特許第6223086号(P6223086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特許6223086ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク
<>
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000047
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000048
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000049
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000050
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000051
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000052
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000053
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000054
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000055
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000056
  • 特許6223086-ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク 図000057
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223086
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカノエート化合物を含む転相インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/34 20140101AFI20171023BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20171023BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20171023BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171023BHJP
   C09D 11/326 20140101ALN20171023BHJP
【FI】
   C09D11/34
   C09D11/38
   B41M5/00 120
   B41J2/01 111
   B41J2/01 501
   !C09D11/326
【請求項の数】12
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-192956(P2013-192956)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-65906(P2014-65906A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】13/625,571
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・エム・トゥーレク
(72)【発明者】
【氏名】ガーリノ・ジー・サクリパンテ
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・ダブリュ・ヴァンベシエン
(72)【発明者】
【氏名】コーリー・エル・トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】シー・ジェフリー・アレン
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−534697(JP,A)
【文献】 特開2001−348558(JP,A)
【文献】 特開2011−116984(JP,A)
【文献】 特開2001−064556(JP,A)
【文献】 特開2011−126881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/00−13/00
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転相インクであって、
アモルファス化合物であって、以下の式を有する酒石酸のエステルを含み、
【化1】
または、以下の式を有するクエン酸のエステルを含み、
【化2】
式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、アルキル基から選択され、アルキルは、1〜40個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基である、アモルファス化合物と、
以下の式を有する結晶性化合物と、
【化3】
任意要素の着色剤と、
任意要素の共力剤と、
任意要素の分散剤と、
以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物と、を含み、
【化4】
式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
nは、1〜35,000の繰り返し単位の数をあらわし、
xは、1〜5の整数をあらわす、転相インク。
【請求項2】
前記アモルファス化合物が、L−酒石酸ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)、(4−t−ブチルシクロヘキシル)(シクロヘキシル)−L−酒石酸、立体異性体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の転相インク。
【請求項3】
前記アモルファス化合物が、以下の式を有する化合物である、請求項1に記載の転相インク。
【化5】
【請求項4】
前記着色剤が、顔料、染料、またはこれらの混合物または組み合わせである、請求項1に記載の転相インク。
【請求項5】
前記着色剤が、顔料である、請求項1に記載の転相インク。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物が、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエートからなる群から選択される少なくとも1つの部分を含むホモポリマーまたはコポリマーである、請求項1に記載の転相インク。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物が、少なくとも1つの(3−ヒドロキシヘプタノエート)−3−ヒドロキシノナノエート)コポリマーであるか、または
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物は、少なくとも1つのポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸 コ−3−ヒドロキシノナン酸)である、請求項1に記載の転相インク。
【請求項8】
転相インク組成物を調製する方法であって、
アモルファス化合物と、結晶性化合物と、任意要素の着色剤と、任意要素の共力剤と、任意要素の分散剤と、少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物を合わせ、転相インク組成物を製造することを含み、
前記アモルファス化合物が、以下の式を有する酒石酸のエステルを含み、
【化6】
または、以下の式を有するクエン酸のエステルを含み、
【化7】
式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、アルキル基から選択され、アルキルは、1〜40個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基であり、
以下の式を有する結晶性化合物を含み、
【化8】
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物が、以下の式を有し、
【化9】
式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、nは、1〜35,000の繰り返し単位の数をあらわし、xは、1〜5の整数をあらわす、方法。
【請求項9】
前記アモルファス化合物が、以下の式を有する化合物である、請求項8に記載の方法。
【化10】
【請求項10】
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物が、少なくとも1つの(3−ヒドロキシヘプタノエート)−3−ヒドロキシノナノエート)コポリマーであるか、または
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物は、少なくとも1つのポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸 コ−3−ヒドロキシノナン酸)である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
転相インク組成物を含有する、インクジェットプリンターのスティックまたはペレットであって、
前記転相インク組成物が、
アモルファス化合物であって、以下の式を有する酒石酸のエステルを含み、
【化11】
または、以下の式を有するクエン酸のエステルを含み、
【化12】
式中、R1、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立して、アルキル基から選択され、アルキルは、1〜40個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であるか、または置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基である、アモルファス化合物と、
以下の式を有する結晶性化合物を含み、
【化13】
任意要素の着色剤と、
任意要素の共力剤と、
任意要素の分散剤と、
以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物と、を含み、
【化14】
式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、nは、1〜35,000の繰り返し単位の数をあらわし、xは、1〜5の整数をあらわす、
インクジェットプリンターのスティックまたはペレット。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物が、少なくとも1つの(3−ヒドロキシヘプタノエート)−3−ヒドロキシノナノエート)コポリマーであるか、または
前記少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物は、少なくとも1つのポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸 コ−3−ヒドロキシノナン酸)である、請求項11に記載のインクジェットプリンターのスティックまたはペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、アモルファス化合物と、結晶性化合物と、任意要素の着色剤と、任意要素の共力剤と、任意要素の分散剤と、少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物とを含む転相インクが開示される。
【背景技術】
【0002】
分散した有機着色顔料を含む以前記載された結晶性−アモルファスインクは、特定の染料系インクと比較して改良された結晶化速度、耐光性を示し、コーティングされた基材に対し、折りたたみによる裏移りおよび引っ掻きへの優れた耐性といった特徴を付与することができる転相インクが依然として必要である。
【発明の概要】
【0003】
アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物
【化1】
とを含み、式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され;nは、1〜約35,000の繰り返し単位の数をあらわし;xは、1〜約5の整数をあらわす、転相インクが記載される。
【0004】
また、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物を合わせ、転相インク組成物を製造することを含み、
【化2】
式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され;nは、1〜約35,000の繰り返し単位の数をあらわし;xは、1〜約5の整数をあらわす、転相インクを調製する方法が記載される。
【0005】
また、インクジェットプリンターのスティックまたはペレットであって、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物
【化3】
〔式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され;nは、1〜約35,000の繰り返し単位の数をあらわし;xは、1〜約5の整数をあらわす〕
とを含む転相インク組成物を含有し、転相インク組成物を製造する、インクジェットプリンターのスティックまたはペレットが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、細菌細胞内のポリヒドロキシアルカノエート顆粒を示す。
図2図2は、実施例1、2および3の着色したインクについて、複素粘度(センチポイズ、y軸) 対 周波数(Hz、x軸)を示すグラフである。
図3図3は、実施例1、2、3の着色したインクについて、複素粘度(センチポイズ、y軸) 対 温度(℃、x軸)を示すグラフである。
図4図4は、3つの指状部を用いて引っ掻いた実施例1のKプループサンプルのスキャン画像である。
図5図5は、3つの指状部を用いて引っ掻いた実施例2のKプループサンプルのスキャン画像である。
図6図6は、3つの指状部を用いて引っ掻いた実施例3のKプループサンプルのスキャン画像である。
図7図7は、Duplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたまれた実施例1のKプループサンプルのスキャン画像である。
図8図8は、Duplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたまれた実施例2のKプループサンプルのスキャン画像である。
図9図9は、Duplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたまれた実施例3のKプループサンプルのスキャン画像である。
図10図10は、Duplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたまれた比較例のインクのKプループサンプルのスキャン画像である。
図11図11は、3つの指状部を用いて引っ掻いた比較例のインクのKプループサンプルのスキャン画像である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物
【化4】
とを含み、式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され;
nは、1〜35,000であり;
xは、1〜5である、転相インク。
【0008】
着色した転相インクの引っ掻きおよび折りたたみによる裏移りは、少量の天然に誘導されるポリヒドロキシアルカノエートバイオ樹脂を組み込むことによって顕著に改良された。
【0009】
「アルキル」は、脂肪族炭化水素基を指す。
【0010】
アルキル基は、1〜40個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0011】
アルキル基は、置換または非置換であってもよく、置換されているとき、置換基は、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロおよびアミノ(一置換アミノ基および二置換アミノ基を含む)から独立して選択される1つ以上の基である。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
【0012】
「アリール」は、1個、2個または3個の環を含む炭素環芳香族系を意味し、このような環が、側鎖の様式で一緒に接続していてもよく、縮合していてもよく、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびビフェニルのような芳香族基を包含する。
【0013】
「アリールアルキル」は、アルキル基を介して親分子部分に接続するアリール基を指す。「アルカンジイル」という用語は、アルカン基の二価の基を指し、一般式−Cn(RxRy)n−を有し、式中、RxおよびRyは、それぞれ独立して、低級アルキル基または水素である。
【0014】
転相インク組成物は、(1)結晶性化合物と(2)アモルファス化合物とのそれぞれの重量比が一般的に60:40〜95:5でのブレンドを含む。
【0015】
それぞれの化合物または構成要素は、特定の性質を固体インクに付与し、これらのアモルファス化合物と結晶性化合物のブレンドを組み込んで得られたインクは、コーティングされていない基材およびコーティングされた基材に対して優れた堅牢性を示す。インク配合物中の結晶性化合物は、冷却すると迅速な結晶化によって転相を促し、最終的なインク膜の構造に固定し、アモルファス化合物の粘着性を下げることによって硬いインクを作成する。アモルファス化合物は、印刷したインクに粘着性を与え、堅牢性を付与する。
【0016】
アモルファス化合物は、以下の式を有する酒石酸の第1のエステル
【化5】
または以下の式を有するクエン酸の第1のエステル
【化6】
を含み、式中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、または芳香族またはヘテロ芳香族基であるか、またはR、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基であるか、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されたまたはシクロヘキシル基である。
【0017】
以下の式の実施形態では、
【化7】
およびRのうち、1つが2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRのうち、他の1つが、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルまたはシクロヘキシルであるか、または、RおよびRのうち、1つが、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRのうち、他の1つがシクロヘキシルであるか、またはRおよびRは、それぞれ2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであるか、またはRは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、4−t−ブチルシクロヘキシルであるか、またはRは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルであるか、またはRは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルである。
【0018】
以下の式の実施形態では、
【化8】
、RおよびRのうち、1つは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRのうち、他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシルまたはシクロヘキシルであるか、またはR、RおよびRのうち、1つは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRのうち、他の1つは、シクロヘキシルであるか、またはR、RおよびRは、それぞれ、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであるか、またはRは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRは、それぞれ4−t−ブチルシクロヘキシルであるか、またはRは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRは、それぞれシクロヘキシルであるか、またはRは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRは、それぞれシクロヘキシルである。
【0019】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、L−酒石酸 ビス(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル)または(4−t−ブチルシクロヘキシル)(シクロヘキシル)−L−酒石酸、および任意の立体異性体からなる群から選択される。
【0020】
アモルファス材料は、米国特許出願第13/095,784号に開示されており、以下の式の酒石酸エステル
【化9】
を含んでいてもよく、式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、1〜40個の炭素原子を含むアルキル基であるか、またはRおよびRは、それぞれ独立して、シクロヘキシル基であるか、またはR1およびR2は、それぞれ、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。
【0021】
酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、0−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸から選択されてもよい。酒石酸のR基および立体化学に依存して、そのエステルは、結晶または安定なアモルファス化合物を形成してもよい。いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、ジ−L−メンチル L−酒石酸、ジ−DL−メンチル L−酒石酸 (DMT)、ジ−L−メンチル DL−酒石酸、ジ−DL−メンチル DL−酒石酸、および任意の立体異性体からなる群から選択される。
【0022】
これらの材料は、吐出温度(140℃、または100〜140℃)度付近で比較的低い粘度を示す(<102センチポイズ(cp)、または1〜100cp)が、室温で非常に高い粘度を示す(>105cp)。
【0023】
アモルファス構成要素を合成するために、米国特許出願第13/095,784号に示す合成スキームに示されるように、酒石酸を種々のアルコールと反応させ、ジ−エステルを製造することができる。適切なアルコールは、1〜40個の炭素原子を含むアルキルアルコール、または芳香族またはヘテロ芳香族基からなる群から選択されてもよい。種々のアルコールまたはアルコール混合物をメントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントール、および任意の立体異性体としてエステル化に使用してもよい。2種類の脂肪族アルコールの混合物をエステル化に使用してもよい。脂肪族アルコールのモル比は、25:75〜75:25であってもよく、例えば、酒石酸と反応させたときに、混合物がアモルファス化合物を形成する脂肪族アルコールとしては、シクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノール(例えば、2、3または4−tert−ブチル−シクロヘキサノール)が挙げられる。
【0024】
2モル当量以上のアルコールをこの反応に使用し、酒石酸のジエステルを製造してもよい。1モル当量のアルコールを使用する場合、その結果は、ほとんどモノエステルである。
【0025】
本明細書で転相インクのためのアモルファス構成要素としては、米国特許出願第13/095,795号に開示される以下の式を有するものが挙げられ、
【化10】
式中、R、RおよびRは、独立して、1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、または置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基である。
【0026】
クエン酸のエステル化反応によって、これらのアモルファス材料を合成することができる。クエン酸を種々のアルコールと反応させてトリエステルを製造することができる。
【0027】
アモルファス化合物は、インク組成物の合計重量に対して任意の量、例えば、5〜40重量%で存在してもよい。
【0028】
転相インク組成物は、以下の式を有する酒石酸の第2のエステルを含む結晶性化合物を含み、
【化11】
およびRは、それぞれ独立して、アリールまたはヘテロアリールであり、各nは、独立して、0〜3であるか、またはRおよびRは、それぞれ独立して、場合により置換されたアリール、例えば、フェニルであるか、またはRおよびRは、それぞれ独立して、置換されていないか、またはメチル、エチル、イソプロピル、メトキシまたはエトキシで置換されているか、またはRおよびRは、それぞれ独立して、メチルまたはメトキシで場合により置換されたフェニルである。
【0029】
いくつかの実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、以下のもの
【化12】
からなる群から選択され、式中、
は、化合物に対するR基およびR基の接続点をあらわす。
【0030】
いくつかの実施形態では、酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸から選択される。
【0031】
結晶性構成要素は、アミド、芳香族エステル、直鎖ジエステル、ウレタン、スルホン、酒石酸芳香族基を有するエステル誘導体、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0032】
結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/457号に開示される以下の構造を有するものが挙げられ、
【化13】
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、(i)1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、(ii)4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。
【0033】
適切な結晶性構成要素としては、Morimitsuらに対する米国特許出願第13/456,916号に開示され、以下の構造を有するものも挙げられ、
【化14】
式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、(i)1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、(ii)4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択され、但し、R10およびR11のうち、少なくとも1つは芳香族基であり;pは、0または1である。
【0034】
結晶性芳香族エーテルとしては以下のものが挙げられる。
【化15】
【0035】
適切な結晶性構成要素としては、米国出願第13/095,555号に開示され、以下の構造を有するものも挙げられ、
【化16】
式中、R12は、−(CH−から−(CH12−からなる群から選択され、R13およびR14は、それぞれ互いに独立して、置換または非置換の芳香族基またはヘテロ芳香族基からなる群から選択される。
【0036】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/456,619号に開示され、以下の構造を有するものも挙げられ、
【化17】
式中、Qは、アルカンジイルであり、R15およびR16は、それぞれ独立して、1つ以上のアルキルで場合により置換されたフェニルまたはシクロヘキシルであり;iは、0または1であり;jは、0または1であり;pは、1〜4であり;qは、1〜4である。
【0037】
適切な結晶性構成要素としては、米国特許出願第13/457号に開示され、以下の構造を有するものも挙げられ、
【化18】
式中、R17およびR18は、それぞれ互いに独立して、(i)1〜40個の炭素原子を含むアルキル基、(ii)4〜40個の炭素原子を含むアリールアルキル基、(iii)3〜40個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、R17およびR18は、それぞれ独立して、アルキルまたはアリールである。いくつかの実施形態では、R17およびR18は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルまたはシアノメチルである。
【0039】
結晶性構成要素は、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホン、フェニル−4−クロロフェニルスルホン、フェニル−2−アミノフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジベンジルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジ−n−ブチルスルホン、ジビニルスルホン、メチル−2−ヒドロキシメチルスルホン、メチルクロロメチルスルホン、スルホラン、3−スルホレンを含んでいてもよい。
【0040】
結晶性化合物は、以下の式を有する酒石酸のエステルを含んでいてもよく、
【化19】
式中、R19およびR20は、それぞれ独立して、低級アルキルおよびアルコキシで場合により置換されたアリールまたはヘテロアリールであり、各nは、独立して0〜3であるか、またはR19およびR20は、それぞれ独立して、場合により置換されたアリール、例えばフェニルであるか、またはR19およびR20は、それぞれ独立して、置換されていないか、またはメチル、エチル、イソプロピル、メトキシまたはエトキシで置換されているか、またはR19およびR20は、それぞれ独立して、メチルまたはメトキシで場合により置換されたフェニルである。
【0041】
いくつかの実施形態では、R19およびR20は、それぞれ独立して、以下のものからなる群から選択される。
【化20】
【0042】
いくつかの実施形態では、酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、結晶性化合物は、L−酒石酸ジベンジル、L−酒石酸ジフェネチル、L−酒石酸ビス(3−フェニル−1−プロピル)、ビス(2−フェノキシエチル)L−酒石酸、L−酒石酸ジフェニル、ビス(4−メチルフェニル)L−酒石酸、L−酒石酸ビス(4−メトキシルフェニル)、L−酒石酸ビス(4−メチルベンジル)、ビス(4−メトキシルベンジル)L−酒石酸からなる群から選択される。
【0044】
結晶性材料は、鋭敏な結晶化を示し、140℃の温度で比較的低粘度(≦10センチポイズ(cp)、または0.5〜20cp)であるが、室温では非常に粘度が高い(>10cp)。これらの材料は、融点(Tmelt)が150℃未満、または65〜150℃であり、結晶化温度(Tcrys)が60℃より高く、または60〜140℃である。TmeltとTcrysのΔTは、55℃未満である。
【0045】
結晶性化合物は、インク組成物の合計重量に対し、任意の量、例えば、60〜95重量%で存在していてもよい。
【0046】
転相インク組成物は、望ましい粘度を維持しつつ、液体から固体への鋭敏な相転移を実現し、硬くて堅牢性の高い印刷画像を促進するような所定のバランスのアモルファス材料と結晶性材料を含む。このインクを用いて作られた印刷物は、市販のインクと比較して、例えば、引っ掻きに対する堅牢性が良いなどの利点を示した。したがって、本発明の酒石酸化合物およびその誘導体は、転相インクのための結晶性構成要素を与えるが、望ましいレオロジープロフィールを有し、インクジェット印刷の多くの要求事項を満たす堅牢性の高いインクを生成することを発見した。
【0047】
酒石酸を種々のアルコールと反応させ、ジ−エステルを製造することができる。エステル化は、1段階反応によって行うことができ、
【化21】
ここで、ROHおよびR’OHは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
アモルファス材料を合成するために、種々の脂肪族アルコールをメントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントール、および任意の立体異性体としてエステル化に使用してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、メントールはアルコールとして選択される。酒石酸とメントールの両方が立体異性体をもつため、キラリティという観点で多くの可能な組み合わせが存在する。いくつかの実施形態では、酒石酸およびメントールの3種類の組み合わせ(ジ−L−メンチル L−酒石酸、ジ−DL−メンチル L−酒石酸、ジ−L−メンチル DL−酒石酸)を合成することができる。驚くべきことに、あらゆる組み合わせによって、光学的に純粋なL−メントールとL−酒石酸の組み合わせであっても、アモルファス的に硬化する材料になる。本発明の実施形態で使用される適切なアルコールは、アルキルアルコールからなる群から選択されてもよく、アルコールのアルキル部分は、1〜16個の炭素原子を含む直鎖、分枝鎖または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよい。
【0050】
結晶性材料を合成するために、例えば、
【化22】
および任意の立体異性体のような種々の芳香族アルコールをエステル化に使用してもよい。
【0051】
2モル当量以上のアルコールをこの反応に使用し、酒石酸のジエステルを製造してもよい。1モル当量のアルコールを使用する場合、その結果は、ほとんどモノエステルである。
【0052】
従来の染料、顔料および混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される任意の着色剤は、転相インク組成物の合計重量を基準として任意の量、例えば、0.1〜50重量%の量で存在する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の転相インク組成物は、着色した転相インク組成物である。いくつかの実施形態では、顔料は、金属フタロシアニン、金属を含まないフタロシアニン、およびこれらの混合物および組み合わせ、またはシアン、グリーン、ブルー、ブラック、カーボンブラック、Pigment Blue、銅フタロシアニン、およびこれらの混合物および組み合わせからなる群から選択される。具体的な実施形態では、顔料は、シアン顔料である。
【0054】
顔料は、転相インク組成物の合計重量を基準として任意の量で、例えば、0.1〜20%の量で与えられてもよい。
【0055】
銅フタロシアニン誘導体は、着色した転相インクの分散安定性を高めるために共力剤として使用することができる。
【0056】
転相インク組成物中の含量の合計重量に基づいて任意の量で、例えば、1〜500%の量で、米国特許第7,973,186号に記載されるような分散物、またはSolsperse(登録商標)の名前で販売されているもののような、ポリマー分散剤などの任意の分散剤を使用してもよい。
【0057】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と呼ばれる天然のポリエステルの群を含め、本開示の実現可能性を示すために、生体材料の多くの可能な基以外の基を選択した。ビールの醸造とは異なるが、高密度で、乾燥重量の90%をポリマーとして含有する細菌の細胞内でポリマーの産生を含む大規模な発酵プロセスによって、これらのポリマーを製造する。図1は、細菌中のPHA顆粒を示し、PHA顆粒は、細胞内の餌およびエネルギー貯蔵庫として機能する。PHAは、必須要素を利用できなくなる場合に飢えてしまうのを防ぐために、環境(一般的に、リン、窒素、または酸素)における栄養制限に応答して、細胞によって産生される。PHAは、再生可能な供給源から産生することができ、生分解性であるため、化石油に由来するプラスチックに代わる価値の高い代替物であると考えられる。
【0058】
本発明の転相インク組成物は、以下の式を有する少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物を含み、
【化23】
式中、Rは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、nは、1〜35,000であり、xは、1〜5である。
【0059】
あらゆる天然のPHAは、3位にあるキラル中心について同じ構造を有し、完全にアイソタクチックである。このことは、PHAの物理特性、生合成、生分解にとって重要である。いくつかの実施形態では、ポリ(3−ヒドロキシヘプタン酸 コ−3−ヒドロキシノナン酸)またはP(HHp−コ−HN)は、アルカン上で成長する細菌Pseudomonas oleovoransによって産生されるようであり、転相インクのために選択される。
【表1】
【0060】
この半結晶性ポリエステルは、−43℃とTgが低く、47℃とTmが低く、Mwが101.3kDaであり、Mnが50.1kDaである。いくつかの実施形態では、PHAは、もっと低い融点を有し、他のインク構成要素を相互に溶解することができ、その溶融段階/再結晶化段階からの収縮がないか、または非常に小さく、良好な弾性および靱性を含め、ある種の属性を完全なインクにまで広げることができる。
【0061】
Rは、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子であってもよく、nは1〜35,000であり;xは1〜5である。
【0062】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)ポリマー化合物は、高密度で成長する細菌の細胞内で製造可能な天然のポリエステル材料である。PHA化合物は、細菌細胞の乾燥重量の90%の量で存在していてもよい。ポリヒドロキシアルカノエートは、発酵産物であってもよく、特に、微生物プロセスの発酵産物であってもよく、それによって、微生物は、通常の成長または操作による成長の間に、ポリヒドロキシアルカノエートを蓄える。操作は、細胞の繁殖に必要な1つ以上の栄養分を与えないようにするか、または与え損なうことによって達成されてもよい。微生物は、野生型であってもよく、変異していてもよく、または例えば、組み換えDNA技術のいずれかの方法によって微生物内に導入される必要な遺伝材料を有していてもよい。ポリヒドロキシアルカノエートを産生する生物が微生物である必要はないが、現時点ではこのような生物が好ましいことを強調しておくべきである。
【0063】
PHAの基本構造は、主に、ヒドロキシアルカノエート(HA)の繰り返しモノマー単位からなる。1個のモノマーのヒドロキシル基は、エステル結合によって別のモノマーのカルボキシル基に接続しており、長鎖型のポリエステルの蓄積を生成する。PHAのコポリマーは、少なくとも2つのランダムな繰り返しモノマー単位(RRMU)を含む。例えば、PHAコポリマーの一般的な構造は、以下の一般的な構造を有する第1のRRMU
【化24】
および以下の一般的な構造を有する第2のRRMU
【化25】
で構成されてもよく、式中、RおよびRは、独立して、水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、nおよびoは、独立して、1〜35,000をあらわし、xおよびyは、独立して1〜5をあらわす。さらなるRRMU(例えば、3個、4個、5個、6個のRRMU)が、繰り返し単位の数が同じか、または異なるようにPHAに含まれていてもよい。
【0064】
PHA構造は、2つの様式で変動してもよい。第1に、PHAは、側鎖基の構造にしたがって変動してもよく、典型的には、(D)−立体化学を有する炭素原子に接続する。側鎖基は、PHA炭素骨格を構成しないヒドロキシアルカン酸の側鎖を形成する。第2に、PHAは、その繰り返し単位の数および種類にしたがって変動してもよい。PHA構造のこれらの変数は、その物理的特徴を変えることがある。これらの物理的特徴によって、PHAは、商業的に価値があると思われる多くの製品にとって有用なものとなる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリヒドロキシアルカノエート化合物は、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの部分を含むホモポリマーまたはコポリマーである。
【0066】
ポリヒドロキシアルカノエート化合物は、1〜15個のポリヒドロキシアルカノエートモノマーで構成されていてもよい。ポリヒドロキシアルカノエート化合物は、5個のコポリマー、ターポリマー、または任意の望ましい数のポリヒドロキシアルカノエートモノマー中に3個を超える化学的に別個のモノマーを含むコポリマーの中に存在していてもよい。ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)コポリマーとしては、3−ヒドロキシブチレートと3〜12個の炭素原子を含む別のヒドロキシアルカノエートのコポリマーが挙げられる。ポリヒドロキシアルカノエート化合物としては、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシプロピオネート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシプロピオネート)−(4−ヒドロキシブチレート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバレレート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシプロピオネート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)−(3−ヒドロキシノナノエート)−(3−ヒドロキシデカノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシプロピオネート)−(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)−(3−ヒドロキシノナノエート)−(3−ヒドロキシデカノエート)−(3−ヒドロキシウンデカノエート)−(3−ヒドロキシドデカノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(4−ヒドロキシブチレート)コポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)コポリマーとしては、3−ヒドロキシヘプトエートおよび3〜12個の炭素原子を含む別のヒドロキシアルカノエートのコポリマーが挙げられる。この例としては、(3−ヒドロキシヘプトエート)−3−ヒドロキシプロピオネート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプトエート)−3−ヒドロキシプロピオネート)−(4−ヒドロキシブチレート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプトエート)−(3−ヒドロキシバレレート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプトエート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシ−ヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシブチレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプトエート)コポリマー、(3−ヒドロキシプロピオネート)−(3−ヒドロキシバレレート)−(3−ヒドロキシヘキサノエート)−(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)−(3−ヒドロキシノナノエート)−(3−ヒドロキシデカノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプトエート)−(3−ヒドロキシオクタノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプトエート)(3−ヒドロキシノナノエート)コポリマー、(3−ヒドロキシヘプタノエート)−(3−ヒドロキシデカノエート)コポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
PHAを製造する方法は、米国特許第7,098,298号および米国特許公開第2005/0228168号、第2006/0105440号、第2005/0239998号に記載される。植物中でPHAを製造するある方法は、植物を遺伝的に操作し、PHA生合成経路で少なくとも2種類の酵素でペルオキシソームを産生することを含む。この植物は、少なくとも2つの安定に組み込まれたDNA構築物をそのゲノム内に含み、それぞれのDNA構築物は、プロモーターに操作可能に結合し、植物内の遺伝子発現を引き起こすPHA合成に関与する酵素のコード配列を含む。次いで、このような植物を遺伝的に操作し、ポリマー合成を触媒するPHAシンターゼ(PHAポリメラーゼとしても知られる)を産生する。PHA合成は、例えば、3−ヒドロキシブタン酸モノマーと少なくとも1つのさらなるモノマーで構成されるコポリマー、または3−ヒドロキシブタン酸モノマーと、1〜25個の炭素原子を含むヒドロキシアシル鎖長を有する少なくとも1つのさらなるモノマーとで構成されるコポリマーの合成を触媒する。PHAシンターゼの例としては、Pseudomonas oleovorans(GenBank寄託番号 M58445、配列番号8)、Pseudomonas putida(GenBank寄託番号AF042276、配列番号9)、Pseudomonas aeruginosa(EMBL寄託番号X66592、配列番号10)、Aeromonas caviae(DDBJ寄託番号D88825、配列番号11)、Thiocapsa pfennigii(EMBL寄託番号A49465、配列番号12)から単離可能なヌクレオチド配列によってコードされるPHAシンターゼである。好ましいPHAシンターゼは、Pseudomonas fluorescensによって単離可能なヌクレオチド配列によってコードされるPHAシンターゼをさらに含む。
【0069】
ポリヒドロキシアルカノエート化合物は、転相インク組成物の合計重量を基準として任意の量で、例えば、0.5〜20重量%の量で存在していてもよい。迅速な結晶化速度論およびニュートン性レオロジー挙動のような必要な特性を犠牲にすることなく、本発明のインクの引っ掻きおよび折りたたみによる裏移りに関する特性を実質的に高めるために、最小量のPHA材料(例えば、転相インク組成物の合計重量を基準として1〜3重量%)が必要である。大量の生物由来のP(HHp−コ−HN)材料の予想費用は、1kgあたり$10〜$20であり、このことは、本発明の転相インク組成物を経済的に有利なものとする。
【0070】
インク媒体中でポリヒドロキシアルカノエート化合物が極性の性質を有するため、インク媒体にポリヒドロキシアルカノエート化合物が含まれることは、(1)転相インク組成物について、固体状態の間の堅牢性が高まり、凝集性が高くなり、(2)構成要素全体の合計数と、インク媒体中の石油構成要素の量が減ることを意図している。この堅牢性の高まりは、さまざまな応力にさらされたときに本明細書の固体インクが粉々にならず、単に変形するだけであるため、事実である。
【0071】
アモルファス化合物;結晶性化合物;任意要素の着色剤;任意要素の共力剤;任意要素の分散剤;少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物を合わせ、転相インク組成物を製造することによって、転相インク組成物を調製することができる。
【0072】
インク成分を一緒に混合した後、100℃〜140℃以下の温度まで加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、その後、インクを周囲温度まで冷却してもよい。このインクは、周囲温度で固体である。いくつかの実施形態では、作成プロセス中に、溶融状態のインクを型に注ぎ、次いで冷却し、固化させてインクスティックを作成する。
【0073】
本発明のインクジェットプリンターのスティックまたはペレットは、アモルファス化合物と;結晶性化合物と;任意要素の着色剤と;任意要素の共力剤と;任意要素の分散剤と;少なくとも1つのポリヒドロキシアルカノエート化合物とを含む転相インク組成物を含む。
【0074】
本明細書に開示するインクは、直接的な印刷インクジェットプロセスおよび間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途の装置で使用することができる。別の実施形態は、本明細書に開示したように調製したインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を画像の模様になるように中間転写体に放出することと、画像の模様になったインクを中間転写体から最終的な記録基材に転写することとを含むプロセスに関する。
【0075】
本明細書の方法は、本明細書に開示したように調製したインクをインクジェット印刷装置に組み込むことと、インクを溶融させることと、溶融したインクの液滴を基材の上に画像の模様になるように放出することとを含む。
【0076】
任意の適切な基材または記録シートを使用することができる。いくつかの実施形態では、基材は、コーティングされた紙を含む。
【0077】
アトライタで混合した顔料濃縮物を、表2に示す結晶性構成要素とアモルファス構成要素とを含むインク基剤に加えることによって、着色したインクを調製した。
【表2】
【0078】
(比較例1)
ビーカーに、156グラムのジ−DL−メンチル L−酒石酸(DMT)、20グラムのSolsperse(登録商標)32000、4グラムの顔料共力剤SunFlo(登録商標)SFD−B124を加えた。溶液を130℃で30分間撹拌し、20グラムのシアン顔料、C.I. Pigment Blue 15:3、Clariantを加え、130℃でさらに1時間撹拌する。これを顔料を濡らす段階と呼ぶ。次いで、この混合物を、1800グラムの1/8インチステンレス鋼ショットが入ったUnion Processの01アトライタ容器に移した。この混合物を130℃、350RPMで24時間、アトライタ中で混合した。次いで、顔料濃縮物をショットからふるいによって分けた。この混合物を顔料濃縮物Aと呼ぶ。
【0079】
50ミリリットルビーカーに、2グラムの顔料濃縮物Aと、7.6グラムの結晶性構成要素と、0.35グラムのDMTとを加えた。次いで、この混合物を130℃で2時間撹拌し、平皿に移して凍結させた(固化させた)。
【0080】
(実施例2)
PHAが、1pphでインク中に存在するようにインク配合物中に存在する以外は比較例1と同様の様式でインクを調製した。
【0081】
(実施例3)
PHAが、3pphでインク中に存在するようにインク配合物中に存在する以外は比較例1と同様の様式でインクを調製した。PHAは、Polyferm Canada,Inc.から商業的に得られるVersaMer(商標)PHNであった。PHAの構造は、以下の式のR=−CHCH−CH、R=−CHCHCHCH−CHおよびR=−CHCHCHCHCH−CH、X=1の混合物を含む。
【化26】
【0082】
表3の数字は、パーツパーハンドレッド(pph)としてのインクの組成に関する。
【表3】
【0083】
Sunflo(登録商標)SFD−B124は、誘導体化したスルホン酸化銅フタロシアニン(Sun Chemical)である。
【0084】
シアン顔料は、C.I.Pigment Blue 15:3顔料(Clariant Corporation)である。
【0085】
Solsperse(登録商標)32000は、分散剤である(Lubrizol Corporation)。
【0086】
結晶性構成要素およびアモルファス構成要素を表3に提示した量で合わせ、PHA、共力剤Sunflo(登録商標)SFD−B124、C.I.Pigment Blue 15:3顔料、Solsperse 32000を加え、撹拌し、2時間かけて140℃まで加熱することによって、比較例1、実施例2および実施例3のインクを調製した。
【0087】
(比較例4)
米国特許第6,860,930号の実施例2で調製したようなトリアミドワックスを以下の通り調製した。1,000ミリリットルの4ッ口丸底フラスコにTruboreスターラー、N注入口、凝縮器付きDean−Starkトラップ、N出口および熱電対−温度コントローラーを取り付け、これに350.62グラム(0.3675モル)の式CH(CHCOOH(nは、平均値37を有し、34〜40の範囲であると考えられる)のUNICID(登録商標)350(モノ酸、Baker Petrolite Corporation)、0.79グラムのNAUGARD(登録商標)524(酸化防止剤、Chemtura Corporation)を加えた。この混合物を115℃まで加熱して溶融させ、N下周囲圧力で撹拌した。次いで、この反応混合物に51.33グラム(0.1167モル)のJEFFAMINE T0403(トリアミンの混合物、Huntsman Corporation)を加え、反応温度を0.5時間かけて200℃まで徐々に上げていき、この温度でさらに3時間保持した。Nをゆっくりと吹き込むことによって、ある程度の水を外に運びだし、混合物温度が180℃に達したらトラップ内で凝縮された。次いで、トラップおよび凝縮器をはずし、減圧(25mm Hg)状態に0.5時間置き、次いで開放した。液体生成物を150℃まで冷却し、アルミニウムの上に注いで固化させた。
【0088】
米国特許第6,309,453号の実施例4で調製したようなウレタン樹脂を以下のように調製した。80.0グラム(0.052モル)のARCOL LHT 112グリセロールプロポキシレート(ARCO Chemical Co.)、46.6グラム(0.156モル)のオクタデシルイソシアネート(Mondur O−Octadecyl Isocyanate、Bayer Corp.)を、マグネットを入れた200ミリリットルビーカーに入れ、シリコーン油浴で115℃まで加熱した。5滴の触媒(Fascat(登録商標)4202ジブチルスズジラウレート、Elf Atochem North America,Inc.)を加え、混合物を115℃で2時間反応させた。反応生成物のFT−IRから、約2285cm−1のピーク(NCO)がないこと(消失していること)と、約1740〜1680cm−1および約1540〜1530cm−1のウレタンの周波数に対応するピークが現れていること(または大きくなっていること)が示された。次いで、最終的なウレタン生成物を標本瓶に注ぎ、冷却して硬化させた。この最終生成物は、室温で固体であり、Ferranti−Shirley円錐−平板粘度計によって135℃で測定すると粘度が15.8センチポイズであり、DuPont 2100熱量計を用いた示差走査熱量測定によって走査速度20℃/分で測定すると、融点が23.8℃であることを特徴とする。
【0089】
米国特許第6,472,523号の実施例VIIで調製したようなシアン染料を以下のように調製した。4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(25.8グラム、0.060モル)、酢酸銅(II)無水物(3.0グラム、0.015モル)、酢酸アンモニウム(9.2グラム、0.12モル)の混合物をNMP 100ミリリットル中で撹拌し、120℃まで加熱した。ゆっくりとした気体発生が観察され、5分後に、深い暗青色が発生した。120℃で30分後、反応混合物を1時間かけて180℃まで加熱した。次いで、NMP(50ミリリットル)を加え、混合物を撹拌し、180℃まで再び加熱し、次いで、撹拌しつつ室温まで冷却した。次いで、生成物を濾過し、100ミリリットルのDMFを2回用いて固体を濾過漏斗で洗浄した。次いで、アセトン200ミリリットル中、50℃で撹拌した後、濾過した。このアセトン処理を繰り返し、固体を60℃で一晩乾燥させ、生成物を粗い粉末として得た(19.9グラム、74%)。この物質のスペクトル強度は、1.27×10A*ml/gであり、これは高純度であることを示している(すなわち、純度98%)。
【0090】
インクを以下のように調製した。500ミリリットルビーカーに、52.94部のThe International Group,Inc.から入手可能な分画したポリメチレンワックス、14.82部の米国特許第6,860,930号の実施例2で調製したようなトリアミドワックス、14.25部のKEMAMIDE(登録商標)S−180、13.42部のKE−100樹脂、0.91部の米国特許第6,309,453号の実施例4で調製したようなウレタン樹脂、0.16部のNAUGARD(登録商標)445を入れた。すべての材料が溶融するまで、このビーカーを120℃のオーブンに入れ、次いで、ホットプレートに移し、120℃で1時間撹拌した。これに、3.51部の、米国特許第6,472,523号の実施例VIIで調製したようなシアン染料をゆっくりと加え、新しく作成したインクを120℃で2時間撹拌した。得られたインクをParker−Hannifin Corporationから入手可能な1ミクロンのガラス繊維フィルターで濾過し、次いで、型に注ぎ、インクスティックを作成し、室温まで冷却した。
【0091】
50ミリメートルの円錐および平板の幾何形状を用い、RFS−IIIレオメーター(Rheometrics Corporation、現在はTA Instrumentsから入手可能)でインクのレオロジーを110℃で決定した。対数に基づいて剪断速度を1s−1から約251.2s−1まで110℃で上昇させ、剪断粘度を決定した。インクの適切な標的粘度は、110℃で約10センチポイズである。対数に基づいて周波数を0.1Hzから約15.8Hzまで110℃で上昇させ、50ミリメートルの円錐および平板の幾何形状を用い、インクの複素粘度も決定した。インクの粘度を140℃から100℃まで1Hzで5℃ずつ段階的に低下させて決定するように温度変化も実施した。
【0092】
実施例2および実施例3の着色したインクは、ニュートン性の粘度を示した。図2は、比較例1および実施例2および実施例3のインクの複素粘度(センチポイズ、y軸) 対 周波数(Hz、x軸)を示す。
【0093】
図3は、比較例1および実施例2および実施例3のインクの複素粘度(センチポイズ、y軸) 対 温度(℃、x軸)を示し、その結果は、インクが140℃で吐出可能な粘度(すなわち、≦12cp)を示すことを示していた。
【0094】
K印刷プルーファー30−05型(Testing Machines,Inc.から入手可能)を用い、K−プルーフ印刷物を作成した。コーティングした紙(DCEG:Xerox(登録商標)Digital Color Elite Gloss、120gsm)の上にK−プルーフサンプルを作成した。本開示の実施例2および実施例3のインクのK−プループサンプルに、それぞれPHAを1重量%および3重量%組み込んだ。比較例1および比較例4のインクのK−プルーフサンプルを同じ様式で調製した。Xerox(登録商標)Phaser(登録商標)8400またはPhaser(登録商標)8860プリンターによって、それぞれのKプルーフを、紙をあらかじめ50℃加熱しておき、インク表面が転写固定ドラムに面するようにドラムで1インチ/秒で供給することによって、これらのK−プルーフを広げた。それぞれのインクについて、1つのK−プルーフを3つの指状部を有するシステムで引っ掻き、別のK−プルーフを、Duplo D−590ホルダーによって紙が向かい合っている状態でXerox(登録商標)Business 4200(75gsm)によって折りたたみ、折りしわおよび折りたたみによる裏移りについて評価した。Kプルーフからインクの裏移りが現れるまで、スプレッダードラムを速くし、あらかじめ加熱する温度を高め、第3のK−プルーフを広げた。広がりによる裏移りの程度は、比較的高温(例えば、70℃以上)で行われる特定の印刷処理工程では制限となる因子になり得る。引っ掻き/指状部は、垂直から角度15°に湾曲した先端を有し、加えられる重さは528グラムであり、約13ミリメートル/秒の速度で画像の上を引きずる。引っ掻き/指状部の先端は、曲率半径約12ミリメートルで旋盤で先端を丸く切断したものと類似している。
【0095】
各インクについて、2つのK−プルーフを50℃で広げ、引っ掻き、折りしわの面積、折りたたみによる裏移りについて室温で視覚的に評価した。図4図5図6は、3つの指状部テスターを用いて引っ掻いたK−プルーフサンプルのスキャン画像を示す。図4は、比較例1の着色したインクを用いて作成したK−プルーフサンプルを示す。図5は、1重量%のPHAを含む本開示の実施例2の着色したインクを用いて作成したK−プルーフサンプルを示す。図6は、3重量%のPHAを含む本開示の実施例3の着色したインクを用いて作成したK−プルーフサンプルを示す。表4は、これらのK−プルーフの堅牢性評価のまとめを提示している。
【0096】
折りたたみによる裏移り、折りしわ、引っ掻きおよび広がり時の裏移りを含む種々の堅牢性の測定基準について、K−プルーフを視覚的に評価した。ランク付けを使用し、一列に並べてK−プループを視覚的に評価し、そのセットについて最も良いものから最も悪いものまでランク付けした。
【表4】
【0097】
表4の結果は、実施例3のインクが、折りたたみによる裏移り、折りしわ、引っ掻きについて、比較例1および比較例4と比較してかなり向上していることを明らかに示している。本明細書に記載するPHA添加剤を添加すると、着色したインクの堅牢性の性能が向上する。耐引っ掻き性、耐折りしわ性、折りたたみによる裏移りのしやすさは、インク配合物全体のPHA添加剤含有量を増やすとすべて向上した。
【0098】
図7図8図9は、ページを向かい合わせて配置するDuplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたんだK−プルーフサンプルのスキャン画像を示す。図7は、比較例1のインクの折りたたみサンプルを示す。図8は、実施例2のインクの折りたたみサンプルを示す。図9は、実施例3のインクの折りたたみサンプルを示す。点線およびラベルは、折りしわの位置を示す。
【0099】
比較例4のインクのK−プルーフサンプルのスキャン画像を、図10に示すように、ページを向かい合わせて配置するDuplo(登録商標)D590ホルダーを用いて折りたたんだ。矢印は、折りしわの位置を示す。比較例4のインクのK−プルーフサンプルのスキャン画像を、図11に示すように、3つの指状部で引っ掻いた。点線は、それぞれの塗りつぶした領域内を重、中、軽で上から下まで引っ掻いた位置を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11