【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
この発明の一局面によれば、電磁アクチュエータは、ロータと、ステータとを備え、ロータはステータにおける回転用に構成されており、前記アクチュエータはさらに、ロータの回転の少なくとも一部の間、ロータにトルクを印加するための付勢構造を備え、ロータに作用する力によって、ロータ用の複数の安定静止位置が規定され、前記アクチュエータは、ロータを1つの安定静止位置から別の安定静止位置へと動かすよう制御可能であり、付勢構造によって印加されるトルクは、第1の静止位置および少なくとも第2の静止位置ではそれらの位置の選択を可能にするよう十分に低く、その後第2の静止位置を超えると増加するように、ロータの回転位置とともに変化する。
【0012】
図1Aおよび
図1Bに示す構造に従ったいくつかの構成では、板バネによって加えられた力から生じる、ロータのその第1の静止位置から遠ざかる初期加速が大き過ぎるために、ロータがその第1の静止位置からいずれかの側の次のすぐ隣接する静止位置へと確実に動くことができない、ということが見出された。
【0013】
この問題は、第1の静止位置および少なくとも第2の静止位置で付勢構造が印加するトルクが、それらの位置の選択を可能にするよう十分に低くなるように、付勢構造を構成することによって、この発明により対処される。ロータの回転の関連部分にわたって付勢構造によって印加されるトルクがあったとしても、それらの静止位置は、ロータとステータとの間に作用する受動的磁力によって十分良好に規定されたままとなり得る。
【0014】
この発明の実施例では、付勢構造は機械的付勢構造であり、たとえば弾性要素を含む。それは好ましくは、付勢カム面を規定する付勢カムと、付勢カム従動子とを備え、付勢カム従動子および付勢カム面は圧迫し合っており、付勢カムおよび付勢カム従動子のうちの一方は、ロータを用いて、またはロータによって回転可能である。
【0015】
付勢カム面は、第1の静止位置と第2の静止位置との間で付勢カム従動子の運動が実質的にないように輪郭付けられてもよい。このため、この運動の間、付勢構造によってロータに印加される付勢力は、第1の静止位置に対して実質的に変わらない。
【0016】
また、付勢構造は、この運動の間、付勢構造によってロータに印加される加速トルクが実質的にないように構成される。この構造によって印加される力は、ロータの回転のこの部分の間、関連するトルクを最小限に抑えるためにロータの回転軸へと方向付けられてもよい。
【0017】
付勢カム面の残りは、ロータの回転の適切な部分の間、付勢構造が所望のトルクを提供するように、必要に応じて輪郭付けられてもよい。
【0018】
第1の静止位置から遠ざかるロータの部分的回転に対応する安定静止位置が利用できることは、アクチュエータがバルブを動作させるために採用されている場合に特に有益であり得る。第1の静止位置がバルブ閉鎖位置に対応し、ロータの180°の回転がバルブ完全開放位置に対応している状態では、中間の安定静止位置はバルブの部分開放を表わす。アクチュエータは、第1の静止位置とこれらの中間静止位置のうちの1つ以上との間で振動するよう制御可能であってもよい。アクチュエータが内燃機関の吸気または排気バルブを開閉するために採用されている場合、この中間振動は、より低い燃料消費で、アイドリング、走行、または他の動作モードを提供し得る。この発明は、必要とされるすべての中間安定静止位置が選択のために利用できることを確実にするために採用されてもよい。
【0019】
第1の静止位置および第2の静止位置は、ロータの隣り合う安定静止位置であってもよい(すなわち、ステータによってロータに加えられる受動的磁力によって規定される介在静止位置がなくてもよい)。いくつかの構成では、第1の静止位置と第2の静止位置との間に、1つ以上のさらに別の静止位置があってもよい。
【0020】
第1および第2の静止位置は、これらの位置のいずれか(または好ましくはそれらの間)において付勢構造によってロータに印加されるトルクが実質的にない状態で、(好ましくはロータとステータとの相互作用による)ロータにのみ作用する磁力によって規定されてもよい。
【0021】
アクチュエータは、ステータ巻線の少なくとも1つを通って流れる電流によって生じる別の静止位置へ向かう適切なインパルスの印加により、ロータを1つの静止位置から別の静止位置に動かすよう制御可能であってもよい。この作用は、インパルスが1つの回転方向にのみ印加される必要があるよう十分に繰返し可能で信頼できるものであってもよく、予め定められた大きさの単一のパルスのみからなっていてもよく、それによりエネルギ消費を最小限に抑える。
【0022】
さらに別の実施例では、第1の静止位置と、第1の静止位置の第2の静止位置とは回転方向反対側に位置する第3の静止位置との間では、付勢カム従動子の変位は実質的に一定である。好ましくは、第3の静止位置は、第1の静止位置から遠ざかる回転のこの反対方向における次の隣接する静止位置である。
【0023】
この発明の好ましい実施例では、付勢構造によってロータに印加される力は、第1および第2の静止位置で、ならびに第1の静止位置と第2の静止位置との間で、最小またはほぼ最小となるように、ロータの回転位置とともに変化する。いくつかのアクチュエータ用途では、第1および第2の静止位置では付勢が全く(または比較的少量しか)印加されないことが有利であり、増加した付勢力は、第2の静止位置を超えたロータの回転の部分にわたってのみ印加される。
【0024】
この構成が好ましい、アクチュエータ用の特定の一用途は、車のエンジンのバルブを制御するためのその使用である。そのようなエンジンの寿命の大半では、それは低速および中速rpm範囲で動作する。これらの動作モード中は、ロータへの著しい付勢力の印加は必要とはされない場合がある、ということがわかっている。しかしながら、エンジンが比較的高速のrpmで動作している場合、エネルギ蓄積および加速機能を提供することは、付勢構造にとって依然として有益である。しかしながら、低速および中速のエンジン速度範囲の間では、この追加のトルクがなくても、正確なバルブタイミングを確実に達成することができる。
【0025】
特に機械的エネルギ蓄積要素の変位が利用可能な空間が少ししかない場合、付勢構造に有意な量のエネルギを蓄えるためには、かなりの力が必要となりそうである。このかなりの力の必要性は、付勢構造によってロータにかなりの摩擦が加えられる可能性があり、機械的エネルギ蓄積要素の比較的短い寿命にもつながり得る、ということを意味する。したがって、付勢構造によって印加される力が、第1および第2の静止位置で、ならびに第1の静止位置と第2の静止位置との間で、最小または実質的に最小となり、第2の静止位置を超えると力は増加するならば、それは有利である。これは、低速および中速rpm動作時に生じる摩擦の量を著しく減少させ、付勢構造の機械的エネルギ蓄積要素の寿命(ひいては信頼性)を増加させる。
【0026】
そのような実施例では、付勢構造は、第2の静止位置を超えたロータの行程の一部の間にエネルギを蓄え、次に、蓄えたエネルギを用いて、ロータがその第1の静止位置に戻るのと同じ方向にロータを加速するよう、構成されてもよい。アクチュエータは、関連するエンジンの高速rpm動作の間のみ、このエネルギ再生が実施されるように、構成および制御されてもよい。
【0027】
このため、低速および中速rpm範囲の間では、ロータの回転は、エネルギ蓄積を伴わない回転の部分に制限されてもよく、高速rpm動作時には、ロータはこの部分を超えて回転のエネルギ蓄積部分を通って回転するよう制御される。特に、高速rpm時には、ロータは好ましくは、エネルギ蓄積領域を通過して何回転もして、連続的に同じ方向に回転する。
【0028】
羽根車が連結機構を介してロータに結合されていてもよい。より特定的には、連結機構は、ロータがその第1の静止位置にあるときは羽根車が第1の羽根車位置にあり、ロータがその第2の静止位置にあるときは羽根車が第1の羽根車位置から最大変位したまたはほぼ最大変位した位置にあるよう、構成されてもよい。このため、第1から第2の静止位置へのロータの回転は、付勢構造によって印加される力がその最小値を超えて著しく増加することなく、羽根車をその第1の静止位置または定位置からその第2の静止位置での最大変位へと十分に変位させることをもたらしてもよい。たとえば、アクチュエータは、羽根車の第1の位置がバルブ閉鎖位置に対応し、第2の静止位置がバルブ完全開放位置に対応するように、エンジンに設けられてもよい。
【0029】
羽根車の往復運動はしたがって、ロータがその第1の静止位置からその第2の静止位置へと回転し、その後反対方向に再度戻ってくるようにアクチュエータを作動することによって達成されてもよい。また、連結機構は、第2の静止位置を超えるロータの回転中に羽根車が第1の羽根車位置に戻るよう、構成されてもよい。このため、ロータの同じ方向の回転は、羽根車がその第1の位置から第2の位置に行ってから再度戻ってくる往復運動をもたらすであろう。これは、
ロータの270°以下の回転、または好ましくは180°以下の回転にわたって起こってもよい。ロータの1回転に満たない範囲でのロータの往復運動は、より迅速な往復作用を容易にする。
【0030】
好ましくは、第2の静止位置を超えるロータの回転中に羽根車が第1の羽根車位置に戻るよう、連結機構が構成されている実施例では、この第2の静止位置への復帰は、付勢構造がエネルギを蓄えるその行程の一部にロータが到達する前に起こる。このため、羽根車の十分な往復運動は、付勢構造へのエネルギ伝達の結果、回転が著しく妨げられることなく、ロータを第2の方向に回転させることによって達成されてもよい。
【0031】
この実現化例では、羽根車が第1の羽根車位置にあるロータの回転位置は2つある。これらの位置と羽根車の最大変位が達成される安定静止位置との間に規定される中間安定静止位置が1つ以上あるように、アクチュエータは構成されてもよい。中間静止位置に対応する羽根車の変位は、どの第1の羽根車位置が選択されるかに依存して異なっていてもよい。選択された第1の静止羽根車位置と関連するすぐ隣の静止位置との間での往復運動はしたがって、選択された程度の羽根車変位を有する往復運動を提供するであろう。
【0032】
付勢カム従動子および付勢カム面は付勢要素によって圧迫し合っていてもよく、付勢要素は、第1の静止位置に向かうロータの行程の一部の間にエネルギを蓄え、この蓄えられたエネルギを用いて、第1の静止位置から遠ざかるその行程の一部の間にロータを加速するよう構成されている。これは、アクチュエータの動作中にエネルギの蓄積および解放を提供し、付勢カム面は、必要な中間静止位置の選択を容易にしつつ、このプロセスを制御するよう、この発明に従って輪郭付けられてもよい。
【0033】
さらに別の局面によれば、この発明は、電磁アクチュエータであって、ロータと、ステータとを備え、ロータはステータにおける回転用に構成されており、前記アクチュエータはさらに、ロータに結合され、ロータの回転時に変位するための羽根車を備え、ロータに作用する力によって、ロータ用の複数の安定静止位置が規定され、前記アクチュエータは、ロータを1つの安定静止位置から別の安定静止位置へと動かすよう制御可能であり、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの運動から生じる羽根車の変位は、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動から生じる変位よりも大きく、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの回転と、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの回転とは、実質的に等しく、反対方向である、アクチュエータを提供する。
【0034】
第WO2004/097184号に記載されたバルブアクチュエータ構成では、たとえばバルブステムにアクチュエータによって付与される運動は、ロータがその第1の静止位置から時計方向または反時計方向に遠ざかるかどうかと同様に、ロータの回転角に関連している。発明者は、作動カム面輪郭を、相対する回転方向において異ならせることによって、動作の汎用性の増大が提供され得る、ということに気づいた。このように、一方向における安定静止位置への所与の角度の回転に続く羽根車の変位は、反対方向における同じ角度のロータの回転から生じるものとは異なり得る。これは、ロータをそれぞれの方向に回転させるようにアクチュエータを制御することによって、いずれかの変位が選択され得る、ということを意味する。
【0035】
好ましい一実施例では、羽根車は連結機構を介してロータに結合されており、連結機構は、ロータの回転における空動き部分にわたる使用時に、羽根車の変位が実質的になく、空動き部分は第1の静止位置を含み、第1の静止位置に対して非対称的に位置するように、構成されている。この非対称性の結果、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動から生じる動きの大部分は、第1の静止位置から第2の静止位置への回転から生じる運動に対して「失われる」。これは、第2の静止位置および第3の静止位置それぞれへの運動から生じる羽根車の異なる変位につながる。
【0036】
連結機構は、ロータ回転の空動き部分にわたって空動きを「吸収する」よう構成されてもよい。それは、空動き部分にわたって伸長される、ロータと羽根車との間の弾性継手を備えていてもよい。このため、空動き部分にわたり、ロータの回転は、羽根車の変位というよりも、弾性継手の伸長をもたらす。所望の「空動き」を提供するだけでなく、弾性継手は、アクチュエータに結合された連結機構および/または構成部品の構造におけるより大きな公差を提供する。それは、熱膨張または熱収縮、ならびにアクチュエータの寿命にわたる摩耗および損傷から生じる構成部品の寸法の変化を補償し得る。また、空動き部分の間、それは羽根車に張力を加え、それをその行程位置の端に向けて圧迫する(そのためそれをそこに制止する)。
【0037】
また、これに代えて、弾性継手は、ロータ回転の空動き部分にわたって圧縮されるよう構成されてもよい。この場合、羽根車がロータからさらにその行程位置の端に到達しないようにされれば、継手は圧縮されて、羽根車に圧縮力をかける。
【0038】
一実現化例では、連結機構は、ロータがその第1の静止位置にあるときに羽根車に対してその行程の一端から回転方向に偏心している、ロータ上の軸外位置に結合されたクランクを含む。この構成は、特にロータと羽根車との間の弾性継手と組合せると、ロータおよび羽根車の動きの所望の関係を提供する費用効果の高い連結機構を提供する。
【0039】
さらに別の実施例では、アクチュエータは、作動カム面を規定する作動カムと、作動カム面に関連付けられた作動カム従動子とを備え、作動カムおよび作動カム従動子のうちの一方は、ロータを用いて、またはロータによって回転可能であり、アクチュエータは、作動カム従動子の変位が羽根車の変位をもたらすように構成されている。好ましくは、作動カムは羽根車を形成する。
【0040】
好ましくは、ロータの安定静止位置は、ロータに作用する機械的付勢力、および/またはステータによってロータに加えられる受動的磁力によって規定される。ロータは永久磁石を備えていてもよく、ステータは、少なくとも1つの巻線を有し、巻線を通る電流がロータを1つの静止位置から別の静止位置へと動くよう促すようにすることによって磁化可能であってもよい。
【0041】
第1の静止位置は、付勢カム従動子および/または作動カム従動子の行程の一端を規定してもよい。アクチュエータがバルブステムに結合されている実現化例では、第1の静止位置は、たとえば、ステムのバルブ閉鎖位置に対応していてもよい。
【0042】
この発明はさらに、第1の静止位置と別の静止位置との間でロータを前後に振動させるステップを備える、ここに記載されたアクチュエータを動作させる方法を提供する。この発明を具体化するさらに別の動作モードによれば、ロータは、一方向に1回転するロータの回転によって、第1の静止位置から第1の静止位置に戻るよう回転される。その第1の静止位置に戻るためにその動きの方向を反転させる必要がないため、これはアクチュエータの高速動作を容易にし得る。
【0043】
ロータは、どの静止位置でも短い滞留時間の間休止するよう制御されてもよい。
さらに好ましい制御プロトコルは、ロータを第1の静止位置から別の静止位置へと回転させるステップと、前記別の静止位置で休止するステップと、その後ロータの回転を同じ方向に継続して第1の静止位置に戻るステップとを備える。
【0044】
付勢要素は好ましくは機械的であり、バネ構造、たとえば板バネの形をしていてもよい。
【0045】
図面の簡単な説明
例として、先行技術の構造およびこの発明の実施例を、添付された概略図を参照してここに説明する。