(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応工程が、コンタクトレンズ鋳型アセンブリ内で重合性組成物をキャスト成型してポリマーレンズ体を形成することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
前記ポリマーレンズ体中又は前記ヒドロゲルコンタクトレンズ中に存在するホスフィン含有化合物の少なくとも一部を酸化する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本明細書に記載のとおり、ヒドロゲルコンタクトレンズが、(a)少なくとも1種の親水性モノマー及び(b)少なくとも1種のホスフィン含有化合物を含む重合性組成物であって、該ホスフィン含有化合物が、該重合性組成物中の少なくとも1種の親水性モノマーと結合する時点において未酸化形態で存在しているものから形成され得ることが、今回発見された。
【0019】
本ヒドロゲルコンタクトレンズは、ポリマー成分及び液体成分を含む水和レンズ体を含む、又は、それで構成されている。該ポリマー成分は、少なくとも1種の親水性モノマーのユニットを含む。該親水性モノマーは、その分子構造中に存在する重合性官能基が1つだけである非シリコーン重合性原料であると理解されるべきである。したがって、該ポリマー成分は、1種又はそれ以上の親水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物であり、該重合性組成物中に存在する種々の追加の重合性原料のユニットを任意に含み得ると理解され得る。該重合性組成物の原料は、任意でさらに、追加のモノマー、マクロマー、プレポリマー、ポリマー、又はそれらの組み合わせを含み得る。該追加のモノマー、マクロマー、プレポリマー、ポリマー、又はそれらの組み合わせは、シリコーン含有化合物でも、非ケイ素化合物でもあり得る。本明細書では、非ケイ素化合物は、その分子構造中にケイ素原子を有さない化合物であると理解される。該重合性組成物の親水性モノマー及び任意の追加の原料と結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、重合性原料又は非重合性原料であり得る。本明細書では、重合性原料は、その分子構造の一部として重合性二重結合を有する化合物であると理解される。そうすると、非重合性原料は、その分子構造の一部として重合性二重結合を有さない。該重合性組成物中に存在する場合には、該重合性組成物の少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の親水性モノマー、及び少なくとも1種の疎水性モノマーは、シリコーン不含重合性原料であると理解される。本明細書では、該少なくとも1種の架橋剤は、単一の架橋剤を含むか、2種又はそれ以上の架橋剤で構成される架橋剤成分を含むと理解され得る。同様に、任意の少なくとも1種の親水性モノマーは、単一の親水性モノマーを含むか、2種又はそれ以上の親水性モノマーで構成される親水性モノマー成分を含むと理解され得る。任意の少なくとも1種の疎水性モノマーは、単一の疎水性モノマーを含むか、2種又はそれ以上の疎水性モノマーで構成される疎水性モノマー成分を含むと理解され得る。任意の少なくとも1種のシロキサンモノマーは、単一のシロキサンモノマーを含むか、2種又はそれ以上のシロキサンモノマーで構成されるシロキサンモノマー成分を含むと理解され得る。加えて、該重合性組成物は、少なくとも1種の開始剤、少なくとも1種の有機希釈剤、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種の酸素捕捉剤、少なくとも1種の着色剤、少なくとも1種のUV吸収剤、少なくとも1種の連鎖移動剤、又は、それらの組み合わせを任意に含み得る。該任意の少なくとも1種の開始剤、少なくとも1種の有機希釈剤、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種の酸素捕捉剤、少なくとも1種の着色剤、少なくとも1種のUV吸収剤、少なくとも1種の連鎖移動剤は、非ケイ素原料であると理解され、非重合性原料又は重合性原料(すなわち、それらの分子構造の一部として重合性官能基を有する原料)のいずれかであり得る。
【0020】
ポリマー成分と液体成分の組み合わせは、ヒトの眼に装着するのに適切な水和レンズ体として存在している。該水和レンズ体は、一般に凸状の前面及び一般に凹状の後面を備えており、その平衡含水率(EWC)は、10質量%(wt/wt)より大きい。このように、本コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズであると理解され得て、これは本明細書では、完全に水和された場合には、割らずに折り畳まれ得るコンタクトレンズのことをいう。
【0021】
業界で理解されているように、毎日の使い捨てコンタクトレンズは、コンタクトレンズメーカーによって製造されたその密封滅菌パッケージ(初期のパッケージ)から取り出され、ヒトの眼の上に装着され、そして、その日の終わりの該ヒトがレンズを身に着けていた後に外されて捨てられる、未着用のコンタクトレンズである。典型的には、毎日の使い捨てコンタクトレンズにおけるレンズ装着の継続時間は8〜14時間であり、そしてそれらは装用後に捨てられる。毎日の使い捨てレンズは、パッケージを開封する前は滅菌状態であるので、眼内に装着する前に洗浄されない又は洗浄溶液にさらされない。毎日の使い捨てシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、毎日交換される使い捨てシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。対照的に、毎日でない使い捨てコンタクトレンズは、毎日よりも少ない頻度(例えば、週1回、2週に1回、又は月に1回)で交換される使い捨てコンタクトレンズである。毎日でない使い捨てコンタクトレンズは、定期的に眼から外されて洗浄溶液で洗浄されるか、眼から外されずに継続して装用されるかのいずれかである。本コンタクトレンズは、毎日の使い捨てコンタクトレンズか、毎日でない使い捨てコンタクトレンズかのいずれかであり得る。本開示は、重合性組成物中の親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在している少なくとも1種のホスフィン含有化合物を含む重合性組成物、これらの重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体、これらのポリマーレンズ体を水和形態で含むヒドロゲルコンタクトレンズ、これらのヒドロゲルコンタクトレンズ及びパッケージ用溶液を密封パッケージ内に含むパッケージ、並びに、これらのヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法に関連する。
【0022】
ある例では、本開示は、少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種のホスフィン含有化合物を含む重合性組成物であって、該ホスフィン含有化合物が、該重合性組成物中の少なくとも1種の親水性モノマーと結合する時点において未酸化形態で存在しているものを対象とする。
先に述べたように、該ホスフィン含有化合物は、該重合性組成物中の少なくとも1種の親水性モノマーと結合する時点において未酸化形態で存在している。言い換えれば、該ホスフィン含有化合物は、該重合性組成物に添加された時点ではホスフィン基のリン原子に結合した酸素原子を有していないので、ホスフィンオキシド含有化合物ではない。しかしながら、製造工程中には、該ホスフィン含有化合物は、例えば、該重合性組成物中に存在する酸素と反応することによって、充填工程中にコンタクトレンズ鋳型中に存在する酸素と反応することによって、硬化工程中に硬化炉の雰囲気中に存在する酸素と反応することによって、離型及びレンズ取出し(delens)の後の洗浄溶液中に存在する酸素と反応することによって、又は、それらの組み合わせなどにより、酸化されてホスフィンオキシド含有化合物になるかもしれない。製造工程中に該ホスフィン含有化合物と反応する酸素は、溶存酸素ガスとして、空気などのガスの混合物中に存在する酸素ガスとして、過酸化水素などの酸化剤として、一重項酸素などの活性酸素種として、又は、それらの組み合わせとして存在し得る。
【0023】
前記ホスフィン含有化合物は、有機リン化合物であり得る。該ホスフィン含有化合物は、その分子構造中に存在する第3級ホスフィンを有する有機リン化合物、すなわち、そのリン原子が3つのアルキル基、3つのアリール基、重合性基、又は、アルキル基、アリール基、及び重合性基から選択される3つの基の任意の組み合わせに結合されている有機リン化合物であり得る。ある例では、該ホスフィン含有化合物は、式(1):
で表される構造を有し得て、X
1、X
2、及びX
3は、同じであるか異なったものであり、アルキル基若しくはアリール基、又は重合性基である。該アルキル基及びアリール基は、非置換の又は置換されたものであり得る。該アルキル基は、C1〜C10アルキル、C1〜C5アルキル、又は、C1〜C3アルキルであり得る。該アルキル基は、直鎖又は分枝鎖であり得る。該アリール基は、単純な芳香環に由来する種々の官能基又は置換体であり得る。該アリール基は、単一の芳香環又は融合した環構造を含み得る。該アリール基は、非複素環又は複素環であり得る。ある例では、該アリール基は、フェニル、ベンジル、トリル、ナフタレニル、ピリジル、又はキノリニルであり得る。構造によって示されるように、この例では、ホスフィンオキシドは、構造(1)の第3級ホスフィンには包含されない。
【0024】
他の例では、前記第3級ホスフィンは、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリイソペンチルホスフィン、ジエチルメチルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジメチルエチルホスフィン、ジエチルプロピルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、及び、ジプロピルフェニルホスフィンである。
トリフェニルホスフィン(TPP)は、以下の式(2)の一般構造を有する。
式(1)の第3級ホスフィン化合物を調製する方法は公知であり、米国特許第3,079,311号明細書及び第4,150,058号明細書に説明されている方法などであって、どちらも全体として参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0025】
親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在している本開示のホスフィン含有化合物は、ある例では、重合性ホスフィン含有化合物であり得る。言い換えれば、該ホスフィン含有化合物の構造は、例えば、ビニル基、又は、アクリレート若しくはメタクリレート基などの重合性基を含み得る。ある例では、該ホスフィン含有化合物は、アクリレート又はメタクリレート重合性基の一部ではないビニル重合性基を含む。該重合性ホスフィン含有化合物は、少なくとも1種のビニル系(vinylic)置換アリール基を含むホスフィン含有化合物であり得る。ある例では、X
1、X
2、及びX
3の1つ、2つ、又は3つが、ビニル系基置換アリール基であり、該ホスフィン含有化合物は、少なくとも1種のビニル系基置換アリール基を含み得る。さらなる例では、該ビニル系基は、ビニル、アリル、又は、他のエチレン系(ethylenically)不飽和炭素鎖基であり得る。ある特定の例では、該ホスフィン含有化合物は、ジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィン(pTPP)であり得る。ジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィンは、式(3):
で表され得る。
スチレン構造であるジフェニル(4−ビニルフェニル)ホスフィン(pTPP)は、レンズ形成の硬化とともに重合化を受ける。
【0026】
ある例では、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、約0.01〜5ユニット部(unit part)、例えば、0.02〜2ユニット部又は0.05〜1ユニット部の量で、重合性組成物中に存在し得る。ある例では、該ホスフィン含有化合物は、第3級ホスフィン(TPP又はpTPPなど)であり、例えば比較的少量の該第3級ホスフィンが、重合性レンズ形成に使用され得る。該ホスフィン含有化合物は、例えば、約0.1〜約1ユニット部、約0.2〜約0.8ユニット部、約0.25〜約0.75ユニット部、約0.3〜約0.6ユニット部、又は他の量で、該重合性組成物中で使用され得る。
【0027】
ホスフィンオキシド含有化合物を、コンタクトレンズを形成するために、重合性組成物中で重合化開始剤として使用することは公知である。本開示に従って、該ホスフィン含有組成物が、例えば酸素を捕捉するなどして、製造工程中にホスフィンオキシド含有化合物に酸化される場合には、重合化工程開始時の重合性組成物中のホスフィンオキシド含有化合物の量は、効果的に該重合性組成物を重合化し、コンタクトレンズとしての使用にふさわしい特性を有するポリマーレンズ体を形成するために求められるホスフィンオキシド開始剤の量以下であり得る。言い換えれば、該重合性組成物中に存在するすべてのホスフィン含有化合物が、該重合性組成物の重合化開始前にホスフィンオキシド含有化合物に変換されることになっており、該ホスフィンオキシド含有化合物が、該重合性組成物中に存在する唯一の開始剤であった場合には、該ホスフィンオキシド含有化合物は、該重合性組成物を適切に重合化し、例えば外形保持力、モジュラス(modulus)、継時的な寸法安定性などの許容可能な特性を有するポリマーレンズ体を形成するのに十分高いレベルで存在していなかっただろう。
【0028】
本開示は少なくとも1種の親水性モノマー、及び、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在している少なくとも1種のホスフィン含有化合物を含む重合性組成物を対象としており、該少なくとも1種のホスフィン含有化合物は、製造工程中に、該重合性組成物中に存在する酸素の少なくとも一部を捕捉するのに有効な量で、該重合性組成物中に存在している。該ホスフィン含有化合物の量は、該重合性組成物が最初に調製された際に、該重合性組成物から酸素を捕捉するのに有効であり得るか、該重合性組成物が鋳型部分内へと充填されるのを待っている際に、該重合性組成物及び該重合性組成物の器内のヘッドスペースから酸素を捕捉するのに有効な量であり得るか、充填及び鋳型部分の密閉工程中に、該重合性組成物から、該鋳型部分から、及び該雰囲気から酸素を捕捉するのに有効な量であり得るか、若しくは、該量は、硬化工程中に、該重合性組成物、該鋳型部分、及び該雰囲気から酸素を捕捉するのに有効であり得るか、又はそれらの組み合わせである。言い換えれば、該ホスフィン含有化合物のホスフィンオキシド含有化合物への酸化は、該ホスフィン含有化合物が該重合性組成物中で親水性モノマーと結合された後か、該重合性組成物がコンタクトレンズ鋳型部分内へ充填される前か、該重合性組成物がコンタクトレンズ鋳型部分内へ充填された後か、該重合性組成物が硬化されてポリマーレンズ体を形成する前か、ポリマーレンズ体を形成する該重合性組成物の硬化中か、又はそれらの組み合わせにおいて起こり得る。
【0029】
ある例では、前記重合性組成物中に存在している親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物の量は、該組成物が酸素含有雰囲気の存在下で鋳型内へ充填され、硬化された際に眼科的に許容可能なコンタクトレンズを製造できるようにするのに有効な量であり得る。該眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、それらの成型された外形の適切な保持力を有するコンタクトレンズ、不活性雰囲気下で該重合性組成物を充填することによって作製されたレンズと同様の特性を有するコンタクトレンズ、又は、適切な外形保持力と不活性雰囲気下で該重合性組成物を充填することによって作製されたレンズと同様のレンズ特性の両方を有するコンタクトレンズであり得る。例えば、該酸素含有雰囲気は、環境気圧での空気、又は、約1体積%より多い酸素ガスを含む雰囲気、約20体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気であり得る。該不活性雰囲気は、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気、又は、真空などの低圧力雰囲気などの低酸素雰囲気を含み得る。該同様のレンズは、実質的に同一の重合性組成物で形成されたレンズであり得る。
【0030】
他の例では、前記重合性組成物中に存在している親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物の量は、該組成物が酸素含有雰囲気の存在下で反応され、それでもそれらの成型された外形の適切な保持力を有するか、不活性雰囲気下で硬化されたレンズと同様の特性を有するか、又は、適切な外形保持力と同様のレンズ特性の両方を有するコンタクトレンズなどの眼科的に許容可能なコンタクトレンズを製造できるようにするのに有効な量であり得る。例えば、該酸素含有雰囲気は、環境気圧での空気、約1体積%より多い酸素ガスを含む雰囲気、又は、約20体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気であり得る。該不活性雰囲気は、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気、又は、真空などの低圧力雰囲気などの低酸素雰囲気を含み得る。該同様のレンズは、実質的に同一の重合性組成物で形成されたレンズであり得る。
【0031】
また別の例では、前記重合性組成物中に存在している親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物の量は、該組成物が不活性雰囲気を必要とせずに酸素含有雰囲気の存在下で鋳型内に充填されかつ反応され、それでもそれらの成型された外形の適切な保持力を有するか、不活性雰囲気下で充填及び硬化されたレンズと同様の特性を有するか、又は、適切な外形保持力と同様のレンズ特性の両方を有するコンタクトレンズなどの眼科的に許容可能なコンタクトレンズを製造できるようにするのに有効な量であり得る。例えば、該酸素含有雰囲気は、環境気圧での空気、約1体積%より多い酸素ガスを含む雰囲気、又は、約20体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気であり得る。該不活性雰囲気は、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気、又は、真空などの低圧力雰囲気などの低酸素雰囲気を含み得る。該同様のレンズは、実質的に同一の重合性組成物で形成されたレンズであり得る。
【0032】
本開示はまた、少なくとも1種の親水性モノマー、及び、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在している少なくとも1種のホスフィン含有化合物を含む重合性組成物も対象としており、該重合性組成物は、ホスフィン含有化合物を含まないことを除いて該重合性組成物と実質的に同一の第2の重合性組成物から形成され、かつ前記ヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法と実質的に同一の製造方法を使用した第2のヒドロゲルコンタクトレンズ体と比較して、軸方向エッジリフト(AEL)の量が減少したポリマーレンズ体を製造するのに有効な量のホスフィン含有化合物を含む。
【0033】
図1は、軸方向エッジリフトを有さないヒドロゲルコンタクトレンズ(レンズ10A及びレンズ10B)、並びに、最小限から(レンズ10C)徐々に厳しくなるまで(それぞれレンズ10D、レンズ10E、及びレンズ10F)のある程度のエッジリフトを有するコンタクトレンズの一連の説明である。
図1の説明は、各レンズの後面光学部(optic zone)曲面を示す破線を含んでいる。このように、11Aはレンズ10Aの後面光学部曲面であり、11Bはレンズ10Bの後面光学部曲面であり、11Cはレンズ10Cの後面光学部曲面であり、11Dレンズ10Dの後面光学部曲面であり、11Eはレンズ10Eの後面光学部曲面であり、そして、11Fはレンズ10Fのの後面光学部曲面である。後面光学部半径(BOZR)は、半径12により示されており、これはレンズ10Bの後面光学部曲面の半径(レンズ10A−10Fのすべてについても同じ曲面及びBOZR)である。
【0034】
図2は、ある程度のエッジリフトを有する
図1のヒドロゲルコンタクトレンズの説明である。垂直の線13C、13D、13E、及び13Fは、後面光学部曲面11C、11D、11E、及び11Fから測定される、各レンズ10C、10D、10E、及び10Fの軸方向エッジリフト(AEL)を示している。該AELは、レンズ切片上又は当技術分野で公知の他の手段を利用して測定され得る。あるレンズのデザインでは、意図的に少量のエッジリフトを含んでもよい。AELの許容可能なレベルは、約40マイクロメートル未満又は約30マイクロメートル未満であり得る。外形保持力の乏しいレンズは、しばしば縁が「ラッパ状に広がり(flare out)」、例えば、約75マイクロメートルよりも大きい又は約100マイクロメートルよりも大きいというような約50マイクロメートルよりも大きいAEL値を示す。
【0035】
他の例では、前記重合性組成物は、ヒドロゲルコンタクトレンズの歪みを低減するのに有効な量である、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物の量を含む。例えば、該ホスフィン含有化合物の量は、ホスフィン含有化合物を含まないことを除いて該重合性組成物と実質的に同一の第2の重合性組成物から形成され、かつ該ヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法と実質的に同一の製造方法を使用した第2のヒドロゲルコンタクトレンズ体と比較して、ヒドロゲルコンタクトレンズの歪みを低減するのに有効であり得る。該歪みは、外形の歪みであり得るか、光学的歪みであり得る。
【0036】
ある特定の例では、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物を含む重合性組成物から形成されるコンタクトレンズは、最終レンズ特性の障害がなく、許容可能なレベルの外形保持力を有している。該重合性組成物中及び得られる重合化レンズ体中のホスフィン含有化合物の存在は、ヒドロゲルコンタクトレンズの外形の安定化に有効である一方、それでも、例えば、30%より大きい平衡含水率、55バレル(barrer)より大きい酸素透過性、0.2MPa〜0.85MPaの引張係数、又はそれらの組み合わせなどの眼科的に共用可能な物理的特性を有しているヒドロゲルコンタクトレンズを提供する。そのようなコンタクトレンズは、オートクレーブされ完全に水和された後でも、それらの成型された外形を保持する。
【0037】
図3は、ホスフィン含有化合物を含むか(3A及び3C)含まないか(3B及び3D)を除いて同一の成分を有する重合性組成物から形成されたヒドロゲルコンタクトレンズの一連の写真である。レンズ3A及び3Bは、空気雰囲気中での重合化を含む同一の工程を利用して製造された。レンズ3C及び3Dは、不活性雰囲気中での重合化を含む同一の工程を利用して製造された。ホスフィン含有化合物を含む組成物から形成されたレンズは、許容可能な外形を有していたが(3A及び3C)、他方、ホスフィン含有化合物を含まない組成物から形成されたレンズは、歪んだ外形を有していた(3B及び3D)。
【0038】
本明細書に開示されたレンズ及びレンズの製造方法に従えば、前記重合性組成物は、空気を含む雰囲気中で反応され得る。該重合性組成物は、本質的に空気から成る雰囲気中で反応され得る。該重合性組成物は、空気を含む雰囲気中で反応され得る。該重合性組成物はまた、空気中に見られるよりも高濃度で不活性ガスを含む雰囲気中でも反応され得る。該重合性組成物はまた、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気などの低濃度の不活性ガスを含む雰囲気中でも反応され得る。あるいは、該重合性組成物は、80体積%より大きい窒素ガスを含む雰囲気を含む窒素雰囲気などの高濃度不活性ガスを含む雰囲気下で反応され得る。
【0039】
同様に、前記重合性組成物は、空気を含む雰囲気中で保管され得る。該重合性組成物は、本質的に空気から成る雰囲気中で保管され得る。該重合性組成物は、空気で構成される雰囲気中で保管され得る。該重合性組成物はまた、空気中に見られるよりも高濃度で不活性ガスを含む雰囲気中でも保管され得る。該重合性組成物はまた、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気などの低濃度の不活性ガスを含む雰囲気中でも保管され得る。あるいは、該重合性組成物は、80体積%より大きい窒素ガスを含む雰囲気を含む窒素雰囲気などの高濃度不活性ガスを含む雰囲気下で保管され得る。
【0040】
加えて、ある例では、前記重合性組成物は、空気を含む雰囲気中で鋳型部分内へ充填され得る。該重合性組成物は、本質的に空気から成る雰囲気中で鋳型部分内へ充填され得る。該重合性組成物は、空気で構成される雰囲気中で鋳型部分内へ充填され得る。該重合性組成物はまた、空気中に見られるよりも高濃度で不活性ガスを含む雰囲気中でも充填され得る。該重合性組成物はまた、80体積%未満の窒素ガスを含む雰囲気などの低濃度の不活性ガスを含む雰囲気中でも充填され得る。あるいは、該重合性組成物は、80体積%より大きい窒素ガスを含む雰囲気を含む窒素雰囲気などの高濃度不活性ガスを含む雰囲気下で充填され得る。
【0041】
他の例では、前記重合性組成物は、室温で保管された場合には少なくとも1年間、又は、加速試験条件下では相当する期間、コンタクトレンズの変色を低減するのに有効な量である、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物の量を含み得る。ある処方では、低濃度のホスフィン含有化合物の存在は、長期間保管された場合に、ヒドロゲルコンタクトレンズの黄変を除去又は低減するのに有効であることがわかった。該ホスフィン含有化合物の量は、ホスフィン含有化合物を含まないことを除いて該重合性組成物と実質的に同一の第2の重合性組成物から形成され、かつ前記ヒドロゲルコンタクトレンズの製造方法と実質的に同一の製造方法を使用した第2のヒドロゲルコンタクトレンズ体と比較して、コンタクトレンズの変色を低減するのに有効である。
【0042】
変色の低減は、レンズの黄色度レベルの低減を含み得る。黄色度レベルは、色分析器を利用して検出され得る。例えば、色分析器は、CIE L*a*b*系などの多重座標表色系(multiple−coordinate color system)に基づき得る。CIE L*a*b*系の3つの座標は、色の明度(L*=0は黒になり、L*=100は白の拡散色(diffuse white)を示し、白の反射色(specular white)はさらに高いかもしれない)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a*、負の値は緑を示し、他方、正の値はマゼンタを示す)、及び、黄色と青の間の位置(b*、負の値は青を示し、正の値は黄色を示す)を表す。そのような系を利用した場合には、レンズの黄色度レベルの低減は、L*値の低下、正のb*値の低下、又は、負のb*値の増加を含み得る。
【0043】
上述のように、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、レンズ体の部分又は一体構造物内のものである。ある例では、該ホスフィン含有化合物が重合性ホスフィン含有化合物である場合には、該ホスフィン含有化合物は、重合化レンズ体を含むコポリマーのユニットとして存在している。そのような例では、該ホスフィン化合物は、化学的に、物理的に、又は、化学的及び物理的に、レンズ体に固定化され得る。
【0044】
親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、重合化レンズ体の全体にわたって存在し得る。該ホスフィン含有化合物の様々な濃度勾配が、該レンズ体を通じて存在し得て、該ホスフィン含有化合物の濃度は、該レンズ体を通じて均一であるか、該レンズ体を通じて不均一である。該ホスフィン含有化合物の濃度は、該レンズ体を通じて実質的に均一であり得て、これは重合性組成物中に該ホスフィン含有化合物を添加して、レンズの形成前、例えば、該重合性組成物を鋳型に充填する前に、該ホスフィン含有化合物を該組成物中に均一に分布させることによって達成され得る。選択肢として、該ホスフィン含有化合物は、レンズ組成物を形成する反応成分とともに重合化が開始する前に、少なくとも一部分又は完全に該組成物に添加され得る。選択肢として、より高い濃度のホスフィン含有化合物は、酸素への暴露が起こり得るレンズ体の表面において存在し得る。
【0045】
本発明においては、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、表面コーティングなどのすでに形成されたレンズ体に対する後処理によっては存在しない。しかし、選択肢として、ホスフィン含有化合物のコーティングは、重合性組成物中のホスフィン含有成分に加えて存在し得る。述べたように、少なくとも重合性組成物、レンズ体、又はその両方が、ホスフィン含有化合物を酸化してホスフィンオキシド含有化合物にする条件に曝されるまでは、該ホスフィン含有化合物は、レンズ体を形成するために使用される重合性組成物の一部であり、重合化後の重合化レンズ体の一部であり、そして、該レンズ体の一部にとどまる。同様に、少なくとも重合性レンズ体が、例えば、ポリマーレンズ体を最終ヒドロゲルコンタクトレンズへと変換する工程の一部を含む、離型工程、レンズ取出し工程、残留ホスフィン含有成分の酸化工程、洗浄又は抽出工程、パッケージ用溶液との接触、滅菌工程などの一部として、液体に接触されるまでは、該ホスフィン含有化合物は、重合化レンズ体の一部にとどまる。
【0046】
前記レンズ体のレンズ表面上にホスフィン含有化合物を含んでもよい追加の層を含むことは任意であるが、これは必要ではないことが理解されるべきであり、実際、本発明においては、レンズ組成物全体の一部及びレンズの一部として取り込まれたホスフィン含有化合物を有することで、該ホスフィン含有化合物の別個のコーティング又は層を種々の目的で有する必要がない。
【0047】
先述のように、親水性モノマーと結合する際に未酸化形態で存在しているホスフィン含有化合物は、反応されて重合化しレンズ体を形成する重合性組成物の一部である。少なくとも1種のホスフィン含有成分に加えて、該重合性組成物は、少なくとも1種の親水性モノマーを含む。該重合性組成物は、反応されてポリマーレンズ体を形成し得る。レンズ体のポリマーは、ホモポリマー、又は、架橋型コポリマー、分枝鎖コポリマー、直線型コポリマー、それぞれが自身と架橋されている2種のポリマー若しくはコポリマーの相互貫通(inter−penetrating)ポリマーネットワーク、一方だけが自身と架橋されている2種のポリマー若しくはコポリマーの偽相互貫通ポリマーネットワークを含む親水性モノマーのユニットを含むコポリマーであり得る。該ホスフィン含有成分が、重合性ホスフィン含有成分を含む場合には、該ポリマーレンズ体のコポリマーは、親水性モノマーの重合化ユニットに加えて、該ホスフィン含有成分の重合化ユニットを含む。任意には、該重合性組成物はさらに、少なくとも1種のシロキサンモノマー、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の開始剤、少なくとも1種の着色剤、少なくとも1種のUV遮断剤、並びに、それらの組み合わせ及び部分を含み得る。
【0048】
本明細書では、前記重合性組成物の親水性モノマーは、非ケイ素親水性モノマーであると理解され、そしてシロキサンモノマーとは異なる。モノマー(シリコーン含有及び非ケイ素モノマーを含む)の親水性又は疎水性は、例えば、モノマーの水溶解度に基づくような通常の技術を利用して決定され得る。本開示の目的では、親水性モノマーは、室温(例えば、約20〜25℃)で水性溶液に目に見えて可溶性のモノマーである。例えば、親水性モノマーは、50グラム又はそれ以上の該モノマーが、当業者に公知の標準震盪フラスコ法を利用して決定されるように、20℃で1リットルの水に目に見えて完全に可溶性である(すなわち、該モノマーは水中で少なくとも5質量%のレベルで可溶性である)種々のモノマーであると理解され得る。疎水性モノマーは、本明細書では、室温で水性溶液に目に見えて不溶性のモノマーであり、分離して視覚的に確認できる相が該水性溶液中に存在するか、又は、該水性溶液が濁って見えて室温においた後に時間とともに2つの異なる相に分離する。例えば疎水性モノマーは、50グラムの該モノマーが、20℃で1リットルの水に目に見えて完全には可溶性ではない(すなわち、該モノマーは水中で少なくとも5質量%未満のレベルで可溶性である)種々のモノマーであると理解され得る。
【0049】
本発明の重合性組成物に含まれ得る親水性モノマーの例は、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、又は、それらの組み合わせを含み得る。
【0050】
ある例では、親水性モノマー又は親水性モノマー成分は、ビニル含有モノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。前記重合性組成物中に提供され得る親水性ビニル含有モノマーの例は、これらに制限されるものではないが、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルホルムアミド、N−2−ヒドロキシエチルビニルカルバメート、N−カルボキシ−β−アラニンN−ビニルエステル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又は、それらの組み合わせを含む。
【0051】
他の例では、前記重合性組成物の親水性モノマー又は親水性モノマー成分は、親水性アミドモノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。該親水性アミドモノマーは、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、N−ビニルカプロラクタム、又は、それらの組み合わせなどの1つのN−ビニル基を有する親水性アミドモノマーであり得る。ある例では、該親水性モノマー又は親水性モノマー成分は、N−ビニル−N−メチルアセトアミド(VMA)を含む。例えば、該親水性モノマー又はモノマー成分は、VMAを含み得るか又はそれで構成され得る。ある特定の例では、該親水性モノマーはVMAであり得る。
【0052】
他の例では、該親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分は、ビニルエーテル含有モノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。ビニルエーテル含有モノマーの例は、これらに制限されるものではないが、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又は、それらの組み合わせを含む。ある例では、該親水性モノマー成分は、BVEを含む又はそれで構成される。他の例では、該親水性モノマー成分は、EGVEを含む又はそれで構成される。また別の例では、該親水性ビニル成分は、DEGVEを含む又はそれで構成される。
【0053】
また別の例では、前記親水性ビニル含有モノマー成分は、第1の親水性モノマー又はモノマー成分と第2の親水性モノマー又は親水性モノマー成分との組み合わせを含み得るか又はそれで構成され得る。ある例では、該第1の親水性モノマーは、該第2の親水性モノマーとは異なる重合性官能基を有する。他の例では、該第1の親水性モノマーの各モノマーは、該第2の親水性モノマーとは異なる重合性官能基を有する。他の例では、該第1の親水性モノマーは、該第2の親水性モノマー成分の各モノマーとは異なる重合性官能基を有する。また別の例では、該第1の親水性モノマー成分の各モノマーは、該第2の親水性モノマー成分の各モノマーとは異なる重合性官能基を有する。
【0054】
例えば、前記第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、1種又はそれ以上のアミド含有モノマーを含む又はそれで構成される場合には、前記第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種又はそれ以上の非アミドモノマー(すなわち、それぞれがそれらの分子構造の一部としてアミド官能基を有さない1種又はそれ以上のモノマー)を含み得るか又はそれで構成され得る。他の例としては、該第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、1種又はそれ以上のビニル含有モノマーを含む又はそれで構成される場合には、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種又はそれ以上の非ビニルモノマー(すなわち、それぞれがそれらの分子構造の一部としてビニル重合性官能基を有さない1種又はそれ以上のモノマー)を含み得る。他の例では、該第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、それぞれがN−ビニル基を有する1種又はそれ以上のアミドモノマーを含む又はそれで構成される場合には、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種又はそれ以上の非アミドモノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。該第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、1種又はそれ以上の非アクリレートモノマー(すなわち、それぞれがそれらの分子構造の一部としてアクリレート又はメタクリレート重合性官能基を有さない1種又はそれ以上のモノマー)を含む又はそれで構成される場合には、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種若しくはそれ以上のアクリレート含有モノマー、1種若しくはそれ以上のメタクリレート含有モノマー、又は、それらの組み合わせを含み得るか又はそれで構成され得る。該第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、1種又はそれ以上の非ビニルエーテル含有モノマー(すなわち、それぞれがそれらの分子構造の一部としてビニルエーテル重合性官能基を有さない1種又はそれ以上のモノマー)を含む又はそれで構成される場合には、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種又はそれ以上のビニルエーテル含有モノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。ある特定の例では、該第1の親水性モノマー又はモノマー成分は、それぞれがN−ビニル基を有する1種又はそれ以上のアミド含有モノマーを含み得て又はそれで構成され得て、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1種又はそれ以上のビニルエーテル含有モノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。
【0055】
ある例では、前記第1の親水性モノマー又はモノマー成分が、1つのN−ビニル基を有する親水性アミド含有モノマーを含む又はそれで構成される場合には、前記第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、ビニルエーテル含有モノマーを含み得るか又はそれで構成され得る。ある特定の例では、該第1の親水性モノマーは、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、BVE、EGVE、DEGVE、又は、それらの組み合わせを含み得る。該第1の親水性モノマーは、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマーは、BVEを含み得る。該第1の親水性モノマーは、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマーは、EGVEを含み得る。該第1の親水性モノマーは、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマーは、DEGVEを含み得る。該第1の親水性モノマーは、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマー成分は、EGVE及びDEGVEを含み得る。
【0056】
同様に、該第1の親水性モノマーは、VMAであり得て、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、BVE、EGVE、DEGVE、又は、それらの組み合わせを含み得る。該第1の親水性モノマーは、VMAであり得て、該第2の親水性モノマーは、BVEであり得る。該第1の親水性モノマーは、VMAであり得て、該第2の親水性モノマーは、EGVEであり得る。該第1の親水性モノマー、VMAを含み得て、該第2の親水性モノマーは、DEGVEであり得る。該第1の親水性モノマーは、VMAであり得て、該第2の親水性モノマー成分は、EGVE及びDEGVEの組み合わせであり得る。
【0057】
他の例では、前記非ケイ素親水性ビニル含有モノマーは、400ダルトン未満、300ダルトン未満、250ダルトン未満、200ダルトン未満、150ダルトン未満、又は、約75〜約200ダルトンの分子量などの任意の分子量を有し得る。
【0058】
親水性モノマー又は親水性モノマー成分が、前記重合性組成物中に存在する場合には、該親水性モノマー又はモノマー成分は、該重合性組成物の30〜60ユニット部の量で、該重合性組成物中に存在し得る。該親水性モノマー又はモノマー成分は、質量で40〜55ユニット部、45〜50ユニット部で、該重合性組成物中に存在し得る。該重合性組成物の親水性モノマー成分が、第1の親水性モノマー又はモノマー成分及び第2の親水性モノマー又はモノマー成分を含む場合には、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、該重合性組成物の0.1〜20ユニット部の量で、該重合性組成物中に存在し得る。例えば、該重合性組成物中に存在する30〜60ユニット部の親水性モノマー又はモノマー成分の全量のうち、29.9〜40ユニット部が該第1の親水性モノマー又はモノマー成分を含み得て、0.1〜20ユニット部が該第2の親水性モノマー又はモノマー成分を含み得る。他の例では、該第2の親水性モノマー又はモノマー成分は、1〜15ユニット部、2〜10ユニット部、3〜7ユニット部で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0059】
本明細書では、ビニル含有モノマーは、その分子構造中に単一の重合性炭素−炭素二重結合(すなわち、ビニル重合性官能基)が存在しているモノマーであり、フリーラジカル重合反応下では、該ビニル重合性官能基における炭素−炭素二重結合は、アクリレート又はメタクリレート重合性官能基に存在している炭素−炭素二重結合よりも反応性が低い。言い換えれば、炭素−炭素二重結合は、アクリレート基及びメタクリレート基に存在しているけれども、本明細書で理解されるように、単一のアクリレート又はメタクリレート重合性基を含むモノマーは、ビニル含有モノマーであるとは見なされない。アクリレート又はメタクリレート重合性基の炭素−炭素二重結合よりも反応性が低い炭素−炭素二重結合を有する重合性基の例は、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、及びアリルエステル重合性基を含む。このように、本明細書では、ビニル含有モノマーの例は、単一のビニルアミド、単一のビニルエーテル、単一のビニルエステル、又は単一のアリルエステル重合性基を有するモノマーを含む。
【0060】
このような例のいずれか又はそれぞれにおいて、先述のように、前記親水性モノマー又はモノマー成分(例えば、前記重合性組成物中に存在する1種又はそれ以上の親水性モノマー)の量は、該重合性組成物の30〜60ユニット部であり得る。ある例では、該親水性モノマー又はモノマー成分の混合物は、該重合性組成物の40〜55ユニット部、該組成物の45〜50ユニット部を構成し得る。VMAが該重合性組成物中に存在する場合には、30ユニット部〜60ユニット部の量で存在し得る。ある例では、VMAは、約40ユニット部〜約55ユニット部、45〜50ユニット部の量で、該重合性組成物中に存在する。親水性モノマーであるN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、又は2−ヒドロキシルブチルメタクリレート(HOB)が、任意の第2の親水性モノマー又はモノマーの混合物として該重合性組成物中に存在する場合には、それらは約3〜約10ユニット部の量で存在し得る。
【0061】
本明細書では、分子量は、数平均分子量のことをいうと理解される。数平均分子量は、通常の算術平均、又は、モノマーの試料中に存在している個々の分子の分子量の平均である。モノマーの試料中の個々の分子は、お互いにモル質量が若干異なるかもしれないので、あるレベルの多分散性が、該試料中に存在しているかもしれない。本明細書では、前記重合性組成物のシロキサンモノマー、又は、その他のモノマーであるマクロマー、プレポリマー、若しくはポリマーが多分散系である場合には、用語「分子量」は、モノマー又は原料の数平均分子量のことをいう。ある例としては、シロキサンモノマーの試料の数平均分子量は、約15,000ダルトンであり得るが、該試料が多分散系である場合には、該試料中に存在している個々のモノマーの現実の分子量は、12,000ダルトン〜18,000ダルトンにわたるかもしれない。
【0062】
数平均分子量は、当業者に理解されているようなプロトン核磁気共鳴(NMR)末端基分析によって決定されるような絶対的な数平均分子量であり得る。分子量はまた、当業者に理解されているようなゲル浸透クロマトグラフィーを利用して決定されてもよく、化学物質の供給業者によって提供されてもよい。
【0063】
本明細書では、ユニット部は、ユニット質量部を意味すると理解される。例えば、zユニット部のホスフィン含有化合物及びyユニット部の親水性モノマーを含むとされている処方を調製するために、該組成物は、zグラムの該ホスフィン含有化合物をyグラムの該親水性モノマーと混ぜ合わせることによって、合計でy+zグラムの重合性組成物を得る、又は、zオンスのホスフィン含有化合物をyオンスの親水性モノマーと混ぜ合わせることによって、合計でy+zオンスの重合性組成物を得る、などのように調製され得る。該組成物がさらに、例えばxユニット部の架橋剤などの追加の任意の原料を含む場合には、xグラムの架橋剤は、zグラムのホスフィン含有化合物及びyグラムの親水性モノマーと混ぜ合わされて、合計でx+y+zグラムの重合性組成物を得る、などとなる。該組成物が、例えば第1の疎水性モノマー及び第2の疎水性モノマーで構成される疎水性モノマー成分などの2種類の原料で構成される原料成分を含む追加の任意の原料を含む場合には、zユニット部のホスフィン含有化合物、yユニット部の親水性モノマー、及びxユニット部の架橋剤に加えて、wユニット部の該第1の疎水性モノマー及びvユニット部の該第2の疎水性モノマーが混ぜ合わされて、全量でv+w+x+y+zユニット部の重合性組成物を得る。そのような重合性物中に存在する少なくとも1種の疎水性モノマーのユニット部は、該第1の疎水性モノマーのユニット部と該第2の疎水性モノマーのユニット部の合計、例えば、この例ではv+wユニット部であると理解される。典型的には、重合性組成物のための処方(formula)は、合わせて約90〜約110ユニット質量部の量の原料で構成されるだろう。該重合性組成物の成分の量が、本明細書にいおいてユニット部で語られる場合には、これらの成分のユニット部は、約90〜110ユニット部の範囲である該組成物の全質量を提供する処方に基づいていると理解される。ある例では、ユニット質量部は、約95〜105ユニット質量部又は約98〜102ユニット質量部の範囲である該組成物の全質量を提供する処方に基づき得る。
【0064】
ある例では、本開示は、本質的にシリコーン含有原料がないヒドロゲルコンタクトレンズ、すなわち、0.1%(w/w)未満のシリコーン含有原料を含むヒドロゲルで形成されたコンタクトレンズを対象とする。他の例では、本開示は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを対象とする。本明細書では、「シリコーンヒドロゲル」又は「シリコーンヒドロゲル材料」は、シリコーン(SiO)成分を含む特定のヒドロゲルのことをいう。例えば、シリコーンヒドロゲルは、典型的には、シリコーン含有材料を通常の親水性ヒドロゲル前駆体と混ぜ合わせることによって調製される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、視力矯正用コンタクトレンズを含むコンタクトレンズであり、シリコーンヒドロゲル材料を含む。シロキサンモノマーは、少なくとも1種のシロキサン[−Si−O−Si−]結合を含むモノマーである。シロキサンモノマーにおいては、各ケイ素原子は、任意で、同じであるか異なっていてもよい1種又はそれ以上の有機ラジカル置換基(R
1、R
2)又は置換された有機ラジカル置換基、例えば、−SiR
1R
2O−を有してもよい。同様に、非ケイ素原料は、0.1%(w/w)未満のシリコーンを含む原料である。
【0065】
本発明のある例では、前記重合性組成物は、さらに少なくとも1種のシロキサンモノマーを含み得る。そのような例では、ポリマーレンズ体は、少なくとも1種のシロキサンモノマーの重合化ユニットを含み、ヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含むだろう。本明細書では、反応されてポリマーのユニット部を形成し得る反応原料は、そのサイズにかかわらず、モノマーと呼ばれる。任意の少なくとも1種のシロキサンモノマーは、単一のシロキサンモノマーを含み得るか、2種又はそれ以上のシロキサンモノマーで構成されるシロキサンモノマー成分を含み得る。少なくとも1種のシロキサンモノマーは、親水性シロキサンモノマー若しくは疎水性シロキサンモノマーであり得るか、又は、シロキサンモノマーの分子構造内に存在するエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びそのようなもののユニットなどの親水性成分の量及び位置に依存して、親水性領域と疎水性領域の両方を有し得る。
【0066】
例えば、前記シロキサンモノマーは、シロキサン分子の主鎖内に親水性成分を含み得るか、シロキサン分子の1つ若しくはそれ以上の側鎖内に親水性成分を含み得るか、又は、それらの組み合わせである。例えば、該シロキサンモノマーは、シロキサン分子の主鎖の重合性官能基に隣接した少なくとも1種のエチレングリコールのユニットを有し得る。本明細書では、隣接は、直接隣接しているものと10個又はそれ未満の炭素原子によって隔てられているだけのものの両方を意味すると理解される。該シロキサン分子の主鎖の重合性官能基に隣接した少なくとも1種のエチレングリコールのユニットは、1〜5ユニットの長さの炭素鎖によって、該重合性官能基から隔てられ得る(すなわち、ここでは、該エチレングリコールのユニットは、1〜5ユニットの長さの炭素鎖の最初の炭素に結合されて、該重合性官能基は、該1〜5ユニットの長さの炭素鎖の最後の炭素に結合され、言い換えれば、該エチレングリコールのユニット及び該重合性基は、直接隣接していないが、1〜5ユニットの長さの炭素原子によって隔てられている)。該シロキサンモノマーは、シロキサン分子の主鎖の両端に存在する重合性官能基に隣接した少なくとも1種のエチレングリコールのユニットを有し得る。該シロキサンモノマーは、シロキサン分子の少なくとも1種の側鎖に存在する少なくとも1種のエチレングリコールのユニットを有しる。該シロキサン分子の少なくとも1種の側鎖に存在する少なくとも1種のエチレングリコールのユニットは、シロキサン分子の主鎖のケイ素原子に結合された側鎖の一部であり得る。該シロキサン分子は、シロキサン分子の主鎖の両端に存在する重合性官能基に隣接した少なくとも1種のエチレングリコールのユニットと、シロキサン分子の少なくとも1種の側鎖に存在する少なくとも1種のエチレングリコールのユニットの両方を有し得る。
【0067】
本開示のある例では、前記重合性組成物中に存在する場合には、任意の少なくとも1種のシロキサンモノマーは、多官能性シロキサンモノマーであり得る。該シロキサンモノマーが、2種のメタクリレート基などの2種の官能基を有する場合には、それは二官能性モノマーである。該シロキサンモノマーが、3種の官能基を有する場合には、それは三官能性モノマーである。
【0068】
任意のシロキサンモノマーは、モノマーの主鎖の一端に存在する重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。該シロキサンモノマーは、モノマーの主鎖の両端に重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。該シロキサンモノマーは、モノマーの少なくとも1種の側鎖に存在する重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。該シロキサンモノマーは、モノマーのただ1つの側鎖にだけ存在する重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。
【0069】
前記重合性組成物の任意のシロキサンモノマーは、アクリレート含有シロキサンモノマー、言い換えれば、その分子構造の一部として少なくとも1種のアクリレート重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。ある例では、該アクリレート含有シロキサンモノマーは、メタクリレート含有シロキサンモノマー、すなわち、その分子構造の一部として少なくとも1種のメタクリレート重合性官能基を有するシロキサンモノマーであり得る。
【0070】
任意のシロキサンモノマーは、数平均分子量が少なくとも3,000ダルトンのシロキサンモノマーであり得る。他の例では、該シロキサンモノマーは、分子量が少なくとも4,000ダルトン、少なくとも7,000ダルトン、少なくとも9,000ダルトン、又は、少なくとも11,000ダルトンのシロキサンモノマーであり得る。
任意のシロキサンモノマーは、分子量が20,000ダルトン未満のシロキサンモノマーであり得る。他の例では、該シロキサンモノマーは、分子量が15,000ダルトン未満、11,000ダルトン未満、9,000ダルトン未満、7,000ダルトン未満、又は、5,000ダルトン未満のシロキサンモノマーであり得る。
任意のシロキサンモノマーは、分子量が3,000ダルトン〜20,000ダルトンのシロキサンモノマーであり得る。他の例では、該シロキサンモノマーは、分子量が5,000ダルトン〜20,000ダルトン、5,000ダルトン〜10,000ダルトン、又は、7,000ダルトン〜15,000ダルトンのシロキサンモノマーであり得る。
ある例では、任意のシロキサンモノマーは、1種以上の官能基を有し、数平均分子量が少なくとも3,000ダルトンである。
【0071】
任意のシロキサンモノマーは、例えば、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネート、3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート(TRIS)、3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(SiGMA)、メチルジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロールエチルメタクリレート(SiGEMA)、モノメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン(MCS−M11)、MCR−M07、モノメタクリルオキシプロピル終端モノ−n−ブチル終端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)などの、ポリ(有機シロキサン)モノマー、マクロマー、若しくはプレポリマー、又は、それらの組み合わせを含み得る。本開示の重合性組成物のある例では、任意のシロキサンモノマーは、第1のシロキサンモノマー及び第2のシロキサンモノマーを含み得て、該第2のシロキサンモノマーは、分子量、分子構造、又は、分子量と構造の両方に基づいて、該重合性組成物中に存在する第1のシロキサンと異なる。例えば、任意の第2のシロキサンモノマー又は少なくとも1種の第3のシロキサンモノマーは、該重合性組成物の第1のシロキサンモノマーと異なる分子量を有する式(1)のシロキサンモノマーであり得る。他の例では、任意の第2のシロキサンモノマー又は少なくとも1種の第3のシロキサンは、以下の特許、US2007/0066706、US2008/0048350、US3808178、US4120570、US4136250、US4153641、US470533、US5070215、US5998498、US5760100、US6367929、及び、EP080539に開示されている少なくとも1種のシロキサンを含み得て、これらの全内容は参照することにより本明細書によって組み込まれる。
【0072】
本コンタクトレンズの他の例では、任意のシロキサンモノマーは、数平均分子量が少なくとも4,000ダルトンである、両末端がメタクリレートで末端キャップされた(dual−end methacrylate end−capped)ポリジメチルシロキサンであり得る。そのようなシロキサンモノマーは二官能性であると理解されるだろう。
【0073】
本コンタクトレンズのある例では、任意のシロキサンモノマーの数平均分子量は、少なくとも4,000ダルトン、少なくとも7,000ダルトン、少なくとも9,000ダルトン、又は、少なくとも11,000ダルトンであり得る。該シロキサンモノマーの数平均分子量は、20,000ダルトン未満であり得る。このように、ある状況では、該シロキサンモノマーは、マクロマーであると考えられ得るが、それは、前記重合性組成物の他の反応成分で形成されたポリマーのユニット部を形成するので、本明細書ではモノマーと呼ばれるだろう。
【0074】
シロキサンモノマーの例は、式(4):
で表される一官能性シロキサンモノマーの例などの少なくとも1種のウレタン結合を有する一官能性シロキサンモノマーを含み得て、式(4)のnは、0〜30又は10〜15である。ある特定の例では、該シロキサンモノマーは、式(4)のnが12〜13であり、分子量が約1,500ダルトンである式(4)のモノマーであり得る。そのような一官能性シロキサンモノマーの例は、US6,867,245に記載されており、これは参照することにより本明細書によって組み込まれる。
【0075】
シロキサンモノマーの例は、式(5):
で表される二官能性シロキサンモノマーの例などの少なくとも2つのウレタン結合を有する二官能性シロキサンモノマーを含み得て、式(5)のnは約100〜150の整数であり、式(5)のmは約5〜約10の整数であり、hは約2〜8の整数である。そのような二官能性シロキサンモノマーの追加の例、及び式(5)の化合物の作製方法は、米国特許第6,867,245号明細書に記載されており、これは参照することにより本明細書によって組み込まれる。特定の例では、該シロキサンモノマーは、2つのウレタン結合を有し、分子量が10,000ダルトンより大きい、例えば、分子量が約15,000ダルトンより大きいなどの二官能性シロキサンモノマーであり得る。
【0076】
シロキサンモノマーは、式(6):
で表される一官能性シロキサンモノマーであり得て、式(6)のmは3〜10の1つの整数を表し、式(6)のnは1〜10の1つの整数を表し、式(6)のR
1は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、そして、式(6)の各R
2は独立して水素原子又はメチル基のいずれかである。言い換えれば、式1で表されたシロキサンモノマーの単一分子において、シロキサン基に隣接したCH
2基に結合された式(6)の第1のR
2は、水素原子又はメチル基のいずれかであり得て、メタクリレート末端基のCに結合された式(6)の第2のR
2もまた、式(6)の第1のR
2が水素原子かメチル基かにかかわらず、水素原子又はメチル基の何れかであり得る。式(6)のシロキサンモノマーのある特定の例では、式(6)のmが4、式(6)のnが1、式(6)のR
1がブチル基、そして、式(6)の各R
2が独立して水素原子又はメチル基のいずれかである。式(6)のシロキサンモノマーの分子量は、2,000ダルトン未満であり得る。ある例では、式(6)のシロキサンモノマーの分子量は、1,000ダルトン未満であり得る。しばしば、第1のシロキサンモノマーの分子量は、400〜700ダルトンである。式(6)のシロキサンモノマーの追加の詳細は、US20090299022から理解され得て、この全体の内容は参照することにより本明細書によって取り込まれる。式(6)からわかるように、第1のシロキサンモノマーは、単一のメタクリル酸官能末端基を有する。
【0077】
シロキサンモノマーは、式(7):
で表される二官能性シロキサンモノマーであり得て、式(7)のR
1は水素原子又はメチル基のいずれかから選択され、式(7)のR
2は水素原子又は1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基のいずれかから選択され、式(7)のmは0〜10の整数を表し、式(7)のnは4〜100の整数を表し、aとbは1又はそれ以上のの整数を表し、a+bは20〜500に等しく、b/(a+b)は0.01〜0.22に等しく、そして、シロキサンユニットの配置はランダム配置を含む。第2のシロキサンモノマーが式(7)で表されるモノマーである場合のある例では、式(7)のmは0であり、式(7)のnは5〜15の整数であり、aは65〜90の整数であり、bは1〜10の整数であり、式(7)のR
1はメチル基であり、そして、式(7)のR
2は水素原子又は1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基のいずれかである。式(7)で表されるような第2のシロキサンモノマーのある例は、該例での短縮形(abbreviated)Si2である。ある例では、この式(7)で表される第2のシロキサンモノマーについての数平均分子量は、約9,000ダルトン〜約10,000ダルトンである。他の例では、式(7)で表されるシロキサンモノマーは、約5,000ダルトン〜約10,000ダルトンである。式(7)で表される第2のシロキサンは、2つの末端のメタクリル酸基を有する二官能性シロキサンであると十分理解され得る。この第2のシロキサンモノマーの追加の詳細は、US20090234089に見ることができ、この全体の内容は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0078】
シロキサンモノマーは、式(8):
で表される二官能性シロキサンモノマーであり得て、R
3は水素原子又はメチル基のいずれかから選択され、式(8)のmは0〜15の整数を表し、そして、式(8)のnは1〜500の整数を表す。ある例では、該シロキサンモノマーは式(8)で表され、R
3がメチル基であり、式(8)のmが0であり、そして、式(8)のnが40〜60の1つの整数である。
【0079】
他の例では、シロキサンモノマーは、式(9)で表される二官能性シロキサンモノマーであり得て、該例では短縮形Si3(製品コードDMS−R18としてGelest、Inc.、Morrisville、PAから入手可能)である。
ある例では、式(9)のシロキサンの数平均分子量は、約4,000〜約4,500ダルトンである。
【0080】
ある例では、前記重合性組成物はまた、第2のシロキサンモノマーも含み得る。該第2のシロキサンモノマーは、1つ以上の官能基を有し得るか、少なくとも3,000ダルトンの数平均分子量を有し得るか、1つ以上の官能基及び少なくとも3,000ダルトンの数平均分子量の両方を有し得る。該第2のシロキサンモノマーが、2つのメタクリレート基などの2つの官能基を有する場合には、それは二官能性モノマーである。該第2のシロキサンモノマーが、3つの官能基を有する場合には、それは三官能性モノマーである。
【0081】
前記重合性組成物が、第1のシロキサン及び第2のシロキサンを含む場合には、該第1のシロキサンモノマー及び該第2のシロキサンモノマーは、該第1のシロキサンモノマーの該第2のシロキサンモノマーに対する比が、ユニット部に基づいて少なくとも1:1、又は、ユニット部に基づいて少なくとも2:1となるような量で存在し得る。例えば、該第1のシロキサンモノマー及び該第2のシロキサンモノマーは、ユニット部に基づいて約2:1〜約10:1の比で、該重合性組成物中に存在し得る。他の例では、該第1のシロキサンモノマー及び該第2のシロキサンモノマーは、ユニット部に基づいて約3:1〜約6:1の比で、該重合性組成物中に存在し得る。ある例では、該第1のシロキサンモノマー及び該第2のシロキサンモノマーは、ユニット部に基づいて約4:1の比で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0082】
前記重合性組成物が、少なくとも1種のシロキサンモノマーを含む場合には、該重合性組成物中に存在するシロキサンモノマーの総量(例えば、該重合性組成物中に存在する任意の第1のシロキサンモノマー、任意の第2のシロキサンモノマー、及び、その他の任意のシロキサンモノマーのユニット部の合計)は、約10〜約60ユニット部、約25〜約50ユニット部、又は、約35〜約40ユニット部であり得る。
【0083】
ある特定の例では、シロキサンモノマー成分が、それぞれが異なる分子量を有する少なくとも2種のシロキサンモノマーの組み合わせを含む場合には、第1のシロキサンモノマーの分子量は、2,000ダルトン未満であり得る。ある例では、該第1のシロキサンモノマーの分子量は、1,000ダルトン未満であり得る。しばしば、該第1のシロキサンモノマーの分子量は、400〜700ダルトンである。
【0084】
少なくとも1種のシロキサンモノマーが、前記重合性組成物に存在する場合には、先述のように、該少なくとも1種のシロキサンモノマーは、第1のシロキサンモノマー及び第2のシロキサンモノマーを含み得る。ある例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(5)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(4)のシロキサンモノマーから成り得る。他の例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(4)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(5)のシロキサンモノマーから成り得る。他の例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(6)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(7)のシロキサンモノマーから成り得る。他の例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(7)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(6)のシロキサンモノマーから成り得る。他の例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(4)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(7)のシロキサンモノマーから成り得る。また別の例では、該第1のシロキサンモノマーは、式(7)のシロキサンモノマーから成り得て、該第2のシロキサンモノマーは、式(4)のシロキサンモノマーから成り得る。本明細書に記載されている例のいずれか又はすべてにおいて、シロキサンモノマー成分は、第3のシロキサンモノマーを含み得る。例えば、該第3のシロキサンモノマーは、式(8)のシロキサンモノマーから成り得る。
【0085】
任意で、本開示の重合性組成物は、少なくとも1種の非ケイ素疎水性モノマーを任意に含み得る。該疎水性モノマーは、その分子構造中に存在する重合性官能基が1つだけである非シリコーン重合性原料であると理解される。該重合性組成物の少なくとも1種の疎水性モノマーは、疎水性モノマーであり得るか、少なくとも2種の疎水性モノマーで構成される疎水性モノマー成分を含み得る。本明細書で開示される重合性組成物中に用いられ得る疎水性モノマーの例は、これらに制限されるものではないが、アクリレート含有疎水性モノマー、メタクリレート含有疎水性モノマー、又は、それらの組み合わせを含む。疎水性モノマーの例は、これらに制限されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルバレレート、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、ペルフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又は、それらの組み合わせを含む。ある特定の例では、該疎水性モノマー又はモノマー成分は、MMA、EGMA、又はその両方を含み得る又はそれで構成され得る。
前記重合性組成物中に存在する場合には、該疎水性モノマー又はモノマー成分は、約5〜約25ユニット部又は約10〜約20ユニット部の量で存在し得る。
【0086】
ある例では、前記疎水性モノマー成分は、それぞれ異なる重合性官能基を有する少なくとも2種の疎水性モノマーを含み得る。他の例では、該疎水性モノマー成分は、それぞれ同じ重合性官能基を有する少なくとも2種の疎水性モノマーを含み得る。該疎水性モノマー成分は、どちらも同じ重合性官能基を有する2種の疎水性モノマーを含み得るか又はそれらで構成され得る。ある例では、該疎水性モノマー成分は、2種の疎水性メタクリレート含有モノマーを含み得るか又はそれらで構成され得る。該疎水性モノマー成分は、MMA及びEGMAを含み得るか又はそれらで構成され得る。ある例では、該疎水性モノマー成分の少なくとも2種の疎水性モノマーは、MMA及びEGMAを含むか、それらで構成され得て、前記重合性組成物中に存在するMMAのユニット部のEGMAのユニット部に対する比は、約6:1〜約1:1であり得る。該重合性組成物中に存在するMMA及びEGMAのユニット部の比は、EGMAのユニット部に対するMMAのユニット部に基づいて約2:1であり得る。
【0087】
本開示に従って、架橋剤は、その分子構造の一部として、2つ、3つ、又は4つの重合性官能基などの1つ以上の重合性官能基を有するモノマー、すなわち、二官能性、三官能性、又は四官能性モノマーなどの多官能性モノマーであると理解される。本明細書で開示される重合性組成物中に用いられ得る非ケイ素架橋剤は、例えば、これらに制限されるものではないが、アリル(メタ)アクリレート、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジ−及びトリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルフタレート、及び、ジアリルフタレート、又は、それらの組み合わせを含む。実施例1〜37に開示されるような架橋剤は、例えば、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、又は、それらの組み合わせを含む。ある例では、該架橋剤の分子量は、1500ダルトン未満、1000ダルトン未満、500ダルトン未満、200ダルトン未満であり得る。
【0088】
ある例では、前記架橋剤又は架橋剤成分は、ビニル含有架橋剤を含み得るか又はそれで構成され得る。本明細書では、ビニル含有架橋剤は、その分子構造中に存在する少なくとも2つの重合性炭素−炭素二重結合(すなわち、少なくとも2つのビニル重合性官能基)を有するモノマーであって、該ビニル含有架橋剤のビニル重合性官能基中に存在する少なくとも2つの重合性炭素−炭素二重結合のそれぞれは、アクリレート又はメタクリレート重合性官能基中に存在する炭素−炭素二重結合よりも反応性が低い。炭素−炭素二重結合は、アクリレート及びメタクリレート重合性官能基中に存在するが、本明細書で理解されるように、1種又はそれ以上のアクリレート又はメタクリレート重合性基を含む架橋剤(例えば、アクリレート含有架橋剤又はメタクリレート含有架橋剤)は、ビニル含有架橋剤とは見なされない。アクリレート又はメタクリレート重合性基の炭素−炭素二重結合よりも反応性が低い炭素−炭素二重結合を有する重合性官能基は、例えば、ビニルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、及び、アリルエステル重合性官能基を含む。このように、本明細書では、ビニル含有架橋剤は、例えば、ビニルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエステル、及び、それらの組み合わせから選択される少なくとも2種の重合性官能基を有する架橋剤を含む。本明細書では、混合ビニル含有架橋剤は、その分子構造中に存在し、アクリレート又はメタクリレート重合性官能基中に存在する炭素−炭素二重結合よりも反応性が低い少なくとも1種の重合性炭素−炭素二重結合(すなわち、少なくとも1種のビニル重合性官能基)と、その分子構造中に存在し、アクリレート又はメタクリレート重合性官能基中の炭素−炭素二重結合と少なくとも同じくらい反応性である炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1種の重合性官能基とを有する架橋剤である。
【0089】
前記重合性組成物中に存在する場合には、前記ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分は、約0.01ユニット部〜約2.0ユニット部、約0.01ユニット部〜約0.80ユニット部、約0.01ユニット部〜約0.30ユニット部、約0.05ユニット部〜約0.20ユニット部の量で、又は、約0.1ユニット部の量で存在し得る。
【0090】
ある例では、前記架橋剤又は架橋剤成分は、非ビニル含有架橋剤、すなわち、ビニル含有架橋剤ではない架橋剤を含み得るか又はそれで構成され得る。例えば、該非ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分は、アクリレート含有架橋剤(すなわち、少なくとも2種のアクリレート重合性官能基を有する架橋剤)、メタクリレート含有架橋剤(すなわち、少なくとも2種のメタクリレート重合性官能基)、又は、少なくとも1種のアクリレート含有架橋剤及び少なくとも1種のメタクリレート含有架橋剤を含み得るか又はそれで構成され得る。
【0091】
前記重合性組成物中に存在する場合には、前記非ビニル架橋剤又は架橋剤は、約0.01ユニット部〜約5ユニット部、約0.1ユニット部〜約4ユニット部、約0.3ユニット部〜約3.0ユニット部、又は、約0.2ユニット部〜約2.0ユニット部の量で存在し得る。
【0092】
前記架橋剤成分は、それぞれが異なる重合性官能基を有する2種又はそれ以上の架橋剤の組み合わせを含み得るか又はそれで構成され得る。例えば、該架橋剤成分は、1種のビニル含有架橋剤、及び、1種のアクリレート含有架橋剤を含み得る。該架橋剤成分は、1種のビニル含有架橋剤、及び、1種のメタクリレート含有架橋性基を含み得る。該架橋剤成分は、1種のビニルエーテル含有架橋剤、及び、1種のメタクリレート含有架橋剤を含み得るか又はそれらで構成され得る。
【0093】
前記重合性組成物が、少なくとも1種の架橋剤を含む場合には、架橋剤の全量(すなわち、該重合性組成物中に存在するすべての架橋剤の全ユニット部)は、約0.01ユニット部〜約5ユニット部、約0.1ユニット部〜約4ユニット部、約0.3ユニット部〜約3.0ユニット部、約0.2ユニット部〜約2.0ユニット部、又は、約0.6〜約1.5ユニット部の量であり得る。
【0094】
ある例では、本重合性組成物が、少なくとも1種のビニル含有架橋剤を含む場合には、該重合性組成物中に存在するビニル含有架橋剤の全量は、約0.01ユニット部〜約2.0ユニット部、約0.01ユニット部〜約0.80ユニット部、約0.01ユニット部〜約0.30ユニット部、約0.05ユニット部〜約0.20ユニット部の量、又は、約0.1ユニット部の量であり得る。
【0095】
前記重合性組成物が、第1のシロキサンモノマー及び少なくとも1種の架橋剤を含む場合には、該第1のシロキサンモノマー(例えば、該重合性組成物の唯一のシロキサンモノマーとして存在する第1のシロキサンモノマー、又は、2種又はそれ以上のシロキサンモノマーで構成されるシロキサンモノマー成分の一部として存在する第1のシロキサンモノマー)と該少なくとも1種の架橋剤(すなわち、単一の架橋剤又は2種又はそれ以上の架橋剤で構成される架橋剤成分)とは、該少なくとも1種の架橋剤の全ユニット質量部(すなわち、該重合性組成物中に存在するすべてのビニル含有架橋剤のユニット部の合計)に対する第1のシロキサンモノマーの全ユニット質量部に基づいて、少なくとも10:1の比率で該重合性組成物中に存在し得る。例えば、該比率は、ユニット質量部に基づいて、少なくとも25:1、少なくとも50:1、又は、少なくとも100:1であり得る。
【0096】
ある例では、前記少なくとも1種の架橋剤は、少なくとも1種のビニル含有架橋剤、及び、少なくとも1種のメタクリレート含有架橋剤を含み得る。他の例では、該少なくとも1種の架橋剤は、1種又はそれ以上のビニル含有架橋剤だけで構成され得る。他の例では、該少なくとも1種の架橋剤は、少なくとも1種のビニルエーテル含有架橋剤を含み得るか又はそれで構成され得る。また別の例では、該少なくとも1種の架橋剤は、1種又はそれ以上のビニル含有架橋剤だけで構成され得る。ある特定の例では、該少なくとも1種の架橋剤は、少なくとも1種のビニルエーテル含有架橋剤を含み得るか又はそれで構成され得る。
【0097】
前記少なくとも1種の架橋剤が、少なくとも1種のビニル含有架橋剤を含むか又はそれで構成される(すなわち、単一のビニル含有架橋剤又は2種若しくはそれ以上のビニル含有架橋剤で構成されるビニル含有架橋剤成分である)場合には、その第1のシロキサンモノマー及び少なくとも1種のビニル含有架橋剤は、該少なくとも1種のビニル含有架橋剤のユニット部の総数(すなわち、該重合性組成物中に存在するすべてのビニル含有架橋剤のユニット部の合計)に対する該第1のシロキサンモノマーのユニット部の総数の比率に基づいて、少なくとも約50:1の比率で該重合性組成物中に存在し得る。例えば、該比率は、ユニット質量部に基づいて、約50:1〜約500:1、約100:1〜約400:1、約200:1〜約300:1であり得る。
【0098】
前記重合性組成物が、少なくとも1種の架橋剤との組み合わせで、第1のシロキサンモノマー及び少なくとも1種の追加のシロキサンモノマー(すなわち、第2のシロキサン、及び任意には、第3のシロキサンモノマー、第4のシロキサンモノマーなど)、該シロキサンモノマー及び少なくとも1種のビニル含有モノマーは、該少なくとも1種のビニル含有架橋剤のユニット部の総数(すなわち、該重合性組成物中に存在するすべてのビニル含有架橋剤のユニット部の合計)に対する、該重合性組成物中に存在する各シロキサンモノマーのユニット部の総数(すなわち、該第1のシロキサン及び該第2のシロキサンモノマー、並びにもし存在する場合には、該第3のシロキサンモノマーなどのユニット部の合計)の比率に基づいて、少なくとも約100:1の比率で該重合性組成物中に存在し得る。例えば、該比率は、ユニット質量部に基づいて、約50:1〜約500:1、約100:1〜約400:1、又は、約200:1〜約300:1であり得る。
【0099】
ある例では、前記重合性組成物中に存在するシロキサンモノマーの総量(すなわち、前記第1のシロキサンモノマー、並びにもし存在する場合には、第2のシロキサンモノマー、及び、少なくとも1種の第3のシロキサンモノマーの全ユニット部)は、約30〜45ユニット部、又は、約36〜40ユニット部の量であり得る。
【0100】
前記重合性組成物は、1種又はそれ以上の有機希釈剤、1種又はそれ以上の重合開始剤(すなわち、紫外線(UV)開始剤、熱開始剤、又はその両方)、1種又はそれ以上のUV吸収剤、1種又はそれ以上の着色剤、1種又はそれ以上の酸素捕捉剤、1種又はそれ以上の連鎖移動剤、又は、それらの組み合わせを任意に含み得る。これらの任意の原料は、重合性又は非重合性原料であり得る。ある例では、該重合性組成物は、シロキサンと任意の親水性モノマー、疎水性モノマー、及び架橋剤などの他のレンズ形成用原料とを混和するための有機希釈剤を含まないような、希釈剤のない状態であり得る。加えて、多くの本重合性組成物は、本質的に水を含んでいない(例えば、わずか3.0質量%又は2.0質量%の水しか含まない)。
【0101】
本明細書で開示される重合性組成物は、1種又はそれ以上の有機希釈剤を任意に含み得て、すなわち、該重合性組成物は、有機希釈剤を含み得るか、2種又はそれ以上の有機希釈剤を含む有機希釈剤成分を含み得る。本重合性組成物に任意に含まれ得る有機希釈剤は、例えば、これらに制限されるものではないが、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、又は、それらの組み合わせなどの低級アルコールを含むアルコールを含む。含まれる場合には、該有機希釈剤又は有機希釈剤成分は、約1〜約70ユニット部、約2ユニット部〜約50ユニット部、約5ユニット部〜約30ユニット部の量で、該重合性組成物に提供され得る。
【0102】
本重合性組成物は、1種又はそれ以上の重合開始剤を任意に含み得て、すなわち、該重合性組成物は、開始剤を含み得るか、2種又はそれ以上の重合開始剤を含む開始剤成分を含み得る。本重合性組成物中に含まれ得る重合開始剤は、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、又はその両方を含む。該重合性組成物中に存在し得る開始剤は、例えば、これらに制限されるものではないが、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、アルファ、アルファ−ジエトキシアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、又は、それらの組み合わせを含む。UV光開始剤は、例えば、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Darocur(BASF、Florham Park、NJ、USAから入手可能)、Irgacur(これもまたBASFから入手可能)、又は、それらの組み合わせなどのホスフィンオキシドを含み得る。本明細書で開示される多くの実施例1〜37においては、該重合開始剤は、熱開始剤2,2’−アゾビス−2−メチルプロパンニトリル(E.I.DuPont de Nemours&Co.、Wilmington、DE、USAのVAZO−64)である。他の一般的に使用される熱開始剤は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)(VAZO−52)及び1,1’−アゾビス(シアノシクロヘキサン)(VAZO−88)を含み得る。該重合開始剤又は開始剤成分は、約0.01ユニット部〜約2.0ユニット部の量で、約0.1ユニット部〜約1.0ユニット部の量で、又は、約0.2ユニット質量部〜約0.6ユニット質量部で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0103】
任意で、本重合性組成物は、1種又はそれ以上のUV吸収剤を含み得て、すなわち、該重合性組成物は、UV吸収剤を含み得るか、2種又はそれ以上のUV吸収剤で構成されるUV吸収剤成分を含み得る。本重合性組成物中に含まれ得るUV吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、又は、それらの組み合わせを含む。本明細書で開示される多くの実施例1〜37においては、該UV吸収剤は、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(UV−416)又は2−(3−(2H−benzotriazol−2−YL)−4−ヒドロキシ−フェニル)エチルメタクリレート(Noramco、Athens、GA、USAのNORBLOC(R)7966)である。該UV吸収剤又はUV吸収剤成分は、約0.01ユニット部〜約5.0ユニット部の量で、約0.1ユニット部〜約3.0ユニット部の量で、約0.2ユニット質量部〜約2.0ユニット質量部で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0104】
色付き及び無色の両方のレンズ製品が予定されているが、本開示の重合性組成物はまた、少なくとも1種の着色剤(すなわち、1種の着色剤、又は、2種若しくはそれ以上の着色剤を含む着色剤成分)を任意に含み得る。ある例では、該着色剤は、結果として生じるレンズ製品に色合いを与えるのに有効な反応性染料又は顔料であり得る。該着色剤又は該重合性組成物の着色剤成分は、重合性着色剤を含み得るか、非重合性着色剤を含み得るか、又は、それらの組み合わせである。該重合性着色剤は、その分子構造に重合性官能基を含む着色剤であり得るか、その分子構造にモノマー部分及び染料部分の両方を含む着色剤であり得て、すなわち、該着色剤は、モノマー−染料化合物であり得る。該着色剤の分子構造は、ベータスルホン官能基を含み得るか、トリアジン官能基を含み得る。着色剤は、、例えば、VAT Blue 6(7,16−ジクロロ−6,15−ジヒドロアントラジン−5,9,14,18−テトロン)、1−アミノ−4−[3−(ベータ−スルファトエチルスフォニル)アニリオ]−2−アントラキノンスルホン酸(C.I.Reactive Blue 19、RB−19)、Reactive Blue 19とヒドロキシエチルメタクリレートのモノマー−染料化合物(RB−19 HEMA)、1,4−ビス[4−[(2−メタクリル−オキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノン(Reactive Blue 246、RB−246、Arran Chemical Company、Athlone、Irelandから入手可能)、1,4−ビス[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンビス(2−プロペン酸)エステル(RB−247)、Reactive Blue 4、RB−4、Reactive Blue 4とヒドロキシエチルメタクリレートのモノマー−染料化合物(RB−4 HEMA若しくは「Blue HEMA」)、又は、それらの組み合わせを含み得る。ある例では、該着色剤又は着色剤成分は、重合性着色剤を含み得る。該重合性着色剤成分は、例えば、RB−246、RB−274、RB−4 HEMA、RB−19 HEMA、又は、それらの組み合わせを含み得る。モノマー−染料化合物の例は、RB−4 HEMA及びRB−19 HEMAを含む。モノマー−染料化合物の追加の例は、US5944853及びUS7216975に記載されており、どちらも全体として参照することにより本明細書に組み込まれる。他の例示的な着色剤は、例えば、米国特許出願公開第2008/0048350号明細書に開示されており、その開示は全体として参照することにより本明細書に組み込まれる。本明細書で開示される多くの実施例1〜37においては、該着色剤は、US4997897に記載されているような反応性青色染料であり、その開示は全体として参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明に従った使用のために適切な他の着色剤は、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料、クロム−アルミナ−コバルトオキシド、酸化クロム、若しくは、赤、黄、茶、及び黒色のための種々の酸化鉄、又は、それらの組み合わせである。二酸化チタンなどの不透明化剤(opaquing agent)もまた取り込まれ得る。ある用途のためには、色合いの異なる着色剤の組み合わせが、着色剤成分として採用され得る。採用された場合には、該着色剤又は着色剤成分は、約0.001ユニット部〜約15.0ユニット部、約0.005ユニット部〜約10.0ユニット部、又は、約0.01ユニット部〜約8.0ユニット部の範囲の量で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0105】
連鎖移動は、成長ポリマー鎖の活性が他の分子に移される重合反応であり、最終ポリマーの平均分子量を減少させる。本開示の重合性組成物は、少なくとも1種の連鎖移動剤を任意に含み得て、すなわち、1種の連鎖移動剤を含み得るか、少なくとも2種の連鎖移動剤を含む連鎖移動剤成分を含み得る。本重合性組成物の連鎖移動剤又は連鎖移動成分として含まれ得る連鎖移動剤の例は、例えば、チオール化合物、ハロカーボン化合物、C3〜C5炭化水素、又は、それらの組み合わせを含む。本明細書で開示される多くの実施例1〜37においては、該連鎖移動剤は、アリルオキシエタノールである。該重合性組成物中に存在する場合には、該連鎖移動剤又は連鎖移動剤成分は、約0.01ユニット部〜約1.5ユニット部、例えば約0.1ユニット部〜約0.5ユニット部の量で存在し得る。
【0106】
接触角を測定する様々な方法が、当業者に公知であり、係留気泡(captive bubble)法を含む。該接触角は、静的又は動的接触角であり得る。
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの係留気泡動的進行接触角は、例えば、完全に水和された際に90度未満、完全に水和された際に80度未満、完全に水和された際に70度未満、完全に水和された際に65度未満、完全に水和された際に60度未満、又は、完全に水和された際に50度未満のように120度未満であり得る。
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの係留気泡静的接触角は、完全に水和された際に70度未満、完全に水和された際に60度未満、完全に水和された際に55度未満、完全に水和された際に50度未満、完全に水和された際に45度未満であり得る。
【0107】
本開示に従って、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの平衡含水率(EWC)は、完全に水和された際に、約30〜約70%であり得る。例えば、該コンタクトレンズのEWCは、完全に水和された際に約45質量%〜約65質量%、約50質量%〜約63質量%、約50質量%〜約67質量%、約55質量%〜約65質量%であり得る。EWCを決定する方法は、当業者に公知であり、乾燥工程中のレンズからの質量損失に基づき得る。
【0108】
本コンタクトレンズは、少なくとも55バレル(Dk≧55バレル)の酸素透過性(又はDk)、少なくとも60バレル(Dk≧60バレル)の酸素透過性、又は、少なくとも65バレル(Dk≧65バレル)の酸素透過性を有し得る。該レンズの酸素透過性は、約55バレル〜約135バレル、約60バレル〜約120バレル、約65バレル〜約90バレル、又は、約50バレル〜約75バレルであり得る。酸素透過性を決定する様々な方法が当業者に公知である。
【0109】
本コンタクトレンズは、少なくとも55バレル(Dk≧55バレル)の酸素透過性、約30%〜約70%のEWC、90度未満の係留気泡動的進行接触角、70度未満の係留気泡静的接触角、又は、それらの組み合わせを有し得る。ある例では、該コンタクトレンズは、少なくとも60バレル(Dk≧60バレル)の酸素透過性、約35%〜約65%のEWC、70度未満の係留気泡動的進行接触角、55度未満の係留気泡静的接触角、又は、それらの組み合わせを有し得る。他の例では、本コンタクトレンズは、少なくとも65バレルの酸素透過性、約45%〜約65%のEWC、70度未満の係留気泡動的進行接触角、55度未満の係留気泡静的接触角、又は、それらの組み合わせを有し得る。
【0110】
ある例では、本コンタクトレンズは、少なくとも55バレルの酸素透過性、約30%〜約70%のEWC、70度未満の係留気泡動的進行接触角、及び、55度未満の係留気泡静的接触角を有する。
ある例では、本コンタクトレンズは、完全に水和された際に、少なくとも55バレル(Dk≧55バレル)の酸素透過性、約0.2MPa〜約0.9MPaの引張係数、70度未満の係留気泡動的進行接触角、及び、55度未満の係留気泡静的接触角を有し得る。
【0111】
本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの平均引張係数は、完全に水和された際に、約0.20MPa〜約0.90MPaであり得る。例えば、該平均係数は、約0.30MPa〜約0.80MPa、約0.40MPa〜約0.75MPa、又は、約0.50 MPa〜約0.70 MPaであり得る。
本明細書では、コンタクトレンズ又はレンズ体の係数は、ヤング率としても知られている引張係数のことをいうと理解される。それは、弾性材料の剛性の評価基準である。該引張係数は、ANSI Z80.20基準に従った方法を利用して測定され得る。ある例では、該引張係数は、Instron Model 3342又はModel 3343機械的検査システムを利用して測定され得る。
【0112】
本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの平均エネルギー損失率は、完全に水和された際に、約25%〜約40%であり得る。例えば、平均エネルギー損失率は、約27%〜約40%であり得るか、約30%〜約37%であり得る。
本明細書では、エネルギー損失率は、エネルギー負荷及び除荷サイクルが粘弾性材料に適用された際に、熱として失われたエネルギーの評価基準である。エネルギー損失率は、当業者に公知の多数の方法を利用して決定され得る。例えば、試料を100%の緊張状態まで伸ばし、次に一定の速度で0%まで戻すときの力が決定されて、その材料のエネルギー損失率を計算するために使用される。
【0113】
本コンタクトレンズのイオン流量(ionoflux)は、完全に水和された際に、約8.0×10
-3mm
2/分未満、約7.0×10
-3mm
2/分未満、又は、約5.0×10
-3mm
2/分未満であり得る。イオン流量を決定する様々な方法が慣用となっており、当業者に公知である。
【0114】
ある例では、本コンタクトレンズは、湿潤抽出可能成分を有し得る。該湿潤抽出可能成分は、乾燥及び抽出試験の前に完全に水和され滅菌されたコンタクトレンズのメタノール抽出中に失われた質量に基づいて決定される。該湿潤抽出可能成分は、前記重合性組成物の未反応の又は部分的に反応した重合性原料を含み得る。非重合性原料を含む重合性組成物から形成されたレンズにとっては、該湿潤抽出可能成分は、滅菌コンタクトレンズを形成するためにレンズ体が完全に処理された後、レンズ体内に残っている有機溶剤抽出可能材料から成っている。揮発性有機溶剤を含む抽出液又は有機溶剤のない抽出液のいずれかで製造中に抽出されたレンズにとっては、多くの場合、実質的にすべての非重合性原料が、レンズ体から除去されるだろうから、該湿潤抽出可能成分は、該重合性組成物の反応性重合性原料、すなわち、未反応の重合性成分及び部分的に反応した重合性原料から形成された抽出可能成分から本質的に成るかもしれない。希釈剤のない重合性組成物から作製されたレンズにおいては、該湿潤抽出可能成分は、抽出試験前のレンズ体の乾燥質量に基づいて、約1%wt/wt〜約15%wt/wt、約2%wt/wt〜約10%wt/wt、約3%wt/wt〜約8%wt/wtの量で、コンタクトレンズ中に存在し得る。希釈剤を含む重合性組成物から作製されたレンズにおいては、該湿潤抽出可能成分は、未反応の及び部分的に反応した重合性原料だけでなく該希釈剤の一部から成るかもしれず、レンズの約1%wt/wt〜約20%wt/wt若しくは約2%wt/wt〜約15%wt/wt、又は、抽出試験前のレンズ体の乾燥質量に基づいて約3%wt/wt〜約10%wt/wtの量で、コンタクトレンズ中に存在し得る。
【0115】
ある例では、本コンタクトレンズは、乾燥抽出可能成分を有する。該乾燥抽出可能成分は、乾燥及び抽出試験前に洗浄、抽出(製造工程の一部として)、水和、又は滅菌されていないポリマーレンズ体のメタノール抽出中に失われた質量に基づいて決定される。該乾燥抽出可能成分は、前記重合性組成物の未反応の又は部分的に反応した重合性原料を含み得る。希釈剤やそのようなものなどの任意の非重合性原料が該重合性組成物中に存在する場合には、該乾燥抽出可能成分は、該非重合性原料をさらに含むかもしれない。
【0116】
希釈剤のない重合性組成物から作製されたレンズにおいては、該レンズの乾燥抽出可能成分は、主として該重合性組成物の重合性原料(すなわち、未反応の又は部分的に反応した重合性原料)により与えられた乾燥抽出可能成分から成り、また、例えば、着色剤、酸素捕捉剤、及びそのようなものなどの、少量で(例えば、3%wt/wt未満)該重合性組成物中に存在する任意の非重合性成分により与えられた乾燥抽出可能材料を含むかもしれない。希釈剤のない重合性組成物から作製されたレンズにおいては、該乾燥抽出可能成分は、レンズ体の約1%wt/wt〜約30%wt/wt、又は、抽出試験前のレンズ体の乾燥質量に基づいて約2%wt/wt〜約25%wt/wt、約3%wt/wt〜約20%wt/wt、約4%wt/wt〜約15%wt/wt、若しくは、2%wt/wt〜10%wt/wt未満の量で、ポリマーレンズ体中に存在し得る。
【0117】
多量の(例えば、3%wt/wtより多い)希釈剤などの任意の非重合性原料を含む重合性組成物から作製されたレンズにおいては、該乾燥抽出可能成分は、前記重合性組成物の非重合性原料により与えられた抽出可能成分だけでなく、反応性原料により与えられた抽出可能材料から成る。コンタクトレンズ中に存在する反応性原料及び非重合性原料により与えられた乾燥抽出可能成分の全量は、レンズの約1%wt/wt〜約75%wt/wt若しくは約2%wt/wt〜約50%wt/wt、又は、抽出試験前のポリマーレンズ体の乾燥質量に基づいて約3%wt/wt〜約40%wt/wt、約4%wt/wt〜約20%wt/wt、若しくは、約5%〜約10%の量から成り得る。重合性原料(すなわち、未反応の又は部分的に反応した重合性原料)により与えられた乾燥抽出可能成分の総量は、レンズ体の約1%wt/wt〜約30%wt/wt、又は、抽出試験前のレンズ体の乾燥質量に基づいて約2%wt/wt〜約25%wt/wt、約3%wt/wt〜約20%wt/wt、約4%wt/wt〜約15%wt/wt、若しくは、2%wt/wt〜10%wt/wt未満の量であり得る。
【0118】
本明細書に記載されている組成物から形成されたコンタクトレンズに関しては、前面及び後面を備えたレンズ体であって、該後面はコンタクトレンズ装用者の眼の角膜に接触して配置されるように作られているものであることも理解される。本発明のレンズ体は、完全に透明であり得る。あるいは、コンタクトレンズがコンタクトレンズ装用者の虹彩の外観を変えるように作られた美容レンズである場合には、レンズ体は透明な光学部を含み得る。
【0119】
本発明は、装用時に上皮組織又は他の眼の組織に接触し得るコンタクトレンズに有用である。本発明は、ソフトとハードの両方のレンズ材料を含むすべての公知のタイプのコンタクトレンズに有用である。本発明のコンタクトレンズの例では、該コンタクトレンズは、視力矯正を与えるように、視力を向上するように、又は、視力矯正を与えかつ視力を向上するように作られた少なくとも1つの光学部を備えたレンズである。例えば、該光学部は、球面矯正、円環(toric)矯正、又は、三次若しくはより高度の矯正を与えるように作られ得る。該光学部は、近見距離、遠見距離、又は、近見及び遠見距離の両方の視力を向上するように作られ得る。本発明のコンタクトレンズの他の特徴又は例は、以下のセクションで説明される。
【0120】
本ヒドロゲルコンタクトレンズは、視力矯正用又は視力強化用コンタクトレンズである。該レンズは、球面レンズ又は非球面レンズであってもよい。該レンズは、単焦点レンズ又は二焦点レンズを含む多焦点レンズであってもよい。ある例では、本レンズは、回転安定化円環コンタクトレンズなどの回転安定化レンズである。回転安定化コンタクトレンズは、バラスト(ballast)を含むレンズ体を含むコンタクトレンズであってもよい。例えば、該レンズ体は、プリズムバラスト、ペリバラスト、及び/又は、1種若しくはそれ以上の薄層化上下部を有してもよい。
【0121】
本レンズはまた、周辺端部領域を含むレンズ体を含む。該周辺端部領域は、円形部分を含んでもよい。例えば、該周辺端部領域は、円形後端部面、円形前端部面、又は、それらの組み合わせを含んでもよい。該周辺端部は、前面から後面に完全に曲がり得る。したがって、本レンズのレンズ体は円形周辺端部を含んでもよいことが理解され得る。
【0122】
本開示のコンタクトレンズは、動物又はヒトの眼の角膜上に設置又は配置されるように作られるので、眼科的に許容可能なコンタクトレンズである。本明細書では、眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、以下に記載されるような多数の異なる特性のうち少なくとも1種を有するコンタクトレンズであると理解される。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、眼科的に許容可能な原料で形成されパッケージされ得て、該レンズは、細胞毒性でなく、装用中に刺激性及び/又は毒性の原料を放出しない。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、該レンズの光学部(すなわち、視力矯正を与える該レンズの一部分)に、眼の角膜と接触して目的とする用途のために十分なレベルの透明性、例えば、可視光の少なくとも80%、少なくとも90%、又は、少なくとも95%の透過率を有し得る。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、その目的とする耐用期間に基づく継続時間に、レンズの取り扱い及び手入れを容易にする十分な機械的特性を有し得る。例えば、そのモジュラス、引張強度、及び、伸長は、レンズの目的とする耐用期間の間、挿入、装用、除去、及び、任意で洗浄に耐えるのに十分であり得る。適切なこれらの特性のレベルは、目的とする耐用期間及びレンズの用法(例えば、単回使用の毎日の使い捨て、月ごとの多重使用など)に依存して変化するだろう。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、8時間又はそれ以上の間、角膜上にレンズを継続装用した後に、表面的又は中程度の角膜染色よりも重度の角膜染色などの角膜染色を実質的に阻害する又は実質的に予防するのに有効な又は適切なイオン流量を有し得る。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、長期的な角膜の健康のために適切な量で、レンズを装用している眼の角膜に酸素が達するのに十分なレベルの酸素透過性を有する。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、レンズを装用している眼における実体のある又は過度の角膜腫脹を引き起こさない、例えば、一晩睡眠中に眼の角膜上に装用された後でもわずか約5%又は10%の角膜腫脹しか引き起こさないレンズであり得る。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、レンズを装用している眼の角膜上において、レンズと眼の間に涙液流を促すのに十分にレンズが動けるレンズであり得て、言い換えれば、レンズを通常のレンズの動きを妨げるのに十分な力で眼に接着させず、視力矯正を可能とするのに十分低いレベルの眼における動きを有する。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、過度の若しくは重大な不快感、刺激、及び/又は、痛みなしに、眼へレンズを装用できるようにするレンズであり得る。眼科的に許容可能なコンタクトレンズ、レンズ装用者にそのような沈着のためにレンズを外させるほどの脂質及び/又はタンパク質の沈着を阻害する又は実質的に予防するレンズであり得る。眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、少なくとも1日の間、眼科的に適合したコンタクトレンズのコンタクトレンズ装用者による装用を促すのに有効な含水量、表面湿潤性、モジュラス若しくは設計、又は、それらの組み合わせのうち少なくとも1種を有し得る。眼科的に適合した装用は、不快感がわずかであるか又はなく、かつ角膜染色の発生がわずかであるか又はない、レンズ装用者によるレンズの装用のことをいうと理解される。コンタクトレンズが眼科的に許容可能であるか決定することは、当業者に理解されるようなアイ・ケア施術者によって行われるものなどの慣用の臨床的方法を利用して達成され得る。
【0123】
本開示のある例では、前記コンタクトレンズは、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有し得る。例えば、該コンタクトレンズは、ポリマーレンズ体を形成するのに使用された重合性組成物が内部湿潤剤を含まない場合、ポリマーレンズ体を形成するのに使用された重合性組成物が有機希釈剤を含まない場合、ポリマーレンズ体が水若しくは揮発性有機溶剤を含まない水性溶液中で抽出された場合、ポリマーレンズ体が表面プラズマ処理を含まない場合、又は、それらの組み合わせの場合に、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有し得る。
【0124】
コンタクトレンズ表面の湿潤性を上昇させるために当技術分野で一般的に用いられる1つの手段は、レンズ表面に処理を施すこと又はレンズ表面を改質することである。本開示に従って、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、表面処理又は表面改質の存在なしに、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有し得る。表面処理は、例えば、レンズ表面の親水性を上昇させるプラズマ及びコロナ処理を含む。1種又はそれ以上の表面プラズマ処理を本レンズ体に施すことは可能ではあるが、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。言い換えれば、ある例では、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、表面のプラズマ又はコロナ処理がないことがあり得る。
【0125】
表面改質は、親水性ポリマーなどの湿潤剤を、化学的結合又は他の形態の化学的相互作用によって、少なくともレンズ表面に結合することのように、湿潤剤をレンズ表面に結合することを含む。ある場合には、該湿潤剤は、レンズ表面にもレンズのポリマーマトリックスの少なくとも一部、すなわち、レンズの大部分の少なくとも一部にも、化学的結合又は他の形態の化学的相互作用によって結合され得る。本開示の眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面は、少なくともレンズ表面に結合された湿潤剤(例えば、ポリマー材料又は非ポリマー材料)の存在なしに、眼科的に許容可能に湿潤性であり得る。1種又はそれ以上の湿潤剤を本発明のレンズに結合することは可能ではあるが、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。このように、ある例では、本開示のレンズは、レンズの表面に結合された、例えば、ポリビニルピロリドンを含む親水性ポリマーなどの湿潤剤を含み得る。あるいは、他の例では、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズの表面に結合された湿潤剤を含まないことがあり得る。
【0126】
レンズの湿潤性を上昇させる他の方法は、レンズ体が膨張した際に湿潤剤をレンズ体内へ導入し、そして該レンズ体を低い膨張状態に戻し、それによって湿潤剤の一部を該レンズ体内に取り込むことなどによって、物理的に湿潤剤をレンズ体又はコンタクトレンズ内に取り込むことである。該湿潤剤は、永久的にレンズ体内に捕捉され得るか、又は、装用中などの時間とともにレンズから放出され得る。本開示の眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面は、ポリマーレンズ体の形成に従って物理的にレンズ体内に取り込まれた湿潤剤(例えば、ポリマー材料又は非ポリマー材料)の存在なしに、眼科的に許容可能に湿潤性であり得る。1種又はそれ以上の湿潤剤を本レンズ内に物理的に取り込むことは可能ではあるが、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。このように、ある例では、本開示のレンズは、レンズ内に取り込まれた、例えば、ポリビニルピロリドンを含む親水性ポリマーなどの湿潤剤を含み得る。あるいは、本開示のヒドロゲルコンタクトレンズ、例えば、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズ内に物理的に取り込まれた湿潤剤を含まないことがあり得る。本明細書では、物理的に取り込まれたとは、湿潤剤及び又は他の原料とポリマーマトリックスとの間のわずかな化学結合又は化学的相互作用で又はなしで、湿潤剤又は他の原料をレンズのポリマーマトリックス内に固定することをいう。これは、イオン結合、共有結合、ファン・デル・ワールス力、及び、そのようなものなどによって化学的にポリマーマトリックスに結合された原料とは対照的である。
【0127】
ヒドロゲルコンタクトレンズ、例えばシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの湿潤性を上昇させるために当技術分野で一般的に用いられる他の手段は、1種又はそれ以上の湿潤剤を前記重合性組成物に添加することを含む。ある例では、該湿潤剤は、ポリマー湿潤剤であり得る。しかしながら、ポリマーレンズ体を形成するのに使用された重合性組成物が湿潤剤を含まない場合に、本開示のコンタクトレンズは、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有し得る。本開示のヒドロゲルコンタクトレンズの湿潤性を上昇させるために、本重合性組成物中に1種又はそれ以上の湿潤剤を含ませることは可能ではあるが、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。言い換えれば、ある例では、本開示のヒドロゲルコンタクトレンズは、湿潤剤を含まない重合性組成物から形成され得る。あるいは、他の例では、本発明の重合性組成物は、さらに湿潤剤を含み得る。
【0128】
ある例では、前記湿潤剤は、内部湿潤剤であり得る。該内部湿潤剤は、レンズのポリマーマトリックスの少なくとも一部分内に結合され得る。例えば、該内部湿潤剤は、化学的結合又は他の形態の化学的相互作用によって、レンズのポリマーマトリックスの少なくとも一部分内に結合され得る。ある場合には、該湿潤剤は、レンズ表面にも結合されてもよい。該内部湿潤剤は、ポリマー材料又は非ポリマー材料を含み得る。本レンズのポリマーマトリックス内に1種又はそれ以上の内部湿潤剤を結合することは可能ではあるが、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。このように、ある例では、本開示のレンズは、レンズのポリマーマトリックスの少なくとも一部分内に結合された内部湿潤剤を含み得る。あるいは、他の例では、本開示のヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズのポリマーマトリックスの少なくとも一部分内に結合された内部湿潤剤を含まないことがあり得る。
【0129】
他の例では、前記湿潤剤は、内部ポリマー湿潤剤であり得る。該内部ポリマー湿潤剤は、相互貫入(interpenetrating)ポリマーネットワーク(IPN)又はセミ−IPNの一部として、ポリマーレンズ体内に存在し得る。相互貫入ポリマーネットワークは、少なくとも2種のポリマーにより形成され、そのそれぞれが自身と架橋されるが、どちらも互いには架橋しない。同様に、セミ−IPNは、少なくとも2種のポリマーにより形成され、その少なくとも1種は、自身とは架橋されるが他のポリマーとは架橋されず、他方は自身とも他のポリマーとも架橋されない。本開示のある例では、ポリマーレンズ体がIPN又はセミ−IPNとしてレンズ体内に存在する内部ポリマー湿潤剤を含まない場合には、該コンタクトレンズは、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有し得る。あるいは、該コンタクトレンズは、IPN又はセミ−IPNとしてレンズ体内に存在する内部ポリマー湿潤剤を含み得る。
【0130】
また別の例では、前記湿潤剤は、レンズ体を形成するために利用される重合性組成物中に存在する連結化合物、又は、レンズ体が形成された後にポリマーレンズ体内に物理的に取り込まれる連結剤であり得る。該湿潤剤が連結化合物である場合には、レンズ体の重合化後又は連結剤のポリマーレンズ体内への取り込み後に、それに続いて該連結化合物は、該レンズ体が該湿潤剤に接触された際に第2の湿潤剤を該レンズ体に連結し得る。該連結は、製造工程の一部、例えば洗浄工程として起こり得るか、該レンズ体がパッケージ用溶液に接触される際に起こり得る。該連結は、イオン結合若しくは共有結合の形態、又は、ファン・デル・ワールス力の形態をとり得る。該連結剤はボロン酸部分又は基を含み得て、重合化ボロン酸部分又は基が該ポリマーレンズ体中に存在するか、ボロン酸部分又は基が該ポリマーレンズ体中に物理的に取り込まれる。例えば、該連結剤がボロン酸の形態を含む場合には、第2の湿潤剤は、該ボロン酸の形態と結合するポリ(ビニルアルコール)の形態を含み得る。任意には、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、連結剤を含まないと理解され得る。ある例では、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、重合化ボロン酸部分又は基を含むボロン酸部分又は基を含まないことがあり得て、すなわち、具体的には、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例えば、ビニルフェニルボロン酸(VPB)を含む重合性形態のボロン酸などのボロン酸の形態を含まない重合性組成物から形成され得るか、ビニルフェニルボロン酸(VPB)などの重合性形態のボロン酸に由来するユニットを含まないポリマーから形成され得て、該ポリマーレンズ体及び該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、その中に物理的に取り込まれたポリマー又は非ポリマー形態のボロン酸を含むボロン酸の形態を含まないことがあり得る。あるいは、該重合性組成物、該ポリマーレンズ体、該ヒドロゲルコンタクトレンズ、又は、それらの組み合わせは、少なくとも1種の連結剤を含み得る。
【0131】
前記重合性組成物中に湿潤剤を含むこと及びレンズ表面を改質することに加えて、揮発性有機溶剤又は揮発性有機溶剤の水性溶液中でポリマーレンズ体を洗浄することが、レンズ表面、とりわけシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ表面の湿潤性を増加させるために行われている。揮発性有機溶剤又は揮発性有機溶剤の水性溶液中で本ポリマーレンズ体を洗浄することは可能ではあるが、本開示に従って、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するヒドロゲルコンタクトレンズを得るためには、そのようにすることは必要ない。言い換えれば、ある例では、本発明のヒドロゲルコンタクトレンズは、製造工程の一部としては、揮発性有機溶剤の溶液を含む揮発性有機溶剤には曝されなかった。ある例では、本発明のヒドロゲルコンタクトレンズは、湿潤剤を含まない重合性組成物から形成され得るか、該ポリマーレンズ体及び/又は水和コンタクトレンズは、湿潤剤を含まない、表面処理を含まない、若しくは、表面改質を含まないことがあり得るか、製造工程中に揮発性有機溶剤に曝されなかったか、又は、それらの組み合わせである。その代わりに、例えば、該ヒドロゲルコンタクトレンズは、揮発性低級アルコールを含まない液体を含む、例えば水又は揮発性有機溶剤を含まない水性溶液などの揮発性有機溶剤を含まない洗浄液中で洗浄され得る。
【0132】
レンズ体を抽出するために揮発性有機溶剤を使用することは、有機溶剤の費用、該溶剤の処分費用、防爆性製造装置を使用する必要性、パッケージングの前にレンズから該溶剤を除去する必要性、及び、そのようなものなどの要因のために、製造費用の大きな要因となる。しかしながら、揮発性有機溶剤を含まない水性液体中で抽出された場合に眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するコンタクトレンズを一貫して製造することができる重合性組成物を開発することは、困難であり得る。例えば、揮発性有機溶剤を含まない水性液体中で抽出されたコンタクトレンズのレンズ表面上に存在する乾燥領域を見つけることはよくあることである。
【0133】
先述のように、本開示のある例においては、前記コンタクトレンズは、それらの製造中に低級アルコールなどの揮発性有機溶剤に曝されなかったコンタクトレンズである。言い換えれば、そのようなレンズのために使用される洗浄、抽出、及び水和液も、湿式離型、湿式レンズ取出し、洗浄、又は、その他の製造段階中に使用されるすべての液体も、すべて揮発性有機溶剤を含まない。ある例では、揮発性有機溶剤に接触されないこれらのレンズを形成するために使用される重合性組成物は、例えば、親水性ビニルエーテル含有モノマーなどの親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分を含み得る。該ビニル含有親水性モノマー又はモノマー成分は、例えばVMAを含み得る。該ビニルエーテル含有モノマーは、例えば、BVE、EGVE、DEGVE、又は、それらの組み合わせを含み得る。ある特定の例では、該ビニルエーテル含有モノマーは、例えばDEGVEなどの、BVEよりも親水性であるビニルエーテル含有モノマーであり得る。他の例では、該重合性組成物の親水性モノマー成分は、ビニル含有モノマーではあるがビニルエーテル含有モノマーではない第1の親水性モノマーと、ビニルエーテル含有モノマーである第2の親水性モノマーとの混合物であり得る。そのような混合物は、例えば、VMAと、例えばBVE、DEGVE、EGVE、又は、それらの組み合わせなどの1種又はそれ以上のビニルエーテルとの混合物を含む。
【0134】
存在する場合には、前記親水性ビニルエーテル含有モノマー又はモノマー成分は、約1〜約15ユニット部又は約3〜約10ユニット部の量で、前記重合性組成物中に存在し得る。ビニルエーテルではない親水性ビニル含有モノマーとの混合物として存在する場合には、ビニルエーテルではない親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分及び親水性ビニルエーテル含有モノマー又はモノマー成分の部分は、親水性ビニルエーテル含有モノマー又はモノマー成分のユニット質量部に対するビニルエーテルではない親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分のユニット質量部の比率に基づいて、少なくとも3:1、約3:1〜約15:1、又は、約4:1の比率で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0135】
本開示に従って、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有するコンタクトレンズ、とりわけ揮発性有機溶剤を含まない液体中で抽出されたレンズであって製造中に揮発性有機溶剤に接触されないレンズを含むものを製造する他の手段は、前記重合性組成物中に含まれるビニル含有架橋剤又は架橋剤成分の量を制限することであり得る。例えば、ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分は、約0.01〜約0.80ユニット部、0.01〜約0.30ユニット部、若しくは、約0.05〜約0.20ユニット部の量で、又は、約0.1ユニット部の量で、該重合性組成物中に存在し得る。ある例では、ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分は、ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分の量が約2.0ユニット部より大きい、1.0ユニット部より大きい、約0.8ユニット部より大きい、約0.5ユニット部より大きい、又は、約0.3ユニット部より大きいことを除いて同一の重合性組成物から製造されるコンタクトレンズと比較して、湿潤性が改善されたコンタクトレンズを製造するのに有効な量で、該重合性組成物中に存在し得る。
【0136】
前記ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分の量を制限することは、湿潤性を改善し得るが、ある例では、前記重合性組成物中にビニル含有架橋剤又は架橋剤成分を含めることは、結果として該重合性組成物から形成されるコンタクトレンズの寸法安定性を改善し得る。このように、ある重合性組成物においては、ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分は、該ビニル含有架橋剤又は架橋剤成分を含まないことを除いて同一の重合性組成物から製造されたコンタクトレンズと比較して、寸法安定性が改善されたコンタクトレンズを製造するのに有効な量で、重合性物中に存在し得る。
【0137】
本開示に従って、眼科的に許容可能に湿潤性の表面を有するコンタクトレンズ、とりわけ揮発性有機溶剤を含まない液体中で洗浄されたレンズを製造するためのまた別の手段は、前記重合性組成物中に、該組成物中に存在するビニル含有架橋剤又は架橋剤成分のユニット質量部に対する該組成物中に存在する親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分のユニット質量部の比率に基づいて、ある量のビニル含有架橋剤又は架橋剤成分を含むことであり得る。例えば、親水性ビニル含有モノマー又はモノマー成分の総ユニット部及びビニル含有架橋剤又は架橋剤成分の総ユニット部は、該重合性組成物中に存在するすべてのビニル含有架橋剤の総ユニット質量部に対する該重合性組成物中に存在するすべての親水性ビニル含有モノマーのユニット質量部の比率に基づいて、約125:1より大きく、又は、約150:1〜約625:1、約200:1〜約600:1、約250:1〜約500:1、若しくは、約450:1〜約500:1であり得る。
【0138】
ある例では、本開示のコンタクトレンズは、眼科的に相性が良いシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。多くの異なる基準が、後述するように、コンタクトレンズが眼科的に相性が良いか否かを決定するために評価され得る。ある例では、眼科的に許容可能なコンタクトレンズは、完全に水和された際に眼科的に許容可能に湿潤性の表面を有する。眼科的に許容可能に湿潤性の表面を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、レンズ装用者がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを眼に配置又は装用することに関連した不快感を経験又は報告する結果となる程度には、レンズ装用者の眼の涙液層に悪影響を与えないシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのことをいうと理解され得る。
【0139】
開示された重合性組成物の例は、当初調製された際には混和性であり得て、例えば、約2週、約1週、又は、約5日の間などのコンタクトレンズの商業的生産に適した期間にわたって混和性のままであり得る。典型的には、重合化されコンタクトレンズに加工された場合には、混和性重合性組成物は、眼科的に許容可能な透明性を有するコンタクトレンズをもたらす。
【0140】
親水性モノマーとシロキサンモノマーを含む親水性が低い又は比較的疎水性のモノマーとの混和性を増加させるために一般的に利用される手段は、より親水性のモノマーと親水性の低いモノマーの間の相溶化剤(compatiblizer)として働くために、前記重合性組成物に有機希釈剤を添加することを含む。例えば、シロキサンモノマーは、典型的にはより疎水性である。また、シロキサンモノマーを使用した場合には、低分子量(例えば、2500ダルトン以下の分子量)のシロキサンモノマーだけを使用することも、混和性を増加させ得る。該重合性組成物が第1のシロキサン及び第2のシロキサンモノマーを含むある例では、上述の式(6)の第1のシロキサンを使用すると、任意の高分子量の第2のシロキサン及び高レベルの少なくとも1種の親水性モノマーの両方を、本開示の重合性組成物中に含むことが可能になる。1種又はそれ以上の有機希釈剤を、本明細書で開示される本重合性組成物中に含むことは可能ではあるが、本開示に従って、混和性重合性組成物を得るためには、そのようにすることは必要ないかもしれない。言い換えれば、ある例では、本開示のヒドロゲルコンタクトレンズは、有機希釈剤を含まない重合性組成物から形成される。
【0141】
本ヒドロゲルコンタクトレンズは、密封パッケージ中に提供されてもよい。例えば、本ヒドロゲルコンタクトレンズは、密封ブリスター包装、又は、レンズ装用者に届けるのに適した他の同様の容器中に提供されてもよい。該レンズは、該パッケージ内で、生理食塩水溶液などの水性溶液中に保管されてもよい。ある適切な溶液は、リン酸緩衝生理食塩水溶液及びホウ酸緩衝溶液を含む。該溶液は、望むのであれば殺菌剤を含んでもよいか、殺菌又は保存剤を含まなくてもよい。該溶液はまた、望むのであればポロキサマーやそのようなもののなどの界面活性剤を含んでもよい。
【0142】
前記密封パッケージ中のレンズは、好ましくは無菌である。例えば、該レンズは、パッケージの密封前に滅菌され得るか、密封パッケージ中で滅菌され得る。該滅菌レンズは、滅菌用量の放射線に曝されたレンズであってもよい。例えば、該レンズは、オートクレーブされたレンズ、ガンマ線照射したレンズ、紫外線照射したレンズ、及び、そのようなものであってもよい。
【0143】
コンタクトレンズパッケージに関して、該パッケージはさらに、前記コンタクトレンズ体及び前記パッケージ用溶液を入れるために構成された空洞を備えた基部部材、並びに、該基部部材に取り付けられ、該コンタクトレンズの保存可能期間に相当する期間中、該コンタクトレンズ及び該パッケージ用溶液を無菌状態で保持するために構成されたシールを含みる。
【0144】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのある特定の例は、本教示に従って今から記載される。
1つの例(例A)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種の親水性モノマー、少なくとも1種のホスフィン含有化合物、及び、少なくとも1種のシロキサンモノマーを含む重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含む。ある例では、少なくとも1種のモノマーは、式(6)で表される第1のシロキサンモノマーを含み、式(6)のmは3〜10の1つの整数を表し、式(6)のnは1〜10の1つの整数を表し、R
1は1〜4の炭素原子を有するアルキル基であり、式(6)の各R
2は独立して水素原子又はメチル基のいずれかである。
【0145】
第2の例(例B)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例Aで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、重合性物は、さらに第2のシロキサンモノマーを含む。ある例では、第1のシロキサンモノマー及び第2のシロキサンモノマーは、該重合性組成物中に存在する第2のシロキサンモノマーのユニット質量部に対する第1のシロキサンモノマーのユニット質量部に基づいて、少なくとも2:1の比率で存在し得る。
【0146】
第3の例(例C)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A又はBで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらに疎水性モノマー又はモノマー成分を含む。例えば、親水性モノマーは、メチルメタクリレート(MMA)、EGMA、又は、それらの組み合わせを含み得るか又はそれで構成され得る。
【0147】
第4の例(例D)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、又はCで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらにビニル含有架橋剤又は架橋剤成分を含む。ある例では、該架橋剤又は架橋剤成分は、ビニルエーテル含有架橋剤又は架橋剤成分を含み得るか又はそれで構成され得て、具体的には、該架橋剤又は架橋剤成分は、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGVE)を含み得るか又はそれで構成され得る。
【0148】
第5の例(例E)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、又はDで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらに熱開始剤又は熱開始剤成分を含む。
【0149】
第6の例(例F)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、又はEで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、前記少なくとも1種の親水性モノマーは、第1の親水性モノマー及び第2の親水性モノマーを含む親水性モノマー成分を含む。ある例では、該第1の親水性モノマーは親水性アミド含有モノマーを含み得て、該第2の親水性モノマーはビニルエーテル含有モノマーを含み得る。
【0150】
第7の例(例G)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、又はFで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらにUV吸収剤又はUV吸収剤成分を含む。
【0151】
第8の例(例H)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、又はGで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらに着色剤又は着色剤成分を含む。
【0152】
第9の例(例I)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、G、又はHで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、式(5)で表されるシロキサンモノマーを含み、式(5)のR
1は水素原子又はメチル基のいずれかから選択され、式(5)のR
2は水素又は1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基のいずれかから選択され、式(5)のmは0〜10の整数を表し、式(5)のnは4〜100の整数を表し、a及びbは1又はそれ以上の整数を表し、a+bは20〜500に等しく、b/(a+b)は0.01−0.22に等しく、そして、そして、シロキサンユニットの配置はランダム配置を含む。ある例では、該シロキサンモノマーは、式(5)で表され得て、式(5)のmは0であり、式(5)のnは5〜10の1つの整数であり、aは65〜90の1つの整数であり、bは1〜10の1つの整数であり、式(5)のR
1はメチル基であり、そして、式(5)のR
2は水素原子又は1〜4個の炭素原子を有する炭化水素基のいずれかである。
【0153】
第10の例(例J)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、G、H、又はIで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、さらにメタクリレート含有架橋剤又は架橋剤成分を含み、具体的には、該架橋剤又は剤成分は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含み得るか又はそれで構成され得る。この例では、該重合性組成物が、該架橋剤成分の一部としてビニルエーテル含有架橋剤を含む場合には、具体的には、該架橋剤成分は、具体的にはエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を含み得るか又はそれで構成され得るメタクリレート含有架橋剤と組み合わせて、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TGDVE)を含み得るか又はそれで構成され得る。この例では、該重合性組成物が、反応性比がそれぞれ異なる2種の架橋剤を含むこと、すなわち、該重合性組成物が、ビニル含有架橋剤及びメタクリレート含有架橋剤を含むか又はそれらで構成される架橋剤成分を含み、該メタクリレート含有架橋剤は、該ビニル含有架橋剤中に存在するビニル重合性官能基よりも反応性が高くてより速い速度で反応する重合性官能基を有することが、十分理解され得る。
【0154】
第11の例(例K)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、G、H、I、又はJで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該重合性組成物は、具体的にはアリルオキシエタノール(AE)を含み得るか又はそれで構成され得る連鎖移動剤又は連鎖移動剤成分をさらに含む。
【0155】
第12の例(例L)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、又はKで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、前記少なくとも1種の親水性モノマーが、親水性ビニルエーテル含有モノマー又はモノマー成分を含み、例えば、親水性ビニルエーテル含有モノマー又はモノマー成分が、1,4−ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又は、それらの組み合わせを含み得るか又はそれで構成され得る。
【0156】
第13の例(例M)としては、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、例A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、又はLで記載したような重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含み、該コンタクトレンズは、レンズを形成するために使用された重合性組成物が内部湿潤剤を含まない場合、ポリマーレンズ体を形成するのに使用された重合性組成物が有機希釈剤を含まない場合、ポリマーレンズ体が揮発性有機溶剤を含まない液体中で抽出された場合、該レンズが表面プラズマ処理を有さない場合、又は、それらの組み合わせにおいて、眼科的に許容可能に湿潤性のレンズ表面を有する。
【0157】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、第1のシロキサンモノマーの量は、前記重合性組成物の20〜45ユニット部であり得る。第1のシロキサンモノマーの量は、該重合性組成物の25〜40ユニット部であり得る。第1のシロキサンモノマーの量は、該重合性組成物の27〜35ユニット部であり得る。
【0158】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、任意の第2のシロキサンモノマーの量は、前記重合性組成物の1〜20ユニット部であり得る。第2のシロキサンモノマーの量は、該重合性組成物の2〜15ユニット部であり得る。第2のシロキサンモノマーの量は、該重合性組成物の5〜13ユニット部であり得る。他の例では、第1のシロキサンモノマーの第2のシロキサンに対するユニット部の比率は、少なくとも1:1又は少なくとも2:1であり得る。
【0159】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、該重合性組成物中に存在する親水性モノマー又はモノマー成分の量は、前記重合性組成物の1〜60ユニット部であり得る。該親水性モノマー成分は、該重合性組成物の4〜60ユニット部を構成し得る。該親水性モノマーがVMAを含むか又はそれで構成される場合には、それは30ユニット部〜60ユニット部の量で存在し得る。VMAは、約40ユニット部〜約50ユニット部の量で、該重合性組成物中に存在し得る。親水性モノマーである、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシルブチルメタクリレート(HOB)、又は、それらの組み合わせが、親水性モノマー成分中の親水性モノマーとして該重合性組成物中に存在する場合には、それぞれ又はすべてが約3〜約10ユニット部の量で存在し得る。
【0160】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、前記重合性組成物中に存在する疎水性モノマー又はモノマー成分の量は、該重合性組成物の1〜30ユニット部であり得る。例えば、疎水性モノマー又はモノマー成分の総量は、該重合性組成物の約5〜約20ユニット部であり得る。疎水性モノマーMMAが疎水性モノマーとして又は疎水性モノマー成分の一部として存在する重合性組成物においては、該MMAは、約5〜約20ユニット部又は約8〜約15ユニット部の量で存在し得る。
【0161】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、前記重合性組成物中に存在する架橋剤又は架橋剤成分の量は、該重合性組成物の0.01〜4ユニット部であり得る。TEGDVEは、0.01〜1.0ユニット部の量で存在し得る。EGDMAは、0.01〜1.0ユニット部の量で存在し得る。TEGDMAは、0.1〜2.0ユニット部の量で存在し得る。これらの非ケイ素架橋剤のそれぞれは、該重合性組成物中に単独で又は任意の組み合わせで存在し得る。
【0162】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、前記重合性組成物がEGMA、BVE、DEGVE、EGVE、又は、それらの組み合わせを含む場合には、それらは該重合性組成物の1ユニット部〜20ユニット部の量でそれぞれ存在し得る。EGMAは、約2ユニット部〜約15ユニット部の量で存在し得る。BVEは、1ユニット部〜約15ユニット部の量で存在し得る。BVEは、約3ユニット部〜約7ユニット部の量で存在し得る。DEGVEは、1ユニット部〜約15ユニット部の量で存在し得る。DEGVEは、約7ユニット部〜約10ユニット部の量で存在し得る。EGVEは、1ユニット部〜約15ユニット部の量又は約3ユニット部〜約7ユニット部の量で存在し得る。
【0163】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、開始剤若しくは開始剤成分、着色剤若しくは着色剤成分、UV吸収剤若しくはUV吸収剤成分、又は、連鎖移動剤若しくは連鎖移動剤成分などの他の任意成分は、約0.01ユニット部〜約3ユニット部の量でそれぞれ存在し得る。開始剤又は開始剤成分は、0.1ユニット部〜1.0ユニット部の量で重合性物中に存在し得る。Vazo−64などの熱開始剤又は熱開始剤成分が存在する場合には、それは約0.3〜約0.5ユニット部の量で存在し得る。着色剤又は着色剤成分は、0.01ユニット部〜1ユニット部の量で存在し得る。Reactive Blue 246又はReactive Blue 247などの反応性染料が着色剤又は着色剤成分の一部として使用された場合には、それらは約0.01ユニット部の量でそれぞれ存在し得る。UV吸収剤又はUV吸収剤成分は、0.1ユニット部〜2.0ユニット部の量で存在し得る。例えば、以下の実施例1〜37に記載されているUV吸収剤UV1は、0.9ユニット部などの約0.8〜約1.0ユニット部の量で存在し得て、以下の実施例1〜37に記載されているUV吸収剤UV2は、約0.9ユニット部〜約2.1ユニット部などの0.5ユニット部〜2.5ユニット部の量で存在し得る。酸素捕捉剤又は酸素捕捉剤成分は、0.1ユニット部〜1.0ユニット部の量で存在し得る。例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)、ジフェニル(P−ビニルフェニル)ホスフィン(pTPP)、又は、それらの組み合わせが、該重合性組成物中でホスフィン含有化合物として使用された場合には、それぞれ又は組み合わせが、約0.5ユニット部などの0.3ユニット部〜0.7ユニット部の量で存在し得る。連鎖移動試薬又は連鎖移動試薬成分は、0.1ユニット部〜2.0ユニット部の量で該重合性組成物中に存在し得て、以下の実施例1〜37の多くでは、0.2ユニット部〜1.6ユニット部の量で存在する。例えば、連鎖移動試薬アリルオキシエタノール(AE)は、約0.3〜約1.4ユニット部の量で存在し得る。
【0164】
前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されている他の例のいずれか又はすべてにおいても、前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、重合性組成物中、ポリマーレンズ体中、又は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ中に存在する湿潤剤を含まないことがあり得る。同様に、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、表面処理又は表面改質のないレンズ表面を有し得る。しかしながら、他の例では、該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、重合性組成物中、ポリマーレンズ体中、又は、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ中に、少なくとも1種の湿潤剤(すなわち、単一の湿潤剤又は湿潤剤成分として存在する2種若しくはそれ以上の湿潤剤)含み得る。該シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、処理又は改質されたレンズ表面を有し得る。加えて又はあるいは、前述の例A〜Mのいずれか又はそれぞれにおいても、本明細書で開示されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの他の例のいずれか又はすべてにおいても、該コンタクトレンズは、例えばボロン酸の形態などの連結剤を含まないと理解され得る。
【0165】
他の例では、新規の重合性組成物が提供され、これは前記シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ及び方法に関連して本明細書に記載されているありとあらゆる重合性組成物を含む。該重合性組成物は、それらが該重合性組成物の相分離を軽減するのに役立ち得るアルコールやそのようなものなどの有機溶剤を含まないという点において、希釈剤を含まないものであり得る。しかしながら、そのような希釈剤を含まない重合性組成物はそれでも、アリルオキシエタノールなどの1種又はそれ以上の連鎖移動剤を含み得る。しかしながら、望むのであれば、該重合性組成物は、希釈剤又は希釈剤成分を含み得て、それは1〜20ユニット部の量で存在し得る。
【0166】
本明細書に記載のとおり、少なくとも1種の親水性モノマーに由来するユニットを含むポリマーレンズ体を含む本ヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種の親水性モノマー及び少なくとも1種のシロキサンモノマーに由来するユニットを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含み、完全に水和された際には、バッチの少なくとも20個の個別のレンズについて決定された値の平均に基づいて、約30%wt/wt〜約70%wt/wtの平均平衡含水率(EWC)、少なくとも55バレルの平均酸素透過性、70度未満の平均係留気泡動的進行接触角、55度未満の平均係留気泡静的接触角、又は、それらの組み合わせを有する。このように、本開示はまた、ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチにも関連する。
【0167】
本明細書では、ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、2個又はそれ以上のヒドロゲルコンタクトレンズの群のことをいい、しばしば、バッチは、少なくとも10、少なくとも100、又は、少なくとも1,000個のヒドロゲルコンタクトレンズのことをいう。本開示に従って、ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、本明細書に記載されているシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む本明細書に記載されているヒドロゲルコンタクトレンズのいずれかを複数含む。
【0168】
ある例では、前記バッチのヒドロゲルコンタクトレンズは、異なる時点での該バッチからの代表的な数のレンズのAEL測定を平均化することに基づいた平均軸方向エッジリフト(AEL)変化を有し得る。レンズのバッチにおいては、室温では2週間から7年間の期間にわたって、又は、加速保存可能期間条件下で保管された場合には室温での2週間から7年間の保管に相当する期間及び温度において、プラス若しくはマイナス100パーセント(±100%)未満の、プラス若しくはマイナス50パーセント(±50%)未満の、又は、20%(±20%)未満の平均AEL変化が、許容可能であると見なされてもよい。ある例では、他の期間及び温度も使用され得るが、平均AEL変化を決定するのに特に有用な加速保存可能期間条件は70℃で4週間である。平均AEL変化は、室温又は加速保存可能期間条件下での保管の前(AEL
初期)及び後(AEL
最終)の代表的なレンズの現実のAEL測定値を用いて、代表的なレンズそれぞれについてのAEL値を平均化することによって決定される。平均AEL変動は、次の式(A):
((AEL
最終−AEL
初期)/AEL
初期)×100 (A)
を用いて決定される。
【0169】
平均すると、バッチのヒドロゲルコンタクトレンズのAELは、目標値の両方向に20パーセント未満、目標値の両方向に10パーセント未満、又は、目標値の両方向に5パーセント未満変化する。ある例としては、コンタクトレンズの目標AELが20μm±50%である場合には、本ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチの平均AELは、保存可能期間調査の間に10μm〜30μmであるだろう。該バッチから試験された代表的な数のレンズは、20個又はそれ以上の個別のレンズであり得る。
【0170】
加速保存可能期間調査においては、AEL又は明度などのレンズ特性が、40℃以上、例えば50℃、55℃、65℃、70℃、80℃、又は95℃、及びそのようなものであるような高温で、一定期間保管されたコンタクトレンズについて決定され得る。あるいは、該レンズ特性は、室温(例えば、約20〜25℃)で一定期間保管されたコンタクトレンズについて決定され得る。
【0171】
加速保存可能期間調査のためには、以下の式が、室温における所望の時間の長さの保管に相当する特定の温度における保管の月数を決定するために用いられ得る。
所望の保存可能期間=[N×2y]+n (B)
N=加速条件下での保管の月数
2y=加速係数
y=45℃以上での保管には、室温(25℃)を10℃超えるごとに2.0
y=35℃〜45℃での保管には、室温(25℃)を10℃超えるごとに1.0
n=調査開始時のレンズの月齢
【0172】
この式に基づいて、次の保管時間が計算された。すなわち、35℃での6月の保管は25℃での経年1年に相当し、45℃での3月の保管は25℃での経年1年に相当し、55℃での3月の保管は25℃での経年2年に相当し、そして、65℃での3月の保管は25℃での経年4年に相当する。
【0173】
ある例では、前記バッチは、本開示に従って、多数のヒドロゲルコンタクトレンズを含むヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを含み、該ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチは、該バッチの少なくとも20個の個別のレンズについて決定される値の平均に基づいた、少なくとも55バレルの平均酸素透過性、完全に水和された際に約0.2MPa〜約0.9MPaの平均引張係数、及び、約30%wt/wt〜約70%wt/wtの平均EWCから選択される少なくとも2種の平均値を有する。
【0174】
ある例では、製造後すぐに初期試験されて、しばらく経った時点で再び試験された場合、レンズのバッチは、その平均物理寸法について変化を示し得る。本開示に従ったレンズのバッチは寸法的に安定なので、それらは、それらの平均物理寸法について許容可能なレベルの変化を示し得る。本明細書では、寸法安定性変化は、該レンズのバッチが製造後すぐに初期試験された際に決定された物理寸法の値と、該レンズのバッチがしばらく経った時点で再び試験された際に決定された物理寸法の値との間での、物理寸法の値の変化のことをいうと理解される。該しばらくたった時点は、例えば、初期時点の少なくとも2週間後から、初期時点の7年後までであり得る。前記バッチのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの平均寸法安定性変化は、例えば、該バッチからの20個のレンズなどの該バッチからの代表的な数のレンズのレンズ直径測定値を平均化することに基づいて、プラス又はマイナス3パーセント(±3.0%)未満である。レンズのバッチについては、プラス又はマイナス3パーセント(±3.0%)未満の平均寸法安定性変化が、寸法的に安定なバッチであると見なされて、該平均寸法安定性変化は、該レンズのバッチの製造日の1日以内の初期時点と第2の時点とで測定された際の物理寸法の値における変化であり、該第2の時点は、該バッチが室温で保管された場合には該初期時点の2週間〜7年後、又は、該バッチがより高温(すなわち、加速保存可能期間条件下)で保管された場合には、該第2の時点は、室温で2週間〜7年の該バッチの保管を表す時点である。ある例では、他の期間及び他の温度も使用され得るが、平均寸法安定性変化を決定するのに特に有用な加速保存可能期間条件は、70℃で4週間である。該平均寸法安定性変化は、初期に測定された代表的なレンズの実直径(直径
原型)及び室温又は加速保存可能期間条件下での保管後に測定された代表的なレンズの実直径(直径
最終)を利用して、代表的なレンズのそれぞれについての個別の寸法安定性変化を平均化することによって決定される。初期に測定された代表的なレンズと保管後に測定された代表的なレンズとは、同一のレンズであり得るか、異なるレンズであり得る。本明細書では、該平均寸法安定性変化は、パーセント(%)として表される。該個別の寸法安定性変化は、次の式(C):
((直径
最終−直径
原型)/直径
原型)×100 (C)
を用いて決定される。
【0175】
平均すると、前記バッチのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの直径は、目標値の両方向に3パーセント未満(±3.0%)変化する。ある例としては、コンタクトレンズの目標直径(コード(chord)直径)が14.20mmである場合には、本ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチの平均直径(該バッチ中の集団の平均)は、13.77mm〜14.63mmとなるだろう。ある例では、前記寸法安定性変化は、プラス又はマイナス2パーセント(±2.0%)未満である。ある例としては、コンタクトレンズの目標直径(コード直径)が14.20mmである場合には、本ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチの平均直径(該バッチ中の集団の平均)は、13.92mm〜14.48mmとなるだろう。好ましくは、該ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチの平均直径は、目標直径からプラス又はマイナス0.20mmより大きくは変化せず、これは通常13.00mm〜15.00mmである。
【0176】
加速保存可能期間調査においては、前記平均寸法安定性変化は、例えば50℃、55℃、65℃、70℃、80℃、又は95℃、及びそのようなものを含む40℃以上であるような高温で一定期間保管されたコンタクトレンズについて決定され得る。あるいは、該平均寸法安定性は、室温(例えば、約20〜25℃)で一定期間保管されたコンタクトレンズについて決定され得る。
【0177】
本開示の他の例は、ヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本教示に従って、該方法は重合性組成物を提供することを含む。
該方法はまた、ポリマーレンズ体を形成するために、該重合性組成物を重合化する段階も含み得る。該重合性組成物を重合化する段階は、コンタクトレンズ鋳型アセンブリ内で実施され得る。該重合性組成物は、熱可塑性ポリマーで形成された鋳型の間でキャスト成型され得る。該鋳型の鋳型表面を形成するために使用された熱可塑性ポリマーは、極性ポリマーを含み得るか、又は、非極性ポリマーを含み得る。あるいは、該重合性組成物は、回転成形、射出成形、レンズ体を形成するために続いて旋盤加工される(lathed)重合化棒の形成などのような当業者に公知の様々な方法を用いて、レンズへと成形され得る。
該重合性組成物の重合化は、熱的に又は紫外(UV)光などの光を使用して開始され得る。ある例では、該重合化は、空気を含む雰囲気中又は不活性雰囲気中で実施され得る。
【0178】
前記方法はまた、未反応のモノマー、別の面ではポリマーレンズ体中に物理的に固定されていない未架橋の材料、希釈剤、及びそのようなものなどの抽出可能材料を除去するために、ポリマーレンズ体を洗浄液と接触させることも含み得る。該洗浄液は、揮発性有機溶剤を含まない液体であり得るか、又は、揮発性有機溶剤を含み得る(例えば、揮発性有機溶剤又は揮発性有機溶剤の溶液であり得る)。
【0179】
前記接触は、ホスフィン含有又はホスフィンオキシド含有成分の少なくとも一部を前記ポリマーレンズ体から除去するのに有効であり得る。先述のように、前記洗浄液は、水若しくは揮発性有機溶剤を含まない水性溶液であり得るか、又は、有機溶剤若しくは有機溶剤の溶液であり得る。あるいは、ある例では、前記方法は、ポリマーレンズ体を洗浄液又は任意の液体と接触させる段階を含まず、すなわち、該ポリマーレンズ体は、パッケージ用溶液とともにブリスターパッケージ内に配置され密封される前には、いずれの液体とも接触させられない。該方法は、揮発性有機溶剤を含む洗浄液を使用することを含む洗浄段階を含まない方法であり得て、すなわち、該ポリマーレンズ体は、洗浄液に接触されるが、揮発性有機溶剤を含む洗浄液とは接触させられず、パッケージ用溶液とともにブリスターパッケージ内に配置され密封される前には、揮発性有機溶剤に接触されない。
【0180】
前記レンズ体を洗浄液と接触させる段階を含む方法においては、抽出可能材料が該ポリマーレンズ体から除去されるので、該ポリマーレンズ体を洗浄液と接触させる段階は、抽出段階であると理解され得る。ある方法においては、該接触段階は、該ポリマーレンズ体を、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、及びそのようなものなどの第1級アルコールを含む液体などの揮発性有機溶剤を含む洗浄液と接触させることを含む。ある洗浄液は、イソプロピルアルコールやそのようなものなどの第2級アルコールを含んでもよい。1種又はそれ以上の揮発性有機溶剤を含む洗浄液を使用することは、疎水性材料を該ポリマーレンズ体から除去するのに役立ち得て、そうしてレンズ表面の湿潤性を増加させるかもしれない。そのような方法は、アルコール−ベース抽出段階であると理解されてもよい。他の方法では、該接触段階は、該ポリマーレンズ体を揮発性有機溶剤を含まない水性洗浄液と接触させることを含む。そのような方法は、水性抽出段階であると理解されてもよい。そのような方法で使用され得る水性洗浄液の例は、脱イオン水などの水、生理食塩水、緩衝液、又は、脱イオン水を単独で使用したときと比較して、ポリマーコンタクトレンズ体からの疎水性成分の除去を向上させるか若しくは該ポリマーコンタクトレンズ体の歪みを低減するかもしれない界面活性剤若しくは他の非揮発性原料を含む水性溶液を含む。ある例では、揮発性有機溶剤を含まない洗浄液を使用して洗浄された場合には、本開示のレンズ体の表面は、眼科的に許容可能な湿潤性の表面を有する。
【0181】
ある例では、前記ポリマーレンズ体は、該ポリマーレンズ体中に存在するホスフィン含有化合物を酸化するために、酸化段階に曝され得る。該酸化段階は、該ポリマーレンズ体中に存在するホスフィン含有化合物の大部分を酸化するのに、又は、該レンズ体の表面に存在するホスフィン含有化合物の大部分を酸化するのに有効であり得る。該酸化段階は、例えば、過酸化水素ガス、過酸化水素の水性溶液、又は、低級アルコールを含まない過酸化ヒドロゲルの溶液などの過酸化水素に、ポリマーレンズ体を曝すことを含み得る。例えばTPPなどのあるホスフィン含有化合物については、酸化形態(ホスフィンオキシド)の水溶解度は、非酸化形態よりも大きい。ホスフィン含有化合物のこれらの形態を含む処方については、そのことは、(ホスフィン含有化合物をその酸化形態で抽出することによって)該レンズ体から抽出されるホスフィン含有化合物の量を増加させるために、該レンズ体を洗浄段階に曝す前に該ポリマーレンズ体を酸化剤に曝すのに役立ち得る。
【0182】
洗浄後に、前記コンタクトレンズは、界面活性剤、抗炎症剤、抗菌剤、コンタクトレンズ湿潤剤、及びそのようなものを含んでも含まなくてもよい緩衝生理食塩水などのパッケージ用溶液とともに、プラスチックブリスター包装などのパッケージ中に配置され得て、密封及び滅菌される。本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズをパッケージするために用いられるパッケージ用溶液は、該レンズ表面の湿潤性を増加させるために、湿潤剤を含み得る。しかしながら、本開示のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのレンズ表面は、湿潤剤を含むパッケージ用溶液との接触前に、眼科的に許容可能な湿潤性表面を有しており、該パッケージ用溶液中に湿潤剤を使用することは、すでに眼科的に許容可能である湿潤性表面の湿潤性を増加させるためだけのものであり、眼科的に許容可能な湿潤性表面を有するコンタクトレンズを提供するために必要なことではないことが理解されるだろう。
【0183】
洗浄後に、前記コンタクトレンズは、界面活性剤、抗炎症剤、抗菌剤、コンタクトレンズ湿潤剤、及びそのようなものを含んでも含まなくてもよい緩衝生理食塩水などのパッケージ用溶液とともに、プラスチックブリスター包装などのパッケージ中に配置され得て、密封及び滅菌され得る。
【0184】
本開示に従って、前記ポリマーレンズ体は、ブリスター包装又はガラスバイアルなどのコンタクトレンズパッケージ中に、コンタクトレンズパッケージ用溶液と一緒にパッケージされ得る。パッケージングに続いて、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ製品を製造するために、該パッケージは密封され得て、例えば、該密封パッケージをオートクレーブすることによって、該ポリマーレンズ体及び該コンタクトレンズパッケージ用溶液は滅菌され得る。
本方法はさらに、多数のヒドロゲルコンタクトレンズを製造するために、前記段階を繰り返すことを含み得る。本発明はさらに、ヒドロゲルコンタクトレンズのバッチを製造することを含み得る。
【実施例】
【0185】
以下の実施例1〜37は、ある側面及び本発明の有利な点を説明するが、それらによっては制限されないと理解すべきである。
以下の化学物質は、実施例1〜37で言及され、それらの略語によって言及されてもよい。
Si1:2−プロペン酸,2−メチル−,2−[3−(9−ブチル−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロポキシ]エチルエステル(CAS番号1052075−57−6)(Si1は、信越化学工業株式会社(日本)から、製品番号X−22−1622として得られた。)
Si2:α,ω−ビス(メタクリルオキシプロピル)−ポリ(ジメチルシロキサン)−ポリ(ω−メトキシ−ポリ(エチレングリコール)プロピルメチルシロキサン)(この化合物の合成は、US20090234089に記載のように行われ得る。)
Si3:ポリ(ジメチルシロキサン),メタクリルオキシプロピル終端(CAS番号58130−03−3、Gelest、Morrisville、PAから入手可能なDMS−R18)
Si4:SiGMA:3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(Gelest、Morrisville、PAから入手可能)
Si5:TRIS:3−[トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル]プロピルメタクリレート
Si6:MCS−M11:モノメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン(Gelest、Morrisville、PA、USA)
VMA:N−ビニル−N−メチルアセトアミド(CAS番号003195786)
DMA:N,N−ジメチルアクリルアミド(CAS番号2680−03−7)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(CAS番号868−77−9)
HOB:2−ヒドロキシルブチルメタクリレート(CAS番号29008−35−3)
EGMA:エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(CAS番号6976−93−8)
MMA:メチルメタクリレート(CAS番号80−62−6)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(CAS番号97−90−5)
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(CAS番号109−16−0)
BVE:1,4−ブタンジオールビニルエーテル(CAS番号17832−28−9)
DEGVE:ジエチレングリコールビニルエーテル(CAS番号929−37−3)
EGVE:エチレングリコールビニルエーテル(CAS番号764−48−7)
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル(CAS番号765−12−8)
AE:2−アリルオキシエタノール(CAS番号111−45−5)
V−64:2,2’−アゾビス−2−メチルプロパンニトリル(CAS番号78−67−1)
UV1:2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(CAS番号16432−81−8)
UV2:2−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−フェニル)エチルメタクリレート(CAS番号96478−09−0)
RBT1:1,4−ビス[4−(2−メタクリルオキシエチル)フェニルアミノ]アントラキノン(CAS番号121888−69−5)
RBT2:1,4−ビス[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−9,10−アントラセンジオンビス(2−プロペノイック)エステル(CAS Reg.No.109561071)
TPP:トリフェニルホスフィン(CAS番号603−35−0)
pTPP:重合性TPP:ジフェニル(P−ビニルフェニル)ホスフィン(CAS番号40538−11−2)
【0186】
ヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順
実施例1〜37に説明されている化合物を、例ごとに、記載されているユニット部に対応する量で検量し、混ぜ合わせて混合物を形成した。該混合物を、0.2〜5.0ミクロンのシリンジフィルターを通じてボトル内へフィルター処理した。混合物を、約2週間まで保管した。該混合物は、重合性シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ前駆体組成物、又は、本明細書でいうところの重合性組成物であると理解される。実施例1〜37においては、リストに記載された原料の量は、質量での重合性組成物のユニット部として与えられる。
【0187】
多量の前記重合性組成物を、該組成物を雌型部材のレンズ定義表面と接触して配置することによってキャスト成型した。以下の実施例1〜37のすべてにおいて、該雌型部材の成形面は、非極性樹脂、具体的にはポリプロピレンで形成されていた。雄型部材は、該雌型部材と接触して配置され、該重合性組成物を含むコンタクトレンズ型の空洞を含むコンタクトレンズ鋳型アセンブリを形成した。以下の実施例1〜37において、該雄型部材の成形面は、非極性樹脂、具体的にはポリプロピレンで形成されていた。
【0188】
コンタクトレンズ鋳型アセンブリを、前記前駆体組成物を熱硬化させるために、窒素フラッシュされたオーブンに配置した。実施例1〜37のすべてに対して、該コンタクトレンズ鋳型アセンブリを、約2時間少なくとも約55℃の温度に曝した。本明細書に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを硬化するために使用され得る硬化プロファイルの例は、該コンタクトレンズ鋳型アセンブリを、40分間55℃、40分間80℃、及び、40分間100℃の温度に曝すことを含む。他のコンタクトレンズは、55℃である最初の温度の代わりに、それが65℃であり得ることを除いて同一の硬化プロファイルで作製できる。
【0189】
前記重合性組成物を重合化した後に、前記コンタクトレンズ鋳型アセンブリを、雄及び雌型部材を分離させるために離型した。残ったポリマーレンズ体は、雄型又は雌型に接着した。鋳型アセンブリが液状媒体に接触させられない乾式離型工程が使用され得るか、又は、鋳型アセンブリが例えば水又は水性溶液などの液状媒体に接触させられる湿式離型工程が使用され得る。機械的乾式離型工程は、型部材を分離するために、型部材の1つ又は両方の部分に機械力を加えることを含み得る。以下の実施例1〜37のすべてにおいて、乾式離型工程が使用された。
【0190】
そして、レンズ取出しされたポリマーレンズ体を製造するために、ポリマーレンズ体を雄型又は雌型からレンズ取出しした。レンズ取出し方法のある例では、該ポリマーレンズ体を、雄型部材からレンズを手動ではがすことによる、又は、雄型部材を押し付け、該雄型部材及び該ポリマーレンズ体に向けてガスを噴射し、廃棄される該雄型部材から真空装置で乾燥ポリマーレンズ体を持ち上げることによる、などの乾式レンズ取出し工程を利用して、雄型又は雌型からレンズ取出しできる。他の方法では、乾燥ポリマーレンズ体を水又は水性溶液などの液体放出媒体と接触させることによる湿式レンズ取出し工程を利用して、該ポリマーレンズ体をレンズ取出しできる。例えば、付着したポリマーレンズ体を有する雄型部材を、該ポリマーレンズ体が該雄型部材から分離するまで、液体を含む容器内へ浸漬できる。あるいは、多量の液体放出媒体を、該液体中にポリマーレンズ体を浸漬し該レンズ体を前記雌型部材から分離するために、該雌型に添加できる。以下の実施例1〜37においては、乾式レンズ取出し工程が利用された。分離に続いて、該レンズ体を、手動でピンセットを利用して、又は、真空装置を利用して、該型部材から持ち上げてトレイの中へ置くことができる。
【0191】
そして、レンズ取出しされたレンズ製品を、前記ポリマーレンズ体から抽出可能材料を除去するために洗浄し、水和した。抽出可能材料は、例えば、モノマー、架橋剤、又は、色、UV遮断剤、若しくは、それらの組み合わせなどのいずれかの任意の重合性原料などの重合性成分を含んでおり、それらは、該レンズ体の重合化後及び該レンズ体の抽出前に、未反応形態で、部分的に反応した形態で、未架橋の形態で、又は、それらの組み合わせで該ポリマーレンズ体中に依然として存在している重合性組成物中に存在している。抽出可能材料はまた、該ポリマーレンズ体の重合化後であるが該ポリマーレンズ体の抽出前に該ポリマーレンズ体中に依然として存在している、該重合性組成物中に存在するいずれかの非重合性原料、例えば、いずれかの任意の非重合性着色剤、UV遮断剤、希釈剤、連鎖移動剤、又は、それらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0192】
雄型部材を押し付け、該雄型部材に向けてガスを噴射することによるレンズ取出しを含む方法などの他の方法では、レンズ取出しされた重合化コンタクトレンズ体は、レンズ担体の空洞又はトレイ内に置かれ得て、該レンズ取出しされたポリマーレンズ体は次に、揮発性有機溶剤を含まない水性抽出液、例えば脱イオン水若しくはTween 80などの界面活性剤の水性溶液、エタノールなどの有機溶剤−ベースの抽出液、又は、エタノールなどの揮発性有機溶剤の水性溶液などの1又はそれ以上の体積の抽出液と接触され得る。
【0193】
鋳型及びレンズを液体放出媒体と接触させることによる湿式レンズ取出しを含むものなどの他の方法では、レンズ取出しされた重合化コンタクトレンズ体は、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、又は、それらの組み合わせなどの揮発性有機溶剤を含まない洗浄液を使用して、該レンズ体から抽出可能成分を除去するために洗浄され得る。例えば、レンズ取出しされた重合化コンタクトレンズ体は、例えば、脱イオン水、界面活性剤溶液、生理食塩水溶液、緩衝溶液、又は、それらの組み合わせなどの揮発性有機溶剤を含まない水性洗浄液と、該レンズ体を接触させることにより、該レンズ体から抽出可能成分を除去するために洗浄され得る。該洗浄は、最終コンタクトレンズパッケージ中で行われ得るか、又は、洗浄トレイ若しくは洗浄タンク中で行われ得る。
【0194】
以下の実施例1〜37においては、乾式離型及び乾式レンズ取出し段階に続いて、乾式レンズ取出しされたレンズ体をトレイの空洞内に置き、該レンズ取出しされたポリマーレンズ体を、該ポリマーレンズ体を1又はそれ以上の体積の抽出液と接触させることにより、抽出及び水和した。該抽出及び水和工程で使用された抽出及び水和液は、a)揮発性有機溶剤−ベースの抽出液及び揮発性有機溶剤を含まない水和液の組み合わせ、又は、b)揮発性有機溶剤を含まない抽出及び水和液、すなわち、完全に水性−ベースの抽出及び水和液のいずれかで構成されていた。具体的には、以下の実施例1〜5では、該抽出及び水和工程は、別個のエタノール部分中での少なくとも2つの抽出段階、それに続くTween 80を含む50:50wt/wtのエタノール:水溶液の部分中での少なくとも1つの抽出段階、それに続く別個のTween 80の脱イオン水溶液部分中での少なくとも3つの抽出及び水和段階を含み、各抽出又は抽出及び水和段階は約5分〜3時間続いた。以下の実施例6〜25では、使用された抽出及び水和工程は、別個のTween 80の脱イオン水溶液部分中での少なくとも3つの抽出及び水和段階を含み、該部分のTween 80溶液の温度は室温〜約90℃にわたり、各抽出及び水和段階は約15分〜約3時間続いた。
【0195】
洗浄し、抽出し、そして水和したレンズは次に、リン酸緩衝生理食塩水のパッケージ用溶液とともに、コンタクトレンズブリスターパッケージ内に個別に置いた。該ブリスターパッケージを密封して、オートクレーブで滅菌した。
【0196】
滅菌に続いて、動的及び静的接触角を含む接触角、酸素透過性、イオン流量、モジュラス、伸長、引張強度、含水率、及び、そのようなものなどのレンズ特性を、本明細書に記載されているように決定した。
本コンタクトレンズでは、動的及び静的接触角を含む接触角は、当業者に公知の常法を利用して決定できる。例えば、本明細書で提供されるコンタクトレンズの進行接触角及び後退接触角は、付着滴(sessile drop)法又は係留気泡法などの従来の液滴法を利用して測定できる。
【0197】
以下の実施例1〜37では、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの進行及び後退接触角は、Kruss DSA 100装置(Kruss GmbH、Hamburg)を利用して、D.A.Brandreth:「Dynamic contact angles and contact angle hysteresis」、Journal of Colloid and Interface Science、vol.62、1977、pp.205−212、R.Knapikowski、M.Kudra:「Kontaktwinkelmessungen nach dem Wilhelmy−Prinzip−Ein statistischer Ansatz zur Fehierbeurteilung」、Chem.Technik、vol.45、1993、pp.179−185、及び、米国特許第6,436,481号明細書に記載されているように決定され、これらのすべては参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0198】
例としては、進行接触角及び後退接触角は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH=7.2)を利用した係留気泡法を利用して決定した。レンズを石英面上で平板化し、試験の前に少なくとも10分間、PBSで再水和した。気泡を、自動シリンジシステムを利用して、レンズ表面に置いた。該気泡のサイズを増減して、後退角(気泡サイズを増加した際に得られるプラトー)及び前進角(気泡サイズを減少させた際に得られるプラトー)を得た。
【0199】
本レンズのモジュラス、伸長、及び、引張強度の値は、例えば、ANSI Z80.20に従って試験法などの当業者に公知の常法を利用して決定できる。本明細書で報告されるモジュラス、伸長、及び、引張強度の値は、方形試料片を調製する特注の方形コンタクトレンズ打ち抜き型を利用して、Instron Model 3342又は3343機械的試験システム(Instron Corporation、Norwood、MA、USA)及びBluehill Materials Testing Softwareを利用することによって測定した。該モジュラス、伸長、及び、引張強度は、相対湿度が少なくとも70%であるチャンバーの中で決定した。試験されるレンズは、試験の前に少なくとも10分間、リン酸緩衝溶液(PBS)中に浸漬した。レンズ凹面を上に保持している間に、レンズの中央片を、打ち抜き型を利用して切り取った。該片の厚みは、目盛付き計測器(Rehder electronic thickness gauge、Rehder Development Company、Castro Valley、CA、USA)を利用して決定した。ピンセットを利用して、該片を、校正済みのInstron装置のグリップ内に、各グリップのグリップ面の少なくとも75%以上に該片が接着するように置いた。最大負荷(N)、引張強度(MPa)、最大負荷時の緊張(%伸長)、並びに、引張係数(MPa)の平均及び標準偏差を決定するために設計された試験方法を実施し、結果を記録した。
【0200】
本シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのエネルギー損失パーセントは、当業者に公知の常法を利用して決定できる。以下の実施例1〜37では、該エネルギー損失パーセントは、10N力変換器(Instron model no.2519−101)及びTestProfilerモジュールを含むBluehill Materials Testing Softwareとともに、Instron Model 3343(Instron Corporation、Norwood、MA、USA)機械的試験システムを利用して決定した。該エネルギー損失は、相対湿度が少なくとも70%であるチャンバーの中で決定した。試験前に、各レンズは少なくとも10分間リン酸緩衝溶液(PBS)中に浸漬した。ピンセットを利用して、該レンズを、校正済みのInstron装置のグリップ内に、できる限り対照的にグリップ間に垂直に該レンズが置かれるように置いて、該レンズは各グリップのグリップ面の少なくとも75%以上に接着した。次に、100%緊張状態まで該レンズを伸ばし、次に50mm/分の速度で0%緊張状態まで戻すのに必要なエネルギーを決定するために設計された試験を、該レンズにおいて実施した。該試験は、単一のレンズにおいて1回だけ実施した。該試験が終了した時点で、次の式:損失エネルギー(%)=(100%緊張状態へのエネルギー−0%緊張状態に戻すエネルギー)/100%緊張状態へのエネルギー×100%を用いて、エネルギー損失を計算した。
【0201】
本レンズのイオン流量は、当業者に公知の常法を利用して決定され得る。以下の実施例1〜37のレンズでは、該イオン流量は、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,849,811号明細書に記載されている「イオン流量技術」と実質的に同様の技術を利用して測定した。測定の前に、水和レンズは脱イオン水中で少なくとも10分間平衡化した。測定されるレンズは、雄型と雌型部分の間のレンズ保持デバイス内に置いた。該雄型と雌型部分は、該レンズと雄型又は雌型部分のそれぞれとの間に配置された柔軟性密封リングを含んだ。レンズをレンズ保持デバイス内に配置後、該レンズ保持デバイスはねじ式蓋内に置いた。該蓋をガラス管上へねじ込んで、ドナーチャンバーを規定した。該ドナーチャンバーを、16mlの0.1モル濃度のNaCl溶液で満たした。受容チャンバーを、80mlの脱イオン水で満たした。導電率計の導線を該受容チャンバーの脱イオン水内に浸し、撹拌子を該受容チャンバー内に加えた。該受容チャンバーを水浴中に置き、温度を約35℃に保持した。最後に、ドナーチャンバーを受容チャンバーに浸漬し、該ドナーチャンバー内のNaCl溶液が、該受容チャンバー内の水と同じレベルになるようにした。該受容チャンバー内の温度が35℃で平衡になった時点で、導電率の測定を、2分ごとに少なくとも10分間行った。導電率対時間のデータは、実質的に線形であり、試験されたレンズのイオン流量の値を計算するために使用された。
【0202】
本レンズの酸素透過性(Dk)は、当業者に公知の常法を利用して決定され得る。例えば、Dk値は、例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,817,924号明細書に記載されているようなMocon法を利用して、MOCON(R)Ox−Tran System(Mocon Inc.、Minneapolis、MN、USA)の型式番号で市販されている装置を利用して決定され得る。以下の実施例1〜37のレンズのDk値は、参照することにより本明細書に組み込まれるChhabra et al.(2007)、A single−lens polarographic measurement of oxygen permeability(Dk)for hypertransmissible soft contact lenses.Biomaterials 28:4331−4342に記載されている方法を利用して決定した。
【0203】
本レンズの平衡含水率(EWC)は、当業者に公知の常法を利用して決定され得る。以下の実施例1〜37のレンズでは、水和されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを水性液から取出し、余分な表面水を拭き取り、秤量した。次に、秤量したレンズを真空下80℃のオーブン内で乾燥させ、乾燥したレンズを秤量した。質量の差を、水和レンズの質量から乾燥レンズの質量を差し引くことによって決定した。含水率(%)は、(質量の差/水和質量)×100である。
【0204】
レンズ中の湿潤抽出可能成分又は乾燥抽出可能成分のパーセンテージは、当業者に公知の方法に従って、該レンズをポリマーレンズ体が溶けない有機溶剤で抽出することにより決定され得る。以下の実施例1〜37のレンズでは、ソックスレー抽出工程を利用したメタノール抽出を利用した。湿潤抽出可能成分の決定では、完全に水和され滅菌されたコンタクトレンズの試料(例えば、1ロットあたり少なくとも5個のレンズ)を、各レンズから余分なパッケージ用溶液を除去し、それらを80℃の真空オーブン中で一晩乾燥させることによって調製した。乾燥抽出可能成分の決定では、洗浄、抽出、水和、又は滅菌しなかったポリマーレンズ体の試料を、レンズ体を80℃の真空オーブン中で一晩乾燥させることによって調製した。乾燥及び冷却した際に、各レンズを秤量し、その初期乾燥質量(W1)を決定した。次に、各レンズを、穴の開いた積み重ね可能なテフロンシンブル内に置き、該シンブルを積み重ねて抽出カラムを形成し、該カラムの上に空のシンブルを置いた。該抽出カラムを、冷却器及び70〜80mlのメタノールを含む丸底フラスコに接続された小型のソックスレー抽出器内に置いた。該冷却器を通して水を循環させ、メタノールを穏やかに沸騰するまで加熱した。前記レンズを、液化されたメタノールが最初に現れたときから少なくとも4時間抽出した。抽出されたレンズを、再び真空オーブン中80℃で一晩乾燥した。乾燥及び冷却した際に、各レンズを秤量し、該抽出されたレンズの乾燥質量(W2)を得て、次の計算を各レンズについて行い、湿潤抽出可能成分パーセント:[(W1−W2)/W1]×100を決定した。
【0205】
実施例1〜28
表1は、重合性組成物1〜14の原料を記載している。表2は、重合性組成物15〜28の原料を記載している。重合性組成物1〜28を、上述のヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順に記載されているように調製し、ヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順に記載されているようにヒドロゲルコンタクトレンズを調製及び試験するために使用した。実施例1〜28で調製されたすべてのレンズを、手動で乾式離型してレンズ取出しを行った。重合性組成物1を除いてすべての重合性組成物が、ホスフィン含有成分(TPP又はpTPPのいずれか)を含む。
【0206】
表3は、当初製造された際の重合性組成物1〜14を使用して形成されたレンズについてのレンズ特性を示す。表4は、当初製造された際の重合性組成物15〜28を使用して形成されたレンズについてのレンズ特性を示す。重合性組成物2〜28から形成されたヒドロゲルコンタクトレンズは、表3及び4に示されているように、当初製造された際に許容可能なレンズ特性を有していた。
【0207】
重合性組成物2〜28から形成されたヒドロゲルコンタクトレンズはまた、当初製造された際、並びに、室温で少なくとも1月及び高温で少なくとも2週保管後のどちらでも、許容可能な外形保持力及び明度を有していた。例えば、処方2、3、及び4のレンズは、95℃で少なくとも20日保管された後に、許容可能な外形保持力を有していた。処方5、6、7、8、11、12、14、15、16、18、19、20、24、及び25のレンズは、80℃で少なくとも14日保管された後に、許容可能な外形保持力を有していた。処方9のレンズは、95℃で少なくとも6日保管された後に、許容可能な外形保持力を有していた。処方10及び13のレンズは、80℃で少なくとも7日保管された後に、許容可能な外形保持力を有していた。処方17、21、22、及び23のレンズは、80℃で少なくとも4.4週保管された後に、許容可能な外形保持力を有していた。
【0208】
【表1】
【0209】
【表2】
【0210】
【表3】
【0211】
【表4】
【0212】
実施例29〜37
表5は、重合性組成物29〜37の原料を記載している。重合性組成物29〜37を、上述のヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順に記載されているように調製し、ヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順に記載されているように、ヒドロゲルコンタクトレンズを調製し試験するために使用された。これらのすべてのレンズを、乾式離型工程を使用して離型し、乾式レンズ取出し工程を使用してレンズ取出しし、揮発性有機溶剤を含まない液体を使用して抽出した。重合性組成物29、32、及び35を除いてすべての重合性組成物が、ホスフィン含有成分(TPP又はpTPPのいずれか)を含む。
【0213】
表6は、当初製造された際の重合性組成物29〜37を使用して形成されたレンズのレンズ特性を示す。重合性組成物30、31、33、34、36、及び37から形成されたヒドロゲルコンタクトレンズ(ホスフィン含有成分を有する重合性組成物から形成されたレンズ)は、当初製造された際に許容可能なレンズ特性を有していた。表6からわかるように、ホスフィン含有成分を含む処方から形成されたレンズのレンズ特性は、同一の製造工程を使用して製造された場合にホスフィン含有成分を含まないことを除いて同一の処方から形成されたレンズのレンズ特性と同様であった。処方30、31、33、34、36、及び37のレンズはまた、当初製造された際、及び、室温で保管された場合に少なくとも1月のどちらでも、許容可能な外形保持力及び明度を有していた。しかしながら、ホスフィン含有成分を含まない処方から形成されたレンズは、当初製造された際に許容可能な外形保持力又はAELを有していなかった。
【0214】
また、処方30及び31を、ヒドロゲルコンタクトレンズ製造及び試験手順に記載されているような調製工程を使用してレンズを調製するために用い、乾式離型工程を使用して離型し、乾式レンズ取出し工程を使用してレンズ取出しし、揮発性有機溶剤を含まない液体を使用して抽出したが、該レンズは空気雰囲気下で硬化した。該空気硬化レンズは、ホスフィン含有成分を含まないことを除いて同一の処方(処方29)から調製された空気硬化レンズと同様のレンズ特性を有していた。しかしながら、処方30及び31のレンズは、空気硬化された際に許容可能な外形保持力(許容可能なAELを含む)及び明度を有していたが、処方29のレンズは、空気硬化された際に許容可能な外形保持力又は許容可能なAELを有していなかった。
【0215】
【表5】
【0216】
【表6】
【0217】
本明細書の開示は特定の例証された態様について言及しているが、これらの態様は、例として示されたものであって、限定するために示されたものではないと理解されるべきである。前述の詳細な説明の意図は、例示的な態様について述べているが、さらなる開示によって規定される本発明の精神及び範囲内に入る限りは、該態様のすべての改良物、代替物、及び均等物を包含するものと解釈すべきである。
以上に多数の刊行物及び特許が引用されている。各引用刊行物及び特許は、全体として参照することにより本明細書によって取り込まれる。