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特許62233452,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223345
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20171023BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-535800(P2014-535800)
(86)(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公表番号】特表2015-501300(P2015-501300A)
(43)【公表日】2015年1月15日
(86)【国際出願番号】US2012059437
(87)【国際公開番号】WO2013055722
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】61/547,219
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−532762(JP,A)
【文献】 特開2010−043080(JP,A)
【文献】 特表2010−535206(JP,A)
【文献】 特表2014−534961(JP,A)
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
【文献】 特表2011−523652(JP,A)
【文献】 再公表特許第2005/088185(JP,A1)
【文献】 国際公開第2011/087825(WO,A1)
【文献】 米国特許第08250964(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0029997(US,A1)
【文献】 特開2010−037343(JP,A)
【文献】 特開平01−207250(JP,A)
【文献】 米国特許第02931840(US,A)
【文献】 特表平07−502254(JP,A)
【文献】 特表2007−535561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応器が不純物を実質的に含まないように2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの脱塩化水素化に以前曝された反応器から不純物を除去し、ここで、前記不純物は、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び炭素質物質からなる群から選択される少なくとも1つを含む;
(b)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む出発組成物を反応器内に供給する;
(c)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させるのに有効な条件下で反応器において前記出発組成物を脱塩化水素化する
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、工程(a)が、(i)炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入すること、続いて、(ii)金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することを含む、方法
【請求項2】
金属ハロゲン化物が、Ni、Cr、Fe、Mo、Nb、Cu、及びCoのハロゲン化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ii)還元剤を導入する前に、反応器を不活性ガスでパージすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元剤が、H、NH、CO、C〜C12炭化水素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
酸化剤が、HO、CO、O、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
酸化剤が酸素を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
酸化剤を導入する前に、炭素質物質、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を反応器から物理的に除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
炭素質物質、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を反応器から物理的に除去する工程が、電気的研磨、機械的研磨、液圧方法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも90%又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも95%又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも97%又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(a)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの脱塩化水素化に以前曝された反応器に、式I、II、又はIII:
CX=CCl−CHX (I);
CX−CCl=CH (II);又は
CX−CHCl−CHX (III)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(b)出発組成物を第1のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第1の中間体組成物を生成させ;
(c)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;
(d)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させ、ここで、脱塩化水素化工程は不純物を実質的に含まない反応器内で行い、前記不純物は、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び炭素質物質からなる群から選択される少なくとも1つを含む;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、前記反応器が、(i)炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入すること、続いて、(ii)金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することによって不純物を実質的に含まないようになっている、方法
【請求項13】
(a)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させる反応を行い、この反応は反応器内で行い、この反応は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第1の選択率を有し;
(b)反応を進行させながら2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率を検出し;
(c)反応を停止し;
(d)反応器が、不純物を実質的に含まないように反応器から炭素質物質、金属ハロゲン化物及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む不純物を除去し;そして
(e)反応を再び開始する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、工程(d)が、(i)炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入すること、続いて、(ii)金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することを含む、方法
【請求項14】
(i)において不純物を酸化した後で(ii)において還元剤を導入する前に、反応器を不活性ガスでパージすることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
再び開始した反応が2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率を有し、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率が2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率よりも大きい、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
酸化剤が、HO、CO、O、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
還元剤が、H、NH、CO、C〜C12炭化水素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
(i)酸化剤を導入する前に物理的手段によって不純物を除去することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2011年10月14日出願の米国仮出願61/547,219(その内容を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
[0002]本出願はまた、2011年11月11日出願の米国出願13/287,199(その内容を参照として本明細書中に包含する)の一部継続出願でもある。
【0002】
[0003]本出願はまた、2007年7月6日出願の米国仮出願60/958,468に対する優先権を主張している2008年7月2日出願の米国出願12/167,159(これらのそれぞれの内容を参照として本明細書中に包含する)の一部継続出願でもある。
【0003】
[0004]本発明は、フッ素化有機化合物の製造方法、より詳しくはフッ素化オレフィンの製造方法、更により詳しくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
[0005]テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)など)のようなヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、現在、有効な冷媒、消火剤、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体状誘電体、滅菌剤キャリア、重合媒体、粒状物除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体であることが知られている。クロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(これらはいずれも地球オゾン層を損傷する可能性がある)とは異なり、HFOは塩素を含まず、したがってオゾン層を脅威にさらさない。HFO−1234yfはまた、低い毒性を有する低地球温暖化化合物であることが示されており、したがって可動型空調における冷媒に関する益々厳しくなっている要求を満足することができる。したがって、HFO−1234yfを含む組成物は、中でも、上述の用途の多くにおいて用いるように開発されている材料である。
【0005】
[0006]HFOを製造する幾つかの方法が公知である。例えば、米国特許4,900,874(Iharaら)においては、水素ガスをフッ素化アルコールと接触させることによってフッ素含有オレフィンを製造する方法が記載されている。これは比較的高い収率のプロセスであるように思われるが、高温の水素ガスを商業的スケールで取扱うことは危険である。また、現場での水素プラントの建築のような水素ガスを商業的に製造するコストは経済的に高コストである。
【0006】
[0007]米国特許2,931,840(Marquis)においては、塩化メチル及びテトラフルオロエチレン又はクロロジフルオロメタンを熱分解することによってフッ素含有オレフィンを製造する方法が記載されている。このプロセスは比較的低い収率のプロセスであり、有機出発材料の非常に大きな割合が、プロセスにおいて用いる触媒を失活させる傾向がある相当量のカーボンブラックなどの望まれておらず及び/又は重要でない副生成物に転化する。
【0007】
[0008]トリフルオロアセチルアセトン及び四フッ化イオウからHFO−1234yfを製造することが記載されている(Banksら, Journal of Fluorine Chemistry, vol.82, 2号, p.171〜174(1997)を参照)。また、米国特許5,162,594(Krespan)においては、テトラフルオロエチレンを液相中で他のフッ素化エチレンと反応させてポリフルオロオレフィン生成物を生成させるプロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許4,900,874
【特許文献2】米国特許2,931,840
【特許文献3】米国特許5,162,594
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Banksら, Journal of Fluorine Chemistry, vol.82, 2号, p.171〜174(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]しかしながら、HFO−1234yfのようなヒドロフルオロオレフィンを製造する経済的な手段に対する必要性が未だ存在する。本発明はとりわけこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0010]本発明は、部分的に、反応器内で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)をHFO−1234yfへ脱塩化水素化する間に、反応器の材料のハロゲン化によって形成される不純物が、HFO−1234yfの生成速度の減少、及び/又はHFO−1234yfから2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)への選択率の逆転を引き起こすという驚くべき発見に関連する。したがって、本発明は、反応器内の不純物の存在を減少させ、HCFO−1233xfの形成を回避するか又は少なくとも減少させることによってHFO−1234yfの生成及び選択率を向上させる方法に関する。
【0012】
[0011]一形態においては、本発明は、(a)反応器が不純物を実質的に含まないように反応器から不純物を除去し;(b)反応器内にHCFC−244bbを含む出発組成物を供給し;(c)反応器内において出発組成物を脱塩化水素化触媒と接触させて、HFO−1234yfを含む最終組成物を生成させる;ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法に関する。本明細書において用いる「実質的に含まない」という規定は、反応器内の不純物の量が減少して、HFO−1234yfの生成速度及び/又はHCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化の選択率が適度に向上することを意味する。これはまた、HCFC−244bbのHCFO−1233xfへの転化が減少することも意味する。不純物としては、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び/又は炭素質物質を挙げることができるが、これらに限定されない。金属ハロゲン化物は、例えばNi、Cr、Fe、Mo、Nb、Cu、及びCoのハロゲン化物を含んでいてよい。
【0013】
[0012]幾つかの態様においては、反応器から不純物を除去する工程は、金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することを含む。かかる還元剤としては、H、NH、CO、C〜C12炭化水素、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。還元剤は純粋であってよく、或いは希釈形態であってよく、例えば不活性ガスで希釈することができる。希釈は、実用的に可能な限り高く、例えば還元剤の約0.1体積%であってよい。この工程は、単独か、又は不純物を除去するための任意の他の工程と合わせて行うことができる。幾つかの態様においては、還元は還元剤の連続流の条件下で行う。一態様においては、このようにして還元にかけた反応器を、その後に正圧下に保持するか、又は還元剤及び/又は不活性ガスでシールすることができる。
【0014】
[0013]別の態様においては、反応器から不純物を除去する工程は、反応器内の炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入することを含む。酸化剤には、例えば、HO、CO、O(酸素)、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせを含ませることができるが、これらに限定されない。この工程は、単独か、又は不純物を除去するための任意の他の工程と合わせて行うことができる。一態様においては、酸化は酸化剤の連続流の条件下で行う。他の態様においては、酸化剤は希釈するか又は希釈形態で供給する。好適な希釈剤としては、例えばHe、Ar、N、及びこれらの組み合わせなどの不活性ガスが挙げられる。この態様の1つの実施においては、酸化剤は空気中に存在する酸素であり、窒素で希釈する。希釈は、実用的に可能な限り高く、例えば酸化剤の約0.1体積%であってよい。
【0015】
[0014]幾つかの態様においては、酸化剤の導入は還元剤の導入の直前に行い;この実施の幾つかの態様においては、酸化と還元との間にパージ工程が介在する。幾つかの態様においては、パージ工程は、例えばHe、Ar、N、及びこれらの組み合わせなどの不活性ガスを反応器中に導入することを含む。幾つかの態様においては、反応器は、約100℃〜約700℃、約200℃〜約600℃、約300℃〜約500℃、又は約400℃〜約500℃の温度において不活性ガスでパージする。一態様においては、パージは、不活性ガスの連続流の条件下で行う。他の態様においては、反応器を不活性ガスで加圧し、次にパージが達成されるのに十分な僅かな時間減圧する。これらの態様の組み合わせを実施することもできる。
【0016】
[0015]更なる別の態様においては、反応器から不純物を除去する工程は、炭素質物質及び金属ハロゲン化物を反応器から物理的に除去することを含む。物理的除去は、例えば、反応器の内表面の電気的研磨及び/又は機械的研磨によって行うことができる。他の例においては、これらの不純物の堆積物は、高い流速の水又は水蒸気で洗い流すことができる。この工程は、単独か、又は不純物を除去するための任意の他の工程と合わせて行うことができる。
【0017】
[0016]幾つかの態様においては、出発組成物を脱塩化水素化触媒と接触させる工程は蒸気相中で行う。触媒は、例えば、(i)1種類以上のハロゲン化物、(ii)1種類以上のハロゲン化金属酸化物、(iii)1種類以上の0価の金属/金属合金、並びに(iv)これらの2以上の組み合わせからなる群から選択することができる。幾つかの態様においては、HFO−1234yfへの選択率は、少なくとも90%又はそれ以上、95%又はそれ以上、或いは97%又はそれ以上である。
【0018】
[0017]他の形態においては、本発明は、(a)不純物を実質的に含まない反応器内に、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む出発組成物を供給し;(b)反応器内において、出発組成物を脱塩化水素化触媒と接触させて、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させる;ことによってHFO−1234yfを製造する方法に関する。幾つかの態様においては、HFO−1234yfへの選択率は、少なくとも90%又はそれ以上、95%又はそれ以上、或いは97%又はそれ以上である。
【0019】
[0018]更なる形態においては、本発明は、
(i)式I、II、又はIII:
CX=CCl−CHX (I);
CX−CCl=CH (II);又は
CX−CHCl−CHX (III)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(ii)出発組成物を第1のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第1の中間体組成物を生成させ;
(iii)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;
(iv)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させ、ここで、脱塩化水素化工程は不純物を実質的に含まない反応器内で行う;
ことによってHFO−1234yfを製造する方法に関する。
【0020】
[0019]本発明の更なる態様及び有利性は、本明細書に与える開示事項に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】[0020]図1は、HCFC−244bb転化の転化率及び生成物選択率を示す。
図2】[0021]図2は、3/4インチのインコネル625×0.035インチ反応器内における脱塩化水素化(450℃、12g−有機物質/時、有機供給材料:99.4GC面積%の244bb/0.4GC面積%の1233xf)の間のHCFC−244bbの転化率を示す。
図3】[0022]図3は、還元した3/4インチのインコネル625×0.035インチ反応器内におけるHCFC−244bbの脱塩化水素化(480℃、0psig、12g−有機物質/時、有機供給材料:99.4GC面積%の244bb/0.4GC面積%の1233xf)の間のHCFC−244bbの転化率及び生成物選択率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0023]一態様によれば、本発明は、不純物を実質的に含まない反応器内において、HCFC−244bbを含む出発材料又は中間体材料を用いてHFO−1234yfを製造するための製造方法に関する。本出願人らは、驚くべきことに、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び炭素質物質のような不純物が存在すると、HCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化率及び選択率が減少することを見出した。理論に縛られることは望まないが、Ni、Cr、Fe、Mo、Nb、Cu、及びCoのハロゲン化物のような幾つかの不純物が反応器の対応する金属成分のハロゲン化によって形成され、かかる不純物はHCFO−1233xfの形成に触媒的に寄与すると考えられる。したがって、本発明は、反応器から不純物を除去して、HFO−1234yf製造プロセスの全効率を向上させる方法を提供する。
【0023】
[0024]幾つかの形態においては、HFO−1234yfの製造は、一般に、下記:
(i)固体触媒を充填した蒸気相反応器内における(CX=CCl−CHX又はCX−CCl=CH或いはCX−CHCl−CHCX)+HF→2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HCl;
(ii)液体フッ化水素化触媒を充填した液相反応器内における2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HF→2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb);及び
(iii)蒸気相反応器内における2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)→2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf);
(上記において、Xは、独立してF、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも3つの反応工程を含む。
【0024】
[0025]第1の反応工程における出発材料は、式I、II、及び/又はIII:
CX=CCl−CHX (式I);
CX−CCl=CH (式II);
CX−CHCl−CHX (式III)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
にしたがう1種類以上の塩素化化合物である。幾つかの態様においては、これらの化合物は少なくとも1つの塩素を含み、Xの大部分は塩素であるか、或いは全てのXは塩素である。
【0025】
[0026]第1工程においては、出発組成物(幾つかの態様においては、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa)、2,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xf)、及び/又は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)を含む)を、第1の蒸気相反応器(フッ素化反応器)内で無水HFと反応させて、少なくともHCFO−1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)及びHClの混合物を生成させる。反応は、約200〜400℃の温度、及び約0〜200psigの圧力において行うことができる。蒸気相反応器から排出される流出流は、場合によっては、未反応のHF、未反応の出発組成物、重質中間体、HFC−245cbなどのような更なる成分を含む可能性がある。
【0026】
[0027]この反応は、蒸気相フッ素化反応のために好適な任意の反応器内で行うことができる。反応器は、ハステロイ、インコネル、モネルのようなフッ化水素及び触媒の腐食作用に抵抗性の材料から構成することができる。蒸気相プロセスの場合においては、反応器に蒸気相フッ素化触媒を充填する。当該技術において公知の任意のフッ素化触媒をこのプロセスにおいて用いることができる。好適な触媒としては、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、及び鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、その無機塩、及びこれらの混合物(これらはいずれも場合によってはハロゲン化されていてもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のために好適な触媒の組合せとしては、非排他的にCr、FeCl/炭素、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、及これらの混合物が挙げられる。酸化クロム/酸化アルミニウム触媒は、米国特許5,155,082(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。結晶質酸化クロム又はアモルファス酸化クロムのようなクロム(III)酸化物が好ましく、アモルファス酸化クロムが最も好ましい。酸化クロム(Cr)は商業的に入手可能な材料であり、種々の粒径で購入することができる。少なくとも98%の純度を有するフッ素化触媒が好ましい。フッ素化触媒は、過剰であるが、少なくとも反応を推進するのに十分な量で存在させる。
【0027】
[0028]反応のこの第1工程は、必ずしも蒸気相反応に限定されず、米国公開特許出願20070197842(その内容を参照として本明細書中に包含する)において開示されているもののような液相反応又は液相と蒸気相の組み合わせを用いて行うこともできる。また、反応は、バッチ式、連続式、又はこれらの組み合わせで行うことができるとも意図される。反応が液相反応を含む態様に関しては、反応は接触反応又は非接触反応であってよい。ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化鉄、及びこれらの2以上の組み合わせなどの金属ハロゲン化物触媒のようなルイス酸触媒を用いることができる。幾つかの態様においては、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TiCl、FeCl、及びこれらの2以上の組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の金属塩化物及び金属フッ化物を用いる。
【0028】
[0029]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを形成するためのプロセスの第2工程においては、HCFO−1233xfをHCFC−244bbに転化させる。一態様においては、この工程は、液相反応器(これはTFE又はPFAライニングしていてよい)内において液相中で行うことができる。かかるプロセスは、約70〜120℃の温度範囲及び約50〜120psigにおいて行うことができる。
【0029】
[0030]任意の液相フッ素化触媒を本発明において用いることができる。非包括的なリストとしては、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、第IVb族金属ハロゲン化物、第Vb族金属ハロゲン化物、又はこれらの組み合わせが挙げられる。液相フッ素化触媒の非排他的な例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化ハロゲン化クロム、フッ素化酸化クロム、又はこれらの組み合わせである。液相フッ素化触媒の非排他的な具体例は、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TaCl、TiCl、NbCl、MoCl、FeCl、SbClのフッ素化種、SbClのフッ素化種、SnClのフッ素化種、TaClのフッ素化種、TiClのフッ素化種、NbClのフッ素化種、MoClのフッ素化種、FeClのフッ素化種、又はこれらの組み合わせである。五塩化アンチモンが最も好ましい。
【0030】
[0031]これらの触媒は、失活してきたら、当該技術において公知の任意の手段によって容易に再生することができる。触媒を再生する1つの好適な方法は、触媒を通して塩素流を流すことを含む。例えば、液相フッ素化触媒1ポンドあたり約0.002〜約0.2ポンド/時の塩素を液相反応に加えることができる。これは、例えば約65℃〜約100℃の温度において約1〜約2時間又は連続的に行うことができる。
【0031】
[0032]反応のこの第2工程は、必ずしも液相反応に限定されず、米国公開特許出願20070197842(その内容を参照として本明細書中に包含する)において開示されているもののような蒸気相反応又は液相と蒸気相の組み合わせを用いて行うこともできる。この目的のために、HCFO−1233xfを含む供給流を約50℃〜約400℃の温度に予め加熱して、触媒及びフッ素化剤と接触させる。触媒にはかかる反応のために用いられる標準的な蒸気相試薬を含ませることができ、フッ素化剤としては、フッ化水素など(しかしながらこれに限定されない)の当該技術において一般的に知られているものを挙げることができる。
【0032】
[0033]HFO−1234yf製造の第3工程においては、HCFC−244bbを第2の蒸気相反応器(脱塩化水素化反応器)に供給し、脱塩化水素化して所望の生成物の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を生成させる。この反応器には、HCFC−244bbを接触脱塩化水素化してHFO−1234yfを生成させることができる触媒を含ませる。
【0033】
[0034]触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又は0の酸化状態)の金属又は金属合金、或いはバルク若しくは担持形態の活性炭であってよい。金属ハロゲン化物又は金属酸化物触媒としては、一価、二価、及び三価金属のハロゲン化物、酸化物、並びにこれらの混合物/組み合わせ、より好ましくは一価及び二価金属のハロゲン化物、及びこれらの混合物/組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。構成成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsが挙げられるが、これらに限定されない。構成成分のハロゲンとしては、F、Cl、Br、及びIが挙げられるが、これらに限定されない。有用な一価又は二価金属のハロゲン化物の例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理としては、従来技術において公知の任意のもの、特にハロゲン化源としてHF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HI、及びIを用いるものを挙げることができる。
【0034】
[0035]中性、即ち0価の金属、金属合金、及びこれらの混合物を用いる場合には、有用な金属としては、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は担持又は非担持であってよい。金属合金の有用な例としては、SS316、モネル400、インコネル825、インコネル600、インコネル625が挙げられるが、これらに限定されない。かかる触媒は、別個の担持又は非担持成分としてか、及び/又は反応器及び/又は反応器壁の一部として与えることができる。
【0035】
[0036]好ましいが非限定的な触媒としては、活性炭、ステンレススチール(例えばSS316)、オーステナイトニッケルベースの合金(例えばインコネル625)、ニッケル、フッ素化10%CsCl/MgO、及び10%CsCl/MgFが挙げられる。好適な反応温度は約300〜550℃であり、好適な反応圧力は約0〜150psigの間であってよい。反応器流出流は苛性スクラバー又は蒸留カラムに供給し、HClの副生成物を除去して酸を含まない有機生成物を生成させることができ、これは場合によっては当該技術において公知の精製技術の1つ又は任意の組み合わせを用いて更なる精製にかけることができる。
【0036】
[0037]反応は、約200℃〜約800℃、約300℃〜約600℃、又は約400℃〜約500℃の温度範囲において行うことができる。好適な反応器圧力は、約0psig〜約200psig、約10psig〜約100psig、又は約20〜約70psigの範囲である。
【0037】
[0038]蒸気相HCFC−244bb脱塩化水素化においては、US−20090240090(その内容を参照として本明細書中に包含する)に記載のようにHCFO−1233xfのフッ化水素化から形成することができるHCFC−244bb供給材料を気化器に連続的に供給し、気化した供給材料を反応器に供給する。HCFO−1233xfの不完全な転化、及びその沸点がHCFC−244bbと近接していること、並びに幾つかの条件下においてはHCFC−244bb及びHCFO−1233xfの共沸混合物又は共沸混合物様の組成物が形成されることのために、これらの2つの化合物の分離は困難である。この理由のために、HCFC−244bb供給材料は一般にある程度の量のHCFO−1233xfを含む。脱塩化水素化反応は、約5%以上、約20%以上、又は約30%以上のHCFC−244bbの転化率を達成する条件下で行うことができる。反応は、約200℃〜約800℃、約300℃〜約600℃、又は約400℃〜約500℃の範囲の温度で行うことができ;反応器圧力は、約0psig〜約200psig、約10psig〜約100psig、又は約20〜約70psigの範囲であってよい。
【0038】
[0039]一般に、脱塩化水素化反応器からの流出流は、処理して所望の分離度及び/又は他の処理度を達成することができる。生成するHFO−1234yfに加えて、流出流は、一般に、HCl、未転化のHCFC−244bb、及びHCFO−1233xf(主としてHCFO−1233xfのフッ化水素化の前段の工程から繰り越される)を含む。場合によっては、次に脱塩化水素化反応の結果物からHClを回収する。HClの回収は通常の蒸留によって行い、それを留出物から除去する。或いは、HClは、水又は苛性スクラバーを用いることによって回収又は除去することができる。水抽出器を用いる場合には、HClは水溶液として除去される。苛性溶液を用いる場合には、HClは水溶液中の塩化物塩として系から除去される。HClを回収又は除去した後、有機流を分離のために蒸留カラムに送ることができる。カラムの塔頂から回収されるHFO−1234yfは更なる精製のために他のカラムに送ることができ、一方、リボイラー内に蓄積されるHCFO−1233xf及びHCFC−244bbの混合物のフラクションは、HCFC−244bbの再循環のために脱塩化水素化反応器に戻すことができ、残りはHCFO−1233xfの再循環のためにHCFO−1233xfフッ化水素化反応器に戻すことができる。
【0039】
[0040]本出願人らは、驚くべきことに、HCFC−244bbを脱塩化水素化してHFO−1234yfを形成する間において、反応器内に不純物が存在すると、HFO−1234yfへの選択率が減少し、望ましくない副生成物であるHCFO−1233xfへの選択率が増加することを発見した。本出願人らは更に、この不純物はまた触媒の失活も増加させて、それによって転化率の減少を引き起こす可能性があることを発見した。理論に縛られることは意図しないが、NiX(X=F又はCl)、CrX、FeX、MoX、NbX、CoXなどのような金属ハロゲン化物が、反応器の金属成分(例えばインコネル625)のハロゲン化によって付随的に形成され、及び反応器内に存在する有機化合物の熱分解によって炭素質物質が形成されると考えられる。これらの金属ハロゲン化物、特に三価金属のハロゲン化物は、HCFC−244bbをHCFO−1233xfへ転化させる脱フッ化水素化触媒として作用する。他の形態においては、金属ハロゲン化物及び/又は炭素質物質は、HCFC−244bbをHFO−1234yfに転化させる触媒的に活性な金属部位をブロックする。本発明は、反応器内の不純物の含量を減少させ、それによりHFO−1234yf選択率を向上させ、同様にHCFO−1233xfの形成を減少させることによってこの問題に対する解決策を与える。
【0040】
[0041]この目的のために、反応器が不純物を実質的に含まないように反応器内の不純物を除去する。本明細書において用いる「不純物」という用語は、(1)HCFC−244bbのHFO−1234yfへの選択率を減少させ、(2)HFO−1234yfからHCFC−1233xfへの選択率の逆転を増加させ、及び/又は(3)HCC−244bbのHFO−1234yfへの転化率を減少させる任意の化合物又は複数の化合物の組み合わせを包含する。かかる不純物としては、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び炭素質物質を挙げることができるが、これらに限定されない。本明細書において用いる「実質的に含まない」という規定は、反応器内の不純物の量が減少して、HCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化の選択率が適度に向上し、HCFC−244bbのHCFO−1233xfへの転化の選択率が減少し、及び/又はHCFC−244bbのHFO−1234yfへの転化率が増加することを意味する。「実質的に含まない」という規定は本明細書において定義するようなものであってよいが、一形態においては、不純物を除去することによって、HCFC−244bbのHFO−1234yfへの選択率が、少なくとも90%又はそれ以上、95%又はそれ以上、或いは97%又はそれ以上、或いは99%又はそれ以上、或いは99.5%又はそれ以上に向上する。選択率は、形成される生成物(HFO−1234yf)のモル数を消費された反応物質のモル数で割ることによるか、或いは当該技術において公知の標準的な方法を用いて計算することができる。
【0041】
[0042]反応器から不純物を除去する工程は、かかる不純物、特に本明細書に規定する不純物を除去するための任意の方法を用いて行うことができる。一態様においては、これは、金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することによって行うことができる。かかる還元剤としては、H、NH、CO、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。この還元工程は、純粋か又は希釈した還元剤、例えば水素中で、約100℃〜約700℃、約200℃〜約600℃、約300℃〜約500℃、又は約400℃〜約500℃の温度範囲において行うことができる。好適な希釈剤としては、N、Ar、及びHeのような不活性ガスが挙げられる。希釈した還元剤を用いる場合には、希釈は、実用的に可能な限り高く、例えば還元剤の約0.1体積%であってよい。好ましい態様においては、希釈後の還元剤の濃度は、約0.5〜約20体積%、好ましくは約1〜約5体積%、より好ましくは約2〜約2.5体積%の範囲である。
【0042】
[0043]反応器から不純物を除去する他の方法は、反応器内の炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入することによって行うことができる。酸化剤には、例えば、HO、CO、O(酸素)、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせを含ませることができるが、これらに限定されない。この酸化工程は、純粋か又は希釈した酸化剤、例えば酸素中で、約100℃〜約700℃、約200℃〜約600℃、約300℃〜約500℃、又は約400℃〜約500℃の温度範囲において行うことができる。希釈した酸化剤を用いる場合には、希釈は、実用的に可能な限り高く、例えば酸化剤の約0.1体積%であってよい。好ましい態様においては、希釈後の酸化剤の濃度は、約0.5〜約21体積%、好ましくは約1〜約5体積%、より好ましくは約2〜約3体積%の範囲である。他の好ましい態様においては、酸素源として空気を用い、希釈した空気を用いる。更に他の好ましい態様においては、水蒸気−空気デコーキングプロセスにおいて水蒸気と一緒に空気を用い、ここでは、空気は炭素質物質を燃焼除去するために用い、水蒸気は燃焼温度を低く維持して最高許容温度を超えないようにするために用いる。この工程は、独立してか、又は本発明における任意の別の方法と合わせて用いることができる。幾つかの態様においては、酸化剤を用いて不純物を除去した後に、上記の教示にしたがって反応器を還元剤で処理する。
【0043】
[0044]更に他の態様においては、反応器から不純物を除去する工程は、反応器から炭素質物質及び金属ハロゲン化物を物理的に除去することによって行うことができる。この物理的除去工程としては、例えば電気的研磨及び機械的研磨を挙げることができる。他の例においては、これらの不純物の堆積物は、高い流速の水又は水蒸気で洗い流すことができる。ここでも、この工程は、独立してか、又は本発明における任意の別の方法と合わせて行うことができる。
【0044】
[0045]幾つかの非限定的な態様においては、不純物を除去するプロセスにおいて用いる具体的な工程は、選択率又は触媒活性のいずれかを向上させることを目的とすることができる。例えば、選択率を向上させ、選択率の逆転を阻止することに関しては、還元工程は、反応器壁から不純物を実質的に除去する目的で行うことができる。触媒活性に関しては、これは酸化処理、次に還元処理によって回収又は再生することができる。或いは、研磨処理によって選択率又は触媒活性のいずれかを向上させることができる。
【0045】
[0046]本発明方法は、予め設定されているか又は他の形態で決定されたレベルの選択率を検出した時点、例えばHFO−1234yf又はHCFO−1233xfの望ましくない選択率に達した時点で用いることができる。一態様においては、本発明は、本明細書に記載されているように、(a)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させる反応を行い、この反応は反応器内で行い、この反応は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの第1の選択率を有し、第1の選択率は、一態様においては本明細書に記載するように少なくとも90%又はそれ以上であり;(b)反応を進行させながら2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率を検出し、例えば、第2の選択率は第1の選択率よりも低く、これとしては限定なしに商業的目的のために望ましくない選択率が挙げられ、選択率は、一態様においては90%より低く、例えば約50%以下であり;(c)反応を停止し;(d)反応器が不純物を実質的に含まないように反応器から不純物を除去し、この点に関する不純物の除去としては、本明細書に記載するように(i)還元剤を導入すること、(ii)酸化剤を導入すること、又は(iii)機械的除去によるか、或いは(i)、(ii)、又は(iii)の組み合わせによる除去が挙げられる;ことを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する選択率を向上させる方法に関する。一態様におおいては、不純物の除去は、不純物を還元するのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入し;そして(e)不純物除去工程の後に反応を再び開始する;ことによる。この点に関する一態様においては、再び開始した反応は検出される2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率を有し、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率よりも高く;この点に関する1つの実施においては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率は第1の選択率と実質的に同等である。この態様の1つの実施においては、この方法は、工程(c)の後であって還元剤を導入する前に、不純物を酸化するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入することを更に含む。この態様の他の実施においては、この方法は、不純物を酸化した後であって還元剤を導入する前に、反応器を不活性ガスでパージすることを更に含む。この態様の他の実施においては、還元の前又は後、及び/又はパージの前又は後、及び/又は酸化の前又は後に、不純物の物理的除去、例えば研磨及び液圧方法などを行うことができる。
【0046】
[0047]以下は本発明の実施例であり、限定としては解釈されない。
【実施例】
【0047】
[0048]実施例1:
[0049]本実施例は、HCFC−244bbの蒸気相脱塩化水素化反応中においてHFO−1234yfからHCFO−1233xfへの選択率の逆転が起こることを示す。3区域電気炉中に浸漬した直径3/4インチの円筒形のインコネル625反応器を用いた。反応器の内部に配置した多点式熱電対を用いてプロセス温度を記録した。インコネル625反応器の内壁は脱塩化水素化触媒として作用する。99.4GC面積%のHCFC−244bb、及び0.4GC面積%のHCFO−1233xfを含む供給材料を垂直に設置した反応器の底部中に供給し、反応区域に到達する前に気化させた。反応は、450℃、0及び25psig、並びに12g−有機物質/時の条件下で行った。流出ガスをガスサンプリングチューブに通し、ガスサンプリングチューブの内容物のGC分析によって反応の進行を一定時間毎に観察した。図1及び図2に示すように、450℃及び約25psigにおいて約20時間の運転の後に、HCFC−244bbの転化率は当初の約30%からほぼ100%に劇的に増加し、一方、HFO−1234yfの選択率は当初の約99.5%から10%より低い値に劇的に減少し(同時に、HCFO−1233xf選択率は0.5%より低い値から90%より高い値に増加した)、これはHFO−1234yfからHCFO−1233xfへの選択率の逆転が起こったことを示す。この後は、HCFO−1233xfへの選択率は降下しはじめたが、実験の終了時において約50%に留まった。
【0048】
[0050]実施例2:
[0051]本実施例は実施例1の続きである。HFO−1234yfからHCFO−1233xfへの選択率の逆転が起こった後、反応器を水素流(200mL/分)中において480℃で2時間還元し、次にHCFC−244bb脱塩化水素化の反応を再び開始した。図3に示すように、還元処理後においては、HFO−1234yfへの選択率はほぼ100%であり、HCFC−244の転化率は40%より高かった。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)反応器が不純物を実質的に含まないように反応器から不純物を除去し;
(b)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させるのに有効な条件下で2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む出発組成物を反応器内に供給する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[2]
反応器内の不純物が、金属ハロゲン化物、金属酸化物、及び炭素質物質からなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[3]
金属ハロゲン化物が、Ni、Cr、Fe、Mo、Nb、Cu、及びCoのハロゲン化物を含む、[2]に記載の方法。
[4]
反応器から不純物を除去する工程が、金属ハロゲン化物又は金属酸化物を金属に転化させるのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することを含む、[2]に記載の方法。
[5]
還元剤が、H、NH、CO、C〜C12炭化水素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、[4]に記載の方法。
[6]
反応器から不純物を除去する工程が、反応器内の炭素質物質を燃焼除去するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入することを含む、[2]に記載の方法。
[7]
酸化剤が、HO、CO、O、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[8]
酸化剤が酸素を含む、[7]に記載の方法。
[9]
反応器から不純物を除去する工程が、炭素質物質、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を反応器から物理的に除去することを含む、[2]に記載の方法。
[10]
炭素質物質、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を反応器から物理的に除去する工程が、電気的研磨、機械的研磨、液圧方法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[9]に記載の方法。
[11]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも90%又はそれ以上である、[1]に記載の方法。
[12]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも95%又はそれ以上である、[1]に記載の方法。
[13]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも97%又はそれ以上である、[1]に記載の方法。
[14]
(a)不純物を実質的に含まない反応器内に、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む出発組成物を供給し;
(b)反応器内において、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させるのに有効な条件下で出発組成物を接触させる;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[15]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも90%又はそれ以上である、[16]に記載の方法。
[16]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも95%又はそれ以上である、[16]に記載の方法。
[17]
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの選択率が少なくとも97%又はそれ以上である、[16]に記載の方法。
[18]
(a)式I、II、又はIII:
CX=CCl−CHX (I);
CX−CCl=CH (II);又は
CX−CHCl−CHX (III)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(b)出発組成物を第1のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第1の中間体組成物を生成させ;
(c)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;
(d)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させ、ここで、脱塩化水素化工程は不純物を実質的に含まない反応器内で行う;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[19]
(a)2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させる反応を行い、この反応は反応器内で行い、この反応は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第1の選択率を有し;
(b)反応を進行させながら2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率を検出し;
(c)反応を停止し;
(d)不純物を還元するのに有効な条件下で還元剤を反応器中に導入することによって、反応器が不純物を実質的に含まないように反応器から不純物を除去し;そして
(e)反応を再び開始する;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[20]
工程(c)の後で還元剤を導入する前に、不純物を酸化するのに有効な条件下で酸化剤を反応器中に導入することを更に含む、[21]に記載の方法。
[21]
不純物を酸化した後で還元剤を導入する前に、反応器を不活性ガスでパージすることを更に含む、[22]に記載の方法。
[24]
再び開始した反応が2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率を有し、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第3の選択率が2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに関する第2の選択率よりも大きい、[21]に記載の方法。
[25]
酸化剤が、HO、CO、O、空気、O、Cl、NO、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[21]に記載の方法。
[26]
還元剤が、H、NH、CO、C〜C12炭化水素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[21]に記載の方法。
図1
図2
図3