(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223260
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】肥料散布機
(51)【国際特許分類】
A01C 19/00 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
A01C19/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-73257(P2014-73257)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-192637(P2015-192637A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】
佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−142523(JP,A)
【文献】
実開昭60−133728(JP,U)
【文献】
特開2000−270639(JP,A)
【文献】
実開昭59−196011(JP,U)
【文献】
特開平11−089376(JP,A)
【文献】
実開昭59−049528(JP,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0096639(KR,A)
【文献】
中国特許出願公開第102771229(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被散布物を貯留するホッパと、ホッパから落下した被散布物を回転する散布板によって散布する散布部と、ホッパと散布部との間に設けられ、被散布物の落下量を調整する調整部を備え、調整部は、肥料落下口が設けられたホッパ底板と、ホッパ底板に重ねて設置されるとともに、開口調整孔が設けられたシャッタ板と、ホッパ底板又はシャッタ板を相対的に一定方向及び他方向に移動させ肥料落下口と開口調整孔の重合度合いにより肥料落下量を調整するシャッタ作動部とを有し、トラクタに装着して使用される肥料散布機において、トラクタから動力を入力する入力軸と前記散布部の散布板を回転駆動する出力軸を前記入力軸に対し直交して設けた駆動ケースは、前記散布板の下方に位置し、駆動ケース本体が入力軸回転軸芯を通る水平面で上下に分割されていて、上下に分割された前記駆動ケース本体は、それぞれ肉厚がほぼ一定の板金製で、分割面にはそれぞれフランジ部が形成され、該フランジ部は上下に分割された駆動ケース本体を圧着させるための締結部材用孔と駆動ケースを肥料散布機フレームに固定するための固定用孔とを設けていて、前記駆動ケース内には、前記入力軸と出力軸が直交して動力を伝達するためのベベルギヤが前記入力軸と出力軸にそれぞれ固着されて、それぞれ前記ベベルギヤが噛合して内装され、
前記入力軸は、前記ベベルギヤ側と前記駆動ケース本体から前方に突設された側の2カ所でベアリングに回転自在に保持され、それぞれの前記ベアリングに挟まれるように位置するとともに、上下に分割された前記駆動ケース本体に保持されたスペーサーが設けられて前記入力軸を保持していて、前記出力軸は、前記駆動ケース本体の下方側に設けたベアリングと上方側の駆動ケース本体から上方に突設された側に設けたベアリングの2カ所で保持されていて、前記出力軸の前記駆動ケース本体からの突設基部は、防塵カバーによって被覆されていることを特徴とした肥料散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成肥料、有機肥料等の被散布物を貯留するホッパを備え、このホッパから落下させた被散布物を水平回転する散布板によって拡散散布する肥料散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥料を貯留するホッパを備え、ホッパの底部に肥料落下口及び落下量調整部を設け、その下方に落下させた肥料を拡散散布させる散布部を有したトラクタ等の走行車に装着して使用される肥料散布機は従来より知られている。例えば、実開平6−70513号公報の「肥料散布機」や、特開2002−142523号公報の「肥料散布機」が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−70513号公報
【特許文献2】特開2002−142523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
肥料散布機は、肥料を貯留するホッパに肥料を投入してトラクタ等の走行車に装着し走行しながら肥料を散布する。このため、走行車には肥料散布機と投入された肥料の重量が作用した状態で作業が行われる。特にトラクタの場合後方に設けた装着部に装着されるため、重量が大きいと、トラクタ前方が軽くなり操舵輪が効かない状態となり走行に支障が出ることになる。投入される肥料の量を減らすと作業効率が悪くなる問題があり、肥料散布機の重量をできるだけ軽量に構成する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、シンプルな構造で軽量な肥料散布機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1の発明は、被散布物を貯留するホッパと、ホッパから落下した被散布物を回転する散布板によって散布する散布部と、ホッパと散布部との間に設けられ、被散布物の落下量を調整する調整部を備え、調整部は、肥料落下口が設けられたホッパ底板と、ホッパ底板に重ねて設置されるとともに、開口調整孔が設けられたシャッタ板と、ホッパ底板又はシャッタ板を相対的に一定方向及び他方向に移動させ肥料落下口と開口調整孔の重合度合いにより肥料落下量を調整するシャッタ作動部とを有し、トラクタに装着して使用される肥料散布機において、トラクタから動力を入力する入力軸と前記散布部の散布板を回転駆動する出力軸を
前記入力軸に対し直交して設けた駆動ケースは、
前記散布板の下方に位置し、駆動ケース本体が入力軸回転軸芯を通る水平面で上下に分割されていて、
上下に分割された前記駆動ケース本体は、それぞれ肉厚がほぼ一定の板金製で、分割面にはそれぞれフランジ部が形成され、該フランジ部は上下に分割された駆動ケース本体を圧着させるための締結部材用孔と駆動ケースを肥料散布機フレームに固定するための固定用孔とを設けてい
て、前記駆動ケース内には、前記入力軸と出力軸が直交して動力を伝達するためのベベルギヤが前記入力軸と出力軸にそれぞれ固着されて、それぞれ前記ベベルギヤが噛合して内装され、前記入力軸は、前記ベベルギヤ側と前記駆動ケース本体から前方に突設された側の2カ所でベアリングに回転自在に保持され、それぞれの前記ベアリングに挟まれるように位置するとともに、上下に分割された前記駆動ケース本体に保持されたスペーサーが設けられて前記入力軸を保持していて、前記出力軸は、前記駆動ケース本体の下方側に設けたベアリングと上方側の駆動ケース本体から上方に突設された側に設けたベアリングの2カ所で保持されていて、前記出力軸の前記駆動ケース本体からの突設基部は、防塵カバーによって被覆されていることを特徴とした肥料散布機による。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動ケースの駆動ケース本体が入力軸回転軸芯を通る水平面で上下に分割され、分割面にフランジ部を設け、駆動ケースを圧着させるための締結部材用孔とケースを肥料散布機フレームに固定するための固定用孔とを設けている構成や駆動ケースの駆動ケース本体を肉厚がほぼ一定の板金製で成型していることにより、シンプルで軽量な肥料散布機が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の肥料散布機の断面した右側面図である。
【
図3】本発明の駆動ケースの断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を、
図1乃至
図4に基づいて説明する。
図1は、本発明の肥料散布機の右側面図である。肥料散布機1は、上方中央部に被散布物を貯留するホッパ3を備え、ホッパ3の底部開口から落下させた肥料等の被散布物をその下方部に位置させた散布部4により飛散散布させる。ホッパ3底部開口と散布部4との間には調整部5が設けられ、散布部4に落下する被散布物の落下量を調節する構造となっている。これらはトラクタ(図示せず)に装着するための装着部を
図1の左側前方部に設けたフレーム2により保持されていて、ホッパ3は左右側方に設けたホッパ固定ハンドル30によって取付けられ、ホッパ固定ハンドル30を外すとホッパ3のみフレーム2から取り外しできる。装着部は、トラクタの後方に設けた装着用三点リンク(図示せず)に装着するため、トラクタロワリンク(図示せず)と連結する下方部左右に水平方向に突設するロワリンクピン20と中央部上方に設けたトラクタトップリンク(図示せず)と連結するための左右水平方向のトップリンクピン孔21を備えている。
【0011】
図2は、肥料散布機1の断面した右側面図である。ホッパ3は、下方が窄まった漏斗形状をなし、その上面は開口している。ホッパ3内には、被散布物としての肥料等が貯留される。ホッパ3の底部には、調整部5が設けられ、調整部5は複数の肥料落下口を設けたホッパ底板50と、ホッパ底板50下方面に当接するとともにホッパ3中心部を中心として水平周方向に摺動回動するシャッタ板51が設けられている。シャッタ板51は水平方向に摺動回動することでホッパ底板50の肥料落下口と重合して開口度合いを変化させ被散布物の落下量を調整する開口調整孔を有し、フレーム2前方部に設けられトラクタ運転席より操作できるシャッタ作動部52のシャッタレバー520の操作により調整可能に設けられている。シャッタ板51は、下方面中央部に当接させて設けたシャッタボス510により、ホッパ底板50とに挟持され回動自在に保持されている。
【0012】
シャッタ作動部52は、フレーム2に設けた進行方向と
直交する水平方向のレバー回動支点を中心に前後に回動するシャッタレバー520と、シャッタレバー520の下方回動端とシャッタ板51とを連結するシャッタロッド521と、シャッタレバー520の回動量に比例したシャッタ板51のシャッタ開度目盛を設けシャッタレバー520をガイドするシャッタ開度目盛板522を備える。
【0013】
シャッタレバー520は、側面視くの字状で中間屈折頂部近傍の回動支点孔がレバー回動支点に嵌合されて前後に回動し、上方端部に作業者が操作する握り部を備え、下方回動端部にシャッタロッド521が回動自在に連結されている。シャッタロッド521の他方端はシャッタ板51の外周部に設けた連結板に連結されている。シャッタレバー520の上端部が肥料散布機1の前方側に引き下げられると、シャッタロッド521が後方側に押され、シャッタ板51がホッパ3中心部と同一に設けた駆動ケース6の出力軸61回転中心を中心に回動する。これに伴い、シャッタ板51の開口調整孔とホッパ底板50の肥料落下口が重合して開口し肥料が落下される。レバー回動支点より上方の上方握り部下方には、前記シャッタ開度目盛板522がフレーム2に固着されて設けてあり、作業者はシャッタ開度目盛板522に設けたシャッタ開度目盛の回動位置でシャッタ板51の回動位置及び開口量が確認できる。シャッタ作動部52は、この実施例では手動からなるが、手動によらず電動モータ等により作動させる構成としてもよい。電動作動の駆動によって動かす技術は既知のものであり、その説明を省略する。
【0014】
調整部5下方には、散布部4が設けられていて、調整部5から落下した肥料を水平回転する散布板40により拡散散布する。散布板40の上面には、回転軸芯に対し放射状に配置され垂設された散布羽根41が複数設けられていて、落下した肥料等が飛散され遠心力により遠方まで散布される。また、散布板40の前方側(
図2の左側)と上面側は散布部カバー42で覆われていて、後方側(
図2の右側)に扇状に散布が行われる。
【0015】
散布板40は、その下方に位置して設けられた駆動ケース6の出力軸61に散布板40に固着した散布板ボス400を介して取り付けられていて、駆動ケース6に走行車等から入力された動力で駆動される。駆動ケース6は、
図3に基いて説明すると、板金製のケースである駆動ケース本体66に、トラクタ等の走行車への装着部側の前方を向いて一端を突設して設けた入力軸60と、入力軸60と
直交して上方を向けて一端を突設した出力軸61が設けられている。入力軸60は、駆動ケース本体66内において、内端部にベベルギヤ63を平行キー603によって固着していて、直交する出力軸61に同じく平行キー603によって固着されたベベルギヤ63と噛合している。ベベルギヤ63と隣接して設けた入力軸ベアリング600とさらにスペーサー602を挟んで設けた入力軸ベアリング600によって回転自在に保持されている。駆動ケース本体66外側部はオイルシール601が設けられ密封されている。一方、出力軸61は、下方端部を駆動ケース本体66内の出力軸ベアリング610と、同じく上方部の前記ベベルギヤ63と隣接して設けた出力軸ベアリング610とで回転自在に保持されている。出力軸61の駆動ケース本体66からの突設基部は防塵カバー64によって被覆されている。
【0016】
出力軸61の突出部には、前記散布板40の散布板ボス400が取付けられ、さらに、散布板40を貫通した上方の端部にはホッパ3内に設けたアジテータ31が連結される。アジテータ31は、ホッパ3内の肥料等がホッパ底板50の肥料落下口から流下しやすいようにホッパ底板50に接近して回転して肥料を撹拌移動させる。
【0017】
駆動ケース本体66は、全体が板金製で成型されていて、入力軸60の回転軸芯を通る水平面で上下に分割されている。分割面にはそれぞれフランジ部62が形成され、該フランジ部62は上下に分割された駆動ケース本体66を圧着させるための締結部材用孔620と駆動ケース本体66を肥料散布機1のフレーム2に固定するための固定用孔621とを設けている。フレーム2の駆動ケース6の取付面は水平面を有した板金製で、駆動ケース本体66のフランジ部62から下方側へ突設した部分が干渉しないように切り欠かれた状態となっていて、下方側の駆動ケース本体66のフランジ部62の下方を向いた面が当接され、固定用孔621とフレーム2側の孔とにボルトを挿通してナットで締め付けて固定される。
【0018】
フレーム2の装着部によってトラクタに肥料散布機1を装着し、駆動ケース6の前方に突設した入力軸60にユニバーサルジョイント(図示せず)を連結し、これの他端をトラクタ(図示せず)に設けられたPTO軸(図示せず)に連結することによりトラクタ等の走行機からの動力が入力可能となる。入力軸60に入力されたトラクタからの回転動力は、入力軸60に固着されたベベルギヤ63を介して、直交して設けた出力軸61に伝達され、出力軸61に取付けられた散布板40を回転駆動する。駆動ケース6全体は、入力軸60前方部が解放された駆動ケースカバー65によって覆われて回転部を保護している。
【0019】
本例の肥料散布機1で肥料を散布する場合は、トラクタの後方に設けた装着用三点リンク(図示せず)に装着部を連結して装着する。装着は、トラクタロワリンク(図示せず)と下方部左右に水平方向に突設するロワリンクピン20と連結する。また、トラクタトップリンク(図示せず)と中央部上方に設けた左右水平方向のトップリンクピン孔21にピンを挿入して連結する。トラクタの装着用三点リンクはトラクタに乗車した作業者がトラクタのレバーを操作して肥料散布機1を上下に昇降できる。肥料散布機1を装着後、トラクタPTO軸と肥料散布機1の駆動ケース6の入力軸60とをユニバーサルジョイント(図示せず)等の動力伝達軸により連結して動力の取り出しを可能にする。
【0020】
シャッタ作動部52のシャッタレバー520を操作して、ホッパ底板50の肥料落下口を閉じた後、ホッパ3の上方の解放部より肥料を投入する。
【0021】
肥料の散布圃場にて、トラクタのPTO軸を回転させ散布部4を駆動する。トラクタの走行速度を決め、その速度時に所定の散布量が散布部4に落下するように、シャッタ開度目盛板522に合わせてシャッタ作動部52のシャッタレバー520を前方に回動させ、ホッパ底板50の肥料落下口を所定量開放する。解放と同時にトラクタを走行させ散布作業を行う。
【0022】
駆動ケース6のフレーム2への取付け部が駆動ケース本体66の上下分割部の締結フランジを兼用している構造であり、駆動ケース本体66が肉厚がほぼ一定の板金製で構成されているため、肥料散布機1がシンプルで軽量な構成となる。軽量となったことで、ホッパ3内に従来より多くの肥料を投入可能となり、効率よい作業が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、トラクタ等の走行車に装着されて使用される肥料散布機に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 肥料散布機
2 フレーム
20 ロワリンクピン
21 トップリンクピン孔
3 ホッパ
30 ホッパ固定ハンドル
31 アジテータ
4 散布部
40 散布板
400 散布板ボス
41 散布羽根
42 散布部カバー
5 調整部
50 ホッパ底板
51 シャッタ板
510 シャッタボス
52 シャッタ作動部
520 シャッタレバー
521 シャッタロッド
522 シャッタ開度目盛板
6 駆動ケース
60 入力軸
600 入力軸ベアリング
601 オイルシール
602 スペーサー
603 平行キー
61 出力軸
610 出力軸ベアリング
62 フランジ部
620 締結部材用孔
621 固定用孔
63 ベベルギヤ
64 防塵カバー
65 駆動ケースカバー
66 駆動ケース本体