(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223366
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】車両用空気清浄化システム
(51)【国際特許分類】
B60H 3/06 20060101AFI20171023BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20171023BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/02 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/16 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20171023BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20171023BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
B60H3/06 Z
B01D53/02
B01D53/14
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01J20/04 A
B01J20/04 B
B01J20/04 C
B01J20/06 A
B01J20/06 B
B01J20/06 C
B01J20/08 A
B01J20/08 C
B01J20/10 A
B01J20/10 B
B01J20/10 C
B01J20/10 D
B01J20/16
B01J20/18 B
B01J20/18 E
B01J20/20 D
B01J20/22 A
A61L9/16 F
B01J20/24 A
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-559301(P2014-559301)
(86)(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公表番号】特表2015-514616(P2015-514616A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】IB2012000513
(87)【国際公開番号】WO2013128225
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年12月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ボネ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ベンドリンガー, ローラン
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−114109(JP,A)
【文献】
特開2011−220594(JP,A)
【文献】
特開2011−106861(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第3501527(DE,A1)
【文献】
特開2006−056450(JP,A)
【文献】
特開昭61−171537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
A61L 9/16
B01D 53/02
B01D 53/14
B01J 20/02
B01J 20/04
B01J 20/06
B01J 20/08
B01J 20/10
B01J 20/16
B01J 20/18
B01J 20/20
B01J 20/22
B01J 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャビン内の空気を清浄化する方法であって、フィルタシステムを通して空気をろ過することを含み、前記車両は、フッ化冷媒化合物を含む空調回路を備え、前記フィルタシステムは、ポリマー樹脂又は炭素系物質であるろ過材であって、エンジン室及び/又は空調回路から放出されるガスを含むガス流からのフッ化水素の吸着による除去に適合したろ過材を備え、前記ろ過材は、ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、スルホン酸基で終端されたペルフルオロビニルエーテル基を含むテトラフルオロエチレンポリマー、ポリオレフィン微多孔膜、およびこれらの組み合わせから選択されるポリマー樹脂を含み、活性炭、炭素モレキュラーシーブ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウムドープグラフェン、ダイヤモンド、およびこれらの組み合わせから選択される炭素系物質を含む、方法。
【請求項2】
前記フッ化冷媒化合物は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィンおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ろ過材は、吸着によりガス流からのフッ化水素の除去に適合している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタシステムは、ガス化合物および/または微粒子の除去に適合したフィルタをさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記空気は、前記キャビンの外部から前記キャビンの内部へ移動するときにろ過される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記空気は、前記空調回路を含むハウジングの隣に位置する吸気システムを通って移動する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記車両は、自動車、トラック、バス、小型トラック、トラクターまたはRV車である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
− キャビンと、
− フッ化冷媒化合物を含む空調回路と、
− フィルタシステムを備える空気清浄化装置であって、前記フィルタシステムは、ポリマー樹脂又は炭素系物質であるろ過材であって、エンジン室及び/又は空調回路から放出されるガスを含むガス流からのフッ化水素の吸着による除去に適合したろ過材を備える、前記空気清浄化装置と
を備える車両であって、
前記ろ過材は、ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、スルホン酸基で終端されたペルフルオロビニルエーテル基を含むテトラフルオロエチレンポリマー、ポリオレフィン微多孔膜、およびこれらの組み合わせから選択されるポリマー樹脂を含み、活性炭、炭素モレキュラーシーブ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウムドープグラフェン、ダイヤモンド、およびこれらの組み合わせから選択される炭素系物質を含む、車両。
【請求項9】
前記フッ化冷媒化合物は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィンおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記ろ過材は、吸着によるフッ化水素の除去に適合している、請求項8又は9に記載の車両。
【請求項11】
前記フィルタシステムは、ガス化合物および/または微粒子の除去に適したフィルタをさらに備える、請求項8〜10のいずれか一項に記載の車両。
【請求項12】
前記キャビンの外部から前記キャビンの内部へ空気を通過させる吸気システムを備え、前記空気清浄化装置は前記吸気システム内に位置する、請求項8〜11のいずれか一項に記載の車両。
【請求項13】
前記吸気システムは、前記空調回路を含むハウジングの隣に位置する吸気口を備える、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
自動車、トラック、バス、小型トラック、トラクターまたはRV車である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のキャビン内の空気を清浄化する方法、ならびに空気清浄化システムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空気清浄化システムは、既知の技術である。このような装置は空気をろ過するように、またフィルタを通過する花粉、埃または排ガスなどの微粒子の大部分を除去するように適合されてきた。特許文献1は、このような空気清浄化システムの一例を提供している。
【0003】
しかし、従来の空気清浄化システムは、エンジン室内の火災の間に生じる煙およびガスに潜在的に含まれる、有害な汚染物質を十分に除去するように設計されていない。
【0004】
クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、および、より最近ではヒドロフルオロオレフィン(HFO)を含むフッ化有機化合物は、車両の空調システムにおける安全かつ非毒性の冷媒として開発されてきた。
【0005】
しかし、温度が1200℃もの値に達し得るエンジン室で火災が起こった場合に、これらのフッ化化合物が、燃焼および/または分解することによって、毒性の強いフッ化水素(HF)を形成する可能性があるといういくらかの懸念があった。
【0006】
このような懸念は、特に新規に使用される化合物2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)に関して述べられてきた。現時点で、このようなリスクが純粋に理論上のものであると考えられるとしても、HFO−1234yfは可燃性が軽度であるため、依然として、フッ化冷媒化合物を含む空調システムを備える車両の安全性をさらに高めることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0032186号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の目的は、フィルタシステムを通して空気をろ過することを含む、車両のキャビン内の空気を清浄化する方法を提供することであり、ここで車両は、フッ化冷媒化合物を含む空調回路を備え、フィルタシステムは、ガス流からのフッ化水素の除去に適合したろ過材を備える。
【0009】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、
− フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよび炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属
化合物、
− 水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどのアルカリ土類金属
化合物、
− 三フッ化クロム、二酸化チタン、二酸化マンガンなどの遷移金属
化合物、
− アルミナおよびフッ化アルミニウムなどの他の金属
化合物、
− シリカ、変性シリカ、脱ヒドロキシル化(dehydroxylated)シリカ、シリカエ
アロゲルなどの半金属
化合物、
− アルミノケイ酸塩、ゼオライトおよびアルミノリン酸塩などのモレキュラーシーブ、ならびに
− これらの組み合わせ
から選択される無機物を含む。
【0010】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、スルホン酸基で終端されたペルフルオロビニルエーテル基を含むテトラフルオロエチレンポリマー、ポリオレフィン微多孔膜、およびこれらの組み合わせから選択されるポリマー樹脂を含む。
【0011】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、活性炭、炭素モレキュラーシーブ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウムドープグラフェン、ダイヤモンド、およびこれらの組み合わせから選択される炭素系物質を含む。
【0012】
一実施形態によれば、フッ化冷媒化合物は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィンおよびこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0013】
一実施形態によれば、ろ過材は、吸着によるガス流からのフッ化水素の除去に適合している。
【0014】
一実施形態によれば、フィルタシステムは、さらなるガス化合物および/または微粒子の除去に適合したフィルタをさらに備える。
【0015】
一実施形態によれば、空気は、キャビンの外部からキャビンの内部へ移動するときにろ過される。
【0016】
一実施形態によれば、空気は、空調回路を含むハウジングの隣に位置する吸気システムを通って移動する。
【0017】
一実施形態によれば、車両は、自動車、トラック、バス、小型トラック、トラクターまたはRV車である。
【0018】
本発明の第2の目的は、車両であって、
− キャビンと、
− フッ化冷媒化合物を含む空調回路と、
− フィルタシステムを備える空気清浄化装置とを備え、フィルタシステムは、ガス流からのフッ化水素の除去に適合したろ過材を備える
車両を提供することである。
【0019】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、
− フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよび炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属
化合物、
− 水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどのアルカリ土類金属
化合物、
− 三フッ化クロム、二酸化チタン、二酸化マンガンなどの遷移金属
化合物、
− アルミナおよびフッ化アルミニウムなどの他の金属
化合物、
− シリカ、変性シリカ、脱ヒドロキシル化(dehydroxylated)シリカ、シリカエ
アロゲルなどの半金属
化合物、
− アルミノケイ酸塩、ゼオライトおよびアルミノリン酸塩などのモレキュラーシーブ、ならびに
− これらの組み合わせ
から選択される無機物を含む。
【0020】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、ポリアクリル酸ナトリウムポリマー、スルホン酸基で終端されたペルフルオロビニルエーテル基を含むテトラフルオロエチレンポリマー、ポリオレフィン微多孔膜、およびこれらの組み合わせから選択されるポリマー樹脂を含む。
【0021】
一実施形態によれば、ろ過材は、好ましくは、活性炭、炭素モレキュラーシーブ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウムドープグラフェン、ダイヤモンド、およびこれらの組み合わせから選択される炭素系物質を含む。
【0022】
一実施形態によれば、フッ化冷媒化合物は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィンおよびこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである。
【0023】
一実施形態によれば、ろ過材は、吸着によるフッ化水素の除去に適合している。
【0024】
一実施形態によれば、フィルタシステムは、さらなるガス化合物および/または微粒子の除去に適合したフィルタをさらに備える。
【0025】
一実施形態によれば、車両は、キャビンの外部からキャビンの内部へ空気を通過させる吸気システムを備え、空気清浄化装置は吸気システム内に位置する。
【0026】
一実施形態によれば、吸気システムは、空調回路を含むハウジングの隣に位置する吸気口を備える。
【0027】
一実施形態によれば、車両は、自動車、トラック、バス、小型トラック、トラクターまたはRV車である。
【0028】
本発明は、フッ化冷媒化合物を含む空調システムを備える車両の安全性を向上させるシステムを提供する。
【0029】
これは、ガス流からのフッ化水素の除去に適合したフィルタシステムを備える空気清浄化装置によって達成される。したがって、エンジン室で火災が起こった場合、さらには、万が一、フッ化水素がエンジン室から放出され、キャビンに入った場合、運転者または乗客に危害を加えることがないように、前記フッ化水素は空気から除去されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を、以下の記述において限定することなくより詳細に説明する。
【0031】
本発明は、車両の構造用部品に接続または取り付けられることがあり、キャビンの空気をろ過し、好ましくはキャビンに入る空気をろ過する空気清浄化装置に向けられている。
【0032】
車両のキャビンは、運転者および/または乗客が収容されている密閉空間として画定される。
【0033】
空気清浄化装置は、通常、ハウジング、および好ましくは固体吸着剤であるろ過材を備えるフィルタシステムを備える。
【0034】
固体吸着剤は、無機物、ポリマー樹脂および炭素系物質から選択されてもよい。
【0035】
無機物のうち、ガス流からのHFの除去が可能であるとして、以下の材料が提案されてきた。
− フッ化物、水素化フッ化物、炭酸塩、酸化物または炭酸水素塩などのアルカリ金属(具体的にはLi、Na、K)
化合物。特定の例としては、LiF、NaF、KFおよびNa
2C0
3が挙げられる。
− フッ化物、塩化物、炭酸塩、酸化物、水酸化物または硫酸塩などのアルカリ土類(具体的にはMg、Ca、Ba、Sr)
化合物。特定の例としては、Ca(OH)
2、CaO、CaCO
3、CaF
2、MgO、MgCO
3、BaCO
3、高表面CaCl
2、乳酸カルシウムなどが挙げられる。
− フッ化物、酸化物または水酸化物などの遷移金属(具体的にはTi、Zr、Cr、Mn)
化合物。特定の例としては、CrF
3、TiO
2およびMnO
2などが挙げられる。
− アルミナまたはフッ化アルミニウムなどの他の金属(主にAl)
化合物。
−シリカ、変性シリカ、脱ヒドロキシル化(dehydroxylated)シリカまたはシリカエ
アロゲルなどの半金属(主にSi)
化合物。
− アルミノケイ酸塩、ゼオライトおよびアルミノリン酸塩(aluminophospahtes)などのモレキュラーシーブ。
【0036】
これらの物質の全ては、粉末、粒またはフレークとして使用され得る。これらの物質はまた、紙、天然または合成繊維の織布または不織布、スポンジ状ゴムまたはプラスチックに含浸され得る。
【0037】
ポリマー樹脂のうち、ガス流からのHFの除去が可能であるとして、以下のものが提案されてきた。
− ナフィオン(登録商標)超酸樹脂(スルホン酸基で終端されるペルフルオロビニルエーテル基を含むテトラフルオロエチレンポリマーである)。
− ポリアクリル酸ナトリウム樹脂。
− (ポリオレフィン微多孔膜などの)非機能性樹脂を含む様々なイオン交換樹脂。
【0038】
炭素系物質のうち、ガス流からのHFの除去が可能であるとして、以下の材料が提案されてきた。その材料は、活性炭、炭素モレキュラーシーブ、カーボンナノチューブ、グラフェン(およびアルミニウムドープグラフェン)、さらにダイヤモンドである。
【0039】
物理的特性の観点から、活性炭は高表面領域を伴って製造され得る。また、活性炭は、ペレットなどの使用し易い成形品に圧縮され得る。炭素モレキュラーシーブおよびカーボンナノチューブはまた、製造工程によって決定される細孔径および表面領域を有するので、係争中の特定の特許出願のために選択され得る。
【0040】
上述の空気清浄化装置は、例えば自動車、トラック、バス、小型トラック、トラクターまたはRV車などの車両において提供される。
【0041】
車両は、冷媒回路を有する空調システムを備える。冷媒回路は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィンまたはこれらの組み合わせなどのフッ化冷媒化合物(つまり、熱伝導性化合物)を含む。好ましくは、冷媒化合物はヒドロクロロフルオロカーボンまたはヒドロフルオロオレフィンである。例えば、冷媒回路は、HFO−1234yfなどのテトラフルオロプロペン化合物を含んでもよい。
【0042】
HFが冷媒回路から放出された場合(火災が起こった場合)、本発明の空気清浄化装置は、放出されたHFがキャビン内部の空気を汚染することを防ぐことができる。こうして、運転者および乗客は守られる。
【0043】
いくつかの上述の材料は、HF、およびフッ化冷媒自体(例えば、HFO−1234yf)などの他のフッ化化合物のろ過に適合している。他の材料は、さらに具体的に、最も危険な汚染物質であるHFの除去にのみ向けられている。これは、例えばNaFの場合である。したがって、非HF汚染物質によるフィルタの飽和のいかなるリスクも回避される。
【0044】
キャビン内の空気清浄化装置の任意の位置が熟慮され得る。例えば、空気清浄化装置は空気再循環システムに組み込まれてもよい。
【0045】
しかし、好ましい実施形態によれば、空気清浄化装置は、(吸気システムを備える)キャビンの1つの空気の入り口に配置されるか、あるいは、適切な場合、これら空気の入り口のいくつかまたは全てに配置される。したがって、HFは、実質的にキャビンに全く入らない。
【0046】
通常、吸気システムは、空気を、キャビンの外部からキャビンの内部へ移動するのに適合した導管を備える。送風手段または送風機は、吸気システムに含まれてもよく、吸気システムは、キャビンの外部を向く吸気口と、キャビンの内部を向く排気口とを備える。その場合、空気清浄化装置を、吸気口と排気口との間の任意の場所に配置することができる。
【0047】
通常、1つ、数個または全ての空気の入り口は、車両のエンジン室付近に位置する。例えば、多くの自動車において、空気の入り口はフロントガラスとフードとの間に位置する。この場合、空気の入り口が空調回路と近接しているために、HF放出によるキャビンの潜在的な汚染のリスクがやや高くなる。したがって、本発明に従う1つ以上の空気清浄化システムをこのような空気の入り口に配置することは特に好適である。
【0048】
花粉または他の微粒子あるいはガス状汚染物質などの他の汚染物質を、キャビンに入る空気から除去することは、多くの場合望ましいことである。したがって、本発明の空気清浄化システムは、(HFを除去するためのろ過材に加えて)このような花粉または汚染物質の除去に適合した他のフィルタを備えてもよい。このような追加的フィルタの例について、米国特許出願公開第2007/0032186号明細書を参照することができる。