特許第6223414号(P6223414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223414
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】天井冷房システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/22 20060101AFI20171023BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F24F1/00 361B
   F24F5/00 101B
   F24F13/22 228
   F24F13/22 222
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-500303(P2015-500303)
(86)(22)【出願日】2014年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2014053432
(87)【国際公開番号】WO2014126188
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-27212(P2013-27212)
(32)【優先日】2013年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513036848
【氏名又は名称】天空株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】青木 憲明
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−300051(JP,A)
【文献】 特開2010−025442(JP,A)
【文献】 特開2011−169495(JP,A)
【文献】 特開2014−156944(JP,A)
【文献】 実開昭63−087479(JP,U)
【文献】 国際公開第1998/051971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/22
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の天井面に設置され雰囲気温度よりも低温の冷媒が通液されて周囲を熱輻射で冷却する吸熱管と、前記吸熱管の下方に対向して配置され前記吸熱管の表面で結露した水滴を収集して排出する排水ドレンと、前記排水ドレンの内部底面に設置され前記排水ドレンの長手方向に進退移動して前記内部底面に付着した塵芥を除去する清掃具と、前記排水ドレンの長手方向に亘って内部に配置され前記清掃具を前記長手方向に往復駆動する長尺の駆動部材と、を備え
前記内部底面は下方に突出する湾曲形状をなし、
前記清掃具はパッド部および係止部を備え、
前記係止部は、前記パッド部を前記内部底面に押圧した状態で前記排水ドレンに対して摺動自在に係止し、
前記パッド部は、前記内部底面に対して毛先が直交して押圧されたブラシ体を有し、前記パッド部が前記係止部に着脱可能に装着されていることを特徴とする天井冷房システム。
【請求項2】
前記駆動部材を掛架する複数のローラをさらに備え、掛架された前記駆動部材の上方に、前記排水ドレンの開口を覆うようにして撥水性の透水部材が装着されている請求項1に記載の天井冷房システム。
【請求項3】
前記駆動部材を掛架する複数のローラをさらに備え、
前記ローラの少なくとも一つは、掛架された前記駆動部材を挟持して駆動する請求項1または2に記載の天井冷房システム。
【請求項4】
前記吸熱管の内部に設置されて前記冷媒が通液される通液パイプと、
前記吸熱管の端部に装着され、前記通液パイプの外側かつ前記吸熱管の内側で結露した水滴を捕集するパッキン部材と、をさらに備え、
前記パッキン部材は、前記通液パイプを挿通する挿通孔と、前記挿通孔よりも下側かつ前記排水ドレンの上方に設けられて前記パッキン部材を貫通する排水孔と、前記吸熱管の内側を向く面に凹溝状に形成されて前記挿通孔および前記排水孔を互いに連通させる集水溝と、を有する請求項1からのいずれか一項に記載の天井冷房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒を吸熱管に通液して周囲を熱輻射で冷却する天井冷房システムが提案されている(特許文献1および特許文献2を参照)。これらの天井冷房システムでは、吸熱管の表面で結露した水滴を収集して系外に排出するための排水ドレンが吸熱管の下方に設けられている。排水ドレンには僅かな勾配が設けられており、収集された水滴が所定量に達して流動性が高まると結露水となって系外に排出される。
【0003】
水滴が少量の場合には、排水ドレンの内部底面に付着したまま所定期間に亘って水滴が滞留することとなる。滞留する水滴は、カビの発生原因となったり、室内を対流する埃が吸着して滞積したりするため、室内環境の観点で問題となる。ここで、排水ドレンの勾配を急峻にすると結露水の流動性が向上して系外に排出されやすくなるが、排水ドレンの上流と下流との高さ寸法が増大するため天井面からの張り出し寸法が大きくなるという問題がある。
【0004】
特許文献1には、排水ドレン(中央排水部材)の内部で清掃部材をスクリュー機構などでスライド移動させることで、排水ドレンの底部に滞積した塵芥を清掃することが記載されている。特許文献2には、排水ドレンの内部に抗菌フィルムを着脱可能に敷設しておき、抗菌フィルムを交換することにより排水ドレンを清掃することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300051号公報
【特許文献2】特開2012−072977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
室内環境の向上のため、排水ドレンの内部を簡易かつ確実に清掃する技術が求められている。特許文献1の構造では、排水ドレンの内部底面にこびり付いたカビや埃などの塵芥を確実に清掃することが困難な場合がある。特許文献2の構造では、天井面という高位置に設置された排水ドレンにアクセスして抗菌フィルムを着脱することは必ずしも容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の天井冷房システムは、室内の天井面に設置され雰囲気温度よりも低温の冷媒が通液されて周囲を熱輻射で冷却する吸熱管と、前記吸熱管の下方に対向して配置され前記吸熱管の表面で結露した水滴を収集して排出する排水ドレンと、前記排水ドレンの内部底面に設置され前記排水ドレンの長手方向に進退移動して前記内部底面に付着した塵芥を除去する清掃具と、前記排水ドレンの長手方向に亘って内部に配置され前記清掃具を前記長手方向に往復駆動する長尺の駆動部材と、を備え、前記内部底面は下方に突出する湾曲形状をなし、前記清掃具はパッド部および係止部を備え、前記係止部は、前記パッド部を前記内部底面に押圧した状態で前記排水ドレンに対して摺動自在に係止し、前記パッド部は、前記内部底面に対して毛先が直交して押圧されたブラシ体を有し、前記パッド部が前記係止部に着脱可能に装着されていることを特徴とするものである。
【0008】
上記発明によれば、結露水に起因して生じる塵芥を清掃具によって排水ドレンの内部底面から除去することができる
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排水ドレンの内部を簡易かつ確実に清掃することが可能な天井冷房システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
図1】第一実施形態の天井冷房システムの側面模式図である。
図2】駆動ワイヤの一部を示す模式図である。
図3図3A図1のA−A線断面図である。図3B図1のB−B線断面図である。図3C図1のC−C線断面図である。
図4図4Aは清掃具の正面図である。図4B図4AのB−B線断面図である。
図5図5Aは清掃具を排水ドレンに装着する前の状態を示す分解正面図である。図5Bは排水ドレンに装着された清掃具と駆動ベルトとの係合状態を示す正面図である。
図6】第二実施形態の天井冷房システムの部分平面図である。
図7図7Aは駆動ローラの側面図である。図7Bは駆動ローラの正面図である。図7Cは補助ローラの側面図である。図7Dは補助ローラの正面図である。
図8】清掃具の第一の変形例を示す側断面図である。
図9】駆動ローラおよび駆動ワイヤの変形例を示す正面図である。
図10】清掃具の第二の変形例を示す正面図である。
図11図11Aはパッキン部材の変形例における外側面を示す正面図である。図11Bはパッキン部材の変形例の側面図である。図11Cはパッキン部材の変形例における内側面を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は第一実施形態の天井冷房システム100の側面模式図である。長手方向の一部領域の図示を省略してある。図2は長尺の駆動ワイヤ41の一部を示す模式図である。図3A図1のA−A線断面図、図3B図1のB−B線断面図、図3C図1のC−C線断面図である。
【0014】
本発明の天井冷房システムの各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材で形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。本発明の天井冷房システムを説明するにあたり、上下方向およびその他の方向を規定して説明する場合があるが、これらの方向は構成要素の相対関係を説明するための便宜的なものである。本発明の天井冷房システムにおける上下方向は、鉛直方向と厳密に一致していてもよく、または所定の角度で傾斜していてもよい。
【0015】
はじめに本実施形態の概要を説明する。
本実施形態の天井冷房システム100は、吸熱管10、排水ドレン20、清掃具30および長尺の駆動部材(駆動ワイヤ41)を備えている。吸熱管10は、室内の天井面200に設置され、雰囲気温度(常温)よりも低温の冷媒が通液されて周囲を熱輻射で冷却する。排水ドレン20は、吸熱管10の下方に対向して配置され、吸熱管10の表面で結露した水滴を収集して排出する。清掃具30は、排水ドレン20の内部底面22に設置され、排水ドレン20の長手方向(図1の左右方向)に進退移動して内部底面22に付着した塵芥を除去する部材である。駆動部材(駆動ワイヤ41)は、排水ドレン20の長手方向に亘ってその内部に配置され、清掃具30を長手方向に往復駆動する。駆動部材(駆動ワイヤ41)は抗菌性を有している。
【0016】
以下、本実施形態をより詳細に説明する。
【0017】
天井冷房システム100は、吸熱管10に冷媒が通液されて室内を冷却する冷房システムである。天井冷房システム100は、冷媒を循環させる配管およびポンプ(図示せず)を備えている。天井冷房システム100は、冷房に供された冷媒を除熱する熱交換機(図示せず)を備えていてもよい。天井冷房システム100は、豊富な量の冷媒を貯留する井戸などの貯液槽(図示せず)を備えていてもよい。
【0018】
天井冷房システム100は、吸熱管10に冷媒を通液したときに室内を冷却する機能を有していればよく、暖房システムとしての機能を併せ持っていてもよい。具体的には、冷媒を加熱する加熱装置(図示せず)を設け、吸熱管10に雰囲気温度よりも高温の熱媒を通液して暖房システムとして天井冷房システム100を使用してもよい。
【0019】
図1に示すように、吸熱管10は室内の天井面200に設置されている。ここで、天井面とは、上階または屋根の、下面または内部である。本実施形態の吸熱管10は、取付具80を用いて天井面200の下面に吊下げて設置されている。本実施形態に代えて、吸熱管10の一部または全部を天井面200の内部に埋め込んで設置してもよい。
【0020】
本実施形態の天井冷房システム100は、駆動部材(駆動ワイヤ41)を掛架する複数のローラ46(46a〜46d)をさらに備えている。掛架された駆動部材(駆動ワイヤ41)の上方には、排水ドレン20の開口を覆うようにして撥水性の透水部材64が装着されている。
【0021】
清掃具30を往復駆動する機構を駆動機構40と総称する。本実施形態の駆動機構40は、駆動ワイヤ41、ローラ46および駆動軸42を含む。駆動ワイヤ41は、排水ドレン20に沿って吸熱管10と内部底面22との間に掛架され、清掃具30に付勢力を与える。
【0022】
本実施形態の駆動部材は、繊維を撚り合わせてなり、排水ドレン20に沿って吸熱管10と内部底面22との間に掛架された駆動ワイヤ41である。この駆動ワイヤ41に抗菌剤が塗布されているか、または含浸している。これにより、駆動ワイヤ41は抗菌性を有している。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の駆動ワイヤ41は、線状部41aと、この線状部41aに対して離散的に多数配置された太径部41bとからなる。太径部41bは線状部41aよりも大径である。本実施形態の線状部41aは、複数本の樹脂製の長繊維を互いに撚り合わせたものである。太径部41bは略球形や紡錘型などの形状をなし、線状部41aの周囲に固定的に装着されている。太径部41bを清掃具30に係合させた状態で駆動機構40を駆動して駆動ワイヤ41を任意方向に走行させることで清掃具30は内部底面22に沿って進退移動する。
【0024】
ローラ46は、駆動ワイヤ41を走行駆動する部材である。本実施形態のローラ46aは、太径部41bと係合して駆動ワイヤ41を正逆方向に付勢する駆動用のギアローラである。以下、ローラ46aを駆動ローラと呼称する場合がある。ローラ46b〜46dは、駆動ワイヤ41を案内するガイドローラである。以下、ローラ46b〜46dを補助ローラと呼称する場合がある。
【0025】
本実施形態の天井冷房システム100は、複数対の吸熱管10および排水ドレン20と、それぞれの排水ドレン20に個別に設けられた清掃具30および駆動部材(駆動ワイヤ41)と、を含む。複数対の吸熱管10および排水ドレン20は、図1の紙面前後方向に並列に並んで設置されている。本実施形態の天井冷房システム100は、複数対の排水ドレン20にそれぞれ設けられた複数の駆動部材(駆動ワイヤ41)を共に駆動する駆動軸42を備えている。
【0026】
抗菌剤は、線状部41aの長繊維に混練されていてもよく、線状部41aの表面に塗布されていてもよい。より具体的には、線状部41aを構成する個々の長繊維の表面に塗布されていてもよく、または撚り合わされた線状部41aの表面に塗布されていてもよい。
【0027】
抗菌剤を線状部41aの長繊維に混練するにあたっては、長繊維の材料であるポリエステルやアクリルなどの樹脂材料に、抗菌性組成物を混練することができる。抗菌性組成物の一例としては、銀、銅および亜鉛から選ばれた少なくとも一種の金属と、シリカまたは活性炭などの多孔質物質と、チタンとケイ素の複合酸化物または酸化チタンなどの光触媒と、を含む組成物が挙げられる。かかる組成物を混練した樹脂材料を長繊維状に成形して複数本のストランドを作成したうえで、ストランドを互いに撚り合わせて駆動ワイヤ41とすることができる。
【0028】
線状部41aを構成する各繊維の表面または撚り合わされた線状部41aの表面に対して抗菌剤を塗布してもよい。抗菌性の分散液に複数本の繊維を浸漬してから互いに撚り合わせて線状部41aとすることができる。または、複数本の繊維を互いに撚り合わせて線状部41aを形成してから、これを抗菌性の分散液に浸漬するか、または分散液を線状部41aの表面にスプレーなどで塗布することができる。抗菌性の分散液としては、酸化チタンを含み抗菌性金属成分が担持された無機酸化物コロイド粒子を溶媒に分散させたものを例示することができる。抗菌性金属成分としては、銀、銅、亜鉛、錫、アルミニウムまたは鉄を挙げることができる。このうち、特に銀と酸化チタンを含む抗菌剤を好適に使用することができる。
【0029】
駆動ワイヤ41のうち、太径部41bについても、その材料に抗菌剤を混練してもよく、または太径部41bの表面に抗菌剤を塗布してもよい。ただし、本実施形態のように太径部41bが滑らかな略球形や紡錘型をなしている場合、太径部41bの表面に塵芥は付着しにくい。このため、太径部41bに抗菌性を付与しなくてもよい。
【0030】
透水部材64には、多数の孔が厚み方向に貫通形成された多孔シート、またはメッシュを用いることができる。本実施形態では、多数の円孔が分散形成されたプラスチック製の多孔シートを透水部材64として例示する。透水部材64は、排水ドレン20の内部に埃や昆虫が進入することを防止する。透水部材64は、吸熱管10の外表面から滴下した結露水を排水ドレン20の内部に通過させる。透水部材64の目開きが円形(楕円や長円を含む)であると、結露水に生じる毛管力が抑制されて結露水が透水部材64に付着しにくい。このため、透水部材64の表面に塵芥が滞積することが防止される。透水部材64が撥水性であることで、結露水の付着が更に防止されている。透水部材64の表面に撥水性処理が施されていてもよく、または透水部材64の材料にフッ素樹脂などの撥水性成分が含まれていてもよい。
【0031】
駆動ワイヤ41は内部底面22の上方を往復するように複数のローラ46の周囲に亘って掛け渡されている。透水部材64が駆動ワイヤ41の上方に装着されているとは、往復する駆動ワイヤ41の少なくとも片側よりも透水部材64が上方にあることをいう。本実施形態の天井冷房システム100では、往復する駆動ワイヤ41の両側よりも透水部材64は上方にある。
【0032】
図3Aは吸熱管10を長手方向に対して直交する断面で切った横断面図である。図3Aに示すように、吸熱管10は、冷媒が通過する流路部12と、熱輻射で周囲を除熱するフィン部14とを備えている。流路部12は円形断面の筒状をなしている。フィン部14は、流路部12に外接する長円形や楕円形、紡錘形などの断面形状を有する筒状をなしている。吸熱管10は単一部材または複数の部材の組み合わせにより構成されている。吸熱管10は、アルミニウム合金、ステンレス合金またはニッケル合金などの金属材料の引き抜き材で形成されている。吸熱管10の内部上側および下側には、ボルトなどの緊締具を用いて吸熱管10の長手方向の両端を他部に固定するためのボス部17、18がそれぞれ形成されている。
【0033】
流路部12には、ポリ塩化ビニルや架橋ポリエチレンなどの硬質樹脂材料からなる通液パイプ13が挿通されている。流路部12の内径と通液パイプ13の外径は略一致しており、通液パイプ13は流路部12の内面に密着している。ただし、通液パイプ13を設けず、吸熱管10の内腔を流路部12として用い、これに冷媒を直接流通させてもよい。フィン部14は流路部12と一体形成されている。フィン部14は、流路部12の内部を流動する冷媒に除熱されて熱伝導により冷却される。フィン部14の内部は空洞である。これにより吸熱管10の熱容量が小さく抑制されており、冷媒によりフィン部14が良好に冷却される。フィン部14の外表面は、室内の雰囲気空気と接触して、熱輻射および熱伝達によりこれを冷却する。本実施形態のフィン部14は、互いに略平行な一対の平面部15と、この平面部15から外側に湾曲して膨出する下部膨出部16とを備えている。下部膨出部16は下側に向かって先細となるテーパー状をなしている。平面部15および下部膨出部16の外表面で結露した水滴は下部膨出部16の下端から落下する。
【0034】
吸熱管10の下方には排水ドレン20が設けられている。吸熱管10と排水ドレン20とは互いに離間していてもよく、または互いに一体に連結されていてもよい。排水ドレン20は上方開口した樋状をなしており、吸熱管10の下部膨出部16から落下した水滴を捕集する。捕集された水滴は集められて結露水となり、排水ドレン20の内部底面22の上を流下する。排水ドレン20が水滴を収集するとは、吸熱管10の外表面で凝集した結露水が排水ドレン20に流入することをいう。排水ドレン20が水滴を収集するとは、結露した水滴が吸熱管10から排水ドレン20に直接に滴下されることのほか、水滴が集まって形成された所定量の結露水が他の部材を介在して排水ドレン20に流入することを含む。
【0035】
図3Bおよび図3Cは、排水ドレン20およびこれを保持する保持樋70を長手方向に対して直交する断面で切った横断面図である。吸熱管10および保持樋70は水平に設置されている。排水ドレン20は、長手方向の一端から他端に向かって傾斜して保持樋70の内部に設置されている。本実施形態では、排水ドレン20は図1の右側から左側に向かって下り傾斜して設置されている。排水ドレン20および保持樋70は、アルミニウム合金、ステンレス合金またはニッケル合金などの金属材料の引き抜き材で形成されている。
【0036】
保持樋70の上端部の両側には、内向きに突出する一対の保持爪74が形成されている。保持爪74の下方には、一対の保持爪72が保持樋70の幅両側から内向きに突出して形成されている。保持爪72と保持爪74との間に透水部材64が装着される。保持樋70の上端に形成された保持爪74は、透水部材64が保持樋70から上側に外れることを規制する押さえ部である。
【0037】
排水ドレン20は、略半割円筒状の内部底面22と、この内部底面22の上部に連続して形成された突起部24とを含む。突起部24は排水ドレン20の内側に向かって突出して形成されている。突起部24は、排水ドレン20に着脱自在に係合した清掃具30の脱離を規制する保持爪である。突起部24が形成されている排水ドレン20の上端面26は、内部底面22に向かって下る傾斜面となっている。
【0038】
吸熱管10から落下した結露水は、透水部材64を通過して排水ドレン20で収集される。排水ドレン20の上端面26は内向きに下り傾斜しており、上端面26で捕集された結露水は内部底面22の内部に集められる。
【0039】
排水ドレン20の長手方向の下り勾配は、一例として1%未満である。このため、結露水が少量の場合は内部底面22の内部に結露水が滞留してカビを発生させたり、埃や昆虫の死骸などを滞積させたりして室内環境を悪化させる。本発明では、これらの環境悪化要因を総称して塵芥と呼称している。
【0040】
清掃具30は、内部底面22の表面に付着した塵芥を擦って除去するための部材である。清掃具30は内部底面22に押し当てられた状態で駆動ワイヤ41によって排水ドレン20に沿って一方向または正逆両方向に駆動される。
【0041】
排水ドレン20は可視光不透過性の材料からなる。排水ドレン20は、長さ方向の少なくとも一端(図1では左端)に、清掃具30を目視するための点検孔28を有する。清掃具30が当該一端に到達したことを、点検孔28を通じて外部から目視することができる。図1に示すように、点検孔28は排水ドレン20の下流端に形成されている。一方、排水ドレン20の上流端にはストッパ29が形成されている。ストッパ29は、保持樋70に対し点検孔28と反対側の端部に設けられている。ストッパ29は内部底面22に形成された突起部であって、清掃具30の移動を規制する。保持樋70のうち、ストッパ29が設けられている端部(上流端)には切欠部78が形成されている。切欠部78は、ストッパ29の近傍に位置する清掃具30を排水ドレン20の内部底面22に対して着脱するための作業窓である。切欠部78は、保持樋70の少なくとも一方の側壁を、その上端から、排水ドレン20の少なくとも一部が臨む深さ位置まで切り欠いて形成したものである。
【0042】
図1に示すように、吸熱管10の両端は断熱板82に支持されている。保持樋70の両端は固定枠84に支持されている。断熱板82および固定枠84は、取付具80により室内の天井面200および壁面210に固定されている。断熱板82は、珪藻土を原料とする多孔質の板状部材である。断熱板82は吸湿性をもち、吸熱管10の外表面に生じた結露水が再度気化した水蒸気を吸収する。このほか、断熱板82はホルムアルデヒドや悪臭の原因分子などの有害分子を吸収する。断熱板82と吸熱管10との間には水密性のパッキン部材83が装着されている。これにより、吸熱管10の外表面に生じた結露水がパッキン部材83で遮断され、固定枠84の内部に浸入することがない。本実施形態のパッキン部材83は通液パイプ13を挿通させる通孔が形成された板状のスペーサである。
【0043】
排水ドレン20で収集された結露水は、下流側の一端に設置された排水管86を通じて天井冷房システム100の系外に排出される。
【0044】
吸熱管10、排水ドレン20および保持樋70の本数は限定されない。本実施形態の天井冷房システム100では、複数対の吸熱管10、排水ドレン20および保持樋70が図1の紙面前後方向に並んで配置されている。複数本の吸熱管10の内部にそれぞれ挿通された通液パイプ13は互いに直列または並列に連結されている。
【0045】
図4Aは清掃具30の正面図である。図4B図4AのB−B線断面図であり、清掃具30の側断面図である。図5Aは清掃具30を排水ドレン20に装着する前の状態を示す分解正面図である。図5Bは排水ドレン20に装着された清掃具30と駆動ワイヤ41との係合状態を示す正面図である。
【0046】
本実施形態の清掃具30はパッド部32および係止部34を備えている。係止部34は、パッド部32を排水ドレン20の内部底面22に押圧した状態で排水ドレン20に対して摺動自在に係止する部位である。
【0047】
パッド部32は、たとえば軟質の多孔質材料からなる。具体的には、ウレタン樹脂、メラミン樹脂または酢酸ビニル樹脂などの樹脂発泡体(フォームプラスチック)を用いることができる。
【0048】
係止部34は、図4Aに示す正面視にて矢尻形状をなしている。係止部34はアルミ合金やステンレス合金などの金属材料からなる。係止部34の下端部はテーパー形状をなしている。係止部34におけるテーパーの終端位置には、矢尻形状の返し部35が形成されている。テーパー形状の先端部、すなわち係止部34の下端部には、凹凸部36が形成されている。係止部34をパッド部32に押圧することで、凹凸部36がパッド部32に食い込んで強固に係合する。言い換えると、係止部34の返し部35よりも下部の寸法と、自然状態のパッド部32の厚さ寸法との合計は、排水ドレン20の内部底面22の底部から突起部24までの深さ寸法よりも大きい。このため、係止部34の下端をパッド部32に僅かに食い込ませた状態で返し部35は突起部24と係合する。
【0049】
係止部34の上部には係合突部37が設けられている。係合突部37は、アルミ合金やステンレス合金などの金属材料からなる。係合突部37と係止部34とはネジ等の緊締具により固定されている。係合突部37には、複数の係合片37a〜37dが上方に突出して形成されている。複数の係合片37a〜37dの並び方向を排水ドレン20の長手方向に向けて清掃具30を排水ドレン20に装着する。
【0050】
複数の係合片37a〜37dの上端には、それぞれ半円形等の係合凹部372が形成されている。係合凹部372には、駆動ワイヤ41の太径部41b(図2を参照)を嵌合する。すなわち、係合凹部372の開口径は駆動ワイヤ41の太径部41bの直径よりも小さく、線状部41aの線径よりも大きい。
【0051】
係合突部37および係止部34のそれぞれ略中央には通孔39が貫通形成されている。通孔39を通じて界面活性剤などの洗浄液をパッド部32に供給することができる。
【0052】
清掃具30は、保持樋70の切欠部78(図1を参照)から臨む排水ドレン20に対して装着される。図5Aの矢印にて示すように、パッド部32を下側として清掃具30を排水ドレン20の開口上部から装着する。清掃具30を排水ドレン20に押し込んで清掃具30の返し部35を排水ドレン20の突起部24と係合させることで(図5Bを参照)、清掃具30は排水ドレン20から脱離することが規制される。排水ドレン20は薄肉の金属材料からなり、外力によって幅方向(図5Aの左右方向)に弾性的に変形させることができる。清掃具30を着脱するときには、排水ドレン20の上端面26を両外側に引っ張って排水ドレン20の開口を弾性的に広げておくとよい。これにより清掃具30を排水ドレン20に対して容易に着脱することができる。
【0053】
図5Bで清掃具30の返し部35と排水ドレン20の突起部24とが係合している状態で、パッド部32は内部底面22に押圧されて僅かに圧縮されている。この状態で清掃具30を同図の紙面前後方向に駆動することで、内部底面22に滞積した塵芥をパッド部32が擦り取って除去する。
【0054】
清掃具30に除去された塵芥は結露水で洗い流され、排水ドレン20の下流端から排水管86に排出される。清掃後の清掃具30は保持樋70の切欠部78より取り外し可能である。これにより、1回または複数回の清掃作業の後にパッド部32を交換または洗浄することが可能である。
【0055】
駆動ワイヤ41が清掃具30に与える付勢力について説明する。図1および図5Bに示すように、駆動ワイヤ41は係合突部37の係合片37a〜37dに係止して排水ドレン20の長手方向に走行させると、清掃具30と一体に移動する。隣接する係合片37a〜37d同士の間隔は、駆動ワイヤ41において隣接する太径部41b同士の間隔の整数倍であってもよい。これにより、係合片37a〜37dの総てに対して駆動ワイヤ41の太径部41bをそれぞれ係合させることができる。ただし、係合片37a〜37dの総てに対して駆動ワイヤ41の太径部41bがそれぞれ係合していることは必ずしも必要ではなく、少なくとも一個の係合片37a〜37dに太径部41bが係合していれば清掃具30を駆動することができる。
【0056】
駆動ワイヤ41は、清掃具30に対して相対的にずれながら清掃具30を駆動してもよい。このとき、駆動ワイヤ41の太径部41bは、係合片37a〜37dに摩擦力を付勢しながら、係合片37a〜37dを通過してもよい。すなわち、駆動ワイヤ41と係合片37a〜37dとを非固定とすることができる。太径部41bが係合片37a〜37dを通過するときに僅かずつ清掃具30を押し進めるようにして駆動ワイヤ41を移動させることができる。
【0057】
<第二実施形態>
図6は第二実施形態の天井冷房システム100の部分平面図である。本実施形態は、駆動ワイヤ41(図1を参照)に代えて、帯状のメッシュ材料からなる駆動ベルト44を駆動部材に用いている点で第一実施形態と相違する。すなわち、本実施形態の駆動機構40は、駆動機構40、駆動軸42および駆動ベルト44を備えている。
【0058】
本実施形態の天井冷房システム100は、複数対の排水ドレン20にそれぞれ設けられた複数の駆動部材(駆動ベルト44)を共に駆動する駆動軸42を備えている。駆動軸42は、複数個の駆動ローラ46aを貫通して設けられた共通の回転軸である。駆動機構40は、複数個の駆動ローラ46aを正逆方向に回転駆動する駆動チェーン43を含む。操作者(ユーザ)が駆動チェーン43を牽引操作することにより、複数の駆動ローラ46aが同方向に回転して、それぞれに掛架されている駆動ベルト44を走行させる。駆動ベルト44は清掃具30の係合突部37に係合して清掃具30を排水ドレン20に対して移動させる。駆動軸42の軸回転により複数の清掃具30が共に駆動されて、複数の排水ドレン20の内部底面22が共に清掃される。図6では、駆動軸42および駆動ローラ46aを左方に回転させて駆動ベルト44および清掃具30を左方に駆動する状態を矢印で示している。駆動軸42の回転方向を反転することで駆動ベルト44の走行方向も反転する。これにより、清掃具30を排水ドレン20の内部底面22に対して1回または複数回に亘って往復動させることができる。
【0059】
駆動ベルト44は複数のローラ46a〜46d(図1を参照)に亘ってループ状に掛架されている。駆動ベルト44のループの上側は水平に張られており、下側は排水ドレン20の下り傾斜に沿って傾斜して張られている。駆動ベルト44が掛架された複数のローラ46のうち、排水ドレン20の下流側に設置されたローラ46cの下端位置は、排水ドレン20の上流側に設置されたローラ46bの下端位置よりも低位にある。
【0060】
駆動ベルト44はメッシュまたは多孔シートを無端のベルト状に形成したものである。駆動ベルト44は透水性を有している。駆動ベルト44は、撥水性を有することが好ましい。本実施形態では排水ドレン20の開口から内部に進入する塵芥を駆動ベルト44により抑制している。したがって、透水部材64(図1および図3を参照)は不使用とすることができる。
【0061】
図6に示すように、本実施形態の天井冷房システム100は、駆動ベルト44の表面に付着した塵芥を捕集して除去する捕集部60を備えている。本実施形態の捕集部60は、多数本の合成繊維が植毛されたパッド状のブラシである。捕集部60(ブラシ)は、ループする環状の駆動ベルト44の外側表面に対して軽く押圧された状態で設けられている。捕集部60の幅寸法は、駆動ベルト44の幅寸法と同等またはこれよりも大きい。捕集部60は駆動ベルト44の幅全体に亘って当接している。駆動ベルト44は透水性であり多数の孔45を有している。駆動ベルト44は、吸熱管10の表面から垂れ落ちた水滴を通過させるとともに、雰囲気中の塵芥を濾過する。かかる塵芥は駆動ベルト44の外表面に付着したままで駆動ベルト44とともにローラ46間を走行する。かかる塵芥は、捕集部60によって駆動ベルト44から掻き取られる。駆動機構40を駆動することで駆動ベルト44は清浄に保たれる。
【0062】
図7Aは駆動ローラ46aの側面図、図7Bは駆動ローラ46aの正面図、図7Cは補助ローラ46bの側面図、図7Dは補助ローラ46bの正面図である。
【0063】
本実施形態の駆動機構40は、排水ドレン20の長さ方向の両側に設置された複数のローラ46a〜46d(図1および図6を参照)と、これらに掛架されて清掃具30に付勢力を与える駆動ベルト44と、を含む。本実施形態のローラ46a〜46dの少なくとも一つは、図7Aから図7Dに示すように幅方向の中央が膨出した樽型をなしている。より具体的には、駆動ローラ46aおよび補助ローラ46b〜46dの総てが樽型をなしている。
【0064】
駆動ローラ46aは幅中央が膨出した筒状をなしている。駆動ローラ46aには、角形(六角形)の貫通孔47が形成されている。貫通孔47には駆動軸42(図6を参照)が挿入される。駆動ローラ46aの幅方向の両端に形成されたスロープ部461では、端部から中央にかけて駆動ローラ46aが徐々に拡径している。幅中央の太径部462の外径は略均一である。駆動ローラ46aには、突歯463がピッチ配置された環状の歯列464〜468が複数列に亘って所定間隔で並んで形成されている。より具体的には、歯列464、468はスロープ部461に形成されている。歯列465、467は、スロープ部461と太径部462との境界に形成されている。
【0065】
歯列466は太径部462の中央に形成されている。駆動ローラ46aの周面469からの突歯463の突出高さはいずれも等しい。このため、幅中央に位置する歯列465〜467の突歯463は、両端に位置する歯列464・468の突歯463に比べて、駆動ベルト44に対して深く係合する。一方、補助ローラ46b〜46dの周面469は平坦であり、突歯463は形成されていない。補助ローラ46b〜46dの幅中央は滑らかに膨出している。ローラ46a〜46dに所定の張力をもって掛架された駆動ベルト44は、各ローラの両端よりも幅中央から強く張力を受ける。このため、駆動ベルト44をローラ46a〜46dが走行駆動することにより、駆動ベルト44は各ローラの幅中央に自然にセンタリングされて係合する。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0067】
たとえば、本実施形態では保持樋70の両端がそれぞれ固定枠84に固定されることを説明したが、本発明はこれに限られない。図1において、保持樋70の上流端を固定枠84に対してヒンジ固定し、保持樋70の下流端を下方に引き下げ可能としてもよい。具体的には、水平方向を軸方向とする回動軸によって保持樋70の上流端を固定枠84に固定する。排水ドレン20および保持樋70の下流端および排水管86を、固定枠84に対して解除可能に係止しておく。排水ドレン20の内部を清掃する場合や、排水ドレン20の内部に滞留した結露水を排出するときには、排水ドレン20および保持樋70の下流端の係止を解除して固定枠84から引き下げる。これにより、排水ドレン20の内部底面22の傾斜角を大きくして、結露水を自重により迅速に排出することが可能になる。
【0068】
第二実施形態では駆動機構40として駆動軸42および手動の駆動チェーン43を例示したが、これに代えて、駆動ローラ46aを電気的に駆動するモータを設けてもよい。
【0069】
清掃具30の具体的な構造は上記実施形態に限られない。たとえば、清掃具30のパッド部32に代えて、多数の繊維を束ねたブラシ体を用いてもよい。
【0070】
図8は清掃具30の第一の変形例を示す側断面図である。この清掃具30は、洗浄液を貯留しておく貯留部52と、洗浄液Wを貯留部52から少量ずつ吐出する吐出機構54と、を備えている。吐出機構54は、清掃具30の静止時に洗浄液Wの吐出を停止し、かつ駆動機構40による清掃具30の駆動と連動して洗浄液Wを吐出する。
【0071】
吐出機構54は、散布ローラ541と、この散布ローラ541に所定深さで掘り込み形成された凹溝部542とで構成されている。パッド部32は伏椀状をなし、散布ローラ541を収容している。貯留部52の底部には散布ローラ541と連通する吐出孔55が形成されている。貯留部52の上部には、洗浄液Wを充填するための閉止可能な供給口56が設けられている。貯留部52に充填された洗浄液Wは吐出孔55を満たす。排水ドレン20の内部底面22の上で清掃具30を移動させると散布ローラ541が回転する。散布ローラ541が回転して凹溝部542が吐出孔55と一致したときに、洗浄液Wは吐出孔55から凹溝部542に移し替えられる。散布ローラ541がさらに回転すると、上記で凹溝部542に移し替えられた洗浄液Wは、凹溝部542から内部底面22に向けて散布される。これにより、パッド部32には洗浄液Wが少量ずつ供給される。清掃具30が停止しているときは、凹溝部542と吐出孔55との位置関係によらず貯留部52と内部底面22とは非連通となるため、貯留部52に充填された洗浄液Wを浪費することがない。
【0072】
洗浄液Wは、界面活性剤が主成分である。洗浄液Wにはワサビエキス(イソチオシアン酸アリル)や柑橘系エキスを配合してもよい。洗浄液Wには、内部底面22よりも硬度が低い研磨剤を配合してもよい。これにより内部底面22を傷つけることなく塵芥を除去することができる。
【0073】
図9は、駆動ローラ46aおよび駆動ワイヤ41の変形例を示す正面図である。
【0074】
本変形例の天井冷房システム100は、駆動部材(駆動ワイヤ41)を掛架する複数のローラ46a〜46dを備える点で第一実施形態と共通し(図1参照)、ローラ46a〜46dの少なくとも一つ(駆動ローラ46a)が、掛架された駆動ワイヤ41を挟持して駆動する一対のゴムリング48を有している点で第一実施形態と相違する(図9参照)。
【0075】
本変形例の駆動部材は、繊維を撚り合わせてなり、排水ドレン20に沿って吸熱管10と内部底面22との間に掛架された駆動ワイヤ41である。駆動ワイヤ41の表面には抗菌剤が塗布されている。本変形例の駆動ワイヤ41は、太径部41b(図2参照)を有さず、径が均一な無端の索状体である。
【0076】
駆動ローラ46aは、ゴムリング48で挟持した駆動ワイヤ41を正逆方向に付勢することにより清掃具30を排水ドレン20の長手方向に往復駆動する。駆動ワイヤ41の表面には、抗菌性組成物が混練された樹脂材料が塗工されている。このため、本変形例の駆動ワイヤ41はゴムリング48との密着性に優れ、ゴムリング48が駆動ワイヤ41に対して空回りすることなく清掃具30を良好に駆動する。
【0077】
駆動ローラ46aには駆動軸42が貫通して設けられている。駆動ローラ46aは、胴部491と、この胴部491よりも大径の大径部493と、大径部493よりも更に大径で大径部493の両側に設けられた一対の鍔部492と、を備えている。胴部491、鍔部492および大径部493は一体に形成されており駆動軸42と同軸で回転する。対向する一対の鍔部492の内側に、一対のゴムリング48が互いに離間して装着されている。駆動ワイヤ41は大径部493の周囲に装着されている。駆動ワイヤ41の直径は一対のゴムリング48の間隔よりも僅かに小さく、駆動ワイヤ41はゴムリング48に圧接されている。本変形例の駆動ワイヤ41は、大径部493の外周面と一対のゴムリング48の各内側面とに接して駆動される。
【0078】
胴部491には取付部494が回転自在に装着されている。取付部494はローラ46aを保持樋70の端部にネジで固定するための部位である。
【0079】
ゴムリング48に用いられるゴム材料は特に限定されないが、耐摩耗性に優れる観点からウレタンゴム、ブチルゴム、スチレン・ブタジエンゴムなどの合成ゴムを用いることができる。
【0080】
図10は、清掃具30の第二の変形例を示す正面図である。本変形例の清掃具30は、パッド部32および係止部34を備え、排水ドレン20に着脱可能に係合させて用いる点で第一実施形態と共通する。
【0081】
排水ドレン20の内部底面22は、第一実施形態と同様に、下方に突出する湾曲形状をなしている。本変形例の清掃具30のパッド部32は、排水ドレン20の内部底面22に対して毛先33aが直交して押圧されたブラシ体33を有している点で第一実施形態と相違する。パッド部32は係止部34に着脱可能に装着されている。
【0082】
係止部34は、押さえ板301と、一対の挟持板302・303を備えている。押さえ板301は、排水ドレン20の突起部24に嵌合して摺動する。押さえ板301はポリアセタールやフッ素系樹脂などの低摩擦の合成樹脂からなる。挟持板302・303は金属材料からなる。下側の挟持板302は押さえ板301の上面に固定され、上側の挟持板303は挟持板302に対して着脱可能に装着されている。挟持板302・303の間には駆動ワイヤ41が挟持されている。駆動ローラ46aにより駆動ワイヤ41を駆動することで、清掃具30が排水ドレン20に沿って往復移動する。
【0083】
パッド部32は、ブラシ体33、ボディ304およびシート305を備えている。ボディ304は下方に突出する楔状をなしている。ボディ304の下面は排水ドレン20の内部底面22と平行である。ブラシ体33は多数の毛材からなり、これらの毛材は先端(毛先33a)がシート305の下面に直交するように植設されている。シート305の上面は、楔状のボディ304の下面に接着されている。これにより、ブラシ体33の毛先33aは内部底面22に直交し、内部底面22に対して僅かに押圧されている。ボディ304は係止部34の押さえ板301に対してネジ等により着脱可能に固定されている。本変形例の清掃具30によれば、内部底面22に滞積した塵芥をブラシ体33の毛先33aがこそげ取って除去することができる。また、清掃具30の繰り返しの使用によりブラシ体33が損耗した場合にはパッド部32を押さえ板301から取り外して新たなものに交換することができる。このため、かかる交換作業において駆動ワイヤ41を清掃具30から取り外す必要がなく作業性に優れる。
【0084】
図11Aから図11Cは、変形例にかかるパッキン部材83を示す図である。図11Aはパッキン部材83の外側面を示す正面図であり、図11Bはパッキン部材83の側面図であり、図11Cはパッキン部材83の内側面を示す背面図である。
【0085】
本変形例の天井冷房システム100は、吸熱管10の内部に設置されて冷媒が通液される通液パイプ13と、吸熱管10の端部に装着されているパッキン部材83と、を備える点で第一実施形態と共通する(図1参照)。
【0086】
本変形例のパッキン部材83は、通液パイプ13の外側かつ吸熱管10の内側で結露した水滴を捕集する部材であり、挿通孔87、排水孔88および集水溝89を有する点で第一実施形態と相違する。挿通孔87は、通液パイプ13を挿通する孔である。排水孔88は、パッキン部材83を貫通する孔であり、挿通孔87よりも下側かつ排水ドレン20の上方に設けられている。集水溝89は、吸熱管10の内側を向く面(内側面831)に凹溝状に形成されており、挿通孔87および排水孔88を互いに連通させる。
【0087】
図1に示すように、パッキン部材83は吸熱管10の端部に対して、内側面831が吸熱管10の内側を向くようにして装着される。言い換えると、吸熱管10の端部にパッキン部材83を装着した状態で、外側面832は断熱板82と対面する。
【0088】
パッキン部材83にはネジ孔833〜835が設けられている。上方のネジ孔833は吸熱管10のボス部17に対応する位置に形成されている。下方のネジ孔834・835は、吸熱管10の一対のボス部18に対応する位置に形成されている。パッキン部材83の外形は、吸熱管10のフィン部14の端面(図3A参照)と同形状である。これにより、通液パイプ13を挿通孔87に挿通した状態で、パッキン部材83を吸熱管10の端部に対してネジで固定することができる。
【0089】
挿通孔87の内径は通液パイプ13の外径および流路部12の内径よりも大きい。挿通孔87の内径は流路部12の外径より大きくてもよい。集水溝89は鉛直下方に延在している。集水溝89の上端は挿通孔87に向かって開口している。集水溝89の下端には排水孔88が連設されている。
【0090】
通液パイプ13に冷媒を通液すると、金属製の流路部12およびフィン部14(図3A参照)は冷却され、吸熱管10の内部には結露が生じる。具体的には、流路部12のうち、フィン部14の空洞に対面する外周面、および通液パイプ13と接する内周面に結露が生じやすい。この結露により生じた結露水は、流路部12または通液パイプ13の表面を伝ってパッキン部材83に至ると、挿通孔87から集水溝89を通じて流下し、排水孔88を通じてパッキン部材83の外側面832の側に排出される。排水孔88の直下には排水ドレン20が設置されており、パッキン部材83から排出された結露水は排水ドレン20に受容される。排水ドレン20で受容された結露水は、吸熱管10の外表面から滴下して排水ドレン20で収集された水滴と合流し、排水管86を通じて天井冷房システム100の系外に排出される。
【0091】
パッキン部材83は撥水性の樹脂材料からなる。具体的な樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素系樹脂材料などを使用することができる。これにより、結露水がパッキン部材83に付着せず排水孔88より好適に排出することができる。
【0092】
本変形例のパッキン部材83のように、吸熱管10の内部の結露水を捕集して排水ドレン20に流すことにより、排水ドレン20には多くの結露水が流れることとなり、内部底面22の表面への塵芥の付着が顕著となる。したがって、塵芥を除去する清掃具30を排水ドレン20に装着するとともに、駆動ワイヤ41を抗菌性とすることにより、室内環境を好適に維持する効果が顕著に発揮される。
【0093】
なお、上記実施形態および変形例では、吸熱管10の内部に1本の直線的な通液パイプ13が挿通されている態様を例示したが、本発明はこれに限られない。吸熱管10の内部の複数箇所に流路部12が設けられて複数本の通液パイプ13がそれぞれ挿通されてもよい。また、吸熱管10の内部の2箇所に流路部12を設けるとともに、1本の通液パイプ13をU字状に折り返して形成し、一端側と他端側を2箇所の流路部12にそれぞれ挿通してもよい。このように複数箇所に流路部12を形成する場合、図11Aから図11Cに示したパッキン部材83に代えて、流路部12に対応して挿通孔87を複数箇所に形成するとともに、これらの挿通孔87同士を集水溝89で連通してもよい。
【0094】
本発明の上記実施形態およびその変形例は以下の技術思想を包含する。
(1)室内の天井面に設置され雰囲気温度よりも低温の冷媒が通液されて周囲を熱輻射で冷却する吸熱管と、前記吸熱管の下方に対向して配置され前記吸熱管の表面で結露した水滴を収集して排出する排水ドレンと、前記排水ドレンの内部底面に設置され前記排水ドレンの長手方向に進退移動して前記内部底面に付着した塵芥を除去する清掃具と、前記排水ドレンの長手方向に亘って内部に配置され前記清掃具を前記長手方向に往復駆動する抗菌性の長尺の駆動部材と、を備える天井冷房システム。
(2)前記駆動部材を掛架する複数のローラをさらに備え、掛架された前記駆動部材の上方に、前記排水ドレンの開口を覆うようにして撥水性の透水部材が装着されている上記(1)に記載の天井冷房システム。
(3)前記清掃具がパッド部および係止部を備え、前記係止部は、前記パッド部を前記内部底面に押圧した状態で前記排水ドレンに対して摺動自在に係止する上記(1)または(2)に記載の天井冷房システム。
(4)前記内部底面は下方に突出する湾曲形状をなし、前記パッド部は、前記内部底面に対して毛先が直交して押圧されたブラシ体を有し、前記パッド部が前記係止部に着脱可能に装着されている上記(3)に記載の天井冷房システム。
(5)前記駆動部材を掛架する複数のローラをさらに備え、前記駆動部材は、繊維を撚り合わせてなり前記排水ドレンに沿って前記吸熱管と前記内部底面との間に掛架された駆動ワイヤであって、前記駆動ワイヤの表面には抗菌剤が塗布されており、前記ローラの少なくとも一つは、掛架された前記駆動ワイヤを挟持して駆動する一対のゴムリングを有する上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の天井冷房システム。
(6)前記吸熱管の内部に設置されて前記冷媒が通液される通液パイプと、前記吸熱管の端部に装着され、前記通液パイプの外側かつ前記吸熱管の内側で結露した水滴を捕集するパッキン部材と、をさらに備え、前記パッキン部材は、前記通液パイプを挿通する挿通孔と、前記挿通孔よりも下側かつ前記排水ドレンの上方に設けられて前記パッキン部材を貫通する排水孔と、前記吸熱管の内側を向く面に凹溝状に形成されて前記挿通孔および前記排水孔を互いに連通させる集水溝と、を有する上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の天井冷房システム。
【0095】
さらに、本発明の上記実施形態およびその変形例は以下の技術思想を包含する。
(7)前記駆動部材が、繊維を撚り合わせてなり前記排水ドレンに沿って前記吸熱管と前記内部底面との間に掛架された駆動ワイヤであって、前記駆動ワイヤに抗菌剤が塗布されまたは含浸していることを特徴とする上記の天井冷房システム。
(8)複数対の前記吸熱管および前記排水ドレンと、それぞれの前記排水ドレンに個別に設けられた前記清掃具および前記駆動部材と、を含み、複数対の前記排水ドレンにそれぞれ設けられた複数の前記駆動部材を共に駆動する駆動軸をさらに備える上記の天井冷房システム。
(9)前記複数対の吸熱管および排水ドレンは互いに平行に設置されており、前記駆動機構は、複数の前記排水ドレンの並び方向に延在する駆動軸を含み、前記駆動軸の軸回転により前記複数の清掃具が共に駆動されて複数の前記排水ドレンの前記内部底面が共に清掃されることを特徴とする上記の天井冷房システム。
(10)前記駆動部材が、前記排水ドレンに沿って前記吸熱管と前記内部底面との間に掛架され前記清掃具に付勢力を与える透水性の駆動ベルトである上記の天井冷房システム。
(11)前記駆動ベルトの表面に付着した塵芥を捕集して除去する捕集部を更に備える上記の天井冷房システム。
(12)前記排水ドレンの長さ方向の両側に設置されて前記駆動ベルトが掛架される複数のローラを更に含み、前記ローラの少なくとも一つが、幅方向の中央が膨出した樽型をなしている上記(10)または(11)の天井冷房システム。
(13)前記駆動ベルトと前記清掃具とは非固定であり、前記駆動機構が前記駆動ベルトと前記清掃具との摩擦力により前記清掃具を駆動する上記(10)から(12)のいずれかに記載の天井冷房システム。
(14)前記排水ドレンは可視光不透過性の材料からなり、かつ長さ方向の少なくとも一端に前記清掃具を目視するための点検孔を有する上記の天井冷房システム。
(15)前記清掃具が、洗浄液を貯留しておく貯留部と、前記洗浄液を前記貯留部から少量ずつ吐出する吐出機構と、を備え、前記吐出機構は、前記清掃具の静止時に前記洗浄液の吐出を停止し、かつ前記駆動機構による前記清掃具の駆動と連動して前記洗浄液を吐出することを特徴とする上記の天井冷房システム。
【0096】
この出願は、2013年2月15日に出願された日本出願特願2013−027212号を基礎とする優先権を主張し、その開示の総てをここに取り込む。
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