特許第6223040号(P6223040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223040
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】双方向DC/DCコンバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
   H02M3/28 P
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-155919(P2013-155919)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-27196(P2015-27196A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100076222
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】中原 康希
(72)【発明者】
【氏名】根本 健一
(72)【発明者】
【氏名】木下 孝志
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−027201(JP,A)
【文献】 特開2011−050191(JP,A)
【文献】 特開2006−204048(JP,A)
【文献】 特開2012−065511(JP,A)
【文献】 特開2013−138569(JP,A)
【文献】 特開2004−023981(JP,A)
【文献】 特開2005−117784(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00〜 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側端子上の1次側DC電力と1次側AC電力とをスイッチング動作により相互に変換する1次側ブリッジ回路と、
前記1次側AC電力と2次側AC電力とを相互に変圧する絶縁用のトランスと、
前記2次側AC電力とDCリンク上の2次側DC電力とをスイッチング動作により相互に変換する2次側ブリッジ回路と、
前記1次側DC電力及び前記2次側DC電力を受電して所定の電源電力を出力する制御用電源と、
前記電源電力により起動して前記1次側ブリッジ回路及び前記2次側ブリッジ回路の前記スイッチング動作を制御し、前記1次側ブリッジ回路に対して前記2次側ブリッジ回路の位相をずらすことによって双方向の電力変換を行わせ、且つ、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との位相差により双方向の電力量を制御する制御部と、
を備える双方向DC/DCコンバータ装置であって、
前記制御部は、待機運転動作状態になると、前記2次側DC電力における2次側DC電圧を、前記1次側DC電力における1次側DC電圧V1と同一の電圧になるように制御することを特徴とする双方向DC/DCコンバータ装置。
【請求項2】
前記1次側ブリッジ回路と前記トランスとは、インダクタを介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の双方向DC/DCコンバータ装置。
【請求項3】
前記1次側ブリッジ回路は、
複数の1次側パルス幅変調信号によりそれぞれオン/オフ動作する複数の1次側スイッチング素子を有し、
前記2次側ブリッジ回路は、
複数の2次側パルス幅変調信号によりそれぞれオン/オフ動作する複数の2次側スイッチング素子を有し、
前記制御部は、
前記複数の1次側パルス幅変調信号及び前記複数の2次側パルス幅変調信号を出力して、前記1次側ブリッジ回路及び前記2次側ブリッジ回路の前記スイッチング動作を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の双方向DC/DCコンバータ装置。
【請求項4】
前記1次側ブリッジ回路は、
前記1次側DC電力を平滑する1次側コンデンサと、
前記1次側コンデンサの対向する2つの電極に対してブリッジ接続され、複数の1次側パルス幅変調信号によりそれぞれオン/オフ動作する複数の1次側スイッチング素子と、を有し、
前記2次側ブリッジ回路は、
前記トランスに対してブリッジ接続され、複数の2次側パルス幅変調信号によりそれぞれオン/オフ動作する複数の2次側スイッチング素子と、
前記複数の2次側スイッチング素子の出力側に接続され、前記2次側DC電力を平滑する2次側コンデンサと、を有し、
前記制御部は、
前記複数の1次側パルス幅変調信号及び前記複数の2次側パルス幅変調信号を出力して、前記1次側ブリッジ回路及び前記2次側ブリッジ回路の前記スイッチング動作を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の双方向DC/DCコンバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ・パワーコンディショニング・システム(以下「マルチPCS」という。)等に設けられ、DC(直流)電力の変換を行う絶縁型の双方向DC/DCコンバータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、下記の特許文献3に記載されているように、DC電力の変換を行うDC/DCコンバータ装置は、非絶縁型のものと絶縁型のものとに大別される。絶縁型のDC/DCコンバータ装置としては、複数のスイッチング素子によりそれぞれ構成される2つのブリッジ回路が、高周波絶縁用のトランスを介して接続されたDAB(Dual Active Bridge)方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置が知られている。このDAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置では、位相シフト方式のパルス幅変調(以下「PWM」という。)制御により、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子のソフトスイッチング(即ち、ゼロ電圧スイッチング、以下「ZVS」という。)を行うことにより、低損失化を実現している。
【0003】
図2は、従来の3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置を示す概略の構成図である。
この3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置は、例えば、下記の特許文献1、2に記載されたマルチPCS内に設けられ、蓄電池の充放電のための蓄電池コンバータとして使用されている。
【0004】
3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置は、1次側DC電圧V1を出力する蓄電池1の正電極及び負電極にそれぞれ接続された一対の1次側端子2−1,2−2を有している。1次側端子2−1,2−2には、DC電力をAC(交流)電力に変換するDC/AC変換用の1次側3相ブリッジ回路10が接続されている。1次側3相ブリッジ回路10は、一対の1次側端子2−1,2−2間に接続された平滑用コンデンサ11と、このコンデンサ11にブリッジ接続された6つのスイッチング素子12−1〜12−6と、を有している。6つのスイッチング素子12−1〜12−は、図示しない制御部から出力される6つのPWM信号S1〜S6によってそれぞれオン/オフ動作するMOS型電界効果トランジスタ(以下「MOSFET」という。)や、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、以下「IGBT」という。)等により、構成されている。
【0005】
一対のスイッチング素子12−1,12−2の接続点と、一対のスイッチング素子12−3,12−4の接続点と、一対のスイッチング素子12−5,12−6の接続点とには、3つのインダクタ13−1〜13−3を介して、3相の高周波絶縁用トランス14の1次側が接続されている。3相のトランスの結線方式には、スター・スター結線(即ち、Y−Y結線)方式と、デルタ・デルタ結線(即ち、Δ−Δ結線)方式と、スター・デルタ結線(即ち、Y−Δ結線)方式と、がある。図2の3相の高周波絶縁用トランス14は、Y−Δ結線方式のトランスであり、1次側と2次側に30°の位相差があるとき、双方向の電力変換が0となる。
【0006】
3相の高周波絶縁用トランス14の2次側には、AC/DC変換を行う2次側3相ブリッジ回路20が接続されている。2次側3相ブリッジ回路20は、ブリッジ接続された6つのスイッチング素子21−1〜21−6と、これらのスイッチング素子21−1〜21−6に対して並列に接続された平滑用コンデンサ22と、を有している。6つのスイッチング素子12−1〜12−6は、図示しない制御部から出力される6つのPWM信号S7〜S12によってそれぞれオン/オフ動作するMOSFETやIGBT等により構成されている。コンデンサ22の両電極には、一対の2次側端子23−1,23−2が接続されている。この2次側端子23−1,23−2間には、2次側DC電圧であるDCリンク電圧V2が印加される。
【0007】
このように構成される絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置において、蓄電池1の放電を行う場合、蓄電池1から出力された1次側DC電力は、1次側3相ブリッジ回路10によりスイッチングされて1次側AC電力に変換される。変換された1次側AC電力は、インダクタ13−1〜13−3を介して、トランス14により変圧される。変圧された2次側AC電力は、2次側3相ブリッジ回路20により2次側DC電力に変換され、変換された2次側DC電力のDCリンク電圧V2が2次側端子23−1,23−2から出力される。
【0008】
2次側端子23−1,23−2における2次側DC電力のDCリンク電圧V2によって蓄電池1を充電する場合、その2次側DC電力が、2次側3相ブリッジ回路20により2次側AC電力に変換される。変換された2次側AC電力は、トランス14によって変圧され、インダクタ13−1〜13−3を介して、1次側3相ブリッジ回路10により1次側DC電力に変換される。変換された1次側DC電力の1次側DC電圧V1は、1次側端子2−1,2−2から出力され、蓄電池1が充電される。
【0009】
このような絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置では、図示しない制御部により、1次側3相ブリッジ回路10に対し、2次側3相ブリッジ回路20の位相をずらすことにより、双方向の電力変換を可能としている。又、1次側3相ブリッジ回路10と2次側3相ブリッジ回路20との位相差Φにより、双方向の電力量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−354677号公報
【特許文献2】特開2011−109783号公報
【特許文献3】特開2013−27201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図2のような従来の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置では、次のような課題があった。
【0012】
図3は、図2の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置におけるZVS動作領域を示す波形図である。
【0013】
図3において、ZVS動作条件は、トランス14がY−Δ結線方式である。トランス14の1次/2次巻線比(即ち、トランス比)は1:0.583、1次側/2次側の位相差Φは30°、出力電圧が±14%範囲で全領域ZVS動作する。2次側のDCリンク電圧V2/1次側DC電圧V1の電圧比nは、n=V1/0.583V2である。
【0014】
図3の横軸は位相差Φ、縦軸は電圧比nである。上側の1次側境界Δ−Y曲線24、及び下側の2次側境界Δ−Y曲線25において、1次側境界Δ−Y曲線24で囲まれた上側の領域26は、1次側ZVSが外れる領域であり、2次側境界Δ―Y曲線25で囲まれた下側の領域27は、2次側ZVSが外れる領域である。領域26,27以外の領域28は、ZVS動作領域である。
【0015】
図2の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置では、トランス14としてY−Δ結線方式を採用しており、ZVS動作領域28を電圧比nと位相差Φの関係で表すと、図3のような領域26,27以外の範囲となる。絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置を蓄電池1の充放電に採用した場合、1次側DC電圧V1及び2次側のDCリンク電圧V2の電圧変動により、1次側DC電圧V1及び2次側のDCリンク電圧V2の電圧比nがZVS動作領域28を外れて領域26,27へ移行し、この領域26,27で動作すると、電力変換効率が低下するという問題が発生する。又、待機運転動作状態時においては、位相差Φが−30°で動作しているが、ZVSから外れる領域26,27で動作した場合、スイッチングロス(損失)の増加により、待機運転動作状態時の損失が大きくなってしまい、待機運転動作状態時の消費電力が大きくなるという問題が発生する。
【0016】
このような問題は、1次側及び2次側が単相ブリッジ回路の場合や、高周波絶縁用トランスがY−Y結線方式の場合にも、ZVS外れの領域が存在するため、前記と同様の問題が発生すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の双方向DC/DCコンバータ装置は、1次側端子上の1次側DC電力と1次側AC電力とをスイッチング動作により相互に変換する1次側ブリッジ回路と、前記1次側AC電力と2次側AC電力とを相互に変圧する絶縁用のトランスと、前記2次側AC電力とDCリンク上の2次側DC電力とをスイッチング動作により相互に変換する2次側ブリッジ回路と、前記1次側DC電力及び前記2次側DC電力を受電して所定の電源電力を出力する制御用電源と、前記電源電力により起動して前記1次側ブリッジ回路及び前記2次側ブリッジ回路の前記スイッチング動作を制御し、前記1次側ブリッジ回路に対して前記2次側ブリッジ回路の位相をずらすことによって双方向の電力変換を行わせ、且つ、前記1次側ブリッジ回路と前記2次側ブリッジ回路との位相差により双方向の電力量を制御する制御部と、を備える双方向DC/DCコンバータ装置であって、前記制御部は、待機運転動作状態になると、前記2次側DC電力における2次側DC電圧を、前記1次側DC電力における1次側DC電圧と同一の電圧になるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の双方向DC/DCコンバータ装置によれば、待機運転動作状態時の動作として、制御部により、2次側のDCリンク電圧を1次側DC電力における1次側DC電圧と同じになるように制御している。そのため、1次側ブリッジ回路、トランス及び2次側ブリッジ回路を有する双方向DC/DCコンバータがZVS範囲で動作することが可能となる。この時、スイッチングロスを低減することができるため、待機運転動作状態時の双方向DC/DCコンバータの消費電力も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1図4中のBATユニット50を示す概略の構成図である。
図2図2は従来の3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置を示す概略の構成図である。
図3図3図2の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置におけるZVS動作領域を示す波形図である。
図4図4は本発明の実施例1における絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置を蓄電池コンバータとして使用したマルチPCSを示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0021】
(実施例1のマルチPCS)
図4は、本発明の実施例1における絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置を蓄電池コンバータとして使用したマルチPCSを示す概略の構成図である。
【0022】
このマルチPCS30は、例えば、出力電圧DC200V〜540Vの太陽電池31及び出力電圧DC264V〜403Vの蓄電池32と、3相3線AC202Vの電力系統33と、の連系を行うシステムである。マルチPCS30は、太陽電池31の出力電力に対してDC/DC変換を行う太陽光発電コンバータユニット(以下「PVユニット」という。)40と、DC電源(例えば、蓄電池)32の充放電を行わせる3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ装置としての蓄電池コンバータユニット(以下「BATユニット」という。)50と、電力系統33に対して系統連系を行わせる系統連系インバータユニット(以下「INVユニット」という。)60と、PVユニット40、BATユニット50及びINVユニット60を制御するコントローラ70と、を有している。PVユニット40と、BATユニット50と、INVユニット60とは、例えば、DC350V〜400CのDCバス44を介して、相互に接続されている。更に、PVユニット40、BATユニット50、及びINVユニット60は、CAN(Controller Area Network)からなる制御バス71を介して、コントローラ70に接続されている。
【0023】
コントローラ70は、例えば、図示しないシステムコントローラからの運転指令(例えば、蓄電池32を充電する場合、電力系統33とPVユニット40から5kWずつ電力を貰って蓄電池32を充電する等の運転指令)を受け、その運転指令通りにPVユニット40、BATユニット50、及びINVユニット60が動作するように、制御バス71を介して、それらのユニット40,50,60に制御信号を送る。又、コントローラ70は、制御バス71を介して、各ユニット40,50,60からのアラーム信号等の受信処理や、マルチPCS30の動作状態を表す信号を、図示しないシステムコントローラへ送信する機能を有している。このコントローラ70は、例えば、マイクロコントローラ(以下「マイコン」という。)により構成されている。
【0024】
PVユニット40は、太陽電池31とDCバス44側のDCリンク41aとの間に接続されたDC/DCコンバータ41と、このDC/DCコンバータ41の動作を制御する制御部42と、この制御部42に対して電源電力を供給する制御用電源43と、を有している。
【0025】
DC/DCコンバータ41は、図示しない開閉器を介して入力される太陽電池31の出力DC電力を所定のDC電力に変換してDCバス44側のDCリンク41aへ出力する絶縁型のコンバータであり、例えば、太陽電池31の出力DC電力をAC電力に変換する複数のスイッチング素子等からなる1次側3相ブリッジ回路と、この1次側3相ブリッジ回路から出力されるAC電力を所定の電圧に変圧する高周波絶縁用トランスと、このトランスから出力されるAC電力をDC電力に変換してDCリンク41aへ出力する複数のスイッチング素子等からなる2次側3相ブリッジ回路と、を有している。制御部42は、コントローラ70から与えられる制御信号に基づき、PWM信号を出力してDC/DCコンバータ41内のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御するものであり、例えば、マイコンにより構成されている。制御用電源43は、制御部42の電源電力を確保するために、太陽電池31及びDCリンク41aから電源電力を確保している。
【0026】
BATユニット50は、蓄電池32とDCバス44側のDCリンク51aとの間に接続された双方向DC/DCコンバータ51と、このDC/DCコンバータ51の動作を制御する制御部52と、この制御部52に対して電源電力を供給する制御用電源53と、を有している。
【0027】
双方向DC/DCコンバータ51は、図示しない開閉器を介して入力される蓄電池32の出力DC電力を所定のDC電力に変換してDCバス44側のDCリンク51aへ出力し、又は、DCリンク51aから入力されるDC電力を所定のDC電力に変換し、図示しない開閉器を介して蓄電池32へ出力する絶縁型のコンバータであり、複数のスイッチング素子等からなる1次側3相ブリッジ回路と、高周波絶縁用トランスと、複数のスイッチング素子等からなる2次側3相ブリッジ回路と、を有している。制御部52は、コントローラ70から与えられる制御信号に基づき、PWM信号を出力して双方向DC/DCコンバータ51内のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御するものであり、例えば、マイコンにより構成されている。制御用電源53は、制御部52の電源電力を確保するために、蓄電池32及びDCリンク51aから電源電力を確保している。
【0028】
INVユニット60は、DCバス44側のDCリンク61aと電力系統33との間に接続されたDC/AC変換用の系統連系インバータ61と、この系統連系インバータ61の動作を制御する制御部62と、この制御部62に対して電源電力を供給する制御用電源63と、を有している。
【0029】
系統連系インバータ61は、DCバス44側のDCリンク61aから入力されるDC電力をAC電力に変換し、図示しない開閉器を介して電力系統33や負荷34へ出力する定電圧及び定周波数(Constant Voltage Constant Frequency、以下「CVCF」という。)型のインバータであり、複数のスイッチング素子等からなる1次側3相ブリッジ回路と、高周波絶縁用トランス等と、を有している。制御部62は、コントローラ70から与えられる制御信号に基づき、PWM信号を出力して系統連系インバータ61内のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御するものであり、例えば、マイコンにより構成されている。制御用電源63は、制御部62の電源電力を確保するために、電力系統33及び直流リンク61aから制御用の電源電力を確保している。
【0030】
系統連系インバータ61と電力系統33との間に、図示しない開閉器を介して接続された負荷34には、ACの一般負荷と、電力系統33における停電時の防災負荷等(例えば、3相3線のAC202V)の自立負荷と、が含まれる。
【0031】
このような構成のマルチPCS30では、蓄電池32に対して、以下のような放電運転(1)と充電運転(2)とが行われる。
【0032】
(1) 放電運転
太陽電池31の発電電力が負荷34の消費電力を上回っている場合の電力の流れは、太陽電池31→PVユニット40→DCバス44→INVユニット60→負荷34、となる。PVユニット40は、最大電力追従制御を行い、INVユニット60は、その電力をAC電力に変換して負荷34へ供給する。又、余剰電力が発生した場合には、電力系統33へ逆潮流する。この場合、BATユニット50内の双方向DC/DCコンバータ51は、制御部52の制御によってゲートブロックされ、蓄電池32からの放電を行わない。
【0033】
太陽電池31の発電電力より負荷34の消費電力が上回っている場合の電力の流れは、(太陽電池31側のPVユニット40の出力DC電力+蓄電池32側のBATユニット50の出力DC電力)→DCバス44→INVユニット60の出力AC電力→負荷34の経路と、電力系統33→負荷34の経路と、の2つの経路によってAC電力が負荷34へ供給される。
【0034】
この場合、PVユニット40は最大電力追従制御を行い、INVユニット60は、その電力をAC電力に変換して負荷34へ供給する。又、不足分の電力は、蓄電池32の放電電力により補われる。
【0035】
(2) 充電運転
充電運転時の電力の流れは、電力系統33→負荷34という経路と、電力系統33→INVユニット60→DCバス44→BATユニット50→蓄電池32という経路と、になる。INVユニット60内の系統連系インバータ61の順変換動作により、BATユニット50内の双方向DC/DCコンバータ51は、制御部52の充電電流及び充電電力制御にて定電流及び定電力充電を行う。但し、太陽電池31の発電電力が負荷34の消費電力より大きい場合は、PVユニット40により最大電力追従制御を行いつつ、BATユニット50で充電動作を行う。又、コントローラ70の制御により、BATユニット50は、電力系統33及び太陽電池31からの蓄電池32への充電も可能である。
【0036】
(実施例1のBATユニット)
図1は、図4中のBATユニット50を示す概略の構成図である。
【0037】
このBATユニット50は、3相DAB方式の絶縁型双方向DC/DCコンバータ51と、この双方向DC/DCコンバータ51の動作を制御する制御部52と、この制御部52に電源電力を供給する制御用電源53と、を有している。
【0038】
双方向DC/DCコンバータ51は、図示しない開閉器を介して、1次側DC電圧V1を含む1次側DC電力を出力する蓄電池32の正電極及び負電極にそれぞれ接続された一対の1次側端子54−1,54−2を有している。一対の1次側端子54−1,54−2には、1次側3相ブリッジ回路80が接続されている。1次側3相ブリッジ回路80は、一対の1次側端子54−1,54−2上の1次側DC電力と1次側AC電力とをスイッチング動作により相互に変換する回路であり、一対の1次側端子54−1,54−2間に接続された平滑用コンデンサ81と、このコンデンサ81にブリッジ接続された6つのスイッチング素子82−1〜82−6と、を有している。各スイッチング素子82−1〜82−6は、制御部52から出力される各PWM信号S1〜S6によりオン/オフ動作するMOSFETやIGBT等により構成されている。
【0039】
一対のスイッチング素子82−1,82−2の接続点N1と、一対のスイッチング素子82−3,82−4の接続点N2と、一対のスイッチング素子82−5,82−6の接続点N3とには、3つのインダクタ83−1〜83−3を介して、3相の高周波絶縁用トランス84の1次側が接続されている。3相の高周波絶縁用トランス84は、1次側AC電力と2次側AC電力とを相互に変圧するものであり、例えば、Y−Δ結線方式のトランスにより構成されている。この3相の高周波絶縁用トランス84では、1次側と2次側に30°の位相差Φが生じる。
【0040】
3相の高周波絶縁用トランス84の2次側には、2次側3相ブリッジ回路90が接続され、更に、この2次側3相ブリッジ回路90に、一対の2次側端子55−1,55−2が接続されている。一対の2次側端子55−1,55−2は、2次側DC電圧であるDCリンク電圧V2が生じるDCリンク51aに接続されている。2次側3相ブリッジ回路90は、トランス84の2次側AC電力と、DCリンク51a上の2次側DC電力(即ち、一対の2次側端子55−1,55−2間に生じるDCリンク電圧V2を含む2次側DC電力)と、をスイッチング動作により相互に変換する回路であり、ブリッジ接続された6つのスイッチング素子91−1〜91−6と、これらのスイッチング素子91−1〜91−6に対して並列に接続された平滑用コンデンサ92と、を有している。各スイッチング素子91−1〜91−6は、制御部52から出力される各PWM信号S7〜S12によりオン/オフ動作するMOSFETやIGBT等により構成されている。
【0041】
制御部52及び制御用電源53の内、制御用電源53は、一対の1次側端子54−1,54−2上の1次側DC電力、及び一対の2次側端子55−1,55−2上の2次側DC電力を受電して、所定の電源電力を制御部52に与えるものであり、例えば、一定のDC電圧を出力する安定化電源回路により構成されている。
【0042】
制御部52は、制御用電源53から供給される電源電力により起動して1次側3相ブリッジ回路80及び2次側3相ブリッジ回路90のスイッチング動作を制御し、1次側3相ブリッジ回路80に対して2次側3相ブリッジ回路90の位相をずらすことによって双方向の電力変換を行わせ、且つ、1次側3相ブリッジ回路80と2次側3相ブリッジ回路90との位相差Φにより双方向の電力量を制御するものである。制御部52は、コントローラ70の制御によって待機運転動作状態になる。待機運転動作状態は、負荷34へ電力を供給しない状態であり、この時、図4中のPVユニット40及びINVユニット60は、BATユニット50によって変換されたDCリンク電圧V2から電力を供給され、制御部42,62の電源を確保している。制御部52は、待機運転動作状態になると、2次側DC電力における2次側のDCリンク電圧V2を、1次側DC電力における1次側DC電圧V1と同一の電圧になるように制御する機能を有している。
【0043】
即ち、制御部52は、1次側DC電力における1次側DC電圧V1及び1次側DC電流I1と、2次側DC電力における2次側のDCリンク電圧V2と、に基づき、待機運転動作状態になったことを判定すると、最適位相シフト量φを求めると共に、1次側DC電圧V1及び2次側のDCリンク電圧V2に基づき、このDCリンク電圧V2が1次側DC電圧V1と一致するような補正用位相シフト量Δφを求め、最適位相シフト量φを補正用位相シフト量Δφで補正した位相シフト量に基づき、1次側3相ブリッジ回路80及び2次側3相ブリッジ回路90のスイッチング動作を制御するための複数のPWM信号S1〜S12を出力する機能を有している。
【0044】
このような制御部52は、例えば、モード判定手段としてのモード判定部93、演算手段としての演算部94、比例積分(以下「PI」という。)制御手段としてのPI制御部95、及びPWM信号発生手段としてのPWM信号発生部96を有している。
【0045】
モード判定部93は、1次側DC電力における1次側DC電圧V1及び1次側DC電流I1と、2次側DC電力における2次側のDCリンク電圧V2と、に基づき、待機運転動作状態になったことを判定してこの判定結果を出力すると共に、固定のスイッチング周波数fを演算部94へ出力するものである。演算部94は、その判定結果及びスイッチング周波数fに基づき、演算により最適位相シフト量φを求めてPWM信号発生部96へ出力するものである。PI制御部95は、1次側DC電圧V1及び2次側のDCリンク電圧V2に基づき、このDCリンク電圧V2が1次側DC電圧V1と一致するような補正用位相シフト量ΔφをPI演算によって求めてPWM信号生成部96へ出力するものである。更に、PWM信号生成部96は、最適位相シフト量φを補正用位相シフト量Δφで補正した位相シフト量に基づき、6つの1次側PWM信号S1〜S6及び6つの2次側PWM信号S7〜S12を生成して6つの1次側スイッチング素子82−1〜82−6及び6つの2次側スイッチング素子91−1〜91−6にそれぞれ与えるものである。
【0046】
このように構成されるBATユニット50において、蓄電池32の放電を行う場合、蓄電池32から出力された1次側DC電力は、1次側3相ブリッジ回路80内のスイッチング素子82−1〜82−6によりスイッチングされて1次側AC電力に変換される。変換された1次側AC電力は、インダクタ83−1〜83−3を介して、トランス84により変圧される。変圧された2次側AC電力は、2次側3相ブリッジ回路90により2次側DC電力に変換され、2次側端子55−1,55−2から図4中のDCリンク51aへ出力される。
【0047】
2次側端子55−1,55−2における2次側DC電力のDCリンク電圧V2によって蓄電池32を充電する場合、その2次側DC電力が、2次側3相ブリッジ回路90により2次側AC電力に変換される。変換された2次側AC電力は、トランス84によって変圧され、インダクタ83−1〜83−3を介して、1次側3相ブリッジ回路80により1次側DC電力に変換される。変換された1次側DC電力の1次側DC電圧V1は、1次側端子54−1,54−2から出力され、蓄電池32が充電される。
【0048】
このような蓄電池32の充放電動作時において、制御部52は、1次側3相ブリッジ回路80に対し、2次側3相ブリッジ回路90の位相をずらすことにより、双方向の電力変換を可能とし、且つ、1次側3相ブリッジ回路80と2次側3相ブリッジ回路90との位相差Φにより、双方向の電力量を制御している。
【0049】
このような図1のBATユニット50を有する図4のマルチPCS30において、夜間停電となった場合、PVユニット40及びINVユニット60は、DCリンク41a,61aから制御用電源を確保する必要があり、そのDCリンク電圧V2を確保するために、BATユニット50が動作する必要がある。
【0050】
従来のマルチPCSでは、図2中の蓄電池1から負荷への電力供給時、及び蓄電池充電時において、例えば、DCリンク電圧V2がDC350V〜370Vの範囲で動作しており、蓄電池1の1次側DC電圧V1の低下により、DCリンク電圧V2との電圧比が生じ、この結果、ZVS外れが発生して変換効率の悪化の要因となっていた。
【0051】
これを解決するために、本実施例1では、以下のような対策を講じている。
図4中の負荷34に電力を供給しない場合においては、コントローラ70の制御により、BATユニット50が待機運転動作状態となる。この時、PVユニット40及びINVユニット60は、BATユニット50によって変換されたDCリンク電圧V2から電力を供給されて制御部42,62の電源を確保している。ただ、待機運転動作状態の時は、負荷34への電力供給が必要でなく、制御部42,62の電源電力を確保すれば良い。電源電力が例えば200V以上で制御部42,62が起動可能であれば、BATコンバータ50が変換するDCリンク電圧V2は、200V以上確保することができれば良いことになる。例えば、蓄電池32の1次側DC電圧V1がDC264Vであれば、制御部52により、待機運転動作状態時のDCリンク電圧V2の設定を、蓄電池32の1次側DC電圧V1と同じ264Vになるように制御する。これにより、蓄電池32の1次側DC電圧V1と2次側のDCリンク電圧V2との電圧比nが小さくなり、BATユニット50はZVS範囲で動作することが可能なため、待機運転動作状態時の損失を低減することができる。
【0052】
(実施例1の効果)
従来は、待機運転動作状態時におけるDCリンク電圧V2の設定に関して、図2中の蓄電池1の1次側DC電圧V1に関わらず、負荷への電力供給時と蓄電池1への充電時とにおいて、DCリンク電圧V2を例えばDC350V〜370Vの設定にしている。そのため、蓄電池1の1次側DC電圧V1によっては、蓄電池1の1次側DC電圧V1と2次側のDCリンク電圧V2との間に電圧比nが発生し、BATユニットがZVS動作範囲から外れ、多くの損失が発生していた。
【0053】
そこで、本実施例1では、図1のBATユニット50の待機運転動作状態時の動作として、制御部52により、2次側のDCリンク電圧V2を蓄電池32の1次側DC電圧V1と同じになるように制御している。そのため、BATユニット50内の双方向DC/DCコンバータ51がZVS範囲で動作することが可能となる。この時、スイッチングロスを低減することができるため、待機運転動作状態時の双方向DC/DCコンバータ51の消費電力も低減することができる。
【0054】
本実施例1の実験結果によれば、例えば、蓄電池32の1次側DC電圧V1がDC264Vの時の待機電力として、対策前264.1V×l.102A=291W、対策後264.17V×0.25A=66Wとなり、待機運転動作状態時の消費電力を低減することができた。
【0055】
(変形例)
本発明は、上記実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0056】
(a) 図1のBATユニット50において、1次側3相ブリッジ回路80及び2次側3相ブリッジ回路90は、図示以外の回路構成に変更しても良い。又、制御部52は、マイコン以外の個別回路により構成しても良い。
【0057】
(b) 図1のBATユニット50において、高周波絶縁用トランス84をY−Y結線方式に変更した場合、或いは、3相ブリッジ回路80,90を単相ブリッジ回路に変更した場合にも、ZVS外れの領域が存在するため、本発明の適用が可能である。
【0058】
(c) 図1のBATユニット50は、図4のマルチPCS30以外のものにも適用が可能である。例えば、図4中の太陽電池31を燃料電池等の他の直流電源に変更しても良い。
【符号の説明】
【0059】
30 マルチPCS
31 太陽電池
32 蓄電池
33 電力系統
34 負荷
40 PVユニット
41a,51a,61a DCリンク
44 DCバス
50 BATユニット
51 双方向DC/DCコンバータ
52 制御部
53 制御用電源
54−1,54−2 1次側端子
55−1,55−2 2次側端子
60 INVユニット
70 コントローラ
80 1次側3相ブリッジ回路
83−1〜83−3 インダクタ
84 高周波絶縁用トランス
90 2次側3相ブリッジ回路
93 モード判定部
94 演算部
95 PI制御部
96 PWM信号発生部
図1
図2
図3
図4