(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
焼結鉱及びペレットを製造する製造ライン内に配備され、焼結後の前記焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置であって、前記焼結鉱及びペレットを冷却した後の空気を回収し、回収した前記空気を前記焼結鉱及びペレットの冷却源として返送する強制循環経路と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路内を流通する前記空気から熱を回収する熱交換器と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路の空気を循環させる循環ブロワと、が備えられた冷却装置において、
前記強制循環経路には、前記熱交換器にて熱交換後の前記空気を当該強制循環経路の外に放出する放出手段が備えられており、
前記放出手段として、排気ブロアが採用されていて、
前記強制循環経路には、前記熱交換器を通過する空気の流量Qと、前記熱交換器の入側の空気の温度Tiと、大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記放出手段が外部へ放出する空気の流量を制御する排気制御装置が備えられている
ことを特徴とする焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置。
【背景技術】
【0002】
現在、製鉄の方法として主流を占めているのは、高炉による大規模製鉄と電気炉による中小規模製鉄であり、このうち高炉には、塊鉱石、焼結鉱及びペレットが製鉄材料として装入される。
高炉に装入されるペレットを製造するペレットプラントには、ペレットを製造するために「グレートキルン炉」が設けられている。
【0003】
一方、高炉に装入される焼結鉱を製造する焼結鉱プラントには、「焼結機」が備えられている。この焼結機は、粉鉱と粉状コークスとが混合された原料に着火し、着火された原料を搬送手段で機長方向に搬送しつつ、下方の風箱で吸気することにより焼結を進行させ、高炉に投入可能な焼結鉱を製造する。
焼結機やグレートキルン炉で焼成された焼結鉱やペレットは、焼結直後は非常に高温であるため、グレートキルン炉や焼結機の下工程には、焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置が設けられている。このような冷却装置、言い換えれば、焼結鉱及びペレットを冷却する技術としては、例えば、特許文献1や特許文献2に示すような技術が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、排ガス温度の低下を防止可能な焼結鉱向けの冷却装置(焼結鉱クーラ)が開示されている。
この文献に開示された技術は、冷却装置における廃熱回収フード内の圧力を高めるという作用効果を意図しており、ファンによって冷却ゾーン側フードを通過するガスのうち、固定式仕切壁付近を流れるガスは廃熱回収後の焼結鉱と熱交換した後の高温のガスなので、この高温ガスを廃熱回収ゾーン側へ吹き込んでやれば良いという思想が開示されている。そのための方法として、仕切壁を移動式とし、廃熱回収フード内の圧力を基にして、前述の仕切壁に対する位置制御を行っている。
【0005】
ここで、ファンによって冷却ゾーン側フードを通過するガスとは、冷却後に高温になった空気の低温側(焼結鉱移動方向の下流側)空気のことだが、この空気はまだかなり高温の状態にあり、廃熱回収側へ吸引して利用できることが、特許文献1に述べられている。
一方、特許文献2には、焼結鉱冷却排ガスの回収方法の技術が開示されている。
この文献において、焼結鉱冷却用として過剰な廃ガスが発生した場合には、前記過剰廃ガスの廃熱を回収した後、廃ガス循環系中に設けた放出管で放出することにより、廃ガスの廃熱回収効率と焼結鉱冷却効率とを、共に最適に維持する装置が開示されている。
【0006】
この装置における放出管は、通常運転時には閉じられているが、焼結鉱増産時に焼結鉱冷却後の廃ガス温度が上昇して蒸気量が過剰になった場合に開けられて、過剰の廃ガスが放出されるものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に開示された、従来より用いられている冷却装置では、以下に述べるような不都合が存在することが知見されている。
図1に、特許文献1などに開示された従来の冷却装置と、その冷却装置に備えられた廃熱回収経路を示す。
図1の冷却装置において、約600℃で冷却装置へ流入して来た焼結鉱(焼結ペレット
も含む)は、冷却装置の中を左から右へ移動していて、その中を移動している間に、冷却装置の下から上へ流れている空気によって冷却される。この冷却装置には、焼結鉱冷却用の空気源が2系統備えられており、冷却装置の前半部の空気源は循環ブロワに由来しており、冷却装置の後半部の空気源は低温側ブロワに由来している。
【0009】
高温の状態にある焼結鉱が投入され通過する冷却装置内の前半部は、焼結鉱を冷却した後の空気の温度が非常に高いので、この高温の空気をボイラへ送って蒸気を製造するようになっている。なお、このボイラは、排気ダクトを介して循環ブロワに接続されていて、廃熱回収の閉回路を形成している。このボイラから排出される蒸気は、約180℃以上になっており、従来はこの蒸気を排気ダクトで接続された循環ブロワで吸引して、冷却装置へ送っている。
【0010】
このような冷却装置おいては、投入された焼結鉱が積まれて移動するトラフと呼ばれる搬送装置と、その搬送装置の下部に配備されている送風ダクトとの間の気密性を完全に維持するのは困難であり、その搬送装置と送風ダクトとの間から多量の漏風が発生する。このような搬送装置と送風ダクトとの間から多量の漏風分を補充するために、送風ダクトに補充ブロワが接続されている。
【0011】
また、従来は、廃熱回収に適さない中程度の温度(およそ150℃〜250℃)である低温側ブロワ由来の冷却空気は、そのまま大気に放出されている。ところが、焼結鉱増産時や焼結機拡張などにより生産量が増した場合、低温側ブロワ由来の冷却空気も、焼結鉱を冷却した後に250℃を超えることとなり、廃熱回収ボイラでの回収対象に成り得る。
しかしながら、
図1に示す従来の冷却装置の構成では、廃熱回収経路は略閉回路になっていることから、焼結鉱増産などで低温側ブロワ由来の中温度の冷却空気が250℃を超えた場合に、中温度の冷却空気を廃熱回収系へ吸い込む手段は、漏風量Q
Lがほぼ一定であることから補充ブロワの送風量Q
Mを低下させて、低温側からの吸引空気量Q
Sを増やす以外にない。
【0012】
このような中温度の冷却空気を廃熱回収系へ吸い込む方法は、質量保存式、式(1)で説明できる。
【0013】
【数1】
【0014】
ところで、冷却装置の前半部において、焼結鉱の冷却に寄与する風量は、[循環ブロワの送風量Q
B−低温側からの吸引空気量Q
S]であることから、補充ブロワの送風量Q
Mを低下させることは、冷却風量の低下を意味している。さらに、焼結鉱を冷却する空気の冷却前温度T
Lは式(2)で表されることから、補充ブロワの送風量Q
Mを低下させることは、空気の冷却前温度T
Lが補充ブロワの温度T
Mではなく循環ブロワの温度T
Bに近づくこと、つまり大気温度ではなく180℃に近づくことを意味している。
【0015】
【数2】
【0016】
[循環ブロワの送風量Q
B−低温側からの吸引空気量Q
S]の低下と、空気の冷却前温度T
Lが補充ブロワの温度T
Mへと変化する効果により、冷却能力増強が必要な増産時に、焼結鉱の冷却が不足することになる。
したがって、
図1に示す冷却装置の構成では、焼結鉱増産などにより、低温側ブロワ由来の中温度の冷却空気が250℃を超えたとしても、冷却装置の運転の調整などで廃熱回収を増加させることは不可能である。
【0017】
すなわち、特許文献1,2に開示された、従来より用いられている冷却装置では、廃熱回収の能力に限界があるということが明らかである。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、高い廃熱回収の能力を有する焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置、及びこの冷却装置における排気制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置は、焼結鉱及びペレットを製造する製造ライン内に配備され、焼結後の前記焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置であって、前記焼結鉱及びペレットを冷却した後の空気を回収し、回収した前記空気を前記焼結鉱及びペレットの冷却源として返送する強制循環経路と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路内を流通する前記空気から熱を回収する熱交換器と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路の空気を循環させる循環ブロワと、が備えられた冷却装置において、
前記強制循環経路には、前記熱交換器にて熱交換後の前記空気を当該強制循環経路の外に放出する放出手段が備えられており、前記放出手段として、排気ブロアが採用されていて、前記強制循環経路には、前記熱交換器を通過する空気の流量Qと、前記熱交換器の入側の空気の温度Tiと、大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記放出手段が外部へ放出する空気の流量を制御する排気制御装置が備えられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置の他の技術的手段は、焼結鉱及びペレットを製造する製造ライン内に配備され、焼結後の前記焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置であって、前記焼結鉱及びペレットを冷却した後の空気を回収し、回収した前記空気を前記焼結鉱及びペレットの冷却源として返送する強制循環経路と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路内を流通する前記空気から熱を回収する熱交換器と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路の空気を循環させる循環ブロワと、が備えられた冷却装置において、前記強制循環経路には、前記熱交換器にて熱交換後の前記空気を当該強制循環経路の外に放出する放出手段が備えられており、前記放出手段として、前記強制循環経路上に設けられた大気放散弁が採用されていて、前記強制循環経路には、前記熱交換器を通過する空気の流量Qと、前記熱交換器の入側の空気の温度Tiと、大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記放出手段が外部へ放出する空気の流量を制御する排気制御装置が備えられていることを特徴とする。
本発明の焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置の他の技術的手段は、焼結鉱及びペレットを製造する製造ライン内に配備され、焼結後の前記焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置であって、前記焼結鉱及びペレットを冷却した後の空気を回収し、回収した前記空気を前記焼結鉱及びペレットの冷却源として返送する強制循環経路と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路内を流通する前記空気から熱を回収する熱交換器と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路の空気を循環させる循環ブロワと、が備えられた冷却装置において、前記強制循環経路には、前記熱交換器にて熱交換後の前記空気を当該強制循環経路の外に放出する放出手段が備えられていて、前記放出手段として、排気ブロアが採用されており、前記強制循環経路には、前記熱交換器出側の空気の温度Toと、前記熱交換器での蒸気発生量mと、前記熱交換器入側の空気の温度Tiと、大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記放出手段が外部へ放出する空気の流量を制御する排気制御装置が備えられていることを特徴とする。
本発明の焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置の他の技術的手段は、焼結鉱及びペレットを製造する製造ライン内に配備され、焼結後の前記焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置であって、前記焼結鉱及びペレットを冷却した後の空気を回収し、回収した前記空気を前記焼結鉱及びペレットの冷却源として返送する強制循環経路と、前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路内を流通する前記空気から熱を回収する熱交換器と、
前記強制循環経路上に設けられ且つ当該強制循環経路の空気を循環させる循環ブロワと、が備えられた冷却装置において、前記強制循環経路には、前記熱交換器にて熱交換後の前記空気を当該強制循環経路の外に放出する放出手段が備えられていて、前記放出手段として、前記強制循環経路上に設けられた大気放散弁が採用されていて、前記強制循環経路には、前記熱交換器出側の空気の温度Toと、前記熱交換器での蒸気発生量mと、前記熱交換器入側の空気の温度Tiと、大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記放出手段が外部へ放出する空気の流量を制御する排気制御装置が備えられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の冷却装置における排気制御方法は、上記した焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置における排気制御方法であって、前記熱交換器の通過する空気の
流量Qと、前記熱交換器入側の空気の温度Tiと、
大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記空気の
流量Qの変化と、
熱交換器で発生する蒸気発生量mの変化との比dm/dQを算出して、前記算出したdm/dQが0以上の場合、回収する空気の流量Qを増やすと共に、前記熱交換後の空気を増加分だけ多く外部へ放出するように制御することを特徴とする。
【0021】
本発明の冷却装置における排気制御方法は、上記した焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置における排気制御方法であって、前記熱交換器出側の空気の温度Toと、前記熱交換器で製造される蒸気発生量mと、前記熱交換器入側の空気の温度Tiと、
大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、前記空気の
流量Qの変化と、発生する蒸気発生量mの変化との比dm/dQを算出して、前記算出したdm/dQが0以上の場合、回収する空気の流量Qを増やすと共に、前記熱交換後の空気を増加分だけ多く外部へ放出するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置、及びこの冷却装置における排気制御方法によれば、冷却装置における廃熱回収の能力を可及的に高くすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る焼結鉱及びペレットを冷却する冷却装置、及びこの冷却装置における排気制御方法について、図を基に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
【0025】
例えば、以下の説明において、焼結プラントにて製造された焼結鉱Pを冷却する冷却装置1として説明を行うが、それに限定されず、ペレットプラントにて製造されたペレットを冷却する冷却装置にも、本発明の技術を適用可能である。
[第1実施形態]
本発明に係る冷却装置1(クーラ)は、乾燥され、且つ転動加熱に耐え得る強度にまで予熱硬化された焼結鉱P(焼成鉄鉱石)を大気により冷却する空冷装置であり、焼結プラントの下流側に備えられている。
【0026】
冷却装置1(クーラ)は、焼結が完了した焼結鉱Pに対して大気を強制的に吹き込んで冷却する強制対流冷却方法によって冷却する設備であり、この設備で搬送可能な温度にまで冷却された焼結鉱Pは、製品として搬出される。
このような構成の冷却装置1には、焼結鉱冷却後の高温となった冷却空気を回収し、回収した空気を焼結鉱Pの冷却源として返送する強制循環経路3(廃熱回収経路)が配備されている。
【0027】
具体的には、本発明の冷却装置1は、平面視で略リング状に形成され、焼結鉱Pを載置し冷却する冷却室2と、この冷却室2内で焼結鉱Pを冷却した後の高温となった空気(冷却空気)を回収し、回収した冷却空気を焼結鉱Pの冷却源として返送する強制循環経路3と、この強制循環経路3上に設けられ、且つ強制循環経路3内を流通する冷却空気から熱を回収する熱交換器7(廃熱回収ボイラ)と、この強制循環経路3上に設けられ、且つ当該強制循環経路3の冷却空気を循環させる循環ブロワ8と、が備えられていて、強制循環経路3には、熱交換器7にて熱交換後の冷却空気の一部を当該強制循環経路3の外に放出する放出手段12が備えられている。
【0028】
なお、第1実施形態の放出手段12には、排気ブロア12aが採用されている。
冷却室2は、焼結プラントに備えられた焼結炉(図示しない)から排出された焼結鉱Pを載置し冷却する載置台2a(トラフ)と、載置台2aの下面に複数設けられ、ブロワからの冷却空気を冷却室2の下側から焼結鉱Pに向かって案内するエアチャンバ2d(本実施形態では、16個)と、載置台2aを上側から覆うフード2bと、フード2bの上面に複数設けられ、冷却後の冷却空気をフード2b内から外部に排出する排気ダクト2c(本実施形態では、4個)と、で構成されている。
【0029】
図5は、上述した略リング状の冷却装置1を展開した形で、概略的に示したものである。
図5に示すように、冷却室2に送風する複数のブロワには、循環ブロワ8と低温側ブロア9とが存在している。循環ブロワ8は廃熱回収ボイラ7で熱交換された冷却空気を送風ダクト5を介して、焼結鉱Pを冷却する冷却室2に再度送風するものであり、低温側ブロア9は外部からの空気を焼結鉱Pを冷却する冷却室2に送風するものである。
【0030】
また、複数の排気ダクト(煙突)2cのうち、冷却室2上流側に配備された複数の排気ダクト2c(本実施形態では、排気ダクト#1(2c)、排気ダクト#2(2c))には、非常に高温となった冷却空気(例えば、400℃以上の空気)を回収して、排気ダクト2cの下流側に配備された廃熱回収ボイラ7に送る回収ダクト4が接続されていて、この排気ダクト2cには、マルチクロンと呼ばれる冷却空気中のダストを回収する集塵手段6
が配備されている。
【0031】
廃熱回収ボイラ7の出側(下流側)には、熱交換後の冷却空気を、排気ブロア12aに送風する冷却空気と循環ブロワ8に送風する冷却空気とに分岐する分岐ダクト11が接続されている。この分岐ダクト11の循環ブロワ8側下流、すなわち循環ブロワ8の入側には、冷却室2とエアチャンバ2dとの間からもれ出す漏風を補完する大気吸引手段13が配備されている。
【0032】
まとめれば、これらの冷却室2、排気ダクト2c、集塵手段6、廃熱回収ボイラ7、循環ブロア8、エアチャンバ2dは、基本的に冷却空気をエアチャンバ2dから冷却室2→排気ダクト2c→廃熱回収ボイラ7の順に経由して冷却室2に循環させる略閉ループ状の強制循環経路3(回収ダクト4、分岐ダクト11、送風ダクト5)により接続されている。さらに、分岐ダクト11により冷却空気を排気ブロア12aに放出するようにもなっている。
【0033】
ところで、本発明の冷却装置1は、通常、排気ダクト#1(2c)、及び排気ダクト#2(2c)で排出される非常に高温となった冷却空気を回収している。それに加え、焼結鉱Pの増産などにより、排気ダクト#3(2c)の近傍に生じる非常に高温となった冷却空気も回収することが可能である。
例えば、排気ダクト#1(2c)と排気ダクト#2(2c)で生じた高温の冷却空気に加えて、排気ダクト#3(2c)の近傍において生じた高温の冷却空気を回収する場合、排気ダクト#1(2c)と排気ダクト#2(2c)の冷却空気の流量Qに加えて、排気ダクト#3(2c)の近傍の冷却空気の流量dQが増加することとなる。しかし、循環ブロアから排出される空気の流量Qは、略閉ループ状となっているので一定である。そこで、廃熱回収ボイラ7の下流側の配備された排気ブロア12aで、熱交換後の冷却空気の流量dQ分だけ外部に放出する。
【0034】
このようにすることで、通常より多くの高温の冷却空気を回収し、その廃熱を利用して蒸気を製造することが可能である。
次に、上記した本発明の冷却装置1における冷却空気の廃熱回収方法、すなわち冷却装置1における排気制御方法について、
図2〜
図8に基づいて説明する。
本発明に係る焼結鉱Pを冷却する冷却装置1における排気制御方法は、熱交換器7(廃熱回収ボイラ)の通過する空気の風量
(流量)Qと、廃熱回収ボイラ7入側の空気の温度Tiと、
大気へ放散される冷却後空気の温度Teとを基に、廃熱回収ボイラ7で取り出される熱量、すなわち廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気発生量の変化dmと、強制循環経路3へ吸引される空気の流量dQとの比が0以上((dm/dQ)>0)の場合、強制循環経路3へ吸引される空気の流量dQを増やすと共に、熱交換後の空気を増加分だけ多く外部へ放出するように制御する方法である。
【0035】
また、本発明の冷却装置1における排気制御方法は、廃熱回収ボイラ7出側の空気の温度T
oと、廃熱回収ボイラ7で製造される蒸気発生量mと、廃熱回収ボイラ7入側の空気の温度T
iと、外部へ放出する空気の温度T
eとを基に、廃熱回収ボイラ7で取り出される熱量、すなわち廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気発生量の変化dmと、強制循環経路3へ吸引される空気の流量dQとの比が0以上((dm/dQ)>0)の場合、強制循環経路3へ吸引される空気の流量dQを増やすと共に、前記熱交換後の空気を増加分だけ多く外部へ放出するように制御するようにしてもよい。
【0036】
まず、冷却装置1内部の温度分布を求めるために、焼結鉱Pと冷却空気のエネルギ方程式を解く。焼結鉱Pを球体でモデル化し、焼結鉱P内部の温度分布も考慮する。
図2に示すように、エネルギ方程式の数値解法は、冷却装置1のトラフ(載置台2a)移動方向にX軸、焼結鉱Pの堆積方向(空気の流れ方向)にY軸、焼結鉱Pの半径方向にR軸をとった変則3次元計算となる。
【0037】
そして、定常状態での焼結鉱P及び、冷却空気の支配方程式は以下に示す、式(3)、式(4)と表せる。なお、本実施形態で説明している平面視でリング形状の冷却装置1も、直線形状の冷却装置1と同様の形状として考慮する。
【0039】
また、焼結鉱Pと空気の間の熱伝達係数には、(「流動層」,白井隆,科学技術社,(1958)、204、207)に記載の式を用いる(式(5))。
【0041】
空隙率εは、次式によって求められる。
【0043】
そして、焼結鉱P層(充填層)での圧力損失にはエルガンの式(Ergun,S.,Chem.Eng.Prog.,46−11(1952),89.)を用いる(式(7))。
【0045】
上記した計算手法により求めた冷却装置1内部の空気流量と、冷却後の冷却空気温度の分布を
図3に示す。焼結鉱P生産量には、540t/hの生産量を用いている。
図3に示すように、横軸には、焼結鉱Pを乗せたトラフと移動方向に合計16個並んだ空気ヘッダであるエアチャンバ2dのIDが記されている。なお、エアチャンバ2dは、上流から順に(冷却空気の温度が高温→低温の順に)ID1〜ID16とされ、エアチャンバID1〜ID8は循環ブロワ8配下に配備され、エアチャンバID9〜ID16は低温側ブロワ配下に配備されている。
【0046】
図3を見てみると、焼結鉱P冷却後の冷却空気の温度は、トラフの移動方向へ向かって低下する傾向を持つことがわかる。また、
図3より、従来からの冷却装置1では、エアチ
ャンバID1〜ID8の範囲の冷却空気(238kNm
3/h、475℃)を回収して41t/hの蒸気を製造できる。
しかし、このときエアチャンバID9〜ID12には、廃熱回収ボイラ7で蒸気を製造することが可能な250℃以上の冷却空気が存在し、排気ダクト#3(2c)から外部に放出されていることがわかる。
【0047】
冷却後の冷却空気の回収範囲と、廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気量mとの関係を調べた結果を
図4に示す。
図4を見てみると、540t/hの焼結鉱P生産量では、エアチャンバID1〜ID12の範囲から冷却後空気を回収した場合に、最も蒸気製造量が多くなることがわかる。ところが、排気ダクト#3(2c)を強制循環経路3に接続してしまうと、エアチャンバID1〜ID14の範囲から冷却空気を回収することになってしまい、廃熱回収ボイラ7で製造する蒸気量mは最大値よりも低下する。
【0048】
したがって、本願発明者らは、焼結鉱Pの生産量の変動に応じて、高温の冷却空気から(トラフ移動方向の上流側から)優先的に最適な流量だけ冷却空気を強制循環経路3へ吸引できる工夫が必要であることを知見した。
そこで、特許文献1を参照して、焼結鉱Pの生産量の変動に応じて、高温の冷却空気から優先的に最適な流量だけ冷却空気を強制循環経路3へ吸引することを考えてみる。
【0049】
特許文献1では、排気ダクト#1(2c)+排気ダクト#2(2c)煙突領域と排気ダクト#3(2c)煙突領域の境界に仕切壁を設けて、これを移動させることで実現させている。
しかし、仕切壁を設けなくても、
図5に示すように、強制循環経路3への吸入口(排気ダクト#1(2c)と排気ダクト#2(2c))を冷却空気の高温側に設置して必要な量を吸引するだけで、焼結鉱P層上の狭い流路(フード2b)の中では空気が均一混合できないために、高温側から優先的に吸引されるようになる。
【0050】
そして、必要な量を吸引する仕組みを設けた本発明の冷却装置1を
図5に示す。
図5に示すように、本発明の冷却装置1は、廃熱回収ボイラ7(廃熱回収ボイラ)下流側の強制循環経路3に分岐ダクト11を介して排気ブロワを配備し、熱交換後、中温度となった冷却空気を排気ブロワにて、外部に常時排気させているものである。
本発明の冷却装置1の構成における冷却装置1内部の空気流量と、冷却後の冷却空気温度の分布を
図6に示す。また、冷却後の冷却空気の回収範囲と、廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気量mとの関係を調べた結果を
図7に示す。
【0051】
廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気量mを最大にするならば、エアチャンバID1〜ID12の範囲から458kNm
3/hを強制循環経路3に吸引すべきだが、冷却空気の風量の増加と共に、増加する圧力損失によるブロワ電力消費も考慮して、本実施形態では400kNm
3/hを強制循環経路3に吸引している。
このうち、排気ブロワにて162kNm
3/hを外部に排気し、残りの238kNm
3/hを循環ブロワ8が吸引している。また、循環ブロワ8では、大気からもほぼ同量の空気を吸引していて、漏風のための空気補充に充てている。なお、空気補充量は、
図1に示す従来の冷却装置1に配備されている補充ブロワ10にて送風される冷却空気の風量と同等である。
【0052】
この本発明の冷却装置1の構成により、廃熱回収ボイラ7で取り出される熱量、すなわち廃熱回収ボイラ7にて製造される蒸気発生量mは、43t/hから50t/hに増加させることができる(従来比:1.16倍)。しかも、本発明の冷却装置1においては、エアチャンバID12の冷却後の冷却空気温度は、172℃のままであることから、焼結鉱Pの冷却能力の低下も防いでいる。
【0053】
ところで、
図1示す従来の冷却装置1の構成のままで、循環ブロワ8の風量を238kNm
3/hから400kNm
3/hへ増加させれば、廃熱回収ボイラ7(熱交換器)の通過風量はどちらも同じ400kNm
3/hになることが考えられるが、
図1に示す従来の冷却装置1に配備された廃熱回収ボイラ7の通過風量400kNm
3/hと、
図5に示す本発明の冷却装置1に配備された廃熱回収ボイラ7の通過風量400kNm
3/hとでは
、製造される蒸気量mがまったく異なる。
【0054】
以下に、従来の冷却装置1で製造される蒸気量mと、本発明の冷却装置1で製造される蒸気量mの違いについて、説明する。
図1に示す従来の冷却装置1の構成で、循環風量を400kNm
3/hへ増加させたときの冷却装置1内部の空気流量と、冷却後の冷却空気温度の分布を
図8に示す。
図6を見てみると、本発明の冷却装置1では400kNm
3/hの風量を411℃で強制循環経路3に吸引できている。しかし、
図8を見てみると、従来の冷却装置1では400kNm
3/hの風量を吸引しても379℃にしかならない。
【0055】
その結果、従来の冷却装置1での蒸気発生量mは、41t/hにしかならない。冷却空気の温度が低い理由は、焼結鉱Pの小さい熱伝導率と冷却区間(すなわち、冷却時間)の長短に関係している。焼結鉱Pは熱伝導率が小さいために、焼結鉱P内部の熱が伝導によって表面に伝わるには時間を要することから、冷却のために冷却空気を送ると冷却空気と接触する焼結鉱Pの表面だけが先に冷却されてしまう。
【0056】
図6に示すように、本発明の冷却装置1では、エアチャンバID1〜ID11の区間まで長い時間をかけて焼結鉱Pの冷却を行っているので、焼結鉱P内部の熱も吸収できている(冷却空気が非常に高温となっている)。しかし、
図8示すように、従来の冷却装置1では、エアチャンバID1〜ID8の区間まで比較的短時間で同一風量を浴びせて冷却を行っているので、焼結鉱Pの表面だけが冷却されている。
【0057】
つまり、本発明の冷却装置1の方が、非常に高温となった冷却空気を効率よく回収することが可能である。
[第2実施形態]
次に、本発明の冷却装置1における第2実施形態について、図を参照して説明する。
図9に示すように、第2実施形態に係る冷却装置1の構成は、上記した本発明の冷却装置1(
図5参照)と略同じである。
【0058】
しかしながら、第2実施形態では、放出手段12として、強制循環経路3上に設けられた大気放散弁12bが採用されている点、つまり循環ブロワ8が放出手段12の役割も兼用している点が、上記した冷却装置1とは大きく異なっている。
すなわち、強制循環経路3外に排出する排気流量を制御する方法が異なっていて、第2実施形態の冷却装置1では、大気放散のダンパ(排気ブロワ)で排気流量を制御していて、
図5に示す上記した冷却装置1では、排気ブロア12aの回転数で排気流量を制御している。
【0059】
また、冷却空気の補充量を制御する方法も異なっていて、第2実施形態の冷却装置1では、補充ブロワ10の回転数で補充量を制御していて、
図5に示す上記した冷却装置1では、大気吸引ダンパで補充量を制御している。
次に、強制循環経路3外へ排出する空気流量(
図5の構成では排気ブロワの風量、
図9の構成では大気放散風量)の制御について、説明する。
【0060】
図10は、廃熱回収ボイラ7(熱交換器)の性能曲線を示す図である。
蒸気量mは、廃熱回収風量Qと、廃熱回収ボイラ7入側の空気温度T
iとの関数m(Q,T
i)である。
まず、
図10より、廃熱回収ボイラ7入側の空気温度T
iを一定にした場合(横軸に平行に移動)の廃熱回収風量Qの変化に対する蒸気量mの変化∂m/∂Qと、廃熱回収風量Qを一定にした場合(等風量線に沿って移動)の廃熱回収ボイラ7入側の空気温度T
iの変化に対する蒸気量mの変化∂m/∂T
iと、を求める。
【0061】
例えば、
図5に示す冷却装置1において、ある時に廃熱回収ボイラ7を通過する風量をQとし、その温度をT
iとし 、大気へ放散される冷却後空気の温度をT
eとする。この状態から排気ブロワの風量を微少量+dQだけ増加させたときに、新たに強制循環経路3へ吸引される空気の流量をdQとし、その温度をT
sとする。エネルギ保存より、式(8)が成立する。
【0063】
なお、強制循環経路3へ吸引される空気の温度T
sは、大気へ放散される冷却後空気の温度T
eに補正係数ξを乗算したものである。
式(8)をdT
iについて解くと、式(9)が得られる。
【0065】
そして、新たに強制循環経路3へ吸引される空気の流量+dQによる蒸気発生量の変化dmは、式(10)によって表される。
【0069】
の項が正であれば、さらに強制循環経路3へ吸引される空気の流量dQを増やすべきだと判断される。
図5に示す冷却装置1の場合においては、排気ブロア12aを増速する制御が行われ、
図9に示す冷却装置1の場合においては、排気ダンパ14を開放する制御が行われる。
なお、廃熱回収ボイラ7内を通過する風量Qを計測するための流量計が、設置されていない場合には、廃熱回収ボイラ7でのエネルギ保存から式(11)が成立するので、式(10)中で風量Qの代わりに式(11)を使用する。
【0071】
通常、h
sとh
wはほとんど変化しない。したがって、蒸気量mと廃熱回収ボイラ7出側の空気温度T
oの計測値が、風量Qの計測の代替として使用される。
以上に述べたように、本発明の焼結鉱P及びペレットを冷却する冷却装置1、及びこの冷却装置1における排気制御方法によれば、冷却装置1における廃熱回収の能力を可及的に高くすることが可能となる。
【0072】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考
えられるべきである。
例えば、本発明の冷却装置1には、廃熱回収ボイラ7にて熱交換された蒸気を、製造ライン内に配備されたタービンに供給すると共に、その動力で電力などを発生させる廃熱回収装置を備えていてもよい。
【0073】
特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。