【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 極限シリコン結晶太陽電池の研究開発(次世代超薄型結晶シリコン太陽電池の低コスト・高効率化プロセス開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
<実施の形態1>
図1に、本発明の光電変換素子の一例である実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの模式的な断面図を示す。実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルは、n型単結晶シリコンからなる半導体1と、半導体1の裏面の全面を被覆するi型の水素化アモルファスシリコンを含有する真性層4と、真性層4の裏面の一部を被覆するn型の水素化アモルファスシリコンを含有するn型層6と、真性層4の裏面の一部を被覆するp型の水素化アモルファスシリコンを含有するp型層8と、真性層4の裏面の一部を被覆する第1絶縁層5とを備えている。ここで、n型層6、p型層8および第1絶縁層5は、互いに、半導体1の裏面の異なる領域を被覆している。
【0019】
第1絶縁層5は帯状に形成されている。n型層6は、凹部が
図1の紙面の法線方向に直線状に伸びる溝部6bと、溝部6bの両側壁の上端から溝部6bの外側方向に伸長するフラップ部6cと、を有する形状に形成されている。p型層8は、凹部が
図1の紙面の法線方向に直線状に伸びる溝部8bと、溝部8bの両側壁の上端から溝部8bの外側方向に伸長するフラップ部8cと、を有する形状に形成されている。
【0020】
第1絶縁層5の裏面の一部はn型層6の端部領域であるフラップ部6cによって被覆されており、第1絶縁層5の裏面の他の一部は第2絶縁層7によって被覆されている。n型層6のフラップ部6cの裏面の一部は、第2絶縁層7によって被覆されている。第2絶縁層7の裏面の全面は、p型層8の端部領域であるフラップ部8cによって被覆されている。
【0021】
n型層6の溝部6bを埋設するとともにフラップ部6cの裏面の一部を覆うようにn型層6に接する第1下部電極91が設けられている。また、p型層8の溝部8bを埋設するとともにフラップ部8cの裏面の一部を覆うようにp型層8に接する第2電極10が設けられている。また、第1下部電極91は、p型層8のフラップ部8cの裏面の一部も覆っている。
【0022】
第1下部電極91上に第1上部電極92が設けられており、第1下部電極91と第1上部電極92とから第1電極9が構成されている。また、第1下部電極91と第2電極10との間、および第1上部電極92と第2電極10との間には、それぞれ、第3絶縁層11が設けられている。
【0023】
n型層6のフラップ部6cの外側の端面である端部6aおよびp型層8のフラップ部8cの外側の端面である端部8aは、それぞれ、真性層4と第1絶縁層5とが接する領域R2の上方(裏面側)に位置している。なお、真性層4と第1絶縁層5とが接する領域R2の幅W2は、たとえば10μm以上300μm以下とすることができる。
【0024】
n型層6の端部6aは第1絶縁層5の裏面上に位置しており、p型層8の端部8aは第2絶縁層7の裏面上に位置している。したがって、p型層8の端部8aは、第2絶縁層7を介して、n型層6の端部6aよりも上方に位置している。
【0025】
第1下部電極91の端部91aおよび第2電極10の端部10aは、第2絶縁層7の上方に位置している部分を有している。すなわち、第1下部電極91のp型層8のフラップ部8cの上方の端部91aは、第2絶縁層7の上方に位置している。また、第1下部電極91の端部91aおよび第2電極10の端部10aは、第2絶縁層7上のp型層8上に位置している。
【0026】
第1下部電極91、第1上部電極92、第2電極10および第3絶縁層11も、第1絶縁層5、n型層6、第2絶縁層7およびp型層8と同様に、
図1の紙面の法線方向に直線状に伸長する形状を有している。第1下部電極91の伸長方向と垂直な方向の端面である端部9
1a、および第2電極10の伸長方向と垂直な方向の端面である端部10aは、第1絶縁層5上のn型層6の上方に位置している部分を有している。
【0027】
真性層4とn型層6とが接する領域R1における真性層4の厚さはt1となっており、真性層4とn型層6とが接する領域R1の幅W1は、たとえば50μm以上500μm以下とすることができる。
【0028】
また、真性層4とp型層8とが接する領域R3における真性層4の厚さはt2となっており、真性層4とp型層8とが接する領域R3の幅W3は、たとえば0.6mm以上2mm以下とすることができる。
【0029】
半導体1の裏面側の構造は上記の構造となっているが、半導体1の裏面と反対側の受光面にはテクスチャ構造2が形成されているとともに、テクスチャ構造2上にはパッシベーション膜を兼ねる反射防止膜3が形成されている。反射防止膜3は、パッシベーション層上に反射防止層を積層した積層膜であってもよい。
【0030】
以下、
図2〜
図16の模式的断面図を参照して、実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの製造方法の一例について説明する。まず、
図2に示すように、RCA洗浄を行なった半導体1の裏面の全面に、i型の水素化アモルファスシリコンからなる真性層4をたとえばプラズマCVD法により積層した後に、真性層4の裏面の全面に第1の絶縁層5をたとえばプラズマCVD法により積層する。ここで、半導体1の受光面には、上述したように、テクスチャ構造(図示せず)およびパッシベーション膜を兼ねる反射防止膜(図示せず)が形成されている。なお、本明細書において、「i型」は真性半導体を意味する。
【0031】
半導体1としてはn型単結晶シリコンに限定されず、たとえば従来から公知の半導体を用いてもよい。半導体1の厚さは、特に限定されないが、たとえば50μm以上300μm以下とすることができ、好ましくは70μm以上150μm以下とすることができる。また、半導体1の比抵抗も、特に限定されないが、たとえば0.5Ω・cm以上10Ω・cm以下とすることができる。
【0032】
半導体1の受光面のテクスチャ構造は、たとえば、半導体1の受光面の全面をテクスチャエッチングすることなどにより形成することができる。
【0033】
半導体1の受光面のパッシベーション膜を兼ねる反射防止膜は、たとえば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、または窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との積層体などを用いることができる。また、反射防止膜の厚さは、たとえば100nm程度とすることができる。また、反射防止膜は、たとえば、スパッタリング法またはプラズマCVD法により堆積することができる。
【0034】
半導体1の裏面の全面に積層される真性層4の厚さは、特に限定されないが、たとえば1nm以上10nm以下とすることができ、より具体的には4nm程度とすることができる。
【0035】
真性層4の裏面の全面に積層される第1絶縁層5は、絶縁材料からなる層であれば特に限定されないが、真性層4をほとんど侵すことなくエッチングが可能な材質であることが好ましい。第1絶縁層5としては、たとえば、プラズマCVD法等を用いて形成した、窒化シリコン層、酸化シリコン層、または窒化シリコン層と酸化シリコン層との積層体などを用いることができる。この場合、たとえばフッ酸を用いることによって、真性層4にほとんどダメージを与えることなく、第1絶縁層5をエッチングすることが可能である。第1絶縁層5の厚さは、特に限定されないが、たとえば100nm程度とすることができる。
【0036】
次に、
図3に示すように、第1絶縁層5の裏面上に開口部22を有するレジスト21を形成する。そして、レジスト21の開口部22から露出する第1絶縁層5の部分を除去することによって、レジスト21の開口部22から真性層4の裏面を露出させる。
【0037】
ここで、開口部22を有するレジスト21は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。また、第1絶縁層5の除去は、たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチング、またはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングなどにより行なうことができる。たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチングまたはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングにより、窒化シリコンおよび/または酸化シリコンからなる第1絶縁層5を除去する場合には、水素化アモルファスシリコンは、窒化シリコンおよび酸化シリコンと比べてフッ酸に侵されにくいため、i型の水素化アモルファスシリコンからなる真性層4をほとんど侵すことなく、第1絶縁層5を選択的に除去することができる。たとえば、フッ酸(たとえば濃度0.1〜5%程度)を用いて第1絶縁層5をウエットエッチングした場合には、当該ウエットエッチングを真性層4の裏面で止めることができる。
【0038】
その後、第1絶縁層5の裏面からレジスト21をすべて除去した後に、
図4に示すように、真性層4の露出した裏面および第1絶縁層5を覆うようにして、n型の水素化アモルファスシリコンからなるn型層6をたとえばプラズマCVD法により積層する。
【0039】
真性層4の露出した裏面および第1絶縁層5を覆うn型層6の厚さは、特に限定されないが、たとえば10nm程度とすることができる。
【0040】
n型層6に含まれるn型不純物としては、たとえばリンを用いることができ、n型層6のn型不純物濃度は、たとえば5×10
20個/cm
3程度とすることができる。
【0041】
次に、
図5に示すように、n型層6の裏面上に開口部32を有するレジスト31を形成する。そして、レジスト31の開口部32から露出するn型層6の部分を除去することによって、レジスト31の開口部32から第1絶縁層5の裏面を露出させる。
【0042】
ここで、開口部32を有するレジスト31は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。また、n型層6の除去は、たとえば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を用いたウエットエッチングなどにより行なうことによって、第1絶縁層5をほとんど侵すことなく、n型層6を選択的に除去することができる。
【0043】
その後、n型層6の裏面からレジスト31をすべて除去した後に、
図6に示すように、第1絶縁層5の露出した裏面およびn型層6を覆うようにして、第2絶縁層7をたとえばプラズマCVD法により積層し、その後、第2絶縁層7の裏面上に開口部42を有するレジスト41を形成する。そして、レジスト41の開口部42から露出する第2絶縁層7の部分およびその部分の直下の第1絶縁層5を除去することによって、レジスト41の開口部42から真性層4の裏面を露出させる。
【0044】
第2絶縁層7は、絶縁材料からなる層であれば特に限定されないが、水素化アモルファスシリコンをほとんど侵すことなくエッチングが可能な材質であることが好ましい。第2絶縁層7としては、たとえば、プラズマCVD法等を用いて形成した、窒化シリコン層、酸化シリコン層、または窒化シリコン層と酸化シリコン層との積層体などを用いることができる。この場合、たとえばフッ酸を用いることによって、水素化アモルファスシリコンにほとんどダメージを与えることなく、
第2絶縁層7をエッチングすることが可能である。第2絶縁層7の厚さは、特に限定されないが、たとえば100nm以上1000nm以下とすることができる。
【0045】
開口部42を有するレジスト41は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。また、第2絶縁層7および第1絶縁層5の除去は、たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチング、またはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングなどにより行なうことができる。たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチングまたはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングにより、窒化シリコンおよび/または酸化シリコンからなる第1絶縁層5および第2絶縁層7を除去する場合には、水素化アモルファスシリコンは、窒化シリコンおよび酸化シリコンと比べてフッ酸に侵されにくいため、i型の水素化アモルファスシリコンからなる真性層4をほとんど侵すことなく、第1絶縁層5および第2絶縁層7を選択的に除去することができる。
【0046】
その後、第2絶縁層7の裏面からレジスト41をすべて除去した後に、
図7に示すように、真性層4の露出した裏面、ならびに第1絶縁層5、n型層6および第2絶縁層7を含む積層体を覆うようにしてp型の水素化アモルファスシリコンからなるp型層8をたとえばプラズマCVD法により積層する。
【0047】
p型層8の厚さは、特に限定されないが、たとえば10nm程度とすることができる。
p型層8に含まれるp型不純物としては、たとえばボロンを用いることができ、p型層8のp型不純物濃度は、たとえば5×10
20個/cm
3程度とすることができる。
【0048】
次に、
図8に示すように、p型層8の裏面上に開口部52を有するレジスト51を形成する。その後、レジスト51の開口部52から露出するp型層8の部分を除去する。
【0049】
ここで、開口部52を有するレジスト51は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。また、p型層8は、たとえば、フッ酸と硝酸との混合液を用いたウエットエッチングによって除去することができる。ウエットエッチングの代わりに、反応性イオンエッチング法を用いてもよい。
【0050】
フッ酸と硝酸との混合液を用いてp型層8をウエットエッチングする場合には、フッ酸と硝酸との混合比(体積比)は、たとえば、フッ酸:硝酸=1:100とすることができる。また、p型層8のウエットエッチングは、p型層8の直下の第2絶縁層7がすべて除去されてn型層6の裏面が露出しないように、ゆっくり行なう、若しくは第2絶縁層7の厚さを十分に厚くして行なうことが好ましい。
【0051】
次に、
図9に示すように、レジスト51の開口部52から露出する第2絶縁層7の部分を除去することによってn型層6の裏面を露出させた後に、レジスト51をすべて除去する。第2絶縁層7の除去は、たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチング、またはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングなどにより行なうことができる。たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチングまたはフッ酸を含有するエッチングペーストを用いたエッチングにより、窒化シリコンおよび/または酸化シリコンからなる第2絶縁層7を除去する場合には、水素化アモルファスシリコンは、窒化シリコンおよび酸化シリコンと比べてフッ酸に侵されにくいため、n型の水素化アモルファスシリコンからなるn型層6をほとんど侵すことなく、第2絶縁層7を選択的に除去することができる。
【0052】
次に、
図10に示すように、n型層6の裏面上およびp型層8の裏面上に、第2電極10を形成する。
【0053】
第2電極10としては、導電性を有する材料を特に限定なく用いることができるが、仕事関数が4.7eV以上の材料を用いることが好ましく、なかでも、白金およびITO(Indium Tin Oxide)の少なくとも一方を含む材料を用いることがより好ましい。第2電極10として、仕事関数が4.7eV以上の材料を用いた場合、特に白金およびITOの少なくとも一方を含む材料を用いた場合には、第2電極10とp型層8との間の抵抗を小さくすることができ、光電変換素子の変換効率が上昇する傾向にある。
【0054】
第2電極10の形成方法は、特に限定されないが、たとえば、スパッタリング法または蒸着法などを用いることができる。
【0055】
また、第2電極10は、たとえば、ITO層上に、銀またはアルミニウムなどの金属層を形成したものを用いてもよい。第2電極10として、ITO層上に金属層を設けた構成を用いる場合には、ITO層の厚さはたとえば5nm以上100nm以下とすることができ、金属層の厚さとしてはたとえば1μm以上5μm以下とすることができる。
【0056】
次に、
図11に示すように、第2電極10の裏面上に開口部62を有するレジスト61を形成する。開口部62を有するレジスト61は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。
【0057】
次に、
図12に示すように、レジスト61の開口部62から露出する第2電極10の部分を除去する。ここで、第2電極10が、ITO層と、ITO層上の銀層との積層体から構成される場合には、たとえば、市販の銀エッチャントにて銀層を除去した後に、塩酸等によってITO層をエッチングにより除去する方法などが考えられる。
【0058】
その後、第2電極10の裏面からレジスト61をすべて除去した後に、
図13に示すように、第2電極10の露出した裏面およびn型層6を覆うようにして、第3絶縁層11をたとえばプラズマCVD法により積層する。ここで、第2電極10を外部に取り出すため第2電極10の一部にはマスキングをして、第3絶縁層11が形成されないようにする。
【0059】
第3絶縁層11は、絶縁材料からなる層であれば特に限定されないが、n型層6をほとんど侵すことなくエッチングが可能な材質であることが好ましい。第3絶縁層11としては、たとえば、プラズマCVD法等を用いて形成した、窒化シリコン層、酸化シリコン層、または窒化シリコン層と酸化シリコン層との積層体などを用いることができる。この場合、たとえばフッ酸を用いることによって、n型層6にほとんどダメージを与えることなく、第1絶縁層5をエッチングすることが可能である。第3絶縁層11の厚さは、特に限定されないが、たとえば100nm以上1000nm以下とすることができる。
【0060】
次に、
図14に示すように、第2電極10の裏面上に開口部72を有するレジスト71を形成する。開口部72を有するレジスト71は、たとえば、フォトリソグラフィ法または印刷法などにより形成することができる。
【0061】
次に、
図15に示すように、レジスト71の開口部72から露出する第3絶縁層11を除去することによって、レジスト71の開口部72からn型層6の裏面を露出させる。第3絶縁層11の除去は、たとえば、フッ酸等を用いたウエットエッチングなどにより行なうことができる。なお、n型層6は、フッ酸にほとんど浸食されないため、第3絶縁層11をフッ酸を用いたウエットエッチングにより除去する場合には、第3絶縁層11のエッチングはn型層6の裏面で止まる。
【0062】
次に、
図16に示すように、第3絶縁層11の裏面からレジスト71をすべて除去する。
【0063】
次に、
図1に示すように、n型層6の裏面上に第1下部電極91を形成し、その後、第1下部電極91および第3絶縁層11の裏面上を覆うように第1上部電極92を形成して第1電極9を形成する。ここで、第2電極10を外部に取り出すため第2電極10の一部にはマスキングをして、第1電極9が形成されないようにする。
【0064】
第1下部電極91および第1上部電極92としては、導電性を有する材料を特に限定なく用いることができるが、仕事関数が4.7eV未満の材料を用いることが好ましく、なかでも、アルミニウムおよび酸化亜鉛の少なくとも一方を含む材料を用いることがより好ましい。また、第1下部電極91および第1上部電極92としては、第2電極10と独立に材料を選択することができ、第2電極10と同一の材料を用いてもよい。第1下部電極91および第1上部電極92として、仕事関数が4.7eV未満の材料を用いた場合、特に、アルミニウムおよび酸化亜鉛の少なくとも一方を含む材料を用いた場合には、第1下部電極91とn型層6との間の抵抗を小さくすることができるため、光電変換素子の変換効率が上昇する傾向にある。
【0065】
第1電極9の形成方法は、特に限定されないが、たとえば、スパッタリング法または蒸着法などを用いることができる。
【0066】
また、第1電極9は、たとえば、酸化亜鉛層上に、銀またはアルミニウムなどの金属層を形成したものを用いてもよい。第1電極9として、酸化亜鉛層上に銀層を設けた構成を用いる場合には、酸化亜鉛層の厚さはたとえば5nm以上100nm以下とすることができ銀層の厚さとしてはたとえば1μm以上5μm以下とすることができる。
【0067】
以上のようにして、実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルを製造することができる。
【0068】
上述のように、実施の形態1においては、n型層6およびp型層8のパターニングを、それぞれ、第1絶縁層5上および第2絶縁層7上で行なうことができる。これにより、n型層6およびp型層8のパターニング時に、半導体1および真性層4が受けるダメージを低減することができることから、ヘテロ接合型バックコンタクトセルを高い歩留まりで製造することができるとともに、その特性を高くすることができる。
【0069】
また、実施の形態1においては、隣り合って向かい合う第1下部電極91の端部91aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離Lが小さくなるように、第1下部電極91と第2電極10とを形成することができる。そのため、半導体1の受光面から入射して半導体1を透過してきた光が第1下部電極91と第2電極10との間から透過する量を少なくし、半導体1側に反射する光の量を多くすることができる。また、仮に、第1下部電極91と第2電極10との間から光が透過した場合でも、第1上部電極92で、半導体1側に反射する光の量を多くすることができる。そのため、ヘテロ接合型バックコンタクトセルの特性を高くすることができる。
【0070】
また、実施の形態1においては、シャドウマスキングプロセスを用いてn型層6およびp型層8を形成する必要がない。これにより、n型層6およびp型層8を高精度に形成することができるため、ヘテロ接合型バックコンタクトセルを高い歩留まりで製造することができるとともに、その特性を高くすることができる。
【0071】
また、実施の形態1においては、第1電極9を第1下部電極91と第1上部電極92と2層の電極構造とすることにより、寄生抵抗を小さくすることができる。
【0072】
さらに、実施の形態1においては、n型層6上の第1電極9の材料と、p型層8上の第2電極10の材料とをそれぞれ独立に選択することができるため、第1電極9および第2電極10のそれぞれに最適な仕事関数を有する材料を選択することができるため、寄生抵抗を小さくすることができる。
【0073】
特に、実施の形態1においては、n型層6の端部6aおよびp型層8の端部8aが、それぞれ、真性層4と第1絶縁層5とが接する領域R2における第1絶縁層5の上方に位置している。そのため、n型層6およびp型層8のパターニングを第1絶縁層5上で行なうことができることから、n型層6およびp型層8のパターニング時に、半導体1および真性層4が受けるダメージを低減することができる。
【0074】
また、実施の形態1においては、p型層8の端部8aが、第2絶縁層7を介して、n型層6の端部6aよりも上方に位置している。そのため、第2絶縁層7によって、n型層6とp型層8とを厚さ方向に絶縁することができる。また、n型層6とp型層8との間に第2絶縁層7が設けられているため、n型層6にほとんどダメージを与えることなく、p型層8のパターニングを行なうことができる。
【0075】
また、実施の形態1においては、第1下部電極91の端部91aおよび第2電極10の端部10aが、第2絶縁層7上に位置している。そのため、第1下部電極91および第2電極10のパターニングを第2絶縁層7上で行なうことができることから、第1下部電極91および第2電極10のパターニング時に、半導体1、真性層4、n型層
6が受けるダメージを低減することができる。また、この場合には、隣り合って向かい合う第1下部電極91の端部91aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離Lを小さくすることができ、第1下部電極91と第2電極10との間から透過する光の量を少なくし、半導体1側に反射する光の量を多くすることができることから、ヘテロ接合型バックコンタクトセルの特性を向上させることができる。
【0076】
また、実施の形態1においては、第1下部電極91の端部9
1aおよび第2電極10の端部10aが、それぞれ、第2絶縁層7上に設けられたp型層8上に位置している。これにより、第1下部電極9
1および第2電極10のパターニングは、第2絶縁層7上で行なうことができるため、第1下部電極91および第2電極10のパターニング時に、半導体1、真性層4、n型層
6が受けるダメージを低減することができる。また、この場合には、隣り合って向かい合う第1下部電極91の端部9
1aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離Lを小さくすることができ、第1下部電極91と第2電極10との間から透過する光の量を少なくし、半導体1側に反射する光の量を多くすることができることから、ヘテロ接合型バックコンタクトセルの特性を向上させることができる。
【0077】
また、実施の形態1においては、p型層8の導電率が0.28S/cm以下であることが好ましい。この場合には、第1下部電極91と第2電極10との間の電極間距離Lを10μm以下にすることができるため、第1下部電極9と第2電極10との間から透過する光の量を少なくし、半導体1側に反射する光の量を多くすることができる。これにより、ヘテロ接合型バックコンタクトセルの特性を向上させることができる。
【0078】
また、実施の形態1においては、n型層6の形成後にp型層8を形成しているため、真性層4による半導体1の裏面の良好なパッシベーション効果を得ることができる。すなわち、n型層6の形成前にp型層8を形成した場合には、n型層6の積層時のアニール効果によって、p型層8で被覆された真性層4の少数キャリアライフタイムが低下することがあるが、n型層6の形成後にp型層8を形成した場合にはこのような少数キャリアライフタイムの低下を抑止することができる。
【0079】
また、実施の形態1においては、p型層8と接する領域R3における真性層4の厚さt2が、n型層6と接する領域R1における真性層4の厚さt1よりも厚いことが好ましい。p型層8の直下の真性層4の厚さt2が、n型層6の直下の真性層4の厚さt1よりも厚い方が、真性層4による半導体1の裏面の良好なパッシベーション効果を得ることができる。
【0080】
なお、上記においては、第1導電型をn型とし、第2導電型をp型として説明したが、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよいことは言うまでもない。
【0081】
また、上記においては、n型層6として、n型の水素化アモルファスシリコンを用いた場合について説明したが、これに限定されず、n型の微結晶シリコンなどを用いてもよい。
【0082】
また、上記においては、p型層8として、p型の水素化アモルファスシリコンを用いた場合について説明したが、これに限定されず、p型の微結晶シリコンなどを用いてもよい。
【0083】
<実施の形態2>
図17に、本発明の光電変換素子の他の一例である実施の形態2のヘテロ接合型バックコンタクトセルの模式的な断面図を示す。実施の形態2のヘテロ接合型バックコンタクトセルにおいては、第1下部電極91の端部9
1aがn型層6の裏面上に位置しているとともに、第2電極10の端部10aがp型層8の裏面上に位置していることを特徴としている。
【0084】
実施の形態2においても、n型層6の端部6aおよびp型層8の端部8aが、それぞれ、真性層4と第1絶縁層5とが接する領域R2における第1絶縁層5の上方に位置しており、n型層6およびp型層8のパターニングを第1絶縁層5上で行なうことができる。したがって、実施の形態2においても、半導体1および真性層4が受けるダメージを低減することができるため、ヘテロ接合型バックコンタクトセルを高い歩留まりで製造することができるとともに、その特性を高くすることができる。また、第2絶縁層7によって、n型層6とp型層8とが厚さ方向に絶縁されているため、第1電極9と第2電極10との間のシャント抵抗を著しく大きくすることができる。
【0085】
なお、実施の形態2のヘテロ接合型バックコンタクトセルは、第1下部電極91の端部9
1aがn型層6の裏面上に位置している点で、第1下部電極91の端部9
1aがp型層8の裏面上に位置している実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルと異なっているが、p型層8が、p型の水素化アモルファスシリコンから構成される場合には、実施の形態1および実施の形態2のいずれの構成であってもよい。
【0086】
p型層8が、p型の微結晶シリコンから構成される場合には、p型の微結晶シリコンはp型の水素化アモルファスシリコンと比べて導電率が高いため、実施の形態2のヘテロ接合型バックコンタクトセルの構成の方が好ましい。この場合には、第1下部電極91の端部9
1aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離Lが十分に大きい場合には実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの構成でもよいが、電極間距離Lが大きくなるほど、半導体1側に反射する光の量を多くすることが困難となる。
【0087】
また、n型とp型の導電型を入れ替えた場合には、実施の形態1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの構成の方が好ましい。この場合にも、第1下部電極91の端部9
1aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離Lが十分に大きい場合には実施の形態2のヘテロ接合型バックコンタクトセルの構成でもよいが、電極間距離Lが大きくなるほど、半導体1側に反射する光の量を多くすることが困難となる。
【0088】
実施の形態2における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、ここでは、その説明については省略する。
【0089】
<実施の形態3>
図18に、本発明の光電変換素子のさらに他の一例である実施の形態3のヘテロ接合型バックコンタクトセルの模式的な断面図を示す。実施の形態3のヘテロ接合型バックコンタクトセルにおいては、p型層8の形成後にn型層6を形成していることを特徴としている。
【0090】
実施の形態3においても、n型層6の端部6aおよびp型層8の端部8aが、それぞれ、真性層4と第1の絶縁層5とが接する領域R2における第1絶縁層5の上方に位置しており、n型層6およびp型層8のパターニングを第1絶縁層5上で行なうことができる。したがって、実施の形態3においても、半導体1および真性層4が受けるダメージを低減することができるため、ヘテロ接合型バックコンタクトセルを高い歩留まりで製造することができるとともに、その特性を高くすることができる。また、第2絶縁層7によって、n型層6とp型層8とが厚さ方向に絶縁されているため、第1電極9と第2電極10との間のシャント抵抗を著しく大きくすることができる。
【0091】
実施の形態3における上記以外の説明は、実施の形態1および2と同様であるため、ここでは、その説明については省略する。
【0092】
以下、本発明の別の局面として実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを備える光電変換モジュール(実施の形態4)および太陽光発電システム(実施の形態5および実施の形態6)について説明する。
【0093】
実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルは、高い特性を有するため、これを備える光電変換モジュールおよび太陽光発電システムも高い特性を有している。
【0094】
<実施の形態4>
実施の形態4は、実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを光電変換素子として用いた光電変換モジュールである。
【0095】
<光電変換モジュール>
図23に、実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを光電変換素子として用いた本発明の光電変換モジュールの一例である実施の形態4の光電変換モジュールの構成の概略を示す。
図23を参照して、実施の形態4の光電変換モジュール1000は、複数の光電変換素子1001と、カバー1002と、出力端子1013,1014とを備えている。
【0096】
複数の光電変換素子1001はアレイ状に配列され直列に接続されている。
図23には光電変換素子1001を直列に接続する配列を図示しているが、配列および接続方式はこれに限定されず、並列に接続して配列してもよく、直列と並列とを組み合わせた配列としてもよい。複数の光電変換素子1001の各々には、実施の形態1〜3のいずれかのヘテロ接合型バックコンタクトセルが用いられる。尚、光電変換モジュール1000は、複数の光電変換素子1001のうち少なくとも1つが実施の形態1〜実施の形態3の光電変換素子のいずれかからなる限り、上記の説明に限定されず如何なる構成もとり得る。また、光電変換モジュール1000に含まれる光電変換素子1001の数は2以上の任意の整数とすることができる。
【0097】
カバー1002は、耐候性のカバーから構成されており、複数の光電変換素子1001を覆う。
【0098】
出力端子1013は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の一方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
【0099】
出力端子1014は、直列に接続された複数の光電変換素子1001の他方端に配置される光電変換素子1001に接続される。
【0100】
<実施の形態5>
実施の形態5は、実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを光電変換素子として用いた太陽光発電システムである。本発明の光電変換素子は高い特性(変換効率等)を有するため、これを備える本発明の太陽光発電システムも高い特性を有することができる。尚、太陽光発電システムとは、光電変換モジュールが出力する電力を適宜変換して、商用電力系統または電気機器等に供給する装置である。
【0101】
<太陽光発電システム>
太陽光発電システムは、光電変換モジュールが出力する電力を適宜変換して、商用電力系統または電気機器等に供給する装置である。
【0102】
図24に、実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを光電変換素子として用いた本発明の太陽光発電システムの一例である実施の形態5の太陽光発電システムの構成の概略を示す。
図24を参照して、実施の形態5の太陽光発電システム2000は、光電変換モジュールアレイ2001と、接続箱2002と、パワーコンディショナ2003と、分電盤2004と、電力メータ2005とを備える。後述するように光電変換モジュールアレイ2001は複数の光電変換モジュール1000(実施の形態4)から構成されている。
【0103】
太陽光発電システム2000には、一般に「ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS:Home Energy Management System)」、「ビルディング・エネルギー・マネージメント・システム(BEMS:Building Energy Management System)」等の太陽光発電システム2000の発電量の監視、太陽光発電システム2000に接続される各電気機器類の消費電力量の監視・制御等を行うことで、エネルギー消費量を削減することができる。
【0104】
接続箱2002は、光電変換モジュールアレイ2001に接続される。パワーコンディショナ2003は、接続箱2002に接続される。分電盤2004は、パワーコンディショナ2003および電気機器類2011に接続される。電力メータ2005は、分電盤2004および商用電力系統に接続される。尚、パワーコンディショナ2003には蓄電池が接続されていてもよい。この場合、日照量の変動による出力変動を抑制することができると共に、日照のない時間帯であっても蓄電池に蓄電された電力を電気機器類2011または商用電力系統に供給することができる。また、蓄電池は、パワーコンディショナ2003に内蔵されていてもよい。
【0105】
<動作>
実施の形態5の太陽光発電システム2000は、たとえば以下のように動作する。
【0106】
光電変換モジュールアレイ2001は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、直流電力を接続箱2002へ供給する。
【0107】
接続箱2002は、光電変換モジュールアレイ2001が発電した直流電力を受け、直流電力をパワーコンディショナ2003へ供給する。
【0108】
パワーコンディショナ2003は、接続箱2002から受けた直流電力を交流電力に変換して分電盤2004へ供給する。尚、接続箱2002から受けた直流電力の一部を交流電力に変換せずに、直流電力のまま分電盤2004へ供給してもよい。尚、パワーコンディショナ2003に蓄電池が接続されている場合(または、蓄電池がパワーコンディショナ2003に内蔵される場合)、パワーコンディショナ2003は接続箱2002から受けた直流電力の一部または全部を適切に電力変換して、蓄電池に蓄電することができる。蓄電池に蓄電された電力は、光電変換モジュールの発電量や電気機器類2011の電力消費量の状況に応じて適宜パワーコンディショナ2003側に供給され、適切に電力変換されて分電盤2004へ供給される。
【0109】
分電盤2004は、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力および電力メータ2005を介して受けた商用電力の少なくともいずれかを電気機器類2011へ供給する。また、分電盤2004はパワーコンディショナ2003から受けた交流電力が電気機器類2011の消費電力よりも多いとき、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力を電気機器類2011へ供給する。そして、余った交流電力を電力メータ2005を介して商用電力系統へ供給する。
【0110】
また、分電盤2004は、パワーコンディショナ2003から受けた交流電力が電気機器類2011の消費電力よりも少ないとき、商用電力系統から受けた交流電力およびパワーコンディショナ2003から受けた交流電力を電気機器類2011へ供給する。
【0111】
電力メータ2005は、商用電力系統から分電盤2004へ向かう方向の電力を計測するとともに、分電盤2004から商用電力系統へ向かう方向の電力を計測する。
【0112】
<光電変換モジュールアレイ>
光電変換モジュールアレイ2001について説明する。
【0113】
図25に、
図24に示す光電変換モジュールアレイ2001の構成の一例の概略を示す。
図25を参照して、光電変換モジュールアレイ2001は、複数の光電変換モジュール1000と出力端子2013,2014とを含む。
【0114】
複数の光電変換モジュール1000は、アレイ状に配列され直列に接続されている。
図25には光電変換モジュール1000を直列に接続する配列を図示しているが、配列および接続方式はこれに限定されず、並列に接続して配列してもよいし、直列と並列とを組み合わせた配列としてもよい。なお、光電変換モジュールアレイ2001に含まれる光電変換モジュール1000の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
【0115】
出力端子2013は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1000の一方端に位置する光電変換モジュール1000に接続される。
【0116】
出力端子2014は、直列に接続された複数の光電変換モジュール1000の他方端に位置する光電変換モジュール1000に接続される。
【0117】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、実施の形態5の太陽光発電システムは、少なくとも1つの実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを備える限り、上記の説明に限定されず如何なる構成もとり得るものとする。
【0118】
<実施の形態6>
実施の形態6は、実施の形態5として説明した太陽光発電システムよりも大規模な太陽光発電システムである。実施の形態6の太陽光発電システムも、少なくとも1つの実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを備えるものである。本発明の光電変換素子は高い特性(変換効率等)を有するため、これを備える本発明の太陽光発電システムも高い特性を有することができる。
【0119】
<大規模太陽光発電システム>
図26に、本発明の大規模太陽光発電システムの一例である実施の形態6の太陽光発電システムの構成の概略を示す。
図26を参照して、実施の形態6の太陽光発電システム4000は、複数のサブシステム4001と、複数のパワーコンディショナ4003と、変圧器4004とを備える。太陽光発電システム4000は、
図25に示す実施の形態5の太陽光発電システム2000よりも大規模な太陽光発電システムである。
【0120】
複数のパワーコンディショナ4003は、それぞれサブシステム4001に接続される。太陽光発電システム4000において、パワーコンディショナ4003およびそれに接続されるサブシステム4001の数は2以上の任意の整数とすることができる。尚、パワーコンディショナ4003には蓄電池が接続されていてもよい。この場合、日照量の変動による出力変動を抑制することができると共に、日照のない時間帯であっても蓄電池に蓄電された電力を供給することができる。また、蓄電池はパワーコンディショナ4003に内蔵されていてもよい。
【0121】
変圧器4004は、複数のパワーコンディショナ4003および商用電力系統に接続される。
【0122】
複数のサブシステム4001の各々は、複数のモジュールシステム3000から構成される。サブシステム4001内のモジュールシステム3000の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
【0123】
複数のモジュールシステム3000の各々は、複数の光電変換モジュールアレイ2001と、複数の接続箱3002と、集電箱3004とを含む。モジュールシステム3000内の接続箱3002およびそれに接続される光電変換モジュールアレイ2001の数は、2以上の任意の整数とすることができる。
【0124】
集電箱3004は、複数の接続箱3002に接続される。また、パワーコンディショナ4003は、サブシステム4001内の複数の集電箱3004に接続される。
【0125】
<動作>
実施の形態6の太陽光発電システム4000は、たとえば以下のように動作する。
【0126】
モジュールシステム3000の複数の光電変換モジュールアレイ2001は、太陽光を電気に変換して直流電力を発電し、直流電力を接続箱3002を介して集電箱3004へ供給する。サブシステム4001内の複数の集電箱3004は、直流電力をパワーコンディショナ4003へ供給する。さらに、複数のパワーコンディショナ4003は、直流電力を交流電力に変換して、交流電力を変圧器4004へ供給する。尚、パワーコンディショナ4003に蓄電池が接続されている場合(または、蓄電池がパワーコンディショナ4003に内蔵される場合)、パワーコンディショナ4003は集電箱3004から受けた直流電力の一部または全部を適切に電力変換して、蓄電池に蓄電することができる。蓄電池に蓄電された電力は、サブシステム4001の発電量に応じて適宜パワーコンディショナ4003側に供給され、適切に電力変換されて変圧器4004へ供給される。
【0127】
変圧器4004は、複数のパワーコンディショナ4003から受けた交流電力の電圧レベルを変換して商用電力系統へ供給する。
【0128】
なお、太陽光発電システム4000は、少なくとも1つの実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルを備えるものであればよく、太陽光発電システム4000に含まれる全ての光電変換素子が実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルでなくても構わない。たとえば、あるサブシステム4001に含まれる光電変換素子の全てが実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルであり、別のサブシステム4001に含まれる光電変換素子の一部若しくは全部が、実施の形態1〜3のヘテロ接合型バックコンタクトセルでない場合もあり得るものとする。
【実施例1】
【0129】
図19(a)に、実施例1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの断面構造を示し、
図19(b)に、
図19(a)のXIXb−XIXbに沿った模式的な断面図を示す。なお、
図19(a)において、Lは、隣り合う第1下部電極91の端部91aと第2電極10の端部10aとの間の電極間距離を示し、tは、p型層8の厚さを示す。また、
図19(b)において、Aは、実施例1のヘテロ接合型バックコンタクトセルの平面の1辺の長さを示し、dは、電極ピッチを示している。
【0130】
電極間距離Lと、p型層8の導電率σと、p型層8の厚さtと、動作電圧V
opと、動作電流I
opと、電極間リーク電流の許容率αと、セルの平面の1辺の長さAと、電極ピッチdと、以下の式(I)の関係を満たしている。
【0131】
【数1】
【0132】
したがって、たとえば、σ=1×10
-4S/cm、t=10nm、V
op=0.7V、I
op=40mA/cm
2、α=0.01、A=10cm、およびd=1mmである場合には、上記の式(I)から、電極間距離Lは、L≧0.35nmの関係を満たしていればよいことがわかる。
【0133】
また、上記の式(I)から、以下の式(II)を導くことができる。
【0134】
【数2】
【0135】
したがって、たとえばL≦1μmとする場合には、p型層8の導電率σは、σ≦2.8×10
-1S/cmの関係を満たしていればよいことがわかる。
【実施例2】
【0136】
図20(a)に、実施例2のヘテロ接合型バックコンタクトセルの断面構造を示し、
図20(b)に、
図20(a)のXXb−XXbに沿った模式的な断面図を示す。実施例2のヘテロ接合型バックコンタクトセルは、p型層8の直下にi型水素化アモルファスシリコンを含有する真性層44が設けられている点で、実施例1のヘテロ接合型バックコンタクトセルと異なっている。
【0137】
実施例2のヘテロ接合型バックコンタクトセルにおいては、n型層6の直下の真性層の厚さと、p型層8の直下の真性層の厚さとを独立に制御することができるため、変換効率などの特性の高いヘテロ接合型バックコンタクトセルをより容易に作製することができる。
【0138】
すなわち、n型層6の直下の真性層の厚さが薄いほど、真性層4において少数キャリアライフタイムをほとんど損なうことなく寄生抵抗を小さくすることができる一方で、p型層8の直下の真性層の厚さは厚い方が、真性層における少数キャリアライフタイムを高くすることができる。そのため、p型層8の直下の真性層の厚さ(実施例2では、真性層4と真性層44との合計厚さ)をn型層6の直下の真性層の厚さ(実施例2では、真性層4の厚さ)をよりも厚くすることによって、変換効率などの特性を高くすることができる。
【実施例3】
【0139】
図21(a)に、実施例3のヘテロ接合型バックコンタクトセルの断面構造を示し、
図21(b)に、
図21(a)のXXIb−XXIbに沿った模式的な断面図を示す。実施例3のヘテロ接合型バックコンタクトセルは、第1下部電極91の端部9
1aがn型層6の裏面上に位置しているとともに、n型層6がドット状に形成されている点で、実施例1のヘテロ接合型バックコンタクトセルと異なっている。
【0140】
実施例3のヘテロ接合型バックコンタクトセルにおいても、上記と同様に、半導体1および真性層4が受けるダメージを低減して高い歩留まりで製造することができるとともに特性を高くすることができる。
【0141】
<まとめ>
本発明は、半導体と、半導体上に設けられた水素化アモルファスシリコンを含有する真性層と、真性層の一部を被覆する第1導電型の第1導電型層と、真性層の一部を被覆する第2導電型の第2導電型層と、真性層の一部を被覆する第1絶縁層と、第1導電型層上に設けられた第1電極と、第2導電型層上に設けられた第2電極と、を備え、第1導電型層の一部および第2導電型層の一部は、真性層と絶縁層とが接する領域の上方に位置している光電変換素子である。このような構成とすることにより、第1導電型層のパターニングを絶縁層上で行なうことができ、第1導電型層のパターニング時に、半導体および真性層が受けるダメージを低減することができるため、高い歩留まりで製造することができ、かつ特性の高い光電変換素子とすることができる。
【0142】
本発明は、半導体と、半導体上に設けられた水素化アモルファスシリコンを含有する真性層と、真性層の一部を被覆する第1導電型の第1導電型層と、真性層の一部を被覆する第2導電型の第2導電型層と、真性層の一部を被覆する第1絶縁層と、第1導電型層上に設けられた第1電極と、第2導電型層上に設けられた第2電極とを備え、第1電極は、第1導電型層に接する第1下部電極と、第1下部電極上に設けられた第1上部電極と、を備え、第1下部電極と第2電極との間および第1上部電極と第2電極との間には、それぞれ第2絶縁層が設けられている光電変換素子である。このような構成とすることにより、高い歩留まりで製造することができ、かつ特性の高い光電変換素子を提供することができる。
【0143】
また、本発明の光電変換素子において、第2導電型層の端部は、第2絶縁層を介して、第1導電型層の端部よりも上方に位置していることが好ましい。このような構成とすることにより、第2導電型層のパターニングを絶縁層上で行なうことができ、第2導電型層のパターニング時に、半導体および真性層が受けるダメージを低減することができる。また、第1導電型層と第2導電型層とが厚さ方向に絶縁されているため、シャント抵抗を著しく大きくすることができる。したがって、高い歩留まりで製造することができ、かつ特性の高い光電変換素子とすることができる。
【0144】
また、本発明の光電変換素子において、第1電極は、第1導電型層に接する第1下部電極と、第1下部電極上に設けられた第1上部電極とを備え、第1下部電極と第2電極との間、および第1上部電極と第2電極との間には、それぞれ、第2絶縁層が設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、第1上部電極が、第1下部電極と第2電極との間の領域上に形成されているため、第1下部電極と第2電極との間の領域から漏れ出る光を第1上部電極で反射することにより、光電変換ロスを抑制することができる。また、第1上部電極を第2電極の上部に形成しているため、第1上部電極の面積を大きくとることができ、第1電極の抵抗を小さくすることができる。
【0145】
また、本発明の光電変換素子において、第1下部電極の端部および第2電極の端部は、第2絶縁層の上方に位置している部分を有していることが好ましい。このような構成とすることにより、第1下部電極と第2電極のパターニングを第2絶縁層上で行なうことができるため、パターニングによって、半導体、真性層および第1導電型層がダメージを受けるのを防ぐことができる。
【0146】
また、本発明の光電変換素子において、第2導電型層の導電率が、0.28S/cm以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、第1下部電極と第2電極との間の電極間距離を10μm以下にすることができるため、第1下部電極と第2電極との間から透過する光の量を少なくし、半導体側に反射する光の量を多くすることができることから、光電変換素子の特性を向上させることができる。
【0147】
また、本発明の光電変換素子においては、第2導電型がp型であることが好ましい。このような構成とすることにより、真性層による半導体の表面の良好なパッシベーション効果を得ることができる。
【0148】
また、本発明の光電変換素子においては、第2導電型層と接する領域における真性層の厚さは、第1導電型層と接する領域における真性層の厚さよりも厚いことが好ましい。このような構成とすることにより、真性層による半導体の表面の良好なパッシベーション効果を得ることができる。
【0149】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0150】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。