特許第6223422号(P6223422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223422クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステム、及び、そのシステムを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223422
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステム、及び、そのシステムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20171023BHJP
   F16D 25/08 20060101ALI20171023BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   F16D48/02 640A
   F16D25/08 D
   F16D28/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-506160(P2015-506160)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公表番号】特表2015-514198(P2015-514198A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2013056281
(87)【国際公開番号】WO2013156269
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】102012206195.9
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012214223.1
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マルコ トレーダー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート シュテーア
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02317933(GB,A)
【文献】 英国特許出願公開第02329227(GB,A)
【文献】 特開平11−315858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ(105)を液圧式に操作するアクチュエータシステム(100)を制御する方法であって、前記アクチュエータシステム(100)は、
マスタピストン(115)を有するマスタシリンダ(110)と、
液圧作動流体(145)を収容する補給容器(135)と、
前記補給容器(135)と前記マスタシリンダ(110)との間の接続開口(140)と、
前記マスタピストン(115)の位置を制御するハイドロスタティック式のアクチュエータ(150)と、
前記ハイドロスタティック式のアクチュエータ(150)を制御する制御装置(165)と、
を有し、前記接続開口(140)の開放度は、前記マスタピストン(115)の位置に関連しており、
前記接続開口(140)が大きく開放されている間、前記アクチュエータ(150)を高速で制御するステップと、
前記接続開口(140)が小さく開放されている間、前記アクチュエータ(150)を低速で制御するステップと、
を備えることを特徴とする、クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステムを制御する方法。
【請求項2】
前記接続開口(140)が部分的にのみ開放されているときの移動速度は、前記接続開口(140)が閉鎖されているときと比べて低い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
最大の移動速度は、前記接続開口(140)が部分的にのみ開放されている範囲(230)で、開放度の増加に伴い単調に増加する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記移動速度は線形に増加する(25)、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記移動速度は、前記範囲(230)の複数の区分においてそれぞれ一定である(260)、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記移動速度を、前記接続開口(140)が部分的にのみ開放されている範囲(230)で、前記液圧作動流体(145)の領域における温度に関連して制御する、請求項から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記マスタピストン(115)を、前記接続開口(140)が部分的に開放されている開放位置(215)へ移動させるステップと、
前記液圧作動流体(145)の圧力が予め決められたよりもゆっくりと周囲圧に降下することを特定するステップと、
前記開放度がより大きくなるように前記開放位置(215)を調整するステップと、
前記クラッチ(105)を操作するために、前記マスタピストン(115)を前記開放位置の片側だけで移動させるステップと、
をさらに備える、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記クラッチ(105)が閉鎖を開始する前記マスタピストン(115)のタッチ位置(315)が、前記接続開口(140)がちょうど閉鎖されている前記マスタピストン(115)の閉鎖位置(210)に向かってシフトされていることを特定するステップと、
前記接続開口(140)の開放度が拡大されているように前記開放位置(215)を調整するステップと、
前記クラッチ(105)を操作するために、前記マスタピストン(115)を前記開放位置(215)の片側だけで移動させるステップと、
をさらに備える、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記開放度を減少させる方向に前記マスタピストン(115)を移動させるステップと、
液圧作動流体(145)の圧力プロフィールに基づいて、前記接続開口(140)がちょうど閉鎖されている閉鎖位置(210)を特定するステップと、
前記クラッチ(105)を操作するために、前記マスタピストン(115)を特定された前記閉鎖位置(210)の片側だけで移動させるステップと、
をさらに備える、請求項記載の方法。
【請求項10】
マスタピストン(115)を有するマスタシリンダ(110)と、
液圧作動流体(145)を収容する補給容器(135)と、
前記補給容器(135)と前記マスタシリンダ(110)との間の接続開口(140)であって、該接続開口(140)の開放度は、前記マスタピストン(115)の位置に関連している接続開口(140)と、
前記マスタピストン(115)の位置を制御するハイドロスタティック式のアクチュエータ(150)と、
を備える、クラッチ(105)を液圧式に操作するアクチュエータシステム(100)であって、
前記接続開口(140)が大きく開放されている間、前記マスタピストン(115)が高速で移動させられ、前記接続開口(140)が小さく開放されている間、前記マスタピストン(115)が低速で移動させられるように前記ハイドロスタティック式のアクチュエータ(150)を制御する制御装置(165)を備えることを特徴とする、クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワートレーン内のクラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステムに関する。特に本発明は、当該アクチュエータシステムのハイドロスタティック式のアクチュエータの制御に関する。
【0002】
クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステムは、例えば独国特許出願公開第102010047800号明細書又は独国特許出願公開第102010047801号明細書において公知であるようなハイドロスタティック式のアクチュエータを有している。この種のアクチュエータは、圧力管路を介して液圧作動流体をスレーブシリンダと交換するために、マスタシリンダ内のマスタピストンを操作する。スレーブシリンダは、クラッチを操作するスレーブピストンを有している。
【0003】
ある態様では、パワートレーン内に2つのクラッチが設けられている。両クラッチは、それぞれ異なるトランスミッション軸に作用するようになっており、その都度、クラッチの一方のみが閉鎖されるようになっている。この場合、スレーブシリンダ内の圧力が十分に高いときに、クラッチがパワートレーン内で力を伝達するようになっていることが、一般的である。これとは反対に、スレーブシリンダ内の圧力が低いときに、クラッチがパワートレーン内で力を伝達するようになっている態様も、クラッチを1つしか有しないクラッチシステムにおいて、公知である。
【0004】
マスタピストンの位置は、クラッチの位置に結び付けられているが、この結び付きは、一連の影響因子の下にある。例えばクラッチシステム、特に液圧作動流体は、運転中に加熱される場合があり、これにより膨張し、あるいは液圧作動流体の圧力は、上昇する。反対に、クラッチシステムの冷却は、流体の体積の減少あるいは圧力の低下につながる場合がある。この種の効果を補償するために、ピストン間の領域に閉じ込められた液圧作動流体を周期的に補償開口により補給容器に接続(「スニッフィングあるいはブリーディング(Schnueffeln)」)することが、一般的である。これにより、正圧又は負圧を補償することができる。このために補給容器とマスタシリンダとの間に接続開口が設けられている。接続開口は、マスタピストンの「スニッフィング位置」あるいは「ブリーディング位置」で開放される。しかし、スニッフィング位置から接続開口を閉鎖する際、接続開口が完全に閉鎖される前に既に、液圧は上昇する。この期間中、液圧作動流体の通流抵抗に応じた量の液圧作動流体が、補給容器とマスタシリンダとの間で交換される。しかし、通流抵抗は、とりわけ流体の温度に左右されるので、接続開口の閉鎖後、アクチュエータシステム内の液圧作動流体の所定の体積あるいは所定の圧力は、保証され得ない。
【0005】
本発明の課題は、液圧式のアクチュエータシステムの作業条件を、改善された精度で可及的迅速に設定することを可能にする方法及びシステムを提供することである。本発明は、この課題を、独立請求項に記載の特徴を有する方法及びアクチュエータシステムにより解決する。従属請求項は、好ましい態様を示している。
【0006】
クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステムは、マスタピストンを有するマスタシリンダと、液圧作動流体を収容する補給容器と、補給容器とマスタシリンダとの間の接続開口であって、接続開口の開放度は、マスタピストンの位置に関連している接続開口と、マスタピストンの位置を制御するハイドロスタティック式のアクチュエータとを備えている。さらに本発明に係るアクチュエータシステム内には、接続開口が大きく開放されている間、マスタピストンの移動速度が高く、接続開口が小さく開放されている間、マスタピストンの移動速度が低くなるようにハイドロスタティック式のアクチュエータを制御する制御装置が設けられている。本発明に係る方法では、マスタピストンの位置を検出し、アクチュエータを位置あるいは開放度に関連してそれぞれ異なる速度で制御する。
【0007】
これにより、マスタピストンを接続開口の閉鎖過程中に、全体としては迅速であるものの、接続開口の閉鎖過程中は十分にゆっくりとした圧力形成を保証する低下した速度で移動させることが可能である。その結果、シリンダ内の液圧作動流体の体積あるいは圧力は、接続開口の閉鎖後、改善された精度で、予め規定された値に相当する。
【0008】
接続開口が少なくとも部分的に開放されている範囲の外側においては、マスタピストンの移動速度は、原則、任意であってよい。特に接続開口が閉鎖されているときの移動速度は、接続開口が部分的に開放されているときと比べて高くてもよい。スニッフィングプロセスは、こうしてより迅速に実施可能である。これによりアクチュエータシステムは、クラッチによって精緻な係合あるいは離脱、ひいては接続されるトランスミッションの精緻かつ調和的なギヤチェンジ動作を可能にするために、より迅速に校正可能である。
【0009】
好ましい態様において、最大の移動速度は、接続開口が部分的にのみ開放されている範囲で、開放度の増加に伴い単調に増加する。これにより、さらに改善された形で、スニッフィングプロセスにより企図される圧力補償が迅速かつ精緻に規定通り実施されることが、保証可能である。ただし、開放度に対する運動速度の関連性には様々な可能性がある。
【0010】
一態様において、関連性は線形である。ハイドロスタティック式のアクチュエータあるいはマスタピストンの加速は、こうして僅かに維持可能である。さらにアクチュエータは、より容易に制御可能である。別の態様において、関連性は、範囲の一区分又は複数の区分においてそれぞれ一定である。複数の区分を使用する場合、移動速度の階段状の推移が実現可能であり、この階段状の推移も容易に実施可能である。特にハイドロスタティック式のアクチュエータは、様々な所定の速度での移動の制御が容易である。
【0011】
別の態様において、マスタピストンの移動速度を、接続開口が部分的にのみ開放されている範囲で、液圧作動流体の領域における温度に関連して制御する。温度として、液圧作動流体の直接的な温度か、又は液圧作動流体の温度に十分に正確に近似した数値が得られる温度、例えばスレーブシリンダの領域の周囲温度、例えばクラッチ温度が、利用可能である。その際、上述の複数の区分のうちの1つのみ又は複数若しくはすべての区分の移動速度が、温度に関連して制御されていてもよい。温度が高ければ高いほど、速度は高くしてもよい。
【0012】
マスタピストンをスニッフィングプロセスのために、接続開口がスニッフィングプロセスのために必要であるよりも大きく開放されない開放位置へ移動させることを保証するために、開放位置は調整可能であってもよい。このために方法の一態様では、マスタピストンを、接続開口が部分的に開放されている開放位置へ移動させ、液圧作動流体の圧力が予め決められたよりもゆっくりと周囲圧に降下することを特定し、開放度が拡大されるように開放位置を調整している。続いて、クラッチを操作するために、マスタピストンを開放位置の片側だけで移動させることができる。
【0013】
上述のプロセスにより、マスタピストンの開放位置は、一方では、補給容器とマスタシリンダとの間の十分に迅速な圧力補償を可能にし、他方では、マスタピストンの不必要な移動を回避し、液圧作動流体の圧力が別の理由、例えば温度に関する理由から上昇する場合に、接続開口が開放される位置のシフトに反作用する値に校正可能である。
【0014】
別の態様では、圧力上昇時にクラッチが閉鎖を開始するマスタピストンのタッチ位置が、接続開口がちょうど閉鎖されているマスタピストンの閉鎖位置に向かってシフトされていることを特定してもよい。次に、接続開口の開放度が拡大されているように開放位置を調整することができる。続いて、クラッチを操作するために、マスタピストンを開放位置の片側だけで移動させることができる。
【0015】
両態様において、特別な状況下、例えばアクチュエータシステムに液圧作動流体を充填する際、マスタピストンを、接続開口が通常運転中よりも大きく開放されているか、あるいは完全に開放されている位置に移動させてもよい。
【0016】
さらに別の態様では、開放度を減少させる方向にマスタピストンを移動させる際、液圧作動流体の圧力プロフィールに基づいて、接続開口がちょうど閉鎖されているマスタピストンの閉鎖位置(「閉鎖点」)を特定してもよい。続いて、クラッチを操作するために、マスタピストンを特定された閉鎖位置の片側だけで移動させることができる。これにより、接続開口の閉鎖時に閉鎖位置の手前に許容できないほど高い圧力形成が生じてしまうことは、回避可能である。このために一態様においては、マスタピストンが、実際の閉鎖位置がある不確定範囲を越えた側にある間、液圧作動流体の圧力が所定の閾値を上回っているか否かを検査するだけでよい。このことは、液圧作動流体の圧力のための好ましくは簡単に形成される圧力センサの使用を可能にすることができる。
【0017】
次に、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】クラッチを液圧式に操作するアクチュエータシステムを示す図である。
図2図1に示したアクチュエータシステム内のマスタピストンの位置と最大の移動速度との関係を示す図である。
図3図1に示したアクチュエータシステム内のマスタピストンの位置と液圧作動流体の圧力との関係を示す図である。
図4図3に示した関係の一部拡大図である。
【0019】
図1は、クラッチ105を液圧式に操作するアクチュエータシステム100を示している。クラッチ105は、パワートレーン、特に自動車のパワートレーン内の力伝達経路の閉鎖あるいは遮断を制御するために設けられている。好ましい実施の形態では、複数のクラッチ105がパワートレーン内に設けられており、この場合、あらゆる時点で最大でクラッチのうちの1つが完全に閉鎖されている。
【0020】
アクチュエータシステム100は、マスタピストン115が収容されているマスタシリンダ110と、スレーブピストン125が収容されているスレーブシリンダ120と、両シリンダ110,120を連通接続する圧力管路130と、マスタシリンダ110に設けられた接続開口140を介してマスタピストン115の位置に応じてマスタシリンダ110に連通接続可能な補給容器135とを有している。補給容器135、マスタシリンダ110、圧力管路130及びスレーブシリンダ120内には、液圧作動流体あるいはハイドロリックフルード145が存在する。補給容器135は、周囲の圧力に対して密に閉鎖されておらず、その結果、補給容器135内に存在する液圧作動流体145は、周囲圧、一般に周囲気圧を有している。
【0021】
図示の実施の形態は、クラッチ105を閉鎖するために、あるいはクラッチ105によりパワートレーン内に力伝達経路を形成するために、液圧作動流体145の圧力をマスタピストン115の移動により高めることが可能であることを前提としている。択一的には、液圧作動流体145の圧力が下がると、クラッチ105がばね力により閉鎖される正反対の構成も可能である。
【0022】
マスタピストン115は、ハイドロスタティック式のアクチュエータ150により可動であり、マスタシリンダ110内でのマスタピストン115の位置は、アクチュエータ150により変位される。このためにアクチュエータ150は、好ましくは回転動作を並進動作に変換するスピンドルドライブ155と、回転動作を提供する駆動モータ160と、アクチュエータ150とは別体に設けられていてもよい制御装置165とを有している。制御装置165は、好ましくは液圧作動流体145の領域の温度を測定する第1のセンサ170及び/又は圧力管路130の領域の液圧作動流体145の圧力を測定する第2のセンサ175に接続されている。
【0023】
通常運転中、クラッチ105を開閉するために、アクチュエータ150は、接続開口140が閉鎖されていて、マスタピストン115の位置を介して、開放あるいは閉鎖のために必要な液圧作動流体145の圧力が提供されるように、マスタシリンダ110内でマスタピストン115を移動させるように制御される。マスタピストン115は、通常運転中、液圧作動流体145が低圧の位置にあるとき、「スニッフィングプロセス」あるいは「ブリーディングプロセス」の枠内で接続開口140を少なくとも部分的に開放し、マスタシリンダ110と補給容器135との間で液圧作動流体145を交換可能とするために、図1で見て左方にさらに移動可能である。スニッフィングプロセスは、液圧作動流体145の温度が先のスニッフィングプロセスから変化したときなどに、必要となり得る。スニッフィングプロセスによりアクチュエータシステム100は、アクチュエータ150の位置とクラッチ105の位置との間の所定の関係を形成するために、液圧的あるいは機械的に新たに校正される。
【0024】
図2は、図1に示したアクチュエータシステム100のマスタピストン115の位置と最大の移動速度との関係200を示している。左図は、マスタピストン115と接続開口140とを有するマスタシリンダ110の一部を機能的に示している。右上図は、マスタピストン115の位置と時間との関係を、前者を鉛直方向軸に、後者を水平方向軸にとって示している。さらに右下図は、マスタシリンダ110内でのマスタピストン115の移動速度の3つの択一的な推移を示している。破線は、3つの図面の区分間の対応関係を判り易くするものである。
【0025】
通常運転中、マスタピストン115の図2で見て上縁は、原点位置205にある。原点位置205では、スレーブシリンダ120に最小の圧力が供給されている。クラッチ105を操作するために、マスタピストン115は、原点位置205から図2で見て上方に移動させられる。これに対してスニッフィングのために、マスタピストン115は、下方に閉鎖位置210まで移動させられる。閉鎖位置210において、接続開口140は、かろうじて完全に閉鎖されている。その後、マスタピストン115は、閉鎖位置210を通過して開放位置215へとさらに移動させられる。開放位置215において、接続開口140は、補給容器135に対して十分に開放されている。図2では、開放位置215を接続開口140の最大で可能な開放度で示しているが、これは、普遍性を制限するものではない。これとは別の実施の形態では、開放位置215を、図2で見てさらに上方に規定してもよいし、最適化されたスニッフィングプロセスを可能にするために、可変に規定できるようにしてもよい。
【0026】
本発明において、マスタピストン115の移動速度は、マスタシリンダ110内でのマスタピストン115の位置に応じて制御される。線220は、マスタピストン115の移動速度と位置との関係を示している。第1の時間区分225において、マスタピストン115を原点位置205から閉鎖位置210に移動させることで、スニッフィングの準備を行う。第2の時間区分230において、マスタピストン115をさらに開放位置215に向かって移動させると、接続開口140は、部分的に開放され、その後、接続開口140の開放度は増していく。第3の時間区分235において、マスタピストン115を開放位置215に維持する。この第3の時間区分235において、マスタシリンダ110の内室と補給容器135との間での圧力補償あるいは圧力平衡の大部分が実施される。その後、区分240において、マスタピストン115が閉鎖位置210に到達するまで、接続開口140をマスタピストン115により再閉鎖する。区分240における移動は、好ましくは区分230におけるプロセスを時間的に反転させたものに相当する。第5の時間区分245において、マスタピストン115を閉鎖位置210から再び原点位置205へと移動させる。この区分は、区分225を時間的に反転させたものに相当する。
【0027】
区分225におけるマスタピストン115の移動速度は、接続開口140が比較的大きく開放されているときは、大きい。その一方で、区分230における移動速度は、接続開口140が比較的小さく開放されているときは、小さい。一実施の形態において、移動速度、特に区分230における移動速度は、図1に示した温度センサの温度に基づいて制御されてもよい。温度に左右される液圧作動流体145の粘性を考慮するために、温度が高いときは、温度が低いときと比べて移動速度を高くしてもよい。
【0028】
3つの択一的な、例としての速度プロフィール250,255,260は、部分的に開放された接続開口140の開放度に応じたマスタピストン115の速度制御を表している。接続開口140が完全に開放又は完全に閉鎖されている、区分230あるいは240の外側では、公知の形式でマスタピストン115の適当な速度が達成されてもよい。
【0029】
第1のプロフィール250の場合、区分230におけるマスタピストン115の移動速度は、区分225における移動速度を下回り、区分230における移動速度は、一定である。
【0030】
第2のプロフィール255の場合、区分230におけるマスタピストン115の移動速度は、接続開口140の開放度の増加に伴い、線形に増加している。開放位置215におけるマスタピストン115の移動速度は、区分225における速度と同じであっても、それを下回っていてもよい。
【0031】
第3のプロフィール260の場合、区分230におけるマスタピストン115の速度は、接続開口140の開放度に応じて、それぞれ一定の速度を有する複数の区分に区分けされて制御される。図示したような階段状の速度プロフィール260が生じる。この場合、マスタピストン115の速度を順に2つ、3つ又はそれ以上の一定の速度に制御してもよい。
【0032】
別の実施の形態において、区分230におけるマスタピストン115のさらに別の速度プロフィールも可能である。その際、速度プロフィールは、単調(モノトーン)であると有利である。
【0033】
第4の区分240において、マスタピストン115は、好ましくは上述のように、区分230におけるそれぞれの推移を時間的に反転させたものに相当する速度で移動させられる。
【0034】
図3は、図1に示したアクチュエータシステムのマスタピストン115の位置と液圧作動流体145の圧力との関係300を示している。鉛直方向軸に液圧作動流体145の圧力を、水平方向軸にマスタピストン115の位置をとってある。図示の関係は、例示であり、そこに表示してある目盛りの数値は、例である。
【0035】
第1の線305は、正の方向、つまり図3で見て右方へのマスタピストン115の移動に対応し、第2の線310は、負の方向、つまり図3で見て左方へのマスタピストン115の移動に対応する。線305,310の相違は、クラッチ操作中、図1に示した実際のアクチュエータシステム100内の摩擦に基づくヒステリシス効果から生じる。
【0036】
マスタピストン115の約10mmの位置に、クラッチ105の操作が開始あるいは終了するタッチ点315がある。つまりタッチ点315において、力伝達経路がクラッチ105により、ハイドロスタティック式のアクチュエータ150を操作したときには遮断され、操作を戻したときには閉鎖される。クラッチ105の開放又は閉鎖を正確に制御することができるようにするためには、タッチ点315をマスタピストン115の位置に関してできる限り正確に認識しておく必要がある。接続開口140がスニッフィングプロセス中に閉鎖された後、液圧作動流体145が加熱されると、線305,310は、左方にシフトする。このようなシフトは、液圧作動流体145の温度によるだけではこのシフトの補償ができない別の理由も有している場合がある。その代わりこのシフトは、マスタピストン115を図2に示した区分230においてスニッフィング位置へ移動させる際に、液圧作動流体145を正圧あるいは負圧から解放することにより、取り除くことができる。
【0037】
図4は、図3に示した関係の一部を拡大して示している。その際、閉鎖位置210は、−1.0mmの位置にあると仮定してある。しかし、閉鎖位置210は、閉鎖位置210の範囲における高められた圧力が、例えば接続開口140に設けられたシールの変形に至らしめる場合があり、その結果、アクチュエータシステム100の運転中の実際の閉鎖位置210が、マスタシリンダ110に関する位置について変化する場合があるので、不確定範囲405内にある。
【0038】
開放位置215を、マスタピストン115の、接続開口140の十分な開放がちょうど保証されている位置に置くために、様々な方法が取られてもよい。第1の態様では、開放位置215における液圧作動流体145の圧力を観察する。圧力が、予め決められた速度よりもゆっくりと補給容器135内の圧力に向かって低下するようであれば、開放位置215を図4で見てさらに左方にずらす。この変更は、制御装置165の内的なパラメータに関する。
【0039】
第2の態様では、開放位置215を液圧作動流体145の温度に基づいて調整することができ、液圧作動流体145が高温であるときは、液圧作動流体145が低温であるときと比べて小さな開放度に開放位置215を対応させる。
【0040】
さらに、図2に示した区分240における接続開口140の閉鎖時に、液圧作動流体145の許容できないほど高い圧力が圧力管路130内に残らないことを保証するために、図1に示した圧力センサ175も、閉鎖位置210を適当に調整するために使用可能である。一実施の形態において、閉鎖位置210は、マスタピストン115が図示の不確定範囲405の下あるいは図4で見て左にあり、圧力の所定の閾値410が超過されてしまう場合に、調整可能である。
【符号の説明】
【0041】
100 アクチュエータシステム
105 クラッチ
110 マスタシリンダ
115 マスタピストン
120 スレーブシリンダ
125 スレーブピストン
130 圧力管路
135 補給容器
140 接続開口
145 液圧作動流体
150 ハイドロスタティック式のアクチュエータ
155 スピンドルドライブ
160 駆動モータ
165 制御装置
170 第1のセンサ
175 第2のセンサ
200 関係
205 原点位置
210 閉鎖位置
215 開放位置
220 線
225 第1の区分
230 第2の区分
235 第3の区分
240 第4の区分
245 第5の区分
250 第1の速度プロフィール
255 第2の速度プロフィール
260 第3の速度プロフィール
300 関係
305 第1の線
310 第2の線
315 タッチ点
405 不確定範囲
410 閾値
図1
図2
図3
図4