(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
携帯端末と、作業機に装着され且つ当該作業機と携帯端末とを接続するための無線通信が前記作業機から供給された電力によって可能な作業機用アクセスポイント装置とを備えた作業機の通信システムであって、
前記作業機用アクセスポイント装置は、前記携帯端末との無線通信を行う通信部と、前記通信部を制御する制御部と、前記通信部にて通信処理を行った総時間を算出する時間算出部とを備え、前記制御部は、前記時間算出部が算出した総時間が所定時間以上となった際に、前記通信部による無線通信を完全に停止して当該停止中は全ての前記携帯端末からの無線通信を受け付けないことを特徴とする作業機の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、作業機の通信システムの全体図を示したものである。
図1に示すように、作業機の通信システム1は、農業機械や建設機械等の作業機2と、携帯端末3との間で無線通信を行うシステムである。即ち、このシステムは、様々な作業を行う作業機2と当該作業機2にアクセスした特定の携帯端末3との相互間で無線通信を行うことができる。
【0013】
作業機の通信システム1は、作業機用アクセスポイント装置4を備えている。作業機用アクセスポイント装置4は、作業機2と携帯端末3との無線通信を確立するためのもので作業機2に搭載されている。この作業機用アクセスポイント装置4は、後述するように、通信規格であるIEEE802.11シリーズに準拠したWi−Fi(登録商標)によって携帯端末3と無線通信を行うものである。一方、携帯端末3は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等で構成されている。この携帯端末3も通信規格であるIEEE802.11シリーズに準拠したWi−Fi(登録商標)によって作業機用アクセスポイント装置4と無線通信行う。
【0014】
このように、作業機2の通信システム1では、作業機用アクセスポイント装置4を介して作業機2と携帯端末3とのアクセスが容易になり、例えば、携帯端末3は、作業機2に関する情報を作業機用アクセスポイント装置4を介して取得したり、携帯端末3から様々な信号を作業機2に送信することができる。なお、アクセスポイント装置4には複数の携帯端末3が接続可能である。
【0015】
以下、作業機を農業機械の1つであるトラクタとし、作業機の通信システム及び作業機用アクセスポイント装置について詳しく説明する。説明の便宜上、「作業機用アクセスポイント装置」を「アクセスポイント装置」といい説明を進める。
図7に示すように、トラクタ2は、前後に車輪を有する走行車両(走行車体)10に、エンジン11、変速装置12等が搭載されて構成されている。この走行車両10の後部には、3点リンク機構13などが昇降可能に設けられている。この3点リンク機構13には、耕耘装置、肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置、収穫装置などの作業装置14が着脱自在となっている。また、エンジン11の後方には、独立搭載型のキャビン15が設けられており、キャビン15内に運転席16が設けられている。運転席16の周囲にはトラクタ2の様々な情報を表示する表示装置18が設けられている。
【0016】
さて、トラクタ2には、複数の電子機器が搭載されている。この電子機器は、トラクタ2を作動させるための機器であって、例えば、センサ(アクセルペダルセンサ、レバー検
出センサ、クランク位置センサ、燃料センサ、水温センサ等)、スイッチ(イグニッションスイッチ、駐車ブレーキスイッチ、PTOスイッチ等)、表示パネル等で構成された表示装置、CPU等で構成された制御装置等である。これら複数の電子機器は、CAN、LIN、FlexRayなどの車両用通信ネットワークN1で接続されている。車両用通信ネットワークN1には、センサで検出された検出信号、スイッチの状態を示すスイッチ信号、制御装置の制御によってトラクタ2の稼働する稼働部(例えば、エンジン、電磁弁、ポンプ等)を動作させるための指令信号(制御信号)等が出力される。なお、車両用通信ネットワークN1には、警告や故障などを知らせるための報知信号も出力される。
【0017】
図1は、電子機器の1つである複数の制御装置と、車両用通信ネットワークを介して各制御装置に接続された作業機用アクセスポイント装置との構成を示したものである。
図1に示すように、トラクタ2には、制御装置20として、例えば、エンジン11を制御する第1制御装置20Aと、変速装置12や3点リンク機構13を制御する第2制御装置20Bと、表示装置18を制御する第3制御装置20Cとが備えられている。これら第1制御装置20A、第2制御装置20B、第3制御装置20C等の制御装置20には、センサやスイッチ等が接続されており、センサで検出された検出信号やスイッチの状態を示すスイッチ信号は制御装置20を介して車両用通信ネットワークN1に出力される。
【0018】
第1制御装置20Aは、例えば、アクセルペダルを操作したときのアクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダルセンサ、変速用のシフトレバーを操作したときのシフトレバー位置を検出するレバー検出センサ、クランク位置を検出するクランク位置センサ等の信号に基づいてエンジンの回転数等を制御する。第2制御装置20Bは、3点リンク機構13を操作する操作部材(操作レバー)の操作量を検出するポジションレバーセンサ等に基づいて3点リンク機構13の昇降を制御する。また、第3制御装置20Cは、センサ、スイッチ等の信号に基づいて表示装置18を制御するものであって、例えば、表示装置18に設けられた指針計の動き、LEDのオン/オフ、液晶表示部の表示等を制御する。第1制御装置20A、第2制御装置20B、第3制御装置30Cの制御は上述したものに限定されない。なお、アクセスポイント装置4及び第1制御装置20A、第2制御装置20B、第3制御装置30C等の電子機器は、トラクタ2に搭載されたバッテリーの電力により作動する
図1に示すように、アクセスポイント装置4は、トラクタ2に設けられた車両用通信ネットワークN1と、携帯端末3などのトラクタ2の外部のネットワーク(外部通信ネットワーク)とを繋ぐもので、コネクタ等によってトラクタ2に着脱自在に装着されている。このアクセスポイント装置4は、携帯端末3との無線通信を行う通信部(通信モジュール)30と、通信部30の制御を行う制御部31とを備えている。
【0019】
通信部30は、通信規格であるIEEE802.11シリーズに準拠したWi−Fi(登録商標)による無線通信を行うもので、外部から受信したデータ(信号)をアクセスポイント装置4の通信方式に変換して制御部31に出力したり、制御部31から送信されたデータ(信号)をIEEE802.11シリーズの通信方式に変更して外部に出力する。つまり、通信部30は、外部から受信したデータ(信号)を制御部31に出力したり、制御部31から出力されたデータ(信号)を外部に送信する。
【0020】
この通信部30は、記憶部32を備えている。記憶部32は、不揮発性のメモリ等から構成され、ネットワーク上において設定された固有のMACアドレス、アクセスポイント装置4を識別するための識別子(例えば、サービスセット識別子、即ち、SSID)、暗号化キー(ネットワークキー)等を記憶している。
制御部31は、無線通信を開始するウェイクアップ信号を通信部30に出力することによって通信の開始を指令したり、無線通信を終了するスリープ信号を通信部30に出力することによって通信の終了を指令する。また、制御部31は通信部30とのデータ送受信に関する設定値等を通信部30に送信することにより通信部30におけるデータ送受信の間隔やデータ長などを変更する。また、制御部31は、車両用通信ネットワークN1から受信したデータをアクセスポイント装置4の通信方式に変換して、車両用通信ネットワークN1から受信したデータを通信部30に送信する。なお、制御部31の動作は上述した
ものに限定されない。
【0021】
この制御部31は、車両用通信ネッワークN1から取得した様々なデータを一時的に記憶する記憶部36を備えている。また、制御部31に設けた記憶部36と通信部30に設けた記憶部32とを一体化してもよい。
図2は、携帯端末がアクセスポイント装置に接続する流れを示したものである。
携帯端末3をアクセスポイント装置4に接続するにあたっては、まず、アクセスポイント装置4及び電子機器を起動する。具体的には、トラクタ2のイグニッションスイッチ35をオンし、アクセスポイント装置4の通信部30及び制御部31、トラクタ2の電子機器にバッテリーからの電力を供給することにより、アクセスポイント装置4及び電子機器を起動する。
【0022】
そして、アクセスポイント装置4の起動後、制御部31はイグニッションスイッチ35がオンになった信号を車両用通信ネットワークN1介して取得すると(S1)、当該制御部31は通信部30にウェイクアップ信号を出力する(S2)。通信部30は、制御部31からのウェイクアップ信号が入力されると、通信処理を開始して、自己のMACアドレス及び識別子であるSSIDを含む送信信号、即ち、ビーコンを外部に出力する通信処理を開始する(S3)。携帯端末3は、通信部30から外部に送信されたビーコンを受信すると、ビーコンに含まれるSSIDを液晶パネル等で構成された表示部3aに表示する(S4)と共に、表示部3aにネットワークキーの入力画面を表示する(S5)。携帯端末3の入力画面にネットワークキーが入力された後、当該携帯端末3からネットワークキーがアクセスポイント装置4に送信され(S6)、当該アクセスポイント装置4に携帯端末3から送信されたネットワークキーが入力されると、通信部30は、携帯端末3から送信されたネットワークキーと、記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合(認証)を行う(S7)。通信部30は、ネットワークの照合(認証)が成立すると、携帯端末3との無線通信を確立して相互間でのデータ通信を許可する(S8)。一方、携帯端末3からのネットワークキーと、記憶部32に記憶されたネットワークキーとの照合が不成立になると、通信部30は、携帯端末3との無線通信の確立をせず、データ通信は許可しない(S9)。なお、通信部30と携帯端末3との無線通信の確立する処理は上述したものに限定されず、ネットワークキーを入力画面に表示する処理等は省略してもよい。
【0023】
このように、通信部30によって携帯端末3との無線通信が確立されると、記憶部36に記憶されたデータ(トラクタ2の車両用通信ネットワークN1に流れるデータ)を通信部30を介して携帯端末3に送信することができる。また、携帯端末3のデータを通信部30、制御部31、或いは、トラクタ2に搭載した制御装置20やその他の機器に送信することができる。
【0024】
さて、携帯端末3をアクセスポイント装置4に接続することによって、携帯端末3とアクセスポイント装置4を搭載したトラクタ2との間で双方向のデータ通信を行うことができる。携帯端末3とアクセスポイント装置4とのデータ通信を行ってトラクタ2側のデータを取得することにより、トラクタ2がどのような状態であるかを把握することができるが、そのためには、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信の確立を行わなければならない。しかも、携帯端末3とアクセスポイント装置4との無線通信の確立後、携帯端末3側で受信したデータを演算(分析、変換等)しなければ、トラクタ2がどのような状態であるか把握することが難しい。そこで、この実施形態では、
図1に示すように、アクセスポイント装置4の制御部31に状態取得部33と情報付加部34とを設けることにより簡単にトラクタ2の状態を携帯端末3側で把握できるようにしている。
【0025】
以下、制御部31の状態取得部33及び情報付加部34について詳しく説明する。
状態取得部33は、制御部31に格納されたプログラム等から構成されている。状態取得部33は、トラクタ2の様々な状態を取得するものである。状態取得部33は、車両用通信ネットワークN1に流れる検出信号、スイッチ信号、指令信号(制御信号)、報知信号のうち、指令信号を除く信号を取得する。例えば、状態取得部33は、検出信号として燃料センサで検出された燃料値を取得し、スイッチ信号としてイグニッションスイッチ35のオン又はオフを示す信号を取得し、報知信号としてバッテリーが上がっていることを
示す信号を取得する。なお、状態取得部33が取得する信号は、トラクタ2の状態を得ることができる信号であれば上述したものに限定されない。
【0026】
情報付加部34は、状態取得部33によって取得したトラクタの状態に基づいてトラクタの状態を示すステータス情報をアクセスポイント装置4の通信部30から送信される送信信号に付加する。ここで、送信信号とは、携帯端末3とアクセスポイント装置4(通信部30)との無線通信を確立する際に用いられるブロードキャストの信号であって、SSIDなど識別子を含む信号である。具体的には、情報付加部34は、送信信号に含まれる識別子(例えば、SSID)にステータス情報を付加する。特に、情報付加部34は、トラクタの状態が変化したときに、SSID等の識別子にステータス情報を付加する。なお、制御部30等にはトラクタのステータス情報を表す文字、数字、記号等が予め記憶されている。
【0027】
図3は、情報付加部34によってSSIDを変化させた例を示した図である。
図3(a)は、イグニッションスイッチの変化によるSSIDの変化を示したものであり、
図3(b)は、警告の有無によるSSIDの変化を示したものである。
図3に用いて情報付加部34について詳しく説明する。
図3(a)に示すように、時点P1においてイグニッションスイッチ(IG−SW)がオンすると、トラクタ2の制御装置20が起動する(制御装置「ON」)と共に、通信部30が起動して携帯端末3への送信信号(ビーコン)の送信は開始される(通信「ON」)。ここで、通信部30に記憶されたSSIDの名称が、例えば、「KUBOTA」である場合、通信部30は、当該「KUBOTA」を示すSSIDを外部に送信する。そして、時点P2においてイグニッションスイッチ35がオフとなると、トラクタ2の制御装置20は停止する。
【0028】
上述したように時点P1から時点P2にかけて、状態取得部33は、イグニッションスイッチ35がオンであるトラクタの状態と、イグニッションスイッチ35がオフとなったトラクタの状態とを逐次取得しており、情報付加部34は、このように状態取得部33が取得したトラクタの状態を監視している。
情報付加部34は、時点P2にてイグニッションスイッチ35がオンからオフに変化しているため、SSID(識別子)である「KUBOTA」の末尾に、イグニッションスイッチ35がオフになったことを示す「S」をステータス情報として加える。そして、情報付加部34は、ステータス情報を加えた新しいSSIDである「KUBOTA−S」を通信部30に出力し、通信部30は情報付加部34から送信されたSSID「KUBOTA−S」を外部に送信する。なお、「KUBOTA」と、ステータス情報である「S」との間に示される記号「−」は、予め記憶部32に記憶されている識別子の表記(KUBOTA)と、新に加えられた識別子の表記(S)とをユーザ等が見て分かるようにするための区切りである。
【0029】
このように、イグニッションスイッチ(IG−SW)の変化時にSSIDを変化させることにより、携帯端末3側では、アクセスポイント装置4から送信されるSSIDを表示部3aに表示するだけで、イグニッションスイッチ35がオフになったこと、言い換えれば、トラクタ2のエンジンが停止してトラクタ2が稼働停止したことを把握することができる。
【0030】
図3(b)に示すように、時点P1においてイグニッションスイッチ(IG−SW)をオンし、トラクタ2を作動している状況下、即ち、トラクタ2の制御装置20が作動している状況下において、時点P3において警告の信号が車両用通信ネットワークN1を介して制御部31に入力されたとする。即ち、状態取得部33が時点P3において警告の信号を取得したとする。情報付加部34は、時点P3にて警告の信号が入力されたため、SSID(識別子)である「KUBOTA」に、警告が発生したことを示す「E」をステータス情報として加える。そして、情報付加部34は、ステータス情報を加えた新しいSSIDである「KUBOTA−E」を通信部30に出力し、通信部30は情報付加部34から送信されたSSID「KUBOTA−E」を外部に送信する。
【0031】
このように、警告が発生時にSSIDを変化させることにより、携帯端末3側では、ア
クセスポイント装置4から送信されるSSIDを表示部3aに表示するだけで、警告が発生したことを把握することができる。
なお、上述した実施形態では、アクセスポイント装置4に予め記憶されたSSID(例えば、KUBOTA)の末尾に、ステータス情報を示す文字等(例えば、SやEなど)を加えていたが、ステータス情報を示す文字等は、アクセスポイント装置4に予め記憶されたSSIDのどこに加えてもよい。アクセスポイント装置4に予め記憶されたSSIDである「KUBOTA」の先頭や中途部にステータス情報である文字等を付加することにより、例えば、新たなSSIDを「S−KUBOTA」としてもよいし、「KUBOSTA」としてもよい。
【0032】
以上、アクセスポイント装置4は、状態取得部33と、情報付加部34と、通信部30とを備えているため、予め定められた識別子を含む送信信号に作業機の状態を示すステータス情報を付加して、通信部30が携帯端末3に対してビーコン等の送信信号を出力するだけで、作業機の状態を携帯端末3に知らせることができる。特に、情報付加部34は、作業機の状態が変化した場合に、変化後のステータス情報を送信信号に付加し、通信部は、ステータス情報が付加された送信信号を携帯端末に送信するため、作業機が変化したことを携帯端末3にて把握することができる。ここで、送信信号に含まれる識別子(SSID)にステータス情報を付加しているため、作業者は無線通信で用いられる識別子を見るだけで作業機の状態を把握することができる。言い換えれば、送信信号に含まれる識別子(SSID)にステータス情報を付加することによって識別子を変更しているため、変更後の識別子(SSID)を見ることによって作業機の状態を把握することができる。
【0033】
例えば、上述したように、アクセスポイント装置4は、イグニッションスイッチ35がオフになったことをSSIDに付加して送信しているため、このSSIDによりトラクタが稼働状態から非稼働状態に変化したことを把握することができる。また、上述したように、アクセスポイント装置4は、警告が発生したことをSSIDに付加して送信しているため、トラクタに警告が発生したことを把握することができる。
【0034】
通信部30は、作業機の稼働停止後、即ち、イグニッションスイッチのオフ後に、ステータス情報が付加された識別子(例えば、SSID)を携帯端末3に送信するため、作業機を停止させた後に当該作業機の状態を把握することができる。
さて、上述した実施形態では、イグニッションスイッチ35をオフした状況下、即ち、制御装置20が作動を停止した状況下でも通信部30は連続的に通信処理、ビーコンを継続して出力することになっているが、通信部30は所定時間以上(例えば、数分以上)、制御装置20が作動を停止した場合には、ビーコンを出力する通信処理を間欠的に行う。言い換えれば、通信部30は、トラクタが非稼働状態であるときには携帯端末3との通信処理を間欠的に行う。例えば、
図4に示すように、時点P2にてイグニッションスイッチ35がオフとなり、トラクタが非稼働状態(制御装置が作動停止状態)になってから数分が経過して時点P4になったとき、通信部30の通信処理、即ち、ビーコンを外部へ出力する処理等の通信処理は間欠的に実行される。例えば、時点P4の経過後は、制御部31はウェイクアップ信号とスリープ信号とを所定の時間間隔で繰り返し通信部30に出力し、通信部30による通信処理を間欠的に実行する。説明の便宜上、通信部30が間欠的に通信処理を行っている処理のことを間欠通信処理という。
【0035】
さて、通信部30は、当該通信部30が通信処理を行った総時間を算出する時間算出部37を備えている。この時間算出部37はタイマで構成され、
図4に示すように、通信部30が間欠通信処理を実行している状況下で、ウェイクアップしている時間T1を積算して、その積算値を総時間(間欠総時間)する。制御部31は、時間算出部37で算出された間欠総時間を監視し、間欠総時間が予め定められた時間(限界時間)を超えると、通信部30の通信処理、即ち、無線通信を完全に停止する。ここで、限界時間は、通信部30が長期間に亘って間欠通信処理を行った際に消費される総消費電力等に基づいて算出されたもので、限界時間を越えて通信部30が間欠通信処理を続けると、バッテリーに充電された電力が消費されて、バッテリーの電力によってトラクタ2が作動しなくなってしまうことを防止するために設定されたものである。即ち、限界時間は、バッテリー上がりを防
止するために設けられたもので、間欠総時間が限界時間以内であれば、バッテリーの電力によるトラクタ2の作動は可能である。
【0036】
具体的には、
図1に示すように、トラクタにはバッテリーと通信部30とを繋ぐ電源供給ラインLが設けられている。この電源供給ラインLは、イグニッションスイッチ35がオフになった状態でも通信部30及び制御部31等に電力を供給するラインである。この電源供給ラインLには、スイッチ38が設けられている。このスイッチ38は、制御部31によってオン、オフされるもので、間欠総時間が限界時間以内であるときは、スイッチ38はオンとなっていてバッテリーの電力は通信部30に供給される。さて、制御部31は、時間算出部37で算出された間欠総時間が限界時間に達すると、スイッチ38をオンからオフに切り換え、通信部30への電力供給を完全に停止する。これにより、通信部30にはバッテリーからの電力が供給されないためバッテリー上がりを防止することができる。
【0037】
さて、時間算出部37は、イグニッションスイッチ35がオフであるときは間欠総時間のカウントを続ける。ここで、イグニッションスイッチ35がオフからオンとなり、エンジンが稼働すると、エンジンの稼働によってバッテリーに電力が供給されて充電が進むため、時間算出部37は、間欠総時間を初期化する。言い換えれば、間欠総時間を零、即ち、間欠総時間をリセットする。つまり、トラクタが非稼働状態から稼働状態に変化すると、時間算出部37は、間欠総時間を零にする。なお、トラクタのエンジンが稼働すると、制御部30はスイッチ38をオフからオンに切り替える。
【0038】
以上、アクセスポイント装置4は、通信処理を行った総時間を算出する時間算出部37とを備えているため、制御部31は、時間算出部37が算出した総時間を監視して、この総時間が非常に長くなった場合に通信部30による無線通信を停止することができる。これにより、例えば、携帯端末3を操作する作業者(ユーザ)がアクセスポイント装置4との無線通信の接続して双方向のデータ通信を行った後、無線通信の切断を失念して通信状態が長期間に亘った場合に自動的に無線通信を切断することができ、バッテリーの消耗を防止することができる。
【0039】
また、通信部30は、作業機が非稼働状態になったときには携帯端末3との通信処理を間欠的に行っているため、作業機が非稼働状態であっても携帯端末3をアクセスポイント装置4に接続することができると共に、通信処理時での消費電力を抑えることができる。しかも、時間算出部37は、通信処理を間欠的に行っている間の総時間(間欠総時間)を算出し、間欠総時間が所定時間以上となったときに制御部31によって通信部30による無線通信を停止しているため、作業機が非稼働状態において、長期間に亘って携帯端末3がアクセスポイント装置4に接続しないことによる影響によってバッテリーが上がってしまうことを防止することができる。
【0040】
時間算出部37は、作業機が非稼働状態から稼働状態に変化した際に総時間(間欠総時間)を初期化しているため、作業機を稼働状態にする毎に間欠総時間を初期値である零に戻すことができ、携帯端末3とアクセスポイント装置2とで行われる通信処理を継続的に実施することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態のアクセスポイント装置4は、作業機の稼働情報を収集する情報収集部39を備えている。この情報収集部39は制御部31に格納されたプログラム等から構成されている。第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0041】
情報収集部39は、作業機がトラクタ、コンバイン、田植機などの農業機械である場合、車両用通信ネットワークを介して、農業機械が動作しているときの農作業に関する様々な農作業データを稼働情報として自動的に収集する。例えば、トラクタ2の後部に作業装置14として耕耘装置が連結されてトラクタ2が動作したときは、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータが車両用通信ネットワークに出力される。情報収集部39は、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータを農作業データとして取得する。なお、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深等は、トラクタ2や耕耘装置に装着
されたセンサ等の電子機器により検出される。
【0042】
また、作業装置14が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置である場合は、車速、エンジン回転数、散布量(肥料散布量、農薬散布量、播種散布量)などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、情報収集部39は、車速、エンジン回転数、肥料散布量、農薬散布量、播種散布量を農作業データとして取得する。なお、肥料散布量、農薬散布量、播種散布量等もトラクタ2や肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置に装着された電子機器等により検出される。或いは、作業装置14が収穫装置である場合は、車速、エンジン回転数、収穫量などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、情報収集部39は、車速、エンジン回転数、収穫量を農作業データとして取得する。収穫量もトラクタや収穫装置に装着された電子機器により検出される。この情報収集部39によって収集された農作業データは、記憶部36に一時的に記憶される。記憶部36には、トラクタ2の作動時に農作業データが逐次、蓄積される。情報収集部39は、収集した農作業データを通信用のデータに演算する。車両通信ネットワークのデータ(農作業データ)は、数ms間隔で流れており、農作業データとしてはデータ量が膨大となることがある。そのため、情報収集部39では、収集した農作業データを統計処理等によって演算して、例えば、1秒〜数十秒の単位のデータへと変換し、変換したデータを記憶部36に記憶する。
【0043】
情報付加部34は、情報収集部39が車両通信ネットワークから収集したデータを通信部30を介して携帯端末3に送信する準備が完了したことを示す完了情報を送信信号に付加する。即ち、情報付加部34は、通信部30から携帯端末3に送信される信号のうち、ブロードキャストのために送信される信号(送信信号)に完了情報を付加する。具体的には、情報付加部34は、送信信号に含まれる識別子(例えば、SSID)に完了情報を付加する。
【0044】
図5は、第2実施形態における情報付加部34によってSSIDを変化させた例を示した図である。
図5を用いて情報付加部34について詳しく説明する。
図5に示すように、時点P1においてイグニッションスイッチ(IG−SW)がオンすると、トラクタ2の制御装置20が起動し、農作業データに対応するデータが車両通信ネットワークに信号が出力されると共に、情報収集部39による収集が開始される(収集「ON」)。また、通信部30は、起動し携帯端末3への送信信号(ビーコン)の送信は開始される(通信「ON」)。ここで、通信部30に記憶されたSSIDの名称が、例えば、「KUBOTA」である場合、通信部30は、当該「KUBOTA」を示すSSIDを外部に送信する。そして、時点P2においてイグニッションスイッチ35がオフとなると、トラクタ2の制御装置20は停止し、農作業データに対応するデータが車両通信ネットワークに流れなくなる。ここで、時点P2では、情報収集部39による車両通信ネットワークに流れるデータの収集は終了するものの、情報収集部39は、収集したデータの演算、即ち、通信用のデータ(通信データ)に変換する処理は進める。そして、時点P2から所定時間経過後の時点P5に通信データに変換が終了して、収集した農作業データが通信部30を経て携帯端末3に送信できる状態になると、情報収集部39は情報付加部34に携帯端末3に送信する準備が完了したことを通知する。情報付加部34は、情報収集部39からの通知を受けて、SSID(識別子)である「KUBOTA」に、農作業データの送信準備が整ったことを示す「G」を完了情報として加える。そして、情報付加部34は、完了情報を加えた新しいSSIDである「KUBOTA−G」を通信部30に出力し、通信部30は情報付加部34から送信されたSSID「KUBOTA−G」を外部に送信する。なお、「KUBOTA」と、完了情報である「G」との間に示される記号「−」は、予め記憶部32に記憶されている識別子の表記(KUBOTA)と、新に加えられた識別子の表記(G)とをユーザ等が見て分かるようにするための区切りである。
【0045】
このように、情報収集部39によって収集した農作業データ(稼働情報)の送信の準備が完了した時にSSIDを変化させることにより、携帯端末3側では、アクセスポイント装置4から送信されるSSIDを表示部3aに表示するだけで、携帯端末3側で農作業データの送信準備が整ったことを、言い換えれば、アクセスポイント装置4にアクセスすることにより、記憶部36に一時的に記憶されている農作業データを全て取得することがで
きることを把握することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、イグニッションスイッチ(IG−SW)をオフした時点で制御装置20の作動が停止して車両通信ネットワークには、作業機(トラクタ)の稼働情報が流れなくなっていたが、制御装置20は、イグニッションスイッチ35のオフ後に直ちに動作が停止するのではなく、大凡、数十ms程度の作動した後、作動が停止してもよい。即ち、
図6に示すように、制御装置20は、イグニッションスイッチ35をオフした時点2から時間T3経過後に作動を停止する。
図6に示すように、情報収集部39の作動停止、即ち、上述した演算も含む収集処理の終了は、少なくともトラクタ2を制御する制御装置20の作動停止よりも遅い。
【0047】
これによれば、アクセスポイント装置4は情報収集部39を備えているため、情報収集部39で収集した作業機の稼働情報(例えば、農作業データ)を携帯端末4に送信することができ、携帯端末4側で農作業データの整理をすることができる。この場合、情報付加部34は、情報収集部39で収集した稼働情報を携帯端末4に送信する準備が完了したことを示す完了情報をSSID(識別子)に付加するため、SSIDを見ただけで、アクセスポイント装置4側で作業機の稼働情報を送信する準備ができたことを把握することができる。情報収集部39は、作業機に搭載された複数の電子機器から出力された信号を稼働情報として取得すると共に電子機器の作動停止後に稼働情報の収集の作動を停止するため、電子機器から出力された信号、即ち、稼働情報を取りこぼしなく取得することができる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
アクセスポイント装置4及び作業機2の通信システム1において、作業機2は、トラクタ2に限らず、コンバイン、田植機などの農業機械であってもよいし、バックホーなどの建設機械であってもよい。また、作業機2の通信システム1において、携帯端末3とアクセスポイント装置4とのデータのやり取りは、上述した作業情報の送受信に限定されず、例えば、携帯端末3がアクセスポイント装置4に制御信号等を出力して作業機2を動作させるようなものであっても、その他、作業機2と携帯端末3との間でアクセスポイント装置4を介して何らかの通信を行うものであれば、どのようなものであってもよい。
【0049】
また、アクセスポイント装置4は、状態取得部33、情報付加部34、時間算出部37及び情報収集部39の全てを備えるものでなくても、状態取得部33及び情報付加部34、時間算出部37、情報収集部39のいずれかを備えたものであってもよい。また、アクセスポイント装置4の通信部30は、作業機が非稼働状態であるときに間欠通信処理を行わないものであってもよい。
【0050】
上述した実施形態では、アクセスポイント装置4に設定された識別子(SSID)にステータス情報を付加して送信信号としていたが、これに限定されず、識別子を含む送信信号にステータス情報を付加する方法であればどのような方法であってもよい。例えば、識別子を含むビーコンを携帯端末3に送信するに際して、ビーコンを構成するビーコンフレームの一部にステータス情報を付加してもよい。
【0051】
また、アクセスポイント装置4から携帯端末3に向けて送信する識別子にステータス情報を付加する方法、即ち、識別子を変更する方法は、上述したものに限定されず、識別子を示す文字(例えば、KUBOTA)の一部とステータス情報を示す文字(例えば、S、Gなど)とを入れ替えることで新しい識別子としてもよいし、ステータス情報に基づいて予め定められた識別子を示す文字の順番を変更して新たな識別子としてもよいし、或いは、ステータス情報に基づいて新しい識別子の文字自体を変更してもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、スイッチ38をオフして通信部30への電力供給を停止することにより通信部30を完全に停止していたが、この方法に限定されず、間欠総時間が所定以上となったときに通信部30の通信処理を連続的に停止する方法であればどのような方法であってもよい。例えば、間欠総時間が所定以上となったときに通信部30を連続
的にスリープ状態にすることによって通信部30を停止してもよい。また、間欠総時間は、通信部30がウエイクアップしている総時間としていたが、通信部30がビーコンを出力するために処理に入ってからビーコンを停止する処理に入った総時間、即ち、ビーコンを出力した物理的な時間ではなく、処理に掛かった時間であってもよい。