【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に係る発明は、コンテナの床板上で前後に移動し得るベース部材と、その上方に支持されて貨物を載置する貨物載置フレームとを有する貨物用ラックであって、
ベース部材上に、前後に間隔をおいて、左右の支柱とそれらに沿って上下に移動可能であり支柱上に高さを選んで固定される水平部材とが連結された門型支持体2組が立っていて、
貨物載置フレームが、一方の門型支持体の水平部材によって、鉛直面内で(つまりその水平部材を中心に)回転可能なように支持され、かつ、他方の門型支持体の水平部材の上に、前後方向に移動可能なように載せられていることを特徴とするものである。
なお、「前後」とはコンテナの長手方向をさし、コンテナの入口から遠い奥の方を前方といい、コンテナ内で入口寄りの側を後方という(以下も同様)。また、「左右」とはコンテナの幅方向をさし、上記前方に向かって左側を左という(以下も同様)。
【0008】
この発明の貨物用ラックによれば、前後に間隔をおいて設けた2組の門型支持体における各水平部材を上下に移動させることにより、貨物載置フレームの高さや傾斜角度を変更することができる。つまり、前後の門型支持体の水平部材を同じ高さだけ移動させると貨物載置フレームの高さを変更することができ、いずれか一方の水平部材のみを上下に移動させると、貨物載置フレームは、一方の水平部材を中心に回転するとともに他方の水平部材の上を前後に移動しながらその傾斜角度を変えることができる(
図2を参照)。
各支柱は、ベース部材上にそれぞれ独立に立っているのではなく、前方の2本と後方の2本とがそれぞれ水平部材に連結されて門型支持体を構成している。そのため、支柱と水平部材との連結部分に隙間の小さい構造を採用することにより門型支持体の剛性を高くすることができ、もって支柱の左右への傾きや揺れを小さくすることができる。
【0009】
ベース部材上に立つ上記2組の門型支持体は、ベース部材上に、ベース部材と平行な状態にまで、それぞれ独立に倒され得るものであるのがよい。
そのような場合、フォークリフト等の機械を使用しなくとも、人力のみで、各支柱を含む門型支持体と貨物載置フレームとをベース部材上に折りたたみ、また逆に使用状態に戻すことができる。機械を使用しなくとも折りたたむこと等が可能な理由は、すべての支柱を連動させて同時に倒したり起立させたりする必要がないからである(
図11を参照)。たとえば、貨物載置フレームを回転可能に支持している一方の支柱(門型支持体)を倒す際には、貨物載置フレームを水平部材上に載せている他方の門型支持体は起立させたままでよい。その際、上記一方の門型支持体がベース部材上に倒れるのにともなって、貨物載置フレームは、起立したままの他方の門型支持体の水平部材上を前後方向に移動する。当該他方の門型支持体は、上記一方の門型支持体をベース部材上に倒したのち、当該他方の門型支持体のみを単独で倒せばよい。左右の支柱を含む前後の門型支持体を、同時に連動させるのではなく1組ずつ倒したり起立させたりすればよいので、操作する重量や操作にともなう摩擦抵抗が小さく、したがって折りたたみ等の作業を人力のみで行えるわけである。
【0010】
上記の各門型支持体における水平部材は、左右両側に中空材(たとえば円形パイプ)を有し、当該中空材の内部に、上下方向への相対移動が可能なように上記支柱(たとえば上記円形パイプよりもやや細めの円形パイプ)を通しているものであるのがよい。
図7・
図8は、そのような水平部材と支柱の例を示している。
各支柱と水平部材とを上記のように構成して連結すると、門型支持体はきわめてシンプルな構造となり、コスト面で有利であるうえ、剛性を高くして支柱の傾きや揺れを効果的に抑制することができる。貨物載置フレームは、そのような門型支持体の水平部材によって回転可能に支持されるのであるから、やはり揺れや振動の少ない状態に保たれやすく、貨物を安定的に載せられることになる。
【0011】
上記の各門型支持体における水平部材の中空材は、内周面と両端面との間(角部。通常は90°の稜線を形成している)に滑らかな曲面を有していると好ましい。当該角部をたとえば
図7(d)のように丸めるのである。
水平部材の中空材の内側に支柱を通した場合、水平部材は、支柱に対し僅かな隙間のみを介して支柱に沿って上下に円滑に移動するのが望ましい。中空材の内周面と両端面との間の角部にシャープな稜線部分があると、それが支柱の側面に引っ掛かる可能性がある。しかし、上記のように角部に相当する部分に滑らかな曲面が形成されていると、中空材が支柱の側面に引っ掛かることがなく、水平部材が中空材とともにスムーズに上下移動しやすくなる。
【0012】
上記した貨物用ラックについては、貨物載置フレームが水平部材上に載せられる側の門型支持体(における水平部材)に、貨物載置フレームの浮き上がり防止部材が設けられていて、当該浮き上がり防止部材は、貨物載置フレームの上方に突出することにより貨物載置フレームが水平部材とは独立に上昇することを防止できる一方、貨物載置フレームの上方から退避可能なものであるのが好ましい。浮き上がり防止部材の一例は
図7に示している。
このような浮き上がり防止部材を貨物載置フレームの上方に突出させておくと、第一には、貨物の輸送中に振動等によって貨物載置フレームが浮き上がることが防止され、貨物輸送の安定性が確保されやすい。
浮き上がり防止部材を上記のように突出させておくと、第二には、貨物の積み込みの際に貨物載置フレームを上昇させるとき水平部材が同時に上昇するため、貨物載置フレームと水平部材との双方の高さ調整を同時に行うことができる。貨物載置フレームの高さや傾斜角度の調整は、その重量のためにフォークリフト等の荷役機械を用いて行うのが一般的であるが(
図2を参照)、上記のように貨物載置フレームに連れて水平部材が上昇するなら、上昇した高さでただちに支柱に水平部材を固定できるのである。つまり、貨物載置フレームとそれを載せる水平部材との高さ等の調整を、同時に、したがって能率的に行えることになる。
ただし、浮き上がり防止部材は、貨物載置フレームの上方に突出したままだと、上記のように支柱を倒したり起立させたりする場合(
図11を参照)の支障になるため、貨物用ラックの折りたたみ等の際には貨物載置フレームの上方から退避させる。
【0013】
上記の浮き上がり防止部材は、貨物載置フレームの上方に突出した状態で貨物載置フレームと接触する部分に、周面が前後方向に移動自在な回転体を有するものであるとよい。
図7の例でも、浮き上がり防止部材は、内側にある軸部の外周に、周面が前後方向に移動するよう回転するローラが取り付けてある。
上記のように貨物載置フレームを上昇させるとき、浮き上がり防止部材は貨物載置フレームと接触しながら上昇する。このとき、貨物載置フレームと浮き上がり防止部材との間には前後方向への相対移動がともなうので、両者間の摩擦が大きい場合には浮き上がり防止部材に前後方向に大きな力が作用し、したがって水平部材と支柱との間の摩擦力が相当の大きさに達する恐れがある。しかしながら、浮き上がり防止部材が上記のような回転体を有するなら、摩擦力が小さいために浮き上がり防止部材に作用する前後方向への力が小さくなる。浮き上がり防止部材に作用する前後方向への力が小さいと、水平部材と支柱との間の摩擦力も大きくならない。そのため、上記のようにローラが取り付けられているなら、貨物載置フレームと水平部材とをつねに円滑に上昇させることができる。
【0014】
上記の貨物載置フレームが車両載置用のものであって前部または後部の(少なくとも)2個所にタイヤ支持部を有し、タイヤ支持部の位置が前後方向に調整可能であると好ましい。
タイヤ支持部のうち前部の2個所または後部の2箇所が位置調整可能であると、載置する車両の車種やサイズに合わせて最適の位置にタイヤ支持部を配置し、もって自動車の位置を適切に調整することができる。それによっても、コンテナ内への車両の配置を効率化することが可能になる。
【0015】
ベース部材の下部に前後移動用の車輪が配置されているとともに、ベース部材の後方下部に、下向きに突出した金属片が固定されていると好ましい。
図13の例では、図示右下の部分にその金属片14が溶接にてベース部材10に固定されている。
このような金属片がベース部材の後端部付近の下部に設けられていると、
図13の状態で貨物載置フレーム上に貨物を載せようとするとき、上記車輪による貨物用ラックの前後方向への移動を止めておくことができる。コンテナ内への貨物用ラックおよび貨物(自動車等)の搬入は
図14の手順によって行うのがよいが、そのためには、
図13のように、ベース部材10の前端部をコンテナAの床上に載せるとともにベース部材10の後端部を地面におき、位置を下げた貨物載置フレーム20に貨物を載せる作業が必要になる。もし
図13の状態で車輪16が機能して貨物用ラック1が前後に移動すると、貨物を安全に貨物載置フレーム20上に載せることができなくなる。その点、上記のとおりベース部材10の後方端下部に金属片14が固定されて下向きに突出していると、
図13のように前部をコンテナAの床上に載せてベース部材10が傾斜したとき、その金属片14が地面に押し付けられ、貨物用ラック1の前後への移動を停止させる作用をなす。それにより、貨物載置フレーム20上に貨物を安全に載せることが可能になる。
【0016】
上記ベース部材が、後部において左右に分かれた形状のフレームを有し、そのフレームの間に平板状の貨物用下段ラックが後方から進入し得るものであり、貨物用下段ラックの左右両側に、上記ベース部材の左右各後端部に接続される連結部材が、前後方向の位置調整を可能にして取り付けられていると、とくに好都合である。
たとえば、
図6のように左右に分かれたフレームを有するベース部材10に対し、それらフレームの間に
図10のような平坦な貨物用下段ラック2を進入させて、貨物用ラック1と貨物用下段ラック2とによりコンテナA内に
図1(a)(b)のように貨物Bを収容することを考える。この場合、
図6のベース部材10の後端部と接続されるように
図10のとおり下段ラック2の左右に連結部材56があり、その前後への位置が調整可能であれば、その連結部材56を用いて貨物用ラック1と下段ラック2との前後方向の位置関係を適切に定めることができる。つまり、上記のような連結部材を有する貨物用下段ラックとともに貨物用ラックを使用すると、
図1(a)(b)のような貨物の収容状況を適切にして、効率的な貨物輸送を行うことができる。
【0017】
上記連結部材が、貨物用下段ラックの左右両側に設けられた案内軌道に組み付けられていて前後方向に移動可能であるとともに、その連結部材とベース部材の上記後端部とが、一方に(つまり連結部材かベース部材の後端部かのいずれかに)設けられた先鋭部(先の尖った形状の部分)が他方に設けられたV字形断面の凹部に嵌るよう形成されていると、さらに好ましい。
上記連結部材が、貨物用下段ラックの左右に設けられた案内軌道に組み付けられていると、上記した前後方向への位置調整をきわめて円滑に行うことが可能である。また、その連結部材とベース部材の上記後端部とが、先鋭部がV字形断面の凹部に嵌るようになっていると、貨物用ラックと下段ラックとを接続した段階で両者の位置関係が自然に定まるうえ、その後も互いの位置関係が拘束されて左右への変位が抑制され、貨物をしっかりと保持するうえで有利な効果がもたらされる。