(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223020
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】開口部補強構造およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20171023BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20171023BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
E04B1/24 F
E04B2/56 643A
E04G23/02 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-142438(P2013-142438)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-14169(P2015-14169A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502210529
【氏名又は名称】前田 一峯
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 一峯
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0108986(US,A1)
【文献】
特開2002−276163(JP,A)
【文献】
特開2011−099313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 2/56
E04G 23/02
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁の開口部を補強して地震時に避難通路を確保するための門型の補強部材を備え、
前記補強部材は、前記開口部に沿って立設される一対の柱構造体と、これら柱構造体の上部を繋ぐ梁構造体とを備えてなり、
前記柱構造体は、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス柱を有し、
前記梁構造体は、横方向に延在する一対の横弦材と、これら横弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス梁を有しており、
前記柱構造体の上端部は、外側から前記外壁に固定されている
ことを特徴とする開口部補強構造。
【請求項2】
前記梁構造体の前記一対の横弦材は、水平方向に間をあけて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の開口部補強構造。
【請求項3】
建築物の外壁の開口部を補強するための門型の補強部材を備え、
前記補強部材は、前記開口部に沿って立設される一対の柱構造体と、これら柱構造体の上部を繋ぐ梁構造体とを備えてなり、
前記柱構造体は、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス柱を有するとともに、前記外壁に平行に配置される第一トラス柱と、前記外壁に直交して配置される第二トラス柱とを備え、平面視L字状を呈しており、
前記梁構造体は、横方向に延在する一対の横弦材と、これら横弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス梁を有し、
前記第一トラス柱と前記第二トラス柱の上部に平面視L字状の連結ブラケットを接続し、前記連結ブラケットを前記開口部の上部に設けられた梁に連結することで、前記補強部材が前記外壁に固定されている
ことを特徴とする開口部補強構造。
【請求項4】
前記縦弦材、前記斜材および前記横弦材は、丸型パイプにて構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の開口部補強構造。
【請求項5】
前記斜材の端部には、スリットが形成され、
前記縦弦材および前記横弦材には、ガセットプレートが設けられており、
前記ガセットプレートを前記スリットに挿入して溶接することで、前記斜材が前記縦弦材または前記横弦材に接合されている
ことを特徴とする請求項4に記載の開口部補強構造。
【請求項6】
前記柱構造体の下部は、基礎にて連結されており、
前記補強部材と前記基礎を合わせて枠状を呈している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の開口部補強構造。
【請求項7】
門型の補強部材を用いて建築物の外壁の開口部を補強して地震時の避難通路を確保するための開口部補強構造の施工方法であって、
前記補強部材は、前記開口部に沿って立設される一対の柱構造体と、これら柱構造体の上部を繋ぐ梁構造体とを備えてなり、
前記柱構造体は、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス柱を有し、
前記梁構造体は、横方向に延在する一対の横弦材と、これら横弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス梁を有しており、
前記柱構造体の上端部を、外側から前記外壁に固定する
ことを特徴とする開口部補強構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の開口部補強構造
およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造の建築物における開口部は、開口部の上部に背の高い横架材を架け渡したり(例えば特許文献1参照)、開口部を囲う柱および梁の内周部に、枠状フレーム部材を取り付けたり(例えば特許文献2参照)することで補強されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248859号公報
【特許文献2】特開2005−76450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地震時に避難通路を確保するために、開口部の高い補強性能が要求されている。しかしながら、従来の補強構造では、壁面内に補強部材が設けられているので、設けられる補強材が制限される。これによって、要求される補強性能が発揮できない場合があるという問題があった。また、従来の補強構造では既設の建築物の開口部を補強するのは困難であった。
【0005】
ところで、木造の建築物における壁を補強する構成としては、枠状フレーム部材の内側にブレースを設けてなる補強部材を壁の外側に固定するもの(特許第3343647号公報参照)があったが、本構造は開口部を固定するものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、開口部において高い補強性能を得られるとともに、既存の建築物にも容易に適用できる開口部補強構造
およびその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、建築物の外壁の開口部を補強
して地震時に避難通路を確保するための門型の補強部材を備え、前記補強部材は、前記開口部に沿って立設される一対の柱構造体と、これら柱構造体の上部を繋ぐ梁構造体とを備えてなり、前記柱構造体は、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス柱を有し、前記梁構造体は、横方向に延在する一対の横弦材と、これら横弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス梁を有しており、
前記柱構造体の上端部は、外側から前記外壁に固定されていることを特徴とする開口部補強構造である。
【0008】
このような構成によれば、トラス柱とトラス梁を門型に組み合わせた補強部材で開口部を囲っているので、開口部が大幅に補強される。したがって、地震時における避難通路を確保することができる。さらに、補強部材を外壁の外側に設けているので、外壁材を剥がす必要がなく、既存の建築物にも容易に適用することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記梁構造体の前記一対の横弦材は、水平方向に間をあけて配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第一トラス柱と前記第二トラス柱の上部に平面視L字状の連結ブラケットを接続し、前記連結ブラケットを前記開口部の上部に設けられた梁に連結することで、前記補強部材が前記外壁に固定されていることを特徴とする。このような構成によれば、第一トラス柱と第二トラス柱とが一体的に外壁に固定されるので、開口部の補強性能をさらに高めることができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記縦弦材、前記斜材および前記横弦材が、丸型パイプにて構成されていることを特徴とする。このような構成によれば、丸型パイプを用いることで、応力が局所的に作用せず、また外周面のどの方向から応力が作用しても剛性が一定であるので、板厚が必要以上に厚くなる部分がないので、必要最小限の板厚にすることができ、柱構造体および梁構造体の軽量化と高剛性化を同時に図れる。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記斜材の端部には、スリットが形成され、前記縦弦材および前記横弦材には、ガセットプレートが設けられており、前記ガセットプレートを前記スリットに挿入して溶接することで、前記斜材が前記縦弦材または前記横弦材に接合されていることを特徴とする。このような構成によれば、溶接長を確保することができ、固定強度を高められる。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記柱構造体の下部が、基礎にて連結されており、前記補強部材と前記基礎を合わせて枠状を呈していることを特徴とする。このような構成によれば、補強部材と基礎で一体化されるので、補強性能をより一層高めることができる。
請求項7に係る発明は、門型の補強部材を用いて建築物の外壁の開口部を補強して地震時の避難通路を確保するための開口部補強構造の施工方法であって、前記補強部材は、前記開口部に沿って立設される一対の柱構造体と、これら柱構造体の上部を繋ぐ梁構造体とを備えてなり、前記柱構造体は、縦方向に延在する一対の縦弦材と、これら縦弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス柱を有し、前記梁構造体は、横方向に延在する一対の横弦材と、これら横弦材間に架け渡される複数の斜材とを備えてなるトラス梁を有しており、前記柱構造体の上端部を、外側から前記外壁に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る柱構造体によれば、開口部において高い補強性能を得られるとともに、既存の建築物にも容易に適用することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る開口部補強構造を示した斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る開口部補強構造を設けた建築物を示した全体斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る開口部補強構造を示した正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る開口部補強構造を示した平面図である。
【
図7】斜材とガセットプレートを示した分解斜視図である。
【
図8】(a)は
図5のB線矢視図、(b)は
図5のC−C線断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る開口部補強構造を設けた建築物を示した部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、開口部補強構造を木造建築物に適用した場合を例に挙げて説明する。なお、かかる開口部補強構造の適用範囲を木造建築物に限定する趣旨ではない。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る開口部補強構造1は、建築物の外壁2の開口部3を補強する門型の補強部材4を備えている。補強部材4は、外壁2の外側において、開口部3を囲むように設けられている。補強部材4は、開口部3の両側に配置される一対の柱構造体10と、これら柱構造体10の上部を繋ぐ梁構造体20とを備えてなる。
図2に示すように、補強部材4は、建築物の四面全ての外壁2の開口部3に設けられている。
【0018】
図1および
図3に示すように、柱構造体10は、縦方向に延在する一対の縦弦材11,11と、これら縦弦材11,11間に架け渡される複数の斜材12,12・・と、縦弦材11の上端部と下端部で縦弦材11,11間に架け渡される水平材13,13とを備えてなるトラス柱14を有している。柱構造体1の上端部は、後記する連結ブラケット15を介して外壁2内部の梁2a(
図6の(a)参照)に接続されている。柱構造体1の下端部は、建築物の建物基礎5と連結された基礎6に固定されている。
【0019】
縦弦材11は、鋼製の丸型パイプにて構成されており、垂直に配置されている。丸型パイプは、例えば内外両面がめっき処理された足場用パイプを用いれば耐食性を向上させることができる。一対の縦弦材11,11は、互いに平行に配置されている。
図5および
図6の上部にも示すように、縦弦材11の上端は、連結ブラケット15に溶接されている。連結ブラケット15は、断面L字状を呈するアングル材にて構成されており、底面に縦弦材11の上端面が溶接されている。
図5および
図6の下部に示すように。縦弦材11の下端には、ベースプレート16が溶接されている。ベースプレート16は、基礎6上に高さ調整用モルタル17を介して載置され、アンカーボルトB1とナットNにて基礎6に固定されている。
【0020】
図3、
図5及び
図6に示すように、互いに対向する縦弦材11,11の外周面には、縦弦材11と斜材12または水平材13とを接合するためのガセットプレート18が溶接されている。ガセットプレート18は、複数設けられており、斜材12または水平材13の取付位置にそれぞれ設けられている。複数のガセットプレート18のうち、上端および下端に配置されるガセットプレート18の一方には、一本の斜材12と水平材13が接合され、他方には、1本の水平材13が接合される(
図5および
図6参照)。上端と下端のガセットプレート18,18の間に配置されるガセットプレート18には、二本の斜材12が接合される(
図3参照)。ガセットプレート18は、縦弦材11の長手方向に沿うとともに、外周面の法線方向に延出している。ガセットプレート18は、矩形形状を呈しており、取り付けられる斜材12および水平材13を接合可能な高さ寸法(縦長さ)と突出寸法(横長さ)を有している。
【0021】
図7にも示すように、斜材12および水平材13は、縦弦材11と同様に鋼製の丸型パイプにて構成されている。
図7に示すように、斜材12および水平材13の両端部には、スリット19が形成されている(
図7では、斜材12のみ図示)。スリット19は、ガセットプレート18が挿通される部分であって、ガセットプレート18が挿通可能な幅寸法(ガセットプレート18の厚さ寸法より若干大きい寸法)を有している。スリット19は、丸型パイプの端部の外周縁部で、互いに対向する二箇所に形成されている。スリット19は、斜材12および水平材13をガセットプレート18に取り付けた状態で、外周縁部の上側と下側に位置する。
【0022】
図5および
図6に示すように、斜材12および水平材13は、スリット19,19にガセットプレート18を挿通させて、スリット19の内周面とガセットプレート18の表面とが付き合わされた部分を溶接することで、ガセットプレート18に接合されている。溶接は、スリット19の内周面の全周に渡って施されている。
【0023】
図1、
図4および
図8の(a)に示すように、柱構造体10は、外壁2に平行に配置される第一トラス柱14aと、外壁2に直交して配置される第二トラス柱14bとを備え、平面視L字状を呈している。つまり、トラス柱14は、第一トラス柱14aと第二トラス柱14bとで構成され、第一トラス柱14aと第二トラス柱14bが互いに直交して配置されている。第一トラス柱14aの開口部3側端部に第二トラス柱14bが連結されている。第一トラス柱14aと第二トラス柱14bとの連結部分の縦弦材11は共用されており、一本の縦弦材11の二側面にガセットプレート18が設けられている。
【0024】
図8の(a)に示すように、縦弦材11の上端に設けられた連結ブラケット15は、平面視L字状に形成されており、外壁2に平行なアングル材15aと外壁2に直交するアングル材15bとを組み合わせてなる。第一トラス柱14aの上端部はアングル材15aの底面に溶接され、第二トラス柱14bの上端部はアングル材15bの底面に溶接されている。外壁2に平行なアングル材15aの立上り部は外壁2の表面に当接している。連結ブラケット15は、アングル材15aを長尺ボルトB1およびナットNを介して外壁2内部の梁2aに連結することで、外壁2に固定されている。具体的には、アングル材15aの立上り部、外壁2の表面材および梁2aに長尺ボルトB2が挿通され、外側からナットNで締め付けることで、連結ブラケット15が外壁2に固定されている。長尺ボルトB2とナットNは、梁2aの長手方向に所定ピッチで複数設けられている。なお、外壁2に直交するアングル材15bの立上り部は、他方のトラス柱14に対向している。
【0025】
図1、
図4および
図8の(a)に示すように、梁構造体20は、横縦方向に延在する一対の横弦材21,21と、これら横弦材21,21間に架け渡される複数の斜材22,22・・と、横弦材21の両端部で横弦材21,21間に架け渡される水平材23,23とを備えてなるトラス梁24にて構成されている。梁構造体20の両端部は、開口部の両側に位置する柱構造体10の上端部の連結ブラケット15に接続されている。
【0026】
横弦材21は、縦弦材11と同様の鋼製の丸型パイプにて構成されており、水平に配置されている。一対の横弦材21,21は互いに平行に配置されている。横弦材21の端部は、ベースプレート26が溶接されている(
図4および
図8の(a)参照)。ベースプレート26は、連結ブラケット15の、壁面2に直交するアングル材15bの立上り部の表面に当接してボルトB3およびナットNにて固定されている。
【0027】
互いに対向する横弦材21,21の外周面には、横弦材21と斜材22または水平材23とを接合するためのガセットプレート28が溶接されている。ガセットプレート28は、トラス柱14のガセットプレート18と同様の形状を呈しており、斜材22または水平材23の取付位置にそれぞれ設けられている。
【0028】
斜材22は、トラス柱14の斜材12と同様の鋼製の丸型パイプにて構成され、斜材12と同等の形状を呈している。また、水平材23は、トラス柱14の水平材13と同様の鋼製の丸型パイプにて構成され、水平材13と同等の形状を呈している。斜材22と水平材23にもスリット29が形成されている。
【0029】
斜材22および水平材23は、スリット29(
図1参照)にガセットプレート28を挿通させて、スリット29の内周面とガセットプレート28の表面とが付き合わされた部分を溶接することで、ガセットプレート28に接合されている。溶接は、スリット29の内周面の全周に渡って施されている。
【0030】
図1および
図3に示すように、門型の補強部材4の下部に設けられた基礎6は、後施工アンカー等で建築物の建物基礎5と一体化されており、建築物の外側に張り出している。基礎6は、一方の柱構造体10の下部から他方の柱構造体10の下部まで延在しており、補強部材4と基礎6を合わせて開口部3を囲む枠状を呈している。基礎6の両端部は、第一トラス柱14aと第二トラス柱14bとを支持する部分であって、外壁2に平行に配置される平行支持部6aと、外壁2に直交して配置される直交支持部6bを備えた平面視L字状に形成されている。基礎6の両端部の直交支持部6b,6b間に位置する部分は、段状に形成されており、開口部3に繋がる階段7が構成されている。
【0031】
以上のような構成の開口部補強構造1によれば、柱構造体10,10と梁構造体20からなる門型の補強部材4で開口部3を囲っているので、開口部3が大幅に補強され、開口部3周りの外壁2の変形を抑制できる。これによって、地震時に開口部3の倒壊や変形を防止できるので、避難通路を確保することができる。
【0032】
また、柱構造体10は、第一トラス柱14aと第二トラス柱14bとを備え平面視L字状を呈しているので、水平二方向に対抗することができる。これによって、開口部3の補強性能をより一層高めることができる。
【0033】
さらに、縦弦材11、斜材12および水平材13が丸型パイプにて構成されているので、角パイプやH型鋼などのように応力が局所的に作用せず、また外周面のどの方向から応力が作用しても剛性が一定であるので、板厚が必要以上に厚くなる部分がない。したがって、各部材を必要最小限の板厚にすることができ、柱構造体10の軽量化と高剛性化を同時に図れる。また、横弦材21、斜材22および水平材23も丸型パイプにて構成されているので、同様の作用効果を得られ、梁構造体20の軽量化と高剛性化を同時に図れる。これによって、補強部材4全体の軽量化と高剛性化をも同時に図れる。
【0034】
また、斜材12および水平材13の端部には、スリット19が形成され、縦弦材11に取り付けられたガセットプレート18をスリット19に挿入して溶接するようにしたことで、溶接長を確保することができる。これによって、斜材12および水平材13と、縦弦材11との固定強度を高めることができる。また、斜材22および水平材23と、横弦材21に関しても同様に固定強度を高めることができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、補強部材4と基礎6で、開口部3の全周を囲っているので、開口部補強構造1の補強性能をより一層高めることができる。
かかる開口部補強構造1によれば、補強部材4を外壁2の外側に設けているので、外壁材を剥がす必要がない。柱構造体10の脚部を基礎6上に固定するとともに、柱構造体10の上端部を梁に固定するだけで、補強部材4が固定されるので、既存の建築物にも容易に適用することができる。
【0036】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、縦弦材11および横弦材21を鋼管にて構成しているが、これに限定されるものではなく、必要な剛性を有していれば、例えばH形鋼などの他の形状の形鋼であってもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、補強部材4が開口部3を囲うように設けられているが、これに限定されるものではない。補強部材4は、避難通路としての幅を有していれば、開口部3の前面に配置してもよい(開口部3の一部を囲う)。例えば、
図9に示すような構成となる。幅寸法の長い開口部3の外側に、補強部材4が設けられているが、柱構造体10,10は開口部3の前面に配置されている。この補強部材4の上端部は、前記実施形態と同様に外壁2内部の梁(図示せず)に連結されている。以上のような構成の開口部補強構造においても、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。また、補強部材4は、開口部3の一部を塞ぐことになるが、開口部3の前面を通過するのはトラス柱14であるので、見通しが良く、風の流れを阻害することもない。
【0038】
さらに、前記実施形態では、基礎6の中間部分が段状に形成されているが、その形状は段状に限定されるものではない。また、基礎6は、一対の柱構造体10,10間に延在していなくてもよく、建物基礎5から柱構造体10の下部にそれぞれ張り出し(平行支持部6aと直交支持部6bのみの構成)、建物基礎5を介して柱構造体10,10を連結する構造であってもよい。このような構成によっても、補強部材4と建物基礎5と基礎6で、開口部3の全周を囲っているので、開口部補強構造1の補強性能をより一層高めることができる。
【0039】
前記実施形態では、補強部材4は、建築物の四面全ての外壁2の開口部3に設けられているが、建築物の四面の全てに開口部がない場合であっても、開口部のない壁面に補強部材4を設けるようにするのが好ましい。このように建築物の全ての外壁2をバランス良く補強することで、開口部周りだけでなく、建築物全体の補強効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 開口部補強構造
2 外壁
2a 梁
3 開口部
4 補強部材
6 基礎
10 柱構造体
11 縦弦材
12 斜材
13 水平材
14 トラス柱
14a 第一トラス柱
14b 第二トラス柱
15 連結ブラケット
18 ガセットプレート
19 スリット
20 梁構造体
21 横弦材
22 斜材
23 水平材
24 トラス梁
28 ガセットプレート
29 スリット