特許第6223379号(P6223379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223379
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20171023BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-69801(P2015-69801)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188988(P2016-188988A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 秀治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】木野内 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佐助
(72)【発明者】
【氏名】本郷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】曽根 寿浩
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−058646(JP,A)
【文献】 特開2014−102397(JP,A)
【文献】 特開2005−221611(JP,A)
【文献】 特開2014−215353(JP,A)
【文献】 特開2011−123479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材に向かって前記記録媒体を加圧する加圧部材と、
前記加熱部材と前記加圧部材の少なくとも一方に対向して配置され、かつ前記加熱部材又は前記加圧部材の少なくとも端部に配置されると共に、放熱状態又は吸熱状態を切り替え可能な状態変化材を有する蓄熱部材と、
前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方と前記蓄熱部材との接触又は非接触を切り替える切替部と、
前記状態変化材の前記放熱状態又は前記吸熱状態の切り替え、および前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方と前記蓄熱部材との接触又は非接触の切り替え、を制御する制御部と、
を備える、
画像形成装置。
【請求項2】
前記状態変化材を前記放熱状態又は前記吸熱状態に切り替えるためのトリガー情報を取得する情報取得部を備え、
前記制御部は、
前記情報取得部によって取得される前記トリガー情報に応じて、前記状態変化材の前記放熱状態又は前記吸熱状態の切り替えと、前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方と前記蓄熱部材との接触又は非接触の切り替え、を制御する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記切替部は、
前記トリガー情報に応じたタイミングにおいて、
前記状態変化材が前記吸熱状態である前記蓄熱部材を、前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方の非通紙領域と接触させ、
前記状態変化材が前記放熱状態である前記蓄熱部材を、前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方の通紙領域と接触させる、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記蓄熱部材は、
前記切替部によって回転駆動される回転軸と、
前記回転軸に対して相互に異なる偏心状態で前記蓄熱部材の中央部に設けられる第1偏心部および前記蓄熱部材の端部に設けられる第2偏心部と、を備え、
前記切替部は、
前記蓄熱部材を前記回転軸の軸周りに回転させることによって、前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方に、前記第1偏心部又は前記第2偏心部を切り替えて接触させる、
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記状態変化材の状態に関する情報を取得する状態情報取得部を備え、
前記切替部は、
前記状態情報取得部によって取得される前記状態変化材の状態に関する情報に応じて、
前記加熱部材及び前記加圧部材の少なくともどちらか一方と前記蓄熱部材との接触又は非接触を切り替える、
請求項1から請求項4の何れか1つに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙などのシート状の記録媒体(以下、「シート」と総称する。)を搬送しながら、シートに画像を形成する画像形成装置がある。画像形成装置は、画像形成部と、転写部と、定着部とを備える。画像形成部は、トナーを用いて中間転写ベルトの表面上に可視画像(トナー像)を形成する。転写部は、中間転写ベルトの表面上のトナー像をシートの表面上に転写する。定着部は、シートに熱と圧力を与えることによってトナー像をシートの表面上に定着させる。しかしながら、シートが定着部を通過する際には、シートのサイズに応じて、シートが存在する通紙領域と、シートが存在しない非通紙領域とが生じる。定着部が非通紙領域に与える熱は、トナー像の定着に消費されずに外部に放熱されるとともに、非通紙領域の温度を上昇させる可能性があった。非通紙領域の温度が過剰に上昇すると、定着部を冷却するために、画像形成の一連の動作が中断される可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−102397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、定着部の非通紙領域の温度が過剰に上昇することを防ぎ、定着部のエネルギー効率を向上させることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画像形成装置は、加熱部材と、加圧部材と、蓄熱部材と、切替部と、制御部とを持つ。加熱部材は、記録媒体を加熱する。加圧部材は、加熱部材に向かって記録媒体を加圧する。蓄熱部材は、加熱部材と加圧部材の少なくとも一方に対向して配置される。蓄熱部材は、加熱部材又は加圧部材の少なくとも端部に配置される。蓄熱部材は、放熱状態又は吸熱状態を切り替え可能な状態変化材を有する。切替部は、加熱部材及び加圧部材の少なくともどちらか一方と蓄熱部材との接触又は非接触を切り替える。制御部は、状態変化材の放熱状態又は吸熱状態の切り替えを制御する。制御部は、加熱部材及び加圧部材の少なくともどちらか一方と蓄熱部材との接触又は非接触の切り替えを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の画像形成装置の内部における構成の一例を模式的に示す図。
図2】実施形態の画像形成装置における定着部の構成の一例を模式的に示す各ローラの中心軸に平行な軸方向に対する断面図。
図3】実施形態の画像形成装置における定着ベルト、加圧ローラ、および蓄熱ローラの構成の一例を模式的に示す斜視図。
図4】実施形態の画像形成装置における加圧ローラ、蓄熱ローラ、および駆動部の構成の一例を模式的に示す側面図。
図5】実施形態の画像形成装置の機能構成の一例を示すブロック図。
図6】実施形態の画像形成装置における印刷処理の流れを示すフローチャート。
図7】実施形態の変形例の画像形成装置における定着部の構成の一例を模式的に示す側面図であり、蓄熱ローラの第1端部及び第2端部が加圧ローラに接触する状態を示す図。
図8】実施形態の変形例の画像形成装置における定着部の構成の一例を模式的に示す側面図であり、蓄熱ローラの中央部が加圧ローラに接触する状態を示す図。
図9】実施形態の変形例における画像形成装置の機能構成の一例を示すブロック図。
図10】実施形態の変形例における画像形成装置の印刷処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の画像形成装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
なお、以下に示す各図において、同一構成については同一の符号を付す。
図1は、実施形態の画像形成装置100の内部における構成の一例を模式的に示す図である。
画像形成装置100は、例えば複合機である。画像形成装置100は、図1に示すように、コントロールパネル1、スキャナ部2、プリンタ部3、シート収容部4、および搬送部5を備える。
画像形成装置100は、トナー等の現像剤を用いてシートSの表面上に画像を形成する。シートSは、例えば紙またはラベル用紙である。シートSは、シートSの表面に画像形成装置100が画像を形成できる物であればどのような物であってもよい。
【0009】
コントロールパネル1は、表示部11および操作部12を備える。表示部11は、液晶ディスプレイおよび有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。表示部11は、画像形成装置100に関する種々の情報を表示する。操作部12は、複数のボタンなどを備える。操作部12は、複数のボタンに対するユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル1は、操作部12に対するユーザの操作に応じた信号を、後述する図4に示す制御部101に出力する。なお、表示部11および操作部12は、一体的に形成されるタッチパネルでもよい。
【0010】
スキャナ部2は、読み取り対象物の画像情報を光の明暗として読み取る。スキャナ部2は、読み取った画像情報に基づいて画像データを生成し、画像データを後述する図4に示す記憶部102に記憶する。スキャナ部2が生成する画像データは、例えば、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。スキャナ部2が生成する画像データは、例えば、プリンタ部3に出力されてもよい。
【0011】
プリンタ部3は、スキャナ部2が生成する画像データまたはネットワークを介して他の情報処理装置から受信される画像データに基づいて、シートSの表面上に画像を形成する。プリンタ部3は、例えば、トナーによってシートSの表面上に画像(以下、トナー像という)を形成する。
【0012】
シート収容部4は、プリンタ部3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ、プリンタ部3に供給する。シート収容部4は、複数の給紙カセット20A、20B、20Cを備える。各給紙カセット20A、20B、20Cは、それぞれに予め設定したサイズおよび種類のシートSを収納する。各給紙カセット20A、20B、20Cは、それぞれピックアップローラ21A、21B、21Cを備える。各ピックアップローラ21A、21B、21Cは、各給紙カセット20A、20B、20CからシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21A、21B、21Cは、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0013】
搬送部5は、プリンタ部3およびシート収容部4においてシートSを搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24とを備える。搬送部5は、ピックアップローラ21A、21B、21Cから供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。レジストローラ24は、後述するプリンタ部3の転写部28がトナー像をシートSの表面上に転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップNに突き当てる。搬送ローラ23は、シートSを撓ませることにより搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、搬送ローラ23から送り出されるシートSの先端をニップNにおいて整合させた後に、シートSを転写部28側に搬送する。
【0014】
以下に、プリンタ部3の詳細について説明する。
プリンタ部3は、複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25D、露光部26、中間転写ベルト27、転写部28、および定着部29を備える。
複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの各々は、シートSに転写するトナー像を形成する。各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの各々は、感光体ドラム(像坦持体)25aを備える。複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dは、各感光体ドラム25aの表面に選択的にトナーを供給する現像装置25bを備える。現像装置25bは、非消色性のイエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナー、並びに消色性のトナーを収容する。消色性のトナーは、所定の消色温度よりも高い温度で消色する。
【0015】
露光部26は、各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの感光体ドラム25aに対向する。露光部26は、各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの感光体ドラム25aの表面に、画像データに基づくレーザ光を照射する。露光部26は、レーザ光の照射によって各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの感光体ドラム25aの表面上に静電潜像を形成する。各現像装置25bは、各感光体ドラム25aの表面上の静電潜像にトナーを供給することによって静電潜像を現像する。各現像装置25bは、各感光体ドラム25aの表面上の静電潜像に帯電しているトナーを付着させることによってトナー像を形成する。画像形成部25Yの現像装置25bは、感光体ドラム25aの表面上の静電潜像をイエローのトナーにより現像する。画像形成部25Mの現像装置25bは、感光体ドラム25aの表面上の静電潜像をマゼンタのトナーにより現像する。画像形成部25Cの現像装置25bは、感光体ドラム25aの表面上の静電潜像をシアンのトナーにより現像する。画像形成部25Kの現像装置25bは、感光体ドラム25aの表面上の静電潜像をブラックのトナーにより現像する。画像形成部25Dの現像装置25bは、感光体ドラム25aの表面上の静電潜像を消色性のトナーにより現像する。
【0016】
各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dは、各感光体ドラム25aの表面上で帯電しているトナー像を中間転写ベルト27の表面上に転写(一次転写)する。各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dは、それぞれの1次転写位置で各感光体ドラム25aのトナー像に転写バイアスを与える。各画像形成部25Y、25M、25C、25Kは、各感光体ドラム25aの表面上における各色のトナー像を中間転写ベルト27の表面上に重ね合わせて転写する。各画像形成部25Y、25M、25C、25Kは、各色のトナー像を中間転写ベルト27の表面上に重ね合わせて転写することによって、カラーのトナー像を形成する。画像形成部25Dは、中間転写ベルト27上に消色性のトナー像を転写する。
【0017】
転写部28は、中間転写ベルト27およびシートSを厚さ方向の両側から挟み込む支持ローラ28aおよび2次転写ローラ28bを備える。支持ローラ28aおよび2次転写ローラ28bが対向する位置は2次転写位置である。転写部28は、転写電流に応じた転写バイアスを2次転写位置に与えることによって、中間転写ベルト27の表面上の帯電しているトナー像をシートSの表面上に転写する。
【0018】
定着部29は、シートSに与える熱と圧力によって、トナー像をシートSの表面上に定着させる。
プリンタ部3は、反転ユニット30を備える。反転ユニット30は、定着部29から排出されるシートSを、スイッチバックにより反転させる。反転ユニット30は、反転後のシートSを再度レジストローラ24の手前に搬送する。反転ユニット30は、定着処理が成されたシートSの裏面にトナー像を形成するためにシートSを反転させる。
【0019】
以下に、図2図3、および図4を参照して、定着部29の構成について説明する。図2は、実施形態の画像形成装置100における定着部29の構成の一例を模式的に示す各ローラの中心軸に平行な軸方向に対する断面図である。図3は、実施形態の画像形成装置100における定着ベルト42、加圧ローラ46、および蓄熱ローラ47の構成の一例を模式的に示す斜視図である。図4は、実施形態の画像形成装置100における加圧ローラ46、蓄熱ローラ47、および駆動部53の構成の一例を模式的に示す側面図である。
【0020】
定着部29は、例えば、被加熱部材が交流磁界により発熱する現象を用いるIH定着型の定着器である。
定着部29は、図2に示すように、IH部41と、定着ベルト42と、整磁部材43と、フレーム44と、加圧パッド45と、加圧ローラ46と、蓄熱ローラ47と、温度センサ49とを備える。
【0021】
IH部41は、コイル41a、コア41b、および励磁回路41cを備える。
コイル41aは、複数の素線を撚って成るリッツ線により形成される。コイル41aは、コア41bに装着される。コア41bは、例えば、フェライトコアである。コイル41aおよびコア41bは、耐熱性の樹脂材のカバーに内包される。樹脂材は、例えば、液晶ポリマー、PPS、およびフェノール樹脂などである。励磁回路41cは、コイル41aに交流電流を供給する。交流電流の周波数は、例えば、20kHzから100MHzなどである。コイル41aは、励磁回路41cから交流電流が供給されることによって、定着ベルト42を誘導発熱させる磁界を発生する。
【0022】
定着ベルト42は、シートSを加熱する加熱部材である。定着ベルト42の形状は、筒状形状に形成される。定着ベルト42の形状は、無端状のベルト形状に形成される。定着ベルト42は、可撓性を有する材料から形成される。定着ベルト42の軸方向Pの長さは、定着部29を通過するシートSの最大幅(シートSの搬送方向Cと直交する方向におけるシートSの最大長さ)よりも長く形成される。軸方向Pは、後述する加圧ローラ46および蓄熱ローラ47の各回転軸52,52に平行な方向である。定着ベルト42は、導電発熱層、弾性層、および表面離型層を備える。定着ベルト42において、導電発熱層、弾性層、および表面離型層は、順次に積層されている。
導電発熱層は、例えば、NiおよびCuなどの材料により形成される。導電発熱層は、単層または異部材による多層に形成される。導電発熱層は、コイル41aの磁界で渦電流が発生することによって発熱する。
【0023】
弾性層は、例えば、シリコンゴムなどの弾性体の材料により形成される。弾性層は、シートSの表面に対するトナー像の定着性を向上させる。
表面離型層は、定着ベルト42の最表層である。表面離型層は、例えば、PFA樹脂などのフッ素樹脂の材料により形成される。
弾性層および表面離型層の厚さは、熱容量が過大とならないような所定厚さに形成される。弾性層および表面離型層の厚さが、所定厚さであることによって、定着部29のウォーミングアップ時間が短縮される。ウォーミングアップ時間は、例えば、画像形成装置100の起動時などにおいて定着ベルト42の温度を所定の定着温度に到達させるのに要する時間などである。
【0024】
整磁部材43は、定着ベルト42の内部に配置される。整磁部材43は、例えば、合金などの磁性材料により形成される。整磁部材43の形状は、定着ベルト42の内面に沿って湾曲する板状に形成される。整磁部材43の断面形状は、定着ベルト42の内面に沿う円弧形状に形成される。整磁部材43の軸方向Pの長さは、定着部29を通過するシートSの最大幅(シートSの搬送方向Cと直交する方向におけるシートSの最大長さ)よりも長く形成される。
【0025】
整磁部材43は、コイル41aの磁界で渦電流が発生することによって発熱する。整磁部材43は、コイル41aの磁界で誘導発熱することによって、定着ベルト42の加熱を補助する。整磁部材43は、キューリー温度が所定温度になるように形成されている。所定温度は、整磁部材43の発熱によって定着ベルト42の温度を所定の閾温度以上に上昇させないための温度である。整磁部材43の温度がキューリー温度以上に上昇すると、整磁部材43の透磁率が低下することに伴って整磁部材43の磁性が消失する。整磁部材43の磁性が消失すると、整磁部材43による定着ベルト42の加熱補助は停止される。
【0026】
整磁部材43は、例えば、定着ベルト42の非通紙領域の温度に応じて、定着ベルト42の加熱補助の実行または停止を自律的に切り替える。定着ベルト42の非通紙領域は、図3に示すように、定着部29を通過するシートSに接触しない領域である。定着ベルト42の非通紙領域は、例えば、定着ベルト42の軸方向Pの端部42aである。定着ベルト42の通紙領域は、定着部29を通過するシートSに接触する領域である。定着ベルト42の通紙領域は、例えば、定着ベルト42の軸方向Pの中央部42bである。定着ベルト42の通紙領域の温度は、後述する温度制御によって所望の温度に維持される。定着ベルト42の非通紙領域では、シートSによる吸熱が無い状態で加熱が継続されることによって、温度が所望の温度よりも上昇する場合がある。定着ベルト42の非通紙領域の温度上昇に伴って整磁部材43の温度がキューリー温度以上に上昇すると、整磁部材43の磁性は消失する。整磁部材43の磁性が消失すると、整磁部材43による定着ベルト42の加熱補助は停止される。整磁部材43による定着ベルト42の加熱補助が停止されると、定着ベルト42の非通紙領域の温度上昇が抑制される。定着ベルト42の非通紙領域の温度低下に伴って整磁部材43の温度がキューリー温度未満に低下すると、整磁部材43の磁性は回復する。整磁部材43の磁性が回復すると、整磁部材43による定着ベルト42の加熱補助は再開される。
【0027】
定着部29は、定着ベルト42の内部における整磁部材43の内側に磁束遮断部材43aを備える。磁束遮断部材43aは、例えば、アルミニウムなどの材料により形成される。磁束遮断部材43aは、定着ベルト42の内部において整磁部材43を透過したコイル41aの磁界が磁束遮断部材43aの内側に到達することを遮断する。磁束遮断部材43aは、整磁部材43の温度を均一化する。磁束遮断部材43aは、磁束遮断部材43aの内側に配置されるセンサなどに対するノイズを低減する。
【0028】
フレーム44と、フレーム44に保持される加圧パッド45とは、定着ベルト42の内部に配置されている。加圧パッド45は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性が高い材料から形成される。加圧パッド45は、定着ベルト42の中心軸に対して、整磁部材43の反対側に配置される。加圧パッド45は、定着ベルト42の外部の加圧ローラ46に対向するように定着ベルト42の内周面上に配置される。加圧パッド45および加圧ローラ46は、定着ベルト42を厚さ方向の両側から挟み込むようにしてニップ部NAを形成する。定着ベルト42および加圧ローラ46は、ニップ部NAを通過するシートSに熱と圧力を与えることによって、シートSの表面上のトナー画像をシートSに定着させる。加圧パッド45は、定着ベルト42が回転する際に、定着ベルト42の内周面に接触しながら滑るので、加圧ローラ46に対する相対位置を一定に維持する。
フレーム44は、ニップ部NAの荷重を支持するための十分な強度を有する。定着ベルト42の内部および外部においてフレーム44を保持する部材は、フレーム44に作用する荷重を支持するための十分な強度を有する。
【0029】
加圧ローラ46は、定着ベルト42に向かってシートSを加圧する加圧部材である。加圧ローラ46の形状は、円柱状に形成されている。加圧ローラ46の軸方向Pの長さは、定着ベルト42の軸方向Pの長さと同一に形成されている。加圧ローラ46は、例えば、多孔質状の樹脂またはゴムなどの柔らかい弾性体の材料により形成される。加圧ローラ46の剛性は、定着ベルト42の剛性よりも大きく形成されている。加圧ローラ46は、ニップ部NAにおいて定着ベルト42の外周面に加圧状態で接する。加圧ローラ46は、ローラ駆動部(図示略)が出力する駆動力によって回転軸51の軸周りに回転する。ローラ駆動部は、例えばモータと、モータの回転駆動力を加圧ローラ46の回転軸51に伝達する伝達機構となどを備える。加圧ローラ46は、定着ベルト42に加圧しながら回転軸51の軸周りに回転することによって、定着ベルト42を従動回転させる。
加圧ローラ46の非通紙領域は、定着ベルト42と同様に、定着部29を通過するシートSに接触しない領域である。加圧ローラ46の非通紙領域は、例えば、加圧ローラ46の軸方向Pの端部46aである。加圧ローラ46の通紙領域は、定着ベルト42と同様に、定着部29を通過するシートSに接触する領域である。加圧ローラ46の通紙領域は、例えば、加圧ローラ46の軸方向Pの中央部46bである。
【0030】
蓄熱ローラ47は、加圧ローラ46に対向して配置される蓄熱部材である。蓄熱ローラ47の形状は、円筒状に形成されている。蓄熱ローラ47は、例えば、高い熱伝導性の材料により形成されている。蓄熱ローラ47は、相変化材48を内部に備える。相変化材48は、放熱状態又は吸熱状態を切り替え可能な状態変化材である。相変化材48は、液体から固体に変化する際に放熱するとともに、固体から液体に変化する際に吸熱する。相変化材48は、放熱タイミングを変更可能に放熱状態または吸熱状態に切り替わる。相変化材48は、例えば、酢酸ナトリウム水和物およびノルマルパラフィンなどである。相変化材48は、トリガーとなる外部信号の入力によって放熱する。外部信号は、例えば、電気信号および振動信号などである。相変化材48は、液体状態からゆっくりと温度低下すると過冷却状態になる。過冷却状態の相変化材48は、相変化温度以下に温度低下しても液体状態を維持して、固体状態へと変化しない。過冷却状態の相変化材48は、電気信号または振動信号が入力されると、液体状態から固体状態に急激に変化するとともに発熱する。相変化材48が固体状態から液体状態に変化する際の相変化材48の温度は、相変化材48が完全に液体状態になるまでは相変化温度以上にならない。相変化材48の温度は、相変化材48が完全に固体状態から液体状態に変化した後において、相変化温度以上に上昇する。
【0031】
蓄熱ローラ47は、図4に示すように、加圧ローラ46の軸方向Pの端部46aにおいて加圧ローラ46の外周面に対向して配置される。2つの蓄熱ローラ47は、加圧ローラ46の軸方向Pの両端部46aに配置される。蓄熱ローラ47の回転軸52は、加圧ローラ46の回転軸51に平行に配置される。蓄熱ローラ47は、回転軸52の軸周りに回転する。
蓄熱ローラ47の回転軸52は、駆動部53によって駆動される。駆動部53は、加圧ローラ46と蓄熱ローラ47との接触又は非接触を切り替える切替部である。駆動部53は、例えばモータ53aと、モータ53aの回転駆動力を蓄熱ローラ47の回転軸52に伝達する伝達機構53bとを備える。伝達機構53bは、例えばリンクなどによって、2つの蓄熱ローラ47の回転軸52に一体的に連結される回転軸53cを備える。伝達機構53bの回転軸53cは、モータ53aの回転駆動力によって回転軸53cの軸周りに回転する。伝達機構53bの回転軸53cは、蓄熱ローラ47の回転軸52と平行に配置され、軸方向Pの直交方向に回転軸52から離間して配置されている。伝達機構53bは、モータ53aの回転駆動力によって、蓄熱ローラ47の回転軸52を、回転軸53cの軸周りに回転させる。伝達機構53bは、蓄熱ローラ47の回転軸52を回転軸53cの軸周りに回転させることによって、加圧ローラ46に対する蓄熱ローラ47の接触または非接触を切り替える。
蓄熱ローラ47は、加圧ローラ46に接触している場合、加圧ローラ46の回転に伴って回転軸52の軸周りに従動回転する。
【0032】
温度センサ49は、定着ベルト42の表面温度を検出する。温度センサ49は、例えば、非接触型の赤外線温度センサなどである。定着部29は、例えば、3つの温度センサ49を備える。第1および第2の温度センサ49は、図3に示すように、定着ベルト42の軸方向Pの両端部42aの表面温度を検出する。第3の温度センサ49は、定着ベルト42の軸方向Pの中央部42bの表面温度を検出する。定着ベルト42の軸方向Pの両端部42aは、加圧ローラ46の軸方向Pの両端部46aに接触する。加圧ローラ46の軸方向Pの両端部46aは、蓄熱ローラ47の接触または非接触が切り替えられる。定着ベルト42の軸方向Pの両端部42aは、例えば、定着部29を通過するシートSのサイズに応じて、通紙領域または非通紙領域に切り替わる部位である。第1および第2の温度センサ49は、定着部29を通過するシートSのサイズに応じて、通紙領域または非通紙領域の表面温度を検出する。実施形態の画像形成装置100が処理対象とするシートSの各種のサイズに対して、定着ベルト42の軸方向Pの中央部42bは常に通紙領域となる。第3の温度センサ49は、定着部29を通過するシートSのサイズにかかわらずに通紙領域の表面温度を検出する。
【0033】
以下に、図5を参照して、画像形成装置100の機能構成について説明する。図5は、画像形成装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0034】
コントロールパネル1、スキャナ部2、およびプリンタ部3は、制御部101と接続される。制御部101は、画像形成装置100の全体の動作を統括的に制御する。制御部101は、コントロールパネル1、スキャナ部2、およびプリンタ部3の各々のCPUを制御する。制御部101は、CPU、ROM、およびRAMを備える。ROMは、画像形成装置100の全体の動作を制御する制御プログラムを記憶する。RAMは、CPUの処理に用いられる各種データを一時的に記憶する。制御部101は、記憶部102と接続される。
記憶部102は、スキャナ部2が生成する画像データまたはネットワークを介して他の情報処理装置から受信される画像データを記憶する。記憶部102は、例えば、ハードディスク装置、または半導体メモリなどである。
【0035】
コントロールパネル1は、表示部11、操作部12、およびパネル制御部111、を備える。パネル制御部111は、表示部11および操作部12の動作を制御する。パネル制御部111は、CPU、ROM、およびRAMを備える。ROMは、表示部11および操作部12の動作を制御する制御プログラムを記憶する。RAMは、CPUの処理に用いられる各種データを一時的に記憶する。
【0036】
表示部11は、画像形成装置100の動作に関してユーザが指定する種々の情報を表示する。表示部11は、ユーザが操作部12を操作することによって入力される情報を表示する。操作部12は、例えば、スキャナ部2およびプリンタ部3の各々が実行する処理に関する情報を入力するためのユーザの操作を受け付ける。スキャナ部2が実行する処理に関する情報は、例えば、読み取り解像度、圧縮率、および色情報等の情報である。プリンタ部3が実行する処理に関する情報は、例えば、シートSの印刷枚数、印刷条件、シートSの大きさ、およびシートSの種類等の情報である。印刷条件は、例えば、白黒印刷またはカラー印刷の指定、片面印刷または両面印刷の指定、および搬送方向に対するシートSの向きなどである。操作部12は、ユーザによって指定される種々の情報を、パネル制御部111に出力する。パネル制御部111は、操作部12からの情報を制御部101に出力する。制御部101は、パネル制御部111からの情報をスキャナ部2またはプリンタ部3に出力する。
【0037】
スキャナ部2は、スキャナ制御部121および読取部122を備える。スキャナ制御部121は、読取部122による画像情報の読み取りを制御する。スキャナ制御部121は、CPU、ROM、およびRAMを備える。ROMは、読取部122の動作を制御する制御プログラムを記憶する。RAMは、CPUの処理に用いられる各種データを一時的に記憶する。読取部122は、読み取り対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像情報に基づいて画像データを生成する。
【0038】
プリンタ部3は、プリンタ制御部131を備える。プリンタ制御部131は、プリンタ部3によるシートSへの画像の印刷を制御する。プリンタ制御部131は、CPU、ROM、およびRAMを備える。ROMは、複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25D、露光部26、転写部28、および定着部29の動作を制御する制御プログラムを記憶する。RAMは、CPUの処理に用いられる各種データを一時的に記憶する。
プリンタ制御部131は、3つの温度センサ49と接続されている。
【0039】
以下に、図6を参照して、実施形態の画像形成装置100における印刷処理の流れについて説明する。図6は、実施形態の画像形成装置100における印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
先ず、ユーザによってコントロールパネル1の操作部12から印刷処理の実行を指示する情報が入力される。パネル制御部111は、操作部12から入力される情報が示す処理を印刷ジョブとして受け付ける。制御部101は、印刷ジョブをパネル制御部111から取得するとともに、内蔵するRAMに書き込む(ACT01)。印刷ジョブは、スキャナ部2およびプリンタ部3の各々が実行する処理に関する情報を含んでいる。
【0041】
次に、制御部101は、スキャナ制御部121およびプリンタ制御部131の各々に印刷ジョブに応じた処理の実行を指示する(ACT02)。制御部101は、スキャナ制御部121およびプリンタ制御部131の各々が実行する処理に関する情報を出力する。スキャナ部2に出力される情報は、例えば、読み取り解像度、圧縮率、および色情報等の情報である。プリンタ制御部131に出力される情報は、例えば、シートSの印刷枚数、印刷条件、シートSの大きさ、およびシートSの種類等の情報である。印刷条件は、例えば、白黒印刷またはカラー印刷の指定、片面印刷または両面印刷の指定、および搬送方向に対するシートSの向きなどである。スキャナ制御部121およびプリンタ制御部131の各々は、制御部101から出力された情報を、内蔵するRAMに書き込む。
【0042】
次に、スキャナ制御部121は、制御部101から実行が指示された処理に関する情報を、内蔵するRAMから読み込む。スキャナ制御部121は、RAMから取得した情報に応じて、読取部122に読み取り対象物の画像情報を読み取らせる。スキャナ制御部121は、読取部122が画像情報に基づいて生成する画像データを取得する(ACT03)。スキャナ制御部121は、画像データを制御部101に出力する。制御部101は、スキャナ制御部121からの画像データを、記憶部102に記憶するとともに、プリンタ制御部131に出力する。プリンタ制御部131は、スキャナ制御部121からの画像データを、内蔵するRAMに書き込む。
【0043】
次に、プリンタ制御部131は、制御部101から実行が指示された処理に関する情報を、内蔵するRAMから読み込む。プリンタ制御部131は、RAMから取得した情報に応じて、定着ベルト42の表面温度の温度制御を開始する(ACT04)。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aおよび中央部42bの表面温度を、3つの温度センサ49から一定の周期で取得する。プリンタ制御部131は、3つの温度センサ49から逐次に取得する温度を、内蔵するRAMに書き込む。プリンタ制御部131は、印刷ジョブの印刷条件の中で定着温度に関する情報に基づいて、定着ベルト42の表面温度に対する設定温度を取得する。設定温度は、シートSが定着部29を通過する際に、トナー像をシートSの表面上に定着させるために必要な温度である。設定温度は、トナー像の形成に用いられるトナーの種類によって異なるので、印刷条件の中で定着温度に関する情報は、白黒印刷又はカラー印刷の指定の情報などである。白黒印刷およびカラー印刷の各々と、設定温度との対応関係のデータは、プリンタ制御部131が内蔵するROMに記憶されている。プリンタ制御部131は、印刷ジョブの印刷条件に基づいて、内蔵するROMから設定温度を取得する。
【0044】
プリンタ制御部131は、定着ベルト42の少なくとも中央部42bの表面温度を設定温度に一致させるように励磁回路41cを制御する。定着ベルト42の中央部42bは、シートSが定着部29を通過する際に、シートSのサイズにかかわらずに通紙領域となる部位である。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の表面温度と設定温度とを用いた温度に関するフィードバック制御によって、励磁回路41cの駆動周波数を取得する。励磁回路41cは、プリンタ制御部131が取得する駆動周波数の交流電流をコイル41aに通電することによって、定着ベルト42および整磁部材43を誘導発熱させる。
【0045】
次に、プリンタ制御部131は、温度センサ49から取得する定着ベルト42の表面温度が設定温度に到達したか否かを判定する(ACT05)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT05:NO)には、プリンタ制御部131は、ACT05の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT05:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をACT06に進める。
【0046】
次に、プリンタ制御部131は、定着部29のウォームアップ完了を示す情報を制御部101に出力する。制御部101は、定着部29のウォームアップ完了を示す情報に応じて、プリンタ部3へのシートSの搬送をシート収容部4及び搬送部5に指示する(ACT06)。制御部101は、印刷ジョブに含まれるシートSのサイズおよび種類の情報に基づいて、給紙カセット20A、20B、20Cの何れかを指定する。シート収容部4は、制御部101からの指示に応じて、何れかの給紙カセット20A、20B、20CからシートSを1枚ずつ取り出して、シートSを搬送部5へ供給する。搬送部5は、転写部28が中間転写ベルト27のトナー像をシートSに転写するタイミングに合わせて、シート収容部4からのシートSを転写部28に搬送する。
【0047】
次に、プリンタ制御部131は、各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25D、露光部26、および転写部28に動作開始を指示する(ACT07)。先ず、露光部26は、スキャナ部2からの画像データを用いて、感光体ドラム25aの表面上に静電潜像を形成する。次に、複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの少なくとも何れかは、感光体ドラム25aの静電潜像をトナーによって現像することでトナー像を形成する。次に、複数の画像形成部25Y、25M、25C、25K、25Dの少なくとも何れかは、感光体ドラム25aのトナー像を中間転写ベルト27の表面上に転写する。次に、転写部28は、中間転写ベルト27の表面上のトナー像を、搬送部5から搬送されるシートSの表面上に転写する。
【0048】
次に、プリンタ制御部131は、転写部28から定着部29にシートSが搬送されることに先立って、シートSの幅が所定幅以下であるか否かを判定する(ACT08)。プリンタ制御部131は、シートSの幅の情報を、定着ベルト42の両端部42aに対する加熱補助が必要か否かを判定するためのトリガー情報としている。プリンタ制御部131は、トリガー情報を取得する情報取得部として機能する。プリンタ制御部131は、シートSの幅の情報を、上述したACT02において内蔵するRAMに書き込んだシートSの大きさの情報に基づいて取得する。所定幅は、例えば、2つの蓄熱ローラ47の軸方向Pの間隔よりも小さな値である。所定幅の情報は、プリンタ制御部131が実行する制御プログラムに予め含まれている。
この判定結果が「NO」の場合(ACT08:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT14に進める。この場合、定着ベルト42の通紙領域は、2つの蓄熱ローラ47が接触する加圧ローラ46の両端部46aに接触する。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT08:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をACT09に進める。この場合、定着ベルト42の通紙領域は、2つの蓄熱ローラ47が接触する加圧ローラ46の両端部46aに接触しない。
【0049】
次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって2つの蓄熱ローラ47を加圧ローラ46の両端部46aから離間させた非接触状態とする(ACT09)。
次に、プリンタ制御部131は、定着部29に定着処理の実行を指示する(ACT10)。加圧ローラ46は、定着ベルト42に加圧状態で接触することによってニップ部NAを形成する。加圧ローラ46は、回転軸51の軸周りに回転することによって、定着ベルト42を従動回転させる。定着ベルト42および加圧ローラ46は、転写部28からのシートSにニップ部NAにおいて加熱と加圧とを行ってトナー像を定着させる。プリンタ制御部131は、例えばカウンタのインクリメントによって、定着処理が施されたシートSの積算枚数を計数する。プリンタ制御部131は、カウンタの計数値を内蔵するRAMに書き込む。
【0050】
次に、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aにおける表面温度の最新の情報を、内蔵するRAMから読み込む。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aの表面温度が冷却判定温度以上であるか否かを判定する(ACT11)。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aの表面温度を、定着ベルト42の両端部42aの冷却が必要か否かを判定するためのトリガー情報としている。定着ベルト42の両端部42aの表面温度を検出する温度センサ49は、トリガー情報を取得する情報取得部である。冷却判定温度は、定着ベルト42の冷却が必要であるか否かを判定するための閾温度である。冷却判定温度の情報は、プリンタ制御部131が実行する制御プログラムに予め含まれている。
この判定結果が「NO」の場合(ACT11:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT13に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT11:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をACT12に進める。
次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって2つの蓄熱ローラ47を加圧ローラ46の両端部46aに接触させる(ACT12)。
【0051】
次に、プリンタ制御部131は、上述したACT10において内蔵するRAMに書き込んだカウンタの計数値が印刷枚数に到達したか否かを判定する(ACT13)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT13:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT10に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT13:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をエンドに進めることによって、プリンタ部3の動作を停止させる。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の表面温度の温度制御を終了させる。プリンタ制御部131は、各画像形成部25Y、25M、25C、25K、25D、露光部26、および転写部28に動作停止を指示する。プリンタ制御部131は、定着部29に定着処理の実行停止を指示する。
【0052】
また、プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の相変化材48に外部信号を入力することによって、相変化材48を放熱状態にする(ACT14)。外部信号は、通電回路(図示略)からの電気信号、または駆動部53からの振動信号などである。
次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって蓄熱ローラ47を加圧ローラ46の両端部46aに接触させる(ACT15)。
【0053】
次に、プリンタ制御部131は、上述したACT10の処理と同様に、定着部29に定着処理の実行を指示する(ACT16)。プリンタ制御部131は、例えばカウンタのインクリメントによって、定着処理が施されたシートSの積算枚数を計数する。プリンタ制御部131は、カウンタの計数値を内蔵するRAMに書き込む。
【0054】
次に、プリンタ制御部131は、上述したACT16において内蔵するRAMに書き込んだカウンタの計数値が印刷枚数に到達したか否かを判定する(ACT17)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT17:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT16に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT17:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をエンドに進めることによって、プリンタ部3の動作を停止させる。
【0055】
以上説明した実施形態の画像形成装置100は、加圧ローラ46に対向する蓄熱ローラ47を持つので、定着ベルト42の冷却又は加熱補助を間接的に行うことができる。加圧ローラ46は、定着ベルト42よりも剛性が高いので、蓄熱ローラ47と加圧状態で接触する領域が定着ベルト42よりも大きい。蓄熱ローラ47と加圧状態で接触する領域が増大すると、蓄熱ローラ47の放熱および吸熱における熱伝達性を向上させ、エネルギー効率を向上させることができる。
定着ベルト42の両端部42aに接触する加圧ローラ46の両端部46aに対向する蓄熱ローラ47を持つので、両端部42aの冷却又は加熱補助を行うことができる。定着ベルト42の両端部42aが非通紙領域となる場合には、蓄熱ローラ47の吸熱によって非通紙領域に過昇温が生じることを防ぐことができる。定着ベルト42の過昇温を防ぐことにより、定着ベルト42の冷却のために定着処理が頻繁に中断されることを防ぐことができる。定着ベルト42の両端部42aが通紙領域となる場合には、蓄熱ローラ47の放熱によって、両端部42aの温度維持を補助することができる。定着ベルト42の中央部42bに比べて、より放熱し易い両端部42aにおいても、蓄熱ローラ47による加熱補助によって、設定温度を容易に維持することができる。
【0056】
プリンタ制御部131は、トリガー情報に応じたタイミングで蓄熱ローラ47によって定着ベルト42の冷却又は加熱補助を行うので、設定温度を容易に維持することができる。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の表面温度が冷却判定温度以上の場合に蓄熱ローラ47を接触状態にするので、適切なタイミングで冷却することができる。プリンタ制御部131は、シートSの幅が所定幅以下の場合に放熱状態の蓄熱ローラ47を接触状態にするので、適切なタイミングで加熱補助を行うことができる。
【0057】
以下、実施形態の変形例について説明する。
【0058】
上述した実施形態の画像形成装置100は、加圧ローラ46の軸方向の両端部に配置される2つの蓄熱ローラ47を備えるとしたが、これに限定されない。
図7および図8は、実施形態の変形例の画像形成装置100における定着部29の構成の一例を模式的に示す側面図である。図7は、蓄熱ローラ47の第1端部47a及び第2端部47cが加圧ローラ46に接触する状態を示す図である。図8は、蓄熱ローラ47の中央部47bが加圧ローラ46に接触する状態を示す図である。
【0059】
実施形態の変形例において、定着部29は、1つの蓄熱ローラ47を備える。蓄熱ローラ47は、軸方向に一体に接続される第1端部47a、中央部47b、および第2端部47cを備える。第1端部47a、中央部47b、および第2端部47cの相互の内部は一体的に接続されている。第1端部47a、中央部47b、および第2端部47cの内部には、共通の相変化材48が充填されている。蓄熱ローラ47は、第1端部47a、中央部47b、および第2端部47cの何れから吸熱又は放熱する場合であっても、蓄熱ローラ47の全体で温度の上昇又は下降が生じる。
【0060】
第1端部47aおよび第2端部47cと、中央部47bとは、相互に異なる偏心状態で回転軸52に固定される。中央部47bは、第1偏心部である。第1端部47aおよび第2端部47cは、第2偏心部である。
蓄熱ローラ47の回転軸52は、駆動部53によって駆動される。駆動部53は、例えばモータ53aと、モータ53aの回転駆動力を蓄熱ローラ47の回転軸52に伝達する伝達機構53dとを備える。伝達機構53dは、例えば、ギヤ、リンク、ベルト、およびクラッチなどの連係機構によって蓄熱ローラ47の回転軸52に連結される回転軸53cを備える。連係機構のクラッチは、例えば、蓄熱ローラ47の回転軸52または伝達機構53dの回転軸53cを切り替えてモータ53aに接続する。リンクは、蓄熱ローラ47の回転軸52および伝達機構53dの回転軸53cの各々を回転可能に支持する。ベルトは、蓄熱ローラ47の回転軸52に設けられるギヤと伝達機構53dの回転軸53cに設けられるギヤとに架け渡される。
【0061】
伝達機構53dの回転軸53cは、モータ53aの回転駆動力によって回転軸53cの軸周りに回転する。伝達機構53dの回転軸53cは、蓄熱ローラ47の回転軸52と平行に配置され、軸方向Pの直交方向に回転軸52から離間して配置されている。伝達機構53dは、モータ53aの回転駆動力によって、蓄熱ローラ47の回転軸52を、回転軸53cの軸周りに回転させる。伝達機構53dは、蓄熱ローラ47の回転軸52を回転軸53cの軸周りに回転させることによって、加圧ローラ46に対する蓄熱ローラ47の接触または非接触を切り替える。
【0062】
伝達機構53dは、蓄熱ローラ47の回転軸52を、回転軸53cの軸周りの回転とは独立に、回転軸52の軸周りに回転させる。伝達機構53dは、回転軸52を自身の軸周りに回転させることによって、蓄熱ローラ47を回転軸52の軸周りに回転させる。蓄熱ローラ47は、回転軸52周りの回転によって、加圧ローラ46に第1端部47aおよび第2端部47cを接触させる状態と中央部47bを接触させる状態とに切り替わる。蓄熱ローラ47の第1端部47aおよび第2端部47cは、加圧ローラ46の両端部46aに接触する。蓄熱ローラ47の中央部47bは、加圧ローラ46の中央部46bに接触する。伝達機構53dは、蓄熱ローラ47が加圧ローラ46に接触する場合、回転軸52を自身の軸周りに回転させるためのモータ53aの回転駆動力の伝達を遮断する。蓄熱ローラ47は、加圧ローラ46の回転に伴って加圧ローラ46の外周面に接触しながら滑るので、加圧ローラ46に対する相対位置および相対姿勢を一定に維持する。
【0063】
以下に、図9を参照して、画像形成装置100の機能構成について説明する。図9は、実施形態の変形例における画像形成装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0064】
実施形態の変形例において、上述した実施形態の画像形成装置100の機能構成と異なる点は、メディアセンサ61および外部温度センサ62を備える点である。
プリンタ部3は、メディアセンサ61を備えている。メディアセンサ61は、例えば、シート収容部4および搬送部5におけるシートSの搬送経路上の適宜の位置などに配置される。
メディアセンサ61は、例えば、搬送ローラ23の手前の位置などに配置される。メディアセンサ61は、シートSの厚さ、坪量、光沢度合い、および材質などを検知する。メディアセンサ61は、例えば、光学センサである。メディアセンサ61は、シートSに照射する光の透過光および反射光の各光量を検出する。メディアセンサ61は、予め既知である照射光量と、検出する透過光および反射光の各光量とに基づき、シートSにおける光の透過率および反射率を検知する。シートSの光の透過率は、シートSの厚さ、坪量、および材質に応じて変化する。メディアセンサ61は、シートSの厚さ、坪量、および材質の組み合わせと、光の透過率とが対応付けられたデータを参照して、シートSの厚さ、坪量、および材質を検知する。シートSの光の反射率は、シートSの光沢度合いおよび材質に応じて変化する。メディアセンサ61は、シートSの光沢度合いおよび材質の組み合わせと、光の反射率とが対応付けられたデータを参照して、シートSの光沢度合いおよび材質を検知する。
【0065】
プリンタ部3は、画像形成装置100の外部の温度を検出する外部温度センサ62を備える。外部温度センサ62は、例えば、画像形成装置100の外装部材などに設けられる。外部温度センサ62は、例えば、画像形成装置100が設置される屋内の気温を検出する。
プリンタ制御部131は、メディアセンサ61、外部温度センサ62、および3つの温度センサ49と接続されている。
【0066】
以下に、図10を参照して、実施形態の変形例における画像形成装置100の印刷処理の流れについて説明する。図10は、実施形態の変形例における画像形成装置100の印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【0067】
実施形態の変形例において、上述した実施形態における印刷処理の流れと異なる点は、ACT21からACT25の処理、ACT31およびACT32の処理を含む点である。
上述した実施形態の図6と同様の処理については、図6と同じ符号を付すことにより説明を省略または簡略化する。
以下に、ACT21からACT25の処理について説明する。
ACT21の処理は、上述した実施形態のACT08の判定結果が「YES」の場合に実行される。以下に、実施形態の変形例におけるACT08から処理について説明する。
プリンタ制御部131は、転写部28から定着部29にシートSが搬送されることに先立って、シートSの幅が所定幅以下であるか否かを判定する(ACT08)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT08:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT14に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT08:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をACT21に進める。
【0068】
次に、プリンタ制御部131は、シートSの幅以外のトリガー情報を取得する。トリガー情報は、画像形成装置100が設置される屋内の気温、シートSの坪量、シートSの厚さ、シートSの搬送方向の長さなどの情報である。プリンタ制御部131は、シートSの幅以外のトリガー情報を、定着ベルト42の中央部42bに対する加熱補助が必要か否かを判定するための情報としている。プリンタ制御部131は、画像形成装置100が設置される屋内の気温の情報を、外部温度センサ62から取得する。外部温度センサ62は、トリガー情報を取得する情報取得部である。プリンタ制御部131は、外部温度センサ62から取得する情報を、内蔵するRAMに書き込む。プリンタ制御部131は、シートSの坪量および厚さの情報を、メディアセンサ61から取得する。メディアセンサ61は、トリガー情報を取得する情報取得部である。プリンタ制御部131は、メディアセンサ61から取得する情報を、内蔵するRAMに書き込む。プリンタ制御部131は、シートSの坪量および厚さの情報を、上述したACT02において内蔵するRAMに書き込んだシートSの種類の情報に基づいて取得してもよい。プリンタ制御部131は、シートSの搬送方向の長さの情報を、上述したACT02において内蔵するRAMに書き込んだ情報に基づいて取得する。プリンタ制御部131は、シートSの大きさと、印刷条件の情報に含まれる搬送方向に対するシートSの向きとに基づいて、シートSの搬送方向の長さの情報を取得する。
【0069】
プリンタ制御部131は、取得したトリガー情報に基づいて、定着ベルト42の中央部42bに対する加熱補助が必要か否かを判定する(ACT21)。プリンタ制御部131は、画像形成装置100が設置される屋内の気温が所定温度以下である場合に、定着ベルト42の中央部42bの加熱補助が必要であると判定する。プリンタ制御部131は、シートSの坪量または厚さが所定値以上である場合に、定着ベルト42の中央部42bの加熱補助が必要であると判定する。プリンタ制御部131は、シートSの搬送方向の長さが所定長さ以上である場合に、定着ベルト42の中央部42bの加熱補助が必要であると判定する。定着ベルト42の中央部42bの加熱補助が必要な場合は、例えば、定着ベルト42の表面温度の温度制御によって設定温度を維持するための負荷が増大する場合などである。
この判定結果が「NO」の場合(ACT21:NO)には、プリンタ制御部131は、処理を、上述したACT09に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT21:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をACT22に進める。
【0070】
次に、プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の相変化材48に外部信号を入力することによって、相変化材48を放熱状態にする(ACT22)。外部信号は、通電回路(図示略)からの電気信号、または駆動部53からの振動信号などである。
次に、プリンタ制御部131は、CPUのタイマーなどによって所定時間を計測後、蓄熱ローラ47が十分な温度に達したと判断する。プリンタ制御部131は、駆動部53によって蓄熱ローラ47の中央部47bを加圧ローラ46の中央部46bに接触させる(ACT23)。
【0071】
次に、プリンタ制御部131は、上述したACT10の処理と同様に、定着部29に定着処理の実行を指示する(ACT24)。プリンタ制御部131は、例えばカウンタのインクリメントによって、定着処理が施されたシートSの積算枚数を計数する。プリンタ制御部131は、カウンタの計数値を内蔵するRAMに書き込む。
【0072】
次に、プリンタ制御部131は、上述したACT24において内蔵するRAMに書き込んだカウンタの計数値が印刷枚数に到達したか否かを判定する(ACT25)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT25:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT24に戻す。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT25:YES)には、プリンタ制御部131は、処理をエンドに進める。
【0073】
以下に、ACT31の処理について説明する。
ACT31の処理は、上述した実施形態におけるACT12の処理の代わりに実行される。以下に、実施形態の変形例におけるACT11から処理について説明する。
プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aにおける表面温度の最新の情報を、内蔵するRAMから読み込む。プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aの表面温度が冷却判定温度以上であるか否かを判定する(ACT11)。
この判定結果が「NO」の場合(ACT11:NO)には、プリンタ制御部131は、処理をACT13に進める。
一方、この判定結果が「YES」の場合(ACT11:YES)には、プリンタ制御部131は、処理を上述したACT31に進める。
次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって蓄熱ローラ47の第1端部47aおよび第2端部47cを加圧ローラ46の両端部46aに接触させる(ACT31)。そして、プリンタ制御部131は、処理を上述したACT13に進める。
【0074】
以下に、ACT32の処理について説明する。
ACT32の処理は、上述した実施形態におけるACT15の処理の代わりに実行される。以下に、実施形態の変形例におけるACT14から処理について説明する。
プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の相変化材48に外部信号を入力することによって、相変化材48を放熱状態にする(ACT14)。外部信号は、通電回路(図示略)からの電気信号、または駆動部53からの振動信号などである。
次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって蓄熱ローラ47の第1端部47aおよび第2端部47cを加圧ローラ46の両端部46aに接触させる(ACT32)。そして、プリンタ制御部131は、処理を上述したACT16に進める。
【0075】
実施形態の変形例によれば、第1端部47a及び第2端部47cと中央部47bとを有する蓄熱ローラ47を持つので、定着ベルト42の部位毎に加熱補助を行うことができる。定着ベルト42において加熱補助が必要な部位毎に応じて、加圧ローラ46に対する蓄熱ローラ47の接触部位を切り替えることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態および変形例において、定着ベルト42を加熱補助する場合に相変化材48に外部信号を入力するとしたが、これに限定されない。
プリンタ制御部131は、相変化材48が放熱状態であると予測される場合には、相変化材48に対する外部信号の入力を省略してもよい。
以下に、相変化材48が放熱状態であると予測する処理について説明する。
プリンタ制御部131は、上述のACT12において、定着ベルト42を冷却するために蓄熱ローラ47を接触状態にしたことを示すフラグ情報を、内蔵するRAMに書き込む。
プリンタ制御部131は、上述のACT08の判定結果が「NO」の場合、または上述のACT21の判定結果が「YES」の場合には、RAMからフラグ情報を読み取る。プリンタ制御部131は、フラグ情報に基づき、直近の過去の定着処理において定着ベルト42を冷却するために蓄熱ローラ47が接触状態にされたか否かを判定する。この判定結果が「YES」の場合には、プリンタ制御部131は、相変化材48が放熱状態であると予測する。プリンタ制御部131は、相変化材48が放熱状態であると予測される場合には、相変化材48に対する外部信号の入力を省略して、蓄熱ローラ47を接触状態にする。
このような処理によれば、蓄熱ローラ47は過去の吸熱によって蓄えた熱を適宜のタイミングで放熱することができ、定着部29の熱エネルギーを効率良く用いることができる。
上述した実施形態の変形例の場合には、過去に第1端部47a及び第2端部47cから吸熱した熱を、適宜のタイミングで中央部47bから放熱することができる。蓄熱ローラ47は、定着ベルト42の非通紙領域となる両端部42aから吸熱した後に、通紙領域となる両端部42a又は中央部42bに放熱することができる。
【0077】
以下、実施形態の他の変形例について説明する。
【0078】
上述した実施形態において、プリンタ制御部131は、シートSの幅が所定幅以下である場合に蓄熱ローラ47を非接触状態にするとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、プリンタ制御部131は、上述した実施形態におけるACT09およびACT11の処理を省略してもよい。プリンタ制御部131は、シートSの幅が所定幅以下である場合に蓄熱ローラ47を加圧ローラ46の両端部46aに接触させてもよい。
この変形例によれば、定着ベルト42の両端部42aが非通紙領域となる場合に、非通紙領域の表面温度が設定温度よりも上昇することを抑制することができる。
【0079】
上述した実施形態において、プリンタ制御部131は、シートSの幅が所定幅より大きい場合に蓄熱ローラ47を接触状態にするとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aの表面温度が加熱判定温度以下である場合に蓄熱ローラ47を接触状態にしてもよい。
より詳細には、プリンタ制御部131は、ACT08の判定結果が「NO」の場合(ACT08:NO)に、蓄熱ローラ47を非接触状態とする。次に、プリンタ制御部131は、定着部29に定着処理の実行を指示する。次に、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aにおける表面温度の最新の情報を、内蔵するRAMから読み込む。次に、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の両端部42aの表面温度が加熱判定温度以下であるか否かを判定する。加熱判定温度は、定着ベルト42の両端部42aの加熱が必要であるか否かを判定するための閾温度である。加熱判定温度の情報は、プリンタ制御部131が実行する制御プログラムに予め含まれている。
この判定結果が「NO」の場合には、プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47を非接触状態に維持する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の相変化材48に外部信号を入力することによって、相変化材48を放熱状態にする。次に、プリンタ制御部131は、駆動部53によって蓄熱ローラ47を加圧ローラ46の両端部46aに接触させる。
この変形例によれば、蓄熱ローラ47から加圧ローラ46への放熱のタイミングを、定着ベルト42の両端部42aの表面温度に応じた適正なタイミングにすることができる。
【0080】
実施形態の変形例において、画像形成装置100は、蓄熱ローラ47の温度を検出する蓄熱温度センサを備えてもよい。蓄熱温度センサは、相変化材48の状態に関する情報を取得する状態情報取得部である。プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の温度の情報を、蓄熱温度センサから一定の周期で取得する。プリンタ制御部131は、蓄熱温度センサから逐次に取得する情報を、内蔵するRAMに書き込む。プリンタ制御部131は、蓄熱ローラ47の温度の時系列変化に基づいて、相変化材48の相変化の履歴を把握する。プリンタ制御部131は、相変化材48の相変化の履歴に基づいて、相変化材48が放熱状態および吸熱状態の何れであるかを把握する。プリンタ制御部131は、例えば、蓄熱ローラ47の温度が所定温度を越えた履歴があれば、相変化材48が放熱状態であると判断する。
この変形例によれば、相変化材48の状態を把握したうえで、蓄熱ローラ47の接触状態または非接触状態を適正に切り替えることができる。定着ベルト42の冷却が必要な場合には、相変化材48が吸熱状態である蓄熱ローラ47を的確に接触状態にすることができる。一方、定着ベルト42の加熱が必要な場合には、相変化材48が放熱状態である蓄熱ローラ47を的確に接触状態にすることができる。蓄熱ローラ47の接触状態または非接触状態を蓄熱ローラ47の温度に応じて切り替えることにより、定着ベルト42の表面温度を設定温度に維持し易くなる。蓄熱ローラ47は、過去の吸熱によって蓄えた熱を、適宜のタイミングで放熱することができ、定着部29の熱エネルギーを効率良く用いることができる。
【0081】
上述した実施形態において、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の表面温度の情報を温度センサ49から取得するとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着部29は、加圧ローラ46の表面温度を検出する加圧側温度センサを備えてもよい。プリンタ制御部131は、加圧ローラ46の表面温度の情報を加圧側温度センサから取得してもよい。
実施形態の変形例において、プリンタ制御部131は、温度センサ49から取得する定着ベルト42の表面温度に基づいて、加圧ローラ46の表面温度を推定してもよい。
実施形態の変形例において、プリンタ制御部131は、定着ベルト42の表面温度の情報の代わりに、加圧ローラ46の表面温度の情報を用いてプリンタ部3を制御してもよい。プリンタ制御部131は、加圧ローラ46の表面温度を、蓄熱ローラ47による定着ベルト42の加熱補助または冷却が必要か否かを判定するためのトリガー情報としてもよい。
【0082】
上述した実施形態において、蓄熱ローラ47は加圧ローラ46の外周面に対向して配置されるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、蓄熱ローラ47は定着ベルト42の外周面に対向配置されてもよい。蓄熱ローラ47は、駆動部53によって定着ベルト42との接触または非接触が切り替えられてもよい。定着ベルト42の内部に蓄熱ローラ47に対向する内部ローラを備えてもよい。内部ローラと蓄熱ローラ47とによって定着ベルト42を挟み込むことによって、定着ベルト42と蓄熱ローラ47とが加圧状態で接触する領域を増大させてもよい。
【0083】
上述した実施形態において、蓄熱ローラ47は、加圧ローラ46との接触又は非接触が切り替えられるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、蓄熱ローラ47は、定着ベルト42及び加圧ローラ46の少なくとも一方との接触又は非接触が切り替えられてもよい。
【0084】
上述した実施形態において、定着部29は、蓄熱ローラ47を備えるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着部29は、蓄熱ローラ47の代わりに、ローラ形状以外の形状に形成された蓄熱部材を備えてもよい。蓄熱部材は、相変化材48を内部に備える。
【0085】
上述した実施形態において、定着部29は、IH定着型の定着器であるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着部29は、IH定着型以外のその他の定着器であってもよい。定着部29は、例えば、ランプ型の定着器であってもよい。ランプ型の定着器は、定着ベルト42の内部に熱源としてのランプを備える。ランプは、例えばハロゲンランプなどである。ランプは、通電回路からの通電により発熱する。
【0086】
上述した実施形態において、定着部29は、定着ベルト42を備えるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着部29は、定着ベルト42の代わりに定着ローラを備えてもよい。
【0087】
上述した実施形態において、定着ベルト42は、加圧ローラ46の回転に伴って従動回転するとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着ベルト42は、駆動源によって回転駆動されてもよい。
【0088】
上述した実施形態において、定着部29は、整磁部材43を備えるとしたが、これに限定されない。
実施形態の変形例において、定着部29は、各種サイズのシートSが通紙される際の均熱化に寄与する構成として、整磁部材43以外の他の部材を備えてもよい。
【0089】
上述した実施形態において、画像形成装置100の各機能の全て又は一部は、ハードウェアによって実現されてもよい。ハードウェアは、例えば、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等である。
画像形成装置100の各CPUが実行するプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0090】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、蓄熱ローラ47を持つことにより、定着ベルト42の少なくとも両端部42aの冷却又は加熱補助を行うことができる。蓄熱ローラ47は、定着ベルト42の端部42aが非通紙領域となる場合には、吸熱することによって非通紙領域に過昇温が生じることを防ぐことができる。蓄熱ローラ47は、定着ベルト42の端部42aが通紙領域となる場合には、放熱することによって通紙領域の温度維持を補助することができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1…コントロールパネル、2…スキャナ部、3…プリンタ部、4…シート収容部、5…搬送部、11…表示部、12…操作部、25Y、25M、25C、25K、25D…画像形成部、26…露光部、27…中間転写ベルト、28…転写部、29…定着部、30…反転ユニット、41…IH部、42…定着ベルト、43…整磁部材、44…フレーム、45…加圧パッド、46…加圧ローラ、47…蓄熱ローラ、48…相変化材、49…温度センサ、100…画像形成装置、101…制御部、102…記憶部、111…パネル制御部、121…スキャナ制御部、122…読取部、131…プリンタ制御部
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10