特許第6223175号(P6223175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223175
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】液体入浴剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/23 20060101AFI20171023BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   A61K8/23
   A61Q19/10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-269299(P2013-269299)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124175(P2015-124175A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松井 正
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−096735(JP,A)
【文献】 特開平10−130121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/23
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される無機塩の1種又は2種と水を配合し、無機塩の配合量が50質量%以上、75質量%未満であることを特徴とする液体入浴剤。
[化1]
Na2X・10H2O ・・・(1)
(上式中、XはSO4又はCO3
【請求項2】
無機塩と水を混合し容器に充填する温度が30℃〜50℃であることを特徴とする請求項1記載の液体入浴剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体入浴剤及びその製造方法に関し、詳しくは、特定の無機塩を高濃度に配合し工業的に経済的、高品質、安全に製造可能かつ使用者にとっても好適な液体入浴剤及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機塩を配合する入浴剤は広く知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、主に粉末状又は固形状である。粉末状入浴剤ではその流動性を考慮して、配合する無機塩は無水物もしくは1水和物である。固形状入浴剤においても物性の経時変化の恐れなどから同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−226254号公報
【特許文献2】特開2005−298454号公報
【特許文献3】特開2013−119545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉末状及び固形状の入浴剤は製造時あるいは使用時にその一部の微粒子化した入浴剤が飛散してしまう問題点があった。製造時の微粒子の発生防止、飛散防止及び集塵等の技術開発及び設備導入管理、充填制御等に多大な負担を要するといった課題があった。また、お湯への溶解に時間を要してしまう問題点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、これらの従来の問題点を解決するために、無機塩の種類と配合方法について鋭意検討した。その結果、特定の無機塩と水を配合することにより、これまでの問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される無機塩の1種又は2種と水を配合することを特徴とする液体入浴剤である。
[化1]
NaX・10HO ・・・(1)
(上式中、XはSO又はCO
更に、本発明の液体入浴剤は、上記無機塩の配合量が50質量%以上、75質量%未満であることが望ましい。また、本発明の液体入浴剤の製造方法としては、無機塩と水を混合し容器に充填する温度が30℃〜50℃である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、特定の無機塩と水を配合する液体入浴剤とすることで、特定の無機塩を高濃度に配合し工業的に経済的、高品質、安全に製造可能かつ使用者にとっても好適な液体入浴剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明における無機塩は、下記一般式(1)で表される。
[化2]
NaX・10HO ・・・(1)
(上式中、XはSO又はCO
【0010】
上記一般式(1)で表される無機塩である硫酸ナトリウム10水和物又は炭酸ナトリウム10水和物は、各々の無水物や1水和物に比べ微粒子の飛散が少なく、入浴剤の製造時に好都合である。硫酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム各々の無水物又は1水和物を水と混合する液体入浴剤の製造時には、その過程において別の水和物が一時的に形成してしまうなど、工程の制御が複雑となることがあったが、上記10水和物を用いることによってこの問題を解決することができる。入浴剤を液体とすることで製造時や使用時に粉末状及び固形状の入浴剤のような微粒子の飛散が防げるだけでなく、製造工程においてろ過や吸着精製等が容易になり、入浴剤の品質を向上させることができる。
【0011】
上記一般式(1)で表される無機塩の配合量は、液体入浴剤全量に対し50質量%以上が望ましい。50質量%に満たない場合には、入浴効果を得るために必要となる使用時のお湯中のイオン濃度を一定以上とするために、入浴剤の使用量を多くしなければならず、合理性に欠ける。ただし、75質量%以上では一部の無機塩の溶解が困難となり望ましくない。硫酸ナトリウム10水和物又は炭酸ナトリウム10水和物は、それぞれ単独で配合することも、両者を混合して配合することも可能であるが、炭酸ナトリウム10水和物に比べて硫酸ナトリウム10水和物をより多く配合することが、入浴剤中への無機塩の溶解量の点で有利である。
【0012】
上記一般式(1)で表される無機塩と水を混合し、容器に充填する温度は、30℃〜50℃であることが望ましい。本発明の無機塩の水に対する溶解度が高い温度領域だからである。高温ほど溶解度が高まる塩化カリウム等の他の無機塩に比べ、加熱溶解に要する熱量を節約することができる、また、作業者の火傷に対する危険性低減の点でも優れている。液体であることは製造工程において、粉末状及び固形状の入浴剤に比べて容器への充填が容易であり、異物混入防止のろ過装置や吸着精製、充填量の管理等の点で有利である。
【0013】
本発明の液体入浴剤は、使用時において既に液体であることから、従来の無機塩を含む粉末状及び固形状の入浴剤のようにバスタブの底に沈んでしまいなかなか溶解しないといった不具合を生じず、使用者に不便さを感じさせない。本発明の液体入浴剤は、低温環境化(概ね10℃以下)において配合の無機塩の結晶が析出する場合があるが、例えば使用時前に容器ごとお湯に浮かべるなどして加温すると、析出した結晶は簡単に溶解する。
【実施例】
【0014】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
【0015】
・実施例1〜8、比較例1〜4
表1に示す各成分組成(表中の数字は質量%を示す)の入浴剤を指定の混合温度にて混合しその状態を目視にて観察した。無機塩の飛散の有無、混合状態は下記評価とした。
(無機塩の飛散)
○:無し
×:有り
(混合状態)
○:溶解
×:一部不溶
【0016】
また、パネラー10名に、得られた入浴剤を40g/200リットルの割合で溶解した4
2℃の温浴に5分間入浴させた後、温浴効果を、下記の4段階で評価させた。評価結果は各々最も人数の多かった評価段階を表1に示す。
(温浴効果)
◎:良好
○:やや良好
△:やや不十分
×:不十分
【0017】
【表1】
【0018】
実施例1〜8の液体入浴剤は、調製時に無機塩の飛散がなく良好に溶解し、温浴効果も良好であった。一方、比較例1〜4の1水和物又は無水和物では調製時に無機塩の飛散があり、比較例1〜3では完全溶解には至らなかった。比較例4は80℃で調製し溶解したが温浴効果がやや不十分であった。
【0019】
・実施例9
下記A成分及びB成分を各々40℃にて混合溶解した後に、常法による所定の割合にて各々をろ過しながら容器に充填した。
(A成分)
・硫酸ナトリウム10水和物 68.00質量%
・炭酸ナトリウム10水和物 2.00質量%
・ニンジン抽出物 0.01質量%
・ミネラルウォーター 28.38質量%
・色素 微 量
(B成分)
・ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.80質量%
・ビタミンE 0.01質量%
・香料 0.80質量%
・色素 微 量
得られた二層式の液体入浴剤は、外観も美しく、使用時お湯への溶解が容易でかつ良好な温浴効果が得られた。