して角度θ傾斜している。
【0065】
支持機構150は、このように、ケーシング152の端面154をケーシングの水平面に垂直な面92に対して角度θ傾斜させることで、端面154に接触する調整ライナー111およびスラスト軸受52をケーシングの水平面に垂直な方向に対して角度θ傾斜させることができる。なお、角度θは、上述した実施例と同様の傾斜角度である。
【0066】
図18は、他の実施例のスラスト軸受機構の概略構成を示す断面図である。
図18に示す支持機構160は、調整ライナー111と、スラスト軸受162の端面164と、を有する。調整ライナー111は、厚みが一定のリング形状の部材である。スラスト軸受162の端面164は、調整ライナー111と接触する面、つまり、調整ライナー111と対面する面である。端面164は、ケーシングの水平面に垂直な方向に対して角度θ、傾斜している。
【0067】
支持機構160は、このように、スラスト軸受162の端面164をケーシングの水平面に垂直な方向に対して角度θ傾斜させることで、端面164に接触する調整ライナー111およびスラスト軸受162がケーシングの水平面に垂直な面に平行な面であっても、スラスト軸受162の角度θ傾斜させることができる。なお、角度θは、上述した実施例と同様の傾斜角度である。
【0068】
図17および
図18に示す支持機構150、160において、本来の支持機構として機能させるためには、スラストカラーを挟んで軸方向の上流側および下流側に同じ構造の支持機構を配置して、一組の支持機構として使用してもよい。なお、本実施例においても、スラストカラーを挟んで軸方向の上流側および下流側に配置された調整ライナーの傾きが、互いに径方向に逆向きとなるように配置すればよい。
【0069】
なお、
図17および
図18に示すようにケーシングやスラスト軸受の端面に傾斜を設けることでもスラスト軸受を長寿命化させることができるが、径方向に厚みが変化する調整ライナーを用いて傾斜を設けることで、簡単に調整することができる。