特許第6223368号(P6223368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223368光学要素の幾何学的構造を測定する方法及びツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223368
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】光学要素の幾何学的構造を測定する方法及びツール
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20171023BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   G01M11/02 B
   G01M11/00 L
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-560397(P2014-560397)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-509599(P2015-509599A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】EP2013054751
(87)【国際公開番号】WO2013132072
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】12290084.8
(32)【優先日】2012年3月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507229319
【氏名又は名称】エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ギュー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ラヴィロニエール
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ミュラドレ
(72)【発明者】
【氏名】アスマ・ラクア
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−190885(JP,A)
【文献】 特開2000−111846(JP,A)
【文献】 特開2006−133241(JP,A)
【文献】 特開2003−269952(JP,A)
【文献】 特開2010−085335(JP,A)
【文献】 特表2004−507730(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0057122(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0134438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/02
G01M 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(10)及び第2の面(20)により区切られた光学要素の幾何学的構造を測定する方法であって、以下のステップすなわち、
−前記第1の面(10)による第1のプローブ信号(PS1)の第1の変換から生じた第1の信号(MS1)を測定する測定ステップ(S1)において、前記第1の変換の第1のシミュレーションにより、既知である第1の仮想面(11)であって、前記第1の信号(MS1)を測定する間に前記第1の面(10)と同様に第1の測定基準フレーム(R1)内に配置された第1の仮想面(11)による前記第1のプローブ信号(PS1)の前記第1の変換から生じた信号の第1の推定値(ES1)の取得を可能にする、測定ステップ(S1)と、
―少なくとも前記第2の面(20)による第2のプローブ信号(PS2)の第2の変換から生じた第2の信号(MS2)を測定する測定ステップ(S2)において、前記第2の変換の第2のシミュレーションにより、既知である少なくとも1個の第2の仮想面(21)であって、前記第2の信号(MS2)を測定する間に前記第2の面(20)と同様に第2の測定基準フレーム(R2)内に配置された少なくとも1個の第2の仮想面(21)による第2のプローブ信号(PS2)の前記第2の変換から生じた信号の第2の推定値(ES2)の取得を可能にする、測定ステップ(S2)とを含み、
前記第1の信号(MS1)の測定及び前記第2の信号(MS2)の測定のうち少なくとも一方の測定がゾーン測定であり、
さらに、前記方法は、
−前記第1の測定基準フレーム(R1)から前記第2の測定基準フレーム(R2)への移行を可能にする第3の変換の決定ステップ(S3)と、
−前記第1の信号(MS1)、前記第1のシミュレーション、及び前記第1の推定値(ES1)と前記第1の信号(MS1)との差異を定量化する第1のコスト関数(V1)に基づいて実行される前記第1の面(10)の推定ステップ(S10)と、
−前記第2の信号(MS2)、前記第2のシミュレーション、前記第3の変換、及び前記第2の推定値(ES2)と前記第2の信号(MS2)との差異を定量化する第2のコスト関数(V2)に基づいて実行される前記第2の面(20)の推定ステップ(S20)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の信号(MS1)の測定及び前記第2の信号(MS2)の測定がゾーン測定であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゾーン測定が、複数回の基本ゾーン測定により実行され、前記複数回の基本ゾーン測定の各々が、前記面(又は前記複数の面の)基本ゾーンによるプローブ信号の変換から生じた基本信号を測定することにより、前記基本ゾーンが前記面(又は前記複数の面)の全体を覆うことを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
−前記第1の信号(MS1)が前記第1の面(10)による前記第1のプローブ信号(PS1)の前記第1の変換から生じ、
−前記第2の信号(MS2)は、前記第1の面(10)及び前記第2の面(20)による前記第2のプローブ信号(PS2)の前記第2の変換から生じることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
−前記第1の信号(MS1)が前記第1の面(10)による前記第1のプローブ信号(PS1)の前記第1の変換から生じ、
−前記第2の信号(MS2)が前記第2の面(20)による前記第2のプローブ信号(PS2)の前記第2の変換から生じることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
各推定値ステップ(S10、S20)が反復的であり、各反復が、
a)前記測定信号の推定値(ES1、ES2)を得るべく、少なくとも1個の仮想面(11、21)及び前記プローブ信号(PS1;PS2)に基づいて前記シミュレーション(SIM1、SIM2)を実行するステップと、
b)ステップa)で計算された前記推定値(ES1、ES2)と、前記測定信号(MS1;MS2)との差異を前記コスト関数(V1、V2)により測定するステップと、
c)ステップb)で測定された差異に基づく停止基準が満たされない場合、前記差異を減らすべく前記仮想面(11;21)を修正してステップa)に戻るステップと、
d)現在の反復のステップa)で考慮した仮想面(11;21)の値として前記面(10、20)を推定するステップとを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の推定値(21)が、更に前記第1の推定値(11)に基づいて得られることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び/又は第2のプローブ信号(PS1、PS2)が光信号でることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
−前記第1の信号(MS1)が、前記第1の面(10)により反射された周期的格子からなる光信号の偏光測定により得られた前記第1の面(10)への法線のマップであり、
−前記第2の信号(MS2)を測定する前記ステップ(S2)が、前記第1及び第2の面(10、20)により透過された光信号の偏光測定による測定であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
−前記第1の信号(MS1)を測定する前記ステップ(S1)が、前記第1の面(10)により反射された光信号の歪みの測定であり、
−前記第2の信号(MS2)を測定する前記ステップ(S2)が、前記第1及び第2の面(10、20)により透過された光信号の拡大の測定であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の変換を決定する前記ステップ(S3)が、前記要素の厚さの測定を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の変換を決定する前記ステップ(S3)が更に、前記要素のプリズムの測定を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記測定ステップ(S1、S2)が単一の装置により実行されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記光学要素が眼鏡レンズであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第1の面(10)及び第2の面(20)により区切られた光学要素の幾何学的構造を測定するシステムであって、
−前記第1の面(10)による第1のプローブ信号(PS1)の第1の変換から生じた第1の信号(MS1)の測定を行い、前記第1の変換の第1のシミュレーションにより、既知である第1の仮想面(11)であって、前記第1の信号(MS1)を測定する間に前記第1の面(10)と同様に第1の測定基準フレーム(R1)内に配置された第1の仮想面(11)による前記第1のプローブ信号(PS1)の前記第1の変換から生じた信号の第1の推定値(ES1)の取得を可能にする第1の測定手段(MM1)と、
−少なくとも前記第2の面(20)による第2のプローブ信号(PS2)の第2の変換から生じた第2の信号(MS2)の測定を行い、前記第2の変換の第2のシミュレーションにより、既知である少なくとも1個の第2の仮想面(21)であって、前記第2の信号(MS2)を測定する間に前記第2の面(20)と同様に第2の測定基準フレーム(R2)内に配置された少なくとも1個の第2の仮想面(21)による第2のプローブ信号(PS2)の前記第2の変換から生じた信号の第2の推定値(ES2)の取得を可能にする第2の測定手段(MM2)と、を含み、
前記第1の測定手段(MM1)及び前記第2の測定手段(MM2)のうち少なくとも一方がゾーン測定を実行し、
さらに、前記システムは、
−前記第1の測定基準フレーム(R1)から前記第2の測定基準フレーム(R2)への移行を可能にする第3の変換を決定する手段(MD)と、
−前記第1の信号(MS1)、前記第1のシミュレーション、第1の仮想面(11)、及び前記第1の推定値(ES1)と前記第1の信号(MS1)との差異を定量化する第1のコスト関数(V1)に基づいて前記第1の面(10)を推定すべく構成された第1の計算手段(CM1)と、
−前記第2の信号(MS2)、前記第2のシミュレーション、第2の仮想面(21)、前記第3の変換、及び前記第2の推定値(ES2)と前記第2の信号(MS2)との差異を定量化する第2のコスト関数(V2)に基づいて前記第2の面(20)を推定すべく構成された第2の計算手段(CM2)と、
を含むシステム。
【請求項16】
前記測定手段(MM1、MM2)の各々がゾーン測定を実行することを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
−前記第1の計算手段(CM1)が、前記第1の面(10)により反射された光信号の歪みの測定を実行し、
−前記第2の計算手段(CM2)が、前記第1及び第2の面(10、20)により透過された光信号の拡大の測定を実行することを特徴とする、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
−前記第1の計算手段(CM1)が、前記第1の面(10)により反射された第1の周期的格子からなる光信号の偏光測定により得られた前記第1の面(10)への法線のマップを生成し、
−前記第2の計算手段(CM2)が、前記第1及び第2の面(10、20)により透過された光信号の偏光測定により測定を実行することを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、光学要素の幾何学的又は光学的構造を測定する方法及び装置である。
【0002】
本発明による方法は、光学要素の2面を絶対的に測定することを可能にする。絶対測定とは、屈折率を除いて当該構成要素に関する事前の知識を一切必要としない測定を意味する。面の測定は、多く産業分野における用途がある。特に、眼鏡レンズの検査又は測定を実行する眼鏡分野で有用であり、この場合、複雑な面を製造するには数百個の係数を同時に決定する必要がある。
【背景技術】
【0003】
本節は、以下に記述及び/又は権利主張する本発明の各種態様に関連する当分野の多様な態様を読者に紹介することを意図している。以下の説明は、本発明の各種態様に対する理解を深めるべく読者に背景情報を提供するのに役立つものと考えられる。従って、以下の記述は従来技術の解説としてではなく、上記の観点で読むべきである点を理解されたい。
【0004】
本願出願人による欧州特許出願公開第A0644411号明細書に反射又は透過偏光測定ツールを記述している。当該ツールは、反射又は透過により光学要素の幾何学的構造の測定を可能にするものである。このような測定ツールの原理は、既知の波面、最も簡単なケースは平面波の放射により測定対象の光学要素を照射して、測定対象の光学要素で反射又は透過された後で波面を測定することである。反射又は透過の後で波面を測定することにより、測定対象の要素の幾何学的特徴を導くことが可能になる。
【0005】
このように、当該要素の他の面の幾何学的構造が計算により既知であると仮定すれば、要素の1面の幾何学的構造を決定することは公知である。従って、光学要素の各種の特徴、特にその2面を決定可能にする測定ツールに対するニーズが存在する。そのようなツールは特に、累進多焦点眼鏡レンズの効果的な測定を、当該レンズの2面の各々の形状を正確に決定することにより、及びこれらの面の一方について何らの仮定を実行する必要無しに一方の面の位置を他方の面に対して完全に合わせることにより可能にする。
【0006】
また、本願出願人による仏国特許第2813391A1号明細書に、光学要素の透過に対して2回の測定を実行する、光学要素の幾何学的構造の測定方法を記述している。しかし、2回の測定の各々が、横断される2面の影響を組み合せるため、再構成される幾何学的構造の精度は必ずしも満足すべきものではない。
【0007】
また、生物有機体(細胞又は細胞群)の面トポグラフィ及び屈折率の内部配布を決定すべく、1回目が反射で2回目が透過という2回の干渉計測定を実行する独国特許第102004047531号明細書も公知である。しかし、絶対的な結果は、反映又は透過された光波の位相変動の測定を、屈折率の高さ又は変動のマップに変換することを可能にするものの、これを実現するには暗黙的に、本文献に記述されている測定では有機体のトポグラフィ又は屈折率分布の先験的知識が必要とされる。
【0008】
更に、1点ずつ、1面ずつ、又は2面の各々の1点で同時に動作する機械又は光学的プローブを有するゲージを利用する光学要素の面測定が公知である。しかし、持続的に面を測することが重要であり、第2の面に関して第1の面の測定位置を合わせることは依然として常に困難である。更に、1点ずつの測定は一般に、(機械又は光学的)プローブを極めて正確に移動させる手段を必要とし、取得及び運用サービスが比較的高価になるため企業が導入するには困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の短所を解決することであり、2回の非破壊測定に基づく光学要素の幾何学的構造の決定を提案する。これらの測定のうち少なくとも一方は、ゾーンモード又は多点モード(上で紹介した「ポイントツーポイント」モードとは逆の)で動作し、これらの測定のうち少なくとも一方は単一の面によるプローブ信号の変換から生じた1個のMS1の信号に対して、且つこれらの面の各々が先験的には知られていない状況で実行される。この判定は更に、前記測定に基づく当該要素の各々の面の数値的再構成に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の態様による請求項1の特徴、及び第2の態様による請求項14の特徴により、上記目的を実現する。
【0011】
第2の請求項は、本発明の有利な概念及び改良点を提示する。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、第1の面10及び第2の面20により区切られた要素の幾何学的構造を測定する方法に関し、前記方法は以下のステップ、すなわち、
S1:前記第1の面10による第1のプローブ信号PS1の第1の変換から生じた第1の信号MS1を測定するステップにおいて、前記第1の変換の第1のシミュレーションにより、既知であって第1の信号MS1を測定する間に前記第1の面10と同様に第1の測定基準フレームR1内に配置された少なくとも1個の第1の仮想面11による第1のプローブ信号PS1の前記第1の変換から生じた信号の第1の推定値ES1の取得を可能にする測定ステップと、
S2:少なくとも前記第2の面20による第2のプローブ信号PS2の第2の変換から生じた第2の信号MS2を測定するステップにおいて、前記第2の変換の第2のシミュレーションにより、既知であって第2の信号MS2を測定する間に前記第2の面20と同様に第2の測定基準フレームR2内に配置された少なくとも1個の第2の仮想面21による第2のプローブ信号PS2の前記第2の変換から生じた信号の第2の推定値ES2の取得を可能にする測定ステップとを含み、
第1の信号MS1の測定及び第2の信号MS2の測定のうち少なくとも一方の測定がゾーン測定であり、
S3:第1の基準フレームR1から第2の基準フレームR2への移行を可能にする第3の変換の決定ステップと、
S10:第1の信号MS1、前記第1のシミュレーション、及び推定値ES1と第1の信号MS1との差異を定量化する第1のコスト関数V1に基づいて実行される前記第1の面10の推定ステップと、
S20:第2の信号MS2、前記第2のシミュレーション、前記第3の変換、及び推定値ES2と第2の信号MS2との差異を定量化する第2のコスト関数V2に基づいて実行される前記第2の面20の推定ステップとを含んでいる。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、第1の面10及び第2の面20により区切られた要素の幾何学的構造を測定するシステムに関し、前記システムは以下の手段、すなわち、
−少なくとも前記第1の面10による第1のプローブ信号PS1の第1の変換から生じた第1の信号MS1の測定を行い、前記第1の変換の第1のシミュレーションにより、既知であって第1の信号MS1を測定する間に前記第1の面10と同様に第1の測定基準フレームR1内に配置された少なくとも1個の第1の仮想面11による第1のプローブ信号PS1の前記第1の変換から生じた信号の第1の推定値ES1の取得を可能にする第1の測定手段MM1と、
−少なくとも前記第2の面20による第2のプローブ信号PS2の第2の変換から生じた第2の信号MS2の測定を行い、前記第2の変換の第2のシミュレーションにより、既知であって第2の信号MS2を測定する間に前記第2の面20と同様に第2の測定基準フレームR2内に配置された少なくとも1個の第2の仮想面21による第2のプローブ信号PS2の前記第2の変換から生じた信号の第2の推定値ES2の取得を可能にする第2の測定手段MM2とを含み、
前記測定手段MM1及びMM2のうち少なくとも一方がゾーン測定を実行し、
−第1の基準フレームR1から第2の基準フレームR2への移行を可能にする第3の変換を決定する手段MDと、
−第1の信号MS1、前記第1のシミュレーション、第1の仮想面11、及び第1の推定値ES1と第1の信号MS1との差異を定量化する第1のコスト関数V1に基づいて前記第1の面10を推定すべく構成された第1の計算手段CM1と、
−第2の信号MS2、前記第2のシミュレーション、第2の仮想面21、前記第3の変換、及び第2の推定値ES2と第2の信号MS2の差異を定量化する第2のコスト関数V2に基づいて前記第2の面20を推定すべく構成された第2の計算手段CM2とを含んでいる。
【0014】
本発明による手順は、既存の直接的な機械又は光学的測定技術(例えば機械又は光学的プローブ等によるポイントツーポイントゲージング)に比べて極めて高速に要素の構造を決定する利点をもたらす。
【0015】
利点として、少なくとも1回のゾーン又は「多点」測定(例えば第1の信号の測定)自体は、制限された数の複数回の基本ゾーン測定から得られる。これらの基本ゾーン測定の各々は、第1の面10のゾーンによる第1のプローブ信号PS1の第1の変換から生じた第1の基本信号を測定する。ゾーンの集合全体が第1の面を覆っている。この場合、基本ゾーン測定を統合するステップが必要である。これにより、全く同一の測定手段MM1を用いて、1回の走査でゾーン測定を実行する場合よりも正確な第1の面の推定値が得られるようになり、制限された数の基本ゾーン測定の組により実行されるゾーン測定は依然としてポイントツーポイント測定よりも高速且つ簡便なままである。
【0016】
更に、本発明の手順は、性質が大幅に異なる面の各々に対して実行される2回の測定を用いることにより実行することが可能である。第1の測定は例えば反射の測定であり、第2の測定は例えば透過について実行される。しかし、反射/反射のように他の組合わせも可能である。同様に、第1の測定がフリンジの反射に基づく偏光測定であって第2の測定がハルトマン式測定であるが、代替的に、第1の測定も同様に第1の面により反射された光信号の歪みの測定であってよく、第2の測定が第1及び第2の面により透過される光信号の拡大又は増大の測定である。
【0017】
このように、本発明による手順はまた、面の測定を実行するべく構成されているが、これらの面を自身に紐付けされていないデータとして再構成するいかなる計算手段も含まない既存の装置に基づいて実装可能であるという利点をもたらす。
【0018】
本発明による手順の第3の利点は、構造の決定方式に関するものである。すなわち、以下に示す面の再構成ステップは、面の解析的な表現を用いる。更に、本発明による手順により得られるような要素の構造は解析的であり、これは以下で採用する特に数値シミュレーション手段で推定される構造に適している。
【0019】
本発明による手順の第4の利点は、高さの変動幅が大きい一方で光学要素の面の高さの評価を実現可能にする優れた精度にあり、これらの面の何に関する事前の知識を一切必要としない。
【0020】
本発明の各種の実施形態は、機械加工された部品、例えば眼鏡レンズの測定又は検査に用途がある。この場合、複雑な面を製造するには数百個の係数を同時に決定する必要がある。
【0021】
本発明は、添付の図面を参照しながら、完全に非限定的な実施形態及びこれらに続く実施例による説明を通じて理解が深まろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による測定手順のフロー図を示す。
図2】本発明の一実施形態による前記手順で実行される第1の信号MS1の例示的な測定を示す。
図3】本発明の一実施形態による前記手順で実行される第2の信号MS2を測定する例示的なステップを示す。
図4】本発明の一実施形態による前記手順で実行される第3の変換を決定する例示的なステップを示す。
図5】本発明の一実施形態による要素の構造測定システムの一実施形態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の数値及び記述が、本発明に対する理解を深めるよう、明快さを旨として光学要素の面の再構成に基づく測定方法に見られる他の多くの要素を除外しながら関連要素を例示すべく単純化されていることを理解されたい。しかし、当該要素は従来技術で公知であるため、ここで当該要素に関する詳細な説明を実行することは考えていない。本開示は、当業者に公知の全ての変型及び変更に向けられている。
【0024】
図1に、本発明の一実施形態による、要素の幾何学的構造を測定する手順の5個のステップを含むフロー図を示す。以下において、これら5個のステップを、例えば凸面である第1の面10及び例えば凹面である第2の面20を含む眼鏡レンズの幾何学的構造の測定に関して説明及び詳述する。
【0025】
利点として、当該光学要素は眼鏡レンズである。利点として、当該光学要素は累進多焦点眼鏡レンズである。
【0026】
ステップS1:フリンジ反射手順による第1の面10の測定
図2に示すように、例えば白色光により一様に照射された幅Lの発光帯からなり、且つ幅Lの非照射帯により分離された周期的フリンジ格子PS1が当該要素の第1の面10に射影される。フリンジ格子は、面10により反射されて、格子の歪んだ画像を形成する。当該画像は、画像取得装置、例えば可視スペクトル光に感応するデジタルカメラにより取得される。当該画像(又は複数の画像の組)を用いて、選択された数の点における面10への法線方向のマップMS1を計算する。このように、変換T1により、信号PS1から面10の「測定された」法線のマップMS1への移行することが可能になる。シミュレーションのより、既知の初期面への法線の第1の絶対推定値ES1を得ることが可能になる。「絶対」という修飾語の使用は、当該推定値により曖昧さ無しに結果を得ることが可能になることを示すことを意図している。これは、例えば波長λで実行される、第1の面での反射の幾何学的形状の干渉計測定に関しては当てはまらない。この種の測定は位相変動測定に基づいているため、そのシミュレーションにより、λを法とする、曖昧な第1の面の高さのマップだけを得ることが可能になり、この場合の推定値は絶対ではない。測定された法線のマップMS1は、第1の絶対推定値の取得を可能にするシミュレーションの知識に基づいて後続ステップS10で最適化により解かれる再構成問題の目標となる。
【0027】
無論、本発明は例字的に記述する実施形態に限定されず、従って、第1の信号MS1を測定するために反射フリンジ偏光測定以外の手順、例えば射影フリンジ偏光測定手順又はロンキー格子等を用いることも可能である。
【0028】
利点として、第1の信号MS1の測定は、ゾーン又は多点測定である。より厳密には、光学要素の第1の面の複数の点により、プローブ信号の第1の変換から同時に生じた信号MS1の測定をここでは「ゾーン」又は「多点」と称する。
【0029】
第1の実施形態において、第1の面10がフリンジ格子により照射され、当該格子の範囲は第1の面10のサイズよりも大きい。従って、ゾーン測定により、面10全体を単一の高速且つ簡単なステップで測定することが可能になる。
【0030】
利点として、ゾーン測定は、「基本ゾーン」と呼ばれる第1の面の一部だけを照射する上述のように例えばフリンジ格子を用いて実行される複数回の基本ゾーン測定により得られる。基本ゾーン測定は、基本ゾーンによる格子フリンジの反射から生じた信号を測定する。基本ゾーン測定は、基本ゾーンが第1の面の全体を覆うまで繰り返される。ゾーン測定は、各種の基本ゾーン測定を統合することにより得られる。
【0031】
2回の基本ゾーン測定に基づいて実行されるゾーン測定の当該第2の実施形態の例は以下のように記述することができる。第1の面10が、範囲が第1の面10の全表面よりも小さいフリンジ格子により照射される。例えば、格子フリンジが第1の面10の表面の60%を覆っているものとする。格子に関して第1の面の第1の位置に対する格子により覆われた第1の面の60%に対応する第1の基本ゾーンZ1に対して、上で示したように第1の基本ゾーン測定が実行される。第1の面10の全体を測定するために、前記第1の面10がその後で当該格子に関して移動することにより、後者が面10の他の部分に射影されて、例えば依然として第1の面の表面の60%を覆っているが第1の面の総面積の20%に対応する面積にわたり基本ゾーンZ1及びZ2が重なり合うゾーンである第2の基本ゾーンZ2を覆う。これら2回の基本ゾーン測定を実行するために、プローブ信号を第1のゾーンZ1に射影した後で第2の基本ゾーンに射影している測定ヘッドを移動させることも可能である。最後に、2回の基本ゾーン測定の統合は、格子フリンジにより構成されるプローブ信号に基づいて第1の信号SM1の測定を構成するために実行される。統合は、2個の基本ゾーンZ1とZ2の間でゾーンが重なる箇所にわたり信号SM1の自己相関関数を最大化することにより数値的に実行される。この場合、1個の制限が生じる。すなわち、良好な自己相関関数を得るために基本ゾーン間で重なるゾーンが充分な情報を含んでいることが必要である。
【0032】
基本ゾーン間の重なりは、第1の面10が光学的又は機械的な基準フレームを備えていることで例えば単焦点レンズのように一方の基本ゾーン測定の位置を他方に容易に合わせることが可能になる場合は必須ではない。
【0033】
好適には、要素の面の1個に対してゾーン測定の実行を可能にする基本ゾーン測定の回数は10を超えない。
【0034】
本第2の実施形態は、フリンジ格子反射測定の種類に限定されず、同一のプローブ信号を用いて表面積が大きい面の測定を可能にする、又はゾーン測定において更に高い精度が得られる特定のアプリケーションにおいて数回の取得でゾーン測定を実行することが可能になる利点をもたらす。
【0035】
ステップS2:ハルトマン式手順による第1及び第2の面を通る透過の測定
図3に示すように、平行な光線PS2を有する光ビームが測定対象の要素の面10、20を透過して送られる。ビームを構成する光線は、要素の2個の界面10、20で屈折により偏向を受ける。このように偏向された光線の一部はその後、開口の行列を通過して最終的にスクリーンにより遮断される2次ビームを形成する。スクリーンの画像は、画像取得装置、例えば可視スペクトル光に感応するデジタルカメラにより取得され、測定された要素の光学的効果の入射光線特徴の偏向に変換される2次ビームのシフトが得られる。取得された画像に対して実行される既知の処理により、これらのシフトは当該要素により透過される波面への法線のマップMS2に変換される。このように、変換T2は、信号PS2から「測定された」偏向のマップMS2への移行することが可能になる。
【0036】
光線の偏向に関する知識は、ハルトマン式測定システムの挙動のモデリングに関連付けられる。このモデリングに基づき、2個の既知面を有する要素による光線の偏向のシミュレーションにより、当該要素について得られる偏向の絶対推定値を得ることが可能になる。実行される第2の測定は、自身の動作のシミュレーションにより当該要素の面の絶対推定値を得ることが可能になる点が特筆される。測定された偏向のマップMS2は、後続ステップS20における最適化により解かれる再構成問題の目標となる。
【0037】
無論、本発明は例示的に記述する実施形態に限定されず、従って、第2の信号MS2を測定するために、透過ハルトマン偏光測定以外の手順、例えばシュリーレン又は透過フリンジ方式のシャック−ハルトマン偏光測定手順を用いることも可能である。
【0038】
第1の実施形態において、第1の信号MS1が、前記第1の面10による第1のプローブ信号PS1の第1の変換から生じ、第2の信号MS2が、前記第1の面10及び前記第2の面20による第2のプローブ信号PS2の第2の変換から生じる。
【0039】
第2の実施態様において、第1の信号MS1が、前記第1の面10による第1のプローブ信号PS1の第1の変換から生じ、第2の信号MS2が、前記第2の面20による第2のプローブ信号PS2の第2の変換から生じる。
【0040】
利点として、第1及び/又は第2のプローブ信号PS1、PS2は光信号である。
【0041】
利点として、第1の信号MS1は、第1の面10により反射された第1の周期的格子からなる光信号の偏光測定により得られる面10への法線のマップであり、第2の信号MS2を測定するステップS2は、第1及び第2の面10、20により透過される光信号の偏光測定である。
【0042】
利点として、第1の信号MS1を測定するステップS1は、第1の面10により反射された光信号の歪みの測定であり、第2の信号MS2を測定するステップS2は、第1及び第2の面10、20により透過された光信号の拡大又は増大の測定である。
【0043】
利点として、第2の信号MS2の測定はゾーン測定である。
【0044】
利点として、第1の信号MS1の測定及び第2の信号MS2の測定はゾーン測定である。
【0045】
利点として、前記ゾーン測定は複数回の基本ゾーン測定により実行され、前記基本ゾーン測定の各々が、面(又は複数の面)の基本ゾーンによるプローブ信号の変換から生じた基本信号を測定することにより前記基本ゾーンが前記面(又は前記複数面)の全体を覆う。
【0046】
利点として、測定ステップS1、S2は単一の装置により実行される。
【0047】
ステップS3:第3の変換の決定により第1の基準フレームR1から第2の基準フレームR2への通過が可能になる
第1の面10での反射により基準フレームR1における第1の信号MS1の測定を実行する場合、第1の面10の再構成だけが当該第1の測定SM1に基づいて実現可能である。第2の面の測定MS2が基準フレームR2において実行される。
【0048】
基準フレームR1から基準フレームR2まで移行するための変換を知ることが必要である。透過において実行される第2の測定MS2に基づいて第2の面20を再構成するステップは一般に、それ自体では第2推定された(又は再構成された)面の位置及び向きを第1の推定された面に対して合わせることが可能にならない。これを実現するには、第1の信号MS1の測定に紐付けられた第1の基準フレームR1から、第2の信号MS2の測定に紐付けられた第2の基準フレームR2への移行を可能にする第3の変換に関する知識が必要である。
【0049】
ここで、基準フレームR1、R2は、原点及び3個の独立な方向により定義されるアフィン空間の基準フレームを意味するものと理解されたい。第3の変換は従ってアフィン変換であり、従って、R1の原点及びR2の原点を分離するベクトル、及び基準フレームR1の軸から基準フレームR2の軸への移行に必要な回転を表す3次の回転行列により定義することができる。
【0050】
本実施形態の場合、第3の変換に関する知識は、第1及び第2の信号MS2の測定とは独立の判定を伴う。
【0051】
図4に示すように、第3の変換は基準点で決定することができ、要素の中央部の厚さは、例えば機械的又は光学的ゲージングを備えたシステムを用いて測定される。これにより、当該基準点における要素の面10と20の間の距離を確認することが可能になる。
【0052】
ステップS3は、ステップS1、S2で実行された測定の種類に依存する。
【0053】
実際、ステップS1、S2の測定が高度(例えば機械的ゲージングの)に関係する場合、利用可能な情報は面全体を再構成するのに充分である。
【0054】
測定が1次のデータ(例えば法線、又は光偏向)に関係する場合、不確定性があり、面の点の高度を与えずに再構成を実行することはできない(再構成問題には解が無限にある)。この問題を解決するために、要素の中央部の厚さの測定により、再構成したい面を空間内で位置決めすることが可能になる。
【0055】
2次の測定(例えば曲率又は拡大の測定)の場合、2個の不確定性がある。解の一意性を保証するには、面の点における高度及び面の点における法線を与える必要がある。従って、第2の面への法線を示す要素のプリズムと同様に、第2の面の高度を決定するために要素の中央部の厚さを測定することが可能である。
【0056】
当該プリズムが、第1の面に垂直な入射光線を用いて光学手段により測定された場合、プリズムの測定は第1の面と第2の面の間の変換として直接解釈することができる。プリズム測定が第1の面に垂直でない入射光線により実行された場合、プリズムは第2の面に依存する。従って、第2の面及び空間内での第2の面の向き(高度は中央部の厚さの測定により与えられる)を同時に再構成することが必要である。後者の状況において、以下に述べるステップS20は、第3の変換及び第2の面20の同時決定に至る。
【0057】
無論、本発明は例示的に記述する実施形態に限定されず、従って、第3の変換を決定するには、上述の透過光手順以外の手順、例えば機械的ゲージング又は光学的ゲージングを用いる反射光的手順を用いることも可能である。
【0058】
測定ステップS1、S2が異なる測定装置に対して実行される。これは、空間内における要素の絶対位置を決定するために共通の測定データを必要とする。本実施形態の場合、第1及び第2の測定は各々、要素の面の1個に置かれた微小円のタグシステムを用いて、又は代替的に、測定システム間の共通の機械的データにより実行し、次いで各システム内の等価な基準フレームの位置決めを保証することができる。
【0059】
従って、例えば、空間内で参照される自動的に中心に置かれる機械鉤爪を用いる。
【0060】
一実施形態によれば、第3の変換を決定するステップ(S3)は、要素の厚さの測定を含んでいる。
【0061】
一実施形態によれば、第3の変換を決定するステップ(S3)は更に、要素のプリズムの測定を含んでいる。
【0062】
ステップS10:特に第1の信号MS1に基づいて実行する第1の面10の推定
第1の再構成は、要素の第1の面10の推定を目的とする。第1の仮想面11が、フリンジ格子歪み測定を行う間、物理的要素の第1の面10と同一条件(位置及び向き)の下で空間内に配置されているものとする。測定MS1が実行されると共に第1の面10の位置及び第1の仮想面11の位置が既知である基準フレームをR1と呼ぶ。
【0063】
最適化による再構成の原理は既知である。
【0064】
例えば球面形状である第1の仮想面11の出発値が定義される。仮想面11による信号PS1の変換のシミュレーションにより、仮想面11への法線の推定値ES1を計算することが可能になる。
【0065】
要素の仮想面11の現在値について計算可能なコスト関数V1が次いで定義される。当該コスト関数V1は、仮想面11により実行される測定の推定値ES1の値が測定MS1の値に等しい場合に最小又は最大値をとるように設定されている。
【0066】
コスト関数の値により、測定ES1と測定MS1のシミュレーションとの差を定量化することが可能になる。各測定点に対して、測定から得られる法線を示すベクトルと、シミュレーションから得られる法線を示すベクトルとの差に等しいベクトルのノルムを考慮することが可能である。コスト関数は、全ての測定点に対するベクトルのノルムの2乗和であってよい。
【0067】
その後、反復的な最適化アルゴリズムにより仮想面11を修正してコスト関数V1を減少させる。例えば「Numerical Optimization」、Bonnas et al,Springer 2003に記述された、ガウス−ニュートン、又はレーベンバーグ−マルカート法等の最小二乗法アルゴリズムを用いる。各反復において、当該アルゴリズムは新規仮想面11を提案し、当該新規仮想面11による変換T1のシミュレーションによりコスト関数の新規な値V1を計算することが可能になる。
【0068】
反復処理が中断されるのは、例えば、コスト関数V1がとる値をもはや下げられない場合、又はコスト関数V1の値が所与の閾値より小さい場合のように停止基準が満たされた場合である。この結果、測定と変換T1を介した当該測定のシミュレーションとの差異が減少するため、測定された面10の正しい推定である仮想面11が得られる。
【0069】
ステップS20:特に第1の信号MS2に基づいて実行する第2の面20の推定
測定MS1に基づいて推定された第1の面10の再構成の結果を第1の面とし、第2の仮想面21を第2の面とする仮想要素を構築する。ステップS3で決定される第3の変換が、第1の推定面を表す基準フレームR1から、ステップ2での測定実行中に第2の面20の位置が参照される基準フレームR2に移行する規則である。当該第3の変換により、空間内に仮想要素を構築して、ステップS2での測定実行中に要素(物理的な部分)と実質的に同一条件下に置くことが可能になる。
【0070】
第2の信号の推定値を計算する当該初期仮想要素による信号PS2の変換T2のシミュレーション、すなわち、仮想要素により生じる(プローブ信号PS2の2次ビームの)偏向のマップを計算により得る方法が知られている。
【0071】
当該偏向マップの各点に対して、測定された偏向するベクトルとシミュレーションされた偏向ベクトルの差に等しいベクトルのノルムを考慮することが可能である。コスト関数は、これらのノルムの2乗和にあってもよい。
【0072】
その後、反復的な最適化アルゴリズムにより要素の仮想面21を修正してコスト関数V2の値を減少させる。例えば「Numerical Optimization」、Bonnas et al,Springer 2003に記述された、ガウス−ニュートン、又はレーベンバーグ−マルカート法等の最小二乗法アルゴリズムをこの目的に用いることができる。各反復において、当該アルゴリズムは新規仮想面21を提案し、当該新規面21による変換T2のシミュレーションによりコスト関数の新規な値V2を計算することが可能になる。反復処理が停止するのは、例えば、コスト関数の値がもはや下げられない場合、またコスト関数の値が所与の閾値より小さい場合である。この結果、測定と変換T2を介した当該測定のシミュレーションとの差が小さいため、測定された面20の推定値E2である仮想面21が得られる。
【0073】
利点として、各推定ステップS10、S20は反復的であり、各反復は、
a:測定信号の推定値ES1、ES2を得るべく、少なくとも1個の仮想面11、21及びプローブ信号PS1;PS2に基づいてシミュレーションSIM1、SIM2を実行するステップと、
b:ステップaで計算された推定値ES1、ES2と、測定信号MS1;MS2との差異をコスト関数V1、V2により測定するステップと、
c:ステップbで測定された差異に基づく停止基準が満たされない場合、前記差異を減らすべく仮想面11;21を修正してステップaに戻るステップと、
d:現在の反復のステップaで考慮した仮想面11;21の値として面10、20を推定するステップとを含んでいる。
【0074】
利点として、前記第2の面20の推定値21が更に、前記第1の面10の推定値11に基づいて得られる。
【0075】
利点として、推定値ステップS10、S20は、仮想面11、21が解析的に表されるステップを含んでいる。本ステップがもたらす利点は、計算速度を上げ、且つ最終的には後続の数値計算を行う間に要素の幾何学的構造の推定値を扱い易い形式で提供することである。
【0076】
図5に、第1の面10及び第2の面20により区切られた要素の幾何学的構造を測定するシステムを模式的に示し、前記システムは、
−少なくとも前記第1の面10による第1のプローブ信号PS1第1の変換から生じた第1の信号MS1を測定する第1の測定手段MM1、すなわち前記第1の変換の第1のシミュレーションにより、既知であって第1の信号MS1を測定する間に前記第1の面10と同様に第1の測定基準フレームR1内に配置された少なくとも1個の第1の仮想面11による第1のプローブ信号PS1の前記第1の変換から生じた信号の第1の推定値ES1の取得を可能にする第1の測定手段MM1、
−少なくとも前記第2の面20による第2のプローブ信号PS2の第2の変換から生じた第2の信号MS2を測定する第2の測定手段MM2、すなわち前記第2の変換の第2のシミュレーションにより、既知であって第2の信号MS2を測定する間に前記第2の面20と同様に第1の測定基準フレームR2内に配置された少なくとも1個の第2の仮想面21による第2のプローブ信号PS2の前記第2の変換から生じた信号の第2の推定値ES2の取得を可能にする第2の測定手段MM2、
−第1の基準フレームR1から第2の基準フレームR2への移行することを可能にする第3の変換を決定する手段MD、
−第1の信号MS1、前記第1のシミュレーション、第1の仮想面11、及び第1の推定値ES1と第1の信号MS1との差異を定量化する第1のコスト関数V1に基づいて前記第1の面10を推定すべく構成された第1の計算手段CM1、
−第2の信号MS2、前記第2のシミュレーション、第2の仮想面21、前記第3の変換、及び第2の推定値ES2と第2の信号MS2との差異を定量化する第2のコスト関数V2に基づいて前記第2の面20を推定すべく構成された第2の計算手段CM2を含んでいる。
【0077】
図5に示す例において、第1の面10の推定は第2面20の推定に役立つ。利点として、第1の計算手段CM1は、第1の面10により反射された光信号の歪みの測定を実行し、第2の計算手段CM2は、第1及び第2の面10、20により透過された光信号の拡大又は増大の測定を実行する。
【0078】
代替的に、第1の計算手段(CM1)は、第1の面(10)により反射された周期的格子からなる光信号の偏光測定により得られた第1の面(10)への法線のマップを生成し、
−第2の計算手段(CM2)は、第1及び第2の面(10、20)により透過された光信号の偏光測定を実行する。
利点として、本発明の一実施形態によるシステムは、前記システムに固有な基準フレーム内で表現された光学要素の面10、20の測定を実行すべくに構成された光学的測定システムの測定手段MM1、MM2を含んでいる。
【0079】
利点として、前記測定手段MM1、MM2の少なくとも一方がゾーン測定を実行する。
【0080】
利点として、前記第1及び第2の測定手段MM1、MM2がゾーン測定を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
幾何学的構造の当該測定の眼鏡レンズに対する応用の一つとして、例えば製造された部分の整合性を調べるために機械加工後レンズの公称部分との比較分析がある。
【0082】
従って、測定された眼鏡レンズ及び公称部分に共通の絶対データを定義することが必要である。従って、測定された眼鏡レンズ及び公称部分は、例えば測定が実行された部分に紐付けられた共通データと照合される。測定された眼鏡レンズ及び測定データにおける公称部分の位置は従って、レンズ上の機械的基準フレームと例えば平面である当該部分の関連付けにより、又はレンズ上の微細円状マーキングと当該部分の永続的タグ付けにより決定される。
【0083】
上記において、「一実施形態」への言及は、特定の特徴、構造、又は当該実施形態と合わせて記述された特徴が、本発明の少なくとも1個の実施例に含まれ得ることを示す。上述の詳細説明の各所における「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしも全て同一の実施形態を指す訳ではない。同様に、別個の又は代替的な実施形態は必ずしも他の実施形態と互いに排他的である訳ではない。
図1
図2
図3
図4
図5