(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞が酵母および細菌から選択され、胚がカエノラブディティス・エレガンス(C.Elegans)またはショウジョウバエ(Drosophila)の胚から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
胚がカエノラブディティス・エレガンス(C.Elegans)の胚であり、ウェルの上面の幅が26μmから40μmの間およびウェルの底の幅が25μm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
胚がショウジョウバエ(Drosophila)の胚であり、ウェルの上面の幅が0.2mmから0.3mmの間およびウェルの底の幅が0.16mm未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
装置がさらに、装置上でいくつかの群のウェルを互いに分離する物理的な障壁、および任意に異なる流体を装置上のウェルの群に適用するためのマイクロ流体系をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同様に、Drosophila(特にキイロショウジョウバエ)は重要で便利なモデルである。その小さなサイズ、短い世代間および大きい卵のサイズにより、この胚は遺伝学研究で理想的である。透明な胚は発生的研究を容易にする。胚形成期に、Drosophila胚の方向性は胚の背腹軸への関心のため非常に重要である。通常の顕微鏡用スライド上で研究されると、背から腹への方向性は本質的に無作為であり、高処理量分析の防げとなる。Chungら(2011, Nature Methods, 8, 171−177)は、大規模な胚の順序および方向付けのためのマイクロ流体アレイを開示する。しかしながら、開示されたアレイは、非常に複雑で、高価で容易に研究者に利用可能ではない。したがって、多数の細胞壁を持つ細胞または胚の適切な方向付けを提供できる装置および方法がいまだ必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明において、堅い長方形の壁を有する細胞および胚、特に細胞壁をもつ細胞または長方形の卵殻を有する無脊椎動物の胚を観察するための改良された装置が提供される。これらの装置は非常に高いウェルへの充填率を提供する。改良は、円錐形または円錐台形のウェルに基づく。実際に、同じ条件および細胞壁をもつ細胞について、本発明の改良された装置は、円柱状のウェルをもつ装置では20%しか示さない一方で、80%の充填率を示す。さらに、本発明の装置は、同じ方向性で、すなわち、観察面と平行な長軸に沿って、複数の細胞または胚を固定化することができる。まず第一に、この方向性はその後観察面に垂直になる細胞質分裂の環などの細胞構造の最適な観察を許容し得る。第二に、同じ方向性の複数の細胞および胚の有する利点を通じて、容易に比較できるデータを得ることができる。それは特に背から腹への方向性が観察面に垂直であることから、Drosophila胚について特に興味深い。
【0008】
従って、本明細書は、支持体上に同じ方向性で、複数の、細胞壁を有する細胞または卵殻を有する無脊椎動物の胚を固定するための装置であって、該細胞または胚は長方形の形状を有し、装置は、ただ一つの細胞または胚を収容するのに好適なウェルが複数配置される支持体を含み、以下の特徴を有する:
− 円錐形または円錐台形を有するウェル;
− ウェルの上面の幅がウェルに固定化される細胞または胚の短軸の長さより長い;および
− ウェルの底の幅がウェルに固定化される細胞または胚の短軸の長さより短い、
装置を開示する。
【0009】
より具体的に、本発明は、装置の支持体上に、複数の細胞または無脊椎動物の胚を同じ方向性で固定する方法、ここで、該細胞または胚は長方形の形状を有し、細胞は細胞壁を有し、無脊椎動物の胚は卵殻を有し、
装置は、ただ一つの細胞または胚を収容するのに好適なウェルが複数配置される支持体を含み、以下の特徴を有し:
− 円錐形または円錐台形を有するウェル;
− ウェルの上面の幅がウェルに固定化される細胞または胚の短軸の長さより長い;および
− ウェルの底の幅がウェルに固定化される細胞または胚の短軸の長さより短い、
そして、方法は該細胞または胚をウェルに配置する段階を含む、
方法に関する。
【0010】
任意に、方法はさらに細胞または胚を固定化するための適当な装置を選択する予備段階、特に細胞または胚のサイズ、より具体的にはそれらの短軸、に基づく。
【0011】
好ましくは、ウェルに細胞または胚を配置する段階は遠心分離段階で実施される。
【0012】
好ましくは、方法は、支持体上に固定化された細胞または胚を、特に細胞または胚の長軸と垂直な面において、観察する段階を含む。
【0013】
好ましくは、ウェルの幅は、ウェルに固定化される細胞または胚の短軸と、ウェルの下半分の位置で、好ましくは下から3分の1の位置で等しい。
【0014】
好ましくは、ウェルの縦軸およびウェルの側面の間の角度(
図1に示されるα)が、5から45°の間、好ましくは10から30°の間である。
【0015】
好ましくは、ウェルの深さは、ウェルに固定化される細胞または胚の長軸の少なくとも1/3、好ましくは、ウェルに固定化される細胞または胚の長軸の少なくとも1/2である。
【0016】
好ましい実施形態において、細胞は酵母または細菌であり、胚はC.ElegansまたはDrosophilaの胚である。
【0017】
特定の実施形態において、細胞は酵母であり、細胞は酵母でありかつウェルの上面の幅は6から10μmの間およびウェルの底の幅は1から2μmの間である。任意に、ウェルの深さは4から10μmの間、好ましくは6から8μmの間である。
【0018】
他の特定の実施形態において、細胞は細菌であり、ウェルの上面の幅は500nmから3μmの間およびウェルの底の幅は500nm未満である。
【0019】
他の特定の実施形態において、胚はC.Elegansの胚であり、ウェルの上面の幅は26μmから40μmの間およびウェルの底の幅は25μm未満である。任意に、ウェルの深さは10から40μmの間である。
【0020】
さらに特定の実施形態において、胚はDrosophilaの胚であり、ウェルの上面の幅は0.2mmから0.3mmの間およびウェルの底の幅は0.16mm未満である。任意に、ウェルの深さは0.15から0.5mmの間である。
【0021】
好ましくは、支持体は顕微鏡法に適する。より好ましくは、支持体はガラス板、好ましくはシラン処理ガラス、より好ましくはウェルに配置された微細加工基板を持つ、シラン処理ガラスのカバースリップである。しかしながら、高解像度を許容するので、石英のカバースリップもまた考慮される。
【0022】
好ましくは、微細加工基板はポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)で作製される。
【0023】
任意に、装置はさらに、装置上でいくつかの群のウェルを互いに分離する物理的な障壁を含む。加えて、そのような装置は、異なる流体(例えば、試料または培地)を装置上のウェルの群に適用するためのマイクロ流体系をさらに含むことができる。
【0024】
任意に、装置は、各々の組がウェルの上面で異なる幅を有する、いくつかのウェルの組を含む。
【0025】
本発明は、a)細胞または胚を支持する本発明の装置を提供すること;およびb)細胞または胚を、特に細胞または胚の長軸に垂直な面において、観察すること、を含む、細胞または胚を観察または研究するための方法に関する。好ましくは、観察は顕微鏡法によって実施される。
【0026】
そして、本発明の方法によると、細胞または胚を観察または研究する段階は:
− 該細胞の細胞質分裂の環を観察すること、および/または
− 該細胞の細胞分裂または該胚の胚形成期を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定すること、および/または
− 該細胞または該胚の長軸に垂直な面を観察する、および/または
− 細胞の先端成長を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定すること、および/または
− 該細胞または胚の、タンパク質の発現または活性のレベルを決定すること、および/または
− 該細胞または胚のタンパク質の局在または相互作用を決定すること、および/または
− 該細胞または胚のオルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性を観察すること、および/または
− 該細胞または胚の、タンパク質の活性レベル、タンパク質の局在または相互作用、オルガネラ、細胞骨格、DNAまたは細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性、細胞質分裂の環の収縮を観察すること、
を含み得る。
【0027】
本発明はさらに、細胞または胚を観察するための、特に、細胞の細胞質分裂の環を観察するための、細胞分裂または胚形成期を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定するための、細胞または胚の長軸に垂直な面を観察するための、細胞の先端成長を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定するための、タンパク質の発現または活性のレベルを決定するための、タンパク質の局在または相互作用を決定するための、オルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性を観察するための、タンパク質の発現レベル、タンパク質の活性レベル、タンパク質の局在または相互作用、オルガネラ、細胞骨格、DNAまたは細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性、細胞質分裂の環の収縮を観察するための、本発明の装置の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の説明
本発明において、本発明者らは、細胞壁および長方形の形状を有する細胞または長方形の卵殻を有する無脊椎動物の胚で使用されるように設計された装置およびそれらを使用する方法を提供する。
【0030】
特に、本発明の装置は、ウェルへの導入の劇的な増加および細胞または胚の方向性の調節を許容する、円錐形または円錐台形のウェルのため改良される。実際に、理論に拘泥されずに、円錐形または円錐台形のウェルは細胞または胚のウェルへの移行を容易にするだけでなく、ウェルのそれらの捕捉を増加させる。円錐形または円錐台形のウェルは、細胞および胚が、例えば洗浄段階の間、流体力学的流動に抵抗するのを許容するのに好適である。さらに、それらは細胞または胚の圧縮を制限する利点を示す。他の利点は、各々の細胞または胚に適切なサイズのウェルを選択することにより、それらの長方形の形状により、装置が細胞または胚について、特に観察面または基板に対して垂直なそれらの長軸に沿った、同じ方向性を許容することである。したがって、本発明の装置は、同じ方向性を有する、多数の細胞または胚の研究、ここで、該方向性は細胞または胚に対して垂直ないかなる面を観察するのに適当である、を許容する。
【0031】
したがって、本発明はただ一つの単一の細胞または胚を含むのに好適な複数のウェルを備える支持体を含み、該ウェルが円錐または円錐台形状を有する、装置に関する。好ましい実施形態において、ウェルは円錐台形状である。他の好ましい実施形態において、ウェルは円錐形状を有する。
【0032】
本発明はさらに、装置の支持体上に複数の細胞または無脊椎動物の胚を固定するための方法であって、該細胞または胚は長方形の形状を有し、該細胞は細胞壁を、および無脊椎動物の胚は卵殻を有し、装置はただ一つの単一の細胞または胚を含むのに好適な複数のウェルを備える支持体を含み、ウェルは円錐または円錐台形状を有し、該細胞または胚をウェルに置くことを含む、方法に関する。
【0033】
円錐または円錐台形状の基底部は好ましくは円である。しかしながら、本発明はまた、多角形の頂点が円に置かれる場合は、基底部が四角(すなわち、ピラミッド型または切頭角錐形状)または多角形を基礎とすることも考慮される。好ましくは、円錐または円錐台形状で、軸は基底面の平面の中心から垂直に伸びる。「円錐台形」により意図されることは、円錐の頂点部が切り取られ、頭頂部が本質的には円錐の基底面に平行な平面であるということである。
【0034】
「ただ一つの単一の細胞を含むように」により意図されることは、ウェルが一つのおよびただ一種の細胞を含むために好適であることである。「ただ一つの単一の胚を含むように」により意図されることは、ウェルが一つのおよびただ一種の胚を含むために好適であることである。ただ一つの細胞または胚を含むことにより意図されることは、ウェルの大きさが、ウェル中にただ一つの細胞または胚が含まれるのに好適、すなわち2つの細胞または胚を含むには小さすぎる、となることである。
【0035】
「観察面に垂直な長軸の方向性」により意図されることは、ウェルの構造が細胞または胚の好適な方向性を得るために適合されることである。実際に、細胞および胚は細胞壁または卵殻により、硬い長方形の形態を有する。従って、細胞または胚には短軸と長軸が規定できる。「長方形」により意図されることは、細胞または胚が、短軸の少なくとも2倍の長さである長軸を有することである。細胞または胚は、長軸が支持体に垂直に位置するように置かれなければならない。そして、長軸よりも短い幅を有するウェルは、細胞または胚の意図される方向性を許容する。
【0036】
例えば、ウェルの形状はウェルの上面の幅とウェルの底の幅によって定義され得る。「上面」により意図されることは、ウェルの開口部を含むウェルの上部である。「底」により意図されることは、上面の反対側のウェルの下部である。最も好ましい実施形態において、ウェルの底は閉じられる。
【0037】
従って、ウェルの上面の幅はウェルで固定されるべき細胞または胚の短軸より大きい。具体的に、ウェルの上面の幅は例えば、少なくとも10、15、20、25または30%大きく、好ましくは、約10、15、20、25または30%大きくなり得る。さらに、ウェルの底の幅は細胞または胚の短軸より短い。具体的に、井戸の底の幅は少なくとも10、15、20、25または30%小さく、好ましくは、約10、15、20、25または30%小さくなり得る。「約」なる用語は、その5%大小の値を意図する。
【0038】
ウェルの円錐または円錐台形状により、ウェルの側面はウェルの縦軸に対して角度を形成する(
図1に示されるαのように)。ウェルの縦軸およびウェルの側面との間のこの角度は5〜45°、好ましくは10〜30°の間である。縦軸は、ウェルの開口に垂直な軸である。
【0039】
さらに、他のパラメータはウェルの深さであろう。ウェルの深さは、ウェルの上面から底までの距離である。ウェルの深さは、外部流にさらされたときに細胞が移動してしまうことを防ぐようになっており、それは観察面に平行な閉鎖面に配置する。好ましい実施形態において、ウェルの深さは、好ましくはウェルに固定される細胞または胚の長軸の少なくともまたは約1/3、好ましくは少なくともまたは約1/2である。「少なくともまたは約」により意図されることは、細胞または胚の長軸の少なくとも1/3または1/2、あるいは、細胞または胚の長軸の1/3または1/2の、上下5%の範囲である。例えば、細胞または胚の長軸の1/3から3/2までの間、より好ましくは細胞または胚の長軸の1/2から長軸の全長までの間である。各々のウェルの深さはまたほぼまたはおおよそ(約)長軸の長さとし、それにより細胞または胚の全てをウェル内に含めることができる。しかしながら、細胞または胚の長軸の1/2から3/4の間のウェル深さが好ましい。ウェルの深さは、ウェルの幅との比でも定義できる。したがって、ウェルの深さは、ウェルの上面の幅の少なくとも2/3、好ましくは少なくともウェルの上面の幅、である。より好ましくは、ウェルの深さはウェルの上面の幅のほぼまたは約2倍である。
【0040】
他のパラメータは、固定化される細胞または胚の短軸に対応するウェル幅の、ウェル内での位置である。好ましくは、細胞または胚の短軸に等しい(または対応する)ウェルの幅は、ウェルの下から半分、好ましくはウェルの下から三分の一に位置する。
【0041】
細胞が細菌であるとき、短軸は0.5から3μmの間に含まれ、長軸(長さ)はかなり可変である。一般に短軸が0.5から3μmの間に含まれる細菌の場合、ウェル幅は上面で500nmから3μmの間に含まれ得る。例えば、多数の細菌のために便利なウェルは、3μmより大きい(例えば、4〜5μm)上面の幅および500nm未満(例えば、0〜400nm)の底の幅を有し得る。それらの特徴をもつウェルは、大部分の細菌に適合できる。細菌の長軸は細菌により非常に可変である。しかしながら、例えば、1、2、3、5、7または10μmの深さが適切であり得る。特にE.coliに関して、短軸は約800nmであり、上面のウェルの幅は800nmより大きく、一方で底の幅は800nm未満であると考えられる。例えば、上面の幅は850nmから1μmの間の一方で、底の幅は750nm未満、例えば500から750nm以下の間であり得る。深さは2μmであり得る。好ましい実施形態において、細菌は桿菌、特にバチルスである。代替の実施形態において、細菌は球菌である。球菌の場合、細胞は丸いかもしれないが、細胞は分割の前に伸展し、長方形になる。この場合、ウェルの幅は丸い細胞の直径に基づいて設計されるであろう。特に、上面のウェル幅は直径より大きく、一方で底部の幅は直径未満である。
【0042】
細胞が菌類であるとき、好ましくはそれらは酵母である。典型的に、酵母は長方形の形を有し得るか、球形であり得る。酵母の直径または短軸は、1から6μmの間、より典型的には、3から5μmの間である。したがって、上面のウェル幅は直径または短軸より大きい一方で、底部の幅は直径または短軸未満である。例えば、便利なウェルは約6〜10μmの上面のウェル幅および1〜2μm未満の底の幅を有し得る。任意に、ウェルの深さは4から10μmの間、好ましくは6から8μmの間である。
【0043】
細菌および酵母で研究される興味深いパラメータは、細胞質分裂の環、特に環の閉鎖である。したがって、本発明の装置の利点は、細菌および酵母が、環の閉鎖面が観察面と平行になるように固定化されることである。「観察面と平行な環の閉鎖面」により意図されることは、細胞質分裂の環の閉鎖面が支持体と平行であるということである。観察または焦点面は本明細書に定義され、ここで、興味がある構造、すなわち環、は全体が画像化される。ウェルの深さに沿った方向は、この面に垂直である。
【0044】
通常長方形または桿状の形状を有する、細菌または酵母などの細胞壁を有する細胞では、細胞質分裂の環は常に長軸と垂直である。したがって、細胞質分裂の環の方向性は、装置中の細胞の適切な方向性を通して容易に制御できる。それらが増殖の間に伸長するので、同様の構成は、S.cerevisiaeのような壁のある球状細胞にも有効であろう。それゆえ、円形細胞でも、分割の前に細胞が長くなるので、本発明の装置および方法を使用できる。細菌および菌類細胞では、細胞の適切な配置は、環の閉鎖面の所望の方向性を得るのに十分である。
【0045】
本発明の装置で使用されるのに適切な細胞は、細胞壁があるいかなる真核または原核細胞であってもよい。原核細胞は特に、細菌であり得、真核細胞は酵母などの菌類の細胞であり得る。細胞は、野生型、遺伝子組換え細胞(変異したまたは組換え型の細胞)または分子で処理された細胞であり得る。
【0046】
ウェルの大きさ(すなわち、幅および深さ)は、当業者によってそれぞれの特定の細胞の研究のために容易に適合される。任意に、装置は各々の組が異なる幅を有するいくつかのウェルの組を含む。例えば、ウェルは円錐形であり得、ウェルの異なる組が、10、9、8、7、6、5、4、3、2および1μmからなる群から選択される上面のウェル幅を有し得る。異なる組のウェルの深さは、同じかまたは異なり得る。深さは、4、5、6、7、8、9および10μmからなる群から選択され得る。
【0047】
他の実施形態において、ウェルは長方形の卵殻を有する無脊椎動物の胚を観察するのに好適である。
【0048】
第一の特定の実施形態において、胚はDrosophilaの胚である。Drosophilaの胚は、典型的に短軸が0.16から0.21mm、長軸が0.44から0.57mmの長方形の形状である。したがって、ウェルは、0.16mmより大きい、好ましくは0.21mmより大きい上面の幅、および0.16mm未満の底の幅を有し得る。例えば、上面の幅は0.2から0.3mmであり得る一方で、底の幅は0.16mm未満、例えば0.1mm未満、より好ましくは0から0.1mmであり得る。ウェルの深さは少なくとも0.15mmおよび1mm未満である。より好ましくは、ウェルの深さは0.15mmから0.5mmの間である。
【0049】
第二の特定の実施形態において、胚は虫または線虫、特にC.elegansの胚である。C.elegansの胚は、典型的に短軸が25μm、長軸が40μmの長方形の形状である。したがって、ウェルは、25μmより大きい上面の幅、および25μm未満のウェルの底の幅であり得る。例えば、上面の幅は26μmから40μmの間である一方で、底の幅は20μm未満、より好ましくは0から20μmの間であり得る。ウェルの深さは少なくとも10μmかつ60μm未満である。より好ましくは、深さは10から40μmの間である。
【0050】
円錐または円錐台形状をもつウェルはさらに追加の構造要素を組み込むことができる。例えば、ウェルの基底または底に、チャンネルのような追加の構造要素を加えることができる。同様に、円錐または円錐台形状をもつウェルは壁(すなわち、ウェルの内表面)に溝を、好ましくは上面から底まで伸長した溝をさらに含むことができる。そのような溝は、培地の循環を許容し得る。
【0051】
好ましくは、支持体は面および微細加工基板を含む。
【0052】
好ましくは、支持体の微細加工基板は多数のウェル、例えば少なくともまたは約10、20、50、100、150、200、300、400、500、1,000、5,000、1万、5万、10万、50万、または100万のウェルを含む。例えば、支持体は基板1cm
2あたり少なくとも100ウェル、好ましくは基板1cm
2あたり少なくとも5,000ウェル、より好ましくは基板1cm
2あたり少なくとも1万ウェルを含む。ウェルは顕微鏡観察の間に区別できるように十分に分離される。特定の実施形態において、ウェルは少なくとも20nm、好ましくは約200nm、500nm、1μm、5μm、または10μmの間隔である。ウェル間の空間は、任意に細胞疎外性物質(すなわち、細胞付着を防ぐ)、例えばポリエチレングリコール(PEG)で処理できる。微細加工基板のウェルは、微細加工基板で作成された底を有することができ、または微細加工基板を通り抜けることができる。
【0053】
「微細加工基板」により意図されることは、例えば、シリコン、機能性ガラス、ゲルマニウム、セラミック、半導体材料、PTFE、炭素、ポリカーボネート、雲母、マイラー、プラスチック、水晶、ポリスチレン、ガリウムヒ素、金、銀、金属、金属合金、織物、およびそれらの組み合わせを含む、微細加工された固体表面である。特に、微細加工基板は好ましくは、生物学的に適合している固体原料で作製されるか、またはそれを生物学的に適合するように表面処理されて作製される。微細加工に以下の材料を使用できる:架橋できる重合体(PDMS、寒天、ポリアクリルアミド(PAA)…)、ガラス状物質(ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)…)、金属または半導体材料。
【0054】
支持体は、共焦点、光学および/または、蛍光顕微鏡法に適合する必要がある。適切な支持体は、マイクロ構造(すなわち、微細加工基板)に使用される重合体との良好な付着を促進するいかなる平面基板(すなわち、プレート)であってもよい。より好ましい実施形態において、プレートは、板ガラスであるか、それを含む。例えば、本発明の便利なプレートは、カバーガラスかスライドである。好ましい実施形態において、カバーガラスはできるだけ薄い。例えば、0.085〜0.13mmの厚さは便利である。
【0055】
微細加工基板を作製するための微細加工技術は当業者に周知である。
【0056】
例えば、装置の微細加工基板を作製するために使用されるスタンプを調製するための微細加工技術は、例えば、フォトリソグラフィー、薄膜蒸着、湿式化学エッチング、反応性イオンエッチング、誘導結合プラズマ深層シリコンエッチング、レーザー切断、エアアブレーション技術、および他の技術であり得る。高分子基板材料はそれらの製造、低価格、および廃棄の容易さ、およびそれらの一般的な不活性のために好まれる。好ましくは、高分子基板材料は架橋可能である。それらは、生物学的に適合していて、細胞に弱い付着を有することができる。好ましい実施形態において、基板材料はPDMSで作られる。技術は、例えば以下の特許、US6,753,131、US6,516,168およびUS6,143,412に開示される。
【0057】
スタンプのための基盤材料は、それらに限定されるわけではないが、以下の重合体材料を含む:
− ガラス性重合体、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(TEFRON(登録商標))、ポリ塩化ビニル(PVC);
− エラストマー性材料ポリジメチルシクロサン(PDMS)、ポリブタジエン、ポリウレタン、など;
− ゲル(寒天、PAA...)など。
【0058】
装置の微細加工された基板は、射出成型、熱エンボス加工などの型成形技術を用いて、または架橋された重合体からの型成形(ソフトリソグラフィー))により、原本から容易に作製できる。装置の微細加工された基板の基板材料はスタンプと同じにでき、それらに限定されるわけではないが、以下の重合体材料を含み:
− ガラス性重合体、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(TEFRON(登録商標))、ポリ塩化ビニル(PVC);
− エラストマー性材料ポリジメチルシクロサン(PDMS)、ポリブタジエン、ポリウレタン、など;
− ゲル(寒天、PAA...)など、
微細加工された構造内で栄養成分の拡散を許容し、それゆえ、栄養成分がウェルのすべての側面を通じて拡散できる利点を有する。
【0059】
好ましい実施形態において、微細加工基板は、生体適合材で作製され、細胞への弱い付着性を有する。最も好ましい実施形態において、微細加工基板はPDMSで作製される。第二の好ましい実施形態において、微細加工基板は寒天、PAA(ポリアクリルアミド)などを含むゲルで作製される。
【0060】
特定の実施形態において、得られる微細加工基板は、例えば約20〜100μm、好ましくは約30〜50μmの厚さを有する。好ましくは、シロキサンを基にした重合体はPDMSである。好ましくは、支持体は、より好ましくは出来る限り薄いカバーガラスである。
【0061】
例えば細胞質分裂の環の場合、その観察に必要な作業間隔および解像度により、支持体の厚さは出来る限り薄くする必要がある。したがって、厚さは好ましくは200μm未満、より好ましくは150μm未満、さらにより好ましくは100から150μmの間である。しかしながら、対象をどこに置くかによって、厚さは特に問題とならない。実際、対象は観察される細胞または胚の下部に置かれてもよく、厚さの規制は全くない。
【0062】
したがって、第一の特定の好ましい実施形態において、装置は上記で定義されるように、特徴的な細胞または胚を含むために好適な多数のウェルを有する支持体を含む。支持体はプレートおよびプレートで支持された微細加工基板を含む。好ましくは、プレートはカバーガラスである。微細加工基板はカバーガラスによって支持される。例えば、微細加工基板は、PDMS基板またはゲルである。ウェルの上側は、栄養物を添加できる。
【0063】
本発明の装置は細菌または酵母の細胞質分裂の環を研究するために有用である。もちろん、環の観察は、他の興味あるパラメータと組み合わせることができる。細胞質分裂の環は、顕微鏡法、特に蛍光顕微鏡検査法、で観察できる。一般に、細胞質分裂の環は蛍光タンパク質を通して観察される(Glotzer M, Science. 2005 Mar 18;307(5716):1735−9)。
【0064】
蛍光タンパク質は、細胞質分裂の環のいかなるタンパク質であってもよい。例えば、分裂酵母に関して、蛍光ラベルされたタンパク質(例えば、YFP、GFP、EGFP、mCherryなどによって)は、ミオシン(例えば、RLC1−mCherryなどのミオシンII調節軽鎖、またはmyo2−YFPなどのミオシンII重鎖)、paxillin様タンパク質Pxl1(pxl1−GFPなど)、膜−細胞骨格相互作用(例えば、cdc15−YFPなどのF−BARドメイン)、1,3−ベータ−グルカンシンターゼ(例えば、bgs1−GFPなどの触媒サブユニットBgs1)などであってもよい。適当な他のタンパク質はWuおよびPollardの文献で開示され(Wu et al, Methods Cell Biol. 2008;89:253−73; Vavylonis et al, Science. 2008 Jan 4;319(5859):97−100; Wu et al, J Cell Biol. 2006 Jul 31;174(3):391−402; Wu and Pollard, Science. 2005 Oct 14;310(5746):310−4.; Kovar et al, Mol Biol Cell. 2005 May;16(5):2313−24; Wu et al, Dev Cell. 2003 Nov;5(5):723−34)、および他の細胞中のそれらのホモログは適切であろう。蛍光ラベルされたタンパク質の場合、細胞は、そのような蛍光ラベルされたタンパク質を発現するために遺伝子を組み換えられる。あるいは、環は、環のいかなるタンパク質に対して向けられた蛍光ラベルされた環マーカーまたは抗体を使用することによって観測できる。例えば、ローダミンまたはAlexa−phalloidine、ならびに免役蛍光染色坑−ミオシン抗体(Glotzer M, Science. 2005 Mar 18;307(5716):1735−9)はこの使用に適している。
【0065】
本発明はさらに、a)細胞または胚に関する本発明の装置を提供する;およびb)細胞または胚を、特に細胞または胚の長軸に対して垂直な面で観察すること、を含む、細胞または胚を観察するかまたは研究するための方法に関する。それはまた、本発明の装置の、特に細胞または胚の長軸に対して垂直ないかなる面における、顕微鏡での観察または研究のための使用に関する。細胞および胚は上記の定義のとおりである。実際、高処理の多重パラメータ研究に、本発明の装置は好適である。
【0066】
段階a)は、研究または観察される細胞または胚を提供する;提供された細胞または胚に適合された本発明の装置を選択する、および細胞を装置上に置くことを含み得る。
【0067】
方法は本発明の装置で細胞または胚を導入する段階を含み得る。当分野で周知のいかなる手段による装置のウェルに細胞または胚を置くことができる。例えば、細胞または胚は遠心分離、好ましくはそれに続く洗浄段階で、導入できる。
【0068】
上述されるように、方法は多数の細胞または胚の、すべて同じ方向性での研究を許容する。方法はまた、構造のための良好な観察面の利益も許容し、それは細菌または酵母の細胞質分裂の環、Drosophila胚の背腹軸またはC.elegans胚の細胞質分裂の環または細胞−細胞ジャンクションなどの、長軸に垂直な面でのそれらの観察に有効である。
【0069】
従って、方法は非網羅的に、以下に有用であり得る:
− 細菌または酵母の細胞質分裂の環を観察する;以下で詳述されるか、またはWO2010/092116で開示される方法;および/または;
− 細胞壁をもつ細胞の先端成長を観察する;
− 標識されたtRNA細胞に導入し、細胞内の標識されたtRNAの細胞内局在における変化を検出することにより酵母細胞のストレスを測定するため(WO2012/011110を参照);および/または
− 標識されたタンパク質、分子または核酸の細胞または胚中の局在または相互作用を観察するため;および/または
− 無脊椎動物の胚の胚形成期の分子、抗体、薬剤、またはsiRNAの効果を観察するため;および/または
− タンパク質の発現レベルを測定するため;および/または
− タンパク質の活性レベルを測定するため;および/または
− オルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の構造、局在、形状および/または完全性を観察するため;および/または
− 分子、抗体、薬剤、またはsiRNAのタンパク質の発現レベル、タンパク質の活性レベル、タンパク質の局在または相互作用、オルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性、細胞質分裂の環の閉鎖への効果を観察するため。
【0070】
方法がタンパク質の発現レベルを測定する段階を含む場合、タンパク質の発現レベルは、観察されるタンパク質を標識するか、またはこのタンパク質をコードするmRNAを標識することによって評価できる。タンパク質またはmRNAを標識するための方法は当分野で周知である。タンパク質を蛍光標識などの標識に直接結合(conjugating)することによって標識できる。あるいは、観測されるタンパク質に特異的な抗体を使用することによって、間接的に標識できる。mRNAの検出は、検出されるmRNAに特異的な、標識されたプローブを使用することにより実施され得る。発現のレベルは、標識、好ましくは蛍光または放射性ラベルの強度の測定により評価される。発現のレベルは、一つの時点または期間に測定できる。1個または数個のタンパク質で測定できる。
【0071】
方法がタンパク質の活性レベルを測定する段階を含む場合、当業者はアッセイを、活性を測定するために適合させることができる。例えば、キナーゼまたはホスファターゼの場合、キナーゼまたはホスファターゼの基質であるリン酸化または非リン酸化されたタンパク質の量の測定で活性を評価できる。例えば、タンパク質のリン酸化または非リン酸化された形態に特異的な抗体を使用できる。他に、活性はメチル化、sumo化などで容易に検出できる。酵素の場合、基質または産物の出現または消滅を評価できる。
【0072】
方法がタンパク質の局在または相互作用を測定する段階を含む場合、タンパク質を、好ましくは蛍光で標識することにより、および相互作用の場合は、各々の相互作用の相手に区別した標識を使用することにより、観察できる。相互作用の場合には、フルオロフォア/クエンチャーの一組または蛍光転送を許容するフルオロフォアの一組が使用され得る。
【0073】
方法がオルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性を観察する段階を含む場合、オルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環を観察するための方法は当業者に周知である。オルガネラは小胞体、核、ゴルジ体、ミトコンドリア、中心小体、および空胞から非網羅的に選択され得る。
【0074】
方法が分子、抗体、薬剤、またはsiRNAの細胞上の、特にタンパク質の発現レベル、タンパク質の活性レベル、タンパク質の局在または相互作用、オルガネラ、細胞骨格、DNA、または細胞質分裂の環の構造、局在、形状および/または完全性、細胞質分裂の環の閉鎖への効果を観察する段階を含む場合、一つの時点または期間に実施できる。例えば、スクリーニング方法または薬剤の有効性または毒性を測定する方法のために有用であり得る。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、これらのパラメータの組み合わせが観察される。実際、本方法の利点は、細胞のマルチパラメータ解析を許容することである。例えば、少なくとも2、3または4つの上記のパラメータが、組み合わせられ得る。さらに、これらのパラメータの期間を通じた研究は、力学の分析を許容する。かなり具体的な実施形態において、細胞を観察する段階は、細胞質分裂の環、特に閉鎖、を少なくとも観察することを含む。
【0076】
本発明はまた、興味がある分子をスクリーニングする方法に関する。実際に、候補分子を細胞または胚に接触した後に、細胞または胚は、差異を特定するために観察され得る。例えば、細胞分裂を観測することによって、方法は分割を調節する分子の選別を許容する。他の例では、胚形成期を観察することにより、この現象に影響を与える分子を選択するかまたは特定できる。
【0077】
したがって、本発明は:
a)試験分子と接触させる細胞または胚に関する本発明の装置を提供する;
b)細胞分裂または胚形成期を評価する;
c)分子の存在または非存在下で細胞分裂または胚形成期を比較する;および
d)分子の存在または非存在下で細胞分裂または胚形成期が有意に異なる分子を選択し、その結果、細胞分裂または胚形成期を調節できる分子を同定する、
ことを含む、細胞分裂または胚形成期を調節できる興味がある分子をスクリーニングまたは同定するための方法に関する。
【0078】
特に、段階a)は、分子が試験される細胞または胚を提供すること;提供された細胞または胚に適合された本発明の装置を選択すること、および細胞または胚を装置に置くことを含む。
【0079】
第一の実施形態において、細胞または胚は、本発明の装置に置かれる前に、分子と接触する。したがって、方法は細胞または胚を分子に接触させる、および接触された細胞または胚を装置に導入する、予備段階を含むことができる。代替の実施形態において、細胞または胚は、それらが既に本発明の装置に置かれるときに分子と接触する。したがって、方法は、本発明の装置に細胞または胚を導入し、細胞または胚を試験分子に接触させる、予備段階を含むことができる。本発明の装置の利点は、多数のウェルにより、多数の試験分子を同時にアッセイし、記録を自動化できることである。
【0080】
より具体的な実施形態において、本発明は、a)細胞に関する本発明の装置を提供する;およびb)細胞質分裂の環(すなわち、観察面と平行な細胞質分裂の環の閉鎖面で)を観察する、ことを含み、特に細菌または酵母の、細胞の細胞質分裂の環を観察するための方法に関する。特に、段階a)は、細胞質分裂の環が観察されるべき細胞を提供すること;提供された細胞に適合された本発明の装置を選択すること、および細胞を装置に置くことを含む。観察面に平行な細胞質分裂の環の閉鎖面で細胞の細胞質分裂の環を観察するための本発明の装置の使用にも関する。上述のように、細胞質分裂の環に加えて、方法はさらに他のオルガネラまたはタンパク質の観察を含み得る。
【0081】
細菌または酵母の細胞質分裂の環を観察することは、興味がある分子の選別に有用であり得る。したがって、本発明は本発明の装置の分子選別のための使用に関する。実際に、本発明の装置は、試験分子の細胞分裂を調節する能力のアッセイまたは試験、特に試験分子の環の閉鎖を調節する能力のアッセイまたは試験に使用される。特に、興味がある分子は、細胞分裂を、特に細胞質分裂の環の閉鎖の遮断または阻害を通じて、遮断または阻害できる分子である。したがって、本発明は:
a)試験分子と接触させる細胞に関する本発明の装置を提供する;
b)細胞の環の閉鎖を評価する;
c)分子の存在または非存在下で細胞の環の閉鎖を比較する;および
d)分子の存在または非存在下で閉鎖が有意に異なる分子を選択し、その結果、細胞分裂を調節できる分子を同定する、
ことを含む、細胞分裂を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定するための方法に関する。
【0082】
好ましくは、細胞は細菌または酵母である。特に、段階a)は、試験分子が試験される細胞を提供すること;提供された細胞に適合された本発明の装置を選択すること、および細胞を装置に置くことを含む。
【0083】
第一の実施形態において、細胞は、本発明の装置に置かれる前に、試験分子と接触する。したがって、方法は細胞を分子に接触させる、および接触された細胞を装置に導入する、予備段階を含むことができる。代替の実施形態において、細胞は、それらが既に本発明の装置に置かれるときに分子と接触する。したがって、方法は、本発明の装置に細胞を導入し、細胞を試験分子に接触させる、予備段階を含むことができる。
【0084】
当分野で周知のいかなる手段によって装置のウェルに細胞を置くことができる。例えば、細胞は遠心分離、好ましくはそれに続く洗浄段階で、導入できる。
【0085】
第一の実施形態において、環の閉鎖を評価する段階は開放環を有する細胞数および閉鎖環を有する細胞数の測定を含む。この実施形態において、開放および閉鎖環の数が試験分子の存在および不存在において有意に異なる場合、試験分子の存在および不存在において閉鎖は有意に異なる。第二の実施形態において、環の閉鎖を評価する段階は環の閉鎖の速度の測定を含む。この実施形態において、速度が試験分子の存在および不存在において有意に異なる場合、閉鎖は試験分子の存在および不存在において有意に異なる。第三の実施形態において、環の閉鎖を評価する段階は開放環を有する細胞数および閉鎖環を有する細胞数の測定および環の閉鎖の速度の測定の両方を含む。第四の実施形態において、環の閉鎖を評価する段階は、試験分子の存在または不存在において、いくつかの細胞の細胞質分裂の環を記録することを含む。「いくつかの」によって好ましく意図されることは、少なくとも100、1,000、1万、10万または100万の細胞が各々の条件であることである。試験分子が細胞分裂を調節しないならば、細胞の環は統計的にいかなる位置となることができる。記録された環の重ね合わせはディスクをもたらす。あるいは、試験分子が閉環を遮断または阻害するならば、細胞の環が開放されるより高い可能性がある。記録された環の重ね合わせは円をもたらす。したがって、記録された環の重ね合わせのための形態を通して、環の閉鎖を遮断または阻害する試験分子を選択できる。
【0086】
細胞は方法の開始時に同期化できるかまたはされない。
【0087】
細胞が原核細胞である場合、同定された分子は、抗生剤としての関心を有し、方法は抗菌特性を有する試験分子をスクリーニングまたは同定するための方法となる。細胞が真核細胞である場合、同定された分子は、抗増殖剤としての関心を有し、方法は、抗増殖特性、特に抗腫瘍特性、を有する試験分子をスクリーニングまたは同定するための方法となる。細胞が菌類である場合、同定された分子は、抗真菌剤としての関心を有し、このアプローチは、抗真菌特性を有する試験分子をスクリーニングまたは同定するための方法である。
【0088】
試験分子は様々な起源、天然および組成物であり得る。それは、単離されたかまたは他の物質と混合された、脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子などのいかなる有機的または無機物であり得る。例えば、試験化合物は、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはRNAiであり得る。分子は、例えば、製品の組み合わせライブラリのすべてか一部であり得る。
【0089】
本発明の装置の利点は、多数のウェルにより、多数の試験分子を同時にアッセイし、環の閉鎖の記録を自動化できることである。この実施形態において、本発明の装置は、各々の群が異なる培地で培養できるように互いに分離された、同じプレート上のいくつかの群のウェルを含むことができる。例えば、ウェルの群は試験分子と接触でき、他の群は他の試験分子と接触されるか、またはいかなる試験分子無しでとすることができる。この分離は、テフロンシールなどの物的障壁または直接PDAS型形成分離により提供できる。例えば、SPI SuppliesのSPI Teflon(登録商標)を参照。例えば、ウェルの各々の群は、少なくともまたは約100、1,000、1万、10万または100万のウェルを含むことができる。
マイクロ流体系は、装置上のウェルの異なる位置または群での異なる薬剤を適用するために使用できる(Melin J, Quake SR., Annu Rev Biophys Biomol Struct. 2007;36:213−31 ; Hansen C, Quake SR, Curr Opin Struct Biol. 2003 Oct;13(5):538−44 ; Hong JW, Quake SR, Nat Biotechnol. 2003 Oct;21(10):1179−83 ; Quake SR, Scherer A, Science. 2000 Nov 24;290(5496):1536−40)。
【0090】
細胞質分裂の環の観察に加えて、方法はまた観察の段階を含み得る。
【0091】
他の実施形態および細胞壁をもつ細胞の文脈において、本発明の装置は細胞の長軸に垂直ないかなる面での観察にも有用である。好ましくは、細胞は酵母である。酵母の先端成長は、科学団体にとって、興味のある現象であるが、利用可能な装置では容易に観察できない。したがって、本発明の装置は、便利に先端、次いで先端成長を観察するための手段を提供する。
【0092】
したがって、本発明はまた、a)細胞に関する本発明の装置を提供する;およびb)観察面と平行な面を観察する、ことを含む、細胞壁をもち、楕円または桿の形状を有する細胞の長軸に垂直な面を観察する方法に関する。
【0093】
本発明はさらに、本発明の装置の、観察面に平行な配置で、細胞壁をもつ細胞の長軸に垂直な面を観察するための使用に関する。好ましい実施形態において、観察される垂直な面は細胞の先端である。
【0094】
さらに本発明は、本発明の装置の、細胞壁をもち、楕円または桿の形状を有する細胞の先端成長を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定するための使用に関する。より具体的に:
a)試験分子と接触させる細胞に関する本発明の装置を提供する;
b)細胞の先端成長を観察する;
c)分子の存在または非存在下で細胞の先端成長を比較する;および
d)分子の存在または非存在下で先端成長が有意に異なる分子を選択し、その結果、先端成長を調節できる分子を同定する、
ことを含む、細胞壁をもち、楕円または桿の形状を有する細胞の先端成長を調節できる試験分子をスクリーニングまたは同定するための方法に関する。
【0095】
先端成長を調節、特に先端成長を阻害できる分子には、微生物増殖を防ぐことに関する関心が存在する。そして、それらは抗菌または抗真菌の薬剤であり得る。
【0096】
本発明のさらなる態様および利点は以下の実験の節で開示されるであろうが、これは例示の目的であり、本願の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0097】
実施例1:酵母
範囲
発明者は本明細書に、分裂酵母を垂直に置くための例を提示する。いくつかの寸法の空洞が、2つの形状のために準備された:特許出願WO2010092116のような円柱、および円錐。円錐は、8μmの深さ、6μmの先端の幅、および3μmの下部の幅を有する。分裂酵母の直径が〜4μmであったので、彼らは両方の形状のために4〜5μmの典型的な寸法で空洞を設計した。ウェルの原本は、微細加工工程でマスクおよびDRIE[A CMOS Compatible Ultrasonic Transducer Fabricated With Deep Reactive Ion Etching; Libor Rufer, Christian C. Domingues, Salvador Mir, Valerie Petrini, Jean−Claude Jeannot, and Patrick Delobelle, JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS, VOL. 15, NO. 6, p. 1766, DECEMBER 2006]を使用することによって、調製された。それらは、標準のソフトリソグラフィーで最終的な装置を調製するための型として使用された。細胞は、次に、空洞内で遠心分離され、WO2010092116で既に報告されたとおりに観察した。充填率は、円柱の〜20%と比較して、円錐で〜80%に達した。この結果は、High Content Screeningのために円錐の空洞がある装置の増加した品質を示す。
【0098】
装置の作製
図1は新規な空洞のデザインを示す。
図2において、筒状の円錐の調製のために調製されたシリコン原本を示す。それらは、[A CMOS Compatible Ultrasonic Transducer Fabricated With Deep Reactive Ion Etching; Libor Rufer, Christian C. Domingues, Salvador Mir, Valerie Petrini, Jean−Claude Jeannot, and Patrick Delobelle, JOURNAL OF MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS, VOL. 15, NO. 6, p. 1766, DECEMBER 2006]に記載された方法で作製された。円錐の空洞は一定間隔で区切られ、その形状は完全に再現可能である。最終的な空洞は、以前に報告(WO2010092116、本明細書で参照される、を参照)されたように、これらの原本にPDMSを注入することによって作製され;それらはプラズマ処理後に、慎重に剥がす前に、65℃で4時間キュアリングされた。円柱のために、同じプロトコルが同様に使用された。
【0099】
細胞挿入
細胞はYE4S中で指数関数的に増加するフェーズで増殖され、従来と同様に処理された(WO2010092116、本明細書で参照される、を参照)。簡潔に、分裂酵母は、細胞を分離するための短い超音波処理の後に、ウェル中に遠心分離された。窒素飢餓は空洞の充填率を増加させるために全く必要でなかったことに注目。試料はその後、ウェルに入らなかった細胞を除去するために新鮮培地EMM4Sで十分に洗浄された。細胞はその後、定まった状態で、温度制御された顕微鏡下で観察された。
【0100】
細胞成長力
細胞終期の持続時間は本プロトコルで変化しなかった。発明者はまた、細胞分裂のための時間が修飾されなかったことをチェックした。要すれば、装置の新たな形状および外形が細胞成長に影響しないことを示す。この重要な特性は他の系、S.cerevisiaeでも観察された(
図4参照)。
【0101】
充填率
発明者は、両方の型の空洞への充填の品質を比較した(表1を参照)。著しく、細胞は円錐形のウェルで約80%充填された。対照的に、ウェルが円柱状の空洞を有する場合、20%だけの空洞に充填された。この結果は、細胞が円錐のウェルで固く保持されることを示し、その結果、洗浄段階の流れに抵抗する。
【0102】
【表1】
【0103】
表1:形状による充填率。円錐形状の空洞において、酵母は高い充填率が示すように、固く保持される。
【0104】
実施例2:C.elegans胚
発生中の胚を研究するために適当な装置
装置は新しい構成において、細胞の観察を許容する。特に、上述のように、細胞を標準化して、別の視点からオルガネラを可視化することを可能にする。同様の理由で、そのようなアプローチは他の生物系で非常に有用である。Caenorhabditis elegans(C.elegans)は発生生物学で重要な、主要なモデル生物である。それは虫である。その発生は操作および制御が容易である。この系は一定数の細胞を有し、それは多くの利点の中で、器官の完全な機構を示す。この系の研究は世界中で確立され、生物学における重要な発見がC.elegansでなされた。
【0105】
図5a)は通常の視点およびエッグカップ中のC.elegans胚を示す。
【0106】
時間の経過において、発生の間の特徴的な運動が可視化される(
図5b)および5c)、黒いアウトライン)。
【0107】
材料および方法
株は、以前にBrenner, S. The genetics of Caenorhabditis elegans. Genetics 77, 71−94 (1974)で記載されるように繁殖し、扱った。C.elegans卵はその後エッグカップ中に遠心分離された(5分、4000rpm)。卵は、水中で保存され、CCDカメラを備えた倒立位相差顕微鏡(オリンパス)(浜松)で、×20で対象を観察した。空洞はPDMSで作製され、直径は25μmであった。それらは30μm(中心から中心)で区切られた。微速度撮影の動画が得られ、画像間の時間は典型的に5秒間であった。