(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子機器に組み込まれて、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置であって、面状に巻回されたループコイルと、磁性材料により形成され、該ループコイルの少なくとも一部と重畳するシート状の磁性シートとを有するアンテナ装置を備え、
上記ループコイルは、屈曲され、その屈曲された位置から、該ループコイルに流れる電流が同一方向である一方側を含む面が、筐体の内部構造物の側面に沿って近接するように配置され、かつ、上記一方側を流れる電流の向きとは逆方向の電流が流れる他方側を含む面が、上記磁性シートに重畳するように配置され、
上記磁性シートは、上記ループコイルの他方側よりも上記外部機器から遠い位置に配置され、
上記内部構造物は、一部又は全部が金属体であることを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された電子機器について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
[近距離無線通信システム]
本発明が適用されたアンテナモジュール1は、携帯電話機等の電子機器に組み込まれるものであって、近距離無線通信機能を実現するものである。具体的に、本発明が適用されたアンテナモジュール1は、
図1に示すように、たとえば携帯電話機130の筐体131内部に組み込まれ、アンテナモジュール1は、RFID用の無線通信システム100を構成する要素として使用される。
【0015】
無線通信システム100は、リーダライタ120が、アンテナモジュール1とともに携帯電話機130に組み込まれた通信処理部に対してアクセスするものである。ここで、アンテナモジュール1とリーダライタ120とは、3次元直交座標系xyzのxy平面において互いに対向するように配置されているものとする。
【0016】
リーダライタ120は、xy平面において互いに対向するアンテナモジュール1のアンテナコイル12に対して、z軸方向に磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、アンテナコイル12に向けて磁界を発信するアンテナ121と、メモリ等の回路要素を含む通信処理部と通信を行う制御基板122とを備える。
【0017】
すなわち、リーダライタ120は、アンテナ121と電気的に接続された制御基板122が配設されている。この制御基板122には、1つ又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路が実装されている。この制御回路は、アンテナコイル12を介してメモリモジュールから受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。たとえば、制御回路は、メモリモジュールに対してデータを送信する場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(たとえば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ121を駆動する。また、制御回路は、通信処理部を介してデータを読み出す場合、アンテナ121で受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。なお、制御回路では、一般的なリーダライタで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、たとえば、マンチェスタ符号化方式やASK(振幅シフトキーイング、Amplitude Shift Keying)変調方式等周知の方式が用いられる。
【0018】
アンテナモジュール1は、アンテナコイル12が、リーダライタ120のアンテナ121から発信される磁界を受けアンテナ121と誘導結合して、携帯電話機130に組み込まれた記憶媒体であるメモリや通信処理部に信号を供給する。
【0019】
アンテナコイル12は、リーダライタ120のアンテナ121から発信される磁界を受けると、アンテナ121と誘導結合によって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、受信信号を通信処理部等に供給する。
【0020】
メモリや通信処理部等の回路要素は、アンテナコイル12に流れる電流により駆動され、リーダライタ120との間で通信を行う。具体的に、通信処理部等は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、内部のメモリに書き込む。また、通信処理部は、リーダライタ120に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル12を介して変調された電波をリーダライタ120に送信する。
【0021】
以上、本発明に係るアンテナモジュール1として、RFID用アンテナモジュールに適用した場合を例に説明したが、本発明は、RFID用アンテナモジュールの他にも、たとえばQi等の非接触充電用やその他のアンテナモジュールに適用してもよい。
【0022】
[アンテナモジュール及び電子機器の構成]
図2(A)及び
図2(B)に示すように、アンテナモジュール1は、NFC等のRFID用のアンテナであり、ほぼ長方形のアンテナ基板11と、アンテナ基板11の一方の面に渦巻状に形成されたアンテナコイル12と、アンテナコイル12の一部に重畳するように配置された磁性シート13とを備える。アンテナコイル12は、アンテナ基板11ごと屈曲部11aで断面ほぼL字型になるように屈曲される。屈曲部11aは、たとえば長方形状のアンテナ基板11の2つの対向する短辺のほぼ中央を結んだ直線である。屈曲部11aから屈曲されたアンテナコイル12及びアンテナ基板11は、アンテナコイル12に流れる電流が同一方向となる一方側12aと、一方側12aのアンテナコイル12に流れる電流とは逆方向に電流が流れる他方側12bとを有する。たとえば、
図2(B)に示すように、屈曲部11aからアンテナコイル12及びアンテナ基板11の一方の端部を含む側が一方側12aであり、屈曲部11bからアンテナコイル12及びアンテナ基板11の他方の端部を含む側が他方側12bである。リーダライタ120からの磁界は、
図2(A)及び
図2(B)のZ軸の正方向に向かって発信される。磁性シート13は、アンテナコイル12の他方側12bの一方の面であって、リーダライタ120の対向面に対してアンテナコイル12よりも遠い側の面に重畳するように配置される。磁性シート13は、好ましくは、接着剤からなる接着層14によってアンテナ基板11に固定される。なお、アンテナコイル12は、アンテナ基板11の磁性シート13とは反対側の面に形成されているが、これは、アンテナ基板11と磁性シートとを接着層14を介して固定する方がより簡単であるためであり、
図2(B)とは反対側のアンテナ基板の面にアンテナコイル12を形成して、アンテナコイル12の上に接着層14を形成して磁性シート13を固定するようにしてもよいのはいうまでもない。
【0023】
アンテナ基板11は、絶縁性の基材であり、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性のある材料によって形成されるフレキシブル基板であることが好ましい。
【0024】
アンテナコイル12は、アンテナ基板11上に、CuやAl等の高導電性の金属材料等をメッキしてパターニング後エッチング等により渦巻状の配線を形成することによって形成される。
【0025】
磁性シート13は、Ni−Zn系フェライトの焼結体を含む。磁性シート13は、あらかじめ薄くシート状に塗布したフェライト粒子を高温環境下で焼結させることによりシート化し、その後、所定の形状に型抜きすることにより形成される。あるいは、磁性シート13は、あらかじめ最終形状と同形状にフェライト粒子をシート状に塗布し、焼結することにより形成してもよい。その他、磁性シート13は、長方形断面を持った型に、フェライト粒子を詰め込み、平面視方形状の直方体にフェライト粒子を焼結し、この焼結体を薄くスライスすることにより、所定の形状を得るようにしてもよい。
【0026】
なお、磁性シート13は、軟磁性粉末からなる磁性粒子と結合材としての樹脂とを含んでいてもよい。
【0027】
また、磁性粒子は、フェライト等の酸化物磁性体、センダスト、パーマロイ等のFe系、Co系、Ni系、Fe−Ni系、Fe−Co系、Fe−Al系、Fe−Si系、Fe−Si−Al系、Fe−Ni−Si−Al系等の結晶系、微結晶系磁性体、あるいはFe−Si−B系、Fe−Si−B−C系、Co−Si−B系、Co−Zr系、Co−Nb系、Co−Ta系等のアモルファス金属磁性体の粒子を用いることができる。
【0028】
なかでも、NFC等のRFID用アンテナモジュールに用いられる磁性シート13は、磁性材料として上述したNiZn系フェライトが好適に用いられる。
【0029】
結合材は、熱、紫外線照射等により硬化する樹脂等を用いることができる。結合材としては、たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル等の樹脂、あるいはシリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等の周知の材料を用いることができる。なお、結合材は、上述の樹脂又はゴムに、難燃剤、反応調整剤、架橋剤又はシランカップリング剤等の表面処理剤を適量加えてもよい。
【0030】
なお、磁性シート13は、単一の磁性材料で構成する場合のみに限らず、2種類以上の磁性材料を、混合して用いてもよく、あるいは多層に積層して形成してもよい。また、磁性シート13は、同一の磁性材料であっても、磁性粒子の粒径及び/又は形状を複数選択して混合してもよく、あるいは多層に積層して形成してもよい。
【0031】
磁性シート13は、接着剤によってアンテナ基板11に固定され、接着層14を形成する接着剤には、公知のものを用いることができ、接着剤に代えて両面接着テープを用いることももちろんできる。
【0032】
ループアンテナ12の一方側12aの面は、携帯電話機等の電子機器の内部に設置される内部構造物10の側面10aに沿うように近接して配置される。内部構造物10は、たとえば、電子機器に電力を供給して駆動するバッテリパックである。一般的には、バッテリパックは、金属製の外装を有しており、磁界をはねつける磁気シールド効果を有する。このようにアンテナモジュール1の一部の面を、電子機器の内部構造物10のいずれかの面に沿うように配設し、アンテナモジュール1の他の面に磁性シート13を重畳させることによって、磁性シート13の端部近傍に磁束を集めてアンテナモジュール1の通信特性を向上させることができる。
【0033】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、アンテナ基板11及びアンテナコイル12の屈曲部11aをリーダライタ120から離間する方向へ変更してもよい。すなわち、アンテナモジュール1aは、アンテナ基板11と、アンテナ基板11上を周回するように渦巻状に形成されたアンテナコイル12とを備え、アンテナ基板11及びアンテナコイル12は、アンテナ基板11の短辺側のほぼ中央に位置する屈曲部11aにおいて断面ほぼL字状に屈曲される。屈曲部11aから、アンテナコイル12に流れる電流が同一の方向に流れる一方側12aを含む面が電子機器の長方体状の内部構造物10の側面10aに沿うように近接して配置される。屈曲部11aから、アンテナコイル12に流れる電流が、一方側12aとは逆方向に流れる側である他方側12bを含む面は、リーダライタ120のアンテナ121の面にほぼ平行になるように対向する。
【0034】
上述において、アンテナコイル12を含むアンテナ基板11の一方の面は、内部構造物10の側面10aに沿うように近接して配置される場合に限らず、物理的に接触するように配置してもよい。また、内部構造物10の側面10aは、図示したように平面である必要はなく、曲面であってもよいが、アンテナ基板11を曲面に沿うように湾曲させてもよいが、湾曲させずに曲面の一部に近接又は接触させるようにしてもよい。
【0035】
[動作原理]
図4を用いて、本発明が適用された一実施の形態に係る電子機器において、アンテナモジュールの通信特性が向上する原理を説明する。
図4に示すように、電子機器の構成は、
図2において説明したものと同様であり、リーダライタ120とリーダライタ120のアンテナ121を明示するものである。
【0036】
電子機器は、アンテナモジュール1と、アンテナモジュール1の屈曲部11aからアンテナコイル12の一方側12aを含む面が側面10aに沿うように近接配置された内部構造物10を含んでいる。リーダライタ120のアンテナ121は、内部構造物10の主面10b及びアンテナコイル12の他方側12bを含む面に対向するようにxy平面上に配置され、リーダライタ120のアンテナ121が発信する磁界の磁束Fは、この面にほぼ垂直、すなわちz軸の正方向に向かって射出される。
【0037】
内部構造物10は、典型的には電子機器の駆動電源であるバッテリパックであり、金属缶で外装されている。リーダライタ120のアンテナ121が発信した磁界による磁束Fは、
図4に示すように、内部構造物10の主面10bを避けるように流れ、内部構造物10の側面10aに近接して配置されたアンテナモジュール1に向かって流れる。したがって、内部構造物10の端部10c付近では、磁束密度が向上する。ここで、アンテナモジュール1には、リーダライタ120に対向して配置されたアンテナコイル12の他方側12bに、アンテナコイル12よりもリーダライタ120のアンテナ121から遠い位置に磁性シート13が配置されている。したがって、内部構造物10の主面10bに沿うようにして磁束密度が向上された磁束Fは、磁性シート13により磁束密度を高められる。このようにして、アンテナモジュール1に誘導される電力は向上し、電子機器の通信特性が向上する。
【0038】
[変形例]
上述においては、アンテナコイル12の一方側12aを含む面は、内部構造物10の側面10aに沿うように配置され、アンテナコイル12の他方側12bを含む面は、リーダライタ120のアンテナ121に対向するように、すなわちアンテナ121の面とほぼ平行になるように配置されるものとしたが、上述の動作原理に従う限り、これらの位置関係については、任意に設定することができるのはいうまでもない。
図5に示すように、アンテナモジュール1bは、携帯電話機130の筐体131が湾曲していることにより、屈曲部11aにおける屈曲の角度を90°を超えるように設定されるようにしてもよい。また、磁束Fの流れる向きは、筐体131内部の内部構造物等の配置関係に依存するので、通信特性が最良になる方向に屈曲させてもよい。
【0039】
[通信特性の実験]
本発明が適用された一実施の形態に係る電子機器を構成するアンテナモジュールの通信特性を実験により取得した。比較のために、アンテナ基板及びアンテナコイルを屈曲させない場合のアンテナモジュールを用いて電子機器を構成した場合を参考例として同じ条件で通信特性を取得した。通信特性は、具体的には、
図6及び
図7に示すように、アンテナモジュールをリーダライタに対向させて配置し、リーダライタをY軸の正方向へ移動させたときの結合係数k値の変化をシミュレーションで求めた。
【0040】
<参考例>
参考例に係るアンテナモジュールでは、
図6に示すように、アンテナモジュール1cの磁性シート13が重畳していない一方側12aを内部構造物10として金属製のバッテリ缶の主面10bに重畳させ、アンテナモジュール1cとリーダライタ120のアンテナ121とを対向させて、アンテナ121とアンテナモジュール1cとの相対的な位置関係を変化させたときの通信特性について評価した。
【0041】
具体的な評価条件としては、次のようにした。すなわち、リーダライタ120のアンテナ121は、XY平面上に外径が70mm、1.5mmピッチで2ターンのループコイルとした。また、内部構造物10はXYZ軸方向で規定される寸法が60mm×50mm×5mmのアルミブロックとした。アンテナモジュール1cのアンテナコイル12は、XY軸方向で規定される外形が50mm×40mm、1mmピッチで、4ターンのループコイルである。アンテナモジュール1cの他方側12bに配置された磁性シート13は、非透磁率120で、厚さ0.2mmのフェライトシートを保護フィルムで覆ったものを用い、接着層14を介して接着した。
【0042】
内部構造物10の主面10bとアンテナコイル12との距離は0.5mmである。さらに、Z軸方向で規定される、リーダライタ120のアンテナ121からアンテナコイル12までの距離は40mmとした。
【0043】
ここで、リーダライタ120のアンテナ121とアンテナコイル12との相対的な位置関係を示す値として、オフセットaを用いた。すなわち、オフセットaは、リーダライタ120のアンテナ121の中心122を通るZ軸方向の軸線123と内部構造物10の中心(O)10dを通るZ軸方向の軸線10eとを想定し、両軸線123,10eが一致した位置から、
図6中Y軸の正方向にリーダライタ120を移動させたときの、両軸線123,10e間の距離である。
【0044】
以上のような条件の下、aの値を−30mmから30mmまで変化させたときの、アンテナコイル12の結合係数kをシミュレーションで求めた。結合係数kの変化を
図8に示す。
【0045】
<実施例>
本実施例では、
図7に示すように、アンテナコイル12の一方側12aを含む面が内部構造物10の側面10aに沿うように近接配置されたアンテナモジュール1を用いた。アンテナコイル12の他方側12bには、磁性シート13が貼着されている。そして、
図6の参考例と同様に、アンテナモジュール1とリーダライタ120とを対向させて、リーダライタ120とアンテナモジュール1との相対的な位置関係を変化させたときの通信特性について評価した。
【0046】
具体的な評価条件は、リーダライタ120、内部構造物10、リーダライタ120のアンテナ121からアンテナコイル12までの距離については、上述した参考例と同じである。なお、実施例のアンテナモジュール1は、参考例のアンテナモジュール1cと同じものを短辺(40mm)のほぼ中央で屈曲させたものを用いた。
【0047】
以上のような条件の下、aの値を−30mmから30mmまで変化させたときの、アンテナコイル12の結合係数kをシミュレーションで求めた。結合係数kの変化を参考例のプロットと合わせて
図8に示す。
実施例のアンテナモジュール1を用いても参考例のアンテナモジュール1cを用いても結合係数kは同等であることが示された。
【0048】
すなわち、実施例のアンテナモジュール1を用いて、内部構造物10の側面10aに沿うように、アンテナコイル12の一方側12aを含む面を近接して配置することによって、通信特性が維持され、アンテナモジュールの特性を損なうことなく、バッテリ缶(内部構造物10)の厚さ方向に薄型化を図ることができ、狭小化されたスペースにも搭載可能なアンテナモジュールを用いた電子機器を提供することができる。また、バッテリ缶のような内部構造物は、電子機器の筐体から脱着可能とする場合があり、アンテナモジュール1の一方側12aを含む面を内部構造物10の側面に接触させないように近接させて配置した場合には、アンテナモジュール1が内部構造物10の着脱を妨げないようにすることができる。