特許第6223182号(P6223182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223182
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20171023BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 163/10 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20171023BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01B1/24 A
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J163/10
   C09J201/02
   H01B13/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-511487(P2013-511487)
(86)(22)【出願日】2011年5月26日
(65)【公表番号】特表2013-534691(P2013-534691A)
(43)【公表日】2013年9月5日
(86)【国際出願番号】CA2011000599
(87)【国際公開番号】WO2011147016
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年5月26日
【審判番号】不服2016-11436(P2016-11436/J1)
【審判請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】61/344,116
(32)【優先日】2010年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512305257
【氏名又は名称】メグテック ターボソニック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEGTEC TURBOSONIC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】マクグラス、 ポール
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 宮本 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−36081(JP,A)
【文献】 特開平9−291259(JP,A)
【文献】 実公昭53−33251(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/20- 1/24
C09J 9/02
C09J11/04
C09J163/04
C09J163/10
B03C3/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性接着性組成物を用いて接着で結合された、導電性炭素複合材料の波形の片を含む、湿式電気集塵装置の導電性炭素複合材パネルであって、
該導電性接着性組成物は、ポリ不飽和ビニルエステル樹脂、ポリ不飽和エポキシ樹脂及びポリ不飽和ウレタン樹脂の少なくともひとつを含むポリ不飽和樹脂を含み、
該ポリ不飽和樹脂は、重合後に該導電性炭素複合材の波型の片と同様の耐腐食性及び耐熱変形性を有し、かつ、該樹脂中に均一に分散されたカーボンブラックフィラーを含み、
該導電性炭素複合材料は炭素繊維と熱硬化性樹脂の混合物である、導電性炭素複合材パネル。
【請求項2】
前記ポリ不飽和樹脂がポリ不飽和ビニルエステル樹脂である請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記ポリ不飽和ビニルエステル樹脂がエポキシノボラックビニルエステル樹脂である請求項2に記載のパネル。
【請求項4】
前記組成物が前記カーボンブラックフィラーを10重量%から30重量%の量で含む請求項1に記載のパネル。
【請求項5】
前記組成物が前記ポリ不飽和樹脂のための少なくとも一種の架橋剤を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項6】
前記架橋剤がクミルハイドロパーオキサイドである請求項5に記載のパネル。
【請求項7】
前記組成物が少なくとも一種の硬化促進剤を更に含む請求項1に記載のパネル。
【請求項8】
前記硬化促進剤がナフテン酸コバルトである請求項7に記載のパネル。
【請求項9】
前記組成物がパラフィンワックスとスチレンの溶液を更に含む請求項1に記載のパネル。
【請求項10】
微細に分割されたカーボンブラックフィラーのペーストを、重合後に耐腐食性及び耐熱変形性を有するポリ不飽和樹脂と共に、該樹脂のための架橋剤以外の任意選択の添加剤と、高せん断力のもとに混合して、該樹脂中に該カーボンブラックフィラーと該任意選択の添加剤を十分に分散させて、均一な混合物を生成することを含む方法によって前記導電性接着性組成物が製造される、請求項1に記載の湿式電気集塵装置の導電性炭素複合材パネルの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載のパネルを含む湿式電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素複合材料から作られた湿式電気集塵装置(WESP)の管束のアセンブリィにおいて有用な導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本譲受人に譲渡され、その開示内容が本明細書中に援用される、2010年9月9日に出願された係属中のPCT特許出願番号PCT/CA2010/001404(WO2011/029186)において、導電性の炭素複合材から作られた湿式電気集塵装置の管束のアセンブリィが記載されている。
【0003】
要約すると、導電性の炭素複合材料が波形に成形されて、隣接するパネルの合わせ面の波形が炭素繊維に曝されて摩耗され、隣接する波形の片が隣接する波形部において接着されて、六角形の管束を形成し、これが外側の構造パネルに組み立てられている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、隣接する波形片の隣接する波形の間に接着を完成すると共に、接着された隣接面の間に導電性を付与することに適した導電性接着剤を提供するものである。本発明の導電性接着剤は、耐腐食性及び耐熱変形性を有するポリ不飽和樹脂と、カーボンブラックフィラーとを含有する。このポリ不飽和樹脂は、使用時に、この樹脂によって接着されたエレメントと同様の耐腐食性及び耐熱変形性を有するように選択されることが好ましい。
【0005】
そのようなポリ不飽和樹脂としては、ポリ不飽和ビニルエステル樹脂、ポリ不飽和エポキシ樹脂及びポリ不飽和ウレタンが挙げられる。本発明の導電性接着剤は、湿式電気集塵装置の管束のアセンブリィにおける隣接する波形間の接着を完成するために有用であると共に、隣接する環、重ね継ぎ、およびスカーフの結合などの他種類の結合の間で導電性の結合が必要となる他の構造物においても有用である。本発明には、導電性の炭素複合材からのWESPのアセンブリィのための接着剤の使用が含まれる。
【0006】
湿式電気集塵装置の管束が形成される導電性の波形材料は、温度上昇された飽和ミスト環境及び乾燥環境を含む高腐食性の運転条件のために設計された導電性のハイブリッド複合材料である。このハイブリッド複合材料は、耐腐食性、耐スパーク性及び/または耐熱性を有する。このハイブリッド複合材料は、炭素繊維と熱硬化性樹脂の混合物であり、この熱硬化性樹脂は、電気集塵装置用途を含む、コロナ電圧フラシュオーバー、スパーク、浸食、腐食および電気アークの処理が行われる用途のために開発されたものである。そのような樹脂として熱硬化性ポリビニルエステル樹脂が挙げられる。適当な材料は、更に、本譲受人に譲渡され、その開示内容が本明細書中に援用される、WO2008/154735およびWO2010/108256に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明には以下の態様が含まれる。
〔1〕 重合後に耐腐食性及び耐熱変形性を有するポリ不飽和樹脂と、この樹脂中に均一に分散されたカーボンブラックフィラーと、を含有する導電性接着性組成物。
〔2〕 前記ポリ不飽和樹脂がポリ不飽和ビニルエステル樹脂である前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 前記ポリ不飽和ビニルエステル樹脂がエポキシノボラックビニルエステル樹脂である前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 前記カーボンブラックフィラーが10重量%から30重量%の量で存在する前記〔1〕に記載の組成物。
〔5〕 前記ポリ不飽和樹脂のための少なくとも一種の架橋剤を更に含む前記〔1〕に記載の組成物。
〔6〕 前記架橋剤がクミルハイドロパーオキサイドである前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕 少なくとも一種の硬化促進剤を更に含む前記〔1〕に記載の組成物。
〔8〕 前記硬化促進剤がナフテン酸コバルトである前記〔7〕に記載の組成物。
〔9〕 パラフィンワックスとスチレンの溶液を更に含む前記〔1〕に記載の組成物。
〔10〕 微細に分割されたカーボンブラックフィラーのペーストを、重合後に耐腐食性及び耐熱変形性を有するポリ不飽和樹脂と共に、該樹脂のための架橋剤以外の任意選択の添加剤と、高せん断力のもとに混合して、該樹脂中に該カーボンブラックフィラーと該任意選択の添加剤を十分に分散させて、均一な混合物を生成することを含む、導電性接着性組成物の製造方法。
〔11〕 湿式電気集塵装置における導電性炭素複合材パネルのアセンブリィのための前記〔1〕に記載の組成物の使用。
本発明のポリ不飽和樹脂はWESPにおいて頻繁に遭遇する腐食条件及び熱変形条件に対して耐久性を有すべきである。Vipel F085シリーズのエポキシノボラックビニルエステル樹脂を含む多数の市販のビニルエステル樹脂がこの使用に適したものとして入手可能である。これらの樹脂は耐酸性と耐塩基性を備え、かつ多くの有機溶剤に優れた耐久性を備えた化学骨格を有する。Vipel F085シリーズの樹脂は、通常、汎用のビスフェノールAエポキシビニルエステル樹脂よりも、より高温における液体と蒸気に耐久性を有している。
【0008】
この用途のための、他の市販の入手可能なポリ不飽和ビニルエステル樹脂としてはAshland Hetron 970、Ashland Durakane 470、Interplastic CoREZYN 8730およびReichhold Dion 9480が挙げられる。また、耐腐食性及び耐熱変形性を示すポリ不飽和エポキシ樹脂が使用可能であり、Epon 828、Epon 815及びEpon 9504が挙げられる。更に、耐腐食性及び耐熱変形性を示すポリ不飽和ウレタン樹脂が使用可能であり、Bayer Baypreg FおよびBayer Blendur TP PU 90IK28が挙げられる。
【0009】
導電性接着剤のカーボンブラックフィラー成分は、通常、ペースト形態で添加されるが、ポリ不飽和ビニルエステル樹脂を含む組成物中にカーボンブラックの高充填を許容する成分である。そのような入手可能な市販品は、Plasticolors HC−21109である。あるいは、市販の入手可能なカーボンブラック製品として、Degussa/Evonik Printex XE2およびTimcal Ensaco 350Gが挙げられる。通常、この組成物中におけるカーボンブラックフィラーの含有量は、約10重量%から約30重量%である。
【0010】
本発明の接着性組成物を生成するために、カーボンブラックフィラーは、架橋剤以外の他の添加剤と共にポリ不飽和ビニルエステル樹脂と高せん断力で混合され、樹脂基材中においてカーボンブラックフィラーと他の添加剤が十分かつ均一に分散されて、均一な混合物となる。
【0011】
基材樹脂及びカーボンブラックのペーストに加えて、本発明の導電性接着剤は、ポリ不飽和ビニルエステル樹脂の硬化に役立つ多くの添加剤を含有することができる。そのような材料としては、クミルハイドロパーオキサイド等の主架橋剤、並びに、ナフテン酸コバルトおよびジメチルメタクリレート等の重合促進剤が挙げられる。
【0012】
存在させてもよいプロセス添加剤としては、更にパラフィンワックスとスチレンの溶液が挙げられる。この溶液は接着性の波形が硬化する間に空気を吸蔵することを防止するように作用する。
【0013】
ポリ不飽和ビニルエステル樹脂とカーボンブラックの均一混合物は、その成分を分離させることなく、将来の使用のために貯蔵される。表面間の接着を完成するために接着性組成物を塗布する際に、クミルハイドロパーオキサイド等の架橋剤が添加されて、そこで分散され、表面に塗布された配合物は、人手や、ローラー、ブラシ、スクイージ等の任意の都合の良い手段によって、互いに接着され、ポリ不飽和ビニルエステル樹脂が硬化されて、互いに隣接する表面が接着される。そのような時間依存型触媒系は、温度活性型触媒によって代替してもよい。
【実施例】
【0014】
実施例
【0015】
この実施例は、本発明によって提供される接着性組成物を説明するものである。
【0016】
次の成分から配合物を調製した。
100phrのAOC Vipel−F085−ASA−DO、
15phrのPlasticolors HC−21109、
0.4phrのナフテン酸コバルト、
0.2phrのDMA。
【0017】
Vipel−F085樹脂に対して、ナフテン酸コバルト、DMA及びPlasticolors HC−21109を添加し、この組成物を多羽根インペラーを用いて20分間混合した。混合中、インペラーを連続的に上昇・下降させて、ポケット部の材料の過熱を防止した。混合操作中、組成物の温度は30℃未満に維持された。
【0018】
この組成物を用いた際、2.0phrのNOVOX CHP(クミルハイドロパーオキサイド)を添加した。
【0019】
開示の概要
本開示を纏めると、本発明は、導電性炭素複合材から形成された湿式電気集塵装置の管束のエレメントを接着するために有用な導電性接着剤を提供するものである。本発明の範囲内であれば、改良物も可能である。