特許第6223342号(P6223342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223342ガスタービンを検査するための内視鏡検査システムおよび対応する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223342
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ガスタービンを検査するための内視鏡検査システムおよび対応する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/24 20060101AFI20171023BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G02B23/24 C
   G02B23/26 D
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-532278(P2014-532278)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-528794(P2014-528794A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】EP2012004089
(87)【国際公開番号】WO2013045108
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】102011114541.2
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503371373
【氏名又は名称】ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、ウォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ティエス、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ホーリック、カーステン
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−113749(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0199832(US,A1)
【文献】 特開2007−163723(JP,A)
【文献】 特開2008−225012(JP,A)
【文献】 特開平10−248806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/24
G02B 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡(12)とデータ処理装置(16)とを備え、前記内視鏡(12)が画像記録装置(13)を備え、前記内視鏡(12)がガスタービン(11)内からの画像記録(20,21,22)を前記画像記録装置(13)から前記データ処理装置(16)へと送信するように構成される、ガスタービン(11)を検査するための内視鏡検査システム(10)において、
内視鏡が前記ガスタービン(11)内へ挿入されて前記画像記録装置(13)を備える所定の態様において、前記内視鏡(12)を前記ガスタービン(11)内で位置決めして方向付けるように当該内視鏡検査システム(10)が構成され、
前記内視鏡(12)を前記ガスタービン(11)内において所定の態様で位置決めするおよび/または方向付けるための電子的に制御された位置決め機器(14)を備え、
前記画像記録装置(13)は、前記ガスタービン(11)の少なくとも1つのシャフト(17)の回転動作と同期して画像を捕捉するように構成され、
前記画像記録(20,21,22)を処理することにより、前記ガスタービン(11)内における前記内視鏡(12)の位置および/または方向を自動的に特定するように構成され、
前記位置決め機器(14)は、特定された前記内視鏡(14)の位置および/または方向に関するデータに基づいて前記内視鏡(12)の位置および方向を調整するように構成され、
前記データ処理装置(13)は、更に、画像処理によってブレードロック(19)を検出し、当該ブレードロック(19)を基準として前記シャフト(17)の絶対回転位置を検出するとともに、前記画像記録(20,21,22)に対応する被検査部品を特定するように構成されていることを特徴とする内視鏡検査システム(10)。
【請求項2】
前記内視鏡検査システム(10)と前記ガスタービン(11)との間に位置規定手段が設けられることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項3】
前記内視鏡検査システム(10)が画像を自動的に捕捉するように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項4】
前記データ処理装置(16)は、前記画像記録装置(13)からの前記画像記録(20,21,22)を検査されている前記ガスタービン(11)の部品または領域へ割り当てるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項5】
前記内視鏡検査システム(10)は、前記画像記録(20,21,22)を自動的に記憶する、またはアーカイブするように構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項6】
前記画像記録装置(13)は、前記ガスタービン(11)の少なくとも1つのシャフトの回転位置にしたがって前記画像記録(20,21,22)を実行するように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項7】
前記内視鏡検査システム(10)は、前記ガスタービン(11)の少なくとも1つのシャフトを回転させるための回転機器(14)を制御するように構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項8】
前記データ処理装置(16)は、前記画像記録(20,21,22)と基準画像記録および/またはアーカイブされた画像記録とを比較するように構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項9】
前記データ処理装置(16)は、所望状態からの逸脱および/または検査されている前記ガスタービン(11)の部品または領域の損傷を自動的に特定するように構成されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項10】
前記データ処理装置(16)は、ガスタービン(11)内の部品または領域の損傷の進行を計測するおよび/または分類するおよび/または監視するように構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項11】
前記データ処理装置(16)は、検査されている前記ガスタービン(11)内の部品または領域の損傷の更なる進行を予測するために予測手続きを行なうように構成されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の内視鏡検査システム(10)を使用してガスタービン(11)を検査するための方法であって、前記内視鏡検査システム(10)の前記内視鏡(12)がガスタービン(11)内へ挿入され、前記内視鏡検査システム(10)の前記内視鏡(12)は、前記データ処理装置(16)によって前記ガスタービン(11)内において所定の態様で位置決めされて方向付けられ、前記ガスタービン(11)の部品または領域の画像記録(20,21,22)が前記画像記録装置(13)によって生成されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡とデータ処理装置とを備え、内視鏡が画像記録装置を備え、内視鏡がガスタービン内からの画像記録を画像記録装置からデ−タ処理装置へ送信するように構成される、ガスタービンを検査するための内視鏡検査システムに関する。また、本発明は、ガスタービンを検査するための内視鏡検査システムを動作させるための対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしばボアスコープシステムと称される内視鏡検査システムは、ガスタービンをメンテナンス中および修理中に検査するために、また、ガスタービンの耐空性試験を行なうときに使用される。既知の内視鏡検査システムは、人のオペレータにより制御されるとともに、オペレータに関連する主観的要因に依存する。既知の内視鏡検査システムは、ガスタービンを検査して結果を文書化する際に長い試験期間を必要とする。以下、用語「内視鏡」は、用語「ボアスコープ」と同意語として使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明によって取り組まれる課題は、ガスタービンを検査する際に、試験の質を向上させつつ、検査結果の高い再現性と短い試験期間とを可能にする、内視鏡検査システムおよび対応する方法を提供するという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、独立請求項の特徴によってこの課題を解決する。
【0005】
本発明によれば、内視鏡検査システムは、内視鏡がガスタービン内へ挿入されて画像記録装置を備える所定の態様において内視鏡をガスタービン内で位置決めして方向付けるように構成される。
【0006】
本発明によれば、内視鏡検査システムによる所定の位置決めおよび方向付けは、それによってガスタービン内の特定の部品および/または領域の画像記録を標準化できるため、特に有益である。このようにすると、ガスタービンの異なる検査からの画像記録を直接に比較できる。
【0007】
好ましくは、内視鏡検査システムは、内視鏡をガスタービン内において所定の態様で位置決めするおよび/または方向付けるための電子的に制御された位置決め機器を備える。結果として、もはや内視鏡を手動で移動させる必要がない。位置決めおよび方向付けは、位置決めが特に効率的で迅速となり得るように、データ処理装置によって制御することができる。
【0008】
また、内視鏡検査システムは、好ましくは、ガスタービン内における内視鏡の位置および/または方向を自動的に決定するように構成される。位置決めおよび方向付けのチェックがもはやオペレータによって手動で行なわれる必要がなく、したがって、位置決めおよび方向付けのチェックは、一人または様々なオペレータに関連する主観的要因にもはや依存しない。結果として、内視鏡の位置決めおよび方向付けにおける人的要因をエラー源および不正確として排除できる。
【0009】
内視鏡の位置は、データ処理装置を使用して画像記録を画像処理することによって決定されるのが好ましい。エンジン内の部品または領域は、データ処理装置によって画像記録内で特定され、そこから、これらの部品または領域に対する内視鏡の位置および方向が決定される。決定された位置データは、その後、内視鏡を本発明によって規定される位置および方向へと至らせることができるように内視鏡を位置決めして方向付けるために使用できる。また、追加的にまたは代替的に、位置を決定するための他の手段を使用できる。
【0010】
好ましくは、内視鏡検査システムとガスタービンとの間に位置規定手段が設けられる。これらは、一方では、内視鏡検査システムをガスタービンに対して固定できるようにする機械的な手段を含むことができ、また、他方では、位置を規定できるように内視鏡の座標系とガスタービンの座標系とを同期させることができるようにする機械的なおよび/または電子的な手段を含むことができる。位置規定手段は、内視鏡を所定の態様で位置決めして方向付けるために有利であり、特に電子的に制御される位置決め機器にとって有利である。また、位置規定手段は、内視鏡の位置および/または方向を較正できるように内視鏡の位置および/または方向を自動的に決定するために有利である。
【0011】
内視鏡検査システムは、画像を自動的に捕捉するように構成されるのが好ましい。内視鏡が所定の位置および方向にあれば、検査されているガスタービン内の対応する部品または領域の画像取得がもたらされる。もはや画像取得を手動で行なう必要がなく、したがって、ガスタービンを検査するために要する時間の長さが減少される。
【0012】
好ましくは、データ処理装置は、画像記録装置からの画像記録を検査されているガスタービンの部品または領域へ割り当てるように構成される。ガスタービン内からの部品または領域を画像記録によって検出された部品または領域に割り当てるためには、対応する部品または領域を特定できなければならない。これは、内視鏡の所定の位置および方向および/または電子的に制御される位置決め機器から知られるガスタービンに関連する座標に基づいて行なうことができる。あるいは、割り当ては、データ処理装置による画像認識に基づいて行なうことができる。これは、ガスタービンの検査を後日に評価して再検討できるようにする文書化において特に有益である。
【0013】
好ましくは、内視鏡検査システムは、画像記録を自動的に記憶するおよび/またはアーカイブするように構成される。生成された画像記録は、ガスタービンの検査からの画像記録をデータセット内に電子的に預けることができるように、日付、検査されたガスタービン、および、検査されたガスタービンの部品または領域などの検出されたパラメータと共にデータ処理装置によって自動的に記憶されるおよび/またはアーカイブされる。記憶およびアーカイビングは、検査を後日に評価するため、および、検査の証拠を与えるために有益である。特に、アーカイビングは、データセットへの分散的なアクセスを可能にする少なくとも1つのサーバでデータ処理装置により行なうことができる。また、照明、焦点、および、露光時間などの画像捕捉のためのパラメータは、内視鏡検査システムによって設定されるのが好ましい。
【0014】
好ましくは、画像記録装置は、ガスタービンの少なくとも1つのシャフトの回転位置にしたがって画像記録を実行するように構成される。シャフトの回転位置は、ガスタービンのロータブレードの位置にとって極めて重要である。ガスタービン内の内視鏡の所定の位置および方向に加えて、ガスタービン内の回転部品または回転領域に対する内視鏡の所定の位置および方向も同時に、対応する画像記録に不可欠である。ガスタービンの回転部品または回転領域の画像記録のための所定の画像細部は、内視鏡が所定の位置および方向にある場合、および、回転部品または回転領域が接続されるシャフトの特定の回転位置が設定される場合にのみ生成される。したがって、画像記録は、対応するシャフトの回転位置にしたがって生成されるのが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態において、画像は、シャフトが回転している間に、シャフトの回転動作と同期して捕捉される。このようにすると、検査速度をかなり高めることができ、ガスタービンごとの検査継続時間をかなり減らすことができる。同期は、任意の適した態様で行なうことができる。好適には、同期は、マーカーによって、例えばブレードロックによって有利に規定される対応する回転位置を通るときに行なわれる。同期は、シャフトのそれぞれの回転時に行なわれる必要はなく、シャフトのn回転ごとの同期(例えば、n=10)で十分であってもよい。回転位置が画像記録装置によって検出されてもよい。シャフトを駆動させるためにステッピングモータまたは同期モータが使用された場合も想起でき、そのような場合には、更なる測定を伴わずに回転角または位置に関する情報が利用できる。
【0016】
別の実施形態において、シャフトの回転位置は、内視鏡検査システムによって検出され、したがって、画像捕捉のために設定される。
【0017】
想定し得る実施形態において、内視鏡検査システムは、ガスタービンの少なくとも1つのシャフトを回転させるための回転機器を制御するように構成される。検査されているガスタービンの少なくとも1つのシャフトは、シャフトの回転動作に影響を及ぼすように構成される回転機器に接続される。この回転機器は、シャフトの回転位置、したがって画像記録のための画像細部を設定できるように内視鏡検査システムによって制御できる。好ましい実施形態において、回転機器は、少なくとも1つのシャフトの回転または回転位置の連続調整をもたらすべく、特に、シャフトの回転に同期して画像を捕捉できるようにするべく構成される。あるいは、回転を手動で行なうことができる。
【0018】
データ処理装置は、画像記録と基準画像記録および/またはアーカイブされた画像記録とを比較するように構成されるのが好ましい。内視鏡検査システムによる内視鏡の本発明にしたがった所定の位置決めおよび方向付けは、それによって複数の画像記録を画像処理手段により有利に比較できるため、ガスタービンの部品または領域の画像記録の比較のために特に有益である。複数の画像記録の比較は、複数の検査間でのガスタービンの部品または領域における違いを自動的に特定できるようにするために、また、特定された違いを適切な態様でマークするために有益である。
【0019】
好ましくは、データ処理装置は、所望状態からの逸脱および/または検査されているガスタービンの部品または領域の損傷を自動的に特定するように構成される。所望状態からの逸脱は、基準記録との比較によって決定することができる。例えば新しい、または新しいままの状態のガスタービンを示すアーカイブされた画像記録を基準画像と見なすことができる。あるいは、基準記録が他のガスタービンに由来するものであってもよい。また、コンピュータ生成画像を基準記録として使用できる。所望状態からの逸脱および/または損傷を自動的に特定することは、例えば、内視鏡検査システムにより特定された損傷を評価中にオペレータに気付かせることができるため、ガスタービンを検査するために特に有益である。結果として、損傷を特定する際のエラーの可能性をオペレータによって更に減らすことができる。また、特定された逸脱および損傷を含む画像記録だけを評価のためにオペレータに与えることができる。これにより、オペレータの作業負担および必要とされる検査時間が減少する。
【0020】
好ましくは、データ処理装置は、ガスタービン内の部品または領域の損傷を計測するように構成される。亀裂または凹みなどのガスタービンの損傷の幾何学的寸法は、損傷の評価にとって極めて重要である。損傷は、データ処理システムによって画像記録に関連して計測される。この計測は、画像記録内の部品の既知の寸法によって、および/または、画像記録内の部品または領域に対する内視鏡の所定の位置および方向とそこからもたらされ得る画像記録内の部品または領域の寸法とによって支援され得る。これは、損傷が一般にその幾何学的寸法に基づいて評価されるため、有益である。
【0021】
好ましくは、データ処理装置は、ガスタービン内の部品または領域の損傷を分類するように構成される。分類は、例えば、所望状態からの逸脱の度合いに基づいて、および/または、損傷の度合いに基づいて行なうことができる。また、重大な部品の比較的小さい大きさの損傷が重大でない部品のそれとは異なって分類されるように、部品または領域のタイプにしたがって分類を行なうこともできる。あるいは、損傷のタイプまたは逸脱にしたがって分類を行なうことができる。また、損傷の分類は、航空機で使用されるガスタービンの耐空性へのその影響にしたがって、例えば、次のオーバーホールで修理すれば十分な損傷にしたがって、あるいは、耐空性を損なう損傷にしたがって行なうことができる。これらの組み合わせの分類も可能である。分類は、検査時間を減らすため、および、文書化を簡略化するために使用されるのが好ましい。
【0022】
例えば、本発明に係る内視鏡検査システムを使用して検査する際、重大であるとして分類された損傷を最初にオペレータへ与えることができ、それにより、場合によって作動停止が必要な場合に、これらの所見を検査の早い段階で特定できる。
【0023】
好ましくは、データ処理装置は、ガスタービン内の部分または領域の損傷の進行を監視するように構成される。検出された損傷は、データ処理装置によって、アーカイブされた画像記録と比較される。亀裂などの損傷の度合いの進行は、以前の検査のアーカイブされた画像記録に基づいて経時的に監視できる。これは、1つの画像を使用して、または幾何学的な寸法に基づいて行なうことができる。結果として、欠陥が更に大きくなったか否か、または例えばガスタービンの異なる検査間で亀裂のサイズが安定したままであったか否かを特定することができる。
【0024】
好ましくは、データ処理装置は、検査されているガスタービン内の部品または領域の損傷の更なる進行を予測するために予測手続きを行なうように構成される。エンジンが検査された複数の回数にわたって亀裂の長さなどの損傷に関連する値が分かる場合には、データ処理装置で実施される損傷モデルおよび被検査タービンの動作プロファイルを用いて亀裂の進行速度などの損傷に関連する値を決定することができる。その値から、データ処理装置によって、損傷の更なる予期される進行の予測を行なうことができる。これは、ガスタービンのオーバーホールまたは修理の効率的なスケジューリングのため、および、動作の安全性のために有益である。
【0025】
また、本発明に係る内視鏡検査システムを使用してガスタービンを検査するための方法が提供され、この方法では、最初の方法ステップにおいて、本発明に係る内視鏡検査システムの内視鏡がガスタービンの内側へ挿入される。次の方法ステップにおいて、内視鏡検査システムの内視鏡は、データ処理装置によってガスタービン内において所定の態様で位置決めされて方向付けられる。最後の方法ステップでは、ガスタービンの部品または領域の画像記録が、画像記録装置によって、所定の位置および方法から生成される。
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】内視鏡検査システムを使用するガスタービンの検査の概略図である。
図2】内視鏡検査システムを使用するガスタービンの領域の検査の複数の画像記録を示す。
図3】内視鏡とガスタービン内の検査されるべきブレードホイールとの斜視図である。
図4】様々な画像記録および/または照明配置の概略図である。
図5】様々な画像記録および/または照明配置の概略図である。
図6】様々な画像記録および/または照明配置の概略図である。
図7】様々な画像記録および/または照明配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ガスタービン11の検査中の本発明に係る内視鏡検査システム10を概略的に示す。内視鏡検査システム10の内視鏡12は、内視鏡12をガスタービン11内へ挿入するためのシャンク18と、ガスタービン11内の画像記録20,21,22(図2参照)を生成できる画像記録装置13とを備えることが好ましい。シャンク18の自由端に配置されるのが好ましい画像記録装置13は、好ましくはカメラであってもよく、一般的には、レンズと、画像を検出して電子画像データへ変換するためのカメラチップまたは画像センサとを備える。特に空間的な理由により、カメラ13の一部、例えば画像センサをシャンク18の自由端に配置されるカメラレンズから離れるように配置することができる。この場合、シャンクを通じて延びる光導波路を用いて画像情報を例えばカメラレンズから画像センサへと案内することができる。1つの実施形態では、画像記録装置13が例えばシャインプルーフカメラであってもよいが、本発明はこのタイプのカメラに何ら限定されない。
【0029】
更なる実施形態では、複数のカメラ、例えば、色認識カメラおよび急速黒/白認識カメラを使用できる。また、例えば、それぞれがカメラを備える複数の内視鏡を設けることができる。あるいは、画像記録装置13が複数のカメラを備える内視鏡を設けることができる。最終的な一連の記録のためのカメラを例えば記録状況に基づいて選択できる。
【0030】
位置決め機器14が内視鏡12に接続され、この位置決め機器は、ガスタービン11内で内視鏡12を位置決めするように構成される。ガスタービン11のシャフト17を回転させるために回転機器15または回転ドライブが設けられることが好ましい。
【0031】
内視鏡検査システム10を制御するため、また、内視鏡12によって収集されるデータを処理するために、データ処理装置16が設けられる。スケールの歪みを補償して標準化を達成するために、画像処理は、記録された画像の修正を含むことが好ましい。
【0032】
ガスタービン11の典型的な検査では、内視鏡12が最初に検査されるべきガスタービン11の部分内へと挿入される。この目的のため、内視鏡12は、ガスタービン11の適切な開口を通じて挿入される。
【0033】
有利な実施形態では、内視鏡12をガスタービン11内へ挿入するときに位置規定手段が使用される。これらの位置規定手段は、内視鏡12とガスタービン11との相対位置が位置規定手段によって規定されるように、内視鏡システム10の座標系とガスタービン11の座標系との間に所定の関係が存在し得るようにする機械的なストッパまたは機械的な接続であってもよい。更なる想定し得る実施形態において、位置規定手段は、相対位置を比較できるようにする測定技術の形態を成す。
【0034】
ガスタービン11内の内視鏡12の位置、特に画像記録装置13の位置は、一方では、位置規定手段に基づいて、好ましくは内視鏡12の更なる移動のその後の測定値を使用して自動的に決定することができる。代替的にまたは追加的に、位置は、画像記録装置13によってデータ処理装置16へ送信される画像情報に基づいて自動的に決定できる。画像記録装置13からのデータによる位置の決定は、このようにするとガスタービン11内の画像記録装置13の位置および方向の正確な順守を直接にチェックできるため、精密な位置決めにとって特に有利である。
【0035】
シャフト17の回転位置または回転角度は自動的に決定されることが好ましい。想定し得る実施形態において、これは、画像記録装置13と、データ処理装置16内での適した画像処理とによって行なうことができる。シャフト17の絶対回転位置は、特に、マーカーまたは適した基準点に基づいて決定することができる。好適には、一般に既に存在するブレードロック19が、それぞれの画像処理手続きにおいてマーカーまたは基準点として検出される。代替的にまたは追加的に、1つ以上の更なるマーカーを設けることができる。個々のタービンブレード23の位置は、個々のタービンブレード23の識別が分かるように、マーカーに関連して決定できる。
【0036】
別の実施形態では、ガスタービン11の回転部品の回転位置を検出するために更なるセンサを設けることができる。
【0037】
内視鏡12は、手動入力によって動作され得るおよび/またはデータ処理装置16によって自動的に制御され得る電子的に制御された位置決め機器14によって移動される。位置決め機器14は、ガスタービン11に対する内視鏡12の画像記録装置13の位置決めおよび方向付けを担う。これは、内視鏡12を正確に移動させることができるようにする電子的に制御されたアクチュエータによって行なわれる。想定し得る実施形態において、アクチュエータには、移動距離の測定値をデータ処理装置16へ供給できるようにするために対応するセンサ技術が備えられる。位置決め機器14のアクチュエータの移動距離の測定値は、位置を自動的に決定するための基準にもなり得る。位置決め機器は、ガスタービン内へ挿入されない内視鏡の端部に接続することができる。また、内視鏡が位置決め機器またはその一部を含むことができる。
【0038】
また、ガスタービン11の回転部品の画像を所定の態様で捕捉するために、内視鏡12に対する回転位置間の所定の関係の情報が有益である。この目的のため、検査されているガスタービン11の少なくとも1つのシャフトを回転させることができる電子的に制御された回転機器15がデータ処理装置16によって制御される。想定し得る実施形態において、回転機器15は、少なくとも1つのシャフトの連続回転をもたらすために使用することができる。
【0039】
有利な実施形態において、画像は、シャフトが連続的に回転しているときに画像記録装置13によって捕捉される。このとき、画像記録装置は、ガスタービン11のシャフト17の回転動作と同期して画像を捕捉するように構成されるのが好ましい。同期は、好適には、シャフト17の回転位置のマーカーに基づいて、例えばブレードロック19に基づいて行なうことができる。代替的にまたは追加的に、画像捕捉は、1つ以上のタービンブレード23の測定位置でもたらされ得る。
【0040】
実用的な方法シーケンスでは、最初に試運転を行なうことができ、この試運転では、例えば、タービンブレード23の瞬間速度が決定され、または推定される。試運転から、例えば、最終の一連の記録を行なうためにその後に使用され得る微分時間が決定される。
【0041】
別の実施形態において、回転機器15は、具体的には、シャフト17の1つ以上の回転位置を設定するとともに、特に画像が捕捉されているときに設定位置を維持する。
【0042】
本発明に係る内視鏡検査システム10を使用する内視鏡12の所定の位置決めおよび方向付けは、ガスタービン11内の部品または領域の標準化された画像記録20,21,22(図2参照)を可能にする。
【0043】
ガスタービン11内の部品および領域は、好ましくは、ガスタービン11のガス流によって影響を及ぼされる表面を有する全ての物体、特に、ロータおよびステータのブレード、ライニング、および、燃焼室である。また、これらは、組み付けられた際に内視鏡検査を使用する特定のアクセスによって検査または試験のためにアクセスできるガスタービン11の全ての領域である。ガスタービン11内の特定の部品は、例えば、高圧タービンの第1のステージにおける3番ロータブレードであってもよい。ガスタービン11内の内視鏡12の所定の位置決めおよび方向付け、並びに、対応する回転位置は、画像記録20,21,22がこの部品をその表面の特定の領域と共に示すように、この部品の特定の方向からの所定の画像捕捉を可能にする。
【0044】
標的検査およびその文書化のため、画像記録20,21,22を検査されているガスタービン11の部品に割り当てることが有益である。したがって、好ましい実施形態において、内視鏡検査システム10は、部品を画像記録20,21,22に自動的に割り当てるように構成される。これは、例えば位置データに基づいて及び/または部品の識別を決定するのに適した少なくとも1つのマーカーまたは標示のデータ処理装置16による自動画像認識によって行なうことができる。適したマーカーは、例えば、ブレードのための明確なゼロ位置を表わすことができるブレードロック19であり、これにより、このゼロ位置を発端として数えるだけでブレードを明確に割り当てることができる。
【0045】
記録された物体に対する画像記録装置13の相対位置および方向に加えて、画像記録装置13の設定も、画像の標準化された捕捉に極めて重要である。したがって、好ましい実施形態では、画像記録装置13の設定がデータ処理装置16によって制御される。これらの設定は、例えば、焦点、シャッター速度、クロッピング、および、光源による照明であってもよい。
【0046】
本発明の実施形態では、記録されるべき表面を積極的に照明するために光源25が設けられる。図4図7には、レンズ26および対応する絞りに対する光源25の様々な幾何学的形態および配置が示される。記録されるべき表面上での光源25の光ビームの直接的な反射に起因する画像中の干渉を防止するため、例えば図4,5,7に示されるように、斜め入射照明を行なうことができ、配置は、光源25からの光ビームがレンズ26で直接に反射されないように選択される。
【0047】
また、フィルタ27(図6参照)、例えば暗視野効果を利用するフーリエフィルタまたは密度フィルタを使用することもできる。更に、画像記録装置13の規則的な放射較正が有益な場合がある。
【0048】
好ましい実施形態では、内視鏡検査システム10が自動画像捕捉を行なうことができる。画像記録装置13は、一般に、画像データをデータ処理装置16へ連続的に供給し、このデータは、画像認識、位置認識、回転位置認識、および、部品および/または領域の認識の目的で評価され得る。実際の画像捕捉は、ガスタービン11を検査するという目的に適した画像記録をもたらす。したがって、画像記録20,21,22は、例えばタービンブレード23の部品の適切な部分を含む。データ処理装置16が、適切な手段を使用して、画像データ、位置データ、および、好ましくは割り当ても所定の目標値と一致することを確認すれば、自動画像捕捉がなされる。対応するデータは、データ処理装置によって画像記録20,21,22と関連付けられる。画像が自動的に捕捉されるため、関連するパラメータを手動制御する必要がなく、また、ガスタービン11のオペレータには、更なる評価に適した画像記録20,21,22を内視鏡検査システム10によって直接に与えることができる。
【0049】
好ましい実施形態において、画像記録20,21,22は、それらを文書化、評価、および、証拠のために後日に利用できるように自動的に記憶されてアーカイブされる。アーカイビングは、内視鏡検査システム10のデータ処理装置16で直接に、または、複数の内視鏡検査システム10が同じデータベースにアクセスできるように中央データベースで、行なうことができる。
【0050】
また、想定し得る実施形態において、本発明に係る内視鏡検査システム10には、ステレオ記録装置である画像記録装置13が設けられる。
【0051】
更なる想定し得る実施形態において、内視鏡12は、非破壊的態様でガスタービン11内の部品または領域を検査するための少なくとも1つの診断装置を備える。付加的な診断装置は、渦電流プローブまたは染色浸透探傷検査のための診断装置などの非破壊的な検査のための様々なオプションを含んでもよい。
【0052】
ガスタービン11を検査するときの本発明に係る内視鏡検査システム10のための適用分野は、ターボファンまたはターボジェットなどの航空機のジェットエンジン、および/または、舶用タービンまたは発電システムにおけるタービンなどの工業で使用されるジェットエンジンの検査を含む。
【0053】
図2は、本発明に係る内視鏡検査システム10を使用するガスタービン11の一領域の検査の複数の画像記録20,21,22を示し、これらの画像記録はそれぞれ、ガスタービン11内からの同じ画像細部を示す。高圧タービンステージのロータブレードが示されており、画像細部中のロータブレードの後縁のそれぞれは前方のブレードによって隠されている。この実施形態では、検査されるべきタービンブレード23が最も目立つ位置で示される。
【0054】
画像記録20は、タービンブレード23をその基準状態で示す。基準状態の画像記録20は、タービンブレード23の最適な技術的状態を示すために使用され、この状態におけるガスタービン11のアーカイブされた画像記録20であってもよく、あるいは、特にこの目的のために基準として生成され得る。この基準画像記録20はデータ処理装置16または中央データベースに記憶され得る。画像記録20を生成するのに用いた画像記録装置13の位置および方向に関する情報は、画像記録20と関連付けられ、また、本発明によれば、内視鏡12および画像記録装置13の位置および方向は、内視鏡12の位置および方向を規定するのに用いるタービンブレード23のその後の検査の全ての更なる画像記録21,22で使用される。
【0055】
画像記録20,21,22において、実施形態は、ガスタービン11が検査間で特定の動作時間を有するように、異なる検査におけるガスタービン11の対応するタービンブレード23を示す。画像記録22は、3つの画像記録20,21,22のうちで最も短い動作時間を伴う画像記録20と比べて、最も長い動作時間を伴うタービンブレード23を示す。したがって、動作時間数を画像記録20,21,22に割り当てることができる。
【0056】
内視鏡12の所定の位置決めおよび方向付けの本発明に係る利点は、画像記録20,21,22を参照すると理解できる。異なる検査における同じ位置決めおよび方向付けは、様々な画像記録20,21,22の非常に良好な比較可能性をもたらす。一方では、これは、オペレータによる手作業での点検にとって有利であり、また、他方では、それにより、電子処理中に差および変化を容易に特定できる。例えば、画像記録20,21を重ね合わせることにより、亀裂24を容易に特定できる。この実施形態では画像記録20が基準画像として使用されるため、亀裂24を所望状態からの逸脱として非常に素早く特定できる。
【0057】
好ましい実施形態において、データ処理装置16は、所望状態からのこの逸脱を自動で特定し、例えば、オペレータが精査できるように対応する表示を画像記録21へ加える。この実施形態の本発明に係る内視鏡検査システム10によって特定され得る所望状態からの更なる想定し得る逸脱は、摩耗、亀裂、凹み、穴、または、異物などの損傷である。
【0058】
1つの実施形態において、内視鏡検査システム10のデータ処理装置16は、損傷を計測するように構成される。亀裂24は、例えば、画像データおよび対応する基準を参照して計測され、また、データ処理装置16は、対応する幾何学的な亀裂長さを出力する。
【0059】
更なる有利な実施形態では、内視鏡検査システム10が損傷を自動的に分類することができ、例えば、亀裂24が最初にデータ処理装置16によって亀裂として分類される。更なる分類を例えば亀裂長さに関連して行なうことができ、この亀裂長さは、この実施形態では、許容限度内にあり、したがって、ガスタービン11の次の計画された検査まで動作安全性を損なわない。分類は、特定のタイプの損傷を標的態様で探すことができるオペレータへ与えられ得る。
【0060】
データ処理装置16が例えば致命的な損傷を特定する場合には、それに応じて、これをオペレータのために文書および画像に明確にマークすることができる。
【0061】
画像記録22は、その後の検査における同じタービンブレード23を示す。画像記録22と画像記録20,21との比較は、画像記録20に示される所望状態からの逸脱と、前の検査、すなわち、画像記録21で見つけられた損傷の変化とを示す。このように、亀裂24は、ガスタービンの動作の介在期間中にわたって成長し続けてきた。この実施形態において、データ処理装置16は、亀裂24を自動的に特定して計測するとともに、動作時間数をガスタービン11および/またはタービンブレード23に割り当てるように構成される。したがって、亀裂24を動作時間の観点から経時的に監視することができ、それにより、亀裂24が成長し続けてきたことが分かる。また、これにより、損傷が生じた時点を絞り込むことができる。この例では、画像記録20,21間で損傷が生じた。
【0062】
好ましい実施形態において、損傷の進行に関する情報は、損傷の今後の更なる進行を予測するためにデータ処理装置16で使用される。結果として、重大な亀裂長さが生じた時点をより正確に推定することができ、それに応じて、メンテナンス間隔を適合させることができる。更なる想定し得る実施形態において、データ処理装置16は、多数のガスタービン11のアーカイブされた画像記録20,21,22に基づいて損傷の進行を予測するための予測手続きを最適化するように構成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7