特許第6223133号(P6223133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6223133-熱硬化性樹脂組成物 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223133
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   C08G59/40
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-233316(P2013-233316)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-93905(P2015-93905A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高松 広明
(72)【発明者】
【氏名】山本 恭子
(72)【発明者】
【氏名】東 英雄
【審査官】 江間 正起
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−180065(JP,A)
【文献】 特開平09−137083(JP,A)
【文献】 特開2013−209502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物と、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーとを含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(上記一般式(1)中、X、X及びXはそれぞれ独立に、下記一般式(A)又は(B)で表される置換基を示し、X、X及びXのうち少なくとも1つは下記一般式(A)で表される置換基である。)
(上記一般式(A)及び(B)中、Y〜Yはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、置換若しくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10 の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。mは1〜10の整数であり、nは0〜3の整数である。nが0の場合、Rは水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。nが1〜3の場合、Rは単結合、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。Zは下記一般式(C)で表される置換基を示す。)
(上記一般式(C)中、X及びXは上記一般式(B)で表される置換基を示す。上記一般式(C)中、Y〜Yはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、置換若しくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。mは1〜10の整数である。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸グリシジルの単独重合体又は(メタ)アクリル酸グリシジルとラジカル重合性モノマーとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
一般式(A)、(B)及び(C)においてY、Y、Y及びYが水素原子である、請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(A)、(B)及び(C)において、mが1である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
一般式(A)において、Rが置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光半導体装置は、発光表示装置や照明装置の光源として使用される。光半導体装置は、リードフレームと樹脂成形体で構成された樹脂パッケージに発光素子を搭載し、ワイヤ等で配線後、発光素子を封止用樹脂で覆い作製する。この樹脂パッケージに使用される樹脂成形体は、光を反射させるリフレクタと封止用樹脂を充填するための容器の役割をする。樹脂パッケージは、タブレット型に成形された熱硬化性樹脂組成物をリードフレームにトランスファー成形することにより得られる。
【0003】
リードフレームに熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形する際、加熱や冷却するため、リードフレームと樹脂成形体との線膨張係数の差に起因して、樹脂パッケージに反りが発生してしまう。これにより、その後の工程を進めるのが困難となる。
【0004】
特許文献1では、樹脂パッケージの反りを低減するため、樹脂成形体を形成する熱硬化性樹脂組成物に充填材を配合することを開示している。すなわち充填材を配合することにより、熱硬化性樹脂組成物の線膨張係数を制御することが可能となり、リードフレームとの線膨張係数の差を小さくすることができ、反りを低減できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−035082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱硬化性樹脂組成物に充填材を配合する方法では、タブレットの製造性を保つためには充填材の配合量に限界があるという問題があり、また線膨張係数を低くするために充填材の配合量を多くした場合はトランスファー成形時にゲート詰まりが起こるといった問題があった。
【0007】
そこで本発明は、樹脂パッケージの反りを容易に調整できる熱硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記一般式(1)で示される化合物と、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーとを含むことを特徴とするものである。下記一般式(1)で示される熱硬化性化合物と(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーを組み合わせることで樹脂パッケージの反りを改善することができ、さらに(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーの添加量によって線膨張率を調整することが可能となる。
【0009】
【化1】
(上記一般式(1)中、X、X及びXはそれぞれ独立に、下記一般式(A)又は(B)で表される置換基を示し、X、X及びXのうち少なくとも1つは下記一般式(A)で表される置換基である。)
【化2】
(上記一般式(A)及び(B)中、Y〜Yはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、置換若しくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。mは1〜10の整数であり、nは0〜3の整数である。nが0の場合、Rは水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。nが1〜3の場合、Rは単結合、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。Zは下記一般式(C)で表される置換基を示す。)
【化3】
(上記一般式(C)中、X及びXは上記一般式(B)で表される置換基を示す。上記一般式(C)中、Y〜Yはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン、置換若しくは無置換の炭素数1〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。mは1〜10の整数であり、nは0〜3の整数である。nが0の場合、Rは水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す。nが1〜3の場合、Rは単結合、置換若しくは無置換の炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基又は置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基のいずれかを示す)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂パッケージの反りを調整できる熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例で用いるリードフレームの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の熱硬化性組成物は、上記一般式(1)で示される化合物を含むことを特徴とする。
【0013】
上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示すハロゲンとしては、F、Cl、Br、Iなどが挙げられる。
【0014】
また、上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示す直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0015】
また、上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示す分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、イソヘプチル基、s−ヘプチル基、t−ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s−オクチル基、t−オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、s−ノニル基、t−ノニル基、ネオノニル基、イソデシル基、s−デシル基、t−デシル基、ネオデシル基などが挙げられる
【0016】
また、上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示す脂環式脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカリル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0017】
また、上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示す芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラシル基などが挙げられる。
【0018】
また、上記一般式(A)、(B)及び(C)のY、Y、Y及びYが示す直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の置換基としては、例えばF、Cl、Br、Iなどのハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基などが挙げられる。
【0019】
上記一般式(A)、(B)及び(C)において、Y、Y、Y及びYは、水素原子であることが好ましい。この場合、上記一般式(A)、(B)及び(C)において、Y、Y、Y及びYが水素原子以外である場合に比べて、一般式(1)で示される化合物の粘度が低く容易に取扱うことができる。
【0020】
上記一般式(A)、(B)及び(C)において、mは1〜3の整数であることが好ましく、1〜2の整数であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。特にmが1である場合、容易に原料が入手でき、また、反応性が高いため、短い硬化時間で硬化物を得ることができるという利点が得られる。
【0021】
また、上述したように、上記一般式(A)において、nは0〜3の整数である。この場合、粘度の低い熱硬化性化合物となるため作業上容易に取り扱うことができるという利点が得られる。
【0022】
上記一般式(A)のRが示す直鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基などが挙げられる。
【0023】
また、上記一般式(A)のRが示す分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、イソヘプチル基、s−ヘプチル基、t−ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s−オクチル基、t−オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、s−ノニル基、t−ノニル基、ネオノニル基、イソデシル基、s−デシル基、t−デシル基、ネオデシル基などが挙げられる。
【0024】
また、上記一般式(A)のRが示す脂環式脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカリニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、デカリニレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
【0025】
また、上記一般式(A)のRが示す芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラシル基、フェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン基などが挙げられる。
【0026】
また、上記一般式(A)のRが示す直鎖状脂肪族炭化水素基、分岐鎖状脂肪族炭化水素基、脂環式脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えばF、Cl、Br、Iなどのハロゲン、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基などが挙げられる。
【0027】
上記一般式(A)において、Rが置換若しくは無置換の炭素数3〜10の脂環式脂肪族炭化水素基を示すことが好ましい。この場合、熱硬化性化合物及び、これを用いて得られる硬化物の熱安定性が高いという利点がある。
【0028】
本発明の熱硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーを含むことを特徴とする。(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸グリシジルの単独重合体又は(メタ)アクリル酸グリシジルとラジカル重合性モノマーとの共重合体であることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーは容易に入手可能であり、また、エポキシ樹脂との相溶性が高いという利点がある。
【0029】
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタアクリル酸を意味する。
【0030】
(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーは、具体例として次のような(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーが挙げられる。マープルーフG−0110(重量平均分子量12,000、エポキシ当量170g/eq.、日油社製)、マープルーフG−0150M(重量平均分子量8,000−10,000、エポキシ当量310g/eq.、日油社製)、マープルーフG−2050M(重量平均分子量200,000−250,000、エポキシ当量340g/eq.、日油社製)、マープルーフG−017581(重量平均分子量10,000、エポキシ当量240g/q.、日油社製)、マープルーフG−0250SP(分子量2,000、エポキシ当量310g/eq.、日油社製)等が挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーの含有量は、熱硬化性化合物に対し0.01〜30質量%添加することが好ましい。(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーの含有量が0.01質量%未満の場合には、樹脂パッケージの反りを十分に調整することができず、30質量%を越えると硬化に必要な時間が長くなるなど硬化性に影響が出る事がある。
【0032】
本発明の熱硬化性組成物は、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材をさらに含むことができることを特徴とする。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものでない。
【0034】
(合成例1)
トリグリシジルシアヌレート(日本カーバイド工業社製)480g(1.6mol)を1Lのビーカーに入れ、ビーカーの内温が70℃になるように調整したオイルバスでビーカーを加熱しながらトリグリシジルシアヌレートを撹拌し融解させた。続いて1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(和光純薬社製)20g(0.12mol)を1時間30分かけてビーカーへ投入した。続いて、ビーカーの内容物の温度を70℃に保った状態でさらに30分間撹拌しながら加熱し、組成物を得た。組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製し化合物を得た。化合物のNMRを下記に示す。

H−NMR(CDCl、400MHz):σ
ppm 4.665(dd、 J =3.2、12.0Hz、4H)、4.350−4.305 (m、4H)、4.232(m、2H)、3.967(dd、J=1.2、12.8Hz、2H)、3.613(dd、J=4.0、12.8Hz、2H)、3.373(m、4H)、3.160(m、2H)、2.897(m、4H)、2.815(m、2H)、2.748(m、4H)、2.309(m、2H)、1.903−1.228(m、8H)
【0035】
(実施例1〜4、比較例1)
表1に示す組成になるように、合成例1で得られた化合物と、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマー、無機充填材を配合し、50〜60℃で10分間ロール混練を行い、熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0036】
(リードフレーム)
50mm×50mm×0.15mmの銅製フレームに一般的なエッチングを用いて、リード電極を含む回路を作製した後、この回路にAgめっきを行いリードフレームとした。図1にリードフレームの例を示した。
(サンプル作製)
前記熱硬化性樹脂組成物を成型しタブレットを作製した。前記タブレットと、前記リードフレームを金型温度180℃、圧力0.16MPa、硬化時間2分で加熱、加圧一体成形した後、150℃で2時間の後処理をして、試験片を作製した。
(反り評価)
反り評価は、平滑な板の上で試験片の凸面を下にして、試験片の一角を指で押止し、その対角線上のもう一角の平滑な板からの高さを、定規で測った。
(線膨張率測定)
各熱硬化性組成物を、金型温度180℃、圧力0.16MPa、硬化時間2分で加熱、加圧成形した後、150℃で2時間の後処理を行ない、20mm×2mm×1mmの試験片を作製した。次にBuruker AXS製TMA4000SAを用いて、50℃/minの速度で30℃から250℃まで測定し、各試験片の寸法変化量が得られた。得られた結果の50℃〜170℃までの値から線膨張率を求めた。
【0037】
【表1】
表中の「−」は未配合を示す。
<(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマー>
:マープルーフG−0150M(分子量8,000−10,000、エポキシ当量310g/eq.、日油社製)
:マープルーフG−0110(分子量12,000、エポキシ当量170g/eq.、日油社製)
<無機充填材>
:シリカ(FB−304、平均粒径6μm、電気化学工業社製)
:酸化チタン(CR−90−2、平均粒径0.3μm、石原産業社製)
【0038】
表1の結果より、本発明の熱硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーを添加した本発明の熱硬化性組成物を樹脂パッケージに用いると、樹脂パッケージの反りが低減することが確認された。また、(メタ)アクリル酸グリシジル系ポリマーの添加量により、線膨張率を調整できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の熱硬化性組成物を用いることで、半導体素子パッケージの作製時に現れる反りを低減又は調整することができるため、半導体パッケージに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・リードフレーム
図1