(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記垂直型半導体要素は、GaN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル半導体素子。
前記垂直型半導体要素は、第1導電型半導体及び第2導電型半導体を含み、前記第1導電型半導体は、前記第1電極に連結され、前記第2導電型半導体は、前記第2電極に連結されることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載のフレキシブル半導体素子。
前記バッファ層は、少なくとも一つのバッファ部を備えるパターン化された構造を有し、前記バッファ部は、前記垂直型半導体要素に一対一に対応して備えられたことを特徴とする請求項7に記載のフレキシブル半導体素子。
前記下地層の第1熱膨脹係数と、前記バッファ層の第2熱膨脹係数との差は、1.5倍以上であることを特徴とする請求項13に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
前記積層膜を、前記少なくとも一つの単位領域にパターニングして、前記バッファ層の前記少なくとも一つの単位領域を定義するステップをさらに含むことを特徴とする請求項13ないし17のうちいずれか一項に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
前記垂直型半導体要素の少なくとも一部は、900ないし1100℃の高温で形成することを特徴とする請求項13ないし20のうちいずれか一項に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
前記下地層と前記バッファ層の接着力を弱化させるステップにおいて、前記下地層と前記バッファ層との間に、間隙が形成されることを特徴とする請求項13ないし23のうちいずれか一項に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
前記フレキシブル物質層の一部をエッチングして、前記垂直型半導体要素の一部を露出させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項13ないし24のうちいずれか一項に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
前記下部電極及び上部電極のうち少なくとも一つは、波形表面を有するように形成し、その場合、前記下部電極及び上部電極のうち少なくとも一つは、前記フレキシブル物質層を両側に引っ張って延伸した状態で形成することを特徴とする請求項26に記載のフレキシブル半導体素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
実施の形態の課題は、多様な形態的変形が可能な半導体素子及びその製造方法を提供することである。
【0009】
実施の形態の他の課題は、低コスト化及び大面積化に有利な半導体素子及びその製造方法を提供することである。
【0010】
実施の形態のさらに他の課題は、優秀な光電気的特性(発光特性または光発電特性)を有する半導体素子及びその製造方法を提供することである。
【0011】
実施の形態のさらに他の課題は、比較的簡単な方法で容易に製造することが可能な半導体素子を提供することである。
【0012】
本発明の一側面によれば、フレキシブル物質層と、前記フレキシブル物質層内に少なくとも部分的に組み込まれた少なくとも一つの垂直型半導体要素と、前記フレキシブル物質層の第1面上に備えられ、前記垂直型半導体要素の第1領域と電気的に連結された第1電極と、前記フレキシブル物質層の第2面上に備えられ、前記垂直型半導体要素の第2領域と電気的に連結された第2電極と、を備えるフレキシブル半導体素子が提供される。
【0013】
前記垂直型半導体要素は、III−V族系の半導体を含んでもよい。前記垂直型半導体要素は、例えば、GaN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含む。
【0014】
前記垂直型半導体要素は、ピラミッド状またはロッド状を有してもよい。前記垂直型半導体要素は、コア・シェル構造を有してもよい。前記垂直型半導体要素は、第1導電型半導体及び第2導電型半導体を含んでもよい。前記第1導電型半導体は、前記第1電極に連結され、前記第2導電型半導体は、前記第2電極に連結される。
【0015】
前記垂直型半導体要素は、前記第1導電型半導体と前記第2導電型半導体との間に備えられた活性層をさらに備えてもよい。前記垂直型半導体要素の一部は、前記フレキシブル物質層の外部に突出してもよい。前記垂直型半導体要素の下面に、バッファ層がさらに備えられてもよい。その場合、前記第1電極は、前記バッファ層を通じて、前記垂直型半導体要素に電気的に連結されてもよい。
【0016】
前記バッファ層は、III−V族系の半導体を含んでもよい。前記バッファ層は、例えば、LT(low temperature)−GaNまたはLT−AlNを含む。前記バッファ層は、前記第1電極と前記フレキシブル物質層との間に延びた構造を有し、前記バッファ層と前記フレキシブル物質層との間に、前記バッファ層の一部を露出させる少なくとも一つの開口領域を有するマスク層が備えられ、前記垂直型半導体要素は、前記開口領域を通じて露出された前記バッファ層の領域上に備えられてもよい。前記バッファ層は、少なくとも一つのバッファ部を備えるパターン化された構造を有し、前記バッファ部は、前記垂直型半導体要素に一対一に対応して備えられてもよい。
【0017】
前記フレキシブル物質層は、弾性重合体を含んでもよい。前記第1電極及び第2電極のうち少なくとも一つは、波形表面を有してもよい。前記第2電極上に、支持膜がさらに備えられてもよい。前記支持膜は、弾性重合体を含んでもよい。
【0018】
前記フレキシブル半導体素子は、光電素子であってもよい。前記垂直型半導体要素は、発光要素であり、前記フレキシブル半導体素子は、発光素子であってもよい。前記垂直型半導体要素は、光発電要素であり、前記フレキシブル半導体素子は、光発電素子であってもよい。
【0019】
本発明の他の側面によれば、基板上に、第1熱膨脹係数を有する下地層と、第2熱膨脹係数を有するバッファ層とが順次に積層された構造を含む積層膜を形成するステップと、前記バッファ層の少なくとも一つの単位領域上に、少なくとも一つの垂直型半導体要素を形成するステップと、前記下地層と前記バッファ層との熱膨脹係数差による応力を誘発して、それら間の接着力を弱化させるステップと、前記基板上にフレキシブル物質層を形成して、前記フレキシブル物質層内に、前記垂直型半導体要素の少なくとも一部を組み込むステップと、前記垂直型半導体要素が組み込まれた前記フレキシブル物質層を、前記バッファ層と共に、前記下地層から分離するステップと、を含むフレキシブル半導体素子の製造方法が提供される。
【0020】
前記下地層の第1熱膨脹係数と、前記バッファ層の第2熱膨脹係数との差は、1.5倍以上であってもよい。前記下地層は、金属を含んでもよい。前記下地層は、例えば、Ti,Hf,Zr及びAlのうち少なくとも一つを含む。
【0021】
前記バッファ層は、III−V族系の半導体を含んでもよい。前記バッファ層は、約450ないし650℃の低温で形成してもよい。前記バッファ層は、例えば、LT−GaNまたはLT−AlNを含む。前記バッファ層上にマスク層を形成して、前記バッファ層の前記少なくとも一つの単位領域を定義するステップをさらに含んでもよい。ここで、前記マスク層に少なくとも一つの開口領域が形成され、前記少なくとも一つの開口領域は、前記バッファ層の前記少なくとも一つの単位領域を露出させてもよい。
【0022】
前記積層膜を、前記少なくとも一つの単位領域にパターニングして、前記バッファ層の前記少なくとも一つの単位領域を定義するステップをさらに含んでもよい。
【0023】
前記垂直型半導体要素は、III−V族系の半導体を含んでもよい。前記垂直型半導体要素の少なくとも一部は、約900ないし1100℃の高温で形成してもよい。前記垂直型半導体要素は、例えば、GaN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含む。
【0024】
前記垂直型半導体要素は、コア・シェル構造を有してもよい。前記垂直型半導体要素は、第1導電型半導体及び第2導電型半導体を含むか、または第1導電型半導体と、第2導電型半導体と、それらの間に備えられた活性層とを含んでもよい。
【0025】
前記下地層と前記バッファ層の接着力を弱化させるステップは、前記下地層と前記バッファ層とを加熱するステップと、前記下地層と前記バッファ層とを冷却するステップと、を含んでもよい。
【0026】
前記下地層と前記バッファ層の冷却は、例えば、約5℃/min以上または約10℃/min以上の速度で行ってもよい。
【0027】
前記下地層と前記バッファ層の冷却は、例えば、約5ないし30℃/minまたは約10ないし30℃/minの速度で行ってもよい。前記下地層と前記バッファ層の接着力を弱化させるステップにおいて、前記下地層と前記バッファ層との間に、間隙が形成されてもよい。
【0028】
前記フレキシブル物質層は、前記間隙の少なくとも一部を満たすように形成される。
【0029】
前記製造方法は、前記フレキシブル物質層の一部をエッチングして、前記垂直型半導体要素の一部を露出させるステップをさらに含んでもよい。前記製造方法は、前記フレキシブル物質層の上面側に、前記垂直型半導体要素に電気的に連結された上部電極を形成するステップと、前記フレキシブル物質層の下面側に、前記垂直型半導体要素に電気的に連結された下部電極を形成するステップと、をさらに含んでもよい。
【0030】
前記下部電極及び上部電極のうち少なくとも一つは、波形表面を有するように形成してもよい。前記下部電極及び上部電極のうち少なくとも一つは、前記フレキシブル物質層を両側に引っ張って延伸した状態で形成してもよい。
【0031】
前記製造方法は、前記フレキシブル物質層を形成するステップ後、前記フレキシブル物質層上に、支持膜を付着するステップをさらに含んでもよい。その場合、前記支持膜が前記フレキシブル物質層に付着した状態で、前記フレキシブル物質層を、前記下地層から分離してもよい。
【0032】
前記製造方法は、前記フレキシブル物質層を形成するステップ後、前記フレキシブル物質層上に、上部電極を形成するステップと、前記上部電極上に、支持膜を形成するステップと、をさらに含んでもよい。その場合、前記上部電極と前記支持膜とが前記フレキシブル物質層に付着した状態で、前記フレキシブル物質層を、前記下地層から分離してもよい。
【0033】
前記基板は、非晶質基板であってもよい。前記基板は、例えば、ガラス基板である。
【0034】
前記フレキシブル半導体素子は、光電素子であってもよい。前記垂直型半導体要素は、発光要素であり、前記フレキシブル半導体素子は、発光素子であってもよい。
【0035】
前記垂直型半導体要素は、光発電要素であり、前記フレキシブル半導体素子は、光発電素子であってもよい。
【0036】
本発明のさらに他の側面によれば、基板上に、少なくとも一つの垂直型半導体要素を形成するステップと、前記基板上にフレキシブル物質層を形成して、前記フレキシブル物質層内に、前記垂直型半導体要素の少なくとも一部を組み込むステップと、前記垂直型半導体要素が組み込まれた前記フレキシブル物質層を、前記基板から分離するステップと、前記垂直型半導体要素と電気的に連結された電極要素を形成するステップと、を含むフレキシブル半導体素子の製造方法が提供される。
【0037】
前記基板は、非晶質基板であってもよい。前記基板は、例えば、ガラス基板である。
【0038】
前記製造方法は、前記基板上に、第1熱膨脹係数を有する第1物質層を形成するステップと、前記第1物質層上に、前記第1熱膨脹係数と異なる第2熱膨脹係数を有する第2物質層を形成するステップと、をさらに含んでもよい。その場合、前記垂直型半導体要素は、前記第2物質層上に形成してもよい。
【0039】
前記フレキシブル物質層を、前記基板から分離するステップは、前記第1物質層と前記第2物質層との熱膨脹係数差による応力を誘発して、前記第1物質層と前記第2物質層の接着力を弱化させるステップと、前記フレキシブル物質層を、前記第2物質層と共に、前記第1物質層から分離するステップと、を含んでもよい。
【0040】
前記第1物質層と前記第2物質層の接着力を弱化させるステップは、前記第1物質層と前記第2物質層とを加熱するステップと、前記第1物質層と前記第2物質層とを冷却するステップと、を含んでもよい。
【0041】
前記垂直型半導体要素は、III−V族系の半導体を含んでもよい。前記垂直型半導体要素は、コア・シェル構造を有してもよい。前記フレキシブル半導体素子は、光電素子であってもよい。
【0042】
実施の形態によれば、多様な形態的変形が可能なフレキシブル半導体素子を具現することができる。また、低コストで大面積のフレキシブル半導体素子を容易に具現することができる。さらに、優秀な光電気的特性(発光特性または光発電特性)を有するフレキシブル半導体素子を具現することができる。フレキシブル半導体素子を比較的簡単な方法で容易に製造することもできる。
【0043】
<実施の形態の詳細な説明>
以下、本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子及びその製造方法を、添付された図面を参照して詳細に説明する。添付された図面に示した層や領域の幅及び厚さは、明細書の明確性のために多少誇張されて示されたものである。詳細な説明の全体にわたって、同じ参照番号は、同じ構成要素を表す。
【0044】
図1は、本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子を示す断面図である。
図1を参照すれば、本実施形態によるフレキシブル半導体素子は、フレキシブル物質層F10と、フレキシブル物質層F10内に組み込まれた又は埋め込まれた少なくとも一つの垂直型半導体要素S10とを含む。フレキシブル物質層F10内に、互いに離隔された複数の垂直型半導体要素S10が備えられる。フレキシブル物質層F10は、弾性重合体を含む。弾性重合体は、弾性ポリマーである。例えば、弾性重合体は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。フレキシブル物質層F10は透明である。
【0045】
垂直型半導体要素S10は、ピラミッド状か、それと類似した形状を有する。または、垂直型半導体要素S10は、ロッド状か、それと類似した形状を有する。垂直型半導体要素S10の形状は、ピラミッド状またはロッド状に限定されず、多様に変形可能である。垂直型半導体要素S10は、コア・シェル構造を有する。例えば、垂直型半導体要素S10は、第1導電型半導体L10と、これを取り囲む第2導電型半導体L30とを含む。第1導電型半導体L10は、コア部といい、第2導電型半導体L30は、シェル部という。垂直型半導体要素S10は、第1導電型半導体L10と第2導電型半導体L30との間に備えられた活性層L20をさらに含む。活性層L20は、第1導電型半導体L10を取り囲む形態を有する。かかる点で、活性層L20は、中間シェル部という。
【0046】
垂直型半導体要素S10は、無機半導体を含む。例えば、垂直型半導体要素S10は、III−V族系の化合物半導体を含む。垂直型半導体要素S10は、GaN系の半導体、例えば、GaN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含む。具体的な例として、第1導電型半導体L10は、n型GaNを含み、第2導電型半導体L30は、p型GaNを含む。または、第1導電型半導体L10は、p型GaNを含み、第2導電型半導体L30は、n型GaNを含む。活性層L20は、量子ウェル層と障壁層とが一回以上交互に積層された構造を有する。この時、活性層L20は、単一量子ウェル(Single Quantum Well: SQW)構造、または多重量子ウェル(Multi-Quantum Well: MQW)構造を有する。具体的な例として、活性層L20は、InGaN層(量子ウェル層)とGaN層(障壁層)とが交互に反復積層された多重量子ウェル構造を有する。しかし、これは例示的なものであり、活性層L20の構成は多様に変化可能である。また、図示していないが、垂直型半導体要素S10は、所定の超格子構造層をさらに備えてもよい。超格子構造層については公知であるところ、これについての詳細な説明は省略する。場合によっては、活性層L20が備えられていなくてもよい。活性層L20が備えられていない場合、垂直型半導体要素S10は、PN構造を有する。
【0047】
垂直型半導体要素S10の一部は、フレキシブル物質層F10の外部に突出している。例えば、垂直型半導体要素S10の上部の一部は、フレキシブル物質層F10の上面の上方に突出する。垂直型半導体要素S10の約1/5ないし1/2が、フレキシブル物質層F10の外部に突出する。したがって、垂直型半導体要素S10の中央部は、フレキシブル物質層F10内に存在する。
【0048】
フレキシブル物質層F10の一側(上面側)に、垂直型半導体要素S10に電気的に連結された上部電極E10が備えられる。フレキシブル物質層F10の他側(下面側)に、垂直型半導体要素S10に電気的に連結された下部電極E20が備えられる。上部電極E10は、垂直型半導体要素S10の第1領域に電気的に連結され、下部電極E20は、垂直型半導体要素S10の第2領域に電気的に連結される。上部電極E10は、垂直型半導体要素S10の第2導電型半導体L30に電気的に連結され、下部電極E20は、垂直型半導体要素S10の第1導電型半導体L10に電気的に連結される。上部電極E10及び下部電極E20のうちいずれか一方は第1電極とし、他方は第2電極とする。
【0049】
下部電極E20とフレキシブル物質層F10との間に、バッファ層B10がさらに備えられる。バッファ層B10は、フレキシブル物質層F10と下部電極E20との間に延びた構造を有する。バッファ層B10は、垂直型半導体要素S10を成長させるためのシード層の役割を行う。バッファ層B10により、垂直型半導体要素S10は、優秀な結晶性を有するように形成される。バッファ層B10は、III−V族系の化合物半導体を含む。例えば、バッファ層B10は、GaN,AlN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含むように形成する。具体的な例として、バッファ層B10は、GaN系の半導体またはAlN系の半導体を含む。その場合、バッファ層B10は、LT(low temperature)−GaNまたはこれに基づく物質を含むか、またはLT−AlNまたはこれに基づく物質を含む。LT−GaN及びLT−AlNは、例えば、約450ないし650℃の比較的低温で形成された物質である。
【0050】
バッファ層B10とフレキシブル物質層F10との間に、マスク層M10がさらに備えられる。マスク層M10は、バッファ層B10の一部を露出させる少なくとも一つの開口領域H10を含む。開口領域H10は、ホール形態を有する。開口領域H10により露出されたバッファ層B10の領域上に、垂直型半導体要素S10が備えられる。マスク層M10は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物で形成される。マスク層M10の厚さは、約10ないし500nm、例えば、約10ないし200nmである。
【0051】
開口領域H10により露出されたバッファ層B10上に形成された垂直型半導体要素S10の少なくとも一部は、HT(high temperature)−GaNまたはこれに基づく物質を含む。HT−GaNは、例えば、約900ないし1100℃の比較的高温で形成されたGaNである。垂直型半導体要素S10において、第1導電型半導体L10及び第2導電型半導体L30は、約900ないし1100℃の比較的高温で形成される。活性層L20の形成温度は、第1及び第2導電型半導体L10,L30の形成温度よりも多少低い。例えば、活性層L20を、InGaN層(量子ウェル層)とGaN層(障壁層)とが交互に反復積層された多重量子ウェル構造で形成する場合、InGaN層(量子ウェル層)の形成温度は、約600ないし850℃であり、GaN層(障壁層)の形成温度は、約700ないし900℃である。このように、活性層L20を多少低い温度(例えば、600ないし900℃)で形成すれば、活性層L20は、マスク層M10の上面を覆うように形成される。その場合、マスク層M10の上面を覆う活性層L20の全面上に、第2導電型半導体L30が形成される。言い換えれば、活性層L20及び第2導電型半導体L30は、マスク層M10とフレキシブル物質層F10との間に延びた構造を有する。
【0052】
上部電極E10と下部電極E20のうち少なくとも一つは、透明電極である。上部電極E10と下部電極E20は、いずれも透明電極であってもよい。透明電極は、例えば、グラフェンで形成されるか、またはITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電性酸化物(Transparent Conductive Oxide: TCO)で形成される。上部電極E10と下部電極E20のうち一方は透明電極であり、他方は不透明電極である。不透明電極は、例えば、Au,Pd,Al,Pt,Ag,Ti及びそれらの混合物などで形成される。しかし、前述した上下部電極E10,E20の具体的な物質は、例示的なものであり、その他に多様な導電物質が上下部電極E10,E20の物質に適用可能である。
【0053】
図1の構造は、多様に変形可能である。例えば、
図1においては、バッファ層B10上に、開口領域H10を有するマスク層M10を形成して、垂直型半導体要素S10が形成される領域を限定したが、他の実施形態においては、マスク層M10を使用せずにバッファ層B10をパターニングすることによって、垂直型半導体要素S10が形成される領域を限定する。かかる場合が
図2に示されている。
図2は、本発明の他の実施形態によるフレキシブル半導体素子を示す。
【0054】
図2を参照すれば、垂直型半導体要素S11の下面に、バッファ層B11が備えられる。バッファ層B11は、垂直型半導体要素S11に一対一に対応してパターン化された構造を有する。その場合、下部電極E21は、フレキシブル物質層F11の下面に、バッファ層B11と接触するように備えられる。下部電極E21は、バッファ層B11を通じて、垂直型半導体要素S11に電気的に連結される。上部電極E11は、フレキシブル物質層F11の上面に、垂直型半導体要素S11と電気的に連結されるように備えられる。垂直型半導体要素S11は、第1導電型半導体L11及び第2導電型半導体L31を含み、それらの間に活性層L21が備えられる。場合によっては、活性層L21が備えられていなくてもよい。垂直型半導体要素S11の具体的な物質/構造/特性は、
図1で説明した垂直型半導体要素S10と同一または類似している。フレキシブル物質層F11、上部電極E11及び下部電極E21の物質/構造/特性などは、それぞれ
図1のフレキシブル物質層F10、上部電極E10及び下部電極E20のそれと同一または類似している。
【0055】
図3は、本発明の他の実施形態によるフレキシブル半導体素子を示す断面図である。本実施形態は、
図1の変形例である。
【0056】
図3を参照すれば、上部電極E10上に、支持膜F20がさらに備えられる。支持膜F20は、弾性重合体を含む。弾性重合体は、弾性ポリマーである。例えば、弾性重合体は、PDMS、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。支持膜F20は、フレキシブル物質層F10と同様に、フレキシブル特性を有する。かかる点で、支持膜F20は、第2フレキシブル物質層という。支持膜F20は、フレキシブル物質層F10よりも厚く形成される。上部電極E10の一部領域は、支持膜F20によってカバーされずに露出される。支持膜F20によってカバーされずに露出された上部電極E10の領域は、コンタクト領域である。本実施形態のように、支持膜F20によって、フレキシブル物質層F10及び垂直型半導体要素S10などが支持される場合、フレキシブル半導体素子は、さらに安定した構造を有する。
【0057】
図3においては、支持膜F20が
図1の構造に適用された場合を示したが、
図3の支持膜F20は、
図2の構造にも適用可能である。また、場合によっては、上部電極E10,E11の上でない下部電極E20,E21の下に支持膜F20を適用することも可能である。または、上部電極E10,E11の上面に第1支持膜を適用し、下部電極E20,E21の下面に第2支持膜を適用することも可能である。
【0058】
図1ないし
図3において、上部電極E10,E11と下部電極E20,E21のうち少なくとも一つは、バックル構造を有する。バックル構造は、表面に波形を有する構造を意味する。すなわち、上部電極E10,E11と下部電極E20,E21のうち少なくとも一つは、波形の表面又は波形表面を有する。バックル構造が適用されたフレキシブル半導体素子の一例が
図4に示されている。
図4は、
図1の上部電極E10及び下部電極E20がバックル構造を有する場合を示す。
【0059】
図4を参照すれば、上部電極E15及び下部電極E25は、バックル構造を有する。言い換えれば、上部電極E15及び下部電極E25は、表面に波形(波形の表面)を有する。このように、上部電極E15及び下部電極E25がバックル構造を有する場合、フレキシブル半導体素子が曲げられたり、引っ張られたりする(延びる)時、上部電極E15及び下部電極E25が柔軟に変形される。
【0060】
しかし、
図1ないし
図3の上部電極E10,E11と下部電極E20,E21とが、必ずしも
図4のようなバックル構造を有する必要はない。上部電極E10,E11と下部電極E20,E21の物質自体が優秀な伸縮性及び柔軟性を有する場合、バックル構造でなくとしても、素子の変形によって、柔軟に変形される。
【0061】
図1ないし
図4で説明した本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子は、光電素子である。この時、垂直型半導体要素S10,S11は、発光要素、または光発電要素である。垂直型半導体要素S10,S11が発光要素である場合、これを含む半導体素子は、発光素子である。垂直型半導体要素S10,S11が光発電要素である場合、これを含む半導体素子は、光発電素子である。フレキシブル半導体素子が発光素子である時、垂直型半導体要素S10,S11の物質構成と、フレキシブル半導体素子が光発電素子である時、垂直型半導体要素S10,S11の物質構成とについては公知であるので、これについての詳細な説明は排除する。
【0062】
図5Aないし
図5Jは、本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0063】
図5Aを参照すれば、基板100上に、下地層200を形成する。基板100は、非晶質基板である。例えば、基板100は、ガラス基板である。しかし、基板100の物質は、ガラスに限定されず、多様に変化可能である。下地層200は、第1熱膨脹係数を有する。下地層200の熱膨脹係数(第1熱膨脹係数)と、その上に形成されるバッファ層300の熱膨脹係数(第2熱膨脹係数)との差は、比較的大きい。下地層200は、金属層である。例えば、下地層200は、Ti,Hf,Zr及びAlのうち少なくとも一つを含む。下地層200がTi層である場合、下地層200の熱膨脹係数は、約8.6×10
−6/Kである。下地層200は、HCP(Hexagonal Close Packed)またはFCC(Face Centered Cubic)の結晶構造を有する。下地層200は、その表面と垂直な方向(すなわち、c軸方向)に優先配向性を有する。下地層200は、後で形成する垂直型半導体要素500(
図5C)との格子定数差(すなわち、格子不整合)が小さい物質層である。例えば、下地層200と、後で形成する垂直型半導体要素500(
図5C)との格子定数差は、約20%以内である。
【0064】
下地層200上に、バッファ層300を形成する。バッファ層300は、III−V族系の化合物半導体で形成する。例えば、バッファ層300は、GaN系の半導体で形成する。具体的な例として、バッファ層300は、GaN,AlN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含むように形成する。例えば、バッファ層300は、GaN系の半導体またはAlN系の半導体を含むように形成する。バッファ層300は、前記の材料で形成された単一層であってもよいし、二重層及び三重層のような多重層であってもよい。バッファ層300は、約450ないし650℃の低温で形成する。バッファ層300を前述の低温でGaNで形成する場合、バッファ層300は、LT−GaN層という。バッファ層300を前述の低温でAlNで形成する場合、バッファ層300は、LT−AlN層という。バッファ層300は、その下部に設けられた下地層200の優先配向性によって、その表面と垂直な方向(すなわち、c軸方向)に優先配向性を有する。
【0065】
バッファ層300は、第2熱膨脹係数を有する。前述したように、バッファ層300の熱膨脹係数(第2熱膨脹係数)と、下地層200の熱膨脹係数(第1熱膨脹係数)との差は、比較的大きい。例えば、下地層200の第1熱膨脹係数と、バッファ層300の第2熱膨脹係数との差は、約1.5倍以上である。下地層200の第1熱膨脹係数が、バッファ層300の第2熱膨脹係数よりも約1.5倍以上大きい。バッファ層300がGaN層である場合、バッファ層300のc軸に垂直な方向への熱膨脹係数は、約3.1×10
−6ないし3.7×10
−6/Kであり、バッファ層300のc軸方向への熱膨脹係数は、約2.8×10
−6ないし5.6×10
−6/Kである。このように、熱膨脹係数差の大きい下地層200とバッファ層300とを使用するので、後で所定の方法によって、下地層200とバッファ層300との間に熱応力を誘発し、下地層200とバッファ層300との界面接着力を弱化させて、それらを分離する。
【0066】
図5Bを参照すれば、バッファ層300上に、マスク層400を形成する。マスク層400は、バッファ層300を露出させる少なくとも一つの開口領域H1を有する。開口領域H1は、ホール形態を有する。開口領域H1の直径は、例えば、数nmないし数μmである。マスク層400は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物で形成するか、またはシリコン酸化物とシリコン窒化物とが混合された構造で形成する。マスク層400は、単層構造または多層構造を有する。マスク層400の厚さは、約10ないし500nm、例えば、約10ないし200nmである。
【0067】
図5Cを参照すれば、開口領域H1により露出されたバッファ層300の領域上に、垂直型半導体要素500を成長させる。垂直型半導体要素500は、ピラミッド状か、それと類似した形状を有する。または、垂直型半導体要素500は、ロッド状か、それと類似した形状を有する。垂直型半導体要素500の形状は、ピラミッド状またはロッド状に限定されず、多様に変形可能である。垂直型半導体要素500は、コア・シェル構造を有する。例えば、垂直型半導体要素500は、第1導電型半導体10と、これを取り囲む第2導電型半導体30とを含む。第1導電型半導体10は、コア部といい、第2導電型半導体30は、シェル部という。垂直型半導体要素500は、第1導電型半導体10と第2導電型半導体30との間に備えられた活性層20をさらに含む。活性層20は、第1導電型半導体10を取り囲む形態を有する。垂直型半導体要素500は、III−V族系の化合物半導体を含む。垂直型半導体要素500は、GaN系の半導体、例えば、GaN,InGaN,AlGaN及びAlInGaNのうち少なくとも一つを含む。具体的な例として、第1導電型半導体10は、n型GaNを含み、第2導電型半導体30は、p型GaNを含む。または、第1導電型半導体10は、p型GaNを含み、第2導電型半導体30は、n型GaNを含む。活性層20は、量子ウェル層と障壁層とが一回以上交互に積層された構造を有する。この時、活性層20は、単一量子ウェル構造または多重量子ウェル構造を有する。具体的な例として、活性層20は、InGaN層(量子ウェル層)とGaN層(障壁層)とが交互に反復積層された多重量子ウェル構造を有する。しかし、これは例示的なものであり、活性層20の構成は、多様に変化可能である。また、図示していないが、垂直型半導体要素500は、所定の超格子構造層をさらに備えてもよい。超格子構造層については公知であるところ、これについての詳細な説明は省略する。場合によっては、活性層20を形成していなくてもよい。活性層20を形成していない場合、垂直型半導体要素500は、PN構造を有する。
【0068】
垂直型半導体要素500の少なくとも一部は、約900ないし1100℃の高温で形成する。垂直型半導体要素500の一部を前述の高温でGaNで形成する場合、かかるGaNは、HT(high temperature)−GaNという。垂直型半導体要素500の少なくとも一部は、HT−GaNまたはこれに基づく物質を含む。垂直型半導体要素500において、第1導電型半導体10及び第2導電型半導体30は、約900ないし1100℃の高温で形成する。活性層20は、第1及び第2導電型半導体10,30よりも低い温度で形成する。例えば、活性層20を、InGaN層(量子ウェル層)とGaN層(障壁層)とが交互に反復積層された多重量子ウェル構造で形成する場合、InGaN層(量子ウェル層)の形成温度は、約600ないし850℃であり、GaN層(障壁層)の形成温度は、約700ないし900℃である。このように、活性層20を多少低い温度(例えば、600ないし900℃)で形成すれば、活性層20は、マスク層400の上面を覆うように形成される。その場合、マスク層400の上面を覆う活性層20の全面上に、第2導電型半導体30が形成される。言い換えれば、活性層20及び第2導電型半導体30は、マスク層400の上面の全体を覆うように形成される。垂直型半導体要素500は、下部に設けられたバッファ層300によって、c軸方向に優先配向性を有する。垂直型半導体要素500は、優秀な結晶性を有する。
【0069】
図5Dを参照すれば、所定の方法を通じて、下地層200とバッファ層300の接着力を弱める。下地層200とバッファ層300とが、所定の温度以上に加熱された状態で、それらを適切な条件で冷却すれば、熱膨脹係数差による応力が誘発されつつ、下地層200とバッファ層300の接着力が弱化する。具体的な例として、下地層200とバッファ層300とが、約700℃または約900℃以上に加熱された状態で、それらを約5ないし30℃/minまたは約10ないし30℃/minの速度で冷却すれば、熱膨脹係数差による応力が、界面接着力よりも大きくなりつつ、それらが分離される。その結果、下地層200とバッファ層300との間に、間隙G10が形成される。この時、下地層200とバッファ層300は完全に分離されず、部分的に(不完全に)分離された状態である。前述の冷却速度が遅すぎれば、下地層200とバッファ層300との間に、熱応力がほとんど発生せず、間隙G10が形成されない。したがって、下地層200とバッファ層300の冷却速度は、約5℃/min以上または約10℃/min以上と速いことが望ましい。再び説明すれば、下地層200とバッファ層300とを所定の温度以上に加熱した後、それらを比較的速い速度で冷却すれば、熱膨脹係数差に起因した熱応力が大きくなりつつ、下地層200とバッファ層300の接着力が大きく弱化する。したがって、下地層200とバッファ層300とを物理的に分離するのに適当な状態となる。
【0070】
マスク層400が適切な熱膨脹係数を有し、かつ適当な厚さを有する場合、マスク層400が下地層200とバッファ層300との界面応力に影響を与えるので、下地層200とバッファ層300の分離(部分的分離)がさらに容易になる。マスク層400がシリコン酸化物(SiO
2)で形成された場合、マスク層400の厚さが約200nm以下である時、マスク層400によって、下地層200とバッファ層300の分離(部分的分離)が容易になる。ここで、シリコン酸化物(SiO
2)の熱膨脹係数は、約0.5×10
−6/Kである。したがって、マスク層400がシリコン酸化物(SiO
2)で形成された場合、マスク層400は、約200nm以下の厚さに形成することが望ましい。しかし、マスク層400の物質が変われば、マスク層400の適正厚さ範囲は変わる。場合によっては、下地層200とバッファ層300の接着力を弱化させるステップにおいて、バッファ層300とマスク層400の接着力も弱化する。
【0071】
活性層20及び第2導電型半導体30が、マスク層400の上面の全体を覆うように形成された場合、活性層20及び第2導電型半導体30も、下地層200とバッファ層300との界面応力に影響を与えるので、下地層200とバッファ層300の分離(部分的分離)が容易になる。かかる点で、活性層20と第2導電型半導体30とを、マスク層400の上面の全体を覆うように形成することが望ましい。
【0072】
図5Eを参照すれば、基板100上に、フレキシブル物質層600を形成する。フレキシブル物質層600は、弾性重合体を含むように形成する。弾性重合体は、弾性ポリマーである。具体的な例として、弾性重合体は、PDMS、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。フレキシブル物質層600は、所定の粘度を有するポリマー溶液をスピンコーティングした後、それを硬化することによって形成する。フレキシブル物質層600は、垂直型半導体要素500を覆いつつ、それら間の空間を満たすように形成される。したがって、垂直型半導体要素500は、フレキシブル物質層600内に組み込まれる。また、フレキシブル物質層600は、下地層200とバッファ層300との間に存在する間隙G10の少なくとも一部を満たすように形成される。フレキシブル物質層600は透明である。
【0073】
図5Fを参照すれば、フレキシブル物質層600の一部をエッチングして、垂直型半導体要素500の一部を露出させる。フレキシブル物質層600のエッチングには、例えば、CF
4及びO
2を含むエッチングガスを使用する。かかる工程を通じて、垂直型半導体要素500の一部は、フレキシブル物質層600の外部に突出する。垂直型半導体要素500の上部の一部は、フレキシブル物質層150の上面の上方に突出する。例えば、垂直型半導体要素500の約1/5ないし1/2が、フレキシブル物質層600の外部に突出する。
図5Fのように、フレキシブル物質層600の一部をエッチングして、垂直型半導体要素500の一部を露出させた結果の状態は、
図9に示した通りである。
図9を参照すれば、ピラミッド構造を有する複数の垂直型半導体要素が規則的に配列されており、それらの上端部の一部がフレキシブル物質層上に露出されている。
【0074】
図5Gを参照すれば、垂直型半導体要素500が組み込まれたフレキシブル物質層600を、バッファ層300と共に、下地層200から分離する。バッファ層300と下地層200は、部分的に(あるいは、ほとんど)分離された状態であり、それら間の間隙G10をフレキシブル物質層600が満たしているので、また、フレキシブル物質層600と下地層200の接着力は比較的弱いので、フレキシブル物質層600を、下地層200から容易に分離することができる。この時、必要な場合、フレキシブル物質層600上に、所定の支持膜610を加えた後、支持膜610を利用して、フレキシブル物質層600を分離する。支持膜610は、フレキシブルフィルムである。一例として、支持膜610は、接着フィルム(または、接着テープ)である。支持膜610を、フレキシブル物質層600の一部(例えば、端部)に付着した後、支持膜610を利用して、フレキシブル物質層600を引っ張ることによって、フレキシブル物質層600を、下地層200から分離する。このように、支持膜610を利用する場合、分離工程が容易である。
【0075】
図5Gの工程によって、フレキシブル物質層600を、下地層200から分離した結果の状態が、
図5Hに示されている。
図5Hを参照すれば、バッファ層300の下面に、フレキシブル物質層600の一部が残留している。バッファ層300の下面に残留したフレキシブル物質層600を除去して、バッファ層300の下面を露出させる。その結果の状態が、
図5Iに示されている。バッファ層300の下面に残留したフレキシブル物質層600を除去する工程は、垂直型半導体要素500が組み込まれたフレキシブル物質層600を上下にひっくり返した状態で行う。
【0076】
図5Jを参照すれば、フレキシブル物質層600の上面側に、垂直型半導体要素500に電気的に連結された上部電極700を形成する。フレキシブル物質層600の下面側に、垂直型半導体要素500に電気的に連結された下部電極800を形成する。下部電極800は、バッファ層300の下面に形成する。下部電極800は、バッファ層300を通じて、垂直型半導体要素500に電気的に連結される。上部電極700と下部電極800のうち少なくとも一つは、透明電極である。上部電極700と下部電極800は、いずれも透明電極であってもよい。透明電極は、例えば、グラフェンで形成されるか、またはITOのような透明導電性酸化物で形成される。上部電極700と下部電極800のうち一方は透明電極であり、他方は不透明電極である。不透明電極は、例えば、Au,Pd,Al,Pt,Ag,Ti及びそれらの混合物などで形成される。しかし、上部電極700及び下部電極800の物質は、前述したところに限定されず、多様に変化可能である。また、上部電極700及び下部電極800のうち少なくとも一つは、バックル構造を有するように形成する。バックル構造は、
図4を参照して説明したところと同様である。
【0077】
図6Aないし
図6Iは、本発明の他の実施形態によるフレキシブル半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0078】
図6Aを参照すれば、基板101上に、下地層201を形成し、下地層201上に、バッファ層301を形成する。基板101、下地層201及びバッファ層301の物質は、それぞれ
図5Aの基板100、下地層200及びバッファ層300と同一または類似している。下地層201とバッファ層301とが積層された構造は、“積層膜”という。
【0079】
図6Bを参照すれば、バッファ層301と下地層201とをパターニングして、少なくとも一つの積層パターンP1を形成する。所定の間隔ほど離隔した複数の積層パターンP1を形成する。パターニングされた下地層201及びパターニングされたバッファ層301は、それぞれ201a及び301aで表示する。このように積層パターンP1を形成する工程は、後で垂直型半導体要素501(
図6C)を形成するための単位領域を定義する工程である。
【0080】
図6Cを参照すれば、それぞれの積層パターンP1上に、垂直型半導体要素501を成長させる。垂直型半導体要素501は、第1導電型半導体11と、第2導電型半導体31と、それらの間に備えられた活性層21とを含む。場合によっては、活性層21を形成していなくてもよい。垂直型半導体要素501は、
図5Cの垂直型半導体要素500と類似した物質/構造を有し、類似した方法で形成するので、これについての反復説明は省略する。
【0081】
図6Dを参照すれば、所定の方法を利用して、下地層201aとバッファ層301aの接着力を弱める。下地層201aとバッファ層301aとが所定の温度以上に加熱された状態で、それらを適切な条件で冷却すれば、熱膨脹係数差による応力が誘発されつつ、下地層201aとバッファ層301aの接着力が弱化する。具体的な例として、下地層201aとバッファ層301aとが、約700℃または約900℃以上に加熱された状態で、それらを約5ないし30℃/minまたは約10ないし30℃/minの冷却速度で冷却すれば、熱膨脹係数差による応力が、界面接着力よりも大きくなりつつ、それらが分離される。その結果、下地層201aとバッファ層301aとの間に、間隙G11が形成される。これは、
図5Dにおいて、下地層200とバッファ層300の接着力を弱化させる工程と類似している。
【0082】
図6Eを参照すれば、基板101上に、フレキシブル物質層601を形成する。フレキシブル物質層601は、垂直型半導体要素501を覆いつつ、それら間の空間を満たすように形成される。したがって、垂直型半導体要素501は、フレキシブル物質層601内に組み込まれる。また、フレキシブル物質層601は、下地層201aとバッファ層301aとの間隙G11を、少なくとも部分的に満たすように形成される。言い換えれば、フレキシブル物質層601は、間隙G11の少なくとも一部を満たすように形成される。フレキシブル物質層601の物質構成は、
図5Eのフレキシブル物質層600と同一または類似している。
【0083】
図6Fを参照すれば、フレキシブル物質層601の一部をエッチングして、垂直型半導体要素501の一部を露出させる。フレキシブル物質層601の一部をエッチングする方法は、
図5Fを参照して説明したところと同一または類似している。
【0084】
図6Gを参照すれば、垂直型半導体要素501が組み込まれたフレキシブル物質層601を、バッファ層301aと共に、基板101及び下地層201aから分離する。バッファ層301aと下地層201aは、部分的に(あるいは、ほとんど)分離された状態であり、フレキシブル物質層601と基板101の接着力、及びフレキシブル物質層601と下地層201aの接着力は比較的弱いので、フレキシブル物質層601を、基板101及び下地層201aから容易に分離することができる。この時、必要な場合、フレキシブル物質層601上に、所定の支持膜611を加えた後、支持膜611を利用して、フレキシブル物質層601を分離する。支持膜611は、
図5Gの支持膜610と同一または類似している。
【0085】
図6Gの工程によって、フレキシブル物質層601を、下地層201aから分離した結果の状態が、
図6Hに示されている。
図6Hに示していないが、下地層201aの下面に、フレキシブル物質層601の一部が残留しているが、その場合、これを除去する工程をさらに行う。また、
図6Hにおいて、フレキシブル物質層601の下面部を全体的にエッチングする工程を行うことも可能である。すなわち、バッファ層301aの周囲のフレキシブル物質層601の一部をエッチングすることによって、フレキシブル物質層601の下面部を平坦化できる。これによって、フレキシブル物質層601の下面レベルと、バッファ層301aの下面レベルとをほぼ同じく合わせることができる。
【0086】
図6Iを参照すれば、フレキシブル物質層601の上面に、垂直型半導体要素501に電気的に連結された上部電極701を形成する。フレキシブル物質層601の下面に、垂直型半導体要素501に電気的に連結された下部電極801を形成する。上部電極701及び下部電極801の詳細な構成は、
図5Jの上部電極700及び下部電極800と同一または類似している。
【0087】
図7Aないし
図7Fは、本発明の他の実施形態によるフレキシブル半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0088】
図7Aを参照すれば、
図5Fのような構造を形成する。すなわち、基板100上に、下地層200及びバッファ層300などを形成した後、その上に少なくとも一つの垂直型半導体要素500を形成し、下地層200とバッファ層300の接着力を弱化させて、それらの間に間隙G10を形成する。次いで、垂直型半導体要素500の少なくとも一部を覆うフレキシブル物質層600を形成する。垂直型半導体要素500は、フレキシブル物質層600内に組み込まれる。
【0089】
図7Bを参照すれば、フレキシブル物質層600上に、垂直型半導体要素500の露出部を覆う上部電極700を形成する。上部電極700の物質は、
図1を参照して説明した上部電極E10と同様である。その後、上部電極700上に、支持膜650を形成する。支持膜650は、弾性重合体を含む。弾性重合体は、弾性ポリマーである。例えば、弾性重合体は、PDMS、ポリウレタン、ポリエステル及びそれらの混合物のうち少なくとも一つを含む。支持膜650は、フレキシブル物質層600と同様に、フレキシブル特性を有する。かかる点で、支持膜650は、第2フレキシブル物質層という。支持膜650は、フレキシブル物質層600よりも厚く形成される。かかる支持膜650によって、上部電極700及び垂直型半導体要素500が保護される。上部電極700の一部の領域は、支持膜650によってカバーされずに露出される。支持膜650によってカバーされずに露出された上部電極600の領域は、“コンタクト領域”である。
【0090】
図7Cを参照すれば、支持膜650が付着したフレキシブル物質層600を、基板100から分離する。この時、下地層200とバッファ層300とが分離される。下地層200とバッファ層300の分離は、
図5Gを参照して説明したところと類似しているので、これについての反復説明は省略する。支持膜650が付着した状態で、フレキシブル物質層600を分離する場合、分離工程が容易になる。
【0091】
図7Cの工程によって、フレキシブル物質層600及び支持膜650を、下地層200から分離した結果の状態が、
図7Dに示されている。
図7Dを参照すれば、バッファ層300の下面に、フレキシブル物質層600の一部が残留している。バッファ層300の下面に残留したフレキシブル物質層600を除去して、バッファ層300の下面を露出させる。その結果の状態が
図7Eに示されている。
【0092】
図7Fを参照すれば、フレキシブル物質層600の下面側に、垂直型半導体要素500に電気的に連結された下部電極800を形成する。下部電極800は、バッファ層300の下面に形成する。下部電極800は、バッファ層300を通じて、垂直型半導体要素500に電気的に連結される。下部電極800の物質は、
図1を参照して説明した下部電極E20と同様である。
図7Fのように、上部電極700上に支持膜650が備えられた場合、フレキシブル半導体素子は、さらに安定した構造を有する。
【0093】
図7Aないし
図7Fを参照して説明した方法、すなわち、フレキシブル物質層600上に、上部電極700と支持膜650とを形成した状態で、フレキシブル物質層600を基板100から分離する方法は、
図6Fの構造にも同様に適用される。
【0094】
図8A及び
図8Bは、本発明の他の実施形態によるフレキシブル半導体素子の製造方法を示す断面図である。
【0095】
図8Aを参照すれば、
図6Hの構造を形成した後、フレキシブル物質層601を、少なくとも両側を引っ張って長さを延ばす。すなわち、フレキシブル物質層601を延伸する。フレキシブル物質層601は、優秀な弾性及び伸縮性を有するので、延伸工程は容易に行われる。フレキシブル物質層601の長さが延びるにつれて、複数の垂直型半導体要素501間の間隔も増加する。
【0096】
図8Bを参照すれば、フレキシブル物質層601を延伸した状態で、上部電極751及び下部電極851を形成する。上部電極751及び下部電極851を形成した後、フレキシブル物質層601を延伸する力を除去すれば、フレキシブル物質層601が収縮しつつ、上部電極751及び下部電極851に波形構造(例えば、バックル構造)が形成されるか、またはそれと類似した効果が表れる。したがって、フレキシブル物質層601が曲げられたり、延びたりする状況に対して、上部電極751と下部電極851は、より柔軟に対処できる。
【0097】
図8A及び
図8Bを参照して説明した方法、すなわち、フレキシブル物質層601を延伸した状態で、上部電極751及び下部電極851を形成する方法は、
図5Iのような構造にも同様に適用される。しかし、上部電極と下部電極とを、必ずしも
図8A及び
図8Bのような方法で形成する必要はない。上部電極と下部電極の物質自体が、優秀な伸縮性及び柔軟性を有する場合、フレキシブル物質層を延伸しない状態で、上下部電極を形成するとしても、素子の変形によって、柔軟に変形可能である。また、場合によっては、上下部電極のうち一つのみを、
図8A及び
図8Bのような方法で形成してもよい。
【0098】
図6Aないし
図8Bの方法で製造した多様なフレキシブル半導体素子は、光電素子である。この時、垂直型半導体要素500,501は、発光要素、または光発電要素である。垂直型半導体要素500,501が発光要素である場合、これを含む半導体素子は、発光素子である。垂直型半導体要素500,501が光発電要素である場合、これを含む半導体素子は、光発電素子である。
【0099】
本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子は、非晶質基板100,101をベースとして使用して製造するので、低コスト化及び大面積化に有利である。従来の窒化物半導体に基づく半導体素子を製造するためには、サファイア基板やシリコン基板上に、単結晶窒化物層をエピタキシャル成長させなければならない。したがって、多様な形態的変形が可能な素子を具現することが困難である。また、製造コストが高く、大面積化が困難であるという問題がある。しかし、本発明の実施形態によれば、安価な非晶質基板100,101を使用し、その上に、フレキシブル物質層600,601をコーティング方式により塗布するので、低コストで大面積のフレキシブル半導体素子を容易に製造することができる。
【0100】
また、本発明の実施形態によれば、下地層200,201aとバッファ層300,301aとの熱膨脹係数差に起因した応力を誘発して、下地層200,201aとバッファ層300,301aの接着力を弱化させた後、フレキシブル物質層600,601を、基板100,101から分離するので、フレキシブル物質層600,601の分離工程が容易に行われる。かかる分離工程は、基板100,101の面積が広くても、容易に行われる。したがって、本発明の実施形態によれば、大面積のフレキシブル半導体素子を容易に製造することができる。
【0101】
また、本発明の実施形態によるフレキシブル半導体素子は、垂直型半導体要素500,501を使用するので、平面形メサ構造を有する発光素子で表れる非発光再結合問題を防止または抑制できる。したがって、優秀な光電気的特性(発光特性または光発電特性)及び高い効率を有するフレキシブル半導体素子を具現することができる。
【0102】
加えて、上下部電極700,800の形成において、誤整列のような問題が発生することなく、全般的な製造工程が複雑でなく、比較的単純であるという利点がある。
【0103】
図10は、本発明の実施形態によって製造したフレキシブル半導体素子(発光素子)が発光する様子を示す顕微鏡写真である。
図10を見れば、複数の垂直型半導体要素(発光要素)から、比較的均一なカラーの光が発光されるということが分かる。これによって、本発明の実施形態によって製造されたフレキシブル半導体素子(発光素子)は、優秀な光電気的特性を有するということが分かる。
【0104】
上記の説明で多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、本発明の範囲を限定するとするより、具体的な実施形態の例示として解釈されなければならない。例えば、当業者ならば、
図1ないし
図4の素子構造は、多様に変形可能であることが分かるであろう。一例として、垂直型半導体要素S10,S11の形態/構造、及びその下部の層の構造は、多様に変形可能であることが分かるであろう。また、
図5Aないし
図8Bを参照して説明した製造方法も、多様に変形可能であることが分かるであろう。一例として、
図5Aないし
図5Jにおいては、バッファ層300よりも熱膨脹係数の大きい下地層200を使用する場合について主に説明したが、バッファ層300よりも熱膨脹係数の小さい下地層200を使用することも可能である。すなわち、バッファ層300よりも熱膨脹係数の小さい下地層200を使用するとしても、その差が約1.5倍以上と大きければ、熱膨脹係数差を利用して、下地層200とバッファ層300の接着力を弱化させ、フレキシブル半導体素子を製造することができる。加えて、本発明の思想は、光電素子だけでなく、その他の半導体素子にも適用されることが分かるであろう。したがって、本発明の範囲は、前述した実施形態によって決まるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想により決まらなければならない。