(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような合わせガラスでは、厚みを小さくすることにより遮音性能の低下をある程度防止することはできるが、車外側のガラスの厚みも小さくなることから、車外側の外力によるガラス割れが発生しやすくなるという問題がある。これを解決すべく、車外側のガラスの厚みは従来と同等にしつつ車内側のガラス板のみを薄くして、全体として面密度を低下させる方法が考えられる。この点について、本発明者は、以下のように検討した。
【0005】
まず、本発明者らは、車内側と車外側のガラスの厚みを異なる構成とすると、
図15に示すように、同厚の場合に比して、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数域の遮音性能が低下することを見出した。同図は、周波数と音響透過損失(STL)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。このグラフには、厚みが1.5mmの2枚のガラス板で構成された合わせガラス(以下、第1合わせガラスという)と、厚みが2.0mmと1.0mmの異なるガラス板で構成された合わせガラス(以下、第2合わせガラスという)が表示されている。いずれの合わせガラスも、2つのガラス板の間に樹脂製の中間膜が配置されている。このグラフによれば、3000〜5000Hzの周波数域において、第2合わせガラスの音響透過損失が、第1合わせガラスに比べて低下していることが分かる。すなわち、厚みの異なるガラス板を用いることで、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数域の遮音性能が低下することが分かった。
【0006】
このように、厚みの異なるガラスを組み合わせると、軽量化は図れるものの、音響透過損失が低下するという問題が発生する。特に、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数域における遮音性能が低下し、車内環境が悪化するという問題が発生する。このような問題は、自動車のガラスのみならず、軽量化と遮音性が要求される合わせガラス全般に起こり得る問題である。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、軽量化と遮音性を両立する、ガラス板で構成された合せガラス、及びこれが取り付けられた取付構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る合わせガラスは、外側ガラス板と、前記外側ガラス板と対向配置される内側ガラス板と、前記外側ガラス板及び内側ガラス板の間に挟持された中間膜と、を備え、前記内側ガラス板の厚みが0.6〜1.8mmであり、前記中間膜は、少なくともコア層を含む複数の層で構成されており、前記内側ガラス板の上辺の中心と下辺の中心とを結ぶ直線を設定したとき、当該直線と当該内側ガラス板との最大距離が30mmより大きくなるように、湾曲しており、前記コア層のヤング率は、100Hz,20℃において、1〜20MPaであり、他の前記層のヤング率よりも低い。
【0009】
また、本発明に係る合わせガラスは、外側ガラス板と、前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板よりも厚みが小さい内側ガラス板と、前記外側ガラス板及び内側ガラス板の間に挟持された中間膜と、を備え、前記内側ガラス板の厚みが0.6〜1.8mmであり、前記中間膜は、少なくともコア層を含む複数の層で構成されており、前記コア層のヤング率は、100Hz,20℃において、1〜20MPaであり、他の前記層のヤング率よりも低い。
【0010】
上述した合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、0.8〜1.6mmとすることができる。
【0011】
上述した合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、1.0〜1.4mmとすることができる。
【0012】
上述した合わせガラスにおいては、前記内側ガラス板の厚みを、0.8〜1.3mmとすることができる。
【0013】
上述した合わせガラスにおいては、前記コア層の厚みを0.1〜2.0mmとすることができる。
【0014】
上述した合わせガラスにおいては、前記外側ガラス板の厚みを、1.8〜5.0mmとすることができる。
【0015】
上述した合わせガラスにおいては、前記コア層のヤング率を、周波数100Hz,温度20℃において、1〜16MPaとすることができる。
【0016】
上述した合わせガラスにおいては、前記中間膜のtanδを、周波数100Hz,温度20℃において、0.5〜3.0とすることができる。
【0017】
また、本発明に係る合わせガラスの取付構造体は、上述したいずれかの合わせガラスと、前記合わせガラスを、垂直からの取付け角度が45度以下に取り付ける取付部と、を備えている。このような取付構造体は、例えば、自動車、建築物などであり、取付部とは合わせガラスを取り付けるフレームなどである。また、取付部に対し、合わせガラスは公知の方法で取り付けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量化と遮音性を両立する、異なる厚みのガラスで構成された合せガラス、及びこれが取付けられた取付構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る合わせガラスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る合わせガラスの断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る合わせガラスは、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及びこれらのガラスの間に挟持される中間膜3で構成されている。外側ガラス1とは、外乱を受けやすい側に配置されるガラス板であり、内側ガラス2は、その反対側に配置されるガラス板である。したがって、例えば、この合わせガラスを自動車の窓ガラスとして用いる場合には、車外側のガラス板が外側ガラス板になり、建築材として用いる場合には、屋外を向く側が外側ガラス板になる。但し、受け得る外乱によっては、これとは反対の配置になることもある。以下、各部材について説明する。
【0022】
<1.外側ガラス板及び内側ガラス板>
外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、この合わせガラスを自動車の窓ガラスに用いる場合には、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
【0023】
(クリアガラス)
SiO
2:70〜73質量%
Al
2O
3:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
R
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3):0.08〜0.14質量%
【0024】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄(T−Fe
2O
3)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO
2の比率を0〜2質量%とし、TiO
2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO
2やAl
2O
3)をT−Fe
2O
3、CeO
2およびTiO
2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0025】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.8mm以上、1.9mm以上、2.0mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上の順で好ましい。一方、外側ガラスの厚みの上限は、5.0mm以下、4.0mm以下、3.1mm以下、2.5mm以下、2.4mm以下の順で好ましい。この中で、2.1mmより大きく2.5mm以下、特に、2.2mm以上2.4mm以下が好ましい。
【0026】
一方、内側ガラス板2は、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくする必要がある。具体的には、後述するように、人間が聞き取りやすい音の周波数領域である2000〜5000Hzで影響を受けやすい、1.2mm±0.6mmの範囲であることが好ましい。具体的には内側ガラス板2の厚みは、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、1.3mm以上の順で好ましい。一方、内側ガラス板2の厚みの上限は、1.8mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.1mm未満の順で好ましい。この中で、例えば、0.6mm以上1.1mm未満が好ましい。
【0027】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、平面形状及び湾曲形状のいずれであってもよい。しかしながら、STLは湾曲形状の方が低下するため、湾曲形状ガラスは特に音響対策が必要である。湾曲形状の方が平面形状よりSTL値が低下するのは湾曲形状の方が共振モードによる影響が大きいためと考えられる。
【0028】
さらに、ガラスが湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、例えば、
図2に示すように、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量と定義する。
【0029】
図3は、湾曲形状のガラス板と、平面形状のガラス板の、一般的な周波数とSTLの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図3によれば、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量が30〜38mmの範囲では、STLに大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数域でSTLが低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量は小さい方がよいが、例えば、ダブリ量が30mmを超える場合には、後述するように、中間膜のコア層のヤング率を20MPa(周波数100Hz,温度20℃)以下とすることが好ましい。
【0030】
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、
図4に示すように、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線S上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM−112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。なお、ガラス板が平坦な場合でも、湾曲している場合と同様に測定することができる。
【0031】
<2.中間膜>
中間膜3は、複数の層で形成されており、一例として、
図1に示すように、軟質のコア層31を、これよりも硬質のアウター層32で挟持した3層で構成することができる。但し、この構成に限定されるものではなく、軟質のコア層31を有する複数層で形成されていればよい。例えば、コア層31を含む2層(コア層が1層と、アウター層が1層)、またはコア層31を中心に配置した5層以上の奇数の層(コア層が1層と、アウター層が4層)、あるいはコア層31を内側に含む偶数の層(コア層が1層と、他の層がアウター層)で形成することもできる。
【0032】
コア層31はアウター層32よりも軟質であるが、この点については、ヤング率を基準として材料を選択することができる。具体的には、周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaであることが好ましく、1〜16MPaであることがさらに好ましい。更には、1〜10MPaであることが好ましい。測定方法としては、例えば、Metravib社製固体粘弾性測定装置DMA 50を用い、ひずみ量0.05%にて周波数分散測定を行うことができる。以下、本明細書においては、特に断りのない限り、ヤング率は上記方法での測定値とする。但し、周波数が200Hz以下の場合の測定は実測値を用いるが、200Hzより大きい場合には実測値に基づく算出値を用いる。この算出値とは、実測値からWLF法を用いることで算出されるマスターカーブに基づくものである。
【0033】
一方、アウター層32のヤング率は、特には限定されず、コア層より大きければよい。例えば、周波数100Hz,温度20度において560MPa以上、650MPa以上、1300MPa以上、1764MPa以上の順で好ましい。一方、アウター層32のヤング率の上限は特には限定されないが、例えば、加工性の観点から設定することができる。例えば、1750MPa以上となると、加工性、特に切断が困難になることが経験的に知られている。また、コア層31を挟む一対のアウター層32を設ける場合、外側ガラス板1側のアウター層32のヤング率を、内側ガラス板2側のアウター層32のヤング率よりも大きくすることが好ましい。これにより、車外や屋外からの外力に対する耐破損性能が向上する。
【0034】
中間膜3のコア層31のtanδは、周波数100Hz,温度20度において、0.5〜3.0であることが好ましく、0.7〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。tanδが上記範囲にあると、音を吸収しやすくなり、遮音性能が向上する。しかし、3.0よりも大きくなると、中間膜3が柔らかくなりすぎ、取り扱いが困難になるため、好ましくない。また、0.5より小さくなると耐衝撃性能が低下して好ましくない。
【0035】
一方、アウター層のtanδは、コア層31よりも小さい値であればよく、例えば、周波数100Hz,温度20度において、0.1から3.0の間で定めることができる。
【0036】
また、各層31,32を構成する材料は、特には限定されないが、少なくともヤング率が上記のような範囲とすることができる材料であることが必要である。例えば、アウター層32は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)によって構成することができる。ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性や耐貫通性に優れるので好ましい。一方、コア層31は、エチレンビニルアセテート樹脂(EVA)、またはアウター層を構成するポリビニルブチラール樹脂よりも軟質なポリビニルアセタール樹脂によって構成することができる。軟質なコア層を間に挟むことにより、単層の樹脂中間膜と同等の接着性や耐貫通性を保持しながら、遮音性能を大きく向上させることができる。
【0037】
一般に、ポリビニルアセタール樹脂の硬度は、(a)出発物質であるポリビニルアルコールの重合度、(b)アセタール化度、(c)可塑剤の種類、(d)可塑剤の添加割合などにより制御することができる。したがって、それらの条件から選ばれる少なくとも1つを適切に調整することにより、同じポリビニルブチラール樹脂であっても、アウター層に用いる硬質なポリビニルブチラール樹脂と、コア層に用いる軟質なポリビニルブチラール樹脂との作り分けが可能である。さらに、アセタール化に用いるアルデヒドの種類、複数種類のアルデヒドによる共アセタール化か単種のアルデヒドによる純アセタール化かによっても、ポリビニルアセタール樹脂の硬度を制御することができる。一概には言えないが、炭素数の多いアルデヒドを用いて得られるポリビニルアセタール樹脂ほど、軟質となる傾向がある。したがって、例えば、アウター層がポリビニルブチラール樹脂で構成されている場合、コア層には、炭素数が5以上のアルデヒド(例えばn−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−へプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド)、をポリビニルアルコールでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。なお、所定のヤング率が得られる場合は、上記樹脂等に限定されることはい。
【0038】
また、中間膜3の総厚は、特に規定されないが、0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜4.0mmであることがさらに好ましく、0.6〜2.0mmであることが特に好ましい。一方、コア層31の厚みは、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがさらに好ましい。0.1mmよりも小さくなると、軟質なコア層31の影響が及びにくくなり、また、2.0mmや0.6mmより大きくなると総厚があがりコストアップとなるからである。一方、アウター層32の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.0mmであることがさらに好ましい。その他、中間膜3の総厚を一定とし、この中でコア層31の厚みを調整することもできる。
【0039】
コア層31の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH−5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、コア層31の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値をコア層31の厚みとする。例えば、
図5に示すような合わせガラスの拡大写真を撮影し、このなかでコア層を特定して厚みを測定する。
【0040】
なお、中間膜3の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間膜3の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間膜3が楔形の場合、外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、平行に配置されないが、このような配置も本発明における外側ガラス板と内側ガラス板との「対向配置」に含まれるものとする。すなわち、本発明の「対向配置」は、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなる中間膜3を使用した時の外側ガラス板1と内側ガラス板2の配置を含む。
【0041】
中間膜3の製造方法は特には限定されないが、例えば、上述したポリビニルアセタール樹脂等の樹脂成分、可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、均一に混練りした後、各層を一括で押出し成型する方法、この方法により作成した2つ以上の樹脂膜をプレス法、ラミネート法等により積層する方法が挙げられる。プレス法、ラミネート法等により積層する方法に用いる積層前の樹脂膜は単層構造でも多層構造でもよい。
【0042】
<3.合わせガラスの製造方法>
本実施形態に係る合わせガラスの製造方法は、特に限定されず、従来より公知の合わせガラスの製造方法を採用することができる。例えば、まず、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70〜110℃で予備接着する。予備接着は、これ以外の方法を用いることもできる。例えば、中間膜3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟み、オーブンにより45〜65℃で加熱する。続いて、この合わせガラスを0.45〜0.55MPaでロールにより押圧する。次に、この合わせガラスを、再度オーブンにより80〜105℃で加熱した後、0.45〜0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0043】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた合わせガラスを、オートクレーブにより、8〜15気圧で、100〜150℃によって、本接着を行う。具体的には、14気圧で145℃の条件で本接着を行うことができる。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。
【0044】
<6.合わせガラスの取付構造>
上述した合わせガラスは、例えば、自動車、建築物などの取付構造体に取付けることができる。このとき、合わせガラスは、取付部を介して取付構造物に取付けられる。取付部とは、例えば、自動車に取付けるためのウレタン枠などのフレーム、接着材、クランプなどが該当する。自動車への取付の一例を挙げると、
図6(a)に示すように、まず、合わせガラス10の両端にピン50を取付けておき、取付対象となる自動車のフレーム70に接着材60を塗布する。フレームには、ピンが挿入される貫通孔80が形成されている。そして、
図6(b)に示すように、合わせガラス10をフレーム70に取付ける。まず、ピン50を貫通孔80に挿入し、合わせガラス10をフレーム70に対して仮止めする。このとき、ピン50には段差が形成されているため、ピン50は貫通孔80の途中までしか挿入されず、これにより、フレーム70と合わせガラス10との間に隙間が生じる。そして、この隙間には上述した接着材60が塗布されているため、時間の経過とともに接着材60を介して合わせガラス10とフレーム70が固定される。
【0045】
このような合わせガラスの取付構造体への取付において、合わせガラス10の取付角度はθは、
図6(c)に示すように、垂直Nから45度以下にすることが好ましい。
【0046】
<6.特徴>
本実施形態によれば、中間膜3の一部を構成するコア層31のヤング率を周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaという小さい値にすることで、次の効果を得ることができる。まず、中間膜のヤング率が大きいと、合わせガラスであっても、単板として性質が強くなる。また、以下の数式に示すように、ガラスは一般的に厚みやヤング率が小さくなるほどコインシデンス周波数は高周波側にシフトする。
【数1】
【0047】
これらを考慮すると、例えば、中間膜3のヤング率が大きいと、合計の厚みが4mmの合わせガラスであっても、4mmの厚みを有する単板と同様に、コインシデンス周波数が3〜4kHzとなり、人が聞きやすい周波数帯で性能が低下する。一方、ヤング率が小さくなれば、合わせガラスの性能は2枚のガラス板の合算になる。例えば、2mmのガラス板と1mmのガラス板からなる合わせガラスであれば、その性能は、2枚のガラス板の性能の合算となる傾向がある。すなわち、
図7に示す各ガラス板の厚みは4mmよりも小さいため、コインシデンス周波数は高周波側にシフトし、2mmのガラス板は5000Hzあたりにコインシデンス周波数が存在するとともに、1mmのガラス板は8000Hzにコインシデンス周波数が存在する。そして、これら1mmと2mmの厚さのガラス板の合わせガラスの性能はその合算であるため、コインシデンス周波数は、5000〜8000Hzの間に存在することになる。なお、
図7は、合わせガラスではない単板の、周波数とSTLとの関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【0048】
そこで、本実施形態においては、中間膜3の一部を構成するコア層31のヤング率を周波数100Hz,温度20度において、1〜20MPaとしているため、合わせガラスの性能を外側ガラス板1と内側ガラス板2との合算となるようにしている。これにより、内側ガラス板2の厚みを0.4〜2.0mmのように小さくしても、人間が聞き取りやすい周波数においては遮音性能は低下しない。すなわち、内側ガラス板2の厚みを小さくすることでコインシデンス周波数が高周波側にシフトする。そのため、上述したように、内側ガラス板2の薄厚化に起因して2000〜5000Hzの周波数領域において低下した音響透過損失を上昇させることが可能となる。その結果、合わせガラスの軽量化とともに、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を向上することができる。
【0049】
また、本発明者は、中間膜3のアウター層32のヤング率を向上すると、約4000Hz以上の周波数域での遮音性能が向上することを見出した。例えば、一般的に用いられるヤング率が441MPa(20℃、100Hz)のアウター層に対し、ヤング率が560MPa(20℃、100Hz)のアウター層32を用いると、周波数6300Hzにおいて、STLが0.3dB向上することを見出した。一般的に、人間は0.3dB以上の音の変化を認識できるとされているため、ヤング率を高めることで、高周波数域において、人間が認識できるほどの遮音効果を得ることができる。また、アウター層32のヤング率は高くなるほど、遮音性能が高くなることが見出されており、例えば、ヤング率を880MPa(20℃、100Hz)以上とすると、周波数6300Hzにおいて、1.0dB以上STLが向上し、1300MPa(20℃、100Hz)以上とすると、さらにSTLが向上することが見出されている。
【0050】
一方、1000〜3500Hzの低周波数域では、アウター層のヤング率を向上すると、STLが低下することが分かっている。しかしながら、その低下は小さいことも見出されている。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0052】
<1.外側ガラス板の厚みの評価>
まず、外側ガラス板の厚みの評価を行った。ここでは、以下に示す7つの合わせガラスを準備した。各合わせガラスは、外側ガラス板、内側ガラス板、及びこれらに挟持される中間膜で構成されている。中間膜は、コア層、アウター層の厚みがそれぞれ0.1mm、0.33mm、ヤング率がそれぞれ10MPa、441MPa(20℃、100Hz)とした。
【表1】
【0053】
上記各合わせガラスを垂直から60度の角度をなすように配置し、平均粒径が約5〜20mmの花崗岩を時速64kmで各合わせガラスに衝突させた。各合わせガラスには、それぞれ30個の花崗岩を衝突させ、亀裂の発生率を算出した。結果は、
図8の通りである。同図に示すように、外側ガラス板の厚さが2.0mmである合わせガラス1〜4は、内側ガラス板の厚さに関わらず、亀裂の発生率が5%以下であった。一方、外側ガラス板の厚みが1.8mm以下である合わせガラス5,6は、内側ガラスの厚さにかかわらず、亀裂の発生率が8%となった。したがって、飛来物に対する耐衝撃性の観点から、外側ガラス板の厚さは、上記のように、1.8mm以上であることが好ましい。更に好ましくは2.0mm以上である。
【0054】
<2.コア層のヤング率に関する評価>
以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。
【表2】
【0055】
各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成した。また、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。両アウター層のヤング率は441MPa(20℃、100Hz)に調整した。
【0056】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失をシミュレーションにより、評価した。シミュレーション条件は、以下の通りである。
【0057】
まず、シミュレーションは、音響解析ソフト(ACTRAN、Free Field technology社製)を用いて行った。このソフトでは、有限要素法を用いて次の波動方程式を解くことにより、合わせガラスの音響透過損失(透過音圧レベル/入射音圧レベル)を算出することができる。
【数2】
【0058】
次に、算出条件について説明する。
(1) モデルの設定
本シミュレーションで用いた合わせガラスのモデルを
図9に示す。このモデルでは、音の発生源側から外側ガラス板、中間膜、内側ガラス板、ウレタン枠の順で積層した合わせガラスを規定している。ここで、ウレタン枠をモデルに追加しているのは、ウレタン枠の有無により音響透過損失の算出結果に少なからず影響があると考えられる点、及び、合わせガラスと車両のウインドシールドの間にはウレタン枠が用いられて接着していることが一般的である点を考慮したためである。
(2) 入力条件1(寸法等)
【表3】
【0059】
なお、ガラス板の寸法である800×500mmは、実際の車両で用いられるサイズよりも小さい。ガラスサイズが大きくなるとSTL値は悪くなる傾向にあるが、これは、サイズが大きいほど拘束箇所が大きくなり、それにともない共振モードが大きくなるからである。但し、ガラスサイズが異なっても、周波数毎の相対的値の傾向、つまり、異なる厚みのガラス板からなる合わせガラスが同厚のガラス板からなる合わせガラスに比して所定の周波数帯で悪くなる傾向は同じである。
【0060】
また、上記表3のランダム拡散音波とは、所定の周波数の音波が外側ガラス板に対してあらゆる方向の入射角をもって伝番していく音波であり、音響透過損失を測定する残響室での音源を想定したものとなっている。
(3) 入力条件2(物性値)
【表4】
[コア層及び両アウター層のヤング率及び損失係数について]
主な周波数毎に異なった値を用いた。これは、コア層及び両アウター層は粘弾性体のため、粘性効果によりヤング率は周波数依存性が強いためである。なお、温度依存性も大きいが、今回は温度一定(20℃)を想定した物性値を用いた。
【表5】
なお、以上のシミュレーション方法は、以下の3,4,5項においても同じである。
【0061】
結果は、
図10のグラフに示すとおりである。この結果によれば、実施例1〜4のように、コア層のヤング率を20MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、異厚によるSTL値を抑えることができる。また、実施例2〜4のように、コア層のヤング率を16MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、両ガラスが同厚である比較例1と比べ、2000〜5000Hzの周波数領域で音響透過損失が高くなっている。更に、実施例3,4のように、コア層のヤング率を10MPa(20℃、100Hz)以下とすることで、両ガラスが同厚である比較例1と比べ、2000〜5000Hzの周波数領域で音響透過損失が明らかに高くなっている。したがって、内側ガラス板を外側ガラス板よりも薄くし、且つコア層のヤング率を20MPa以下とすることで、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能が高くなることが分かった。
【0062】
<3.コア層の厚みに関する評価>
以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。ここでは、コア層の厚みを変化させ、音響透過損失を上記シミュレーション方法により算出した。中間膜は3層で構成し、総厚を変化させず、コア層とアウター層の厚みを変化させた。コア層のヤング率は10MPa(20℃、100Hz),アウター層のヤング率は441Mpa(20℃、100Hz)とした。また、外側ガラス板及び内側ガラス板の厚みはそれぞれ2.0mm、1.0mmとした。
【表6】
【0063】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失をシミュレーションにより評価した。結果は、
図11に示すとおりである。同図によれば、コア層の厚みが0.1mmより小さくなると、2000〜5000Hzの周波数領域で、音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を高くするためには、コア層の厚みを0.1mm以上とすることが好ましい。
【0064】
<4.合わせガラスの取付角度に関する評価>
続いて、音の入射角を変化させたシミュレーションにより、合わせガラスの取付角度について評価を行った。ここでは、垂直からの角度を0〜75度に変化させて音響透過損失を算出した。各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成した。また、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。コア層のヤング率は10MPa(20℃、100Hz),両アウター層のヤング率は441MPa(20℃、100Hz)とした。また、ガラス板の厚みは、2.0mm、1.0mmとした。
【表7】
【0065】
上記実施例及び比較例について、音響透過損失を上記シミュレーション方法により、評価した。但し、入力条件として合わせガラスの取付角度を追加してシミュレーションを行った。結果は、
図12に示すとおりである。同図によれば、取付角度が60度を超えると、3000Hz付近の周波数で、音響透過損失が急激に低下していることが分かる。したがって、人間に聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域での遮音性能を高くするためには、合わせガラスの垂直からの取付角度を45度以下とすることが好ましいことが分かった。また、60度以下であれば、遮音性能を高めることができ、場合によっては、75度以下とすることで、遮音性能を高めることができる。
【0066】
<5.アウター層のヤング率に関する評価>
アウター層のヤング率に関する評価を行うため、以下の通り、実施例及び比較例に係る合わせガラスを準備した。ここでは、外側ガラス及び内側ガラスの厚みを一定にした上で、中間膜のアウター層及びコア層のヤング率を変化させ、音響透過損失を上記シミュレーション方法により算出した。各ガラス板は、上述したクリアガラスで形成し、中間膜はコア層とこれを挟持する一対のアウター層で構成した。中間膜の厚みは0.76mm、コア層の厚みは0.1mm、両アウター層の厚みは0.33mmとした。
【表8】
【0067】
結果は、以下の通りである。まず、
図13に実施例13及び14の結果を示した。上述したコア層のヤング率の評価では、ヤング率を20MPa以下にすると、人間が聞き取りやすい2000〜5000Hzの周波数領域で音響透過損失が高くなっていることが分かった。これに対して、実施例13及び14では、コア層のヤング率を一定にした上で、アウター層のヤング率を変化させた。その結果、
図13に示すように、アウター層のヤング率が高い実施例14では、5000Hz以上の高い周波数領域で、音響透過損失が高くなることが分かった。
【0068】
また、実施例15〜18では、コア層のヤング率をさらに下げるとともに、アウター層のヤング率を大きくしている。
図14に示すように、これらの例では、実施例13及び14に比べ、2000〜5000Hzの周波数領域での音響透過損失が高くなっているものの、実施例13及び実施例14ほど5000Hz以上の高い周波数領域での音響透過損失は高くなっていない。特に、アウター層のヤング率が1764MPaを超えると、5000Hz以上の高い周波数領域での音響透過損失はほとんど高くならない。