【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Jeffrey S. Walling,Digital Power Amplifier: A New Way to Exploit the Switched-Capacitor Circuit,IEEE Communications Magazine,IEEE,2012年 4月 5日,pp.145-151,URL,http://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?arnumber=6178848
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る電力増幅装置及び送信機につき、詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
<送信機の構成>
本発明の第1の実施形態に係る送信機1の構成につき、
図1を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0017】
送信機1は、ベースバンド部80と、発振器81と、電力増幅装置82と、アンテナ83と、から主に構成されている。
【0018】
ベースバンド部80は、AMコードを生成し、生成したAMコードを電力増幅装置82に出力する。
【0019】
発振器81は、搬送波信号を生成し、生成した搬送波信号を電力増幅装置82に出力する。発振器81は、通常、フェーズロックトループの一部である。
【0020】
電力増幅装置82は、ベースバンド部80から入力されたAMコードに従って動作して、発振器81から入力された搬送波信号を増幅してアンテナ83に出力する。
【0021】
アンテナ83は、電力増幅装置82から入力された搬送波信号を無線回線を用いて送信する。
【0022】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第1の実施形態に係る電力増幅装置82の構成につき、
図2及び
図3を参照しながら、以下詳細に説明する。
図3のAMコードの文字の後ろの<>内の数字は、AMコードのビット数を表している。なお、
図2において、
図1と同一構成である部分には同一符号を付している。
【0023】
電力増幅装置82は、基板101と、第1の電力増幅器アレイ103と、第2の電力増幅器アレイ104と、容量アレイ105と、出力端子106と、から主に構成されている。基板101は、CMOSプロセスで用いることを考慮している。
【0024】
基板101には、第1の電力増幅器アレイ103、第2の電力増幅器アレイ104及び容量アレイ105が設けられている。
【0025】
第1の電力増幅器アレイ103は、複数の第1のスイッチング素子111a〜111oを有している。
【0026】
第1のスイッチング素子111a〜111oは、後述する上位ビットのD級電力増幅器を構成している。第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、平面から視て長方形状であり、平面から視て四角形状になるように基板101に配列されている。具体的には、第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、横5列且つ縦3列になるように配列されている。第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、図示を省略しているが、容量アレイ105の容量素子113a〜113oと一対一に接続されている。第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、全て同一サイズである。第1のスイッチング素子111a〜111oは、例えば出力トランジスタである。
【0027】
第2の電力増幅器アレイ104は、複数の第2のスイッチング素子112a〜112cを有している。第2の電力増幅器アレイ104は、第1の電力増幅器アレイ103よりも容量アレイ105から離れた位置に配置されている。
【0028】
第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、第1のスイッチング素子111a〜111oのオン抵抗よりも大きいオン抵抗を有している。第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、平面から視て長方形状であり、平面から視て一列になるように基板101に配列されている。具体的には、第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、横1列且つ縦3列になるように配列されている。第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、図示を省略しているが、第1のスイッチング素子111a〜111oに接続されていない容量素子113p〜113rと一対一に接続されている。第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、全て同一サイズである。第2のスイッチング素子112a〜112cは、例えば出力トランジスタである。
【0029】
容量アレイ105は、複数の容量素子113a〜113rを有している。容量アレイ105は、可能な範囲で出力端子106に近づけることが望ましい。
【0030】
容量素子113a〜113rの各々は、平面から視て長方形状であり、平面から視て四角形状になるように基板101に配列されている。具体的には、容量素子113a〜113rの各々は、横3列且つ縦6列になるように配列されている。容量素子113a〜113rの各々は、全て同一サイズである。容量素子113a〜113rは、例えばMOM(Metal-Oxide-Metal)容量である。
【0031】
容量素子113a〜113oは、第1のスイッチング素子111a〜111oに一対一で接続されており、第1のスイッチング素子111a〜111oがオンした際に駆動される。
【0032】
容量素子113p〜113rは、第2のスイッチング素子112a〜112cに一対一で接続されており、第2のスイッチング素子112a〜112cがオンした際に駆動される。
【0033】
出力端子106は、容量素子113a〜113rとアンテナ83(
図1参照)とを接続している。
【0034】
次に、電力増幅装置82の構成について、
図3を用いて更に詳細に説明する。
【0035】
電力増幅装置82は、
図3に示すようにバイナリ構成のスイッチトキャパシタ電力増幅装置である。
【0036】
このような電力増幅装置82は、下位2ビットと上位4ビットとの合計6ビットのユニット201〜206から構成されている。
【0037】
ユニット201〜206は、D級電力増幅器211〜216及び容量221〜226を有している。
【0038】
最上位ビットのユニット201は、1つのD級電力増幅器211及び1つの容量221を有している。上位から2番目のビットのユニット202は、1つのD級電力増幅器212及び1つの容量222を有している。上位から3番目のビットのユニット203は、1つのD級電力増幅器213及び1つの容量223を有している。上位から4番目のビットのユニット204は、1つのD級電力増幅器214及び1つの容量224を有している。
【0039】
下位から2番目のビットのユニット205は、1つのD級電力増幅器215及び4つの容量225a〜225dを有している。最下位ビットであるLSB(Least Significant Bit)のユニット206は、1つのD級電力増幅器216及び4つの容量226a〜226dを有している。
【0040】
D級電力増幅器211〜216の各々は、スイッチトキャパシタの振幅を制御しバイナリで重み付けされたAMコードで、オン又はオフして振幅を制御する。
【0041】
上位4ビットのD級電力増幅器211〜214は、第1のスイッチング素子111a〜111oにより構成されている。上位の4ビットのD級電力増幅器211〜214は、全て同じ大きさである。下位2ビットのD級電力増幅器215〜216は、第2のスイッチング素子112a〜112cにより構成されている。下位の2ビットのD級電力増幅器215〜216は、全て同じ大きさである。
【0042】
各上位ビットのD級電力増幅器211〜214を構成する第1のスイッチング素子111a〜111oの数、又は各下位ビットのD級電力増幅器215〜216を構成する第2のスイッチング素子112a〜112cの数は、各々2の累乗になる。
【0043】
具体的には、最下位ビットであるLSBのD級電力増幅器216は、第2のスイッチング素子112a〜112cのうち1つの第2のスイッチング素子により構成されている。下位から2ビット目のD級電力増幅器215は、第2のスイッチング素子112a〜112cのうち2つの第2のスイッチング素子により構成されている。
【0044】
また、上位ビットのうちの最下位ビットのD級電力増幅器214は、第1のスイッチング素子111a〜111oのうち1つの第1のスイッチング素子により構成されている。上位ビットのうちの下位から2ビット目のD級電力増幅器213は、第1のスイッチング素子111a〜111oのうち2つの第1のスイッチング素子により構成されている。上位ビットのうちの下位から3ビット目のD級電力増幅器212は、第1のスイッチング素子111a〜111oのうち4つの第1のスイッチング素子により構成されている。上位ビットのうちの最上位ビットのD級電力増幅器211は、第1のスイッチング素子111a〜111oのうち8つの第1のスイッチング素子により構成されている。
【0045】
第2のスイッチング素子112a〜112cは、第1のスイッチング素子111a〜111oに比べて、4分の1サイズの容量225a〜225dを駆動する。このため、第2のスイッチング素子112a〜112cのオン抵抗を、第1のスイッチング素子111a〜111oのオン抵抗の4倍にする。例えば、第2のスイッチング素子112a〜112cのゲート幅又はフィンガー数を、第1のスイッチング素子111a〜111oのゲート幅又はフィンガー数の4分の1にする。LSBのD級電力増幅器216を構成する第2のスイッチング素子の数と、下から2番目のビットのD級電力増幅器215を構成する第2のスイッチング素子の数と、の比は1:2である。
【0046】
上位4ビットの容量221〜224及び下位2ビットの容量225〜226は、容量素子113a〜113rにより構成されている。
【0047】
上位ビットの容量221〜224の各々と、下位ビットの容量225a〜226dの各々と、の容量比は4:1になっている。この4:1の容量比を実現するために、下位ビットの容量225a〜226dは、上位ビットの容量221〜224と同一サイズの容量を4つ直列に接続して構成されている。このようにすることにより、容量221〜226にばらつきを生じても、ばらつきによる変化量は全ての容量221〜226で一定であるため、容量比の変化は小さくなる。従って、容量221〜226のばらつきによる性能の劣化を、最小限にすることができる。
【0048】
スイッチトキャパシタ電力増幅装置において、バイナリ構成、又は上位ビットと下位ビットとのそれぞれの中でサーモメータ構成になっている。サーモメータ構成では、例えば上位ビットの回路素子と下位ビットの回路素子とのサイズを4:1にする。このような場合、下位ビットのD級電力増幅器を構成する第2のスイッチング素子112a〜112cは、小さい容量値を持つ容量を駆動すると共に第1のスイッチング素子111a〜111oの抵抗値に合わせるために、上位ビットのD級電力増幅器を構成する第1のスイッチング素子111a〜111oのサイズよりも小さくなる。そして、第2のスイッチング素子112a〜112cは、容量素子113a〜113rとの接続線の寄生抵抗も合わせるために、出力端子106及び容量アレイ105に対して、第1のスイッチング素子111a〜111oよりも離れた位置に配置される。
【0049】
このようにすれば、D級電力増幅器のオン抵抗と接続線の寄生抵抗との和が、上位ビットと下位ビットとで精度よく調整されるため、全体の線形性を改善して、良好な線形性を得ることができる。特に、上位ビットと下位ビットとの切り替え時に発生するDNL(微分比直線性誤差:Differential Non Linearity)の誤差を抑制することができる。
【0050】
なお、D級電力増幅器のオン抵抗と接続線の寄生抵抗との和の上位ビットと下位ビットとの比は、容量の上位ビットと下位ビットとの比の逆数の関係であることが望ましい。
【0051】
このように、本実施形態によれば、第1の電力増幅素子の出力トランジスタのオン抵抗及び第2の電力増幅素子の出力トランジスタのオン抵抗の調整に加えて、第1の電力増幅素子と容量とを接続する接続線の寄生抵抗、及び第2の電力増幅素子と容量とを接続する接続線の寄生抵抗も含めて調整されることになり、線形性を改善して、良好な線形性を得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る送信機の構成は、電力増幅装置82の代わりに電力増幅装置200を設ける以外は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0053】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第2の実施形態に係る電力増幅装置200の構成について、
図4を用いて説明する。
【0054】
なお、
図4において、
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。また、
図4において、第1のスイッチング素子121a〜121o及び第2のスイッチング素子122a〜122cの中に記載されている数値は、その第1のスイッチング素子121a〜121o及び第2のスイッチング素子122a〜122cが用いられるD級電力増幅器に入力されたAMコードのビット数(
図3のAMコードの後ろに記載されている数値)に対応している。
【0055】
電力増幅装置200は、基板101と、出力端子106と、第1の電力増幅器アレイ251と、第2の電力増幅器アレイ252と、容量アレイ253と、から主に構成されている。
【0056】
基板101には、第1の電力増幅器アレイ251、第2の電力増幅器アレイ252及び容量アレイ253が設けられている。
【0057】
第1の電力増幅器アレイ251は、複数の第1のスイッチング素子121a〜121oを有している。
【0058】
第2の電力増幅器アレイ252は、複数の第2のスイッチング素子122a〜122cを有している。
【0059】
第1の電力増幅器アレイ251は、所謂コモンセントロイド配置になるように第1のスイッチング素子121a〜121oを配列している。
【0060】
具体的には、上位ビットのうちの最上位ビットのD級電力増幅器211を構成する第1のスイッチング素子121a、121c、121e、121g、121i、121k、121m、121oは、第1のスイッチング素子211a〜211oの配列の中心点P1に対して点対称になるように配列されている。
【0061】
上位ビットのうちの上から2番目のビットのD級電力増幅器212を構成する第1のスイッチング素子121d、121f、121j、121lは、第1のスイッチング素子211a〜211oの配列の中心線L1に対して線対称になるように配列されている。
【0062】
上位ビットのうちの上から3番目のビットのD級電力増幅器213を構成する第1のスイッチング素子121b、121nは、中心線L1に対して線対称になるように配列されている。
【0063】
上位ビットのうちの上から4番目のビットのD級電力増幅器214を構成する第1のスイッチング素子121hは、中心点P1に対して点対称になるように配列されていると共に中心線L1に対して線対称になるように配列されている。
【0064】
また、第2の電力増幅器アレイ252は、所謂コモンセントロイド配置になるように第2のスイッチング素子122a〜122cを配列している。
【0065】
具体的には、下位ビットのうちの下から2番目のビットのD級電力増幅器215を構成する第2のスイッチング素子122a、122cは、第2のスイッチング素子122a〜122oの配列の中心点P2に対して点対称になるように配列されていると共に第2のスイッチング素子122a〜122cの配列の中心線L2に対して線対称になるように配列されている。
【0066】
中心点P1と中心点P2とは異なっている。中心点P2は、第2の電力増幅器アレイ252を第1の電力増幅器アレイ251よりも容量アレイ253から離れた位置に配置されるため、中心点P1よりも容量アレイ253から離れている。ここで、複数の中心点P1、P2がある配列を、マルチセントロイドと呼ぶ。
【0067】
なお、上記以外の第1の電力増幅器アレイ251の構成及び第2の電力増幅器アレイ252の構成は上記第1の実施形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0068】
容量アレイ253は、複数の容量素子123a〜123rを有している。
【0069】
容量アレイ253は、所謂コモンセントロイド配置になるように容量素子123a〜123rを配列している。
【0070】
具体的には、各ビットのD級電力増幅器211〜216に接続する容量素子は、ビット毎に容量素子123a〜123rの配列の中心点P3に対して点対称、又は容量素子123a〜123rの配列の中心線L3に対して線対称になるように配列されている。なお、上記以外の容量アレイ253の構成は上記第1の実施形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0071】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子をマルチセントロイドの配置にするので、第1のスイッチング素子のばらつきと、第2のスイッチング素子のばらつきと、を抑制することができ、これによって線形性の良好な電力増幅装置を得ることができる。
【0072】
なお、本実施形態のマルチセントロイドの配置において、2段階構成の電力増幅装置に対して、対称の中心(中心点又は中心線)を2つ設定する場合について説明した。しかし、電力増幅装置におけるバイナリ構成の構成方法をさらに細かく3通り(3段階)以上に設定することも可能であり、それに応じて上記対称の中心(中心点又は中心線)を増加しても良い。
【0073】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る送信機の構成は、電力増幅装置82の代わりに電力増幅装置300を設ける以外は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0074】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第3の実施形態に係る電力増幅装置300の構成について、
図5を用いて説明する。
【0075】
なお、
図5において、
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、容量素子113a〜113rの各々と一対一の関係を有して接続線302により接続されている。
【0077】
第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、第1のスイッチング素子111a〜111oと接続していない容量素子113a〜113rの各々と一対一の関係を有して接続線301により接続されている。
【0078】
接続線301は、接続線302よりも全長が長いと共に、接続線302の幅よりも細い幅を有している。これにより、接続線301及び接続線302の寄生抵抗を、距離に加えて幅で調整することができる。
【0079】
これにより、接続線301の断面積は、接続線302の断面積よりも小さくなる。つまり、接続線301及び接続線302の寄生抵抗を、距離に加えて接続線の断面積で調整することができる。
【0080】
電力増幅装置300の線形性を良くするためには、第2のスイッチング素子112a〜112cの配列の中心点P2と、容量アレイ105の配列の中心点P3と、の距離を、第1のスイッチング素子111a〜111oの配列の中心点P1と、容量アレイ105の配列の中心点P3と、の距離の約4倍にすることが好ましい。この際、距離のみで調整しようとすると半導体基板の面積が増大し、製造コストの増大を招く。しかしながら、距離に加えて、接続線301の幅及び接続線302の幅を調整することにより、半導体基板の面積を増大させることなく、良好な線形性を有する電力増幅装置を得ることができる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、接続線301の幅及び接続線302の幅を調整することにより、製造コストの増大を招くことなく、良好な線形性を得ることができる。
【0082】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る送信機の構成は、電力増幅装置82の代わりに電力増幅装置400を設ける以外は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0083】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第4の実施形態に係る電力増幅装置400の構成について、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0084】
なお、
図6及び
図7において、
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
第1のスイッチング素子111a〜111oの各々は、容量素子113a〜113rの各々と一対一の関係を有して接続線402により接続されている。
【0086】
第2のスイッチング素子112a〜112cの各々は、第1のスイッチング素子111a〜111oと接続していない容量素子113a〜113rの各々と一対一の関係を有して接続線401により接続されている。
【0087】
次に、接続線401及び接続線402の構成について、
図7を用いて更に詳細に説明する。
【0088】
接続線401は、積層された配線レイヤ層のうちの1つの配線レイヤ層に形成されている。
【0089】
接続線402は、積層された配線レイヤ層のうちの4つの配線レイヤ層の各々に形成されている。即ち、接続線402を形成する配線レイヤ層の数を、接続線401を形成する配線レイヤ層の数よりも多くする。具体的には、接続線402は、一番下の第1配線レイヤ層に形成される接続線402dと、下から2番目の第2配線レイヤ層に形成される接続線402cと、下から3番目の第3配線レイヤ層に形成される接続線402bと、一番上の第4配線レイヤ層に形成される接続線402aと、から構成されている。なお、接続線402a〜402dの各々は、図示しない絶縁体により互いに絶縁されている。
【0090】
このようにすると、接続線401及び接続線402の寄生抵抗を、距離に加えて配線のレイヤ層の数でも調整することが可能になる。
【0091】
これにより、接続線401の断面積は、接続線402の断面積よりも小さくなる。つまり、接続線301及び接続線302の寄生抵抗を、距離に加えて接続線の断面積で調整することができる。
【0092】
電力増幅装置400の線形性を良くするためには、第2のスイッチング素子112a〜112cの配列の中心点P2と、容量アレイ105の配列の中心点P3と、の距離を、第1のスイッチング素子111a〜111oの配列の中心点P1と、容量アレイ105の配列の中心点P3と、の距離の約4倍にすることが好ましい。この際、距離のみで調整しようとすると半導体基板の面積が増大し、製造コストの増大を招く。しかしながら、距離に加えて、接続線401のレイヤ層の数及び接続線402のレイヤ層の数を調整することにより、半導体基板の面積を増大させることなく、良好な線形性を有する電力増幅装置を得ることができる。
【0093】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、接続線401のレイヤ層の数及び接続線402のレイヤ層の数を調整することにより、製造コストの増大を招くことなく、良好な線形性を得ることができる。
【0094】
なお、本実施形態において、接続線402を形成する配線レイヤ層の数を、接続線401を形成する配線レイヤ層の数の4倍にしたが、4倍以外にしてもよい。
【0095】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る送信機の構成は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0096】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第5の実施形態に係る電力増幅装置の構成について、
図8を用いて説明する。
【0097】
なお、
図8において、
図7と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
接続線501は、積層された配線レイヤ層のうちの1つの配線レイヤ層に形成されている。接続線501は、接続線502aが形成された一番上の第4配線レイヤ層と同じ配線レイヤ層に形成されている。
【0099】
接続線502は、積層された配線レイヤ層のうちの4つの配線レイヤ層の各々に形成されている。即ち、接続線502を形成する配線レイヤ層の数を、接続線501を形成する配線レイヤ層の数よりも多くする。具体的には、接続線502は、一番下の第1配線レイヤ層に形成される接続線502dと、下から2番目の第2配線レイヤ層に形成される接続線502cと、下から3番目の第3配線レイヤ層に形成される接続線502bと、一番上の第4配線レイヤ層に形成される接続線502aと、から構成されている。なお、接続線502a〜502dの各々は、図示しない絶縁体により互いに絶縁されている。
【0100】
接続線501及び接続線502aが形成される第4配線レイヤ層は、基板101から最も遠い配線レイヤ層である。
【0101】
配線503は、膜厚を厚く且つ幅を広く形成でき、低インピーダンス特性が特に必要な電源ライン又はグランド(GND)ラインとして使用されている。
【0102】
なお、本実施形態に係る電力増幅装置の上記以外の構成は上記第1の実施形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0103】
このようにすると、
図8に示すように、接続線501と配線503との間の寄生容量C1と、接続線502aと配線503との間の寄生容量C2と、を単位面積当たりで一定にすることができ、接続線501及び接続線502の寄生容量も精度よく調整することができる。
【0104】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、接続線501及び接続線502の寄生容量を調整することにより、更に良好な線形性を得ることができる。
【0105】
なお、本実施形態において、上記第3の実施形態に示す接続線の幅の調整と組み合わせることで、更に良好な線形性を得ることができる。
【0106】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る送信機の構成は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0107】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第6の実施形態に係る電力増幅装置900の構成について、
図9を用いて説明する。
【0108】
なお、
図9において、
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0109】
基板101には、容量アレイ605が設けられている。
【0110】
容量アレイ605は、複数の容量素子613a〜613rを有している。容量素子613a〜613rは出力端子106に接続している。容量アレイ605は、可能な範囲で出力端子106に近づけることが望ましい。
【0111】
容量素子613a〜613rの各々は、平面から視て長方形状であり、平面から視て四角形状になるように基板101に配列されている。具体的には、容量素子613a〜613rの各々は、横3列且つ縦6列になるように配列されている。容量素子613a〜613rは、例えばMOM容量である。
【0112】
容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rの各々は、全て同一サイズである。容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rは、第1のスイッチング素子111a〜111oに一対一で接続されており、第1のスイッチング素子111a〜111oがオンした際に駆動される。
【0113】
容量素子613g、613j、613mの各々は、全て同一サイズであり、容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rの基板101に対する実装面積の4分の1より少し大きい実装面積のサイズを有している。容量素子613g、613j、613mは、例えばフィンガー数を調整することにより上記のサイズを有する。容量素子613g、613j、613mは、第2のスイッチング素子112a〜112cに一対一で接続されており、第2のスイッチング素子112a〜112cがオンした際に駆動される。
【0114】
また、容量アレイ605において、容量素子613g、613j、613mの各々は、他の容量素子と比較して、出力端子106から離れた位置に配置されている。このようにすると、出力端子106と容量素子613g、613j、613mを接続する配線の配線抵抗が、出力端子106と容量素子613g、613j、613m以外のその他の容量素子613を接続する配線の配線抵抗よりも大きくでき、線形性を改善することが可能になる。容量素子613g、613j、613mは第2のスイッチング素子112a、112bまたは112cのいずれかに接続されている。
【0115】
微小な容量値である例えば100fF以下のMOM容量を用いる場合、寄生容量の影響を無視できなくなる。この場合、4つの容量を直列に接続した際の容量は、同一サイズの1つの容量に比べて、4分の1になる。しかしながら、理想的には容量と共に減少することが望ましい寄生容量は、接続数が増えているため増加する。この結果、線形性は低下する。
【0116】
これに対して、本実施形態では、直列に接続した4つの容量を構成する容量素子613g、613j、613mは、1つの容量を構成する容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rの実装面積の4分の1より少し大きい実装面積を有しているため、容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rのサイズと同一サイズの場合に比べて、少ない容量を有することになる。従って、電力増幅装置900では、容量の接続数が増えることに伴う寄生容量の増加を抑制することができる。
【0117】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、直列に接続する容量を構成する容量素子の実装面積を、単一の容量を構成する容量素子の実装面積の4分の1より少し大きくすることにより、MOM容量を用いた際の寄生容量であるフリンジ容量を制御することができ、MOM容量を用いた際の線形性の低下を防ぐことができる。
【0118】
なお、容量素子613g、613j、613mは、容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rの実装面積の4分の1より少し大きい実装面積を有する場合に限らず、容量素子613a〜613f、613h、613i、613k、613l、613n〜613rの実装面積より小さく且つ4分の1より大きい実装面積を有していればよい。
【0119】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る送信機の構成は
図1と同一構成であるので、その説明を省略する。
【0120】
<電力増幅装置の構成>
本発明の第7の実施形態に係る電力増幅装置の構成について、
図10を用いて説明する。
【0121】
なお、
図10において、
図2と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0122】
電力増幅装置1000は、基板101と、第1の電力増幅器アレイ103と、第2の電力増幅器アレイ104と、容量アレイ105と、出力端子106と、インダクタ701と、から主に構成されている。
【0123】
インダクタ701は、一方の端子が出力端子106に接続され、他方の端子が容量素子113a〜113rに接続されている。インダクタ701のインダクタ値と容量素子113a〜113rの全容量の加算値とは、搬送波信号の周波数で共振するように設定されることが望ましい。このようにすると、インダクタ701を外付けにする必要をなくすることができるため、送信機の製造コストを低減することができる。
【0124】
出力端子106は、インダクタ701とアンテナ83(
図1参照)とを接続している。
【0125】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、搬送波信号を効率よく増幅することができる。
【0126】
(第8の実施形態)
<送信機の構成>
本発明の第8の実施形態に係る送信機2の構成につき、
図11を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0127】
なお、
図11において、
図1と同一構成である部分については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0128】
送信機2は、ベースバンド部80と、発振器81と、電力増幅装置82と、フィルタ1100と、アンテナ83と、から主に構成されている。
【0129】
電力増幅装置82は、ベースバンド部80から入力されたAMコードに従って動作して、発振器81から入力された搬送波信号のレベルを増幅してフィルタ1100に出力する。
【0130】
フィルタ1100は、電力増幅装置82とアンテナ83との間に設けられている。フィルタ1100は、例えば表面弾性波フィルタ、積層フィルタ又は表面実装素子を組み合わせて形成するバンドパスフィルタ等である。フィルタ1100は、電力増幅装置82から入力された信号の対域外の不要スペクトルを抑制し、不要スペクトルを抑制した信号をアンテナ83に出力する。
【0131】
アンテナ83は、フィルタ1100から入力された信号を無線回線を用いて送信する。
【0132】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、不要スペクトルを抑制した信号を送信可能な送信機を提供することができる。
【0133】
なお、上記実施の形態では、電力増幅装置が、下位2ビットと上位4ビットとの2段階構成を採る場合について説明した。しかし、上記実施の形態において電力増幅装置では、2段階構成に限定されず、n段階(nは2以上の正の整数)構成でもよい。例えば、電力増幅装置は、下位2ビット、中位4ビット、上位4ビットの3段階構成を採ってもよい。電力増幅装置が3段階以上の構成を採る場合でも、上記実施の形態と同様、下位ビットに対応するスイッチング素子ほど、容量アレイから離れた位置に配置されればよい。