特許第6223358号(P6223358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223358硬化性シリコーン組成物および光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223358
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20171023BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20171023BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20171023BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20171023BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20171023BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08K9/02
   C08K9/06
   C08K3/26
   C08K5/3472
   C08L83/05
   C08K3/22
   H01L23/30 F
   H01L33/52
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-551167(P2014-551167)
(86)(22)【出願日】2013年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2013082906
(87)【国際公開番号】WO2014088115
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-268740(P2012-268740)
(32)【優先日】2012年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-88755(P2013-88755)
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 侑典
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−297397(JP,A)
【文献】 特開昭52−014654(JP,A)
【文献】 特開2004−168920(JP,A)
【文献】 特開2006−056986(JP,A)
【文献】 特開2002−212449(JP,A)
【文献】 特開2008−150505(JP,A)
【文献】 特開平09−316336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−3/40
5/00−5/59
9/00−9/12
H01L 23/00−23/56
33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、
(C)Al、Ag、Cu、Fe、Sb、Si、Sn、Ti、Zr、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および/または水酸化物により表面被覆された、質量平均粒子径が0.1nm〜5μmである酸化亜鉛微粉末{本組成物に対して、質量単位で1ppm〜10%となる量}、および
(D)有効量のヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなる硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、平均単位式:
(RSiO3/2)(RSiO2/2)(RSiO1/2)(SiO4/2)
(式中、R〜Rは、それぞれ同一もしくは異種の一価炭化水素基を示し、その全一価炭化水素基の0.01〜50モル%がアルケニル基であり、a、b、c、およびdは、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5、かつa+b+c+d=1.0を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンである、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
さらに、(E)ヒドロシリル化反応抑制剤{(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部}を含有する、請求項1記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
さらに、(F)トリアゾール系化合物を{(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.000001〜3質量部}を含有する、請求項1乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
窒素通気下、200℃、250時間の加熱前後で、JIS Z8730に規定されるCIE Lab表色系におけるb値の変化が10以下である硬化物を形成する、請求項1乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
光半導体装置における、光半導体素子を封止、被覆、または接着するための請求項1乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
光半導体装置における光半導体素子を、請求項1乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物により封止、被覆、または接着してなる光半導体装置。
【請求項8】
光半導体素子が発光ダイオードである、請求項記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性シリコーン組成物、および該組成物を用いて作製した光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置における光半導体素子を封止、被覆、あるいは接着するため、ヒドロシリル化反応で硬化する硬化性シリコーン組成物が用いられている。この組成物には、その硬化物が熱エージングにより著しく変色しないことが求められ、また、最近では、空気中の硫化水素等の硫黄含有ガスによる、光半導体装置中の銀電極や基板の銀メッキの変色を抑制することが求められている。
このため、特許文献1には、アルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、カルボン酸亜鉛や酸化亜鉛等の亜鉛化合物、およびヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物が提案され、また、特許文献2には、アルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛および硝酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種:1モルに対して、酸を1.5モル以上2モル未満反応させることによって得られる亜鉛化合物、およびヒドロシリル化反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物が提案されている。
しかし、上記のような組成物では、貯蔵中に酸化亜鉛とオルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が反応して、その硬化性が経時的に低下するという課題がある他、その硬化物は熱エージングにより黄変するという課題があることがわかった。また、上記のような組成物といえども、空気中の硫黄含有ガスによる銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制できないという課題があることもわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−178983号公報
【特許文献2】国際公開第2012/067153号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬化前には保存安定性が優れ、硬化して、熱エージングによる黄変が少なく、空気中の硫黄含有ガスによる、光半導体装置における銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制する硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物、および空気中の硫黄含有ガスによる銀電極や基板の銀メッキの変色が十分に抑制されている光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量}、
(C)Al、Ag、Cu、Fe、Sb、Si、Sn、Ti、Zr、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および/または水酸化物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末、アルケニル基を有さない有機ケイ素化合物により表面処理された酸化亜鉛微粉末、および炭酸亜鉛の水和物微粉末からなる群から選ばれる、質量平均粒子径が0.1nm〜5μmである少なくとも一種の微粉末{本組成物に対して、質量単位で1ppm〜10%となる量}、および
(D)有効量のヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなることを特徴とする。
また、本発明の光半導体装置は、該装置における光半導体素子を上記の硬化性シリコーン組成物により封止、被覆、または接着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化前には保存安定性が優れ、硬化して、熱エージングによる黄変が少なく、空気中の硫黄含有ガスによる、光半導体装置における銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制する硬化物を形成するという特徴がある。また、本発明の光半導体装置は、空気中の硫黄含有ガスによる銀電極や基板の銀メッキの変色が十分に抑制されているという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は、本発明の光半導体装置の一例であるLEDの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[硬化性シリコーン組成物]
はじめに、本発明の硬化性シリコーン組成物を詳細に説明する。
(A)成分は本組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2〜12個のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(A)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、または三次元網状構造が挙げられる。(A)成分は、これらの分子構造を有する単独のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する二種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
このような(A)成分は、平均単位式:
(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(SiO4/2
で表されるオルガノポリシロキサンが好適である。
式中、R〜Rは、それぞれ同一もしくは異種の一価炭化水素基を示す。このR〜Rの一価炭化水素基としては、前記と同様のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(A)成分中、アルケニル基は、R〜Rの全一価炭化水素基の0.01〜50モル%であることが好ましく、さらに、0.05〜40モル%であることが好ましく、特に、0.09〜32モル%であることが好ましい。これは、(A)成分中のアルケニル基が少なすぎると硬化物が得られないおそれがあり、また、(A)成分中のアルケニル基が多すぎると得られる硬化物の機械的特性が悪くなるおそれがある。また、(A)成分中のアルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子の両末端にあることが好ましい。なお、(A)成分中の全一価炭化水素基中のアルケニル基のモル%は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって測定することができる。
また、a、b、c及びdは各シロキサン単位のモル比を示し、a+b+c+d=1.0、0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦c<0.9、0≦d<0.5である。
(A)成分は、25℃で液状又は固体状のオルガノポリシロキサンである。(A)成分が25℃で液状である場合、その25℃での粘度は、1〜1,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、10〜1,000,000mPa・sの範囲内であることがより好ましい。なお、オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定することにより求めることができる。
(B)成分は本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1〜12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6〜20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7〜20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
(B)成分の分子構造は特に限定されないが、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、または三次元網状構造が挙げられ、好ましくは、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、または三次元網状構造が挙げられる。
このような(B)成分としては、例えば、平均組成式:
SiO[(4−e−f)/2]
で表されるオルガノポリシロキサンが好適である。
式中、Rは脂肪族不飽和炭化水素基を除く置換または非置換の一価炭化水素基であり、前記と同様のアルキル基、アリール基、アラルキル基、およびこれらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。
また、式中、e、fは1.0<e≦2.0、0.1<f<1.0、かつ1.5≦e+f<2.7を満たす。
(B)成分は、25℃で固体状又は液状である。(B)成分が25℃で液状である場合は、その25℃での粘度は、10,000mPa・s以下であることが好ましく、0.1〜5,000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、0.5〜1,000mPa・sの範囲内であることが特に好ましい。なお、オルガノポリシロキサンの25℃での粘度は、例えば、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定することにより求めることができる。
(B)成分は、本発明の目的を達成できる限り、特に特定のオルガノポリシロキサンに限定されないが、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、および(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜10モルとなる量であり、好ましくは、0.5〜5モルとなる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性の低下を抑えることができるからであり、一方、上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからである。なお、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の分析によって測定することができる。
(C)成分は、空気中の硫黄含有ガスによる、光半導体装置における銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制するための特徴的な成分である。このような(C)成分は、Al、Ag、Cu、Fe、Sb、Si、Sn、Ti、Zr、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物および/または水酸化物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末、アルケニル基を有さない有機ケイ素化合物で表面処理された酸化亜鉛微粉末、および炭酸亜鉛の水和物微粉末からなる群より選ばれる、質量平均粒子径が0.1nm〜5μmである少なくとも一種の微粉末である。なお、この質量平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定することができる。本発明に係る「質量平均粒子径」は、粒度分布を測定して得られた、累積質量が50%であるときの粒子径(D50)を意味する。
酸化物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末において、希土類元素としては、イットリウム、セリウム、ユーロピウムが例示される。酸化亜鉛微粉末の表面の酸化物としては、Al、AgO、AgO、Ag、CuO、CuO、FeO、Fe、Fe、Sb、SiO、SnO、Ti、TiO、Ti、ZrO、Y、CeO、Eu、およびこれらの酸化物の2種以上の混合物、さらには、Al・nHO、Fe・nHO、Fe・nHO、Sb・nHO、SiO・nHO、TiO・nHO、ZrO・nHO、CeO・nHO等の酸化物の水和物が例示され、好ましくは、Al、SiO、およびそれらの水和物である。なお、nは、通常、正の整数であるが、脱水の程度により、nは必ずしも整数をとるとは限らない。
水酸化物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末において、希土類元素としては、イットリウム、セリウム、ユーロピウムが例示される。酸化亜鉛微粉末の表面の水酸化物としては、Al(OH)、Cu(OH)、Fe(OH)、Ti(OH)、Zr(OH)、Y(OH)、Ce(OH)、Ce(OH)およびこれらの酸化物の2種以上の混合物、さらには、Ce(OH)・nHO等の酸化物の水和物が例示され、好ましくはAl(OH)である。なお、nは、通常、正の整数であるが、脱水の程度により、nは必ずしも整数をとるとは限らない。
なお、上記酸化物により表面被膜された酸化亜鉛は、上記水酸化物によりさらに表面被覆されてもよく、また、上記他の酸化物によりさらに表面被覆されてもよい。また、上記水酸化物により表面被覆された酸化亜鉛は、上記酸化物によりさらに表面被覆されてもよく、また、上記他の水酸化物によりさらに表面被覆されてもよい。また、(C)成分は、上記酸化物と上記水酸化物により表面被膜された酸化亜鉛であってもよい。例えば、酸化物と水酸化物との組合せとしては、AlとAl(OH)の組合せ、SiOとAl(OH)の組合せが例示される。
有機ケイ素化合物で表面処理された酸化亜鉛微粉末において、この有機ケイ素化合物はアルケニル基を有さないものであり、オルガノシラン、オルガノシラザン、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、およびオルガノシロキサンオリゴマーが例示され、具体的には、トリメチルクロロシラン、ジメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のオルガノクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリオルガノアルコキシシラン;これらのオルガノアルコキシシランの部分縮合物;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、シラノール基もしくはアルコキシ基を有するオルガノシロキサンオリゴマー、RSiO3/2単位(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基で例示されるアルケニル基を除く一価炭化水素基である。)やSiO4/2単位からなり、シラノール基またはアルコキシ基を有するレジン状オルガノポリシロキサンが例示される。
また、上記の酸化亜鉛微粉末は、上記以外の処理剤によりさらに表面処理されてもよい。この処理剤としては、ステアリン酸等の高級脂肪酸やその金属石鹸;パルミチン酸オクチル等の高級脂肪酸エステル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン化合物が例示される。また、この処理剤として、アルキルチタネート、アルキルアルミネート、アルキルジルコネート等のカップリング剤;パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のフッ素系有機化合物を使用してもよい。
炭酸亜鉛の水和物微粉末は、炭酸亜鉛に水が結合した化合物であり、105℃、3時間の加熱条件における質量減少率が0.1質量%以上であるものが好ましい。
(C)成分の含有量は、本組成物に対して、質量単位で1ppm〜10%の範囲内の量であり、好ましくは、1ppm〜5%の範囲内の量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、硫黄含有ガスによる光半導体装置における銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の流動性を損なわないからである。
(D)成分は、本組成物のヒドロシリル化反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒である。このような(D)成分は、白金族元素触媒、白金族元素化合物触媒が好ましく、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、およびパラジウム系触媒等が挙げられる。中でも、(A)成分と(B)成分のヒドロシリル化反応を著しく促進できることから、白金系触媒が好ましい。こうした白金系触媒としては、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金−オレフィン錯体、白金ビス(アセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)等の白金−カルボニル錯体、塩化白金酸−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、塩化白金酸−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体等の白金−アルケニルシロキサン錯体、および塩化白金酸とアセチレンアルコール類との錯体等が挙げられるが、ヒドロシリル化反応の促進効果が高いことから、白金−アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。これらのヒドロシリル化反応用触媒は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
白金−アルケニルシロキサン錯体に用いられるアルケニルシロキサンは、特に限定されないが、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー、およびこれらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンオリゴマー等が挙げられる。特に、生成する白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。
また、白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるため、これらの白金−アルケニルシロキサン錯体を、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンオリゴマーやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましく、特にアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解していることが好ましい。
(D)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進するに有効な量であり、具体的には、本組成物に対して、(D)成分中の触媒金属原子が質量単位で、0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることがより好ましく、0.1〜50ppmの範囲内となる量であることが特に好ましい。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の着色が抑えられるからである。
本組成物には、常温での可使時間を延長し、保存安定性を向上させるための任意の成分として、(E)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。このような(E)成分としては、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、および2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、および3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、および1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、およびメチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン、並びにトリアリルイソシアヌレート系化合物が例示される。
(E)成分の含有量は特に限定されないが、上記、(A)成分〜(D)成分の混合時にゲル化を抑制し、または硬化を抑制するのに十分な量であり、さらには長期間保存可能とするために十分な量である。(E)成分の含有量としては、具体的には、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.0001〜5質量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
また、本組成物には、空気中の硫黄含有ガスによる銀電極や基板の銀メッキの変色をさらに抑制することができることから、任意の成分として、(F)トリアゾール系化合物を含有してもよい。このような(F)成分としては、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、2H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、4H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸メチル、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、シクロヘキサノ[1,2−d]トリアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロキシトリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、1−N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−[(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル]アミン、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]トリルトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(1−ブチル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(1−オクチル)アミノメチル]カルボキシベンゾトリアゾール、1−(2’,3’−ジ−ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−(2’,3’−ジ−カルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール−6−カルボン酸、1−オレオイルベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシアミド、4−アミノウラゾール、および1,2,4−トリアゾール−5−オンが例示される。
(F)成分の含有量は特に限定されないが、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.000001〜3質量部の範囲内となる量であり、好ましくは、0.00001〜1質量部の範囲内となる量である。
また、本組成物には、硬化中に接触している基材への接着性を更に向上させるために、接着促進剤を含有してもよい。この接着促進剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に1個または2個以上有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、およびメトキシエトキシ基等が例示され、特に、メトキシ基またはエトキシ基が好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、およびハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、および4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、および3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、および8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;イソシアネート基;イソシアヌレート基;並びに水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基又はケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合脂肪族不飽和炭化水素基またはケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
接着促進剤の含有量は限定されないが、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜3質量部の範囲内であることがより好ましい。
また、本組成物には、その他任意の成分として、蛍光材を含有することができる。この蛍光体としては、例えば、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体が挙げられる。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。これらの蛍光材は、1種もしくは2種以上の混合物を用いてもよい。
この蛍光材の含有量は特に限定されないが、本組成物中、0.1〜70質量%の範囲内であり、さらには、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意の成分として、シリカ、ガラス、およびアルミナ等から選択される1種又は2種以上の無機質充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、およびポリメタクリレート樹脂等の樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、界面活性剤、溶剤等から選択される1種又は2種以上の成分を含有してもよい。
本組成物は、室温放置や、加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。加熱温度は、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
本組成物は、硬化して、JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータ硬さが、30〜99である硬化物を形成することが好ましく、特に、35〜95である硬化物を形成することが好ましい。これは、硬化性シリコーン組成物の硬化物の硬さが上記範囲の下限以上であると、強度を有し、保護性が十分となるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物が柔軟となり、耐久性が十分となるからである。
本組成物は、窒素通気下、200℃、250時間の加熱前後で、JIS Z8730におけるCIE Lab表色系におけるb値の変化が10以下である硬化物を形成することが好ましく、特に、5以下である硬化物を形成することが好ましい。なお、本組成物の硬化物のJIS Z8730におけるCIE Lab表色系におけるb値は、例えば、色差計を用いて測定することができる。
[光半導体装置]
次に、本発明の光半導体装置を詳細に説明する。
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が上記組成物により封止、被覆、あるいは接着されていることを特徴とする。この光半導体素子としては、具体的には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
発光ダイオード(LED)は、半導体の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックス等が挙げられる。硬化性シリコーン組成物は、光半導体素子および基板に対して耐熱衝撃性が良好であるので、得られる光半導体装置は、良好な信頼性を示すことができる。
本発明の光半導体装置の一例である表面実装型LEDの断面図を図1に示した。図1で示されるLEDは、光半導体素子1がリードフレーム2上にダイボンドされ、この光半導体素子1とリードフレーム3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。この光半導体素子1の周囲には、光反射材5が形成され、この光反射材5の内側の光半導体素子1は上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物6により封止されている。
図1で示される表面実装型LEDを製造する方法としては、光半導体素子1をリードフレーム2にダイボンドし、この光半導体素子1とリードフレーム3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドし、次いで、硬化性シリコーン組成物をトランスファー成形または圧縮成形により成形し、半導体素子1の周囲に光反射材5を形成する方法が例示される。さらに、光反射材5を形成した後、該光反射材5の内側の光半導体素子1を、上記の硬化性シリコーン組成物で樹脂封止する方法が例示される。
【実施例】
【0009】
本発明の硬化性シリコーン組成物および光半導体装置を実施例および比較例により詳細に説明する。なお、硬化性シリコーン組成物の硬化物の硬さ、硬化性シリコーン組成物の保存安定性、および硬化物の色調変化性を次のようにして測定した。
[硬さ]
硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間、5MPaの圧力でプレス成形することによりシート状の硬化物を作製した。このシート状の硬化物の硬さをJIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータにより測定した。
[保存安定性]
硬化性シリコーン組成物において、ヒドロシリル化反応用触媒を添加しない組成物を調製し、これを50℃のオーブン中で100時間保管後、ヒドロシリル化反応用触媒を添加して硬化性シリコーン組成物を調製した。この熱エージング後の硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間加熱して得られる硬化物のタイプAデュロメータ硬さを測定し、熱エージング前の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物の硬さより低くなったものを硬化不良とした。なお、100時間保管後の硬化性シリコーン組成物の外観を目視で観察した。
[色調変化性]
硬化性シリコーン組成物を150℃で1時間、5MPaの圧力でプレス成形することによりシート状の硬化物を作製した。シート状の硬化物を窒素通気下200℃で250時間加熱した。加熱前後における硬化物のJIS Z8730に規定されるCIE Lab表色系におけるb値を光電色彩計により測定し、熱エージング後のb値から熱エージング前のb値を引いた値をb値の変化として示した。
また、硬化性シリコーン組成物を用いて、150℃で1時間加熱することにより、図1で示される光半導体装置を作製した。この光半導体装置の放射束の測定により耐硫化性を次のようにして測定した。
[耐硫化性]
光半導体装置について、積分球を用いた全放射束測定装置を使用して初期放射束測定を行った。次に、この光半導体装置を、硫化ナトリウム六水和物をオートクレーブ中に入れ、50℃に加熱し、100時間放置した。その後、積分球を用いた全放射束測定装置を使用して放射束測定を行った。
[実施例1〜9、比較例1〜8]
次の成分を表1および表2に示す組成(質量部)で均一に混合して実施例1〜9および比較例1〜8の硬化性シリコーン組成物を調製した。なお、式中、Viはビニル基を表し、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。また、表1および表2において、SiH/Viは、硬化性シリコーン組成物において、(A)成分中のビニル基の合計1モルに対する、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の合計モル数を示す。
(A)成分として、次の成分を用いた。なお、粘度は25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した。
(a−1)成分:粘度1,000mPa・sであり、平均式:
MeViSiO(MePhSiO)30SiMeVi
で表されるメチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.27質量%;3.03モル%)
(a−2)成分:粘度15,000mPa・sであり、平均式:
MeViSiO(MePhSiO)120SiMeVi
で表されるメチルフェニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.33質量%;0.81モル%)
(a−3)成分:粘度300mPa・sであり、平均式:
MeViSiO(MeSiO)150SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.48質量%;0.65モル%)
(a−4)成分:粘度10,000mPa・sであり、平均式:
MeViSiO(MeSiO)500SiMeVi
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.15質量%;0.20モル%)
(a−5)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性の平均単位式:
(PhSiO3/20.75(MeViSiO1/20.25
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%;16.7モル%)
(a−6)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性の平均単位式:
(MePhViSiO1/20.23(PhSiO3/20.77
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=4.6質量%;15.7モル%)
(a−7)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(MeViSiO1/20.15(MeSiO1/20.38(SiO4/20.47
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサン(ビニル基の含有量=5.6質量%;9.43モル%)
(a−8)成分:25℃において白色固体状で、トルエン可溶性である、平均単位式:
(MeViSiO1/20.13(MeSiO1/20.45(SiO4/20.42
で表される、一分子中に2個以上のビニル基を有するオルガノポリシロキサンレジン(ビニル基の含有量=4.7質量%;7.60モル%)
(B)成分として、次の成分を用いた。なお、粘度は、25℃における値であり、JIS K7117−1に準拠してB型粘度計を用いて測定した。
(b−1)成分:平均式:
HMeSiO(PhSiO)SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%)
(b−2)成分:平均単位式:
(PhSiO3/20.4(HMeSiO1/20.6
で表される、一分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する、粘度25mPa・sの分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.65質量%)
(b−3)成分:平均式:
MeSiO(MeHSiO)55SiMe
で表される、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素原子結合水素原子含有量=1.6質量%)
(b−4)成分:平均式:
MeSiO(MeHSiO)15SiMe
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.42質量%)
(C)成分として、次の成分を用いた。
(c−1)成分:質量平均粒子径が1.0μmであり、Al(OH)とSiO水和物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末
(c−2)成分:質量平均粒子径が30nmであり、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体により表面処理された酸化亜鉛微粉末
(c−3)成分:質量平均粒子径が0.5μmであり、SiOにより表面被覆された酸化亜鉛粉末に、さらに粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体により表面処理された酸化亜鉛微粉末
(c−4)成分:質量平均粒子径が0.5μmであり、105℃、3時間の加熱条件における質量減少率が0.4質量%である炭酸亜鉛の水和物微粉末
(c−5)成分:質量平均粒子径が10nmであり、表面を酸により処理された酸化亜鉛微粉末
(c−6)成分:質量平均粒子径が0.5μmである酸化亜鉛微粉末
(c−7)成分:質量平均粒子径が10μmであり、Al(OH)とSiO水和物により表面被覆された酸化亜鉛微粉末
(c−8)成分:ビス(2−エチルヘキサノイルオキシ)亜鉛
(D)成分として、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(本成分中、質量単位における白金金属の含有量=約4000ppm)を用いた。
(E)成分として、1−エチニルシクロヘキサン−1−オールを用いた。
(F)成分として、ベンゾトリアゾールを用いた。
【表1】
【表2】
表1と表2に示す結果から、実施例1〜9の硬化性シリコーン組成物は保存安定性が良好で、その硬化物は耐色調変化性を有し、その組成物を用いて作製した光半導体装置は耐硫化性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、保存安定性が優れ、硬化して、熱エージングによる黄変が小さく、空気中の硫黄含有ガスによる銀電極や基板の銀メッキの変色を十分に抑制する硬化物を形成することができるので、光半導体装置における光半導体素子の封止剤、被覆剤、接着剤、あるいは液晶端部の銀電極や基板の銀メッキの保護剤として好適である。
【符号の説明】
【0011】
1 光半導体素子
2 リードフレーム
3 リードフレーム
4 ボンディングワイヤ
5 反射材
6 硬化性シリコーン組成物の硬化物
図1