(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223398
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】接点機構及びこれを使用した電磁リレー
(51)【国際特許分類】
H01H 1/50 20060101AFI20171023BHJP
H01H 50/56 20060101ALI20171023BHJP
H01H 50/64 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
H01H1/50
H01H50/56 B
H01H50/64 E
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-178242(P2015-178242)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-54710(P2017-54710A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年12月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301052700
【氏名又は名称】株式会社埼玉富士
(72)【発明者】
【氏名】柴田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孔一
(72)【発明者】
【氏名】町田 龍亮
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 信介
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0146337(US,A1)
【文献】
特開昭62−123616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/50
H01H 50/56
H01H 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に外部配線が接続される端子部(固定)を有し且つ他端に固定接点を有する固定接触子と、一端に段差部を有し且つ略中央に前記固定接点に対向した可動接点を有する可動接触子と、前記可動接触子の背面に平行に配置されて一端に外部配線が接続される端子部(可動)を有する可動側端子板と、前記可動接触子と前記可動側端子板のそれぞれの他端を接合する接合弾性体と、前記可動接触子の段差部の背面に維持した接触スプリングと、挿入孔を有する連結片とからなり、前記接触スプリングと前記可動接触子の段差部を前記連結片の挿入孔に収納したことを特徴とする接点機構。
【請求項2】
前記接合弾性体は平板状に形成され、一端は前記可動接触子の他端と、他端は前記可動側端子板の他端に設けた台座部に接合したことを特徴とする請求項1記載の接点機構。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載のいずれかの一つの接点機構を備え、前記可動接触子が操作用電磁石の可動接極子に連結片を介して係合されていることを特徴とする電磁リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点機構及び該接点機構を用いた電磁リレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動接触子は複数個の薄板ばねを厚さ方向に重ね、その一端に可動接点を有し、他端を可動側端子板の一端に直接接合されている。前記可動接触子を電磁石装置のアーマチェアに連結されたカードによって駆動し、前記可動接触子自身のばね力によって接点接触力を得ていた。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-30310号公報(段落0022、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動接触子を構成する板ばねは、適切な弾性を得るために薄く、細長にする必要があり、そのためその導体抵抗が高くなり、結果として接点機構の端子間抵抗が高くなっていた。
また可動接触子のばね力のばらつきが大きいため、接点接触力や動作特性を組立工程で調整する必要があった。
さらに複数個の板ばねをプレス加工などにより形成し、それらの両端を接合して製作していたため、部品製作や接合にコストが嵩むという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするもので、端子間抵抗が低く、また接点接触力や動作電圧を組立工程で調整する必要がなく、かつ部品加工が安価な接点機構及び該接点機構を用いた電磁リレーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は
一端に外部配線が接続される端子部を有し且つ
他端に固定接点を有する固定接触子と、前記固定接点に対向した可動接点を有する可動接触子と、前記可動接触子の背面に平行に配置され且つ
一端に外部配線が接続される端子部を有する可動側端子板と、前記可動接触子と前記可動側端子板のそれぞれの
他端を接合する接合弾性体と、前記可動接触子の
一端に形成した段差部の背面に維持した接触スプリング
と、挿入孔を有する連結片とからなり、前記接触スプリングと前記可動接触子の段差部を前記連結片の挿入孔に挿入した接点機構を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【0007】
また、前記接合弾性体は平板状に形成され、
一端は前記可動接触子の
他端と、
他端は前記可動側端子板の
他端に設けた台座部に接合した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動接触子は弾性を必要としないため、剛体とすることができ導体抵抗を低くでき、結果として端子間抵抗が低く抑えられる。
【0009】
また、接点接触力が接触スプリングの圧縮ばね力のみによって確定されるため、安定した接点接触力が得られ、接点接触力や動作特性を組立工程で調整する必要がなくなる。
また、可動接極子の一端に段差部を設け、段差部の背面に接触スプリングを維持し、段差部と接触スプリングを連結片の挿入孔に収納したため接触スプリングと連結片が、固定接点と可動接点間から発生する開閉アーク熱を受けなくなる。さらに可動接触子は一枚の板材からプレス加工などにより形成でき、且つ接合加工が不要になり、安価な接点機構が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明にかかる電磁リレーの構成を示す、カバーを省略した動作前の正面図である。
【
図2】
図2は本発明にかかる電磁リレーの構成を示す、カバーを省略した動作後の正面図である。(一部の部品は断面図である)
【実施例】
【0011】
本発明の接点機構は、
図1に示すように筐体1の上部に固定接触子4が固持され該固定接触子4は左端
(一端)に外部配線が接続される端子部(固定)2を有し、且つ右端
(他端)には、固定接点3を有している。
【0012】
可動接触子5は、略中央に前記固定接点3に対向した可動接点6を有し、且つ
一端には幅狭の段差部11を形成している。段差部11と接触スプリング10を連結片15の挿入孔23に収納し、接触スプリング10の圧縮ばね力によって段差部11が挿入孔23の上面に押圧されて維持されている。
よって、接触スプリング10と連結片15が固定接点3と可動接点6間から発生する開閉アーク熱を受けないように構成されている。 【0013】
可動側端子板7は可動接触子5の背後に平行に配置され、
一端に外部配線が接続される端子部(可動)8を有し、且つ
他端には台座部12を有している。
可動接触子5の
他端と可動側端子板7の台座部12間は平板状の接合弾性体9によって懸架され、カシメなどによって接合されている。
【0014】
この接合弾性体9は非常に柔軟な弾性を有し、微弱なばね力となっているため前記可動接点6と固定接点3の接点接触力にはほとんど影響を与えず、この接点接触力のばらつきの要因になることはない。また板状のシンプルな形状としているためばね力のばらつきが少なく、且つ安価に製作することが可能である。
【0015】
可動側端子板7の下部には、可動接極子13が配置されている。可動接極子13は、上下に並行に配置されそれぞれの両端を磁極片17a、17b、18a、18bする2個の平板状の可動鉄片17、18と2個の可動鉄片17、18間に挟持され左右対称に配置された直方体状の2個の永久磁石19、20と永久磁石19、20及び可動鉄片17、18を一体的に保持するホルダー21とから構成されている。
【0016】
ホルダー21は中央部に貫通穴22を有し、貫通穴22には筐体1に設けた回転軸24が貫通されて、可動接極子13を回動可能にしている。
【0017】
図2に示すようにホルダー21の左端の延長部には係合部25が設けられ、係合部25を連結片15の凹部16に篏合させている。
【0018】
図1に示すように、可動接極子13の下部には電磁石26が配置されている。電磁石26は、電磁コイル27が巻かれた棒状の鉄心28と、一端を互いに内側に直角に折り曲げて磁極部30a、30bとし、他端を鉄心28の両端に固着した一対のヨーク29a、29bとからなり、一対のヨーク29a、29bの磁極部30a、30b間に可動接極子13を配置して電磁石装置を構成している。
【0019】
次に動作について説明する。一対のヨーク29a、29bのそれぞれの磁極部30a、30bは電磁コイル27への通電方向に応じた極性に励磁され、互いに異極性になる。
【0020】
一方可動鉄片17、18は永久磁石19、20によって互いに異極性に磁化され、本実施形態の場合、可動鉄片17の磁極片17aと17bはN極に、可動鉄片18の磁極片18aと18bがS極になっている。
【0021】
可動鉄片17、18のそれぞれの磁極片17aと18a間にはヨーク29aの磁極部30aが、磁極片17bと18b間にはヨーク29bの磁極部30bが配置され、それぞれの磁極が対峙する。
【0022】
このような状態において、磁極部30aがN極、磁極部30bがS極になる方向に電磁コイル27へ通電した場合、磁極片18aと磁極部30a間及び磁極片17bと磁極部30b間には吸引力が発生する。
【0023】
この吸引力によって可動接極子13は時計廻り方向に回動する。また電磁コイル27への通電方向を逆方向にすると、磁極部30a、30bが逆極性になり反時計廻り方向に回動する。
【0024】
可動接極子13の回動力はホルダー21の係合部25を介して連結片15に上下運動として伝達される。
【0025】
本実施形態では、可動接極子13が時計廻りに回動した場合に連結片15は上方向に変位し、この連結片15に維持されている可動接触子5が連動し、可動接点6が固定接点3への接触を開始する。この状態での初期接点接触力は凹部16に収納されている初期状態での接触スプリング10の圧縮ばね力に相応した接触力になっている。
【0026】
固定接点3に可動接点6が接触後、連結片15がさらに上方向に変位すると、可動接触子5は変位せずに接触スプリング10のみがさらに圧縮され、この圧縮ストロークに比例して接点接触力が増加する。
図2は動作が完了した状態を示すもので、この時の接点接触力は接触スプリング10の全圧縮ストロークに相応した接触力になる。
【0027】
上述したように本発明によれば接点接触力が接触スプリング10の圧縮ばね力のみによって確定されるため、安定した接点接触力が得られる。一般的に電磁リレーの接点接触力はその動作特性、開閉容量、温度上昇などの中枢の特性を左右するため、この接点接触力を安定させることは、極めて重要である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述の発明は、電磁パワーリレー及び電磁パワーリレーやコンタクタの接点機構として利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1・・・筐体
2・・・端子部(固定)
3・・・固定接点
4・・・固定接触子
5・・・可動接触子
6・・・可動接点
7・・・可動側端子板
8・・・端子部(可動)
9・・・接合弾性体
10・・・接触スプリング
11・・・段差部
12・・・台座部
13・・・可動接極子
15・・・連結片
16・・・凹部
17、18・・・可動鉄片
17a、17b、18a、18b・・・磁極片
19、20・・・永久磁石
21・・・ホルダー
22・・・貫通穴
23・・・挿入孔
24・・・回転軸
25・・・係合部
26・・・電磁石
27・・・電磁コイル
28・・・鉄心
29a、29b・・・ヨーク
30a、30b・・・磁極部