特許第6223103号(P6223103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6223103-ロータリ耕耘装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223103
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ロータリ耕耘装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/08 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   A01B33/08 Z
   A01B33/08 K
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-208704(P2013-208704)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-70817(P2015-70817A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 義明
(72)【発明者】
【氏名】土棟 志龍
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−014604(JP,U)
【文献】 特開平08−126426(JP,A)
【文献】 実開昭61−191701(JP,U)
【文献】 特開2005−341875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/00−33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動ケースの下端部とサポートフレームの下端部との間に、耕耘爪を放射状に所定間隔で装着した耕耘ロータを軸支したロータリ耕耘装置において、
前記サポートフレームの下端部の前記耕耘ロータの一端を保持する軸受部の潤滑用オイル貯留部である第1オイル貯留部と、該第1オイル貯留部とは別に第2オイル貯留部を設け、第1オイル貯留部と第2オイル貯留部とはパイプ材により連通されていて、第2オイル貯留部はオイル供給口が設けられているとともに、外部よりオイル量が確認可能である透明または半透明な部材で構成されていて、潤滑用オイル貯留部である第1オイル貯留部より上方のサポートフレームの内側に設けられていて、前記パイプ材はサポートフレームの上方部に設けた外側と内側を貫通した穴部に挿通され、第1オイル貯留部と第2オイル貯留部は連通されていて、サポートフレーム外側に位置する部分はガード部材によって保護されていることを特徴としたロータリ耕耘装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて使用される農作業機であり、複数の耕耘爪を設けた耕耘ロータを回転させ耕耘するロータリ耕耘装置に関する。詳細には、ロータ部の軸受部の給油に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ耕耘装置の左右方向の複数の耕耘爪を設けた耕耘ロータは、一端を耕耘ロータを駆動するためのスプロケットやチェーン等が収容された伝動ケースの軸受部で保持して、他端をサポートフレームの軸受部で保持されたロータリ耕耘装置の軸受部等の給油に関し、オイル貯留部に透明部材を設け、オイル状態を容易に確認できる農作業機として、特許第4268566号公報が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4268566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のロータリ耕耘装置の耕耘ロータの軸受部は、動力が伝達される伝動ケース側は伝動ケース内の潤滑オイルにより十分に潤滑が行われているが、他方のサポートフレーム側は軸受部のスペースを大きくすると耕耘部より外側に突出する部分が大きくなり、突出部の寸法分残耕が残ることになり、スペースを大きくできなく、潤滑オイルの貯留スペースも十分とは言えない状態であった。また、軸受部は耕耘ロータに近接しているため、外部との衝突や接触が頻繁に起きるため、剛性や耐摩耗性を考慮した構成としなければならないため、給油口等が小さく給油や点検が行い難い問題や、ガード等を外さなければ点検や給油ができないことから点検給油時期を看過することが多く、故障等の原因となることがあった。
【0005】
特許文献1の農作業機の場合、ガードをオイル貯留部から取り外すと、透明部材が露出してオイルの点検ができるが、ガードを取り外す煩わしさの問題や貯留オイル量を十分確保できた構造とする問題の解決には至っていない。
【0006】
このことから本発明の目的は、耕耘ロータのサポートフレーム側の軸受部のオイル量を容易に確認が可能で、給油作業も容易に行え、軸受部の潤滑オイル量を十分に確保できるロータリ耕耘装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、伝動ケースの下端部とサポートフレームの下端部との間に、耕耘爪を放射状に所定間隔で装着した耕耘ロータを軸支したロータリ耕耘装置において、前記サポートフレームの下端部の前記耕耘ロータの一端を保持する軸受部の潤滑用オイル貯留部である第1オイル貯留部と、該第1オイル貯留部とは別に第2オイル貯留部を設け、第1オイル貯留部と第2オイル貯留部とはパイプ材により連通されていて、第2オイル貯留部はオイル供給口が設けられているとともに、外部よりオイル量が確認可能である透明または半透明な部材で構成されていて、潤滑用オイル貯留部である第1オイル貯留部より上方のサポートフレームの内側に設けられていて、前記パイプ材はサポートフレームの上方部に設けた外側と内側を貫通した穴部に挿通され、第1オイル貯留部と第2オイル貯留部は連通されていて、サポートフレーム外側に位置する部分はガード部材によって保護されていることを特徴としたロータリ耕耘装置を提案する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、軸受部の第1オイル貯留部と、第1オイル貯留部とは別に第2オイル貯留部を設けパイプ材により連通した構造により、第1オイル貯留部のオイル量に加え第2オイル貯留部のオイルを潤滑オイルとして機能させることができ、第1オイル貯留部のスペースを変更せずに潤滑オイル量を十分に確保することができる。また、第1オイル貯留部から離れたスペースの制約のないところに第2オイル貯留部を設けることが可能であるため、オイル供給口を十分に確保可能であり、給油が容易に行える構造とすることができる。
【0011】
また、第2オイル貯留部は、外部よりオイル量が確認可能である透明または半透明な部材で構成されていると、ガード等を外すことをせずに容易にオイル量が点検可能である。
【0012】
さらに、第2オイル貯留部は、軸受部の潤滑用オイル貯留部より上方に設けられていることにより、オイルが自然落下供給するとともに、熱等により軸受部の内圧が上昇した場合でも第2オイル貯留部側に逆流され、内圧が上昇せずにオイル漏れ等が阻止される。また、サポートフレームより内側に第2オイル貯留部が位置することにより、外部との衝突や接触が回避できるため、剛性のあるもので構成する必要がないため安価に制作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例のロータリ耕耘装置の右後方からの斜視図である。
図2】本発明の実施例のロータリ耕耘装置の右側面図である。
図3】本発明の実施例の耕耘ロータのサポートフレーム側の軸受部の断面図である。
図4】本発明の実施例の耕耘ロータの要部の縦断面図である。
図5】本発明の別実施例のロータリ耕耘装置の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の一形態を、図示例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例のロータリ耕耘装置の右後方からの全体斜視図、図2は同じく本発明の実施例のロータリ耕耘装置の右側面図、図3は本発明の実施例の耕耘ロータのサポートフレーム側の軸受部の断面図、図4は本発明の実施例の耕耘ロータの要部の縦断面図、図5は本発明の別実施例のロータリ耕耘装置の右側面図である。走行作業車両であるトラクタ(図示せず)の後部には昇降リンクである3点リンク機構が設けられていて、ロータリ耕耘装置の前方部の装着部8に連結され、ロータリ耕耘装置Aは昇降自在に連結されるとともに、トラクタ側から出力される動力によって駆動される。
【0015】
装着部8は、ロータリ耕耘装置Aの前方中央部に設けてあり、上部中央のトップリンクピン81とその下方左右に位置する一対のロアリンクピン80により構成されていて、トラクタ側の3点リンク機構(図示せず)のトップリンクとロアリンクにそれぞれ連結されトラクタに装着される。
【0016】
前方装着部8の中央には、入力ケース1が設けられ、前方に向け入力軸10が突設されている。入力軸10は、トラクタの出力軸とユニバーサルジョイント等で連結されトラクタ側の動力が入力される。
【0017】
入力ケース1から左右側方にそれぞれ一体的に突出して丸パイプで構成されたパイプフレーム2が設けられ、左右一方側(図1においては左側)のパイプフレーム2の突出端部から下方に向かって延設された上下方向の伝動ケース5と、左右他方側のパイプフレーム2の突出端部から下方に向かって延設された上下方向のサポートフレーム3とによってフレーム部を構成していて、左右方向のロータ軸60を回転自在に、伝動ケース5下端部とサポートフレーム3の下端部との間に架設支持している。
【0018】
ロータ軸60には、放射状に一定間隔を設けて耕耘爪61が多数取り付けられ、耕耘ロータ6を構成している。耕耘ロータ6上方部はロータカバー62により覆われていて、後方部はロータカバー62の後端部に前方端部を上下方向回動自在に連結された整地板4が位置し、耕耘ロータ6により耕耘された土壌の飛散を受け止めるとともに整地板4後方部によって整地が行われる。
【0019】
入力ケース1の入力軸10から入力された動力は、入力ケース1に内装されるギヤによって減速され、左右一方側の側方に突設したパイプフレーム2(図1においては左側)内を通る出力軸11により伝動ケース5内に伝達される。伝動ケース5内の出力軸11端部には出力スプロケット50が固着され、伝動ケース5下端部に支持されたロータ軸60の端部にはロータ軸スプロケット52が固着されていて、この間に巻着されたローラチェーン51により動力が伝達されロータ軸60が回転駆動される。
【0020】
伝動ケース5のロータ軸60の支持部は、ベアリングにより回転自在に支持されていて、伝動ケース5内に貯留された潤滑オイルにより潤滑されている。伝動ケース5の上部にはオイル給油口(図示せず)が設けられ、給油された潤滑オイルによりローラチェーン51やベアリングが潤滑される。
【0021】
ロータ軸60のサポートフレーム3側の支持部は、図3に示すようにサポートフレーム3にボルトおよびナット等で取り付けられたベアリングリテーナ77を介してサポートフレーム3に保持されたベアリング70により回転自在に支持されていて、ベアリング70のロータ軸60側にはシール材71が設けられ、ベアリング70の外側には皿状のキャップ72が取り付けられ、シール材71とキャップ72の間にベアリング70の潤滑用のオイルが貯留できるように密閉された空間部を設け第1オイル貯留部74を形成している。キャップ72のさらに外側には、耕耘作業時の外部との衝突や接触から軸受部7を保護するガード73がボルトおよびナット等でキャップ72部を覆うように着脱可能に取り付けられている。
【0022】
ベアリングリテーナ77の上部には、第1オイル貯留部74と連通して設けられた接続パイプ77が上方を向いてガード73の外側に突設して取り付けられている。一方サポートフレーム3の上方部内側には、第2オイル貯留部75が取り付けられていて、第2オイル貯留部75と前記接続パイプ77とをパイプ材76により連通して連結している。サポートフレーム3の上方部には、外側と内側を貫通した穴部が設けられパイプ材76が挿通されサポートフレーム3の外側の第1オイル貯留部74と内側の第2オイル貯留部75とが連結される。パイプ材76のサポートフレーム3の外側に位置する部分はサポートフレーム3に設けたガード部材30により外部との当接や接触から保護されている。
【0023】
第2オイル貯留部75は、潤滑オイルを貯留可能なタンク750とその上方部の解放部を開閉可能な蓋体が設けられたオイル供給口751とで構成されていて、タンク750の側方を保持されサポートフレーム3の内側に取り付けられている。タンク750の底部は下方に突設し内部と連通したパイプ状となっていて、前記パイプ材76が差し込まれ連結される。
【0024】
タンク750に注入された潤滑オイルは、タンク750と第1オイル貯留部74とを連通するパイプ材76内を自然落下して下方の第1オイル貯留部74に達する。そして、第1オイル貯留部74とパイプ材76内が充満されると、第2オイル貯留部75のタンク750内に潤滑オイルが貯留される状態となる。このため、第1オイル貯留部74に潤滑オイルが充満していないと、第2オイル貯留部75のタンク750内に潤滑オイルが貯留されないため、タンク750のオイル量を点検することにより、軸受部7(第1オイル貯留部74)のオイル量の有無を確認できる。オイル注入の際は、第1オイル貯留部74側に空気抜き用のプラグを設けておき、空気を抜きながら注入するとスムーズに注入が行える。
【0025】
点検はオイル供給口751から目視でも確認可能であるが、レベルゲージ等を用いてもよい。透明又は半透明の部材により形成されたタンク750を使用すると、外部から目視することで軸受部7(第1オイル貯留部74)のオイルの有無を容易に確認可能である。パイプ材76は、鉄、非鉄、樹脂材、ゴム材等耐油性のあるパイプ状のものであればよい。
【0026】
また、軸受部7(第1オイル貯留部74)から離れた場所に第2オイル貯留部75を設置できるため、形状や大きさの制限がなく、十分な潤滑オイル量を確保可能である場所に設けることができる。本実施例においては、サポートフレーム3に第2オイル貯留部75を取り付けているが、取り付け場所はこれに限定されることなく、サポートフレーム3の内側方向の位置に設けると外部との衝突や接触が回避しやすくなる。さらに、軸受部7の温度変化により内圧が上下しても、第2オイル貯留部75側に通気孔等を設けることにより一定に圧を保持可能であり、軸受部7の内圧の上昇によるシール部等よりのオイル漏れ等の防止ができる。
【0027】
図5は、本発明の別実施例のロータリ耕耘装置の側面を示したもので、ロータ軸60の軸受部7の第1オイル貯留部74とその上方のサポートフレーム3側面に設けた第2オイル貯留部75aをパイプ材76aで連結連通したもので、第2オイル貯留部75a上方部にはオイル給油や点検を行うためのオイル供給口751aが設けてある。オイルの点検はオイル給油口751aから目視確認可能であるが、レベルゲージ等により行うことも可能である。このように、パイプ材により連通連結した第2オイル貯留部を設けた構成とすることにより、第2オイル貯留部をスペースの制約を受けない場所に設置可能であるため、点検や給油を容易に行え、潤滑オイル量も十分に確保できる構成の取扱い性のよいロータリ耕耘装置が提供可能となる。
【0028】
次に、本発明のロータリ耕耘装置によって耕耘作業を行うには、走行機であるトラクタの3点リンク機構に装着部8のロアリンクピン80及びトップリンクピン81により連結させ、トラクタの3点リンク機構により上下に昇降可能な状態とする。また、トラクタの出力軸とユニバーサルジョイント等で入力軸10と連結させ動力の入力が可能な状態とする。
【0029】
耕耘圃場において、トラクタを操作して耕耘ロータ6を回転させ3点リンク機構を下降させると、耕耘ロータ6の耕耘爪61により土壌が耕耘される。この状態でトラクタを走行させると、順次圃場を耕耘することができる。また、耕耘ロータ6の後方部には整地板4が位置していて、耕耘された土壌表層部を整地しながら作業が行われる。
【0030】
作業時は、入力ケース1や伝動ケース5内に、潤滑オイルが所定量貯留されていて、内装されるギヤ、スプロケット、ローラチェーン等を潤滑して円滑に作動させる。オイル量の確認は、入力ケース1の場合、上部に設けた給油栓と兼用のレベルゲージ等にて確認ができる。伝動ケース5の場合、給油は上部に設けた給油栓から行い、オイル量は下方のレベル位置に設けた確認ボルトを外して確認する。
【0031】
一方、伝動ケース5と対向して設けられ、耕耘ロータ6の一端を支持しているサポートフレーム3の軸受部7側は、軸受部7の第1オイル貯留部74とパイプ材76により連結連通された第2オイル貯留部75の潤滑オイルで潤滑され円滑に駆動される。第2オイル貯留部75は、パイプ材76により連結されているため、配置場所は制約を受けず、本例では軸受部7側を支持しているサポートフレーム3の内側位置のトラクタ運転席より目視確認も可能である場所に取り付けられている。このため、常に作業中も工具等も必要とせずに確認が可能でオイルの補給も容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、トラクタ等の走行機後方に装着されて耕耘作業を行うロータリ耕耘装置に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 入力ケース
10 入力軸
11 出力軸
2 パイプフレーム
3 サポートフレーム
4 整地板
5 伝動ケース
50 出力スプロケット
51 ローラチェーン
52 ロータ軸スプロケット
6 耕耘ロータ
60 ロータ軸
61 耕耘爪
62 ロータカバー
7 軸受部
70 ベアリング
71 シール材
72 キャップ
73 ガード
74 第1オイル貯留部
75 第2オイル貯留部
750 タンク
751 オイル供給口
76 パイプ材
8 装着部
80 ロアリンクピン
81 トップリンクピン
図1
図2
図3
図4
図5