(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223070
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/26 20060101AFI20171023BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20171023BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20171023BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20171023BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20171023BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20171023BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
H05B33/26 Z
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
H05B33/10
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-178680(P2013-178680)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-49949(P2015-49949A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 優子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
【審査官】
中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−283304(JP,A)
【文献】
特開2005−093398(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/042567(WO,A1)
【文献】
特開2005−031645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/12
H05B 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された表示領域内の画素毎に配置され、前記画素毎に電位が制御される複数の下部電極と、
前記表示領域の全体を覆うように配置された上部電極と、
前記複数の下部電極の各々と、前記上部電極との間に配置され、発光層を含む複数の層からなる第1有機層と、
前記表示領域内の前記画素間に延びる金属配線と、
前記第1有機層と同じ複数の層を含み、前記金属配線の一部に接触し、前記第1有機層とは非接触である第2有機層と、を備え、
前記複数の下部電極は、第1下部電極と、前記第1下部電極に隣接する第2下部電極と、前記第1下部電極に隣接する第3下部電極とを含み、
前記第1乃至第3下部電極のそれぞれは、それよりも下層の電極とコンタクトホールを介して接続する第1コンタクト領域と、各下部電極の外縁のなかで前記第1コンタクト領域に最も近い第1縁部と、前記第1縁部とは反対側に位置する第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを繋ぐ第3縁部とを有し、
前記第1下部電極と前記第2下部電極は、それらの前記第2縁部が互いに向き合うように配置され、前記第1下部電極と前記第3下部電極は、それらの前記第3縁部が互いに向き合うように配置され、
前記金属配線は、前記第1下部電極の前記第2縁部と前記第2下部電極の前記第2縁部との間、又は前記第1下部電極の前記第3縁部と前記第3下部電極の前記第3縁部との間に設けられ、
前記上部電極は、前記第2有機層の周囲で前記金属配線と接触している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
基板上に形成された、前記金属配線及び薄膜トランジスタを含む回路を覆う有機材料からなる平坦化膜と、
前記平坦化膜上に形成された、前記下部電極、前記第1有機層及び前記上部電極のうち、前記下部電極の端部を覆い、前記画素の間を電気的に絶縁する絶縁バンクと、を更に備え、
前記上部電極は、前記平坦化膜及び前記絶縁バンクに開けられた第2コンタクト領域において前記金属配線と接触している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機EL表示装置であって、
前記上部電極は、前記金属配線に沿って前記表示領域内で連続的に接している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL表示装置であって、
前記金属配線は縦横に延びている
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL表示装置であって、
前記第1有機層は、前記表示領域内の全ての前記画素において同一の発光層を有している
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
表示領域内に配置された、第1下部電極と、前記第1下部電極に隣接する第2下部電極と、前記第1下部電極に隣接する第3下部電極と、
前記表示領域を覆うように配置された上部電極と、
前記第1下部電極と前記第2下部電極との間、又は前記第1下部電極と前記第3下部電極との間に延在する金属配線と、
前記第1下部電極と前記上部電極、前記第2下部電極と前記上部電極、及び前記第3下部電極と前記上部電極との間に配置され、発光層を含む複数の層からなる第1有機層と、
前記金属配線と前記上部電極との間に配置され、前記第1有機層に含まれる層と同じ層を含む第2有機層と、を有し、
前記第1乃至第3下部電極のそれぞれは、それよりも下層の電極とコンタクトホールを介して接続している第1コンタクト領域と、各下部電極の外縁のなかで前記第1コンタクト領域に最も近い第1縁部と、前記第1縁部とは反対側に位置する第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを繋いでいる第3縁部とを有し、
前記第1下部電極と前記第2下部電極は、それらの前記第2縁部が互いに向き合うように配置され、前記第1下部電極と前記第3下部電極は、それらの前記第3縁部が互いに向き合うように配置され、
前記金属配線は、前記第1下部電極の前記第2縁部と前記第2下部電極の前記第2縁部との間、又は前記第1下部電極の前記第3縁部と前記第3下部電極の前記第3縁部との間に設けられ、
前記第2有機層は、第2コンタクト領域において前記金属配線の一部と接触すると共に、前記第1有機層とは接触せず、
前記上部電極は、前記第2コンタクト領域において前記金属配線の他の一部と接触する
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の有機EL表示装置であって、
基板上に形成された、前記金属配線及び薄膜トランジスタを含む回路を覆う有機材料からなる平坦化膜と、
前記平坦化膜上に形成された、前記第1下部電極、前記第2下部電極、前記第3下部電極、前記第1有機層及び前記上部電極のうち、前記第1乃至第3下部電極のそれぞれの端部を覆い、画素の間を電気的に絶縁する絶縁バンクと、を更に備え、
前記第2コンタクト領域は、前記金属配線上の前記平坦化膜及び前記バンクを開口して設けられている、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の有機EL表示装置であって、
前記上部電極は、前記金属配線に沿って前記表示領域内で連続的に接している、ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
第1画素と、前記第1画素に隣接する第2画素と、前記第1画素に隣接する第3画素とに電極を形成する工程と、
前記第1画素と前記第2画素との間、又は前記第1画素と前記第3画素との間に金属配線を形成する金属配線形成工程と、
前記金属配線上で前記表示領域を覆うように、絶縁材料により絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に対して、前記第1乃至第3画素の前記電極を露出させるコンタクトホールである第1コンタクト領域を形成し、且つ、前記金属配線の少なくとも一部を露出させるコンタクトホールである第2コンタクト領域を形成するコンタクト領域形成工程と、
前記第1乃至第3画素に、第1下部電極、第2下部電極、及び第3下部電極をそれぞれ形成し、前記第1コンタクト領域において前記電極に接続する下部電極形成工程と、
前記絶縁膜上に配置され、発光する有機材料からなる発光層を含む複数の層からなる第1有機層、及び前記第2コンタクト領域の底部に配置され、前記第1有機層と不連続な第2有機層を同時に形成する有機層形成工程と、
前記有機層形成工程の後、導電材料からなり、前記第2コンタクト領域において前記金属配線と接触し、前記表示領域全体を覆う上部電極を形成する上部電極形成工程と、を備え、
前記第1乃至第3下部電極のそれぞれは、各下部電極の外縁のなかで前記第1コンタクト領域に最も近い第1縁部と、前記第1縁部とは反対側に位置する第2縁部と、前記第1縁部と前記第2縁部とを繋ぐ第3縁部とを有し、
前記第1下部電極と前記第2下部電極は、それらの前記第2縁部が互いに向き合うように配置され、前記第1下部電極と前記第3下部電極は、それらの前記第3縁部が互いに向き合うように配置され、
前記金属配線は、前記第1下部電極の前記第2縁部と前記第2下部電極の前記第2縁部との間、又は前記第1下部電極の前記第3縁部と前記第3下部電極の前記第3縁部との間の少なくとも一方に設けられている
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及び有機EL表示装置の製造方法に関し、より詳しくは、各画素に配置された自発光体である発光素子に発光させて表示を行う有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL(Electro-luminescent)表示装置」という。)が実用化されている。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
絶縁基板の発光素子が形成された側に光が出射される、いわゆるトップエミッション方式の表示装置においては、発光層を少なくとも1つの層とする有機層を挟む2つの電極である上部電極及び下部電極のうち、上部電極は、有機層が形成された表示領域全面を覆う電極であり、透明の導電性材料により形成される。この上部電極は、光の透過率を向上させるために、より薄く形成されることが望ましいが、薄くなるほど抵抗値が上昇し電圧降下が生じるため、表示領域の端部と中央で輝度ムラが生じやすくなる。
【0004】
特許文献1は、表示領域内の下部電極と同一層の補助電極に、上部電極を接続孔を介して接触させ、上部電極を低抵抗化させることについて開示している。特許文献2は、表示領域内で接続孔を介して導電性基板に、上部電極を電気的に接続することについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−207217号公報
【特許文献2】特開2011−221203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1及び2に記載された表示領域内で上部電極を導電性の高い金属の電極に接触させることは、上部電極の低抵抗化及び電位の均一化に有効である。しかしながら、いずれの場合も有機層に接続孔を要するため、蒸着マスクを用いて形成される有機層の蒸着精度を考慮すると、高精細な孔を開けることは難しく、各画素に開けられる接続孔はある程度の大きさを有することとなる。しかしながら、これは発光する部分の面積を減少させ、表示のコントラスト低下に繋がってしまう。特に、蒸着マスクを使用せず、表示領域の全面を覆う有機層を有する有機EL表示装置においては、表示領域内に接続孔を設けることは困難であった。
【0007】
本発明は、上述の事情を鑑みてしたものであり、発光面積を減少させることなく、上部電極の電位を均一化した有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL表示装置は、マトリクス状に配置された表示領域内の画素毎に配置され、導電材料からなり、前記画素毎に電位が制御される下部電極と、前記表示領域の全体を覆うように配置され、導電材料からなる上部電極と、前記下部電極及び前記上部電極の間に配置され、発光する有機材料からなる発光層を含む複数の層からなる第1有機層と、前記表示領域内の前記画素間に延びる金属配線と、前記第1有機層と同じ複数の層からなり、前記金属配線の一部に接触し、前記第1有機層とは非接触である第2有機層と、を備え、前記上部電極は、前記第2有機層の周囲で前記金属配線と接触している、ことを特徴とする有機EL表示装置である。
【0009】
また、本発明の有機EL表示装置は、基板上に形成された、前記金属配線及び薄膜トランジスタを含む回路を覆う有機材料からなる平坦化膜と、前記平坦化膜上に形成された、前記下部電極、前記第1有機層及び前記上部電極のうち、前記下部電極の端部を覆い、前記画素の間を電気的に絶縁する絶縁バンクと、を更に備え、前記上部電極は、前記平坦化膜及び前記絶縁バンクに開けられたコンタクトホールを介して前記金属配線と接触していてもよい。
【0010】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記上部電極は、前記金属配線に沿って前記表示領域内で連続的に接していてもよく、また、前記金属配線は、前記表示領域内の前記画素の各々を囲うように縦横に延びていてもよい。
【0011】
また、本発明の有機EL表示装置において、前記第1有機層は、前記表示領域内の全ての前記画素において同一の発光層を有していてもよい。
【0012】
本発明の有機EL表示装置の製造方法は、画素がマトリクス状の配置される表示領域において、前記画素間に金属配線を形成する金属配線形成工程と、前記金属配線上で前記表示領域を覆うように、絶縁材料により絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記絶縁膜に対して、前記金属配線の少なくとも一部を露出させるコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程と、前記絶縁膜上に配置され、発光する有機材料からなる発光層を含む複数の層からなる第1有機層、及び前記コンタクトホールの底部に配置され、前記第1有機層と不連続な第2有機層を同時に形成する有機層形成工程と、前記有機層形成工程の後、導電材料からなり、前記金属配線と接触し、前記表示領域全体を覆う上部電極を形成する上部電極形成工程と、を備える有機EL表示装置の製造方法である。
【0013】
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法は、前記金属配線形成工程の後、前記金属配線上に有機材料により平坦化膜を形成する平坦化膜形成工程と、前記平坦化膜に対して、前記金属配線を露出させるコンタクトホールを形成する平坦化膜コンタクトホール形成工程と、前記平坦化膜上に前記画素毎に下部電極を形成する下部電極形成工程と、を更に備え、前記絶縁膜形成工程において形成される絶縁膜は、前記画素の間を電気的に絶縁する絶縁バンクであり、前記コンタクトホール形成工程は、前記絶縁バンクに対して行う絶縁バンクコンタクトホール形成工程であってもよい。
【0014】
本発明の有機EL表示装置の製造方法において、前記有機層形成工程は、蒸着法により有機層を形成する工程であり、前記上部電極形成工程は、スパッタリング法により上部電極を形成する工程であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の有機ELパネルの構成を示す図である。
【
図3】
図2の4つの画素について概略的に示す拡大図である。
【
図5】上部電極コンタクトホールに形成される上部電極の形成工程について説明するための図である。
【
図6】本実施形態の変形例である有機EL表示装置の4つの画素について概略的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置100が概略的に示されている。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、上フレーム110及び下フレーム120に挟まれるように固定された有機ELパネル200から構成されている。
【0018】
図2には、
図1の有機ELパネル200の構成が示されている。有機ELパネル200は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板220と封止基板230の2枚の基板を有し、これらの基板の間には不図示の透明樹脂が充填されている。TFT基板220は、表示領域202にマトリクス状に配置された画素280を有している。また、TFT基板220には、画素のそれぞれに配置された画素トランジスタの走査信号線(不図示)に対してソース・ドレイン間を導通させるための電位を印加すると共に、各画素トランジスタのデータ信号線に対して画素の階調値に対応する電圧を印加する駆動回路である駆動IC(Integrated Circuit)260が載置されている。
【0019】
図3は、
図2の4つの画素280について概略的に示す拡大図である。なお、
図3では、本実施形態の説明のために、平面視により、一部の電極についてのみ積層関係に関わらず実線で示している。この図に示されるように各画素280は、画素280ごとに独立した下部電極304と、下部電極304を後述するソース・ドレイン電極309に接続する下部電極コンタクトホール282と、を有している。後述するが、下部電極304の上には、表示領域202の全面に配置された発光層を含む第1有機層306と、その上に表示領域の全面に配置された上部電極307とが順に配置される。画素280の間には、金属配線284が配置され、金属配線284上には、第1有機層306と同じ層構造の第2有機層285が載置され、上部電極307と金属配線284とが接続されるように上部電極コンタクトホール287が形成されている。
【0020】
図4は、
図3のIV−IV線における断面図である。この図に示されるように、TFT基板220は、絶縁基板であるガラス基板301と、ガラス基板301上に導電材料により形成されたソース・ドレイン電極309及び金属配線284と、ソース・ドレイン電極309及び金属配線284上に絶縁材料により形成された平坦化膜303と、平坦化膜303に開けられたコンタクトホールを介してソース・ドレイン電極309と接続される下部電極304と、下部電極304の端部を覆い、画素間において電極間を絶縁する絶縁バンク305と、下部電極304及び絶縁バンク305上で略表示領域202全体を覆うように形成された発光層及び電子注入層、正孔輸送層等の共通層を含む第1有機層306と、第1有機層306上で表示領域202全体を覆うように形成された上部電極307と、第1有機層306の劣化を防ぐために空気や水を遮断する封止膜308と、金属配線284上に形成された第2有機層285と、を有している。なお、図示されていないが、ソース・ドレイン電極309は、ガラス基板301と平坦化膜303との間で、各画素280に形成されたTFTと接続されている。第1有機層の発光層は、下部電極304から注入される正孔又は電子と、上部電極307から注入される電子又は正孔とが再結合し、励起状態が形成され、基底状態に移行する際に発光する。
【0021】
この図に示されるように、上部電極307は、画素280の間に配置された金属配線284に、上部電極コンタクトホール287を介して接している。そのため、表示領域202内で薄く形成されることにより抵抗値が高くなった上部電極307は、表示領域202内で導電性の高い金属配線284に接触できるため、上部電極307の電位は表示領域202内で均一に保たれる。なお、上部電極コンタクトホール287が形成された領域の金属配線284上には、第2有機層285が配置される。
【0022】
ここで、本実施形態に係る有機EL表示装置100は、表示領域全面で一様な波長領域(例えばW(白))の光を発光させ、封止基板230に設けられたカラーフィルタによりRGBに対応する波長領域の光を取り出す方式の有機EL表示装置であるが、これに限られず、各画素においてRGBのそれぞれの波長領域の光を発光させ、カラーフィルタを用いずに光を取り出す方式の有機EL表示装置であってもよい。この場合には、発光層を含む第1有機層及び第2有機層は、蒸着等により、画素毎にドット状又はストライプ状に塗り分けられて形成される。
【0023】
図5は、上述の上部電極コンタクトホール287に形成される上部電極307の形成工程について説明するための図である。この工程では、まず、金属配線形成工程S11において、金属配線284を形成する。ここで、金属配線284は、図示されていないが、各画素に形成されるTFTのゲート電極、ドレイン電極及びソース電極、並びにTFT以外の配線のいずれかと同一の工程で同時に形成することができる。なおこの場合に金属配線284は、ガラス基板301に直接形成されるものだけでなく、ガラス基板301上に形成された絶縁膜上に形成されるものであってもよい。
【0024】
次に、平坦化膜形成工程S12において、感光性有機材料等の有機材料からなる平坦化膜303を形成し、平坦化膜コンタクトホール形成工程S13において、公知のフォトリソグラフィ工程により平坦化膜303に上部電極コンタクトホール287を形成し、金属配線284を露出させる。この後、図示していないが、下部電極形成工程において、画素280内において下部電極304を形成し、絶縁バンク形成工程S14において、下部電極304の端部を覆い、画素間を絶縁する、有機材料又は無機材料からなる絶縁バンク305を形成する。引き続き、絶縁バンクコンタクトホール形成工程S15において、公知のフォトリソグラフィ工程を用いて絶縁バンク305に上部電極コンタクトホール287を形成し、金属配線284を露出させる。
【0025】
なお、平坦化膜303は、ガラス基板301上に形成されたTFT回路全体を覆って形成され、平坦化膜303の上部電極コンタクトホール287は、
図4の下部電極コンタクトホール282を形成する工程と同じ工程で同時に形成することができる。また、絶縁バンク305の上部電極コンタクトホール287は、下部電極304を絶縁バンク305から露出させる工程と同時に形成することができる。
【0026】
有機層形成工程S16において、蒸着により同時に第1有機層306及び第2有機層285が形成される。ここで、第1有機層306及び第2有機層285は、蒸着により同時に成膜されるが、真空中で加熱された有機材料は、指向性をもって付着するため、上部電極コンタクトホール287における非常に大きい段差により、絶縁バンク305上に形成される第1有機層306と、金属配線284上に形成される第2有機層284とは不連続な層(段切れ構造)として形成される。なお、本実施形態において第1有機層306及び第2有機層285は、蒸着により形成されることとしたが、オフセット印刷等の段差があることにより不連続な層となる形成方法により形成することができる。
【0027】
最後に、上部電極形成工程S17において、ITO(Indium Tin Oxide)及びInZnO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極により、スパッタリング法を用いて上部電極307が形成される。スパッタリング法により形成される透明電極は、有機材料の蒸着と比較して付周りがよいため、第1有機層306と第2有機層285との間の不連続な部分にも付着され、金属配線284に接触する連続的な上部電極307として形成される。
【0028】
その後の工程においては、SiNやガラスキャップによる封止膜が形成されるが、公知の工程であるため詳細な記載を省略する。本実施形態においては、平坦化膜303及び絶縁バンク305の両方に上部電極コンタクトホール287を形成することとしたが、例えば平坦化膜303上に金属配線を形成し、絶縁バンク305のみに上部電極コンタクトホール287を形成することとしてもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態においては、上部電極307を、表示領域202において、ガラス基板301上の抵抗値の低い金属配線284と接触させることができるため、上部電極307のシート抵抗を低減でき、消費電力を低減することができる。また、表示領域202において部分的な電圧低下がなくなるため、表示の均一性を保つことができる。更に、第1有機層及び第2有機層はパターニングすることなく、上部電極307を金属配線284と接触させることができるため、工程を増加させることがないと共に、画素の発光領域の面積を大きく保ち、高精細な画素とすることができる。特に表示領域202の全面に形成される発光層や共通層を含む有機層を有する有機EL表示装置に効果的に適用することができるが、互いに発光する光の波長領域が異なる発光層を形成する有機EL表示装置であっても適用することができる。
【0030】
図6は、本実施形態の変形例である有機EL表示装置の4つの画素480について概略的に示す拡大図であり、
図3と同様に、説明のため、平面視により、一部の電極についてのみ積層関係に関わらず実線で示している。上述の実施形態と同様に、各画素480は、下部電極481と、下部電極コンタクトホール482と、を有している。上述の実施形態と異なる点は、画素480の間に、上部電極407と接続される金属配線484が縦横に配置され、上部電極コンタクトホール487及びそこに形成された第2有機層485も金属配線484に沿って縦横に配置されている点である。この場合であっても、開口率を確保するため、上部電極コンタクトホール487の面積は、下部電極481の面積の10%以下にすることが望ましい。
【0031】
このような構造とすることにより、上述の実施形態における効果に加えて、第1有機層は、画素480毎に独立な不連続な層(段切れ構造)となるため、隣接画素へ電流がリークすることにより隣接画素で発光する、いわゆる電気的混色を抑制することができる。また、有機バンクも画素480毎に不連続なものとなるため、横方向に出射されることにより有機バンクに入った漏れ光は、多くの層の界面を通過しなければ隣接画素から出光されることはないため、光学的混色も抑制することができる。
【0032】
なお、本実施形態においては、同じ種類の有機層が表示領域全域に形成される有機EL表示装置について示したが、出射される光の波長領域が異なる画素毎に有機層が形成される有機EL表示装置であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、200 有機ELパネル、202 表示領域、220 TFT基板、230 封止基板、280 画素、282 下部電極コンタクトホール、284 金属配線、285 第2有機層、287 上部電極コンタクトホール、301 ガラス基板、303 平坦化膜、304 下部電極、305 絶縁バンク、306 第1有機層、307 上部電極、308 封止膜、309 ソース・ドレイン電極、407 上部電極、480 画素、481 下部電極、482 下部電極コンタクトホール、484 金属配線、485 第2有機層、487 上部電極コンタクトホール。