【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、本明細書において「オープン静電トラップ」と呼ばれる新規なタイプの質量分析計が、従来技術のE−トラップおよびM−TOFに比べて、質量分析計のパラメータ、すなわち分解能、感度、およびダイナミックレンジの組み合わせを改善することを実現した。多経路TOFと同様に、オープン静電トラップ(E−トラップ)は、同じタイプの分析器の静電場を用い、イオンパケットは、パルス源から検出器へ移動する間に多重振動(イオンミラー同士の間の反射、または静電セクタ内のループサイクル)を受ける。多経路TOFとは対照的に、E−トラップは、いわゆるドリフト方向(本出願では常にZ方向)にイオンパケットを閉じ込める手段を用いない。パルスイオン源とイオン検出器の間のイオン経路は、整数Nのイオン振動で構成されことになり、ただし、数字Nは一定ではなく、むしろいくらかのスパンΔN内で変動する。スペクトルデコーディングは、放出タイミングに関する、および各マルチプレットグループ内の測定される強度分布に関する従来知られている情報を用いる。
【0017】
多様なm/z種を考えると、オープンE−トラップにおける信号は、本明細書では「マルチプレット」と名付けられた反射N±ΔN/2の整数範囲の部分的に重なっている信号で構成され、これにより追加の複雑さがスペクトルデコーディングであることをもたらす。一方、ドリフトのZ方向のイオンパケットの広がりは、分析器の空間電荷容量、および検出器のダイナミックレンジを拡大する。この方法は、パルス変換器の長さおよび放出周波数の拡大を可能にし、このようにしてパルス変換のデューティサイクル、およびしたがって非一定の飛行経路を有するオープン静電トラップの感度を実質的に向上させる。
【0018】
この方法は、主としてタンデム質量分析に適用可能であり、MS分析前のイオン分離との様々な形態のタンデムに適用できる。このとき、スペクトル成分は、希薄(通常、スペクトル空間の1%未満)であるが、このスペクトル成分が、多重オーバーラッピング信号からのスペクトルの再構成を可能にする。MSのみの分析の場合、信号デコーディングは、補助検出器での非重なり信号の記録によって、事前の時間分離によって、または相関移動度−m/zフィルタリングのような化学的ノイズ抑制によって助けられる。
【0019】
この方法は、直交加速器、高周波および静電パルス式イオンガイド、および高周波イオントラップのようないくつかの特定のパルスイオン源およびパルス変換器について説明される。
【0020】
本発明は、静電場中でも、高周波場中でも、磁場中でもないオープントラップ分析の原理を用いる従来技術のいずれも意識していない。このため、本発明は、オープン等時性トラップを用いて記録するマルチプレットの方法として最も広い意味で表現され得る。短い表現は、オープンイオントラップおよびマルチプレット信号の先に与えた定義に基づいている。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、質量スペクトル分析の方法であって、
(a)等時性イオン振動を与える静電場、高周波場、または磁場にイオンパケットを通過させるステップと、
(b)整数のイオン振動周期(マルチプレット)のスパンに対応する飛行時間スペクトルを記録するステップと、
(c)マルチプレット含有信号から質量スペクトルを再構成するステップと
を含み、
再構成された前記質量スペクトルが、質量スペクトル分析に使用することができる方法が提供される。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、
質量スペクトル分析の方法であって、
(a)分析された試料から多重種のイオンパケットを形成するステップと、
(b)少なくとも2つの方向で空間イオントラッピングを行うと共に中央のイオン軌道に沿って等時性イオン運動を与える静電場を配置するステップと、
(c)前記静電場を通じたイオン通過のために前記イオンパケットを入射するステップであって、前記イオンパケットが、多重イオン振動を形成できる、前記イオンパケットを入射するステップと、
(d)イオンを検出し、スパンΔN内で整数N個のイオン周期について検出平面でイオンパケットの飛行時間(マルチプレット)を測定するステップと、
(e)マルチプレットを含む前記検出された信号から質量スペクトルを再構成するステップと
を含み、
再構成された前記質量スペクトルが、質量スペクトル分析に使用することができる方法が提供される。第2の態様は、静電トラップが最も実用的であることを認める。
【0023】
好ましくは、前記静電場は、局所的に直交するZ方向に延ばされたX−Y平面で実質的に2次元(2D)の静電場を含んでもよい。好ましくは、前記静電場の中への前記イオン入射は、Xに対して傾斜角度αで配置されてもよく、単一振動周期あたりZ方向に平均シフトを形成する。代替として、前記静電場は、3次元の場を備えてもよい。好ましくは、この方法の解像力を改善するために、前記イオン入射ステップは、検出器平面X=X
Dでイオンパケットの時間フォーカシングを与えるように調整されてもよい。さらに好ましくは、前記静電場は、検出器平面X=X
Dで時間フォーカシングを持続するように調整されてもよい。
【0024】
前記2D静電場の複数の可能な構造がある。好ましくは、前記静電場は、(i)静電イオンミラーの反射および空間的フォーカシングの場、(ii)静電セクタの偏向場、といった群の少なくとも1つの場を備えることができる。好ましくは、前記実質的に2次元の静電場は、(i)E−トラップ電極が平行であり、方向に直線的に延ばされる平面対称、および(ii)E−トラップ電極が円形であり、トロイダル場体積を形成するように場が円形のZ軸にそって延びる円筒形対称、といった群のうちの1つの対称を有することができる。様々な可能な場の構造は、本発明者による同時係属の特許出願「Electrostatic Trap」に説明されるように、X軸、Y軸またはZ軸の可能な湾曲によって延在されてもよく、軸の湾曲の平面は、全体的に、中央のイオン軌道に対して傾けられてもよい。
【0025】
スペクトルデコーディングは、マルチプレット内のピークの個数ΔNに強く依存する。好ましくは、マルチプレットスパンは、イオン入射ステップでの角度の広がりおよび空間のイオンパケットの広がりによって、または前記イオントラップ内のZ方向の追加の誘導およびフォーカシングによって制御することができる。好ましくは、これらの
パラメータは、検出器領域において、Z方向のイオンパケットの空間の広がり
が単一イオン周期ごとのZ
1シフトより大きく
なるように調整することができる。好ましくは、イオン入射ステップで角度の広がりおよび空間のイオンパケットの広がりは、マルチプレット内のm/z独立性強度分布を与えるようにイオンm/zに独立に設定されてもよく、マルチプレット内の前記強度分布は、質量スペクトルの再構成のステップを助けるように較正試験で決定される。代替として、時間依存性Z集束は、スパンΔN対イオンm/zを変えるのに用いることができ、これによって重なったピークの個数を減少させる。好ましくは、前記フォーカシングは、少なくとも2つの設定の間で交互にすることができ、データは、マルチプレットデコーディングを助けるために、少なくとも2つの同期したセットの中に記録することができる。
【0026】
複数の他のパラメータ、例えばオープントラップの長さ、検出器の長さ、および静電トラップのチューニングなどは、マルチプレット内の信号の振動数NおよびスパンΔNを制御することによって調整することができる。好ましくは、イオン入射とイオン検出の間のイオン周期数Nは、(i)3〜10、(ii)10〜30、(iii)30〜100、および(iv)100を超える、といった群のうちの1つであってもよい。好ましくは、マルチプレット内の記録された信号の数字ΔNは、(i)1、(ii)2〜3、(iii)3〜5、(iv)5〜10、(v)10〜20、(vi)20〜50、および(vii)100を超える、といった群の1つであればよい。好ましくは、(i)0.1〜1%(ii)1〜5%、(iii)5〜10%、(iv)10〜25%、および(v)25〜50%、といった群の1つである検出器信号の相対固体数を調整するために、分析されたm/z種の数字に応じて、イオン入射の傾斜角度αは、マルチプレットのスパンΔNを制御するように調整されてもよい。
【0027】
好ましくは、マルチプレット内のピークの個数を制御するため、および検出器のダイナミックレンジを拡大するために、前記検出ステップは、単一イオン振動周期ごとにイオンパケットの一部をサンプリングするステップを含んでもよく、それによって任意のm/z種ごとに多重マルチプレット信号を発生させる。好ましくは、マルチプレット間のm/z独立性強度分布を与え、質量スペクトルの再構成のステップを助けるために、検出器へサンプリングされたイオンの前記一部が、イオンm/zに独立して設定されてもよく、前記マルチプレット分布は、較正試験で決定される。
【0028】
全ての入射されたイオンを損失することなく検出するために、単一イオン周期ごとの平均シフトZ
1より大きい検出器のZ長さZ
Dを維持することが有利である。好ましくは、検出器は、両面性であってもよい。さらに好ましくは、イオンパケットの時間−焦点面は、検出器の前で場を減速させることによって、検出器表面に整合するように調整され得る。好ましくは、検出器へのイオン収集を助けるために、検出器の周辺部および減速器の周辺部をバイパスしつつ、有効な検出器表面へイオンの大部分を向けるために、検出の前に追加の誘導ステップおよび弱いフォーカシングステップが導入されてもよい。好ましくは、イオン検出ステップは、表面上のイオン−電子変換によって助けられてもよく、そのような表面は無視して構わない周辺部を有し得る。
【0029】
信号の多様性(マルチプレット)および信号デコーディングは、すでにこの方法に組み込まれているので、この方法は、この方法の様々な強化を手に入れつつ、マルチプレット内のピークの個数を増加させる他のステップを可能にする。好ましくは、放出されるイオンパケットのZ長さは、単一イオン周期ごとの平均シフトZ
1より長く設定されてもよい。これによりパルス変換器のデューティサイクルを改善することを可能にし、したがってこの方法の感度を改善することになる。感度をさらに改善するために、イオン入射ステップが、最も大きいm/zイオン種の検出器への飛行時間より短い期間で設けられてもよい。好ましくは、入射イオン流は、入射パルス列の継続期間に対応する時区間を用いて準連続流に変調されてもよい。一例として、イオン流の変調は、イオンをトラップするステップおよび気体高周波イオンガイドからパルス放出するステップを含み得る。
【0030】
方法の一グループでは、追加の信号が、マルチプレットを含むスペクトルのデコーディングについての任意の追加の情報を与えるために使用されてもよい。好ましくは、スペクトルは、マルチプレットをデコードし、重なりを時間移動するために、様々なシーケンスの入射パルスを用いる少なくとも2つの交互に行われる設定において取得されてもよい。強く重なっているスペクトルをコードするために、この方法は、マルチプレットを避けつつ、ずっと少ない振動回数でイオンパケットの一部についての飛行時間を中間検出器において記録する追加のステップをさらに含んでもよい。好ましくは、イオンパケットは、2つの検出器に向かって反対のZ方向に移動する2つのセットに分割されてもよい。好ましくは、イオンパケットのスプリッティングは、双極ワイヤのセットの間に配置されてもよい。さらに好ましくは、この分割は、イオンの質量と電荷の比の関数としてイオンパケットの傾斜角度を調整するように時間依存性であってもよい。好ましくは、イオンパケットの分割は、イオンパケットの一部についてのZシフト方向の逆戻りについて、例えば上昇飛行経路について、またはスペクトルフィルタリングについて構成されてもよい。
【0031】
信号のデコーディングの成功は、スペクトル
の複雑さに強く依存し、この方法は、主に、イオン移動度および微分イオン移動度(differential ion mobility)のようなタンデム質量分析および他のイオン分離法と共に使用するために示唆される。好ましくは、この方法は、前記静電場の中へのイオンパルス入射のステップの前に、イオンの移動度または微分移動度に従ってイオンを時間分離する追加のステップを含んでもよい。適宜、移動度分離ステップは、それに続くイオンフラグメンテーションであってもよい。代替として、この方法は、タンデムMS−MS分析のための親m/z分離のステップ、およびイオンフラグメンテーションのステップを含んでもよい。さらなる代替形態では、この方法は、前記静電場へのイオン入射のステップの前に、イオントラッピングの追加のステップ、および生飛行時間分離の追加のステップを含んでもよい。そのような分離は、マルチプレットのグループを広げ、スペクトルデコーディングのステップを改善する。好ましくは、上記のタンデムにおける静電トラップの応答時間を改善するために、前記静電場へのイオン入射は、最も重いm/zイオン種の検出器への飛行時間より速く構成されてもよい。IMS−CID−MS法およびMS−MS法の実施については、高分解能検出器によるフラグメントスペクトルの取得は、マルチプレットを避けつつ補助検出器による親スペクトルの取得によって補完することができる。
【0032】
好ましくは、オープンE−トラップ分析を加速するために、この方法は、並べたスリットのセットを作製することによって、同じセットの電極内で前記静電場の体積を多重化するステップをさらに含み、および、並列および独立の質量分析のために単一または複数のイオン源からイオンパケットを前記静電場の体積に分配するステップをさらに含む。
【0033】
方法の好ましい一グループでは、前記静電場の中への前記イオン入射のステップが、Z方向に伝播する連続または準連続イオンビームのパルス直交加速を含む。好ましくは、パルス直交場は、検出器平面X=X
Dで時間的フォーカシングを与えるように調整されてもよい。好ましくは、反射回数は、前記直交加速パルス場の入口で前記イオンビームのエネルギーを変えることによって制御されてもよい。好ましくは、前記直交加速場領域は、Y方向に変位させられ、イオンパケットが、パルス式Y偏向により中央のイオン軌道のX−Z平面へ戻される。代替として、加速器と反射されたイオンパケットの干渉を避けるために、加速場は傾斜させられてもよく、イオンパケットは第1の反射後に誘導され、両傾斜誘導角度は、飛行時間歪みを相互補償するように選ばれる。
【0034】
好ましくは、この方法の感度を高めるために、前記直交加速場の長さは、単一イオン周期ごとのシフトZ
1より大きくすることができる。さらに好ましくは、分析の感度を高めるために、直交加速パルス間の周期は、最も重いイオン種の検出器への飛行時間より短いものであってもよい。好ましくは、直交加速の前記ステップは、一方の板の窓を通じて平行版の間に配置される。好ましくは、前記板は、表面に非伝導膜の形成を防ぐように加熱されてもよい。イオンビームのフォーカスをぼかすことなく長い加速領域を保持するために、前記直交加速の中へのイオン送達は、高周波場によって助けられる。代替として、加速領域中へのイオンの送達を助けるために、前記直交加速は、静電イオンガイドの静電周期的フォーカシング場の間に配置されてもよい。
【0035】
好ましくは、感度を高めるために、この方法は、直交パルス加速のステップの前に気体高周波(RF)イオンガイド内でイオン流を調整するステップをさらに含む。好ましくは、この方法は、イオン蓄積、および前記RFイオンガイドからのパルス式イオン抽出のステップをさらに含んでもよく、前記抽出は、前記直交加速パルスと同期する。
【0036】
あるグループの方法では、前記イオン入射のステップは、気体の存在中でイオントラップの高周波場内のイオントラッピングのステップを含む。好ましくは、前記イオントラッピングのステップは、約10から1000Paまでのガス圧で行われてもよい。さらに好ましくは、トラッピング時間は、イオン振動の制動を構成するために、ガス圧の生成および約0.1Pa*秒を超えるトラップ時間を維持するように選択されてもよい。
【0037】
好ましくは、トラッピング高周波場の領域は、実質的にZ軸またはY軸に沿って延在されてもよく、イオン放出は、トラップピング電極のうちの1つにおける窓を通じて構成される。代替として、イオントラッピングは、X方向に並べられたRFイオンガイドのアレイ内で構成され、補助電極で形成される静電井戸によって助けられてもよい。好ましくは、トラップからイオンをパルス放出する方法は、第1の時間−焦点面に位置する双極ワイヤの場によるイオンパケットの分割および誘導のステップをさらに含んでもよい。
【0038】
本発明は、幅広い様々なイオン化方法に適用可能である。あるグループの方法では、前記イオンパケット形成のステップは、(i)MALDIイオン化、(ii)DE MALDIイオン化、および(iii)SIMSイオン化、(iii)フラグメンテーションセルからのパルス抽出、および(iv)パルス抽出を用いた電子衝撃イオン化、といった群のうちの1つのステップを含んでもよい。オープンイオントラップ分析の方法は、イオン源の条件が急速に変換する場合でも、開始パルスの正確なタイミングを決定する機会を与える。
【0039】
一方法は、E−トラップにおけるイオン飛行時間に匹敵する時間スケールで変わるパルスイオン源内のイオンパケット形成のステップをさらに含む。この群は、信号のマルチプレット内の時間パターンによってイオンがパルスを発生させる時間を認識するステップをさらに含み、前記イオンパケット形成のステップは、(i)粒子または光のパルスによって分析されたスキャン表面のボンバードメント、(ii)エアロゾル粒子をランダムにイオン化すること、(iii)超高速分離装置の試料出口をイオン化すること、および(iv)迅速に多重化されたイオン源内の試料をイオン化すること、といった群のうちの1つのステップを含む。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、オープン等時性イオントラップにおけるマルチプレットの
スペクトルをデコードするアルゴリズムであって、
(a)基準スペクトルにおいてマルチプレット内の強度分布I(N)を較正するステップと、
(b)生スペクトルのピークを検出し、スペクトルの中心T
OF、強度I、およびピーク幅dTに関するデータを有するピークリストを構成するステップと、
(c)生ピークのT
OF値、および反射Nの推測数に対応する単一反射ごとの候補の飛行時間t=T
OF/Nのマトリックスを構築するステップと、
(d)複数のヒットに対応する見込みのあるt値を選び、対応するT
OF値、すなわち仮定マルチプレットのグループを集めるステップと、
(e)仮定マルチプレット内のT
OFおよび強度I(N)の分布を分析することによって前記グループ内のピークの有効性を検証するステップと、
(f)グループ同士の間のT
OFの重なりを確認し、重複するピークを廃棄するステップと、
(g)前記グループの有効なピークを用いてT(正規化飛行時間)および強度I(T)の正しい仮定を復元するステップと、
(h)予期される前記強度I(T)を復元するために廃棄された位置の個数を明らかにするステップと
を含むアルゴリズムが提供される。
【0041】
振動数NおよびそのスパンΔNは、オープンE−トラップにおける設定試験状態の段階で変えられてもよく、したがってマルチプレット信号内のパラメータNおよびΔNを調整する。好ましくは、イオン振動数Nは、(i)3〜10、(ii)10〜30、(iii)30〜100、および(iv)100を超える、といった群のうちの1つであってもよい。好ましくは、マルチプレット信号内のスパンΔNは、(i)1、(ii)2〜3、(iii)3〜5、(iv)5〜10、(v)10〜20、(vi)20〜50、および(vii)100を超える、といった群の1つであればよい。好ましくは、(i)0.1〜1%、(ii)1〜5%、(iii)5〜10%、(iv)10〜25%、および(V)25〜50%、といった群の1つである信号の相対固体数を調整するために、分析されたm/z種の数字に応じて、マルチプレットのスパンΔNは調整される。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、マルチプレットスペクトル取得に関する等時性オープンイオントラップ質量分析計が提供される。
【0043】
明確な記述は、オープンイオントラップおよびマルチプレットスペクトルの先に与えた定義に頼る。イオントラップは、静電、高周波または磁気であってもよい。しかし、静電トラップが最も実用的であることが認識されている。
【0044】
本発明の第5の態様によれば、静電オープントラップ質量分析計(E−トラップ)であって、
(a)分析された試料の中性種からイオン種を形成するイオン化手段と、
(b)前記イオンからイオンパケットを形成するためのパルスイオン源またはパルス変換器と、
(c)局所的に直交X−Y平面内の実質的に2次元の静電場を形成するためにZ方向に沿って実質的に延ばされた静電トラップ電極のセットと
を備え、
(d)前記トラップ電極の形状、および前記トラップ電極の電位は、周期性イオン振動、および前記X−Y平面内の前記イオンパケットの空間閉じ込め、ならびに中央のイオン軌道に沿った等時性イオン運動を実現するように調整され、
(e)前記パルス源またはパルス変換器が、前記X−Y平面内の多重振動、および単一のイオン振動ごとに前記Z方向に沿った平均シフトZ1を形成しつつ前記静電場を通じたイオン通過のためにX軸に対して傾斜角度αでイオンパケットを入射するように構成され、
(f)あるスパンΔN内で変動する整数Nのイオン振動後にイオンパケットの飛行時間を測定し、したがって任意のm/zイオン種について信号「マルチプレット」を形成する、X=X
D平面に位置する検出器と
(g)マルチプレットを含む検出器信号から質量スペクトルを再構成する手段と
をさらに備えるE−トラップが提供される。
【0045】
開示されたオープン静電トラップは、様々な電極セットを用いて実施することができる。好ましくは、前記静電トラップ電極は、(i)少なくとも2つの静電イオンミラー、(ii)少なくとも2つの静電偏向セクタ、および(iii)少なくとも1つのイオンミラーおよび少なくとも1つの静電セクタ、といった群の一電極セットを備える。好ましくは、前記実質的に2次元の静電場は、(i)E−トラップの電極同士が平行であり、Z方向に直線的に延ばされる平面対称、および(ii)E−トラップ電極が円形であり、前記場が前記円形Z軸に沿って延びて、トロイダル場体積を形成する円筒形対称、といった群のうちの1つの対称を有してもよい。好ましくは、前記X軸、Y軸またはZ軸が、全体的に曲がってもよい。特定の一実施形態では、前記E−トラップは、無電場空間によって間隔をおいて配置された2つの平行イオンミラーで形成されてもよく、前記ミラーは、円形のZ軸に沿ってトロイドに巻かれる。別の特定の実施形態では、前記E−トラップは、円形のZ軸に沿ってトロイドに巻かれている少なくとも1つの静電セクタをさらに含む。最も好ましい分析器の実施形態は、無電場空間によって隔てられた2つの平行なトロイダルイオンミラーを備える。トロイダル実施形態は、大きいZ外周を維持しつつ、コンパクトな分析器空間フォールディングを実現する。好ましくは、前記各イオンミラーは、少なくとも1つの加速レンズ、および空間的なイオンの集束を実現するための少なくとも4つの電極、少なくとも2次の空間および角度等時性、および少なくとも3次エネルギー等時性を含んでもよい。
【0046】
一実施形態は、イオンパケットのZ発散およびマルチプレット内のピークの個数ΔNを制御するために前記パルス変換器と前記検出器の間に位置する空間フォーカシング手段を備える。好ましくは、前記空間フォーカシング手段は、イオンm/zに対するマルチプレット数を制御するために、時間変化信号で発生器に接続されてもよい。代替として、一定の静電フォーカシングが、マルチプレット内にm/z独立性強度分布を与えるのに使用されてもよい。好ましくは、本実施形態は、前記パルス変換器と前記イオン検出の間に位置するイオンパケット誘導手段をさらに備えてもよい。この誘導は、傾斜角度を制御すること、およびしたがってマルチプレット内の数字NおよびΔNを制御することを可能にする。
【0047】
実施形態の一グループは、検出器を最適化することによって感度の向上を目的とする。一実施形態では、検出器のZ長さは、単一イオン周期ごとの前記平均シフトZ1より大きくてもよい。好ましくは、検出器は、両面性であってもよく、時間−焦点面は、検出器の前で場を減速させることによって、検出器表面に整合するように調整される。好ましくは、実施形態は、検出器の周辺部および適宜の減速器の周辺部をバイパスしつつ、有効な検出器表面へイオンの大部分を向けるために、前記検出器の前に誘導手段およびフォーカシング手段をさらに備えてもよい。好ましくは、一実施形態は、単一イオン周期ごとにイオンパケットの一部をサンプリングするイオン−電子変換器をさらに備えてもよく、二次電子が、前記イオン変換器の両側へ/からサンプリングされ、変換器は、時間−焦点面を変換器表面の平面と整合させる減速器を備える。
【0048】
複数の実施形態が、様々なパルスイオン源またはパルス変換器を開示する。実施形態の一グループでは、前記パルスイオン源は、(i)MALDI源、(ii)DE MALDI源、および(iii)SIMS源、(iii)パルス抽出を用いたフラグメンテーションセル、(iv)パルス抽出を用いた電子衝撃源の群のうちの1つを含む。一実施形態では、迅速な表面分析のために、前記パルスイオン源は、粒子または光のパルスによる分析表面のボンバードメントを含み、衝撃を与えられた箇所が、分析表面上でスキャンされる。好ましくは、衝撃パルスの間の期間は、最も重いイオン種の飛行時間よりもずっと短く設定され得る。好ましくは、パルスを発生させるイオンの時間は、次いで、信号のマルチプレット内の時間パターンを用いて認識される。
【0049】
実施形態の別のグループでは、前記パルス変換器は、Z方向にほぼ沿って伝播する連続または準連続イオンビームを、X方向にほぼ沿って加速されたイオンパケットに変換する直交加速器を含む。好ましくは、前記直交加速器は、イオン抽出のためのスリットを備える平行版電極を備えてもよい。代替として、前記変換器は、イオンの制動のため、および適宜イオン蓄積のために気体状態でRFイオンガイドを備える。さらに代替として、前記パルス変換器は、事前の気体RFイオンガイドを用いてイオンを伝達する真空の条件にあるRFイオンガイドを備えてもよい。さらに代替として、直交加速器は、イオンの半径方向閉じ込めのための静電イオンガイドを備えてもよい。好ましくは、前記連続または準連続イオンビームのイオンのエネルギーは、前記E−トラップにおけるイオン反射回数を調整するように制御されてもよい。好ましくは、前記直交加速器は、中央のイオン軌道のX−Z平面に比べてY方向に変位させられてもよく、次いで、パルス状そらせ板が、イオンパケットを中央平面に戻す。この配置により、E−トラップ内で反射された後に、イオンが加速器にぶつからないようにする。代替として、直交加速器は、Z軸に対して小さい傾斜角度αで設定されてもよく、イオンは、E−トラップ分析器における第1の反射の後に、傾斜および誘導によって引き起こされる飛行時間の逸脱の相互補償を与えるように誘導される。好ましくは、傾斜角および誘導は、プレート加速器もしくは静電イオンガイド加速器の場合には連続イオンビームの有限エネルギー、または気体RFイオントラップの場合にはほぼゼロのイオンエネルギーによって引き起こされるイオン軌道の傾斜角度を考える。この配置は、直交加速器と誘導装置の間により広いZの間隔を与え、一方、コンパクトな軌道フォールディングのためにE−トラップ分析器内のイオン軌道の傾斜角度を下げる。
【0050】
実施形態の一グループは、E−トラップの感度を増加させるための直交加速器の改善を開示する。好ましくは、前記イオン源またはパルス変換器のZ長さは、単一イオン周期ごとの平均シフトZ
1より長くてもよい。補足としては、前記パルス源またはパルス変換器は、最も重いm/zイオン種の検出器までの飛行時間より短い時間で通電される。好ましくは、直交加速器は、事前のRF気体イオンガイドと結合されてもよい。さらに好ましくは、前記ガイドは、準連続イオンビームの形態でイオンを蓄積および放出してもよい。さらに好ましくは、記準連続イオンビームの推進は、E−トラップにおいて最も重いm/zイオンの飛行時間よりもずっと短い周期で頻繁な直交パルスと同期してもよい。さらに好ましくは、スペクトルは、前記パルス列によって入射されるイオンの収集を検出するのに十分に長い継続期間取得され得る。
【0051】
本発明は、質量スペクトルが元々少ない、主にタンデム質量分析に適用可能である。一実施形態は、(i)質量電荷セパレータ、(ii)イオン移動度セパレータ、(iii)微分イオン移動度セパレータ、および(iv)上記イオンセパレータのいずれか、それに続くフラグメンテーションセル、といった群のうちの少なくとも1つの親イオンセパレータをさらに備える。代替として、スペクトルデコーディングを改善するために、本実施形態は、直交加速器の前に、RFイオントラップと、生飛行時間セパレータまたはイオン移動度セパレータとをさらに備えてもよい。セパレータは、オープンE−トラップスペクトルにおけるマルチプレットの分離を改善する。好ましくは、E−トラップ感度およびスペクトルデコーディングを向上させるために、前記E−トラップへのイオン入射間の周期は、最も重いm/zイオン種の検出器までの飛行時間より速い構成であってもよい。
【0052】
次に、本発明の様々な実施形態を、例示の目的だけで与える構成と共に、以下の添付図面を参照して例だけによって説明する。