特許第6223412号(P6223412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223412
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】回転型電磁アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F01L 9/04 20060101AFI20171023BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F01L9/04 Z
   F02D13/02 H
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-245255(P2015-245255)
(22)【出願日】2015年12月16日
(62)【分割の表示】特願2012-539412(P2012-539412)の分割
【原出願日】2010年11月16日
(65)【公開番号】特開2016-75286(P2016-75286A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】0920152.6
(32)【優先日】2009年11月18日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1002604.5
(32)【優先日】2010年2月16日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515031296
【氏名又は名称】カムコン・オート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMCON AUTO LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィグナンスキー,ウラディスラウ
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−183610(JP,A)
【文献】 特表2006−524775(JP,A)
【文献】 特開2007−146688(JP,A)
【文献】 特表2004−538417(JP,A)
【文献】 特開2008−002362(JP,A)
【文献】 特表2002−500311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁アクチュエータであって、
ロータと、
ステータとを備え、ロータはステータにおける回転用に構成されており、前記アクチュエータはさらに、
連結機構を介してロータに結合され、ロータの回転時に連結機構がロータの回転を羽根車の線形運動に変換する羽根車を備え、
ロータに作用する力によって、ロータ用の複数の安定静止位置が規定され、前記アクチュエータは、ロータを1つの安定静止位置から別の安定静止位置へと動かすよう制御可能であり、
第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの運動および第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動の両方は羽根車を変位させ、
連結機構は、ロータと羽根車との間の弾性継手を備え、
連結機構は、羽根車が羽根車の行程の全範囲の一端に到達しないようにすることが、ロータの回転における空動き部分をもたらし、その部分では羽根車の変位は実質的になく、かつ弾性継手は伸長または圧縮され
動き部分は第1の静止位置を含み、空動き部分は第1の静止位置に対して非対称的に位置し、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの運動から生じる羽根車の変位は、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動から生じる変位よりも大きく、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの回転角と、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの回転角とは、実質的に等しく、反対方向であるように、構成されている、アクチュエータ。
【請求項2】
連結機構は、ロータ上の軸外位置に結合されたクランクを含み、軸外位置は、ロータの回転時に円軌跡上を移動し、かつロータがその第1の静止位置にあるときに円軌跡上の羽根車から遠ざかる最も遠い点から回転方向に偏心している、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
作動カム面を規定する作動カムと、
作動カム面に関連付けられた作動カム従動子とを備え、作動カムおよび作動カム従動子のうちの一方は、ロータを用いて、またはロータによって回転可能であり、アクチュエータは、作動カム従動子の変位が羽根車の変位をもたらすように構成されている、請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
羽根車は作動カム従動子と一体である、請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
第1の静止位置は、作動カム従動子の変位の範囲の一端に対応している、請求項3または4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
安定静止位置は、ロータに作用する機械的付勢力、および/またはステータによってロータに加えられる磁力によって規定される、請求項1〜5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
ロータは永久磁石を備える、請求項1〜6のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項8】
ステータは少なくとも1つの巻線を備えており、巻線に電流を流し、それによりロータを1つの静止位置から別の静止位置へと動くよう促すことによって磁化可能である、請求項1〜7のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
バルブを作動させるよう構成された請求項1〜8のいずれかに記載のアクチュエータを含む、内燃機関。
【請求項10】
第1の静止位置と別の回転位置との間でロータを一方向および反対方向に回転させるステップを備える、請求項1〜8のいずれかに記載のアクチュエータを動作させる方法。
【請求項11】
別の回転位置は別の静止位置である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一方向のみにおけるロータの回転によって、ロータを第1の静止位置から第1の静止位置に戻るよう回転させるステップを備える、請求項1〜8のいずれかに記載のアクチュエータを動作させる方法。
【請求項13】
ロータの回転は、少なくとも1つの静止位置で休止する、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ロータを第1の静止位置から別の静止位置へと回転させるステップと、
前記別の静止位置で休止するステップと、
その後ロータの回転を同じ方向に継続して第1の静止位置に戻るステップとを備える、請求項12に従属する請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は回転型電磁アクチュエータに関する。より特定的には、それはバルブの開閉に好適な電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
この発明が目的とする電磁アクチュエータ構成は、(本出願人により提出された)国際公開第WO2004/097184号に記載されており、その内容はここに引用により援用される。この発明は、このアクチュエータ構造への改良を提供しようとするものである。
【0003】
この公開に記載されたアクチュエータ構成を、図1Aおよび図1Bに示す。それらは、正面斜視図および背面斜視図をそれぞれ示している。ロータ10が、軸14を中心として回転するために、ハウジング12に回転可能に搭載されている。それは、8つの極を含むステータ16によって包囲されている。各極の周りには、それぞれの巻線18が巻かれている。
【0004】
レバー20が、板バネ26によって、カム22のカム面24上へと押込まれる。カム面24は円筒形状であり、ロータの軸14に対して偏心してロータ上に搭載されている。アクチュエータはバルブステム30に結合されている。それは、バルブステム30がその垂直行程の上端にある場合、すなわちバルブ閉鎖位置にある場合に、板バネ26の最大撓みが起こるよう、構成されている。
【0005】
アクチュエータとバルブステム30との結合は、図1Bに見える。クランクピン40が、ロータの後部からレバー42を貫通して延在している。レバー42は、軸44を中心として枢動するよう搭載されている。クランクピン40は、レバー42によって規定される開口を通っており、その壁がカム面46を規定する。これは、クランクピンが回転するにつれてその運動を追跡し、この回転運動を、枢動可能な継手48を介して、バルブステム30の実質的に垂直な振動に変換し、デスモドロミックバルブ制御を提供する。
【0006】
ロータとステータとの間の受動的磁力は、ロータ用の8つの安定静止位置を規定するよう機能する。各静止位置では、ロータは、(ステータ巻線を通る電流といった)エネルギの入力を必要とすることなく、これらの受動的磁力によって適所にしっかり保持される。
【0007】
ロータは、好適な電流パルスを1つ以上のステータ巻線に印加することによって、1つの静止位置から別の静止位置へと回転可能である。8つの巻線(またはコイル)は4つの対となって共に接続されており、各対は、回転軸14の両側にある2つの巻線からなる。各対の巻線は、直列または並列に共に接続されてもよい。
【0008】
アクチュエータは、必要なインパルスの大きさに依存して、巻線の1つの対、または2つの対、もしくは4つすべての対に通電するよう制御可能である。これは、たとえばエンジン速度、バルブ剛性、油の粘度、および温度といったさまざまな要因に依存して、かなり変わる場合がある。
【0009】
バルブステムがその閉鎖位置へと動くにつれて、板バネはエネルギを蓄える。このエネルギは次に、レバー20およびカム22を介してロータにかかるバネ26の作用によってロータがこの第1の静止位置から遠ざかる際にロータを加速するために使用される。これは、ロータをその静止位置から遠ざかる方向に移動させるのに必要なピーク電流をかなり減少させ得る。上述のように、ロータの回転は、図1Bに示す連結機構を介して、バルブステムの運動に変換される。
【0010】
バルブステムがその閉鎖位置に向かって戻ってくる際、板バネは、バルブステムがその台座に近付くにつれてその速度を制御し減少させるよう機能する。これは、エンジンノイズを減少させ、エンジンの寿命を増加させるのに役立つ。同時に、バルブ開放段階の間、運動エネルギが再使用のためにバネに蓄えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
この発明の一局面によれば、電磁アクチュエータは、ロータと、ステータとを備え、ロータはステータにおける回転用に構成されており、前記アクチュエータはさらに、ロータの回転の少なくとも一部の間、ロータにトルクを印加するための付勢構造を備え、ロータに作用する力によって、ロータ用の複数の安定静止位置が規定され、前記アクチュエータは、ロータを1つの安定静止位置から別の安定静止位置へと動かすよう制御可能であり、付勢構造によって印加されるトルクは、第1の静止位置および少なくとも第2の静止位置ではそれらの位置の選択を可能にするよう十分に低く、その後第2の静止位置を超えると増加するように、ロータの回転位置とともに変化する。
【0012】
図1Aおよび図1Bに示す構造に従ったいくつかの構成では、板バネによって加えられた力から生じる、ロータのその第1の静止位置から遠ざかる初期加速が大き過ぎるために、ロータがその第1の静止位置からいずれかの側の次のすぐ隣接する静止位置へと確実に動くことができない、ということが見出された。
【0013】
この問題は、第1の静止位置および少なくとも第2の静止位置で付勢構造が印加するトルクが、それらの位置の選択を可能にするよう十分に低くなるように、付勢構造を構成することによって、この発明により対処される。ロータの回転の関連部分にわたって付勢構造によって印加されるトルクがあったとしても、それらの静止位置は、ロータとステータとの間に作用する受動的磁力によって十分良好に規定されたままとなり得る。
【0014】
この発明の実施例では、付勢構造は機械的付勢構造であり、たとえば弾性要素を含む。それは好ましくは、付勢カム面を規定する付勢カムと、付勢カム従動子とを備え、付勢カム従動子および付勢カム面は圧迫し合っており、付勢カムおよび付勢カム従動子のうちの一方は、ロータを用いて、またはロータによって回転可能である。
【0015】
付勢カム面は、第1の静止位置と第2の静止位置との間で付勢カム従動子の運動が実質的にないように輪郭付けられてもよい。このため、この運動の間、付勢構造によってロータに印加される付勢力は、第1の静止位置に対して実質的に変わらない。
【0016】
また、付勢構造は、この運動の間、付勢構造によってロータに印加される加速トルクが実質的にないように構成される。この構造によって印加される力は、ロータの回転のこの部分の間、関連するトルクを最小限に抑えるためにロータの回転軸へと方向付けられてもよい。
【0017】
付勢カム面の残りは、ロータの回転の適切な部分の間、付勢構造が所望のトルクを提供するように、必要に応じて輪郭付けられてもよい。
【0018】
第1の静止位置から遠ざかるロータの部分的回転に対応する安定静止位置が利用できることは、アクチュエータがバルブを動作させるために採用されている場合に特に有益であり得る。第1の静止位置がバルブ閉鎖位置に対応し、ロータの180°の回転がバルブ完全開放位置に対応している状態では、中間の安定静止位置はバルブの部分開放を表わす。アクチュエータは、第1の静止位置とこれらの中間静止位置のうちの1つ以上との間で振動するよう制御可能であってもよい。アクチュエータが内燃機関の吸気または排気バルブを開閉するために採用されている場合、この中間振動は、より低い燃料消費で、アイドリング、走行、または他の動作モードを提供し得る。この発明は、必要とされるすべての中間安定静止位置が選択のために利用できることを確実にするために採用されてもよい。
【0019】
第1の静止位置および第2の静止位置は、ロータの隣り合う安定静止位置であってもよい(すなわち、ステータによってロータに加えられる受動的磁力によって規定される介在静止位置がなくてもよい)。いくつかの構成では、第1の静止位置と第2の静止位置との間に、1つ以上のさらに別の静止位置があってもよい。
【0020】
第1および第2の静止位置は、これらの位置のいずれか(または好ましくはそれらの間)において付勢構造によってロータに印加されるトルクが実質的にない状態で、(好ましくはロータとステータとの相互作用による)ロータにのみ作用する磁力によって規定されてもよい。
【0021】
アクチュエータは、ステータ巻線の少なくとも1つを通って流れる電流によって生じる別の静止位置へ向かう適切なインパルスの印加により、ロータを1つの静止位置から別の静止位置に動かすよう制御可能であってもよい。この作用は、インパルスが1つの回転方向にのみ印加される必要があるよう十分に繰返し可能で信頼できるものであってもよく、予め定められた大きさの単一のパルスのみからなっていてもよく、それによりエネルギ消費を最小限に抑える。
【0022】
さらに別の実施例では、第1の静止位置と、第1の静止位置の第2の静止位置とは回転方向反対側に位置する第3の静止位置との間では、付勢カム従動子の変位は実質的に一定である。好ましくは、第3の静止位置は、第1の静止位置から遠ざかる回転のこの反対方向における次の隣接する静止位置である。
【0023】
この発明の好ましい実施例では、付勢構造によってロータに印加される力は、第1および第2の静止位置で、ならびに第1の静止位置と第2の静止位置との間で、最小またはほぼ最小となるように、ロータの回転位置とともに変化する。いくつかのアクチュエータ用途では、第1および第2の静止位置では付勢が全く(または比較的少量しか)印加されないことが有利であり、増加した付勢力は、第2の静止位置を超えたロータの回転の部分にわたってのみ印加される。
【0024】
この構成が好ましい、アクチュエータ用の特定の一用途は、車のエンジンのバルブを制御するためのその使用である。そのようなエンジンの寿命の大半では、それは低速および中速rpm範囲で動作する。これらの動作モード中は、ロータへの著しい付勢力の印加は必要とはされない場合がある、ということがわかっている。しかしながら、エンジンが比較的高速のrpmで動作している場合、エネルギ蓄積および加速機能を提供することは、付勢構造にとって依然として有益である。しかしながら、低速および中速のエンジン速度範囲の間では、この追加のトルクがなくても、正確なバルブタイミングを確実に達成することができる。
【0025】
特に機械的エネルギ蓄積要素の変位が利用可能な空間が少ししかない場合、付勢構造に有意な量のエネルギを蓄えるためには、かなりの力が必要となりそうである。このかなりの力の必要性は、付勢構造によってロータにかなりの摩擦が加えられる可能性があり、機械的エネルギ蓄積要素の比較的短い寿命にもつながり得る、ということを意味する。したがって、付勢構造によって印加される力が、第1および第2の静止位置で、ならびに第1の静止位置と第2の静止位置との間で、最小または実質的に最小となり、第2の静止位置を超えると力は増加するならば、それは有利である。これは、低速および中速rpm動作時に生じる摩擦の量を著しく減少させ、付勢構造の機械的エネルギ蓄積要素の寿命(ひいては信頼性)を増加させる。
【0026】
そのような実施例では、付勢構造は、第2の静止位置を超えたロータの行程の一部の間にエネルギを蓄え、次に、蓄えたエネルギを用いて、ロータがその第1の静止位置に戻るのと同じ方向にロータを加速するよう、構成されてもよい。アクチュエータは、関連するエンジンの高速rpm動作の間のみ、このエネルギ再生が実施されるように、構成および制御されてもよい。
【0027】
このため、低速および中速rpm範囲の間では、ロータの回転は、エネルギ蓄積を伴わない回転の部分に制限されてもよく、高速rpm動作時には、ロータはこの部分を超えて回転のエネルギ蓄積部分を通って回転するよう制御される。特に、高速rpm時には、ロータは好ましくは、エネルギ蓄積領域を通過して何回転もして、連続的に同じ方向に回転する。
【0028】
羽根車が連結機構を介してロータに結合されていてもよい。より特定的には、連結機構は、ロータがその第1の静止位置にあるときは羽根車が第1の羽根車位置にあり、ロータがその第2の静止位置にあるときは羽根車が第1の羽根車位置から最大変位したまたはほぼ最大変位した位置にあるよう、構成されてもよい。このため、第1から第2の静止位置へのロータの回転は、付勢構造によって印加される力がその最小値を超えて著しく増加することなく、羽根車をその第1の静止位置または定位置からその第2の静止位置での最大変位へと十分に変位させることをもたらしてもよい。たとえば、アクチュエータは、羽根車の第1の位置がバルブ閉鎖位置に対応し、第2の静止位置がバルブ完全開放位置に対応するように、エンジンに設けられてもよい。
【0029】
羽根車の往復運動はしたがって、ロータがその第1の静止位置からその第2の静止位置へと回転し、その後反対方向に再度戻ってくるようにアクチュエータを作動することによって達成されてもよい。また、連結機構は、第2の静止位置を超えるロータの回転中に羽根車が第1の羽根車位置に戻るよう、構成されてもよい。このため、ロータの同じ方向の回転は、羽根車がその第1の位置から第2の位置に行ってから再度戻ってくる往復運動をもたらすであろう。これは、ータの270°以下の回転、または好ましくは180°以下の回転にわたって起こってもよい。ロータの1回転に満たない範囲でのロータの往復運動は、より迅速な往復作用を容易にする。
【0030】
好ましくは、第2の静止位置を超えるロータの回転中に羽根車が第1の羽根車位置に戻るよう、連結機構が構成されている実施例では、この第2の静止位置への復帰は、付勢構造がエネルギを蓄えるその行程の一部にロータが到達する前に起こる。このため、羽根車の十分な往復運動は、付勢構造へのエネルギ伝達の結果、回転が著しく妨げられることなく、ロータを第2の方向に回転させることによって達成されてもよい。
【0031】
この実現化例では、羽根車が第1の羽根車位置にあるロータの回転位置は2つある。これらの位置と羽根車の最大変位が達成される安定静止位置との間に規定される中間安定静止位置が1つ以上あるように、アクチュエータは構成されてもよい。中間静止位置に対応する羽根車の変位は、どの第1の羽根車位置が選択されるかに依存して異なっていてもよい。選択された第1の静止羽根車位置と関連するすぐ隣の静止位置との間での往復運動はしたがって、選択された程度の羽根車変位を有する往復運動を提供するであろう。
【0032】
付勢カム従動子および付勢カム面は付勢要素によって圧迫し合っていてもよく、付勢要素は、第1の静止位置に向かうロータの行程の一部の間にエネルギを蓄え、この蓄えられたエネルギを用いて、第1の静止位置から遠ざかるその行程の一部の間にロータを加速するよう構成されている。これは、アクチュエータの動作中にエネルギの蓄積および解放を提供し、付勢カム面は、必要な中間静止位置の選択を容易にしつつ、このプロセスを制御するよう、この発明に従って輪郭付けられてもよい。
【0033】
さらに別の局面によれば、この発明は、電磁アクチュエータであって、ロータと、ステータとを備え、ロータはステータにおける回転用に構成されており、前記アクチュエータはさらに、ロータに結合され、ロータの回転時に変位するための羽根車を備え、ロータに作用する力によって、ロータ用の複数の安定静止位置が規定され、前記アクチュエータは、ロータを1つの安定静止位置から別の安定静止位置へと動かすよう制御可能であり、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの運動から生じる羽根車の変位は、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動から生じる変位よりも大きく、第1の静止位置から第2の静止位置へのロータの回転と、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの回転とは、実質的に等しく、反対方向である、アクチュエータを提供する。
【0034】
第WO2004/097184号に記載されたバルブアクチュエータ構成では、たとえばバルブステムにアクチュエータによって付与される運動は、ロータがその第1の静止位置から時計方向または反時計方向に遠ざかるかどうかと同様に、ロータの回転角に関連している。発明者は、作動カム面輪郭を、相対する回転方向において異ならせることによって、動作の汎用性の増大が提供され得る、ということに気づいた。このように、一方向における安定静止位置への所与の角度の回転に続く羽根車の変位は、反対方向における同じ角度のロータの回転から生じるものとは異なり得る。これは、ロータをそれぞれの方向に回転させるようにアクチュエータを制御することによって、いずれかの変位が選択され得る、ということを意味する。
【0035】
好ましい一実施例では、羽根車は連結機構を介してロータに結合されており、連結機構は、ロータの回転における空動き部分にわたる使用時に、羽根車の変位が実質的になく、空動き部分は第1の静止位置を含み、第1の静止位置に対して非対称的に位置するように、構成されている。この非対称性の結果、第1の静止位置から第3の静止位置へのロータの運動から生じる動きの大部分は、第1の静止位置から第2の静止位置への回転から生じる運動に対して「失われる」。これは、第2の静止位置および第3の静止位置それぞれへの運動から生じる羽根車の異なる変位につながる。
【0036】
連結機構は、ロータ回転の空動き部分にわたって空動きを「吸収する」よう構成されてもよい。それは、空動き部分にわたって伸長される、ロータと羽根車との間の弾性継手を備えていてもよい。このため、空動き部分にわたり、ロータの回転は、羽根車の変位というよりも、弾性継手の伸長をもたらす。所望の「空動き」を提供するだけでなく、弾性継手は、アクチュエータに結合された連結機構および/または構成部品の構造におけるより大きな公差を提供する。それは、熱膨張または熱収縮、ならびにアクチュエータの寿命にわたる摩耗および損傷から生じる構成部品の寸法の変化を補償し得る。また、空動き部分の間、それは羽根車に張力を加え、それをその行程位置の端に向けて圧迫する(そのためそれをそこに制止する)。
【0037】
また、これに代えて、弾性継手は、ロータ回転の空動き部分にわたって圧縮されるよう構成されてもよい。この場合、羽根車がロータからさらにその行程位置の端に到達しないようにされれば、継手は圧縮されて、羽根車に圧縮力をかける。
【0038】
一実現化例では、連結機構は、ロータがその第1の静止位置にあるときに羽根車に対してその行程の一端から回転方向に偏心している、ロータ上の軸外位置に結合されたクランクを含む。この構成は、特にロータと羽根車との間の弾性継手と組合せると、ロータおよび羽根車の動きの所望の関係を提供する費用効果の高い連結機構を提供する。
【0039】
さらに別の実施例では、アクチュエータは、作動カム面を規定する作動カムと、作動カム面に関連付けられた作動カム従動子とを備え、作動カムおよび作動カム従動子のうちの一方は、ロータを用いて、またはロータによって回転可能であり、アクチュエータは、作動カム従動子の変位が羽根車の変位をもたらすように構成されている。好ましくは、作動カムは羽根車を形成する。
【0040】
好ましくは、ロータの安定静止位置は、ロータに作用する機械的付勢力、および/またはステータによってロータに加えられる受動的磁力によって規定される。ロータは永久磁石を備えていてもよく、ステータは、少なくとも1つの巻線を有し、巻線を通る電流がロータを1つの静止位置から別の静止位置へと動くよう促すようにすることによって磁化可能であってもよい。
【0041】
第1の静止位置は、付勢カム従動子および/または作動カム従動子の行程の一端を規定してもよい。アクチュエータがバルブステムに結合されている実現化例では、第1の静止位置は、たとえば、ステムのバルブ閉鎖位置に対応していてもよい。
【0042】
この発明はさらに、第1の静止位置と別の静止位置との間でロータを前後に振動させるステップを備える、ここに記載されたアクチュエータを動作させる方法を提供する。この発明を具体化するさらに別の動作モードによれば、ロータは、一方向に1回転するロータの回転によって、第1の静止位置から第1の静止位置に戻るよう回転される。その第1の静止位置に戻るためにその動きの方向を反転させる必要がないため、これはアクチュエータの高速動作を容易にし得る。
【0043】
ロータは、どの静止位置でも短い滞留時間の間休止するよう制御されてもよい。
さらに好ましい制御プロトコルは、ロータを第1の静止位置から別の静止位置へと回転させるステップと、前記別の静止位置で休止するステップと、その後ロータの回転を同じ方向に継続して第1の静止位置に戻るステップとを備える。
【0044】
付勢要素は好ましくは機械的であり、バネ構造、たとえば板バネの形をしていてもよい。
【0045】
図面の簡単な説明
例として、先行技術の構造およびこの発明の実施例を、添付された概略図を参照してここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】第WO2004/097184号に記載された形の公知の電磁アクチュエータ構成の正面斜視図である。
図1B】第WO2004/097184号に記載された形の公知の電磁アクチュエータ構成の背面斜視図である。
図2図1Aおよび図1Bに示す形のアクチュエータ構成についての、ロータ回転に対するバルブ上昇およびバネトルクのグラフである。
図3A】バルブステムに結合された、この発明を具体化した電磁アクチュエータの正面斜視図である。
図3B】バルブステムに結合された、この発明を具体化した電磁アクチュエータの背面斜視図である。
図4】この発明を具体化した付勢カム面の輪郭を表わす図である。
図5図4に示す形の付勢カム面輪郭を有するアクチュエータについての、ロータ回転に対するバネ上昇およびバネエネルギ蓄積のグラフである。
図6図4に示す形の付勢カム面輪郭を有するアクチュエータについての、ロータ回転に対するロータ総トルクのグラフである。
図7】この発明を具体化する作動カム面輪郭を表わす図である。
図8】この発明を具体化するアクチュエータについての、ロータ回転に対するバルブ上昇のグラフである。
図9図7の作動カム面輪郭と、関連付けられた引張カム面輪郭との組合せを表わす図である。
図10】バルブステムに結合された、この発明を具体化するさらに別の電磁アクチュエータの概略背面図である。
図11図10に従って構成されたアクチュエータについての、ロータ回転に対する羽根車変位のグラフである。
図12】この発明を具体化するさらに別の付勢カム面の輪郭を表わす図である。
図13図12に示す形の付勢カム面輪郭を有するアクチュエータについての、ロータ回転に対するバネ上昇およびバネエネルギ蓄積のグラフである。
図14図12に示す形の付勢カム面輪郭を有するアクチュエータについての、ロータ回転に対するロータ総トルクのグラフである。
図15】この発明のさらに別の実施例に従ったアクチュエータについての、ロータ回転に対するバルブ上昇のグラフである。
図16図15のバルブ上昇グラフに対応する作動カム面輪郭を表わす図である。
図17】この発明を具体化する別のアクチュエータについての、ロータ回転に対するバルブ上昇のグラフである。
図18図17のバルブ上昇グラフに対応する作動カム面輪郭を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面の詳細な説明
図2は、図1Aおよび図1Bに示す構成を有する公知のアクチュエータにおける、バルブ上昇およびバネ26によってロータに印加されるトルクの変化を表わす。十字形は、バネによって印加されるトルクがない場合にアクチュエータによって規定される安定位置を表わす。0/360°ロータ位置は、その第1の静止位置に対応する。この位置の両側の安定静止位置は、印加されたばねトルクのグラフの2つの最大値に近い、ということが見てわかる。その結果、ロータをその第1の静止位置からこれらの隣接する中間静止位置のうちの1つへと動かすようにアクチュエータを確実に動作させることが、可能ではない場合がある。この場合、選択され得る第1の安定位置は、その第1の静止位置から遠ざかるロータの90°の回転を超えており、そこでは、バルブステムは既に、その全行程の3分の1以上動いている。45°の回転での第1の中間安定静止位置は、選択のために利用可能ではない。
【0048】
この発明を具体化するアクチュエータを、図3Aおよび図3Bに示す。付勢カム100は付勢カム面102を規定する。これは、脚104によって提供される付勢カム従動子によって係合されている。付勢カム面および付勢カム従動子は、板ばねの形をした付勢要素106によって圧迫し合っている。図1Aに示す公知のアクチュエータ構成の付勢カム面24は端面図において円形であるが、付勢カム面102は、以下に図4を参照してより詳細に説明されるように、この輪郭から逸脱している。
【0049】
図3Bに見えるように、作動カム110は作動カム面112を規定する。この面は、レバーの形をした作動カム従動子114によって係合されている。このレバーは、ばね116によってカム面に上向きに圧迫されている。ばね116はレバー118に作用し、それは次にバルブステムヘッド120をレバー114の下側に圧迫する。レバー114の遠位端の下側は、それが上下に動いて羽根車として作用する際、バルブステムヘッド120の上面に当たって揺動する。このように、カム110の回転およびその半径の変化は、レバー114の変位に変換され、それは次にバルブステム30の垂直変位につながる。作動カム面112の輪郭は、以下に図7を参照してさらに説明されるように、端面図において円形から逸脱している。
【0050】
レバー118は、引張カムレバー122によって提供される引張カム従動子に結合されており、双方のレバーは共通の軸124を中心として枢動可能である。引張カムレバー122は、引張カム128によって規定される引張カム面126に圧迫されている。引張カムはアクチュエータロータ上に搭載されている。
【0051】
レバー118および122は、引張カムの輪郭が、ロータの回転位置に依存する、レバー118によってバルブステムに印加される対応する上向きの復帰力に変換されるよう、弾性的にともに結合されている。引張カム輪郭を一例として図9に示し、以下に説明する。
【0052】
図4に示す対称的で非円形の付勢カム面輪郭では、0〜180°間を延在する線の両側における面の各半分が、3つのゾーンに分割されている。これらのゾーンは各側で等しくなっており、0°〜180°間を時計方向に延在する区分を参照して説明する。
【0053】
0〜50°の区分は円形であり、170°〜180°の区分も同様である。50〜170°では、輪郭は円形から徐々に内向きに逸脱している。これは、50°での20mmから170°での15mmへの半径の徐々の変化をもたらす。0、45および180°での径方向の太線は、安定静止位置200を示す。45°での中間安定静止位置は、0°での第1の静止位置から延在する円形ゾーン内に位置する、ということが見てわかる。このため、ロータが0〜45°へと回転する際、面を追従する付勢カム従動子の変位はない。この運動の間、付勢構造によってロータに印加されるトルクはない。したがって、45°での中間静止位置は、ロータとステータとの間に作用する磁力によってのみ規定される。これは、アクチュエータの動作中、それが確実に選択されることを可能にする。実際、この位置を選択するための適切な電流パルスのステータ巻線への印加に続き、ロータが確実にこの位置に落ち着くように、これらの磁力によって明確な力の源泉が45°の位置に規定される。
【0054】
同様に、0°の第1の静止位置とは反対の180°の位置では、カム面上に20°の円形ゾーンが規定され、この位置に明確な力の源泉が磁力のみによって規定されることを可能にする。
【0055】
図5に、ロータ回転に対するばね上昇220およびばねに蓄積されたエネルギ222のグラフを示す。310〜50°および170〜190°の付勢カム面の円形部分は、これらの部分の間、ばね上昇の変化に変換しない、ということが見てわかる。50〜170°のロータ回転の間、ばね上昇および蓄積エネルギの急速な減少がある。なぜなら、このエネルギは、ロータの運動エネルギに変えられるためである。非円形の付勢カム面輪郭はここでは、付勢力をロータ軸の片側に方向付け、トルクの印加をもたらす。190〜310°では、ロータがその第1の静止位置へと回るにつれて、ばね上昇および蓄積エネルギが増加し、運動エネルギをばねの位置エネルギに戻す。
【0056】
ロータの回転位置に対するロータ総トルクのグラフを、図6に示す。総トルクは、ステータによってロータに加えられた受動的磁気トルクと、この発明を具体化する付勢構造によって加えられたばねトルクとを組合せたものである。点224は、0/60°、45°、180°、および315°での安定静止位置を示す。ロータがこれらの各位置に近い安定ゾーン内にある場合、結果として生じるトルクはそれぞれの安定位置へ向けてロータを圧迫するよう作用する、ということが見てわかる。アクチュエータは、特定の要件に合うように、安定ゾーンの傾きおよび/または回転度合を増加させるよう構成されてもよい、ということが理解されるであろう。
【0057】
この発明を具体化する作動カム面輪郭を、図7に示す。半径が、カム110の回転中心から測定されたミリメートル単位で印付けられている。
【0058】
330°〜20°間に延在する図7のカム輪郭の一番上のゾーンでは、カムの半径は10mmであり、その輪郭は端面図において円形である。このため、作動カム従動子がこのゾーンにわたって動く際、その変位はない。その結果、ロータがその第1の静止位置に落ち着く際のそのどんな小さな運動も、作動カム従動子およびたとえばそれに結合されたバルブステムの振動に変換されない。
【0059】
20°と45°での第1の中間安定位置との間では、カムの半径は徐々に増加する。これは、バルブステムの、その閉鎖位置から遠ざかる対応する上昇につながる。
【0060】
対照的に、0°と315°での反対方向の第1の中間静止位置との間では、カム半径の増加はより小さい。アクチュエータの動作中、この構成は、必要とされる変位の程度に依存して、45°かまたは315°でのいずれかの中間静止位置の選択を可能にする。アクチュエータがバルブを動作させるために採用されている場合、これは、2つの異なるバルブ部分開放位置が選択され得る、ということを意味する。それらは、たとえば、作動カム従動子の総変位の10%および25%にそれぞれ対応していてもよい。
【0061】
45°〜165°(および315°〜205°)では、カム半径は滑らかに増加する。半径は165〜205°で一定である。このゾーンは、180°での安定静止位置を包含する。0°での第1の静止位置と同様に、この一定半径部分は、180°の位置を中心とするロータの小さい運動がカムによって作動カム従動子の振動に変換されない、ということを意味する。
【0062】
図7に示す形の非対称的なアクチュエータカム面を有するアクチュエータを採用するロータの回転角に対するバルブ上昇のグラフを、図8に示す。315°での安定静止位置での1.17mmというより小さい変位に比べ、45°での中間静止位置でのカムのより大きい半径が、2.4mmというより大きいバルブ上昇につながる、ということが見てわかる。アクチュエータが内燃機関のバルブステムを制御するために採用されている場合、このより小さい変位はアイドリング状態に対応してもよく、45°でのより大きい変位は、たとえば走行エンジン状態に対応する。
【0063】
図9は、図3Bのアクチュエータ実施例に好適な作動カムおよび引張カムの輪郭の組合せを示す。作動カム面輪郭は、図7に示すものに対応している。引張カム輪郭は、作動カム輪郭から約90°、回転方向に偏心している。これは、図3Bに見えるように、それぞれのカム従動子122および114の接触点がそれに応じて偏心しているためである。
【0064】
さらに別の実施例を、図10に概略的に表わす。アクチュエータのロータ300が端面図に示されており、その回転軸302は、紙面に垂直に延在している。バルブステム30は、軸302から遠ざかるよう延在する方向における往復運動のために構成されている。図では、それはその行程範囲の一端に示されており、そこでそれはそのバルブ台座304に圧迫されている。
【0065】
バルブステムは連結機構を介してロータに接続されている。連結機構は、伸長可能な弾性継手306と、枢軸308と、クランク310とからなる。継手306は、羽根車305およびコネクタ307によってバルブステムに接続されている。クランク310は、枢軸308とロータ300上に位置する枢軸312との間に延在している。
【0066】
実際には、羽根車(インペラ)および/またはバルブステムは、クランク310がロータの回転を羽根車(インペラ)の線形運動に変換するため、線形にのみ動くよう制約されることが意図されている、ということが理解されるであろう。
【0067】
枢軸312は、ロータの回転軸302から径方向に偏心している。ロータが図10に示すその第1の静止位置にある場合、枢軸312は、バルブ台座304から遠ざかるその最大変位の場所から回転方向にも偏心している。この回転方向の偏心は、図10に角度「a」として示されている。この角度は、たとえば5〜7°であってもよい。
【0068】
図10に示す構造の特徴を、図11のグラフによって例示する。このグラフでは、ロータの回転位置に対して、羽根車305の変位が描かれている。この例では、ロータの軸302と枢軸312との間の径方向距離は、6mmである。
【0069】
ロータ回転の約340度〜7度では羽根車の変位はない、ということが見てわかる。これは事実上、ロータの回転の「空動き」部分である。この部分では、羽根車に対する枢軸312の運動は、弾性継手306の伸長の変化しかもたらさない。ロータの回転の残りの部分の間、弾性継手306は伸長されず、枢軸312の動きは連結機構を介して羽根車の線形変位に変換される。このため、図11に示すように、羽根車は、正弦曲線314の頂点で10mmの最大変位へと動かされ、その後、そのゼロ変位位置へと戻る。連結機構の空動きの結果、枢軸312の2mmという線形行程が、したがって「失われる」。
【0070】
重大なことに、ロータがその第1の静止位置にある際、枢軸312の位置がバルブ台座304から遠ざかるその最大線形変位から回転方向に偏心しているため、曲線314も同様に偏心している。図11では、ロータの45度および315度の回転にそれぞれ対応して、第2および第3の静止位置(それぞれ316および318と表記)が印付けられている。ロータはその第1の静止位置から第2および第3の静止位置へと同じ回転角だけ回転するが、第2の静止位置316での羽根車変位は2mmであり、一方、第3の静止位置318ではたった1mmである、ということが見てわかる。第3の静止位置に向かう動きの大部分が、ロータと羽根車との間の連結機構において「失われる」。
【0071】
さらに別の実施例では、弾性継手は、弾性クランクを用いることによって設けられてもよい。
【0072】
「羽根車(インペラ)」という用語は、使用時、アクチュエータによって変位される別の構成部品と係合する、アクチュエータの一部を示す。
【0073】
弾性継手は、たとえばコイルばねといったばねの形であってもよい。ロータの回転の空動き部分では、継手は伸長され、したがってその結果、バルブステムに張力を加えて、それをそのバルブ台座304に対してその閉鎖位置に保つ傾向がある。この弾性継手の特性は、ある特定の用途およびその要件に合うよう適宜選択され得る、ということが理解されるであろう。必要であれば、それは、バルブステムのその台座からの上昇を助けるようにバルブステムに作用するさらに別の弾性要素によって釣り合いをとられ得る。
【0074】
また、これに代えて、この発明を具体化するアクチュエータのいくつかの実現化例では、バルブステムをその閉鎖位置に向けて圧迫するために、(ばねなどの)さらに別の付勢構造を、アクチュエータに結合されたバルブステムに関連付けて設けてもよい。
【0075】
この発明のさらに別の実施例に従った付勢カム面輪郭を、図12に示す。バルブ上昇および付勢構造に蓄えられたエネルギの対応するグラフを、図13に示す。図12の対称的なまたは非円形の付勢カム面輪郭は3つのゾーンに分割されており、輪郭は、0〜180°間に延在する線を中心として対称形である。
【0076】
90°〜270°の区分は円形であり、55°〜5°の区分も同様である。270°〜355°では、輪郭は半径が徐々に増加しており、一方、5°〜90°では、それは半径が徐々に減少している。0°、90°、135°、180°、225°、および270°での径方向の太線は、安定静止位置400を示す。このため、90°、135°、180°、225°、および270°での安定静止位置間のロータの回転については、面の半径に追従する付勢カムの変位はない。また、その輪郭のこの部分にわたって、半径は最小である。したがって、付勢構造によって印加される力がこの半径に依存している構造では、力は、ロータの回転のこの部分にわたって最小である。このため、対応する付勢カム従動子が付勢カム面輪郭のこの部分と係合している間、付勢カム従動子とカム面との間のどんな摩擦も最小となるであろう。機械的ばね構造を用いて付勢カム従動子に付勢を加える場合、この部分は、ばね要素の最小撓みに対応する。アクチュエータが大半の時間、この領域で動作する場合、ばね要素の寿命は長くなるであろう。
【0077】
図13のグラフは、図12に示す形の付勢カムを含むアクチュエータ実施例についての、ロータ回転に対するばね上昇L(グラフ410)およびばねに蓄えられたエネルギE(グラフ412)を描いている。90°〜270°では、バルブ上昇およびエネルギ蓄積がゼロである、ということが見てわかる。双方のパラメータは270°でのゼロから360°/0°での最大値へと増加し、その後、再度低下して90°でゼロになる。このため、エネルギの蓄積およびばねからの解放は、270°〜90°でのみ起こる。他の実施例では、この領域はより狭くてもよい。たとえば、それは約290°から70°まで延在していてもよい。
【0078】
図12および図13の構成に対応する、その回転位置に対するロータ総トルクのグラフを、図14に示す。図12の付勢カム輪郭が、ロータとステータとの間の受動的磁力によって規定される、図14に示すような安定静止位置400の提供を容易にする、ということが見てわかる。
【0079】
作動カムの変位グラフおよび図12の付勢カム輪郭と組合せて使用するためのカム輪郭422を、それぞれ図15および図16に示す。270°〜90°では変位はゼロであることが見てわかる。90°から時計方向に継続して、それは180°で最大値まで増加し、その後再度減少して270°でゼロになる。
【0080】
この構成では、90°、180°、および270°でのロータ位置のうちの1つ以上が、第1の静止位置として示されてもよい。135°、180°、および225°でのこれらの安定静止位置400の各々は、本願の文脈において「第2の静止位置」を表わしていてもよい。
【0081】
図12〜16に示すようなカム面輪郭を有するアクチュエータは、エンジンのバルブステムと組合せて配備されてもよい。その場合、低速および中速rpm動作の間は、ロータは、90°および270°での第1の静止位置か135°および225°の隣接する安定静止位置のいずれか、および/または180°での最大バルブ上昇静止位置から往復運動してもよい。この往復運動は、部分的または完全なバルブ上昇の位置での滞留期間を適宜伴っていてもよい。また、これに代えて、アクチュエータは、滞留期間なしで、所望の上昇に到達し、その後第1の静止位置に戻ってくるための、90°〜270°の任意の角度位置への連続運動がある「弾みモード」で、動作してもよい。これは、確実な低流量のスロットルなしモードの提供を容易にする。
【0082】
高速rpm動作の間は、アクチュエータロータは、何回転も連続して回転し、それにより付勢構造に通電したり電源を切ったりするよう制御されてもよい。
【0083】
90°および270°の双方での第1の静止位置の提供は、いずれかの方向(時計方向または反時計方向)の回転による上述の任意のモードでの動作を可能にし、最も適切なモードは、エンジン要求およびバルブ運転戦略に従って選択される。
【0084】
修正された羽根車変位輪郭430を図17に示し、対応する作動カム輪郭432を図18に示す。それらは、135°および225°での安定静止位置で異なる部分的上昇がそれぞれ達成されるように、0°から180°まで延在する線を中心として作動カム輪郭が非対称的である、という点で、図15および図16の相当物とは異なっている。加えて、最大変位は180°の片側に、約160°で達成されている。これにより、アクチュエータは、135°および225°で提供される2つの選択肢から選択される部分変位で滞留時間を達成し、往復運動して90°および270°での隣接する第1の静止位置へとそれぞれ戻るように、制御され得るようになる。180°での安定静止位置は、約8mmの変位に対応する。
【0085】
この開示を読めば、他の変形および修正が当業者には明らかであろう。そのような変形および修正は、電磁アクチュエータの設計、製造、および使用において既に公知であり、ここに既に記載された特徴の代わりに、またはそれらに加えて使用され得る、均等なおよび他の特徴を伴っていてもよい。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18