(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータの吊車の取り付け方法及び吊車の取り付けを伴うエレベータのローピングの変更方法の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。また、本願の明細書及び特許請求の範囲における上下方向の記載は、昇降路内におけるかご及び釣り合い錘の上昇方向を「上」とし、下降方向を「下」として用いているものとする。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明を適用するエレベータの改修前の構成を模式的に示す図である。
図2及び
図3はそれぞれ、
図1に示す改修前の状態におけるかごの吊り状態を正面側及び側方側から示す図である。なお、
図2の紙面表側(かごの搭乗口がある側)を正面側(前方側)とし、
図2の紙面左右側を側方側として説明する。また、これに関し、
図2の紙面表裏方向を前後方向、
図2の紙面左右方向を左右方向として説明する。さらに、
図4、
図5及び
図6はそれぞれ、本発明に係る吊車の取り付け方法による改修後に関する、
図1、
図2及び
図3と同態様の図である。
【0014】
まず、本発明を適用するエレベータの前提となる構成について説明する。エレベータ1は、上下方向に延びる昇降路3と、その中を移動可能に設けられたかご5及び釣り合い錘7とを備えている。かご5及び釣り合い錘7は、接続体としてのロープ9によって相互に接続されて、昇降路3内に吊り下げられている。また、かご5及び釣り合い錘7の上方には、昇降路3に対して固定された機械台11に支持されるように例えばウォーム巻上機等の巻上機13が設けられている。そして、ロープ9は、機械台11上の巻上機(綱車)13及びそらせ車15に巻きかけられており、巻上機13の駆動力によってロープ9が駆動されることで、かご5及び釣り合い錘7が相互に上下反対方向に昇降される。
【0015】
図1の構成は、いわゆる1:1ローピングであるローピング態様であり、巻上機13及びそらせ車15等の巻上機機構の一方側から下方に延びるロープ9の一端側がかご5に固定され、巻上機機構の他方側から下方に延びるロープ9の他端側が釣り合い錘7に固定されている。
【0016】
かご5は、上枠17a、左右一対のたて枠17b及び下枠17cからなるかご枠17と、かご枠17の内側に形成され、下枠17cに支持されたかご床19を床面とするかご室21とを備えている。
【0017】
改修前の状態では、
図1に示したように1:1ローピングであり、かご5の上部及び釣り合い錘7の上部には、滑車要素は必要なく、
図2及び
図3に示されるように、ロープ9の端部は、綱止め金23に接続されており、さらに、その綱止め金23が上枠17aに支持されている。
【0018】
一方、本発明を適用することで、エレベータは、一例として、
図4に示されるように、2:1ローピングであるローピング態様へと改修される。
図4では、かご5及び釣り合い錘7のそれぞれの上部に、新規吊車31が設けられている。そして、例えばPM巻上機等の巻上機13を含む巻上機機構の一方側から下方に延びるロープ9の一端側は、かご5の新規吊車31に巻き掛けられ、ロープ9の端部は、綱止め梁としても機能する機械台11に接続されている。また、巻上機機構の他方側から下方に延びるロープ9の他端側は、釣り合い錘7の新規吊車31に巻き掛けられ、ロープ9の端部は、同様に、綱止め梁として機能する機械台11に接続されている。このような2:1ローピングにより、ロープ9の張力が1:1ローピングの半分に軽減されている。
【0019】
次に、本発明に係る吊車の取り付け方法について説明する。本発明では、新規吊車31を、アダプタを介して、既存のかご枠・錘枠の上枠に取り付ける。アダプタは、新規吊車31を回動可能に支持する支持部を、上部に有し、且つ、取付対象枠部に取り付けられる引っ掛け部を、新規吊車31の回転軸心から離れた下部に有する。
【0020】
本実施の形態1の吊車の取り付け方法の基本例では、
図5及び
図6に示されるように、アダプタ141は、前後一対の屈曲した(具体的一例としては端面L字状の)取付プレート143a,143bを、その屈曲が内側を指向するように対向させてなるアダプタ本体143を有している。
【0021】
一対の取付プレート143a,143bは、新規吊車31及び上枠17aを前後(外側)から挟むように配置されている。一対の取付プレート143a,143bの間の上部スペースには、新規吊車31が回動可能に支持されており、アダプタ本体143の上部は、支持部145として機能する。
【0022】
取付プレート143a,143bの間の下部スペースには、取付対象枠部である上枠17aが延びている。取付プレート143a,143bの下部の横方向(水平方向)に延びる部分の上面は、上枠17aの下面33に対して下方から接触されており、アダプタ141が上枠17aに対して吊り下げ力を付与可能に、当該上枠17aに引っ掛けられている。これにより、アダプタ本体143の下部は、新規吊車31の回転軸心RCから下方に離れ且つ下方から上枠17aに引っ掛けられる引っ掛け部147として機能する。
【0023】
さらに、本実施の形態1の吊車の取り付け方法の改変例について説明する。
図7は、本実施の形態1の改変例に関する
図6と同態様の図であり、
図8は、当該改変例の構成を分解して示す図である。本改変例では、アダプタ141は、アダプタ本体143と、少なくとも一つ(図示例では一対)のズレ防止部材149と、少なくとも一つ(図示例では一対)の落下防止部材151とを有している。
【0024】
一対のズレ防止部材149及び一対の落下防止部材151はそれぞれ、端面L字状に屈曲しており、一対の取付プレート143a,143bの内側に配置されている。
【0025】
一対のズレ防止部材149における縦壁部149aは、上枠17aを構成する、前後に相互に離れた一対のビーム部分の内側対向面(側面)35に沿ってそれぞれ内側から接触されている。一対のズレ防止部材149における横壁部149bは、取付プレート143a,143bの下部の横方向(水平方向)に延びる部分の上面に載置され、取付プレート143a,143bに固定(例えばボルト固定)されている。これにより、取付プレート143a,143bが、上枠17aに対して誤って前後方向にズレてしまうことを抑制することができる。
【0026】
また、一対の落下防止部材151における横壁部151bは、上枠17aの上面37に上方から接触されている。一対の落下防止部材151における縦壁部151aは、取付プレート143a,143bの縦方向(上下方向)に延びる部分の内側側面に接触されて、取付プレート143a,143bに固定(例えばボルト固定)されている。これにより、上枠17aに対して、取付プレート143a,143bが、誤って下方に移動してしまうこと(落下すること)を抑制することができる。
【0027】
図4〜
図8においては、かご枠17の上枠17aに対して新規吊車31を取り付ける場合を説明してきたが、
図9に示されるように、釣り合い錘7における錘枠18の上枠18aに対して新規吊車31を取り付ける場合も、上述したアダプタ141を用いて同様に行うことができる。
【0028】
また、本実施の形態1は、例えば
図10〜
図16に示すような様々な形状のかご枠17の上枠17aや、錘枠18の上枠18aにも適用することができる。まず、上記の説明は、
図10に示した形状の上枠17aや上枠18aとして説明してきた。すなわち、
図10の上枠は、一対の溝形鋼が開口を相互に外に向けて並ぶように配置された態様を有している。
図11の上枠は、
図10と同形状の端面(断面)を有する一対の溝形鋼が開口を向かい合わせにして並ぶように配置された態様を有している。
図12の上枠は、コ字状に屈曲した一対の鋼板が開口を相互に外に向けて並ぶように配置された態様を有している。
図13の上枠は、C字状に屈曲した一対の鋼板が開口を相互に外に向けて並ぶように配置された態様を有している。なお、図示省略するが、上枠は、
図10の上枠に対する
図11の上枠の関係に対応するように、
図12及び
図13それぞれの一対の鋼板を開口が向かい合わせになるように並べた態様でもよいだろう。
【0029】
図14の上枠は、コ字状に屈曲した鋼板が開口を下向きにして配置された態様を有している。
図15の上枠は、ハット型に屈曲した鋼板が開口を下向きにして配置された態様を有している。
図16の上枠は、I型鋼(H型鋼)からなる態様を有している。
【0030】
本実施の形態1は、
図6に示す基本例として、上記の
図10〜
図16の上枠に適用することができ、
図7及び
図8に示したズレ防止部材149及び落下防止部材151を備えた改変例として、上記の
図10〜
図14の上枠に適用することができる。
【0031】
また、本実施の形態1の吊車の取り付け方法の別の改変例として、ズレ防止部材149及び落下防止部材151の一方のみを有するアダプタとして実施することもできる。その場合、ズレ防止部材149だけを含む改変例として、
図10及び
図12〜
図15の上枠に適用することができ、落下防止部材151だけを含む改変例として、
図10〜
図14及び
図16の上枠に適用することができるだろう。
【0032】
以上に説明した本実施の形態1に係る吊車の取り付け方法によれば、かご枠の上枠や錘枠の上枠に引っ掛けるアダプタを介して新規吊車を取り付けるので、既存の上枠を交換することなく容易にその既存の上枠に新規吊車を取り付けることができる。
【0033】
また、アダプタにおける上部で新規吊車を支持し、アダプタの下部で上枠に引っ掛けられるので、既存の上枠に穴あけ等の加工が必要ない。これに関し、既存の上枠を利用した方法であって、本発明とは異なる取り付け方法としては、例えば
図17に示す第1説明例としての取り付け方法や、
図18に示す第2説明例としての取り付け方法も想定できる。これら説明例はいずれも、上枠17aを構成する、前後に離れた一対のビーム部分の内側に、新規吊車31をレイアウトする場合である。そのため、第1説明例では、
図17に示されるように、新規吊車31の回転軸を上枠17a下面で支えるためのUボルト39を受け入れるための穴あけ加工が必要である。一方、第2説明例では、
図18に示されるように、上枠17aの側面で新規吊車31の回転軸を受け入れるための穴あけ加工が必要であり、さらに加えて、新規吊車31の回転軸を上枠17aの側面の穴に挿通するに際して、上枠17aを分解するか、又は、新規吊車31の回転軸と吊車部分とを現地組み立てする必要もある。また、
図17及び
図18の何れの穴あけ加工でも、作業の困難性を考えると、上枠部分を一旦、かご枠や錘枠から取り外して加工することもあり、結局は、上枠を交換する場合と同等の手間や時間が生じることもあり得る。いずれにしても、穴あけ加工や現地分解、現地組み立て等が必要であり、作業性が悪いという問題がある。これに対して本実施の形態1では、上述のように上部で新規吊車31を支持し、下部で上枠17aに引っ掛けるので、穴あけ加工や現地分解が不要であり、単に、上枠17aの交換が不要であるだけに留まらず、作業性まで良好に維持することができる利点がある。
【0034】
また、上述した第1説明例及び第2説明例では、一対のビーム部分の内側に、新規吊車31をレイアウトするに際して、一対のビーム部分の間隔如何では所望の幅の新規吊車31が配置できない恐れがあるが、本実施の形態1では、新規吊車31が引っ掛け部147に対して上方に離れており、上枠17aの上方に新規吊車31が位置するので、吊車を配置する幅スペースの確保が容易であるという利点もある。換言すると、本実施の形態1によれば、上枠を構成する一対のビーム部分の間隔が狭い場合、特に、一対のビーム部分の間隔が狭くビーム部分の間に新規吊車が挿入できない場合にも、アダプタを上枠の外側を通して上枠の下面に取り付け、上枠の上方で新規吊車を配置するスペースを確保すればよいので、一対のビーム部分の間隔が狭い既存の上枠を交換せずに且つ作業性を悪化させることなく、新規吊車を上枠に取り付けることができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について、
図19及び
図20に基づいて説明する。
図19及び
図20はそれぞれ、本実施の形態2に関する、
図7及び
図8と同態様の図である。
【0036】
本実施の形態2におけるアダプタ241も、新規吊車31を回動可能に支持する支持部245を、上部に有し、且つ、上枠17aに取り付けられる引っ掛け部247を、新規吊車31の回転軸心から離れた下部に有する。
【0037】
また、本実施の形態2におけるアダプタ241は、少なくとも、一対の平板状の取付プレート243a,243bからなるアダプタ本体243と、そのアダプタ本体243に固定される一対の引っ掛け部材253と、アダプタ本体243又は引っ掛け部材253に固定される少なくとも一つの落下防止部材とを有している。
図19及び
図20に示す、より具体的な一例では、落下防止部材として、一対の押さえ部材251と、一対のクリップ255とが用いられている。
【0038】
かかる具体的な一例についてさらに説明する。アダプタ本体243を構成する前後一対の平板状の取付プレート243a,243bは、上枠17aにおける一対のビーム部分の間を挿通されている。一対の取付プレート243a,243bの間の上部スペースには、新規吊車31が回動可能に支持されており、アダプタ本体243の上部は、支持部145として機能する。
【0039】
上枠17aに挿通されて上枠17aの下面33よりもさらに下方に延びた取付プレート243a,243bの下部部分には、引っ掛け部材253が固定されている。一対の引っ掛け部材253はそれぞれ、端面L字状に屈曲している。引っ掛け部材253における横壁部253bは、上枠17aの下面33に下方から接触されており、引っ掛け部材253における縦壁部253aは、取付プレート243a,243bの外側側面に固定(例えばボルト固定)されている。すなわち、引っ掛け部材253が一対の取付プレート243a,243bの下部に固定されて、上枠17aの下面33に引っ掛けられており、アダプタ241の下部は、新規吊車31の回転軸心RCから下方に離れ且つ下方から上枠17aに引っ掛けられる引っ掛け部247として機能する。
【0040】
一対のクリップ255はそれぞれ、端面L字状に屈曲しており、引っ掛け部材253の上方において当該引っ掛け部材253に固定(例えばボルト固定)されている。クリップ255における縦壁部255aの存在により、クリップ255における横壁部255bと、引っ掛け部材253の上面との間には、適当な隙間が確保されている。そして、クリップ255は、引っ掛け部材253との間で上枠17aの一部を挟んで当該引っ掛け部材253に固定される。これにより、上枠17aに対して、取付プレート243a,243bが、誤って下方に移動してしまうこと(落下すること)を抑制することができる。
【0041】
また、一対の押さえ部材251はそれぞれ、端面L字状に屈曲しており、一対の落下防止部材251における横壁部251bは、上枠17aの上面37に上方から接触されている。一対の落下防止部材251における縦壁部251aは、取付プレート243a,243bの縦方向(上下方向)に延びる部分の外側側面に接触されて、取付プレート243a,243bに固定(例えばボルト固定)されている。これによっても、上枠17aに対して、取付プレート243a,243bが、誤って下方に移動してしまうこと(落下すること)を抑制することができる。
【0042】
なお、上記の説明は、かご枠17の上枠17aに対して新規吊車31を取り付ける場合を説明してきたが、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様、釣り合い錘7における錘枠18の上枠18aに対して新規吊車31を取り付ける態様として、上述したアダプタ241を用いることができる。
【0043】
また、上記の説明は、上枠が
図10に示した形状である場合を例に説明してきたが、本実施の形態2は、これに限らず、一対のビーム部分を有する上枠に広く適用することができ、例えば、
図11、
図12及び
図13に示した上枠に対して実施することができる。
【0044】
上に説明した本実施の形態2に係る吊車の取り付け方法によっても、かご枠の上枠や錘枠の上枠に引っ掛けるアダプタを介して新規吊車を取り付けるので、既存の上枠を交換することなく容易にその既存の上枠に新規吊車を取り付けることができる。さらに、実施の形態1と同様、上部で新規吊車を支持し、下部で上枠に引っ掛けるので、穴あけ加工や現地分解が不要であり、単に、上枠の交換が不要であるだけに留まらず、作業性まで良好に維持することができる利点がある。さらに、新規吊車が引っ掛け部に対して上方に離れており、上枠の上方に新規吊車が位置するので、吊車を配置する幅スペースの確保が容易であるという利点もある。
【0045】
さらに加えて、本実施の形態2では、一対の取付プレートの間隔を狭くできる分、新規吊車の回転軸長も容易に短くすることができ、強度面・コスト面で有利な構造が得られる利点もある。また、取付プレートの形状は平板状でよいため、形状の加工に伴うコストの観点からもコスト面で有利である。さらに、一対の取付プレートは、上枠における一対のビーム部分の間を挿通されてセットされるので、上枠に対し、アダプタ本体が横方向にズレる心配がなく、専用のズレ防止部材を不要とすることができる。さらに加えて、現地での取付プレートの上枠へのセットは、単純な挿通態様でよいため、新規吊車を予め取付プレートに組み付けてサブアセンブリ化した状態で出荷することもでき、現地作業を容易化し、すなわち、作業性を向上させることもできる。
【0046】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について、
図21及び
図22に基づいて説明する。
図21及び
図22はそれぞれ、本実施の形態3に関する、
図7及び
図8と同態様の図である。
【0047】
本実施の形態3におけるアダプタ341も、新規吊車31を回動可能に支持する支持部345を、上部に有し、且つ、上枠17aに取り付けられる引っ掛け部347を、新規吊車31の回転軸心から離れた下部に有する。
【0048】
本実施の形態3におけるアダプタ341は、一対の取付プレート343a,343bからなるアダプタ本体343と、そのアダプタ本体343に固定される一対のクリップ355とを有している。上枠17aは、その上部に、一対の突端部25を有しており、一対の取付プレート343a,343bはそれぞれ、突端部25の突出方向に沿って延びる接続部357を下部に有し、一対の取付プレート343a,343bは、それら接続部357を、上枠17aの突端部25の上面37と接触させて配置されており、一対のクリップ355は、接続部357との間で突端部25を挟んで当該接続部357に固定される。本実施の形態3として限定されるものではないが、
図21及び
図22に示す、より具体的な一例では、突端部25の突出方向及び接続部357の延びる方向は、外側向きであり、また、一対の取付プレート343a,343bは相互に連結固定されている。
【0049】
アダプタ本体343を構成する前後一対の取付プレート343a,343bは、コ字状に屈曲された鉤状部分を下部に有している。鉤状部分には、横方向の外側向きに延びる接続部357と、接続部357の先端よりも内側の位置において上下に延びる連結部359とが含まれる。
【0050】
一対の取付プレート343a,343bは、連結部359において相互に固定(例えばボルト固定)されている。なお、連結部359は接続部357の先端や支持部345よりも内側に位置しているので、ボルト固定の場合に、短いボルトで相互固定することでき、特に、図示例では、連結部359同士を当接させて固定するので、より堅固に一対の取付プレート343a,343bを連結することができる。
【0051】
一対のクリップ355はそれぞれ、端面L字状に屈曲しており、接続部357の下方において当該接続部357に固定(例えばボルト固定)されている。突端部25先端を覆うようなクリップ355における縦壁部355aの存在により、クリップ355における横壁部355bと、接続部357の下面との間には、適当な隙間が確保されている。そして、クリップ355は、接続部357が上枠17aの突端部25の上面37と接触されている状態で、接続部357との間で突端部25を挟んで当該接続部357に固定される。
【0052】
これにより、クリップ355が、上枠17aの突端部25の下面34に引っ掛けられると共に、一対の取付プレート343a,343bの、上枠17aに対する落下が抑制されている。すなわち、クリップ355は、上枠17aの突端部25の下面34に対して下方から接触されており、アダプタ341の下部は、上枠17aに対して吊り下げ力を付与可能に当該上枠17aに引っ掛けられる引っ掛け部347として機能する。また、接続部357の下面が上枠17aの突端部25の上面37と当接しているので、上枠17aに対して、取付プレート343a,343bが、誤って下方に移動してしまうこと(落下すること)を抑制することができる。また、一対の取付プレート343a,343bは相互固定され、且つ、一対の突端部25のそれぞれの先端が、接続部357及びクリップ355で覆われているので、上枠17aに対するアダプタ本体343の横方向の位置ズレを抑制することもできる。
【0053】
なお、上記の説明は、かご枠17の上枠17aに対して新規吊車31を取り付ける場合を説明してきたが、本実施の形態3においても、上記実施の形態と同様、釣り合い錘7における錘枠18の上枠18aに対して新規吊車31を取り付ける態様として、上述したアダプタ341を用いることができる。
【0054】
また、上記の説明は、上枠が
図10に示した形状である場合を例に説明してきたが、本実施の形態3は、これに限らず、上部に突端部を有する上枠に広く適用することができ、例えば、
図11、
図12、
図13及び
図16に示した上枠に対して実施することができる。
【0055】
上に説明した本実施の形態3に係る吊車の取り付け方法によっても、かご枠の上枠や錘枠の上枠に引っ掛けるアダプタを介して新規吊車を取り付けるので、既存の上枠を交換することなく容易にその既存の上枠に新規吊車を取り付けることができる。さらに、実施の形態1と同様、上部で新規吊車を支持し、下部で上枠に引っ掛けるので、穴あけ加工や現地分解が不要であり、単に、上枠の交換が不要であるだけに留まらず、作業性まで良好に維持することができる利点がある。さらに、新規吊車が引っ掛け部に対して上方に離れており、上枠の上方に新規吊車が位置するので、吊車を配置する幅スペースの確保が容易であるという利点もある。
【0056】
加えて、本実施の形態3では、現地での取付プレートの上枠へのセットは、上枠上面への単純な載置態様でよいため、新規吊車を予め取付プレートに組み付けてサブアセンブリ化した状態で出荷することもでき、現地作業を容易化し、すなわち、作業性を向上させることもできる。また、本実施の形態3では、アダプタ全体が上枠の上方にあり、上枠の上部の突端部の下面に引っ掛けて固定する態様であるため、上枠の最下部に引っ掛けて固定する態様よりも、作業がやり易いという利点もある。
【0057】
さらに加えて、取付プレート下部の一対の接続部と一対のクリップとが、引っ掛け部、ズレ防止部、落下防止部としての3つの役割を兼用しており、アダプタの構成部品が極めて少なくて済み、部品点数の低減を図ることができる。これは、専用のズレ防止部材や落下防止部材を不要とすることができることをも意味している。また、部品点数の低減に伴い、組み立て作業を簡素化することができ、それによっても、作業性を向上させることができる。さらに、本実施の形態3は、一対のビーム部分を有する上枠に限定されない。よって、前述したように、例えば
図16のような一本の鋼材からなる上枠にも適用できる。
【0058】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について、
図23及び
図24に基づいて説明する。
図23及び
図24はそれぞれ、本実施の形態4に関する、
図7及び
図8と同態様の図である。
【0059】
本実施の形態4におけるアダプタ441も、新規吊車31を回動可能に支持する支持部445を、上部に有し、且つ、上枠17aに取り付けられる引っ掛け部447を、新規吊車31の回転軸心から離れた下部に有する。
【0060】
本実施の形態3におけるアダプタ441は、一対の取付プレート443a,443bからなるアダプタ本体443と、そのアダプタ本体に固定される引っ掛け部材461とを有している。
【0061】
引っ掛け部材461は、端面コ字状に屈曲した部材である。また、本実施の形態4では、既存の上枠17aの下面には既存の綱止め金23が固定されている。そして、引っ掛け部材461は、コ字状における凹側を下に向けた姿勢で、綱止め金23の下方に配置される。引っ掛け部材461における横壁部461bは、綱止め金23の下面に接触されて当該綱止め金23に締結固定される。具体的には、綱止め金23における既存の穴を介してボルト等の締結手段を介して固定される。
【0062】
前後一対の取付プレート443a,443bは、一例として平板状に構成されており、上枠17a、綱止め金23及び引っ掛け部材461のそれぞれ外側に配置されている。そして、一対の取付プレート443a,443bは、引っ掛け部材461における一対の縦壁部461aの対応する外側面に固定(例えばボルト固定)されている。
【0063】
なお、上記の説明は、かご枠17に対して新規吊車31を取り付ける場合を説明してきたが、本実施の形態4においても、上記実施の形態と同様、釣り合い錘7における錘枠18に対して新規吊車31を取り付ける態様として、上述したアダプタ441を用いることができる。
【0064】
また、上記の説明は、上枠が
図10に示した形状である場合を例に説明してきたが、本実施の形態4は、これに限らず、下部に綱止め金が固定されている上枠に広く適用することができ、例えば、綱止め金が付随する
図11〜
図15に示した上枠に対して実施することができる。
【0065】
上に説明した本実施の形態4に係る吊車の取り付け方法によっても、かご枠の上枠や錘枠の上枠に引っ掛けるアダプタを介して新規吊車を取り付けるので、既存の上枠を交換することなく容易にその既存の上枠に新規吊車を取り付けることができる。さらに、実施の形態1と同様、上部で新規吊車を支持し、下部で上枠に引っ掛けるので、穴あけ加工や現地分解が不要であり、単に、上枠の交換が不要であるだけに留まらず、作業性まで良好に維持することができる利点がある。さらに、新規吊車が引っ掛け部に対して上方に離れており、上枠の上方に新規吊車が位置するので、吊車を配置する幅スペースの確保が容易であるという利点もある。特に、本実施の形態4では、一対の取付プレートが上枠の外側を通るので、上記実施の形態1と同様、上枠を構成する一対のビーム部分の間隔が狭い場合、特に、一対のビーム部分の間隔が狭くビーム部分の間に新規吊車が挿入できない場合にも、既存の上枠を交換せずに且つ作業性を悪化させることなく、新規吊車を上枠に取り付けることができる。
【0066】
また、本実施の形態4では、改修前の既存の1:1ローピングの時と同様、綱止め金で荷重を受けるため、改修後の構造でも同様な強度を持たせることが容易に実現できる利点がある。さらに、既存の1:1ローピングの態様では、綱止め金が上枠の下側に固定されており、特に、錘枠では綱止め金が上枠に溶接されて外れない場合が多いので、本実施の形態4は、かご枠や錘枠に対する作業をできる限り減らし、既存の上枠を活用する点で優れている。また、本実施の形態4は、主に錘側で用いられている
図11及び
図14の形状の上枠のように上記実施の形態1〜3の全てからの選択的適用が困難な形状の上枠に対して、有効である。
【0067】
さらに加えて、本実施の形態4では、現地での取付プレートの上枠へのセットは、一対の取付プレートの間に上枠等が位置するように当該一対の取付プレートを上枠、綱止め金及び引っ掛け部材に対して被せるだけでよいので、新規吊車を予め取付プレートに組み付けてサブアセンブリ化した状態で出荷することもでき、現地作業を容易化し、すなわち、作業性を向上させることもできる。
【0068】
さらに加えて、本実施の形態4では、引っ掛け部材が綱止め金に締結固定されるので、上枠に対して、アダプタが、誤って下方に移動してしまうこと(落下すること)を抑制することができる。すなわち、専用の落下防止部材を不要とすることができる。しかも、かかる引っ掛け部材の綱止め金への締結固定は、既存の綱止め金におけるロープ支持に機能していた既存の穴を活用して実施されるので、新たな穴あけ加工に伴う作業性の悪化を招くことも回避されている。さらに加えて、引っ掛け部材は、一対の取付プレートを架橋するように両者を連結しているので、アダプタが上枠に対して横方向に位置ズレしてしまうことを抑制することができる。すなわち、専用のズレ防止部材を不要とすることもできる。
【0069】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5として、上述した実施の形態1〜4に係る吊車の取り付け方法を含む、ローピングの変更方法について説明する。具体的一例として、ウォーム巻上機を、性能の異なるPM巻上機へと切り替えるのに伴い、ローピングを1:1から2:1に変更する改修工事として、
図25に示すフローチャートの基づきながら説明する。
【0070】
まず、ステップS1として、上枠に対する引っ掛け部と吊車の支持部とを備えたアダプタを用意する。これは、すなわち、上述した実施の形態1〜4に係る吊車の取り付け方法において説明したアダプタ141、241、341、441の何れかを、ローピングの変更にむけて予め用意しておく。
【0071】
次に、ステップS2として、例えば
図1に示したような1:1ローピングが適用された、吊車を有しない既存の上枠から、ロープの端部を外す。続いて、ステップS3として、ロープの端部を外した既存の上枠に対して、交換及び穴あけ加工の何れも行うことなく、当該既存の上枠に、アダプタを介して新規吊車を取り付ける。かかる既存の上枠へのアダプタを介した新規吊車の取り付けは、上記実施の形態1〜4の対応する何れかの方法によって行う。
【0072】
さらに、ステップS4として、上枠に取り付けた新規吊車に対してロープを巻き掛け、2:1ローピングを行う。なお、ウォーム巻上機をPM巻上機へ交換する作業は、適宜必要に応じて、上述したステップS2からステップS4までの間の適切なタイミングで行うことができる。
【0073】
本実施の形態5においても、上述した実施の形態1〜4の対応するアダプタに伴い、上述した利点が得られる。なお、上記説明は、ローピングを1:1から2:1に変更する場合を例に説明したが、本実施の形態5は、これに限定されず、吊車を有しない上枠を伴う1:1ローピングから、アダプタを介して新規吊車を取り付けた上枠を有するN:1ローピング(N:2以上の整数)への変更を広く含むものである。よって、一例を挙げると、本実施の形態5を、
図26に示されるような3:1ローピングへの変更として実施することもでき、換言すると、上記実施の形態1〜4のアダプタを、N:1ローピングへの変更に用いることができる。
【0074】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0075】
例えば、上述した説明では、上枠に対しては一つの新規吊車を取り付けるべく一つのアダプタを用いることを例に説明していたが、本発明は、これに限定されるものではなく、かご枠又は錘枠の上枠に対して、複数のアダプタを用いて複数の新規吊車を取り付けることも可能である。一例を示すと、
図27に示されるように、かご枠17の上枠17aに対して、二つのアダプタ(上記アダプタ141、241、341、441の何れか)を、上枠17aの延びる方向に並べて取り付け、かかる二つのアダプタそれぞれを介して、二つの新規吊車31を取り付ける態様として実施することも可能である。