特許第6223046号(P6223046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223046
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】漏えい検出装置および原子力設備
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/02 20060101AFI20171023BHJP
   G21C 17/02 20060101ALI20171023BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G01M3/02 J
   G21C17/02 E
   F22B37/38 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-159732(P2013-159732)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31542(P2015-31542A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】内海 晴輔
(72)【発明者】
【氏名】笠原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】辺見 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 盛喜
(72)【発明者】
【氏名】小崎 正道
(72)【発明者】
【氏名】新藤 祐
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋芳
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−139737(JP,A)
【文献】 特開昭63−175738(JP,A)
【文献】 特開昭55−048631(JP,A)
【文献】 特開2012−013545(JP,A)
【文献】 特開昭62−182328(JP,A)
【文献】 特開昭62−254032(JP,A)
【文献】 特開平02−008725(JP,A)
【文献】 米国特許第04534662(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00
F22B 37/38
G21C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体が流通される配管の所定部位の外周を覆う外板と、
前記配管と前記外板との間に充填された保温材と、
前記配管と前記外板との間の一部に設けられて前記配管の表面に前記保温材を配置しない空間部を形成してなる部屋と、
前記部屋の空間部の外部に設けられて前記空間部とは別で区画された外空間部を形成してなる容器と、
前記部屋の空間部と前記容器の外空間部とを接続する接続管と、
前記容器の外空間部内に設けられて前記容器の外空間部の温度を検出する温度検出部と、
を備え、前記接続管を前記容器より断熱性の高い部材で形成することを特徴とする漏えい検出装置。
【請求項2】
前記容器を前記部屋の下方に配置し、前記容器の上部と前記部屋の下部とを前記接続管で接続することを特徴とする請求項1に記載の漏えい検出装置。
【請求項3】
前記温度検出部は、前記接続管前記容器の外空間部内に接続された部分に配されていることを特徴とする請求項1または2に記載の漏えい検出装置。
【請求項4】
前記配管における高温流体の流通を開閉する開閉弁と、
前記温度検出部による検出温度を常時取得しつつ、当該検出温度が所定の閾値を超えた場合、前記開閉弁を閉塞させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の漏えい検出装置。
【請求項5】
報知部を備え、
前記制御部は、検出温度が所定の閾値を超えた場合、前記報知部を作動させることを特徴とする請求項に記載の漏えい検出装置。
【請求項6】
原子炉で生成された熱により高温流体を発生させて配管で送り、当該高温流体を利用する原子力設備であって、
請求項1〜請求項のいずれか一つに記載の漏えい検出装置が適用されることを特徴とする原子力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温流体の漏えいを監視するための漏えい検出装置、および当該漏えい検出装置が適用される原子力設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1は、原子力発電所その他の蒸気利用施設において、異常な蒸気漏れの警報を自動的に発するため、セラミック湿度センサと温度センサとを直接蒸気漏れが予測される箇所の断熱材に埋め込んで、その箇所の湿度と温度のデータをマイクロコンピュータで絶対温度に変換し、これに統計的処理を施したものを基準にして異常の有無を判断し、異常の場合に警報を発する蒸気漏れ警報システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−189596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の蒸気漏れ警報システムは、湿度センサと温度センサとを直接蒸気漏れが予測される箇所の断熱材に埋め込んでいる。このため、各センサにより湿度と温度を検出するのは断熱材を通過した蒸気の湿度および温度となるため、異常となる蒸気漏れの際の湿度と温度を検出するまでに時間差が生じ、より迅速な対応を行うことが困難であった。しかも、特許文献1に記載の蒸気漏れ警報システムは、異常の有無を判断するのに、湿度と温度のデータをマイクロコンピュータで絶対温度に変換し、これに統計的処理を施したものを基準にしており、複雑な処理を行わなければならない。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することのできる漏えい検出装置および原子力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の漏えい検出装置は、高温流体が流通される配管の所定部位の外周を覆う外板と、前記配管と前記外板との間に充填された保温材と、前記配管と前記外板との間の一部に設けられて前記配管の表面に前記保温材を配置しない空間部を形成してなる部屋と、前記部屋の空間部の外部に設けられて前記空間部とは別で区画された外空間部を形成してなる容器と、前記部屋の空間部と前記容器の外空間部とを接続する接続管と、前記容器の外空間部の温度を検出する温度検出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この漏えい検出装置によれば、通常時、部屋の空間部は、配管の表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、容器の外空間部は、部屋の空間部に接続管で接続されているが、部屋の空間部と容器の外空間部との圧力差が小さく空間部の空気が外空間部に流れ込む量が少ないため、外空間部は空間部よりも低温となり温度差が生じる。そして、この容器の外空間部内に配置された温度検出部により、外空間部の温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋の空間部よりも低い外空間部の温度を温度検出部により検出する。高温流体の漏えい時は、部屋の空間部の圧力が上昇し接続管を介して外空間部に蒸気および凝縮液が導かれるため外空間部内の温度も上昇することになり、この上昇した温度を温度検出部により検出する。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。
【0008】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記容器を前記部屋の下方に配置し、前記容器の上部と前記部屋の下部とを前記接続管で接続することを特徴とする。
【0009】
この漏えい検出装置によれば、容器を部屋の下方に配置し、容器の上部と部屋の下部とを接続管で接続することで、高温流体が部屋の空間部に漏れた場合凝縮液が部屋から容器に落下するため、凝縮液を容器側に積極的に流れ込ませることができ、凝縮液で上昇した外空間部の温度を早急に検出することができ、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。また、容器を部屋の下方に配置することで、容器を設備の床にボルトなどで固定することができ、設置性を容易にすることができる。
【0010】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記接続管を前記容器より断熱性の高い部材で形成することを特徴とする。
【0011】
この漏えい検出装置によれば、接続管を容器より断熱性の高い部材で形成することで、接続管を通過して容器に至る凝縮液が保温されるため、高温流体の漏えい時に、容器に至る凝縮液を保温して容器の外空間部の温度上昇を助勢することで、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0012】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記接続管における前記容器との接続部分に前記温度検出部を配置することを特徴とする。
【0013】
この漏えい検出装置によれば、接続管における容器との接続部分に温度検出部を配置することで、接続管を介して容器に流れ込む凝縮液が温度検出部に接触するため、温度上昇を早急に検出することができ、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0014】
また、本発明の漏えい検出装置では、前記配管における高温流体の流通を開閉する開閉弁と、前記温度検出部による検出温度を常時取得しつつ、当該検出温度が所定の閾値を超えた場合、前記開閉弁を閉塞させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この漏えい検出装置によれば、検出温度が所定の閾値を超えた場合、すなわち漏えいを検出した場合に開閉弁を閉塞させることで、高温流体の漏えい箇所を自動的に隔離することができ、漏えいに早期に対応することができる。
【0016】
また、本発明の漏えい検出装置では、報知部を備え、前記制御部は、検出温度が所定の閾値を超えた場合、前記報知部を作動させることを特徴とする。
【0017】
この漏えい検出装置によれば、検出温度が所定の閾値を超えた場合、すなわち漏えいを検出した場合に報知部を作動させることで、高温流体の漏えいを早期に知らせることができる。
【0018】
上述の目的を達成するために、本発明の原子力設備は、原子炉で生成された熱により高温流体を発生させて配管で送り、当該高温流体を利用する原子力設備であって、上述したいずれか一つに記載の漏えい検出装置が適用されることを特徴とする。
【0019】
この原子力設備によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができ、原子力設備の高温流体の漏れを監視することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係る原子力設備の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る漏えい検出装置の構成図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る漏えい検出装置の構成図である。
図4図4は、漏えい検出装置の機能ブロック図である。
図5図5は、漏えい検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る原子力設備の一例を示す概略構成図である。図1に示す原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。この原子力設備は、原子炉格納容器100内において、原子炉圧力容器101、加圧器102、蒸気発生器103および一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。
【0024】
原子炉圧力容器101は、内部に炉心である複数の燃料集合体101aを密閉状態で格納するもので、燃料集合体101aが挿抜できるように、容器本体101bとその上部に装着される容器蓋101cとにより構成されている。容器蓋101cは、容器本体101bに対して開閉可能に設けられている。容器本体101bは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口側管台101dおよび出口側管台101eが設けられている。出口側管台101eは、蒸気発生器103の入口側水室103aに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口側管台101dは、蒸気発生器103の出口側水室103bに連通するように一次冷却水管105が接続されている。
【0025】
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように各端部が管板103dに支持されている。そして、入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続され、出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続され、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。
【0026】
また、原子力設備は、蒸気発生器103が、原子炉格納容器100外で二次冷却水管106a,106bを介して蒸気タービン107に接続されて、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0027】
蒸気タービン107は、高圧タービン108および低圧タービン109を有すると共に、発電機110が接続されている。また、高圧タービン108および低圧タービン109は、湿分分離加熱器111が、二次冷却水管106aから分岐して接続されている。二次冷却水管106aは、蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る途中に蒸気隔離弁(開閉弁)119が設けられている。蒸気隔離弁119は、非常時などに閉塞されて蒸気発生器103から高圧タービン108および低圧タービン109に至る蒸気が隔離される。また、低圧タービン109は、復水器112に接続されている。この復水器112は、二次冷却水管106bに接続されている。二次冷却水管106bは、上述したように蒸気発生器103に接続され、復水器112から蒸気発生器103に至り、復水ポンプ113、低圧給水加熱器114、脱気器115、主給水ポンプ116、高圧給水加熱器117および主給水弁(開閉弁)118が設けられている。
【0028】
従って、原子力設備では、一次冷却水が原子炉圧力容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換後の冷却した一次冷却水は、一次冷却水管105を介して一次冷却水ポンプ104側に回収され、原子炉圧力容器101に戻される。一方、熱交換により蒸気となった二次冷却水は、蒸気タービン107に供給される。蒸気タービン107に係り、湿分分離加熱器111は、高圧タービン108からの排気から湿分を除去し、さらに加熱して過熱状態とした後に低圧タービン109に送る。蒸気タービン107は、二次冷却水の蒸気により駆動され、その動力が発電機110に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、復水器112に排出される。復水器112は、取水管112aを介してポンプ112bにより取水した冷却水(例えば、海水)と、低圧タービン109から排出された蒸気とを熱交換し、当該蒸気を凝縮させて低圧の飽和液に戻す。熱交換に用いられた冷却水は、排水管112cから排出される。また、凝縮された飽和液は、二次冷却水となり、復水ポンプ113によって二次冷却水管106bを介して復水器112の外部に送り出される。さらに、二次冷却水管106bを経る二次冷却水は、低圧給水加熱器114で、例えば、低圧タービン109から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器115で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、主給水ポンプ116により送水され、高圧給水加熱器117で、例えば、高圧タービン108から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器103に戻される。ここで、二次冷却水を蒸気発生器103に給水する系統を主給水系という。主給水系は、蒸気発生器103の二次冷却水の水位を維持するため、主給水ポンプ116や主給水弁118などが制御される。
【0029】
図2および図3は、本実施形態に係る漏えい検出装置の構成図である。本実施形態の漏えい検出装置1は、上述したような原子力設備に適用される。例えば、漏えい検出装置1は、原子力設備において、高温流体である二次冷却水が流通される配管である二次冷却水管106a,106bに配置される。具体的に、二次冷却水管106aにおいて、漏えい検出装置1は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、配管固定点における溶接接続部分、または機器(蒸気発生器103,高圧タービン108,低圧タービン109,湿分分離加熱器111,蒸気隔離弁119)との溶接接続部分に配置される。また、二次冷却水管106bにおいて、漏えい検出装置1は、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分、配管固定点における溶接接続部分、または機器(蒸気発生器103,復水器112,復水ポンプ113,低圧給水加熱器114,脱気器115,主給水ポンプ116,高圧給水加熱器117,主給水弁118)との溶接接続部分に配置される。なお、図2では、二次冷却水管106a,106bが原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された直後の部分に漏えい検出装置1が配置された形態を示し、図3では、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分に漏えい検出装置1が配置された形態を示している。なお、漏えい検出装置1は、原子力設備において、高温流体である一次冷却水が流通される配管である一次冷却水管105における各溶接接続部分に配置されてもよい。また、本実施形態に係る漏えい検出装置1は、原子力設備に限らず、高温流体が流通される配管に適用されるものである。また、本実施形態に係る漏えい検出装置1により漏えいが検出される高温流体とは、高温水など液体や、蒸気などの気体を含む。
【0030】
図2において、二次冷却水管106a,106bは、隔壁100aの部分で保護管100bに挿通されている。そして、原子炉格納容器100の隔壁100aの外側に引き出された二次冷却水管106a,106bは、その外周が保護管100bに連結された外板2で覆われている。外板2は、鋼板などで形成されている。そして、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に保温材3が充填されている。このため、二次冷却水管106a,106bに流通される高温流体である蒸気や高温水が保護管100bや外板2で保護されるとともに保温材3で保温される。
【0031】
また、図3において、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分106c(図3では機器との溶接接続部分)において、機器側は、その外周が機器の保護のための外板120および保温のための保温材121で覆われている。そして、二次冷却水管106a,106bは、その外周が外板120に連結された外板2で覆われている。外板2は、鋼板などで形成されている。そして、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に保温材3が充填されている。このため、二次冷却水管106a,106bに流通される高温流体である蒸気や高温水が外板2で保護されるとともに保温材3で保温される。
【0032】
本実施形態の漏えい検出装置1は、図2および図3に示すように、外板2の外径が大きく形成された大径部21において、二次冷却水管106a,106bと外板2との間に、二次冷却水管106a,106bの表面に保温材3を配置しない空間部S1を形成してなる部屋4と、部屋4の空間部S1の外部に、空間部S1とは別で区画された外空間部S2を形成してなる容器7と、部屋4の空間部S1と容器7の外空間部S2とを接続する接続管8と、容器7の外空間部S2の温度を検出するための温度検出部5と、を備える。なお、図3の場合、空間部S1は、二次冷却水管106a,106bの溶接接続部分106cの位置に形成される。
【0033】
容器7は、鋼板などの壁で覆われた筐体であり、その内部が外空間部S2である。容器7の内部は、保温材は配置されない。そして、漏えい検出装置1は、容器7の外空間部S2内に温度検出部5を配置してなる。
【0034】
ここで、温度検出部5は、例えば、測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)をセンサ部5aとして構成したものが適用される。センサ部5aは、測温抵抗体に限らず、温度を検出することができるものであればよい。温度検出部5は、センサ部5aが容器7の外空間部S2内に配置され、センサ部5aから容器7の外空間部S2外に信号線5bが引き出されている。
【0035】
すなわち、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時、部屋4の空間部S1は、二次冷却水管106a,106bの表面から伝わる高温流体の熱により高温となる。一方、容器7の外空間部S2は、部屋4の空間部S1に接続管8で接続されているが、部屋4の空間部S1と容器7の外空間部S2との圧力差が小さく空間部S1の空気が外空間部S2に流れ込む量が少ないため、外空間部S2は空間部S1よりも低温となり温度差が生じる。そして、この容器7の外空間部S2内に配置された温度検出部5により、外空間部S2の温度が検出される。このため、高温流体の漏えいのない通常時は、部屋4の空間部S1よりも低い外空間部S2の温度を温度検出部5により検出する。高温流体の漏えい時は、部屋4の空間部S1の圧力が上昇し接続管8を介して外空間部S2に蒸気および凝縮液が導かれるため外空間部S2内の温度も上昇することになり、この上昇した温度を温度検出部5により検出する。この結果、高温流体の漏えいを検出することができる。しかも、空間部S1および外空間部S2は、接続管8で接続されているため、高温流体が漏えいしても、高温流体は空間部S1および外空間部S2の内部にあるため、空間部S1および外空間部S2の外部への高温流体の急激な散出を緩和することができる。なお、高温流体が漏えいした場合、外空間部S2の内圧が上昇することになり、内圧が急激に上昇すると容器7が破損するおそれがある。そこで、容器7の一部に圧力逃がし用の孔を設けておくか、所定内圧以上で開放される安全弁を容器7に設けておけば、内圧の急激な上昇により容器7が破損する事態を防ぐことができる。
【0036】
例えば、部屋4の空間部S1内に温度検出部5を配置した場合、温度検出部5は、通常時、空間部S1内の高温の温度を検出し、高温流体の漏えい時にも同様に空間部S1内の高温の温度を検出するが、通常時と漏えい時との温度差が小さいため、漏えいを検出し難い。特に、微少な漏えいの場合、これを検出することができないおそれがある。この点、本実施形態の漏えい検出装置1では、通常時は部屋4の空間部S1の温度よりも低い容器7の外空間部S2の温度を検出しており、高温流体の漏えい時は部屋4の空間部S1から外空間部S2に流れ込む蒸気および凝縮液により上昇した外空間部S2内の温度を検出するため、微少な漏えいであっても迅速に検出することができる。
【0037】
ところで、本実施形態の漏えい検出装置1では、図2および図3に示すように、容器7を部屋4の下方に配置し、容器7の上部と部屋4の下部とを接続管8で接続することが好ましい。
【0038】
容器7を部屋4の下方に配置し、容器7の上部と部屋4の下部とを接続管8で接続することで、凝縮液が部屋4から容器7に落下するため、凝縮液を容器7側に積極的に流れ込ませることができ、凝縮液で上昇した外空間部S2の温度を早急に検出することができ、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。また、容器7を部屋4の下方に配置することで、図2および図3に示すように、容器7を設備の床122にボルト123などで固定することができ、設置性を容易にすることができる。
【0039】
また、本実施形態の漏えい検出装置1では、接続管8を容器7より断熱性の高い部材で形成することが好ましい。
【0040】
接続管8は、例えば、シリコンゴムで形成され、容器7は金属材で形成される。接続管8を容器7より断熱性の高い部材で形成することで、接続管8を通過して容器7に至る凝縮液が保温されるため、高温流体の漏えい時に、容器7に至る凝縮液を保温して容器7の外空間部S2の温度上昇を助勢することで、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0041】
なお、接続管8は、図2および図3に示すように、部屋4および容器7に固定された接続補助管8aを挿入するようにして着脱可能に取り付けられ、図示しない結束バンドなどにより固定される。このため、接続管8を容易に設置や交換することができる。
【0042】
また、本実施形態の漏えい検出装置1では、図2および図3に示すように、接続管8における容器7との接続部分に温度検出部5を配置することが好ましい。
【0043】
接続管8における容器7との接続部分に温度検出部5を配置することで、接続管8を介して容器7に流れ込む凝縮液が温度検出部5に接触するため、温度上昇を早急に検出することができ、高温流体の漏えいをより迅速に検出することができる。
【0044】
図4は、漏えい検出装置の機能ブロック図であり、図5は、漏えい検出装置の動作を示すフローチャートである。本実施形態の漏えい検出装置1は、上述した実施形態の漏えい検出装置1において、高温流体の漏えいを検知した場合の対応制御を行うものである。
【0045】
本実施形態の漏えい検出装置1は、図4に示すように、開閉弁13と、報知部14と、制御部15と、を備えている。
【0046】
開閉弁13は、上述した主給水弁118および蒸気隔離弁119を含む。また、開閉弁13は、主給水弁118および蒸気隔離弁119以外に、図には明示しないが、温度検出部5により温度を検出する位置の近傍に設けられて二次冷却水管106a,106bを開閉するものも含む。
【0047】
報知部14は、音や明暗により報知を行うものであり、ブザーやランプやコンピュータに接続されたディスプレイなどを含む。また、報知部14は、原子力設備を制御する中央制御装置が設置された中央制御室や、温度検出部5により温度を検出する位置の近傍に設けられる。
【0048】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、このCPUの他に、処理プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、記憶装置とを含むコンピュータシステムである。制御部15は、温度検出部5により検出される温度情報iAを入力し、当該温度情報iAに応じた閉塞指令iaにより開閉弁13を閉塞制御するとともに、報知指令ibにより報知部14を作動制御する。この制御部15は、中央制御装置であってもよく、中央制御装置に接続された制御端末であってもよい。
【0049】
制御部15による開閉弁13および報知部14の制御は、図5に示すように、温度検出部5による検出温度を常時取得し、この検出温度が所定の閾値を超えた場合(ステップST1:Yes)、漏えいがあったと判断し、開閉弁13を閉塞するとともに(ステップST2)、報知部14を作動させる(ステップST3)。所定の閾値とは、例えば、100℃であり、蒸気や凝縮液により上がった外空間部S2の温度をいう。なお、ステップST1において検出温度が所定の閾値を超えていない場合(ステップST1:No)、ステップST1に戻り温度検出部5による検出温度を取得し続ける。
【0050】
また、温度検出部5が複数箇所に設置されており、当該温度検出部5が設置された各箇所に対応して開閉弁13が設けられている場合、制御部15は、温度検出部5および開閉弁13を関連付けるとともに位置情報を含み記憶装置に記憶し、ステップST1にて検出温度が所定の閾値を超えた場合(ステップST1:Yes)、漏えいがあったと判断し、漏えいを検出した位置の温度検出部5に関連付けられた開閉弁13を閉塞するとともに(ステップST2)、報知部14を作動させる(ステップST3)。
【0051】
このように、本実施形態の漏えい検出装置1は、二次冷却水管106a,106bにおける高温流体の流通を開閉する開閉弁13と、温度検出部5による検出温度を常時取得しつつ、当該検出温度が所定の閾値を超えた場合、開閉弁13を閉塞させる制御部15と、を備える。
【0052】
この漏えい検出装置1によれば、検出温度が所定の閾値を超えた場合、すなわち漏えいを検出した場合に開閉弁13を閉塞させることで、高温流体の漏えい箇所を自動的に隔離することができ、漏えいに早期に対応することができる。
【0053】
また、本実施形態の漏えい検出装置1は、報知部14を備え、制御部15は、検出温度が所定の閾値を超えた場合、報知部14を作動させる。
【0054】
この漏えい検出装置1によれば、検出温度が所定の閾値を超えた場合、すなわち漏えいを検出した場合に報知部14を作動させることで、高温流体の漏えいを早期に知らせることができる。
【0055】
ところで、上述した漏えい検出装置1は、原子炉で生成された熱により高温流体を発生させ、当該高温流体を利用する図1に例示する上述した原子力設備において適用される。
【0056】
この原子力設備によれば、高温流体の漏えいを迅速かつ容易に検出することができ、原子力設備の高温流体の漏れを監視することができる。
【0057】
なお、上述した原子力設備は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられたものを説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)が用いられた原子力設備であってもよく、上述した漏えい検出装置1は、沸騰型原子炉にて発生した蒸気を通過させる配管の漏えいの検出に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 漏えい検出装置
2 外板
3 保温材
4 部屋
5 温度検出部
7 容器
8 接続管
8a 接続補助管
13 開閉弁
14 報知部
15 制御部
106a,106b 二次冷却水管(配管)
S1 空間部
S2 外空間部
図1
図2
図3
図4
図5