特許第6222993号(P6222993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6222993
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】2軸式ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/28 20060101AFI20171023BHJP
   F02C 9/20 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 9/18 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 9/22 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 7/042 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 3/10 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 3/073 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 9/54 20060101ALI20171023BHJP
   F02C 9/52 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F02C9/28 C
   F02C9/20
   F02C9/18
   F02C9/22 Z
   F02C7/042
   F02C3/10 501
   F02C3/10
   F02C3/073
   F02C9/54
   F02C9/52
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-111564(P2013-111564)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-231745(P2014-231745A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 健治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 英俊
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−505261(JP,A)
【文献】 特表昭61−501104(JP,A)
【文献】 特開昭60−222531(JP,A)
【文献】 特開2011−202515(JP,A)
【文献】 特開2010−053855(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0150633(US,A1)
【文献】 特開2005−188411(JP,A)
【文献】 特開2011−074791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/28
F02C 3/073
F02C 3/10
F02C 7/042
F02C 9/18
F02C 9/20
F02C 9/22
F02C 9/52
F02C 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器及び高圧タービンを有するガスジェネレータと、
前記高圧タービンからの排気ガスで駆動する固定翼低圧タービンと、
前記ガスジェネレータに接続された負荷調整器と、
前記高圧タービンの入口温度又は前記圧縮機の風量のいずれか一方の値が他方の値に先んじて定格値に到達した場合に、前記他方の値とその定格値との差を小さくする指令値を演算して前記負荷調整器に出力し、前記負荷調整器を駆動して前記他方の値を定格値に近付ける制御装置と
を備えたことを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項2】
請求項1の2軸式ガスタービンにおいて、
前記負荷調整器は発電機であり、
前記制御装置は、前記圧縮機の風量が定格値に到達した場合に、前記発電機に発電指令を出力することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項3】
請求項1の2軸式ガスタービンにおいて、
前記負荷調整器は燃料圧縮機であり、
前記制御装置は、前記圧縮機の風量が定格値に到達した場合に、前記燃料圧縮機を駆動することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項4】
請求項1の2軸式ガスタービンにおいて、
前記負荷調整器は、前記圧縮機から圧縮空気を抽気する抽気管路に設けた抽気流量調整弁であり、
前記制御装置は、前記圧縮機の風量が定格値に到達した場合には、前記抽気流量調整弁の開度を上げることを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項5】
請求項4の2軸式ガスタービンにおいて、前記抽気管路は、前記低圧タービンの入口部に接続していることを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項6】
請求項1の2軸式ガスタービンにおいて、
前記負荷調整器は電動機であり、
前記制御装置は、前記高圧タービンの入口温度が定格値に到達した場合に、前記電動機に動力指令を出力することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項7】
請求項6の2軸式ガスタービンにおいて、前記電動機を起動用電動機で兼ねることを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項8】
請求項1の2軸式ガスタービンにおいて、
前記負荷調整器は発電電動機であり、
前記制御装置は、前記圧縮機の風量が定格値に到達した場合に、前記発電電動機に発電指令し、前記高圧タービンの入口温度が定格値に到達した場合に、前記電動電動機に動力指令を出力することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項9】
請求項8の2軸式ガスタービンにおいて、前記発電電動機にインバータを用いることを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項10】
請求項2−9のいずれかの2軸式ガスタービンにおいて、
前記圧縮機の入口に設けた入口案内翼を備え、
前記制御装置は、前記入口案内翼の開度を基に前記風量を演算することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項11】
請求項2−9のいずれかの2軸式ガスタービンにおいて、
前記低圧タービンの排気ガスの温度を測定する温度計を備え、
前記制御装置は、前記温度計の測定値を基に前記高圧タービンの入口温度を演算することを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項12】
圧縮機、燃焼器及び高圧タービンを有するガスジェネレータと、前記高圧タービンからの排気ガスで駆動する固定翼低圧タービンと、前記ガスジェネレータに接続された負荷調整器とを備えた2軸式ガスタービンの運転方法であって、
前記高圧タービンの入口温度又は前記圧縮機の風量のいずれか一方の値が他方の値に先んじて定格値に到達した場合に、前記他方の値とその定格値との差を小さくする指令値を演算して前記負荷調整器に出力し、前記ガスジェネレータの負荷を調整して前記他方の値を定格値に近付けることを特徴とする運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2軸式ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、2軸式ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、及び高圧タービンを備えたガスジェネレータと、負荷機器に接続される低圧タービン(パワータービン)とを有している。低圧タービンの回転軸は、ガスジェネレータの回転軸(ガスジェネレータ軸)から分離されている。ガスジェネレータでは、圧縮機で生成した圧縮空気を燃焼器で燃料とともに燃焼し、燃焼器で生成された燃焼ガスによって高圧タービンを駆動して圧縮機の駆動力を得る。低圧タービンは、高圧タービンを駆動した燃焼ガスによって駆動して負荷機器を駆動する(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−25069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、2軸式ガスタービンでは、圧縮機の風量(圧縮機の作動流体流量)又は高圧タービン入口温度が定格に到達することによって定格運転状態となる。一般に設計温度よりも気温が低い場合には、高圧タービン入口温度が定格値に達する前に圧縮機風量が定格値に到達し、定格運転に移行した後も高圧タービン入口温度が定格値まで上昇しない。反対に、設計温度よりも気温が高い場合には、圧縮機風量が定格値に到達する前に高圧タービン入口温度が定格値に到達し、定格運転時に風量が定格値まで上昇しない。したがって、気温が設計温度と異なる条件下では、気温が設計条件の条件下(高圧タービン入口温度及び風量がともに定格値に到達する条件下)に比べて性能が低下してしまう。
【0005】
それに対し、低圧タービンの初段静翼を可動翼(可変静翼)とし、可動翼の開度を調整することにより、高圧タービン及び低圧タービンの出力(動力)の割合を変更することができる。この場合、大気温度によらず高圧タービン入口温度及び風量を定格値まで上昇させることができる。しかし、近年の燃焼温度の上昇に伴って低圧タービンの入口温度は上昇してきており、低圧タービンの初段静翼を冷却翼化する必要性が生じてきていて、低圧タービンの初段静翼を可動翼とすることが難しくなってきている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、低圧タービンの初段に可変静翼を用いることなく、任意の大気温度で高圧タービンの入口温度及び風量を定格値まで上昇させることができる2軸式ガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機、燃焼器及び高圧タービンを有するガスジェネレータと、前記高圧タービンからの排気ガスで駆動する固定翼低圧タービンと、前記ガスジェネレータに接続された負荷調整器と、前記高圧タービンの入口温度又は前記圧縮機の風量のいずれか一方の値が他方の値に先んじて定格値に到達した場合に、前記他方の値とその定格値との差を小さくする指令値を演算して前記負荷調整器に出力し、前記負荷調整器を駆動して前記他方の値を定格値に近付ける制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低圧タービンの初段に可変静翼を用いなくても、高圧タービンと低圧タービンの動翼バランスを変更することができ、任意の大気温度で高圧タービンの入口温度及び風量を定格値まで上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービンに備えられた制御装置による発電電動機の制御手順を表すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの出力(動力)の大気温度特性を示した図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの出力(動力)の大気温度特性の他の例を示した図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。
図7】本発明の第4の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
1.2軸式ガスタービン
図1は本発明の第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図である。
【0012】
同図に示した2軸式ガスタービン20は、ガスジェネレータ21、出力タービン22、発電電動機23及び制御装置24を備えている。
【0013】
(1)ガスジェネレータ
ガスジェネレータ21は、圧縮機11、燃焼器12及び高圧タービン13を主な要素として備えている。圧縮機11は、大気中から取り込んだ空気を圧縮して圧縮空気を生成する。この圧縮機11の入口(空気取込み口)には、IGV(入口案内翼)1が設けられている。IGV1はIGV駆動装置(図示せず)により駆動し、IGV1の開度を調整することによって圧縮機11の空気取込み量が変化する。IGV1には、そのベーンの角度(IGV1の開度)を検出する角度検出器2が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11からの圧縮空気と燃料とともに混合燃焼させて燃焼ガス17を生成する。高圧タービン13は、当該高圧タービン13のロータを兼ねたガスジェネレータ軸3を介して圧縮機11に接続されていて、燃焼器12からの燃焼ガス17によって得た回転動力を圧縮機11に伝達する。
【0014】
なお、IGV1の開度は、例えば出力タービン22に接続した負荷機器15を発電機とした場合、上位の制御装置(図示せず)からの発電出力指令(MWD)、低圧タービン14の出力(負荷機器15の発電出力)、低圧タービン14の回転数等を基に、所定のプログラムに従って制御装置24(又は他の制御装置)によって制御される。
【0015】
(2)出力タービン
一方の出力タービン22は、低圧タービン14及び負荷機器15を主な要素として備えていて、低圧タービン14のロータを兼ねた出力タービン軸4を介して低圧タービン14と負荷機器15とが接続されている。低圧タービン14は、全段落の静翼に非可動型の固定静翼を用いた固定翼低圧タービンである。上記高圧タービン13を駆動して圧力が低下した燃焼ガス18が高圧タービン13から低圧タービン14に送られ、低圧タービン14が燃焼ガス18によって駆動する。低圧タービン14で得られた回転動力は負荷機器15に伝達されて負荷機器15を駆動する。負荷機器15は代表的には発電機であるが、ポンプ等も適用され得る。低圧タービン14を駆動した燃焼ガスは排気ガス19として排出される。低圧タービン14の排気管路には、排気ガス19の温度を測定する温度計5が設けられている。
【0016】
(3)発電電動機
発電電動機23はガスジェネレータ21の負荷を調整する負荷調整器の役割を果たすものであり、ガスジェネレータ軸3を介してガスジェネレータ21の圧縮機11に接続されている。この発電電動機23には、例えばインバータを用いることができる。
【0017】
(4)制御装置
制御装置24は、発電電動機23を制御して高圧タービン13と低圧タービン14の負荷(動力)の割合を調整する手順を実行する。具体的には、制御装置24は、高圧タービン13の入口温度又は圧縮機11の風量(作動流体流量)のいずれか一方の値が他方の値に先んじて定格値に到達した場合に、発電電動機23を駆動して他方の値を定格値に近付ける機能を果たす。定格値とは、高圧タービン13の入口温度又は圧縮機11の風量が当該値に到達したら2軸式ガスタービン20の運転状態が定格運転となる値であり、高圧タービン13の入口温度又は圧縮機11の風量についてそれぞれ設定されている。定格値は、高圧タービン13の入口温度又は圧縮機11の風量についてそれぞれ特定の値を設定することができるが、所定の範囲(上限値及び下限値を持つ値)として設定することもできる。
【0018】
例えば、圧縮機11の風量が定格値に到達した場合、制御装置24は、発電電動機23に発電指令を出力して(例えば発電電動機23に負荷電流を流して発電負荷をかけ)、発電電動機23を発電機として駆動する。発電電動機23に対する発電指令値としては、高圧タービン13の入口温度とその定格値との差を小さくする値が演算され出力される。一方、高圧タービン13の入口温度が定格値に到達した場合、制御装置24は、電動電動機23に動力指令を出力して(発電電動機23に駆動電力を供給して)、発電電動機23を電動機として駆動する。発電電動機23に対する動力指令値としては、圧縮機11の風量とその定格値との差を小さくする値が演算され出力される。仮に高圧タービン13の入口温度と圧縮機11の風量が同時に各定格値に到達した場合には、発電電動機23は無負荷運転される(空転する)。ガスジェネレータ軸3にクラッチを介して接続した場合には、無負荷運転させる代わりに発電電動機23をガスジェネレータ軸3から切り離しても良い。
【0019】
なお、本実施の形態では、圧縮機11の風量は、角度検出器2の検出信号(IGV1の開度)を基に制御装置24によって演算されることとし、IGV1が全開(若しくは設定開度以上)の状態を定格風量とすることができる。但し、風量の演算はこれに限定されず、例えば圧縮機11の入口に風量計を設けて吸気流量から演算する等の他の測定方法を採っても良い。一方、高圧タービン13の入口温度は、例えば温度計5の測定値(低圧タービン14の排気ガス19の温度)を基に制御装置24によって演算することができる。但し、高圧タービン13の入口温度の演算はこれに限定されず、可能であれば高圧タービン13の入口に温度計を設けて直接測定する等の他の測定方法を採っても良い。
【0020】
2.動作
図2は制御装置24による発電電動機23の制御手順を表すフローチャートである。
【0021】
2軸式ガスタービン20の起動運転開始後、制御装置24は、圧縮機11の風量F及び高圧タービン13の入口の温度Tを演算する(ステップS101,S102)。ステップS101,S102の順序は逆であっても良い。続いて、制御装置24は、風量Fが定格値に達しているか否かを判定するとともに(ステップS103)、温度Tが定格値に達しているか否かを判定する(ステップS104,S105)。風量Fと温度Tに関する判定の順序は逆でも良い。
【0022】
ステップS103等の判定の結果、風量Fと温度Tのいずれもが定格値に達していないと判定した場合、制御装置24は、手順をS101に戻して風量F及び温度Tを再度演算する(ステップS103→S105→S101)。
【0023】
ステップS103等の判定の結果、風量Fに先んじて温度Tのみが定格値に達したと判定した場合、制御装置24は、発電電動機23に発電指令を出力した上で(ステップS106)、手順をS101に戻す(ステップS103→S105→S106→S101)。
【0024】
ステップS103等の判定の結果、温度Tに先んじて風量Fのみが定格値に達したと判定した場合、制御装置24は、発電電動機23に動力指令を出力した上で(ステップS107)、手順をS101に戻す(ステップS103→S104→S107→S101)。
【0025】
そして、以上の制御手順を実行した結果、風量F及び温度Tの双方が定格値に到達した場合、制御装置24は、同図の制御手順を終了する(ステップS101→S102→S103→S104→END)。これによって起動運転が完了し、2軸式ガスタービン20が定格運転状態に移行する。
【0026】
3.効果
図3は本実施の形態に係る2軸式ガスタービンの出力(動力)の大気温度特性を示した図である。同図中の実線が発明を適用した場合(図2のように発電電動機23を制御した場合)の大気温度特性、点線が発明を適用しない場合(例えば発電電動機23をガスジェネレータ21に接続しない場合)の大気温度特性を表している。
【0027】
同図に示したように、2軸式ガスタービン20においては、発電電動機23の有無に関わらず、設計温度(特定の大気温度)下で高圧タービンの入口温度及び圧縮機の風量の双方が定格値に達するように設計されている。発電電動機23を用いない場合、設計温度よりも大気温度が低い条件下では、入口温度が定格値に達しない状態で風量が定格値に到達して定格運転に移行してしまい、定格運転に移行した後も風量は定格値より低いままである。反対に、設計温度よりも大気温度が高い条件下では、風量が定格値に達しない状態で入口温度が定格値に到達して定格運転に移行してしまい、定格運転に移行した後も入口温度は定格値より低いままである。したがって、大気温度が設計温度と異なる条件下では、設計温度の条件下に比べて性能が低下する。
【0028】
それに対し、図2で説明したように発電電動機23を制御した場合、設計温度よりも大気温度が低い条件下では、発電電動機23が発電機として駆動することで高圧タービン13に負荷が与えられる。高圧タービン13に負荷が与えられると同一の高圧タービン入口温度に対して釣り合う圧縮機風量が減少する。すなわち、同一の圧縮機風量でバランスがとれる高圧タービン入口温度が上昇する。したがって、設計温度よりも大気温度が低い条件下においても、図3に示したように高圧タービン入口温度を定格値まで上昇させることができ、定格運転時において高圧タービン入口温度及び圧縮機風量がともに定格値に達した状態とすることができる。
【0029】
反対に、設計温度よりも大気温度が高い条件下では、発電電動機23が電動機として駆動することで高圧タービン13に動力が与えられる。高圧タービン13に動力が与えられると同一の高圧タービン入口温度に対して釣り合う圧縮機風量が増加する。したがって、設計温度よりも大気温度が高い条件下においても、図3に示したように圧縮機風量を定格値まで上昇させることができ、定格運転時において高圧タービン入口温度及び圧縮機風量がともに定格値に達した状態とすることができる。
【0030】
したがって、低圧タービン14の初段に可変静翼を用いることなく、任意の大気温度で高圧タービン13の入口温度及び圧縮機11の風量の双方を定格値まで上昇させることができ、大気温度特性を向上させることができる。
【0031】
また、ガスジェネレータ21の回転速度が一定になるとは限らないが、発電電動機23にインバータを使用することによって、ガスジェネレータ21の回転数変動に柔軟に対応することができる。
【0032】
4.その他
本実施の形態においては、負荷調整器として発電電動機23を用い、設計温度に対して大気温度が低い場合と高い場合の双方に対応する場合を例示して説明したが、設計温度に対して大気温度が低い場合と高い場合のいずれか一方に対応する構成とすることも考えられる。この場合、発電電動機23に代えて、発電機又は電動機を用いることができる。
【0033】
例えば発電専用の発電機をガスジェネレータ21に接続する場合、圧縮機11が定格風量に到達した場合に制御装置24から発電機に発電指令が出力されるようにすることで、通常では定格運転時に高圧タービン入口温度が定格値に到達しない条件下において高圧タービン入口温度を定格値まで上昇させることができる。このとき、設計温度よりも大気温度が高い場合に圧縮機風量を増加させることはできないが、図4に示したように2軸式ガスタービン20の設置場所において想定される大気温度の温度範囲の上限付近に設計温度を設定することで、多くの場面で奏功することができる。発電機を用いる場合、発電電動機23を用いる場合に比べて設備を低廉化することができる。
【0034】
また、例えば動力アシスト専用の電動機をガスジェネレータ21に接続する場合、高圧タービン入口温度が定格値に到達した場合に制御装置24から電動機に動力指令が出力されるようにすることで、通常では定格運転時に圧縮機風量が定格値に到達しない条件下において圧縮機風量を定格値まで増加させることができる。このとき、設計温度よりも大気温度が低い場合に高圧タービン入口温度を上昇させることはできないが、2軸式ガスタービン20の設置場所において想定される大気温度の温度範囲の下限付近に設計温度を設定することで、多くの場面で奏功することができる。電動機を用いる場合、発電電動機23を用いる場合に比べて設備を低廉化することができる。また、電動機の容量が小さくて足りる場合には、ガスジェネレータ21の起動用に一般に用いられる起動装置で電動機を代替することができ、この場合にはより低廉に2軸式ガスタービン20を構成することができ、設置スペースやメンテナンス性の面でも有利である。
【0035】
(第2の実施の形態)
図5は本発明の第2の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。既に説明したものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0036】
図4に示したように、本実施の形態に係る2軸式ガスタービン20Aが第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービン20と相違する点は、発電電動機23に代えて負荷調整器として燃料圧縮機25をガスジェネレータ21に連結した点である。燃料圧縮機25は燃料ガスを圧縮し、圧縮した燃料ガス26を燃焼器12に供給するものであり、ガスジェネレータ軸3を介して圧縮機11に接続している。制御装置24は、圧縮機11の作動流体が定格流量に到達した場合(例えばIGV1が全開又は設定開度以上になった場合)に燃料圧縮機25を駆動してガスジェネレータ21に負荷をかけ始める。これによって設計温度よりも大気温度が低い条件下においても、低圧タービン14の初段に可変静翼を用いることなく高圧タービン13の入口温度及び圧縮機11の風量の双方を定格値まで上昇させることができ、大気温度特性を向上させることができる。他の構成については第1の実施の形態と同様である。
【0037】
なお、本実施の形態の構成では設計温度よりも大気温度が高い場合に圧縮機風量を増加させることはできないが、先に図4に示したように2軸式ガスタービン20Aの設置場所において想定される大気温度の温度範囲の上限付近に設計温度を設定することで、多くの場面で奏功することができる。
【0038】
(第3の実施の形態)
図6は本発明の第3の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。既に説明したものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0039】
図6に示したように、本実施の形態に係る2軸式ガスタービン20Bが第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービン20と相違する点は、発電電動機23に代えて負荷調整器として抽気流量調整弁27を設けた点である。抽気流量調整弁27は、圧縮機11から圧縮空気を抽気する抽気管路28に設けられている。抽気管路28は、例えば圧縮機11の中間段と低圧タービン14の入口部とを接続している。本実施の形態の場合、制御装置24は、圧縮機11の風量が定格値に到達した場合に、抽気流量調整弁27の開度を上げて低圧タービン14の初段静翼への冷却空気流量を増加させる。他の点は第1の実施の形態と同様である。
【0040】
冷却空気流量(抽気量)を増やすと、圧縮機風量が同一でも燃焼温度が上昇し高圧タービン入口温度が上昇する。したがって、設計温度よりも大気温度が低い条件下において、冷却空気流量を増加させることによって高圧タービン入口温度を定格値まで上げ、性能を向上させることができる。冷却空気流量を増やすと作動流体の流量が減少する分だけ効率が低下するが、燃焼温度上昇による性能向上が冷却空気流量の増加による性能低下を上回れば性能が向上する。
【0041】
なお、本実施の形態においては、基本的に設計温度よりも大気温度が低い場合に高圧タービン入口温度を上昇させるための構成であるが、例えば設計温度よりも大気温度が高い場合に圧縮機風量を増加させる場合に、抽気流量調整弁27の開度を下げて冷却空気流量を減少させる構成も考えられる。この場合には、設計温度に対して大気温度が高い場合と低い場合の双方に対応できる。
【0042】
また、冷却空気流量を増加させた場合の燃焼温度上昇の原因は次の3点である。
(1)燃焼空気流量の減少
(2)高圧タービンへの燃焼ガス流量の減少による高圧タービンの出力低下
(3)高圧タービン出口以降における冷却空気の流入によるバランス変化
このため、冷却空気の流入箇所としては、前述したように低圧タービン14の初段前側が最も効果的である。
【0043】
(第4の実施の形態)
図7は本発明の第4の実施の形態に係る2軸式ガスタービンの構成図であり、図1に対応する図である。既に説明したものについては、同図において既出図面と同符号を付して説明を省略する。
【0044】
図7に示したように、本実施の形態に係る2軸式ガスタービン20Cが第1の実施の形態に係る2軸式ガスタービン20と相違する点は、低圧タービン14の初段静翼29aを、設置場所において圧縮機風量及び高圧タービン入口温度の双方が定格値に到達するようにその翼部の出口角度が設計された初段静翼29bに交換することである。ガスジェネレータ21に発電電動機23(図1参照)や抽気流量調整弁27(図6参照)等を設けても良いが省略することもできる。初段静翼29bは、2軸式ガスタービン20Cの設置場所における大気温度の基準値(想定値)を基に、圧縮機11の風量が定格値に到達した際に高圧タービン入口温度も定格値に到達するように、高圧タービン13及び低圧タービン14の動力配分を考慮して設計された固定静翼である。そして、初段静翼29aでは圧縮機11の風量が定格値に到達した際に高圧タービン入口温度も定格値に到達しない場合、低圧タービン14の初段に初段静翼29cを取り付けて運転することにより、2軸式ガスタービン20Cは圧縮機風量が定格値に到達した際に高圧タービン入口温度も定格値に達する。
【0045】
低圧タービン14の初段静翼29bは、スロート面積を大きくすると高圧タービンの出力が増加するので、高圧タービン入口温度が同一でも、スロート面積が小さい場合に比べて圧縮機風量は増加する。このため、比較的気温の高い地域で2軸式ガスタービン20Cを運転する場合には、スロート面積の大きいタービン初段静翼29bを使用することで性能が向上する。反対に、低圧タービン14の初段静翼29bのスロート面積を小さくすると高圧タービンの出力が減少するので、高圧タービン入口温度が同一でも、スロート面積が大きい場合に比べて圧縮機風量は減少する。これは同一圧縮機風量で釣り合う高圧タービン入口温度が増加することを意味する。このため、比較的気温の低い地域で2軸式ガスタービン20Cを運転するには、スロート面積の小さいタービン初段静翼29bを使用することで性能が向上する。
【0046】
よって、低圧タービン14においてスロート面積の異なる複数の初段静翼29bを設置場所によって使い分けることによって、高圧タービン入口温度及び圧縮機風量を定格値に到達させることができ、性能を向上させることができる。
【0047】
(その他)
各実施の形態は個別に実施しても効果が得られるが、複数の実施の形態を組み合わせて実施することもできる。また、各実施の形態に例示した構成は代表例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、軸流型の2軸式ガスタービンに発明を適用した場合を例示して説明したが、例えば遠心型の2軸式ガスタービンに発明を適用することもできる。但し、遠心型の2軸式ガスタービンではIGVは一般に用いられず、圧縮機風量は圧縮機の回転数に依存する。したがって、圧縮機風量が定格値に達したか否かについては、例えば圧縮機に回転数検出器を設け、回転数検出器の検出信号によって圧縮機の回転数が定格値に達したか否かを制御装置で判断することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 IGV(入口案内翼)
5 温度計
11 圧縮機
12 燃焼器
13 高圧タービン
14 低圧タービン
20,20A−C 2軸式ガスタービン
21 ガスジェネレータ
23 発電電動機(負荷調整器)
24 制御装置
25 燃料圧縮機(負荷調整器)
27 抽気流量調整弁(負荷調整器)
28 抽気管路
29a,b 初段静翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7