(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保持手段に保持された屈折率整合液における屈折率整合体の濃度は、光学接続部品製造装置周辺の温度や湿度などに影響され、所望の濃度に達する時間がばらついてしまう。このため、特許文献1に記載された、光学接続部品製造装置および光学接続部品製造方法では、光学接続部品製造装置周辺の温度や湿度などの状態によっては、所望量の屈折率整合液を光学部材の先端面に吸着させることが難しい場合がある。また、熱膨張率の違い等により、接続された光学部材が動き、光学部材どうしの間隔が変化する。このため、接続された光学部材どうしの間隔の変化に追従できるように、光学接続部品に付着した屈折率整合体の膜厚を厚くすることが求められる場合がある。しかしながら、特許文献1に記載された、光学接続部品製造装置および光学接続部品製造方法では、光学接続部品に付着させる屈折率整合体の膜厚を厚くすることが難しい場合がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、所望量の屈折率整合液を光学部材の先端面に吸着させることができ、さらに、光学接続部品に付着させる屈折率整合体の膜厚を厚くすることもできる、光学接続部品製造装置および光学接続部品製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の光学接続部品製造装置は、線状の光学部材の先端面に屈折率整合体が付着した光学接続部品を製造する光学接続部品製造装置において、
揮発性を有する溶媒に前記屈折率整合体が溶解した屈折率整合液を保持する保持面と、
前記保持面に前記屈折率整合液を供給する供給手段と、
前記保持面に供給された前記屈折率整合液を前記光学部材の先端面に吸着させるために該光学部材を帯電させる帯電手段と、
前記保持面および前記光学部材のうちの少なくとも一方の移動を行い、該保持面に保持された前記屈折率整合液と前記光学部材の先端面との間隔を調整する間隔調整手段とを備え、
前記間隔調整手段は、前記間隔を、前記帯電手段により帯電した前記光学部材の先端面に前記保持面に保持された前記屈折率整合液が帯電によるクーロン力によって吸着する第一間隔にした後、該間隔を拡げ
、該間隔が、該第一間隔よりも広い第二間隔になった時点で、前記移動を中断し、その後、該間隔をさらに拡げるものであり、
前記帯電手段は、前記間隔が前記第一間隔である状態では該光学部材に電荷を付与し、該間隔が拡がり始めた後も該光学部材に電荷を引き続き付与する
とともに、該間隔が前記第二間隔になるまで少なくとも該光学部材に電荷を付与し続けるものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の光学接続部品製造装置によれば、前記間隔を前記第一間隔にした状態で前記光学部材の先端面に前記屈折率整合液を吸着させるだけでなく、該光学部材に電荷を付与し該光学部材の先端面に該屈折率整合液が吸着した状態で該間隔を拡げる。このため、前記光学部材に電荷をいつまで付与しておくかを調整することで、所望量の屈折率整合液を該光学部材の先端面に吸着させることができる。また、前記第一間隔よりも前記間隔が拡がり始めた後も、帯電によるクーロン力によって前記光学部材の先端面に前記屈折率整合液が吸着する状態が続く。このため、前記光学接続部品に吸着させる前記屈折率整合液の量を増加させ、前記光学接続部品に付着する前記屈折率整合体の膜厚を厚くすることもできる。
【0009】
なお、ここでいう線状の光学部材とは、太さに対して軸心方向の長さが長い光学部材であればよく、断面形状は問わない。
【0011】
前記間隔調整手段は、前記間隔が、前記第一間隔よりも広い第二間隔になった時点で、前記移動を中断する態様を採用することで、所望量の屈折率整合液を該光学部材の先端面に吸着させる調整が容易になる。
【0012】
また、本発明の光学接続部品製造装置において、前記帯電手段は、前記間隔が前記第二間隔になってから該第二間隔を維持している時間が所定時間に達した時点で、前記光学部材への電荷の付与を終了するものであってもよい。
【0013】
すなわち、前記帯電手段は、前記間隔が前記第二間隔になった後、前記光学部材への電荷の付与を終了するものである。
【0014】
前記間隔調整手段は、前記所定時間に達した時点から前記間隔をさらに拡げるものであってもよいし、該所定時間に達した後、該間隔をさらに拡げるものであってもよい。
【0015】
上記目的を達成する本発明の光学接続部品製造方法は、線状の光学部材の先端面に屈折率整合体が付着した光学接続部品を製造する光学接続部品製造方法において、
揮発性を有する溶媒に前記屈折率整合体が溶解した屈折率整合液を保持面に供給し、該屈折率整合液を該保持面に保持させる供給保持工程と、
前記保持面および前記光学部材のうちの少なくとも一方の移動を行い、前記供給保持工程によって該保持面に保持させた前記屈折率整合液と該光学部材の先端面との間隔を、帯電した該光学部材の先端面に該保持面に保持された該屈折率整合液が帯電によるクーロン力によって吸着する第一間隔に調整する第一間隔調整工程と、
前記保持面に保持された前記屈折率整合液を前記光学部材の先端面に吸着させるために該光学部材を帯電させる帯電工程と、
前記保持面および前記光学部材のうちの少なくとも一方の移動を行い、前記間隔を拡げる間隔拡大工程とを備え、
前記間隔拡大工程は、前記間隔が、前記第一間隔よりも広い第二間隔になった時点で、前記移動を中断し、その後、該間隔をさらに拡げる工程であり、
前記帯電工程は、前記間隔が前記第一間隔である状態では前記光学部材に電荷を付与し、前記間隔拡大工程によって該間隔が拡がり始めた後も該光学部材に電荷を引き続き付与する
とともに、該間隔が前記第二間隔になるまで少なくとも該光学部材に電荷を付与し続ける工程であることを特徴とする。
【0016】
なお、前記帯電工程の開始タイミングは限定されるものではない。
【0017】
本発明の光学接続部品製造方法によっても、本発明の光学接続部品製造装置と同様に、所望量の屈折率整合液を前記光学部材の先端面に吸着させることができ、さらに、該光学接続部品に付着する前記屈折率整合体の膜厚を厚くすることもできる。
【0019】
こうすることで、所望量の屈折率整合液を該光学部材の先端面に吸着させる調整が容易になる。
【0020】
本発明の光学接続部品製造方法において、前記帯電工程は、前記間隔が前記第二間隔になってから該第二間隔を維持している時間が所定時間に達した時点で、前記光学部材への電荷の付与を終了する工程であってもよい。
【0021】
すなわち、前記帯電工程は、前記間隔が前記第二間隔になった後、前記光学部材への電荷の付与を終了する工程である。
【0022】
また、前記間隔拡大工程は、前記所定時間に達した時点で前記間隔をさらに拡げるものであってもよいし、該所定時間に達した後、該間隔をさらに拡げる工程であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、所望量の屈折率整合液を光学部材の先端面に吸着させることができ、さらに、光学接続部品に付着させる屈折率整合体の膜厚を厚くすることもできる、光学接続部品製造装置および光学接続部品製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の光学接続部品製造装置の一実施形態を説明する。この実施形態では光学部材として線状の誘電体である光ファイバを用いた場合を例にあげて説明する。
【0026】
図1は、本発明の光学接続部品製造装置の一実施形態を示す側面図である。以下の説明では、
図1における左右方向をX軸方向と称し、
図1における上下方向をZ軸方向と称し、
図1における紙面直交方向をY軸方向と称することがある。また、
図1における右側をX側と称し、左側を−X側と称することがある。なお、この
図1は、光学接続部品製造装置の操作者側から見た光学接続部品製造装置を示している。
【0027】
図1に示す光学接続部品製造装置10は、光ファイバfの先端面f1に屈折率整合体が付着した光学接続部品を製造する装置である。この光学接続部品製造装置10は、フレーム11、ファイバ移動ユニット12、静電気発生装置13、ファイバ検出装置14、屈折率整合液保持ユニット15、およびディスペンサ16を有する。
【0028】
ファイバ移動ユニット12は、移動基台121と、移動ステージ122と、X軸調整ステージ123と、Y軸調整ステージ124と、ファイバ保持台125と、ファイバ固定具126とを備えている。このファイバ移動ユニット12は、ファイバ保持台125に取り付けられた光ファイバfをX軸方向に移動させるものである。
【0029】
移動基台121は、フレーム11に固定されている。この移動基台121には、移動ステージ122をX軸方向に移動させる移動機構1211と、移動機構1211に接続されたX軸モータ1212が組み付けられている。移動機構1211は、回転運動を直動運動に変換するボールネジである。X軸モータ1212を駆動することで、移動機構1211が動作して移動ステージ122は任意の速度でX軸方向に移動する。移動ステージ122とともに、X軸調整ステージ123、Y軸調整ステージ124、ファイバ保持台125、ファイバ固定具126、および光ファイバfもX軸方向に移動する。移動ステージ122のX側への移動により、光ファイバfの先端面f1は屈折率整合液保持ユニット15に保持された屈折率整合液20に接近し、屈折率整合液20と光ファイバfの先端面f1との間隔が調整される。この光ファイバfを移動させる移動機構1211、X軸モータ1212および移動ステージ122は、間隔調整手段の一例に相当する。
図1には、光ファイバfの先端面f1が、屈折率整合液保持ユニット15に保持されている屈折率整合液20に接近した接近位置にある状態が示されている。この接近位置は、後述するように、静電気発生装置13により帯電した光ファイバfの先端面f1に、屈折率整合液20が帯電によるクーロン力によって吸着させる際の位置である。以下、接近位置における、屈折率整合液20と光ファイバfの先端面f1との間隔を、第一間隔L1と称することがある。
【0030】
X軸調整ステージ123は、移動ステージ122に取り付けられている。このX軸調整ステージ123には図示しない調整ネジが設けられている。その調整ネジを回すことで移動ステージ122に対するX軸調整ステージ123のX軸方向の位置が調整される。また、Y軸調整ステージ124は、X軸調整ステージ123に取り付けられている。このY軸調整ステージ124には図示しない調整ネジが設けられている。その調整ネジを回すことでX軸調整ステージ123に対するY軸調整ステージ124のY軸方向の位置が調整される。ファイバ保持台125は、Y軸調整ステージ124に固定されている。すなわち、ファイバ保持台125は、X軸調整ステージ123及びY軸調整ステージ124を介して移動ステージ122に取り付けられることで、移動ステージ122に対するX軸方向とY軸方向の位置が調整可能な構成になっている。これらの調整ステージ123、124は、ファイバ保持台125に取り付けれた光ファイバfの、X軸方向とY軸方向の位置を調整するためのものである。
【0031】
ファイバ保持台125の−X側(
図1における左側)部分にはファイバ取付部1251が設けられ、ファイバ保持台125のX側(
図1における右側)部分には位置規制部1252が設けられている。ファイバ取付部1251の上には、ファイバ取付部1251に対して着脱自在にファイバ固定具126が取り付けられている。このファイバ固定具126は、ファイバ載置部材1261と押さえ部材1262とから構成されている。
【0032】
光ファイバfは、先端面f1から所定長(たとえば、40mm)にわたって被覆が除去された状態で、ファイバ載置部材1261と押さえ部材1262との間に挟まれることでファイバ固定具126に固定されている。なお、光ファイバfの、ファイバ載置部材1261と押さえ部材1262との間に挟まれている部分は、被覆の残存する部分である。位置規制部1252には、X軸方向から見てV字型をしたV溝が形成されている。そのV溝の傾斜面に光ファイバf先端側部分の外周面を密接させることで、光ファイバfの先端側部分は、Y軸方向およびZ軸方向の位置が規制されている。光ファイバfは、ファイバ固定具126に固定された状態でファイバ保持台125に取り付けられ、位置規制部1252により先端側部分の位置が規制されることで、その軸心をX軸方向に向けてファイバ保持台125に取り付けられている。これらによって、光ファイバfは、先端面f1が、後述する保持面に保持された屈折率整合液20と間隔をあけて、屈折率整合液20の厚み方向に交わる方向から、光ファイバfの先端面f1が屈折率整合液20に対向するように支持される。すなわち、ファイバ固定具126と、位置規制部1252は、支持部材の一例に相当する。
【0033】
ファイバ移動ユニット12よりもX側には、フレーム11に固定されたブラケット19が設けられている。このブラケット19には、Y軸方向に延在する支柱191が固定されている。また、その支柱191には静電気発生装置13が固定されている。つまり、静電気発生装置13は、支柱191とブラケット19とを介してフレーム11に固定されることで、光学接続部品製造装置10内の位置が固定されている。静電気発生装置13は、ファイバ移動ユニット12に取り付けられた光ファイバfに電荷を付与するものである。すなわち、静電気発生装置13は、ファイバ移動ユニット12に取り付けられた光ファイバfを帯電させるものであり帯電手段の一例に相当する。この静電気発生装置13の上端部分には、セラミックスなどの誘電体の内部に電極が埋め込まれた板状の電極シート131が設けられている。電極シート131とファイバ移動ユニット12に取り付けられた光ファイバfとは高さ方向(Z軸方向)に0.1mm〜0.2mmの隙間が設けられている。電極シート131の電極に電圧が印加されると、光ファイバfは、電極シート131とは非接触状態を保ったまま、電荷が付与されて帯電し静電気を帯びる。光ファイバfと電極シート131との非接触状態が保たれているので、光ファイバfに接触による傷が付くことはない。なお、静電気発生装置13の代わりに、コロナ放電などを利用して光ファイバfを帯電させる帯電手段を用いても良い。
【0034】
また、ブラケット19には、図示しないアームを介してファイバ検出装置14が取り付けられている。このファイバ検出装置14は、光ファイバfの先端面f1を検出するセンサである。ファイバ保持台125に取り付けられた光ファイバfは、移動ステージ122のX軸方向の移動に伴ってX軸方向に移動する。ファイバ検出装置14は、そのX軸方向の移動により光ファイバfの先端面f1が所定の位置(ここでは、電極シート131の真上)に到達したことを検出するものである。
【0035】
屈折率整合液保持ユニット15は、回転基台151と、回転ステージ152と、Z軸調整ステージ153と、屈折率整合液20を保持する保持手段50とを備えている。回転基台151は、フレーム11に固定されている。この回転基台151には、回転ステージ152を回転させる回転モータ1511が組み付けられている。回転ステージ152は、回転基台151の上に回転可能に取り付けられている。回転モータ1511を駆動することで、回転ステージ152はZ軸方向の軸を回転中心軸にして回転する。
【0036】
Z軸調整ステージ153は、回転ステージ152に取り付けられている。このZ軸調整ステージ153には図示しない調整ネジが設けられている。その調整ネジを回すことで回転ステージ152に対するZ軸調整ステージ153のZ軸方向の位置が調整される。保持手段50は、Z軸調整ステージ153に固定されている。すなわち、保持手段50は、Z軸調整ステージ153を介して回転ステージ152に取り付けられており、回転ステージ152に対するZ軸方向の位置が調整自在になっている。このZ軸調整ステージ153は、ファイバ保持台125に取り付けれた光ファイバfの先端面f1と屈折率整合液保持ユニット15に保持された屈折率整合液20とのZ軸方向の相対的な位置を調整するためのものである。
【0037】
保持手段50は、樹脂製のものであり、回転ステージ152が回転すると、Z軸調整ステージ153とともにZ軸方向の軸を回転中心軸にして回転する。ディスペンサ16は、ノズル161とシリンダ162とから構成されている。ノズル161の先端には、供給口161aが形成されている。ノズル161の径は特に限定されるものではないが、本実施形態では、内径が0.41mm、外径が0.71mmのノズルを用いている。また、シリンダ162内部には、屈折率整合液20が蓄えられている。シリンダ162は、図示しないコンプレッサに接続されており、コンプレッサからエアが供給されると、シリンダ162内部に蓄えられた屈折率整合液20をノズル161の供給口161aから滴下する。すなわち、本実施形態におけるディスペンサ16は、供給手段の一例に相当する。シリンダ162は、フレーム11に固定された図示しないアームによって支持されている。
【0038】
図2(a)は、保持手段50とディスペンサ16を示す斜視図である。
図2(a)では、右斜め上方と左斜め下方を結ぶ方向がX軸方向になり、左斜め上方と右斜め下方を結ぶ方向がY軸方向になり、上下方向がZ軸方向になる。
【0039】
図2(a)に示すように、保持手段50は、円盤状の本体51と、その本体51に取り付けられた、複数の清掃部材52を備えたものである。本体51は、円形の上面部511と、円筒状の周面部512を有している。保持手段50は、円形の上面部511の中心を通るZ軸方向の軸を回転中心軸として回転するものである。本体51の、上面部511と周面部512の境目部分における、X側と−X側それぞれには、周面部512から回転中心軸に向って半円状に凹んだ凹部513が設けられ、その凹部513の底と周面部512との境目には、円弧状の凹部外縁513aが形成されている。これら一対の凹部513それぞれには、凹部外縁513aの中央部分に沿った位置に、上方に突出した円柱状の突部514が設けられている。突部514は、先端面である保持面5141と、円筒状の側面5142と、保持面5141と側面5142との境目である外周縁5143を備えている。保持面5141は、水平かつ平坦な円形のものであり、外周縁5143が曲線でつながっている。突部514は、本体51に対して一体に設けられている。なお、突部514は、本体51とは別体のものであってもよく、また、凹部513を省略し、突部514を上面部511から上方に突出して設ける態様を採用してもよい。本体51の上面部511には、保持手段50をZ軸調整ステージ153に固定するネジを挿通するためのネジ挿通孔511aが複数設けられている。
【0040】
ところで、ノズル161の供給口161aから屈折率整合液20を滴下した後、供給口161aを拭き取らないと、その供給口161aに残った屈折率整合液20が固化してしまう。そうすると、屈折率整合液20が供給口161aから滴下される方向が変わってしまったり、ノズル161が詰まってしまう虞がある。清掃部材52は、供給口161aに残った屈折率整合液20を拭き取るものである。清掃部材52は、ステンレス製であり、外径が6mm程度の円筒状のものである。本体51には、ネジ挿通孔511aよりも外周側部分に、清掃部材52の形状に対応した取付部511bが複数設けられている。取付部511bは、保持手段50の回転中心軸に対して放射方向に延在した凹みであり、本体51の周方向において、一対の凹部513の間で所定の間隔をあけて設けられている。複数の取付部511bそれぞれには、清掃部材52が、保持手段50の回転中心軸に対して放射方向に延在した姿勢で取り付けられている。本実施形態では、本体51の周方向における、一対の凹部513の間それぞれに、3つの清掃部材52が取り付けられているが、清掃部材52の数は限定されるものではなく、一対の凹部513の間それぞれに、1つまたは2つ、あるいは4つ以上の清掃部材52を取り付けてもよい。
【0041】
取付部511bに取り付けられた清掃部材52は、その上側部分が、本体51の上面部511から、側面視で円弧状に突出し、清掃部材52の上端部の高さは、ノズル161の供給口161aの位置よりも、0.2mm〜0.3mm程度高い位置に設定されている。このため、保持手段50を、Z軸方向の軸を回転中心軸にして、図の円弧状の矢印で示すように回転させると、複数の清掃部材52の上端部分それぞれが、ノズル161の供給口161aに接触する。これにより、後述するように、ノズル161の供給口161aから屈折率整合液20を供給した後、その供給口161aに残った屈折率整合液20を清掃部材52によって拭き取ることができる。なお、清掃部材52における、上面部511から突出した部分の全てが、側面視で円弧状である必要はなく、保持手段50を回転させた際に、ノズル161の供給口161aに接触する部分のみを円弧状にした態様にしてもよい。また、清掃部材52における、上面部511から突出する部分を、側面視で山形形状にした態様を採用してもよい。ただし、清掃部材52における、上面部511から突出する部分を、側面視で円弧状にした態様を採用することで、清掃部材52の上端部分が、ノズル161の供給口161aに接触する際の追従性が良好になり、供給口161aに残った屈折率整合液20を拭き取りやすくなる。さらに、清掃部材52を、本体51と一体に構成する態様を採用してもよい。
【0042】
図1に示すように、保持手段50の上方には、除去部材17が設けられている。除去部材17は、フレーム11に固定された、図示しないアームによって、Z軸方向に直交する方向の軸を回転中心軸として、回転可能に支持されている。本実施形態では、保持手段50の回転中心軸に対して、放射方向に延びる軸を除去部材17の回転中心軸にしている。除去部材17は、円盤状の回転盤171と、この回転盤171の外周に巻回されたシート材172を備えている。シート材172は、特に限定されるものではないが、表面が粘着性を有するシートや、吸水性の高い素材で構成されたシート等を採用することができる。本実施形態では、シート材172として、クッション性を有する両面テープを採用している。除去部材17は、その下端の高さ位置が、本体51に取り付けられた清掃部材52の上端部の高さ位置よりも、0.2mm〜0.3mm程度低い位置に設定されている。このため、保持手段50を、Z軸方向の軸を回転中心軸にして回転させると、複数の清掃部材52の上端部分それぞれが除去部材17のシート材172に接触し、シート材172に接触することで除去部材17が回転する。除去部材17は、清掃部材52の上端部分のうち、供給口161aから屈折率整合液20を拭き取った部分に、シート材172が接触するように位置が調整されている。清掃部材52の、屈折率整合液20を拭き取った部分を、シート材172に接触させることによって、供給口161aから拭き取った屈折率整合液20を清掃部材52から除去することができる。この結果、清掃部材52が供給口161aから拭き取った屈折率整合液20が、再び供給口161aに付着してしまうことを防ぐことができる。なお、清掃部材52は必ずしも回転しなくてもよいが、除去部材17が回転する態様を採用することで、シート材172の外周全体を、屈折率整合液20の除去に用いることができる。なお、清掃部材52との接触が繰り返され、シート材172自体が汚れたり、粘着性が低下してきた場合には、回転盤171からシート材172を剥がし、新しいシート材172と取り換えればよい。
【0043】
図1および
図2(a)には、突部514の保持面5141の上方に、ノズル161の供給口161aが位置した状態を示している。以下、
図1および
図2(a)に示す状態における、保持手段50の姿勢を供給姿勢と称することがある。また、
図1および
図2(a)に示す状態における、保持面5141と供給口161aとの位置関係を供給位置関係と称することがあり、保持面5141の上方から供給口161aが外れた状態における、保持面5141と供給口161aとの位置関係を非供給位置関係と称することがある。保持手段50は、
図2(a)に示す供給姿勢から、図で曲線の矢印で示すように回転し、他方の突部514における保持面5141の上方にノズル161の供給口161aが位置する供給姿勢で回転を中止する。これにより、保持面5141と供給口161aは、供給位置関係と非供給位置関係との間で位置関係が変化する。
【0044】
本実施形態では、供給口161aから保持面5141の上に屈折率整合液20を滴下することで、保持面5141に屈折率整合液20を供給する。
図1では、保持面5141に供給された屈折率整合液20が、その表面張力によって保持面5141に保持された状態を示している。屈折率整合液20は、揮発性を有する溶媒に屈折率整合体が溶解した溶液である。この屈折率整合液20は、液中の溶媒が揮発することで固化し、弾性を有するゲル状の屈折率整合体が残る。屈折率整合体は、光ファイバfの屈折率に近似した屈折率と、光ファイバfに対して適度な粘着性を有する材料である。本実施形態では、屈折率整合体として、耐環境性や接着性のよいアクリル系の高分子材料を用いているが、その他の高分子材料を用いてもよい。
【0045】
図2(b)および同図(c)は、保持面に屈折率整合液が保持された突部を拡大して示す拡大側面図である。
【0046】
図2(b)では、保持面5141に保持された屈折率整合液20が、屈折率整合液20の表面張力によって外周縁5143よりも外側に膨出するまで、屈折率整合液20を供給口161aから保持面5141に供給した状態を示している。前述したように、保持面5141は、外周縁5143が曲線でつながったものであるため、外周縁5143の効果によって、保持面5141に保持される屈折率整合液20が盛り上がりやすくなる。これにより、屈折率整合液20の盛り上がり高さを十分に確保することができる。また、保持面5141は、曲線でつながった外周縁5143によって画定されるため、保持面5141に保持される屈折率整合液20の盛り上がり高さが一定になるように、屈折率整合液20を供給する調整が容易になる。また、保持面5141に保持される屈折率整合液20の表面張力による盛り上がり状態が、曲線でつながった外周縁5143によって安定する。特に、
図2(b)に示すように、保持面5141に保持された屈折率整合液20が、屈折率整合液20の表面張力によって外周縁5143よりも外側に膨出した状態になっていると、保持面5141に保持される屈折率整合液20がより安定する。これらによって、保持面5141に保持される屈折率整合液20の盛り上がりを十分に確保することができる。また、屈折率整合液20の盛り上がり状態を安定させ、盛り上がり高さを一定に調整しやすくなる。これらの結果、光ファイバfの先端面f1と、保持面5141に保持される屈折率整合液20とのY軸方向の位置調整を厳密に行う必要がなくなり、調整作業を容易にすることができる。なお、保持面5141に保持された屈折率整合液20のうち、少なくとも光ファイバfの先端面f1が対向する屈折率整合液20が、屈折率整合液20の表面張力によって外周縁5143よりも外側に膨出するまで屈折率整合液20を保持面5141に供給すればよい。
【0047】
図2(c)では、保持面5141に保持された屈折率整合液20が外周縁5143に達するまで屈折率整合液20を保持面5141に供給した状態を示している。保持面5141に保持された屈折率整合液20は、必ずしも、外周縁5143よりも外側に膨出させる必要はない。
図2(c)に示すように、保持面5141に保持された屈折率整合液20が外周縁5143に達するまで屈折率整合液20を供給することで、曲線でつながった外周縁5143によって屈折率整合液20が盛り上がりやすくなる。また、保持面5141に保持された屈折率整合液20の表面張力による盛り上がり状態が安定する。さらに、保持面5141に保持された屈折率整合液20の盛り上がり高さが一定になるように、屈折率整合液20を供給する調整も容易になる。
【0048】
また、保持面5141は、必ずしも円形である必要はなく、例えば、楕円形や、外周縁5143が、曲率半径の異なる複数の円弧状の曲線でつながったもの、すなわち角がないものであればよい。保持面の外周縁に角があると、その角によって保持面に保持された屈折率整合液20の表面張力が崩れやすく、屈折率整合液20の盛り上がり状態が安定しない。ただし、36正多角形のように実質的に円形とみなせる保持面であれば、厳密にいえば角があるものの、その角によって屈折率整合液20の表面張力が崩れやすくならないため、外周縁が曲線でつながった保持面に含まれる。
【0049】
さらに、保持面5141は、凸状であってもよいし、凹凸を有したものであってもよいし、傾斜したものであってもよい。ただし、保持面5141に保持された屈折率整合液20の盛り上がり状態を安定させ、後述するように、保持面5141の上に残った屈折率整合液20を拭き取りやすくするために、保持面5141は、水平かつ平坦なものであることが好ましい。なお、保持面5141に保持された屈折率整合液20の安定性を重視する場合には、保持面5141を、凹状のものとする態様を採用してもよい。
【0050】
図3は、本実施形態の光学接続部品製造装置10の回路構成を表すブロック図である。
【0051】
制御部18は、X軸モータ制御回路183、回転モータ制御回路184、静電気発生装置制御回路185、ディスペンサ制御回路186、操作部187およびファイバ検出装置14それぞれに接続されている。また、制御部18は、内部にCPU(中央演算処理装置)181とメモリ182とタイマ189とを備えている。このメモリ182には、光学接続部品製造装置10の動作プログラムが記憶されている。CPU181は、メモリ182に記憶された動作プログラムを読み出し、その動作プログラムに従って各制御回路に指令を出すものである。
【0052】
X軸モータ制御回路183は、CPU181からの指令に従いX軸モータ1212の動作を制御する回路である。回転モータ制御回路184は、CPU181からの指令に従い回転モータ1511の動作を制御する回路である。静電気発生装置制御回路185は、CPU181からの指令に従い静電気発生装置13の電極に電圧を印加する回路である。ディスペンサ制御回路186は、ディスペンサ16に接続されたコンプレッサの動作を制御することでディスペンサ16から滴下される屈折率整合液20の滴下量を制御する回路である。また、操作部187には、光学接続部品製造装置10の操作者による操作を受け付ける各種の操作子が設けられている。
【0053】
続いて、光学接続部品製造装置10の動作を説明する。
【0054】
図4は、本実施形態の光学接続部品製造装置10の動作を表すフローチャートである。
【0055】
光学接続部品製造装置10の電源が投入されると、CPU181はメモリ182から動作プログラムを読み出して初期処理を行う(ステップS1)。この初期処理では、CPU181は、X軸モータ制御回路183に初期動作信号を送信する。X軸モータ制御回路183は、初期動作信号に基づきX軸モータ1212駆動させる。移動ステージ122は、X軸モータ1212が駆動することで、
図5に示す、屈折率整合液保持ユニット15から離間した離間位置に移動する。この初期処理の後、光学接続部品製造装置10の操作者は、光ファイバfの長さや太さなどに応じて、光ファイバfの先端面f1と保持面5141とが所定の位置関係になるように各調整ステージ123、124、153の位置を調整する。上述したように、本実施形態の光学接続部品製造装置10では、保持面5141に保持される屈折率整合液20の盛り上がり高さを十分に確保でき、また、屈折率整合液20の盛り上がり高さが一定になるように、屈折率整合液20を供給する調整が容易である。また、保持面5141に保持される屈折率整合液20の表面張力による盛り上がり状態を安定させることができる。これらのため、Z軸調整ステージ153による、光ファイバfの先端面f1と、保持面5141に保持される屈折率整合液20との、高さ方向の位置調整を厳密に行う必要がなくなり、Z軸調整ステージ153の調整作業が容易になる。
【0056】
次に、操作者によって操作部187が操作されると、CPU181に操作検出信号が送信される。操作検出信号は、CPU181に対する動作開始指示に相当する。CPU181は、動作開始指示があったか否かを判定する(ステップS2)。CPU181は、動作開始指示があるまでステップS2を繰り返し実行し、動作開始指示があると、X軸モータ制御回路183に、接近移動信号を送信する。X軸モータ制御回路183は、接近移動信号に基づきX軸モータ1212を駆動させる。移動ステージ122は、X軸モータ1212が駆動することで、X側への移動を開始する(ステップS3)。
【0057】
ファイバ検出装置14は、光ファイバfの先端面f1が電極シート131の真上に到達したか否かを検出し、光ファイバfの先端面f1が電極シート131の真上に到達したことを検出すると、CPU181に到達信号を送信する。CPU181は、ファイバ検出装置14から到達信号を受信したか否かを判定する(ステップS4)。CPU181は、到達信号を受信するまでステップS4を繰り返し実行し、到達信号を受信すると、ディスペンサ制御回路186に供給信号を送信する。ディスペンサ16は、供給信号に基づき、
図2(b)に示すように、表面張力によって保持面5141の上に盛り上がり、外周縁5143よりも外側に膨出する量の屈折率整合液20を供給する(ステップS5)。なお、この屈折率整合液20の供給量は、あらかじめ操作者が試験的にディスペンサ16からの供給を行って、屈折率整合液20が、保持面5141の上に盛り上がり、外周縁5143よりも外側に膨出する量を求め、操作部187を用いて指定した量である。また、ステップS5では、ディスペンサ16は、
図2(c)に示すように、外周縁5143に達して表面張力によって保持面5141の上に盛り上がる量の屈折率整合液20を供給してもよい。このステップS5が、供給保持工程の一例に相当する。
【0058】
その後、CPU181は、X軸モータ制御回路183に第一間隔移動信号を送信し、X軸モータ制御回路183は、第一間隔移動信号に基づきX軸モータ1212を駆動させる。移動ステージ122は、X軸モータ1212が駆動することで、ステップS4で到達信号を受信したときからさらにX軸側へ所定距離移動する(ステップS6)。この移動により、光ファイバfの先端面f1と、屈折率整合液保持ユニット15に保持されている屈折率整合液20との間隔(以下、ファイバ−液間隔という)が第一間隔L1に調整される。この第一間隔L1は、静電気発生装置13により帯電した光ファイバfの先端面f1に、保持面5141に保持された屈折率整合液20が帯電によるクーロン力によって吸着する間隔である。
図1には、光ファイバfの先端面f1と、屈折率整合液保持ユニット15に保持されている屈折率整合液20との間隔が第一間隔L1に調整された状態、すなわちステップS6が完了した状態が示されている。このステップS6を実行する工程が、第一間隔調整工程の一例に相当する。なお、ステップS5とステップS6は、並行して実行してもよいし、ステップS5の実行を開始する前に、ステップS6の実行を開始してもよい。
【0059】
次いで、CPU181は、静電気発生装置制御回路185に電圧印加開始信号を送信する。静電気発生装置13は、電圧印加開始信号に基づき、電極シート131に電圧を印加する(ステップS7)。電極シート131に電圧を印加することで、光ファイバfは電荷が付与され、帯電して静電気を帯びる。光ファイバfが帯びた静電気によるクーロン力によって、光ファイバfの先端面f1に屈折率整合液20が吸着する。このステップS7が、帯電工程の一例に相当する。なお、CPU18は、ディスペンサ16が保持面5141に屈折率整合液20を供給してから、溶媒が揮発することで屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度が所望の濃度に達するまでに必要なあらかじめ定めた時間が経過した後に、電圧印加開始信号を送信してもよい。こうすることで、所望量の屈折率整合液20を光ファイバfの先端面f1のみに吸着させやすくすることができる。
【0060】
続いて、CPU181は、X軸モータ制御回路183に中間退避移動信号を送信する。X軸モータ制御回路183は、中間退避移動信号に基づきX軸モータ1212を駆動させる。移動ステージ122は、電極シート131に電圧が印加された状態でX軸モータ1212が駆動することによって、−X側に所定距離移動する(ステップS8)。このステップS8の移動により、ファイバ−液間隔が、第一間隔L1から、第一間隔よりも広い第二間隔に拡がる。ステップS8は、光ファイバfに電荷を引き続き付与した状態で、第一間隔L1から第二間隔に拡げる工程である。すなわち、ステップS8を実行する工程が、間隔拡大工程の一例に相当する。ステップS8において第一間隔L1から第二間隔まで拡げる距離は、後述するステップS9の所定時間の設定と併せて、光ファイバfに付着させる屈折率整合体に要求される膜厚に応じて設定される。具体的には、0より大きく1mm以下の範囲、好ましくは、10μm以上200μm以下の範囲で設定される。なお、本実施形態では、パルス制御法を用いてX軸モータ1212を制御し、第二間隔まで拡げている。
【0061】
図6は、光ファイバの先端面に屈折率整合液が付着する様子を説明するための図である。
図6(a)は、ステップS6が完了した状態の様子を示し、同図(b)は、ステップS7を実行した状態の様子を示し、同図(c)は、ステップS8が完了した状態の様子を示す。
【0062】
静電気発生装置13の電極シート131に電圧が印加される前は、
図6(a)に示すように、屈折率整合液20は、光ファイバfの先端面f1に吸着していない。ステップS7で電圧が印加されると、光ファイバfは電荷が付与され、帯電して静電気を帯びる。光ファイバfが帯びた静電気によるクーロン力によって、
図6(b)に示すように、屈折率整合液20は、光ファイバfの先端面f1に吸着する。電圧の印加を継続した状態で、
図6(b)に示す第一間隔L1から、
図6(c)に示すように、第二間隔L2まで拡げると、屈折率整合液20は、光ファイバfの先端面f1に吸着した状態で引き延ばされる。これにより、光ファイバfの先端面f1に吸着させる屈折率整合液の量を増加させ、光ファイバfの先端面f1に付着する屈折率整合体の膜厚を厚くすることができる。
【0063】
第二間隔L2に拡がった時点で、CPU181は、タイマ189を動作させて時間の測定を開始し、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS9)。CPU181は、所定時間が経過するまでステップS9を繰り返し実行し、所定時間が経過すると、電圧印加停止信号を静電気発生装置制御回路185に出力する。静電気発生装置13は、電圧印加停止信号に基づき、電極シート131への電圧の印加を停止する(ステップS10)。この所定時間は、前述したステップS8の、第一間隔L1から第二間隔L2まで拡げる距離の設定と併せて、光ファイバfの先端面f1に付着させる屈折率整合体の、要求される膜厚に応じて設定される。具体的には、0より長く3秒以下の範囲、好ましくは、0.1秒以上2.0秒以下の範囲で設定される。なお、第二間隔に拡がったか否かは、ステッピングモータの動作時間をあらかじめ計測しておき、その計測した時間に基づいてCPU181は、第二間隔に拡がった時点を推定し、時間の測定を開始する。ただし、第二間隔に拡がったことを検出するセンサを設け、そのセンサからの検出信号に基づいて時間の測定を開始してもよい。また、本実施形態では、第二間隔L2に拡がった時点でタイマ189による時間の測定を開始したが、CPU181が、X軸モータ制御回路183に退避移動信号を出力した時点でタイマ189による時間の測定を開始してもよい。
【0064】
ステップS10で電圧の印加が停止した後、CPU181は、X軸モータ制御回路183に完全退避信号を送信する。X軸モータ制御回路183は、完全退避信号に基づきX軸モータ1212を駆動させる。移動ステージ122は、X軸モータ1212が駆動することによって、−X側に移動する(ステップS11)。こうすることで、先端面f1に屈折率整合液20が付着した光ファイバfが得られる。
【0065】
ところで、光ファイバfの先端面f1に付着した屈折率整合液20の量が同じであれば、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度が高い方が、屈折率整合体21の膜厚が厚くなる。しかしながら、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度が高くなると屈折率整合液20の流動性が減少し、屈折率整合液20の分離位置が光ファイバfの先端面f1に近くなって、光ファイバfの先端面f1に付着する屈折率整合液20の量が減少してしまう。このため、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度を高くするだけでは、屈折率整合体21の膜厚が薄くなってしまう。また、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度が高くなると、いわゆる糸引き現象が生じやすい。糸引き現象が生じると、光ファイバfの先端面f1に付着する屈折率整合液20の量や形状が安定し難くなる。
【0066】
図7は、屈折率整合液における屈折率整合体の濃度によって、光ファイバの先端面に付着した屈折率整合体の形状が異なる様子を説明するための図である。
図7(a)および同図(b)では、ともに屈折率整合液20を吸着させ光ファイバfの先端面f1に屈折率整合体21が付着した様子を示しているが、
図7(b)に示す態様では、同図(a)に示す態様に比べて、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度を高くしている。
【0067】
図7(a)に示す態様では、屈折率整合体21がきれいな円弧状に形成されているが、
図7(b)に示す態様では、屈折率整合体21はきれいな円弧状に形成されていない。この理由としては、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度が高くなればなるほど、溶媒揮発の影響を受けやすく、溶媒が揮発することによる屈折率整合体21の粘度変化が大きくなるためであると考えられる。このように、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度によって屈折率整合体21の形状が異なり、光学接続部品製造装置10によって製造される光学接続部品の品質に影響が生じる虞がある。このため、屈折率整合体21の膜厚を、屈折率整合液20における屈折率整合体の濃度の調整によって行う場合は、光学接続部品の品質に影響が生じる場合があり好ましくない。
【0068】
上述したように、本実施形態では、電圧を印加した状態で、第一間隔L1から第二間隔L2まで拡げる距離や、第二間隔L2になった後の電圧の印加を継続する時間を調整することによって、光ファイバfの先端面f1に付着した屈折率整合液20の量を調整することができる。これによって、光ファイバfの先端面f1に付着させる屈折率整合体の膜厚を厚くするなど、屈折率整合体の膜厚を調整することが可能になる。
【0069】
図8は、第二間隔の長さによって、光ファイバの先端面に付着した屈折率整合体の膜厚が異なる現象を説明するための図である。
図8では、第二間隔L2の長さが異なる態様を上下に並べて示し、それぞれ、光ファイバfの先端面f1に屈折率整合液20が付着した様子と、付着した屈折率整合液20が乾燥して屈折率整合体21になった様子を矢印で追って示している。また、光ファイバfの先端面f1に吸着した状態で引き延ばされる屈折率整合液20が分離する位置(分離位置)を二点鎖線で示している。以下、
図8の上側に示す態様を第1態様と称し、
図8の下側に示す態様を第2態様と称する。
【0070】
図8に示すように、第2態様の光ファイバf’’は、第1態様の光ファイバf’に対して、−X側(
図8における左側)に距離D分移動させている。このため、第2態様の第二間隔L2’’は、第1態様の第二間隔L2’に比べて距離D分拡がり、第2態様の屈折率整合液20は、第1態様の屈折率整合液20よりも引き延ばされている。これにより、第1態様における光ファイバf’の先端面f1’と分離位置S1との距離C1よりも、第2態様における光ファイバf’’の先端面f1’’と分離位置S2との距離C2の方が長くなっている。この結果、第1態様の光ファイバf’の先端面f1’に付着する屈折率整合液20に比べて、第2態様の光ファイバf’’の先端面f1’’に付着する屈折率整合液20の量が多くなり、屈折率整合体21の膜厚も厚くなる。このように、第二間隔L2を拡げることで光ファイバfの先端面f1に付着させる屈折率整合体21の膜厚を厚くすることができる。また、第二間隔L2を調整することで光ファイバfの先端面f1に付着させる屈折率整合体21の膜厚を調整することもできる。
【0071】
なお、本実施形態では、ステップS8において、第二間隔L2になった時点で移動ステージ122の−X側への移動を停止するが、移動ステージ122の−X側への移動を停止せず、第二間隔L2に拡がった時点で電圧の印加を停止してもよい。また、第二間隔L2に拡がった時点で、移動ステージ122の−X側への移動の速度を低下させ、電圧の印加を停止してもよい。また、ステップS10とステップS11とを同時に実行してもよい。
【0072】
屈折率整合液20は、その液中の溶媒が揮発することで固化し、弾性を有するゲル状の屈折率整合体になる。この屈折率整合体が光ファイバfの先端面f1に付着した部品が光学接続部品である。なお、溶媒の揮発は、通常環境下でも起こるが、揮発を促進するために強制乾燥させてもよい。
【0073】
最後に、CPU181は、回転モータ制御回路184に、回転信号を送信する。回転モータ制御回路184は、回転信号に基づき回転モータ1511を駆動させる。回転ステージ152は、回転モータ1511が駆動することによって、他方の突部514における保持面5141の上方にノズル161の供給口161aが位置する供給位置関係になるまで回転し(ステップS12)、一連の動作を終了する。
【0074】
図9(a)は、ステップS12において、保持手段が回転している途中の状態を示す側面図であり、
図9(b)は、同図(a)の平面図である。
図9(a)および同図(b)では、保持手段50とb、ディスペンサ16と、除去部材17を示している。
【0075】
保持手段50が回転すると、
図9(a)および同図(b)に示すように、ノズル161の供給口161aが、複数の清掃部材52それぞれに接触する。これによって、供給口161aに残った屈折率整合液20を清掃部材52によって拭き取ることができる。また、屈折率整合液20を拭き取った清掃部材52は、除去部材17に接触する。これによって、清掃部材52に付着した屈折率整合液20は、除去部材17に除去される。
【0076】
光学接続部品製造装置10の操作者は、先端面f1に屈折率整合液20が付着した光ファイバfをファイバ固定具126とともに光学接続部品製造装置10から取り外す。そして、新たな光ファイバfをファイバ固定具126に固定し、そのファイバ固定具126を光学接続部品製造装置10に取り付ける。その後、操作部187に設けられた動作開始操作子を操作することで、ステップS3以降の動作が行われる。これらの動作を繰り返し行うことで、所望個数の光学接続部品が製造できる。
【0077】
また、操作者は、保持面5141の上に残った屈折率整合液20や、保持面5141から垂れ落ちた屈折率整合液20を拭き取る作業を行う。
【0078】
図10(a)は、保持面の上に残った屈折率整合液の拭き取り作業を説明するための平面図であり、
図10(b)は、保持面から垂れ落ちた屈折率整合液の拭き取り作業を説明するための側面図である。
【0079】
図10(a)に示すように、操作者は、例えば、スポンジ状の拭取部31を備えた拭取用具30を用い、拭取部31を保持面5141に接触させながら、図の太い矢印で示すように拭取用具30を動かすことで、保持面5141の上に残った屈折率整合液20を拭き取ることができる。次いで、
図10(b)の太い矢印で示すように、外周縁5143から下方に向けて、拭取部31が突部514の側面5142に沿うように拭取用具30を動かすことで、保持面5141から側面5142に垂れ落ちた屈折率整合液20を拭き取ることができる。このように、突部514の外周縁5143は、保持面5141と側面5142との境目であるので、保持面5141に残った屈折率整合液20と保持面5141から垂れ落ちて側面5142に付着した屈折率整合液20とを連続した操作で拭き取ることができる。
【0080】
また、屈折率整合液20の拭き取り作業を、動作開始操作子を操作した後、ステップS3以降の動作が行われる間に実施することができる。このため、拭取り作業によって、光学接続部品製造装置10の動作が中断されることがなくなる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の光学接続部品製造装置10によれば、保持面5141は、外周縁5143が曲線でつながったものであるため、外周縁5143によって、保持面5141に保持される屈折率整合液20が盛り上がりやすくなる。これにより、屈折率整合液20の盛り上がり高さを確保しやすくなる。また、保持面5141は、曲線でつながった外周縁5143によって画定されるため、保持面5141に保持される屈折率整合液20の盛り上がり高さを一定に調整しやすい。さらに、保持面5141に保持される屈折率整合液20の表面張力による盛り上がり状態が、曲線でつながった外周縁5143によって安定する。これらによって、光ファイバfの先端面f1と、保持面5141に保持される屈折率整合液20との、高さ方向の位置調整を厳密に行う必要がなくなり、調整作業が容易になる。
【0082】
また、本実施形態の光学接続部品製造装置10および光学接続部品製造方法によれば、所望量の屈折率整合液20を光ファイバfの先端面f1に吸着させることができ、さらに、光学接続部品に付着させる屈折率整合体の膜厚を厚くすることもできる。
【0083】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、光ファイバfを屈折率整合液20側に移動させる構成としたが、光ファイバfを移動させずに、屈折率整合液保持ユニット15を移動させることで屈折率整合液20を光ファイバf側に移動する構成としてもよい。また、光ファイバfと屈折率整合液20の両方を移動する構成としてもよい。さらに、本実施形態では、光ファイバfを、その軸心方向であるX軸方向に移動させることで近接位置に移動させる構成としたが、その他の方向に移動させることで近接位置に移動させる構成としてもよく、Z軸方向の軸あるいはY軸方向の軸を回転中心軸として回転させることで近接位置に移動させる構成としてもよい。また、本実施形態では、光学部材として光ファイバfを用いたが、ロッドレンズなどの他の光学部材を用いてもよく、光学部材以外のガラス、セラミックス、プラスチックなどの線状の誘電体を用いてもよい。さらに、本実施形態では、屈折率整合液20を光ファイバfの先端面f1に吸着させたが、屈折率整合液20以外の液状の高分子材料を用いて線状の誘電体の先端面に高分子材料被膜を形成してもよい。また、本実施形態では、保持手段50を回転させることで、保持面5141と供給口161aとの位置関係を、供給位置関係と非供給位置関係との間で変化させる構成としたが、保持手段50を回転させずに、保持手段50を移動させることで、保持面5141と供給口161aとの位置関係を、供給位置関係と非供給位置関係との間で変化させる構成としてもよい。さらに、保持手段50を、回転または移動させずに、供給口161aを移動させることで、保持面5141と供給口161aとの位置関係を、供給位置関係と非供給位置関係との間で変化させる構成としてもよい。
【0084】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の変形例に適用してもよい。