(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223350
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】ヒドロフルオロオレフィンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20171023BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20171023BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C21/18
!C07B61/00 300
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-542333(P2014-542333)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-501800(P2015-501800A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】US2012063649
(87)【国際公開番号】WO2013074324
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】13/297,557
(32)【優先日】2011年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マハー・ワイ・エルシェイク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ボネット
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビン・チェン
【審査官】
奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−524026(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0160497(US,A1)
【文献】
特表2013−510148(JP,A)
【文献】
特表2013−523734(JP,A)
【文献】
特表2010−534680(JP,A)
【文献】
特開2009−227675(JP,A)
【文献】
特表2001−526624(JP,A)
【文献】
特表2010−531895(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0155942(US,A1)
【文献】
特表2011−525925(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/059493(WO,A1)
【文献】
特開昭60−036429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/20
C07C 21/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2−テトラフルオロプロペンを製造するための方法であって、
a)テトラクロロプロペンをフッ素化させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及びHCl及び第一の共反応生成物を生成させる工程、及びその後の、
b)前記2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペンを、気相中で、担持クロム触媒、非担持クロム触媒、及びそれらの混合物(前記クロム触媒は、任意に、ニッケル、コバルト及びマグネシウムからなる群から選択される助触媒をさらに含む)からなる群から選択される触媒の存在下に、フッ素化させて、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン及び第二の共反応生成物を生成させる工程、
を含み、テトラクロロプロペンをフッ素化させる前記工程を、均一系触媒の存在下、液相で実施する方法。
【請求項2】
前記均一系フッ素化反応触媒が、SbCl5、TiCl4、SnCl4からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペンをフッ素化させるより前に、前記2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペン及びHCl及び第一の共反応生成物からHClを分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の共反応生成物が、ペンタフルオロプロパン及びクロロテトラフルオロプロパンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペンタフルオロプロパンが、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンを含み、前記クロロテトラフルオロプロパンが1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1,1,1,2−テトラフルオロプロペンから、前記第二の共反応生成物を分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分離された第二の共反応生成物を工程bにリサイクルさせる工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の共反応生成物が、ペンタフルオロプロパン及びクロロテトラフルオロプロパンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ペンタフルオロプロパンが、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンを含み、前記クロロテトラフルオロプロパンが1,1,1,2−テトラフルオロ−2−クロロプロパンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
テトラクロロプロペン対フッ化水素の比率が、(1:3)から(1:500)までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
テトラクロロプロペン対フッ化水素の比率が、(1:10)から(1:200)までの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
気相中で、触媒の存在下に前記2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペンをフッ素化させる前記工程が、前記2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペンをフッ化水素と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記担持クロム触媒、非担持クロム触媒、及びそれらの混合物が使用前に活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、200℃〜400℃の間の温度で、まずHFと接触させ、次いで空気と接触させる2工程のプロセスにおいて活性化されて、CrOmFn(ここで、1.5<m<3及び0<n<3)の式の触媒が製造される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸触媒の存在下に1,1,1,2−テトラクロロプロペンを異性化させて、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記テトラクロロプロペンが、1種又は複数のペンタクロロプロパン類の脱塩化水素反応により調製される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロフルオロプロペンを製造するための方法に関する。より詳しくは、本発明は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCC−1230xa)、及び/又はその異性体の1,1,1,2−テトラクロロプロペン(HCC−1230xf)から、ヒドロフルオロプロペンの1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を製造するための方法に関する。その方法のための出発物質は、(1種又は複数の)テトラクロロプロペンそのもの、又はそれらの前駆体物質例えば、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240db)、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240aa)及び/又は1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン(HCC−240ab)とすることができる。その方法には2段の工程が含まれるが、その第一の工程は、中間反応生成物のヒドロクロロフルオロプロペンである、1,1,1−トリフルオロ−2−クロロプロペン(HCFO−1233xf)を生成させるための、均一系若しくは不均一系触媒の存在下又は非存在下における液相若しくは気相のフッ素化反応であり、それに続くのが、所望の反応生成物の1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)及び共反応生成物、主として1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)を生成させるための、その1,1,1−トリフルオロ−2−クロロプロペン(HCFO−1233xf)の気相フッ素化触媒反応を含む第二の工程である。その共反応生成物は、第二の、気相反応にリサイクルして戻すことができる。その第二の工程の触媒は、好ましくは、担持若しくは非担持のクロムベースの触媒例えばCrO
mF
n(ここで、1.5<m<3、及び0<n<3)である。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の保護のためのMontreal Protocol(1987年10月採択)は,クロロフルオロカーボン(CFC)使用の段階的廃止を義務づけている。オゾン層に対してより「優しい」物質、例えばヒドロフルオロカーボン(HFC)例えば、HFC−134aがクロロフルオロカーボンの代替え物となった。後者の化合物は、温室効果ガスであって、地球温暖化の原因となることが証明されており、Kyoto Protocol on Climate Changeによって規制されることとなった。浮かび上がってきた代替え物質のヒドロフルオロプロペンは環境的に受容される、すなわちオゾン層破壊係数(ODP)がゼロで、かつ受容可能な低い地球温暖化係数(GWP)を有していることが示された。本発明は、ヒドロフルオロオレフィン例えば、ヒドロフルオロプロペン及び/又はヒドロクロロフルオロオレフィンを製造するための方法を目的としている。本発明の方法は、気相若しくは液相のフッ素化反応と、それに続く、所望のフルオロオレフィンを製造するための触媒的気相フッ素化反応との2工程反応プロセスに基づいている。
【0003】
ヒドロフルオロアルケンを調製するための方法は公知である。例えば、国際公開第2007/079431号パンフレットには、ヒドロフルオロプロペンも含めた、フッ素化オレフィンを製造するための方法が開示されている。単一反応又は2段以上の反応として広く記載されているそれらの方法には、式C(X)
mCCl(Y)
nC(X)
mの化合物をフッ素化反応させて、式CF
3CF=CHZ(ここで、X、Y及びZは独立して、H、F、Cl、I又はBrであり、それぞれのmは独立して、1、2、又は3、そしてnは、0又は1である)の少なくとも1種の化合物とすることが含まれている。それらの実施例及び好ましい実施態様には、例えば、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)のフィード原料を、気相触媒反応でフッ素化させて、2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペン(HCFO−1233xf)のような化合物を生成させる反応シーケンスのような多段プロセスが開示されている。次いでその2−クロロ−3,3,3−トリ−フルオロプロペンを、液相触媒反応によって、2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)に転換させる。それに続けて、気相触媒反応でその2−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を脱塩化水素反応させることによって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、「フィード原料」例えば、テトラクロロプロペンの1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa)及び/又は1,1,1,2−テトラクロロプロペン(HCO−1230xf)、又はテトラクロロプロペンの前駆体である、ペンタクロロプロパンのHCC−240db、HCC−240aa及び/又はHCC−240abから、ヒドロフルオロプロペンの1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を製造するための方法を提供する。本発明の方法には、次の工程が含まれる:
a)テトラクロロプロペン(これは、ペンタクロロプロパンの気相フッ素化反応で生成させることができる)を、均一系若しくは不均一系触媒の存在下又は非存在下において液相若しくは気相のフッ素化反応させることによって、中間反応生成物のHCFO−1233xfを生成させる工程、及びそれに続く、
b)その中間体HCFO−1233xfを気相、触媒的フッ素化反応させて、ヒドロフルオロプロペン反応生成物である、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を生成させる工程。その反応シーケンスは、次のように要約することができる:
【化1】
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の第一の工程は、ヒドロクロロプロペン例えば、HCO−1230xa又はHCO−1230xfを、均一系若しくは不均一系触媒から選択される触媒の不在下若しくは存在下に液相若しくは気相のフッ素化反応させて、ヒドロクロロフルオロプロペン、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を生成させることに関する。そのヒドロクロロプロペンは、ヒドロクロロプロパン例えば、HCC−240db、HCC−240aa、又はHCC−240abを気相フッ素化反応させることによって、生成させることができる。ヒドロクロロプロパンのフッ素化反応は、独立した工程とすることもできるし、或いはヒドロクロロプロペンの気相フッ素化反応と共にその場で起こさせることもできる。
【0006】
スキーム1に示したように、HCO−1230xfを酸触媒の存在下に異性化させて、HCO−1230xaを製造することもできる。
【化2】
【0007】
スキーム2に示したように、HCO−1230xa、又はその異性体のHCO−1230xfは、ヒドロクロロカーボン例えば、HCC−240db、HCC−240aa及び/又はHCC−240abを加熱脱塩化水素反応させることによって得ることができる。
【化3】
【0008】
一つの実施態様においては、本発明の方法の第一の工程には、好ましくは触媒を使用しない、テトラクロロプロペンとHFとの液相フッ素化反応が含まれる。HF対テトラクロロプロペンのモル比は、好ましくは、約(3:1)から約(500:1)まで、より好ましくは約(10:1)から約(200:1)までである。その反応温度は、約20℃〜約400℃、好ましくは約100℃〜約350℃で変化させることができる。操作圧力は、約10〜約900psia、好ましくはほぼ大気圧〜約700psiaとすることができる。滞留時間は、通常で約1/4〜24時間、好ましくは約1/2時間〜約2時間である。各種の未反応のフィード原料は、所望の反応生成物からは、それらの沸点の差が大きいので、容易に分離することができる。その反応容器は、HFに耐えられる材料、例えば316Lステンレス鋼、INCONEL(登録商標)又はHASTELLOY(登録商標)などで構成されているのが好ましい。その反応は、連続プロセス又はバッチプロセスで実施することができる。
【0009】
この反応の主な副反応生成物は塩化水素(HCl)であるが、これは当業者には周知の慣用される手段、例えば吸収法又は蒸留法によって除去すればよい。HClを除去した後では、その反応生成物ストリームには、所望のヒドロクロロフルオロプロペン反応生成物、HCFC−1233xfが含まれると共に、共反応生成物及び未反応の出発物質、非限定的に挙げれば例えば、HF、ペンタフルオロプロパン例えば、245cb及びクロロテトラフルオロプロパン例えば244bbなどが含まれている可能性がある。共反応生成物の分離の有無に関わらず、このストリームが、第二の反応工程へのフィードストリームを与える。
【0010】
任意選択により、第一の工程の液相フッ素化反応を、触媒の存在下に実施することもできる。その触媒は、例えばSbCl
5、TiCl
4、及びSnCl
4のような触媒から選択した、均一系フッ素化反応触媒とすることができる。使用する、均一系フッ素化反応触媒のレベルは、存在している有機物の0.1〜10mole%の間で変化させることができる。その均一系フッ素化反応触媒は、まずHFを用いて活性化させ、その際HCl共反応生成物は排気する。この活性化プロセスは、室温〜200℃の間、好ましくは室温〜100℃の間で変化させた温度で実施することができる。液相フッ素化反応は、連続的に実施することも、或いはバッチ条件を使用して実施することも可能である。アンチモン触媒を使用する場合には、約1〜10mole%の間で変化させた低レベルの塩素ガスを用いて、触媒寿命を長引かせることができる。
【0011】
また別な実施態様においては、その第一の工程を、気相で実施し、不均一系触媒を使用する。この触媒は、担持若しくは非担持のクロムベースの触媒から選択することができる。ニッケル、亜鉛、コバルト、又はマグネシウムの群から選択される助触媒を使用することができる。その助触媒のレベルは、触媒の1〜50重量%の間、好ましくは5〜10重量%の間で変化させることができる。助触媒の組み入れは、例えば、水溶液又は非水溶液からの吸着、助触媒と触媒との均質な物理的混合、又は水溶液又は非水溶液からの共沈など、当業者に公知の方法で実施することができる。担持触媒を使用する場合には、その担体は、活性炭、グラファイト、フッ素化グラファイト、アルミナ、フッ素化アルミナ、クロミア、フッ素化クロミア、マグネシア、及びフッ素化マグネシアの群から選択することができる。担持触媒は、当業者公知の方法例えば、水溶液又は非水溶液からの吸着、水溶液又は非水溶液からの共沈、又は担体と触媒/助触媒の混合物との混合によって調製することができる。
【0012】
第一の工程においてクロムベースの触媒例えばCr
2O
3を使用する場合には、それを、共キャリヤー例えば窒素又は空気の存在下又は非存在下にHF活性化にかける。典型的な活性化プロセスにおいては、第一の工程において、その触媒を、キャリヤーガス例えば窒素の存在下に、100℃〜200℃の間の温度で乾燥させる。乾燥させてから、キャリヤーガス例えば窒素又は空気の存在下に、HFを用いてその触媒を活性化させる。典型的には、そのHF活性化工程は、窒素又は空気の混合物の中に希釈したHFの混合物を使用して約100℃で開始し、徐々に温度を上げていって、触媒床の温度が400℃未満で維持できるようにする。次いで、空気又は窒素の希釈剤を徐々に少なくする。次いでその反応器の圧力をほぼ所望の反応圧力、例えば10〜900psiaにまで上げ、さらに18時間、純HFを徐々に加えていく。そのHF活性化工程に続けて、空気を用いた第二の活性化工程を実施するが、そこでは、触媒を、乾燥空気のストリーム中で約300℃〜400℃、好ましくは330℃〜360℃の間で約24時間加熱する。そうして得られる、HFと空気とで活性化させた触媒は、好ましくはおよそCrO
mF
n(ここで、1.5<m<3及び0<n<3)の組成を有する。その活性化された触媒は、好ましくは約35〜40重量%のフッ素含量を有し、表面積が10〜100m
2/gの間であり、細孔容積が0.1〜1m
3/gの間であり、摩耗%が好ましくは約1〜5%の間であり、そして破砕強度が約20〜100psiである。
【0013】
また別の実施態様においては、そのプロセスの第一の工程には、好ましくは触媒を使用しない、テトラクロロプロペンとHFとの気相フッ素化反応を含むことができる。触媒使用及び不使用の気相フッ素化反応のためのプロセス条件は、先に述べた液相工程と類似、すなわち、操作温度を100℃〜500℃の間、好ましくは200℃〜450℃の間で変化させることができる。1〜100秒の間、好ましくは5〜20秒の間の接触時間を使用するのが有利である。そのプロセスにおいてHClが共反応生成物として生成するので、10〜1000psiの間、最も好ましくは大気圧〜400psiの間の圧力でそのプロセスを運転するのが好ましい。例えば空気のような酸素含有ガスを共フィードして、炭素質の析出物を除去することによって触媒寿命を延ばし、プロセスのシャットダウンの必要性を最小とするのが好ましい。HF対有機物質のモル比は、(1:1)から(100:1)の間で変化させることが可能であるが、HF:有機物質のモル比を、(5:1)から(40:1)の間とするのが好ましい。
【0014】
本発明のテトラクロロプロペン出発物質である、HCO−1230xa又はHCO−1230xfは、ペンタクロロプロパン例えば、HCC−240db、HCC−240aa及び/又はHCC−2240abを、気相中、触媒の存在下に気相脱塩化水素反応させることによって、調製することができる。その触媒が、担持若しくは非担持のCr
3ベースの触媒であるのが好ましい。その触媒が、先に述べたようにして活性化されていれば好ましい。ニッケル、亜鉛、及びマグネシウムの群から選択される助触媒を使用すればよい。操作温度は、200〜500Cの間で変化させることができるが、200〜400Cの間とするのが好ましい。操作圧力は、100〜1000psiの間変化させることができるが、200〜400psiの間とするのが好ましい。HF対有機物フィードのモル比は、好ましくは(5:1)から(40:1)までの間が好ましく、接触時間は、10〜100秒の間である。触媒の不活性化なしに長期間プロセスを運転するためには、1〜10容積%の間の酸素対有機物フィードのモル比を使用するのが有利である。その酸素は、純酸素として、又は空気若しくは酸素と窒素との混合物のような酸素含有ガスとしてフィードすることができる。
【0015】
本発明の第二の反応工程は、第一の反応工程からのヒドロクロロフルオロプロペンのHCFO−1233xfを気相、触媒的フッ素化反応させて、ヒドロフルオロプロペンの1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)及び共反応生成物、主としてHCC−245cbを生成させることに関する。第二の工程の反応シーケンスは次のようにまとめることができる:
【化4】
【0016】
その第二の工程には、ヒドロクロロフルオロプロペンのHFO−1233xfをHFと、ヒドロフルオロオレフィンの1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)が製造されるに十分な条件下で接触させることが含まれる。HF:ヒドロクロロフルオロプロペンのモル比は、典型的には約(0.5:1)から(40:1)までであるが、転化率を向上させるためには少なくとも約(1:1)であるのが好ましく、そして過剰のHF(下流で回収される)のレベルを低くするためには、約(10:1)以下であるのが好ましい。典型的には約250℃〜約600℃の温度が使用されるが、約300℃〜約500℃が好ましい。典型的にはほぼ大気圧〜約400psiの圧力であるが、約50〜200psiが好ましい。そのプロセスは、1〜100秒の間の接触時間で、酸素又は酸素含有ガス例えば空気の存在下、1233xfフィードを基準にして1〜200容積%の酸素を使用して実施するのが好ましい。生成する例えば245cb及び/又は244bbのような共反応生成物はリサイクルさせることができる。
【0017】
各種のフッ素化反応触媒例えば、クロム−ベースの触媒を使用することができるが、そのクロム−ベースの触媒は、非担持タイプであっても担持タイプであってもよい。担持タイプの場合には、その担体は、フッ素化アルミナ、活性炭などから選択される。クロム触媒は単独で使用するか、又は亜鉛、マグネシウム、コバルト、又はニッケルのような助触媒の存在下に使用する。3種の好ましいクロム触媒は、純酸化クロム、助触媒としての亜鉛を含むクロム/亜鉛、ニッケル助触媒を含むクロム/ニッケル、及びフッ素化アルミナに担持させたクロム/ニッケルである。これら後者の触媒の調製法は、例えば米国特許第5,731,481号明細書に開示されている。クロム−ベースの触媒は、先に述べた2工程操作において、使用前に活性化しておくのが好ましい。
【0018】
第二のフッ素化反応工程の反応生成物には、所望のヒドロフルオロプロペンに加えて、幾分かの未反応のヒドロクロロフルオロプロペン(HCFC−1233xf)、ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、及びモノクロロテトラフルロロパン(HCFC−244bb)が含まれるであろう。それらの副反応生成物は、一連の2本以上の分離カラムで、所望のヒドロフルオロプロペンから分離することが可能であり、主たる副反応生成物のHFC−245cbは、第二の気相フッ素化反応にリサイクルさせるか、又は別の気相反応器の中で第二の工程で使用したのと同じ触媒配合物を使用して、触媒的に脱フッ化水素反応させて1234yfとする。
【0019】
本発明のテトラクロロプロペンフィード原料は、各種の方法で生成させることが可能であり、これは当業者には公知であろう。
【実施例】
【0020】
実施例1
1,1,2,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230xa)から2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)への、触媒を使用しない液相フッ素化反応
CCl
2=CCl(CH
2Cl)+3HF → CF
3CCl=CH
2+3HCl
0.28moleのHCO−1230xaを、ガス入口バルブ、機械的攪拌機及び出口冷却塔を備えた300mLのHastelloy Cオートクレーブに充填することができる。そのオートクレーブの中に3.5moleのHFガスを凝縮させることができる。その反応混合物を、連続的に撹拌しながら約1/2時間かけて、徐々に120℃にまで加熱するであろう。HClが生成した結果生ずる過剰なガス圧は、冷却塔の上の400psiの安全弁が放出することができる。高沸点の物質は室温でトラップすることができるであろう。揮発性の有機反応生成物は、無水硫酸カルシウム上で乾燥させて、コールドトラップに捕集することができるであろう。約0.28moleの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン反応生成物がそのコールドトラップの中に見いだされるであろう。表1にまとめた、実施例1、2及び3は、密接に関連する物質との比較可能な反応を基準にして計算した。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例2〜4
高温におけるHCO−1233xfの気相フッ素化反応
活性化させた触媒15ccを、垂直式固定床反応器(20インチ×1インチ、Hastelloy C)の中に仕込むことができるであろう。HFを液体としてフィードし、蒸発器を使用して気体に転化させることができるであろう。HCO−1233xfを、シリンジポンプを使用してその固定床反応器にフィードし、365℃にまで加熱することができるであろう。42〜162psiの間の圧力でその反応を実施させるであろう。表2に、各種のHCO−1233xf対HFのモル比及び接触時間を使用して、密接に関連する物質との比較可能な反応を基準にして予想される計算結果をまとめた。
【0023】
【表2】
【0024】
本発明について、その特定の実施態様に関連させて記述してきたが、当業者には、その他多くの本発明の形態及び変更態様が自明であろうことは明らかである。添付の特許請求項及び本発明には一般的に、本発明の真の精神及び範囲の内に入る、そのような明白な形態及び変更態様はすべて包含されていると考えるべきである。