特許第6223008号(P6223008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223008
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 9/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G01D9/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-126776(P2013-126776)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1472(P2015-1472A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 健明
(72)【発明者】
【氏名】小山 敦史
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−118532(JP,A)
【文献】 特開平05−045181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00 − 12
G01D 9/00 − 42
G01D 15/00 − 34
G01R 13/00 − 42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の電気的パラメータを測定して測定値を出力する測定部と、
前記測定値が予め規定された判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定する判定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、
前記測定部は、複数の測定チャンネルを有して当該測定チャンネル毎に予め規定された前記電気的パラメータを測定可能に構成され、
前記処理部は、前記各測定チャンネルのうちの少なくとも1つの当該測定チャンネルで測定された前記測定値を対象とする前記判定処理において、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された前記測定チャンネルの前記測定値を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該測定値を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理と、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された1つの前記測定チャンネルの前記測定値を使用した予め設定された演算式の演算処理による演算結果を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該演算結果を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理と、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された複数の前記測定チャンネルの前記測定値を使用した予め設定された演算式の演算処理による演算結果を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該演算結果を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理とを実行可能に構成されている測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定値が判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定する処理を実行可能に構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、出願人は、予め規定された測定処理を実行して測定値を出力する通常の測定モードに加えて、比較測定モードや偏差測定モードでの測定処理を実行可能な測定装置を特開平6−147932号公報に開示している。この場合、比較測定モードでは、予め設定された上限値および下限値と測定値とが比較され、測定値が下限値を下回っているときには、「Lo」との文字列が表示され、測定値が上限値を超えているときには、「Hi」との文字列が表示され、かつ測定値が下限値以上で上限値以下のときには、「GO」との文字列が表示される。また、偏差測定モードでは、予め規定された基準値と測定値との偏差が演算され、演算結果が、カウント差(偏差値)、またはパーセント(基準値に対する偏差値の割合)を示す数値で表示される。
【0003】
この測定装置の使用に際しては、まず、下限値および上限値を設定する。この場合、出願人が開示している測定装置では、下限値および上限値として互いに相違する値が設定されたときに、CPUが、比較測定モードでの測定処理の実行を指示されたと判別し、設定された下限値および上限値と測定値とを比較して上記したように比較の結果を表示させる。また、出願人が開示している測定装置では、下限値および上限値として互いに等しい値が設定されたときに、CPUが、偏差測定モードでの測定処理の実行を指示されたと判別し、設定された下限値(または、上限値)を基準値として測定値との偏差を演算し、上記したように、カウント差、またはパーセントを示す数値を表示させる。これにより、所望する測定結果が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−147932号公報(第2−3頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、出願人が開示している測定装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している測定装置では、下限値および上限値として任意の値をそれぞれ設定することで、測定モードの切換え操作を行うことなく、設定した値に応じて比較測定モード、または偏差測定モードでの測定処理が実行される構成が採用されている。一方、この種の測定装置の使用形態の1つとして、例えば、電子機器等の製造ラインにおいて、複数の製品を対象として抵抗値等をそれぞれ測定したり、1つの製品における複数の検査箇所について抵抗値等をそれぞれ測定したりして、各測定値が判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定するといった形態が挙げられる。そこで、出願人は、上記の測定装置を多チェンネル化し、各測定チャンネル毎に、設定した値に応じて比較測定モード、または偏差測定モードでの測定処理を実行可能な測定装置を開発した(図示せず)。
【0006】
この場合、出願人が開発した多チャンネルの測定装置において、例えば複数の製品を対象として比較測定モードで抵抗値等を測定し、各測定値が判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定する際には、各測定チャンネル毎に任意の下限値および上限値(互いに相違する値)を設定する。これにより、各測定チャンネル毎に比較測定モードでの測定を指示する操作を行うことなく、各測定チャンネル毎に「Lo」、「Hi」および「GO」との文字列のうちのいずれかが判定結果として表示される。また、出願人が開発した多チャンネルの測定装置において、例えば複数の製品を対象として偏差測定モードで抵抗値等を測定する際には、各測定チャンネル毎に任意の下限値および上限値(互いに等しい値)を設定する。これにより、各測定チャンネル毎に偏差測定モードでの測定を指示する操作を行うことなく、各測定チャンネル毎に演算してカウント差、またはパーセントが表示される。
【0007】
このように、出願人が開発した多チャンネルの測定装置では、上限値および下限値を設定する操作を各測定チャンネル毎にそれぞれ実施するだけで各測定チャンネル毎に任意の測定モードで測定処理を実行させることができるため、比較測定モードと偏差測定モードとのいずれの測定モードで測定処理を実行するかを設定する操作を上限値および下限値等を設定する操作とは別個に実施しなくて済む分だけ、利用者にかかる負担が軽減される。しかしながら、出願人が開示した多チャンネルの測定装置では、上限値および下限値を設定する操作(判定処理用の値を設定する操作)を各測定チャンネル毎にそれぞれ実施しなくてはならず、測定チャンネルの数が多数のときに、この設定作業が煩雑となっている現状がある。したがって、この点を改善するのが好ましい。
【0008】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、判定用測定値範囲の設定に要する負担を十分に軽減し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、測定対象の電気的パラメータを測定して測定値を出力する測定部と、前記測定値が予め規定された判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定する判定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、前記測定部は、複数の測定チャンネルを有して当該測定チャンネル毎に予め規定された前記電気的パラメータを測定可能に構成され、前記処理部は、前記各測定チャンネルのうちの少なくとも1つの当該測定チャンネルで測定された前記測定値を対象とする前記判定処理において、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された前記測定チャンネルの前記測定値を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該測定値を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理と、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された1つの前記測定チャンネルの前記測定値を使用した予め設定された演算式の演算処理による演算結果を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該演算結果を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理と、前記少なくとも1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された複数の前記測定チャンネルの前記測定値を使用した予め設定された演算式の演算処理による演算結果を上限値および下限値のいずれかとする測定値範囲、並びに当該演算結果を基準値とする予め指定された測定値範囲のいずれかを前記判定用測定値範囲として規定する処理とを実行可能に構成されている
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の測定装置によれば、処理部が、各測定チャンネルのうちの少なくとも1つの測定チャンネルで測定された測定値を対象とする判定処理において、1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された測定チャンネルの測定値を基準値とする予め指定された測定値範囲を判定用測定値範囲として規定して上記の少なくとも1つの測定チャンネルの測定値が判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定することにより、判定処理用の判定用測定値範囲について、その下限値および上限値や基準値を各測定チャンネル毎にそれぞれ入力する煩雑な設定作業を実行することなく、いずれかの測定チャンネルの測定値に応じて他の測定チャンネルの下限値および上限値や基準値を容易に規定させることができる。これにより、判定用測定値範囲の設定に要する負担を十分に軽減することができる。
【0012】
また、処理部が、判定処理において、予め設定された演算式の演算処理を実行して判定用測定値範囲としての予め指定された測定値範囲の上限値下限値および基準値のいずれかを規定することにより、他の測定チャンネルの測定値と相関関係を有する測定値が測定されるべき測定チャンネルについては、その相関関係を示す演算式を予め登録しておくことで、所定の測定チャンネルの測定値から演算される値を下限値上限値および基準値とする判定用測定値範囲が自動的に規定されるため、この種の装置に不慣れな利用者であっても、判定用測定値範囲を誤って設定することなく、判定処理を確実かつ容易に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】抵抗測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】判定条件設定画面10の一例を示す表示画面図である。
図3】判定条件設定画面10の他の一例を示す表示画面図である。
図4】判定条件設定画面10のさらに他の一例を示す表示画面図である。
図5】判定条件設定画面10aの一例を示す表示画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示す抵抗測定装置1は、「測定装置」の一例であって、接断切換え部2、測定部3、操作部4、表示部5、処理部6および記憶部7を備えている。
【0016】
接断切換え部2は、いわゆる「マルチプレクサ(スキャナ)」であって、測定部3および処理部6と相俟って「測定部」を構成する。この接断切換え部2は、測定部3の制御に従い、測定対象に接続された複数の信号ケーブル2a,2a・・のうちの指定された4本を測定部3に接続する(四端子法による抵抗値の測定を目的として信号ケーブル2a,2a・・と測定部3との接断を切り換える処理)。測定部3は、処理部6の制御に従い、接断切換え部2を制御して各信号ケーブル2aの接断を制御すると共に、接断切換え部2によって接続された4本の信号ケーブル2a(電流供給用の2本の信号ケーブル2a、および電圧測定用の2本の信号ケーブル2a)を介して測定対象の抵抗値(「電気的パラメータ」の一例)を測定し、測定値を示す測定値データD1(「測定値」の一例)を生成して出力する。
【0017】
この場合、本例の抵抗測定装置1では、一例として、接断切換え部2によって測定部3に順次接続される上記の4本の信号ケーブル2aの組合わせが42種類用意されており、これらの各組合わせがそれぞれ「測定チャンネル」に相当する(「測定チャンネル」が42チャンネルの一構成例)。また、本例の抵抗測定装置1では、上記の各「測定チャンネル(4本の信号ケーブル2aの組合わせ)」に関し、接断切換え部2による切り換え順序に応じて「STEP01」〜「STEP42」のようにSTEP番号が付される。したがって、本明細書においては、以下、「測定チャンネル」について「STEP」ともいう。
【0018】
操作部4は、動作条件(測定条件)等を設定したり、処理開始/停止を指示したりする各種操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部6に出力する。表示部5は、処理部6の制御に従い、各STEP毎の測定条件を設定する測定条件設定画面や、測定結果を示す測定結果表示画面などを表示する(図示せず)。なお、各種の表示画面を表示する表示部を一体的に備えている構成を例に挙げて説明するが、外部装置としての「表示装置(表示部)」に各種の表示画面を表示させる構成を採用することもできる。
【0019】
処理部6は、抵抗測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部6は、上記した測定条件設定画面を表示部5に表示させて各STEP毎の測定条件を設定させ、設定された条件に従って測定手順データD0を生成して記憶部7に記憶させる。この場合、本例の抵抗測定装置1では、通常の測定処理(抵抗値を測定して測定値データD1を取得する処理)だけでなく、測定値データD1の値が予め規定された判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定する判定処理(コンパレータ処理)を、各STEP毎に任意に実行させることができるように構成されている。したがって、上記の測定条件設定画面において判定処理を実行するように指定されたSTEPが存在するときには、処理部6は、判定条件設定画面10,10a等を表示させて「判定用測定値範囲」を設定させ、設定された条件に従って測定手順データD0を生成して記憶部7に記憶させる。
【0020】
さらに、処理部6は、記憶部7に記憶させた測定手順データD0に従い、測定部3を制御して各STEP毎に抵抗値を順次測定させ、測定部3から出力される測定値データD1をSTEP番号に対応付けて記憶部7に記憶させる。また、処理部6は、上記の判定処理を実行するように設定されているSTEPについては、そのSTEPの測定値データD1と測定手順データD0とに基づき、測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」内の値であるか否かを判定し、その判定結果を判定結果データD2として記憶部7に記憶させる。
【0021】
なお、判定条件の設定や、判定処理の具体的な内容については、後に具体例を挙げて詳細に説明するが、本例の抵抗測定装置1では、対象のSTEPで測定された測定値(測定値データD1の値)が予め設定された「下限値」および「上限値」の間の「測定値範囲」内の値であるか否かを判定する処理(以下、「処理A」ともいう)と、対象のSTEPで測定された測定値(測定値データD1の値)が予め設定された「基準値」に対する予め規定された「範囲値(「±○○%」との値:[基準値]を基準として[測定値範囲]を規定するパラメータ)」の「測定値範囲」内の値であるか否かを判定する処理(以下、「処理B」ともいう)とのいずれかを「判定処理」として実行することができるように構成されている。記憶部7は、上記の測定手順データD0、測定値データD1および判定結果データD2などを記憶する。
【0022】
この抵抗測定装置1による測定処理に際しては、まず、各STEP毎の測定条件を設定する。この場合、本例の抵抗測定装置1では、いずれかのSTEPにおいて「判定処理」を実行する際に、出願人が開発した従来の多チャンネル測定装置と同様にして「上限値」および「下限値」や「基準値」等の数値を直接指定して「判定用測定値範囲」を規定する使用方法に加えて、対象とするSTEPとは異なるSTEPの測定値を「下限値」、「上限値」または「基準値」とする「測定値範囲」を「判定用測定値範囲」として規定する使用方法を選択することができるように構成されている。
【0023】
具体的には、一例として、STEP02の測定値データD1を対象とする「判定処理」として「処理B」を実行する際には、図示しない測定条件設定画面においてSTEP02を選択した状態において、図2に示すように、判定条件設定画面10を表示部5に表示させる。この場合、判定条件設定画面10は、設定対象のSTEP番号を示す対象STEP表示11、対象STEP表示11に表示されているSTEPの測定処理時に使用する測定レンジを示す測定レンジ表示12、および対象STEP表示11に表示されているSTEPの「判定用測定値範囲」を示す判定用測定値範囲表示13などで構成されている。
【0024】
また、判定用測定値範囲表示13は、下限値/基準値表示部13aおよび上限値/範囲値表示部13bで構成されている。この場合、下限値/基準値表示部13aには、「判定処理」として上記の「処理A」を実行する際には、「判定用測定値範囲」の「下限値」として規定する設定値が表示され、「判定処理」として上記の「処理B」を実行する際には、「判定用測定値範囲」の「基準値」として規定する設定値が表示される。また、上限値/範囲値表示部13bには、「判定処理」として上記の「処理A」を実行する際には、「判定用測定値範囲」の「上限値」として規定する設定値が表示され、「判定処理」として上記の「処理B」を実行する際には、「判定用測定値範囲」の「範囲値」として規定する設定値が表示される。
【0025】
ここで、一例として、「100mΩ±10.0%の測定値範囲」をSTEP02の「判定用測定値範囲」として設定する際には、操作部4を操作して、図2に示すように、下限値/基準値表示部13aに「100mΩ」との「基準値」を入力し、かつ上限値/範囲値表示部13bに「10.0%」との「範囲値」を入力する。これにより、STEP02についての「判定処理」用の条件の設定が完了する。
【0026】
また、上記のような条件に代えて、例えば、「STEP01において測定される測定手順データD0の値を基準値とする±10.0%の測定値範囲」をSTEP02の「判定用測定値範囲」として設定する際には、操作部4を操作して、図3に示すように、下限値/基準値表示部13aに「STEP01」との「設定値」を「基準値」として入力し、かつ上限値/範囲値表示部13bに「10.0%」との「範囲値」を入力する。これにより、STEP02についての「判定処理」用の条件の設定が完了する。
【0027】
この場合、本例の抵抗測定装置1では、前述したように、接断切換え部2による各信号ケーブル2aの切り換え順序、すなわち、測定部3による測定処理の実行順序に応じて各STEPのSTEP番号が規定されている。このため、「判定処理」としての「処理B」用の「判定用測定値範囲」の設定に際して下限値/基準値表示部13aに入力するSTEPは、設定対象のSTEPよりも先に測定処理が実行されるSTEP、すなわち、対象STEP表示11に表示されているSTEPのSTEP番号よりも小さなSTEP番号のSTEPである必要がある。したがって、本例の抵抗測定装置1では、下限値/基準値表示部13aに対する設定値の入力に際して、対象STEP表示11に設定対象のSTEPよりも小さなSTEP番号のSTEPだけが選択候補として表示される構成が採用されている(図示せず)。
【0028】
一方、一例として、「STEP01において測定される測定手順データD0の値に「0.9」を乗じた値を基準値とする±15.0%の測定値範囲」をSTEP03の「判定用測定値範囲」として設定する際には、操作部4を操作して、図4に示すように、下限値/基準値表示部13aに「STEP01×0.9」との「演算式」を「基準値」として入力し、かつ上限値/範囲値表示部13bに「15.0%」との「範囲値」を入力する。これにより、STEP03についての「判定処理」用の条件の設定が完了する。
【0029】
また、本例の抵抗測定装置1では、図4の例のような単純な「演算式」だけでなく、さらに複雑な「演算式」を「下限値」または「上限値」として設定することが可能となっている。具体的には、一例として、「STEP01において測定される測定手順データD0の値に「0.7」を乗じた値」を「下限値」とし、かつ「STEP01において測定される測定手順データD0の値から、STEP01において測定される測定手順データD0の値とSTEP02において測定される測定手順データD0の値との差分値(絶対値)を差し引いた値」を「上限値」とする「測定値範囲」をSTEP03の「判定用測定値範囲」として設定する際には、操作部4を操作して、図5に示すように、判定条件設定画面10aを表示部5に表示させる。
【0030】
なお、この判定条件設定画面10aにおいて前述した判定条件設定画面10と同様の事項が表示される部位については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。次いで、STEP04についての下限値/基準値表示部13aに「STEP01*0.7」との「演算式」を「下限値」として入力し、かつ、上限値/範囲値表示部13bに「STEP01−|STEP01−STEP02|」との「演算式」を「上限値」として入力する。これにより、STEP04についての「判定処理」用の条件の設定が完了する。なお、「判定用測定値範囲」の「下限値」および「上限値」の双方に「演算式」を入力した例について説明したが、「下限値」および「上限値」のいずれか一方に「演算式」を入力し、他方に「200mΩ」等の数値を入力することもできる。
【0031】
この場合、同図に示す判定条件設定画面10aの例では、STEP01については「判定処理」を実行せず、STEP02については、図3を参照しつつ説明した上記の例の設定で「判定処理」が実行され、かつ、STEP03については、図4を参照しつつ説明した上記の例の設定で「判定処理」が実行されると共に、STEP04については、「下限値」および「上限値」の双方に「演算式」を入力した上記の例の設定で「判定処理」が実行される旨の測定条件(判定条件)が設定されている。この後、多のSTEP05〜STEP42についても、必要に応じて上記のSTEP01〜STEP04についての設定作業と同様の作業を行う。これにより、各STEPについての測定条件(判定条件)の設定が完了し、測定手順データD0が記憶部7に記憶される。
【0032】
一方、一例として、図5に示す判定条件設定画面10aのように各STEP毎の測定条件(判定条件)が設定されている状態において測定処理を実行する際には、各STEP毎の測定対象に各信号ケーブル2aをそれぞれ接続する。次いで、操作部4を操作することにより、処理開始を指示する。この際に、処理部6は、記憶部7に記憶されている測定手順データD0に従い、まず、STEP01の測定対象についての測定処理を実行させる。具体的には、処理部6は、測定部3を制御して、STEP01の測定対象について300mΩレンジでの抵抗値の測定処理を実行させる。
【0033】
これに応じて、測定部3は、接断切換え部2を制御してSTEP01として規定された態様で所定の測定対象を測定部3に接続させ、かつ他の測定対象を測定部3から切断させる。次いで、測定部3は、接断切換え部2によって接続された4本の信号ケーブル2aのうちの2本を使用して図示しない定電流源から300mΩレンジに対応する定電流の測定用電流を測定対象に供給させると共に、4本の信号ケーブル2aのうちの他の2本の間の電圧値を測定し、測定した電圧値と、供給した測定用電流の電流値とに基づき、測定対象の抵抗値を演算して測定値データD1として出力する。この際に、本例では、STEP01の測定処理時に「判定処理」を実行しない旨が設定されているため、処理部6は、測定部3から出力された測定値データD1をSTEP01に関連付けて記憶部7に記憶させる。これにより、STEP01の処理が完了する。
【0034】
次いで、処理部6は、測定手順データD0に従い、上記のSTEP01の測定処理と同様に測定部3を制御することでSTEP02の測定対象についての測定処理を実行させると共に、測定部3から出力された測定値データD1をSTEP02に関連付けて記憶部7に記憶させる。この際に、本例では、STEP02の測定処理によって測定された測定手順データD0の値を対象とする「判定処理」を実行する旨が設定されているため、処理部6は、測定手順データD0に従い、まず、「判定用測定値範囲」を規定する。具体的には、処理部6は、STEP01の測定値データD1を記憶部7から読み出すと共に、読み出した測定値データD1の値を「基準値」とする「±10.0%」の範囲を「判定用測定値範囲」として規定する。
【0035】
次いで、処理部6は、記憶部7に記憶されているSTEP02の測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」内の値であるか否かを判定する。この際に、STEP02の測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」内の値であるときには、処理部6は、測定値が「判定用測定値範囲」内の値である旨を示す「IN」との符号を判定結果データD2として生成してSTEP02に関連付けて記憶部7に記憶させると共に、一例として、「STEP02」との文字列、および「IN」との文字列を表示部5の測定結果表示画面(図示せず)に並べて表示させる。
【0036】
また、STEP02の測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」を下回る値であるときには、処理部6は、測定値が「判定用測定値範囲」を下回る値である旨を示す「LOW」との符号を判定結果データD2として生成してSTEP02に関連付けて記憶部7に記憶させると共に、一例として、「STEP02」との文字列、および「LOW」との文字列を表示部5の測定結果表示画面(図示せず)に並べて表示させる。さらに、STEP02の測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」を上回る値であるときには、処理部6は、測定値が「判定用測定値範囲」を上回る値である旨を示す「HIGH」との符号を判定結果データD2として生成してSTEP02に関連付けて記憶部7に記憶させると共に、一例として、「STEP02」との文字列、および「HIGH」との文字列を表示部5の測定結果表示画面(図示せず)に並べて表示させる。これにより、STEP02の処理が完了する。
【0037】
次いで、処理部6は、測定手順データD0に従い、上記のSTEP01やSTEP02の測定処理と同様にして、測定部3を制御することでSTEP03の測定対象についての測定処理を実行させると共に、測定部3から出力された測定値データD1をSTEP03に関連付けて記憶部7に記憶させる。続いて、処理部6は、上記のSTEP02の測定処理時と同様にして、測定手順データD0に従い、STEP03の測定値データD1を対象とする「判定処理」を実行する。なお、STEP03の「判定処理」は、「判定用測定値範囲」の「基準値」が「STEP01の測定値データD1の値に0.9を乗じた値」との「演算式」で演算される値あり、「範囲値」が「15.0%」である点を除き、STEP02の「判定処理」と同様のため、その説明を省略する。これにより、STEP03の処理が完了する。
【0038】
続いて、処理部6は、測定手順データD0に従い、上記の各STEP01〜STEP03の測定処理と同様にして、測定部3を制御することでSTEP04の測定対象についての測定処理を実行させると共に、測定部3から出力された測定値データD1をSTEP04に関連付けて記憶部7に記憶させる。この際に、本例では、STEP04の測定処理によって測定された測定手順データD0の値についても、その値を対象とする「判定処理」を実行する旨が設定されている。したがって、処理部6は、測定手順データD0に従い、まず、STEP04用の「判定用測定値範囲」を規定する。
【0039】
具体的には、処理部6は、STEP01の測定値データD1、およびSTEP02の測定値データD1を記憶部7からそれぞれ読み出す。次いで、処理部6は、STEP01の測定値データD1の値に「0.7」を乗じる演算処理(「基準値×0.7」を「予め設定された演算式」とする演算処理の例)を実行してSTEP04の「判定用測定値範囲」の「下限値」を規定する。続いて、処理部6は、STEP01の測定値データD1の値から、STEP01の測定値データD1の値とSTEP02の測定値データD1の値との差分値(絶対値)を差し引く演算処理(「STEP01の測定値データD1の値−|STEP01の測定値データD1の値−STEP01の測定値データD2の値|」を「予め設定された演算式」とする演算処理の例)を実行してSTEP04の「判定用測定値範囲」の「上限値」を規定する。
【0040】
次いで、処理部6は、記憶部7に記憶されているSTEP04の測定値データD1の値が「判定用測定値範囲」内の値であるか否かを判定し、その判定結果に応じて「IN」、「LOW」および「HIGH」との符号のうちのいずれかを判定結果データD2として生成してSTEP04に関連付けて記憶部7に記憶させると共に、「STEP04」との文字列と、「IN」、「LOW」および「HIGH」との文字列のうちのいずれかの文字列とを表示部5の測定結果表示画面(図示せず)に並べて表示させる。これにより、STEP04の処理が完了する。この後、他のSTEP05〜STEP42についても、上記のSTEP01〜STEP04の各測定処理と同様にして、測定手順データD0に基づく測定処理がそれぞれ実行される。
【0041】
この場合、上記の例とは相違するが、本例のような構成の抵抗測定装置1によれば、例えば、1つの良品を予め用意しておくことで、同型の複数の電子機器を対象とする製品検査を迅速かつ容易に実施することができる。具体的には、一例として、良品の電子機器(測定対象)をSTEP01の接続態様の信号ケーブル2aに接続すると共に、STEP01の「測定条件」の設定に際して「判定処理」を実行しない旨を設定し、かつSTEP02〜STEP42の各「測定条件」の設定に際して「判定処理」の条件における「判定用測定値範囲」として、「STEP01の測定値データD1の値に対する±2.5%」との条件をそれぞれ設定する。また、製品検査に際しては、検査対象の電子機器をSTEP02〜STEP42の接続態様の信号ケーブル2aにそれぞれ接続する。
【0042】
これにより、各STEP01〜STEP42の測定処理が順次実行される際に、STEP02〜STEP42までの各測定処理時には、STEP01の測定値データD1の値、すなわち、良品の電子機器についての測定値を「基準値」とする「±2.5%」との「判定用測定値範囲」内の値が測定されたか否かが判定結果データD2として生成され、かつ判定結果が表示部5に表示される。したがって、このような例においては、「判定処理」を実行するための「基準値」(または、「下限値」および「上限値」)を直接入力する設定操作を1回も実行することなく、41個の電子機器を対象とする製品検査(判定処理)を実行させることが可能となる。
【0043】
このように、この抵抗測定装置1によれば、処理部6が、各測定チャンネルのうちの少なくとも1つの測定チャンネルで測定された測定値データD1の測定値を対象とする判定処理において、その1つの測定チャンネルとは異なる予め指定された測定チャンネルの測定値データD1の測定値を基準値とする「予め指定された測定値範囲」を判定用測定値範囲として規定して上記の少なくとも1つの測定チャンネルの測定値が判定用測定値範囲内の値であるか否かを判定することにより、「判定処理」用の「判定用測定値範囲」について、その「下限値」および「上限値」や「基準値」を各STEP毎にそれぞれ入力する煩雑な設定作業を実行することなく、いずれかのSTEPの測定値データD1の値に応じて他のSTEPの「下限値」および「上限値」や「基準値」を容易に規定させることができる。これにより、「判定用測定値範囲」の設定に要する負担を十分に軽減することができる。
【0044】
また、この抵抗測定装置1によれば、処理部6が、判定処理において、予め設定された演算式の演算処理を実行して判定用測定値範囲としての「予め指定された測定値範囲」の上限値および下限値のうちの少なくとも一方を規定することにより、他のSTEPの測定値データD1の値と相関関係を有する測定値が測定されるべきSTEPについては、その相関関係を示す演算式を予め登録しておくことで、所定のSTEPの測定値データD1の値から演算される値を「下限値」または「上限値」とする「判定用測定値範囲」が自動的に規定されるため、この種の装置に不慣れな利用者であっても、「判定用測定値範囲」を誤って設定することなく、「判定処理」を確実かつ容易に実行させることができる。
【0045】
なお、「測定装置」の構成は、上記の抵抗測定装置1の例に限定されない。例えば、「電気的パラメータ」として「抵抗値」を測定する抵抗測定装置1の構成を「測定装置」の一例として説明したが、「測定装置」の構成はこれに限定されず、電流値、電圧値、電力値、および位相等の各種の「電気的パラメータ」を測定する構成においても、上記の抵抗測定装置1と同様にして、判定処理用の「上限値」、「下限値」および「基準値」を規定する構成を採用することができる。また、複数の「測定チャンネル」の一例である各「STEP」毎の測定処理時に「判定処理」を実行する例について説明したが、上記の抵抗測定装置1のようなSTEP毎の測定処理に代えて、別個独立して測定処理を実行可能な複数の測定系を有する「測定部」を備え、「各測定系毎の測定処理」を「各測定チャンネル毎の測定処理」として、同時に複数の測定処理を実行可能な構成を採用することもできる。
【0046】
さらに、判定結果を示す「IN」、「LOW」および「HIGH」との文字列を表示部5に表示させる例について説明したが、このような構成に代えて、「IN」、「LOW」および「HIGH」との判定結果に対応して予め用意したインジケータを点灯させたり、「IN」、「LOW」および「HIGH」との判定結果に応じて互いに相違する音(ブザー音等)を出力させたりする構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 抵抗測定装置
2 接断切換え部
2a 信号ケーブル
3 測定部
4 操作部
5 表示部
6 処理部
7 記憶部
10,10a 判定条件設定画面
11 対象STEP表示
12 測定レンジ表示
13 判定用測定値範囲表示
13a 下限値/基準値表示部
13b 上限値/範囲値表示部
D0 測定手順データ
D1 測定値データ
D2 判定結果データ
図1
図2
図3
図4
図5