特許第6223451号(P6223451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223451
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】がんの診断及び治療方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20171023BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20171023BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20171023BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20171023BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20171023BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   C12Q1/02ZNA
   C12N15/00 A
   C12N15/00 F
   C07K16/40
   G01N33/53 M
   G01N33/53 D
   G01N33/574 A
【請求項の数】26
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2015-530089(P2015-530089)
(86)(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公表番号】特表2015-528295(P2015-528295A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】US2013057495
(87)【国際公開番号】WO2014036387
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/696,002
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/827,514
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509001010
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ コロラド,ア ボディ コーポレイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドーベル ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア マリレイラ ヴァレッラ
(72)【発明者】
【氏名】レ アン ティー.
【審査官】 白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0136683(US,A1)
【文献】 GENOMICS,1995年,vol.28,pp.15-24
【文献】 Molecular and Cellular Endocrinology,2010年,vol.321,pp.44-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法計画の実施に応答すると予測される肺がん患者を選択する方法であって、
前記患者からの肺腫瘍細胞のサンプルにおいて、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在若しくは非存在を検出することと、
NTRK1−MPRIP遺伝子融合体が、肺腫瘍細胞の前記サンプルにおいて検出される場合に、チロシンキナーゼ阻害剤から選択される作用剤を含む化学療法計画の前記実施に応答すると予測されるとして、前記患者を選択すること、又は、 NTRK1−MPRIP遺伝子融合体が、肺腫瘍細胞の前記サンプルにおいて検出されない場合に、チロシンキナーゼ阻害剤から選択される作用剤を含む化学療法計画の前記実施に応答しないと予測されるとして、前記患者を選択することと、を含む、化学療法計画の実施に応答すると予測されるがん患者を選択する方法。
【請求項2】
前記検出が、肺腫瘍細胞の前記サンプル中に存在する前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のレベルを検出することと、前記レベルと標準レベル又は基準範囲とを比較することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標準レベル又は基準範囲が、リスク予測についての統計学的手法によって決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在が、ポリヌクレオチドの存在を検出することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在が、蛍光In Situハイブリダイゼーション法(FISH)によって決定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在が、ポリペプチドの存在を検出することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドの存在を、抗体、抗体誘導体、及び前記ポリペプチド又はその断片に特異的に結合する抗体断片の少なくとも1つを用いて検出することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体を検出することが、
肺腫瘍細胞の前記サンプルからRNAを得ることと、
前記RNAからcDNAを作製することと、
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体に特異的なプライマーにより前記cDNAを増幅することと、
前記増幅されたcDNAにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在又は非存在を決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の発現レベルと、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する有益な応答と関連付けられた前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の対照レベル、及び、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する有益な応答の欠如と関連付けられた前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の対照レベルからなる群から選択される前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の対照レベルとを比較することと、
b)肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の前記レベルが、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する感受性と関連付けられた前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の前記対照レベルと統計的に同様若しくは前記対照レベルより統計的に高い場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対して応答すると予測されるものとして前記患者を選択すること、又は、
c)肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の前記レベルが、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する有益な応答と関連付けられた前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の前記対照レベルより統計的に低い場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に応答しないと予測されるものとして前記患者を選択することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のレベルと、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対して応答しないと予測される第2の患者における前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のレベルとを比較することと、
肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の発現レベルが、前記第2の患者における前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の発現のレベルより高い場合に、1若しくは又は複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対して応答すると予測されるものとして前記患者を選択すること、又は、
肺腫瘍細胞の前記サンプルにおける前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のレベルが、前記第2の患者における前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のレベル以下である場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対して応答しないと予測されるものとして前記患者を選択することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、クリゾチニブ(PF−02340166)、ポナチニブ(AP24534)、ドビチニブ(TK−258)、レバスチニブ(DCC−2036)、CEP−701、AZD−7451、ARRY−470、ARRY−523、ARRY−772及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がTrkA阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
チロシンキナーゼ阻害剤療法の実施に対する肺がん患者の応答又は転帰を予測するアッセイシステムであって、
a)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在、
b)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の発現のレベル、
c)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質の存在、
d)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質のレベル、及び、
e)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質の活性、
の少なくとも1つを検出する手段を含み、
前記検出する手段が、
ACCATGTCGGCAGCCAAGGAGAACCCGTGC(配列番号2)、
ACACACGAGCTGACCTCTCTGC(配列番号3)、
GTGCCTGGAGAATGCCCATCTG(配列番号4)、
GCGAAGGCTAAGGCTGACTGTG(配列番号5)、
CCATTGCTGCAAACCCTCGCTC(配列番号6)、
GAATTCGCCGCCGCGCCGACCATGTCGG(配列番号7)、
CGGCGCTTGATGTGGTGAAC(配列番号8)、
TATTCCGGCTAACCACTCCCAG(配列番号9)、
CCTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号10)、及び、
CGCGGCCGCTTAAGCGTAGTCTGGGACGTCGTATGGGTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号11)、からなる群から選択されるNTRK1−MPRIP遺伝子融合体を同定するPCRプライマーからなるか、
前記検出する手段が、
染色体1q23.1におけるNTRK1遺伝子の切断点から3'側のゲノム領域の331.8Kbをカバーする3'NTRK1プローブ、及び
染色体17におけるMPRIP遺伝子の切断点から5'側のゲノム領域の341.4Kbをカバーする5'MPRIPプローブ
から選択されるFISH NTRK1−MPRIP融合体プローブからなるか、
前記検出する手段が、
染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の上流の339.4kbをカバーする5' NTRK1プローブ、及び
染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の下流の331.8Kbをカバーする3'NTRK1プローブ
からなるNTRK1ブレイクアパートプローブセットからなるか、又は HA特異的抗体及びTRKA特異的抗体から選択される、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体により発現された115kD〜120kDのキメラタンパク質を認識する抗体からなる、
チロシンキナーゼ阻害剤療法の実施に対するがん患者の応答又は転帰を予測するアッセイシステム
【請求項15】
前記検出する手段が、NTRK1遺伝子の少なくとも10〜50個の連続核酸塩基、又はその相補的核酸の配列を含む核酸プローブを含む、請求項14に記載のアッセイシステム
【請求項16】
チップ、アレイ、又は流動性カードを備えたアッセイ表面を含む、請求項14に記載のアッセイシステム
【請求項17】
1又は複数のチロシンキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する応答と関連付けられた、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の予め決定された対照レベルを含有する情報、及び
1又は複数のチロシンキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の前記実施に対する応答の欠如と関連付けられた、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の予め決定された対照レベルを含有する情報、
からなる群から選択される対照を更に含む、請求項14に記載のアッセイシステム
【請求項18】
前記検出する手段が、比色標識を含む請求項14に記載のアッセイシステム
【請求項19】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が、クリゾチニブ(PF−02340166)、ポナチニブ(AP24534)、ドビチニブ(TK−258)、レバスチニブ(DCC−2036)、CEP−701、AZD−7451、ARRY−470、ARRY−523、ARRY−772及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載のアッセイシステム。
【請求項20】
前記チロシンキナーゼ阻害剤がTrkA阻害剤である、請求項14に記載のアッセイシステム。
【請求項21】
対象における肺がんを検出する方法であって、
前記対象からの肺腫瘍細胞のサンプルにおいて、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在を検出することを含み、前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在が前記対象におけるがんを示す、対象におけるがんを検出する方法。
【請求項22】
前記がんが非小細胞肺がんである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在をRT−PCRにより検出する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子融合体をFISHにより検出する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在を該NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるポリペプチドを検出することにより検出する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリペプチドを、抗体、抗体誘導体、及び該ポリペプチド又はその断片に特異的に結合する抗体断片の少なくとも1つを用いて検出する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、特定のがん療法に対して応答すると予測される肺がん患者の同定用のマーカー、方法及びアッセイキットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんは依然として世界的にがんの主な死因であり、非小細胞肺がん(NSCLC)に主に代表される。NSCLCは組織学と分子特性との両方に基づく疾患の異質な(heterogeneous)セットであると認識されつつある。活性化された癌遺伝子を効果的に阻害することができ、患者にとって改善された臨床転帰(outcomes)をもたらす標的療法がますます多くなっているので、これらの分子サブセットの同定は適切である。
【0003】
肺がんにおける最初の重要な発癌性融合体は、Soda及びその同僚らによって2007年に見出された。未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子(ALK)が、棘皮動物微小管結合タンパク質様4(EML4)との融合によって活性化された。この融合遺伝子は、下流のシグナル伝達経路の活性化と形質転換細胞増殖とを伴うALKチロシンキナーゼドメインの構成的活性化をもたらした。この発見以降、TFG及びKIF5Bも、NSCLCにおいてALKについての融合パートナーとして同定された。複数の標的を有するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であるクリゾチニブは、ALK陽性(ALK+)であることが判明している進行性NSCLCの患者の治療について、米国FDAにより現在承認されており、ALK陽性を同定するためにFDAに承認された唯一の方法は、再編成(rearranged)ALKにおける共通の切断点の5’領域及び3’領域に特異的なブレイクアパート(break-apart)(BA)プローブを用いる蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)である。ROS1は、NSCLCにおける遺伝子融合体(gene fusions)によって活性化されることが最近見出されたもう1つの受容体型チロシンキナーゼ(RTK)である。ROS1が関係する最初のがん関連ゲノム再編成である、GOPCの5’領域とROS1の3’領域とを融合させる染色体6q21上の染色体内欠失が、神経膠芽腫において報告された。過去5年間において、ROS1を活性化する7つの異なる融合体が同定された。重要なことに、ROS1キナーゼドメインはこれらの融合現象のすべてにおいて保持されており、発現される融合遺伝子は発癌性であることが報告されている。FISHは、そのアッセイの性質により、理論的には、ROS1遺伝子が再編成を経ているあらゆるすべての場合を検出することが可能であるために、これらの再編成を診断するのに一般的に用いられている技術的基盤である。最近のデータはまた、ROS1遺伝子融合体を持つ肺がん患者がクリゾチニブに応答することも支持しており、これら患者の同定における臨床的有用性が支持される。
【0004】
4つの最近の研究が、肺がんにおいて融合により活性化される第3の遺伝子である、RET(Rearranged during Transfection)を記載している。RETは、遺伝子融合体(RET−PTC)による活性化を介して甲状腺乳頭癌及び甲状腺濾胞癌において発癌性の役割を有する、よく知られているRTKである。その腫瘍がこの融合体を持つ患者は、VEGFR、EGFR及びRETを標的とする経口TKIであるバンデタニブに対してよく応答する。全部で33名の患者が、7つの異なる切断点を伴うKIF5B−RET融合体を持つことが報告された。これらの分子再編成は2000を超える肺腺癌をスクリーニングするのに使用された複数の技術を介して同定された。3つのより大きいスクリーニングされた系列において、おそらく事前選択のレベルがより低いことにより、KIF5B−RET融合体の頻度は、1%〜2%の範囲であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この分野において、肺がんのより有効な検出及び治療を促す、発癌性融合体マーカーを含む更なる分子マーカーを同定する必要性が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肺がんを示し、かつ、どの患者がチロシンキナーゼ阻害剤の治療的投与を含むがん療法に対して応答することができるかも示す、NTRK1遺伝子を含む新規な遺伝子融合体の発見に基づく。
【0007】
したがって、1つの実施の形態において、本発明は、肺がん患者が化学療法計画(chemotherapeutic regimen)の実施に対して応答すると予測されるかどうかを決定する方法を含む。この方法は、患者からの腫瘍細胞のサンプルにおいて、マーカーの存在又は非存在を検出することを含み、ここで、このマーカーは、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体(NTRK1はTRKAタンパク質をコードする)を含む遺伝子融合体を含むものであり、ここで、マーカーの存在又は非存在は、がん患者が化学療法計画の実施に対して応答するかどうかを示すものである。
【0008】
様々な実施の形態において、化学療法計画は、チロシンキナーゼ阻害剤、HSP90阻害剤(又はその他のシャペロン阻害剤)、チロシンキナーゼ下流シグナル伝達カスケードを標的とする阻害剤、又はそれらの組合せの1又は複数の投与を含むものとすることができる。かかる阻害剤は当該技術分野においてよく知られており、市販されている。これらすべての阻害剤が本発明に包含される。例えば、いくつかの実施の形態において、チロシンキナーゼ阻害剤はTrkA阻害剤とすることができ、TrkA阻害剤の例としては、これらに限定されないが、クリゾチニブ(PF−02340166)、ポナチニブ(AP24534)、ドビチニブ(dovitinib)(TK−258)、CEP−701、又はレバスチニブ(rebastinib)(DCC−2036)が挙げられる。HSP90阻害剤の例としては、これらに限定されないが、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、17−AAG、PU24FC1、STA−9090、IPI−504、及びAUY−922が挙げられる。チロシンキナーゼ受容体の下流シグナル伝達カスケードを標的とする阻害剤の例としては、限定されないが、セルメチニブ(AZD6244)及びMK2206が挙げられる。
【0009】
いくつかの実施の形態において、マーカーのレベルが決定され、標準レベル又は基準範囲と比較される。いくつかの実施の形態において、標準レベル又は基準範囲は、リスク予測についての統計学的手法によって決定される。
【0010】
いくつかの実施の形態において、マーカーの存在は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの存在を検出することにより、決定することができる。いくつかの実施の形態において、本方法は、ポリペプチド又はその断片に特異的に結合する試薬を用いてポリペプチドの存在を検出することを含むことができる。試薬は、抗体、抗体誘導体、又は抗体断片とすることができる。
【0011】
いくつかの実施の形態において、マーカーの存在は、サンプルからRNAを得ることと、RNAからcDNAを作製することと、マーカーに特異的なプライマーによりcDNAを増幅することと、増幅されたcDNAの配列からサンプルにおけるマーカーの存在又は非存在を決定することとによって、決定することができる。いくつかの実施の形態において、マーカーの存在は、蛍光In Situハイブリダイゼーション法(FISH)により決定することができる。
【0012】
本発明の方法は、a)サンプルにおけるマーカーの発現レベルと、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する有益な応答と関連付けられたマーカーの
対照レベル、及び、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する有益な応答の欠如と関連付けられたマーカーの対照レベルからなる群から選択されるマーカーの対照レベルとを比較することと、b)サンプルにおけるマーカーの発現レベルが、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する感受性と関連付けられたマーカーの発現の対照レベルと統計的に同様若しくは対照レベルより統計的に高い場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対して応答すると予測されるものとして上記患者を選択すること、又は、c)サンプルにおけるマーカーのレベルが、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する有益な応答と関連付けられたマーカーの対照レベルより統計的に低い場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に応答しないと予測されるものとして上記患者を選択することとを更に含むことができる。
【0013】
いくつかの実施の形態において、本方法は、サンプルにおけるマーカーの発現レベルと、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対して応答しないと予測される第2の患者におけるマーカーのレベルとを比較することと、サンプルにおけるマーカーの発現レベルが、第2の患者におけるマーカーの発現のレベルより高い場合に、1若しくは又は複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対して応答すると予測されるものとして上記患者を選択すること、又は、サンプルにおけるマーカーのレベルが、第2の患者におけるマーカーの発現のレベル以下である場合に、1若しくは複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対して応答しないと予測されるものとして上記患者を選択することとを更に含むことができる。いくつかの実施の形態において、患者はヒトである。
【0014】
更なる実施形態において、本発明は、チロシンキナーゼ抗がん療法に対する患者の応答又は転帰を予測するアッセイシステムであって、a)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体を含む遺伝子融合体の存在、b)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の発現のレベル、c)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質の存在、d)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質のレベル、及び、e)NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるタンパク質の活性の少なくとも1つを検出する手段を含む、チロシンキナーゼ抗がん療法に対する患者の応答又は転帰を予測するアッセイシステムを含む。いくつかの実施の形態において、検出する手段は、NTRK1遺伝子の少なくとも10〜50個の連続核酸塩基、又はその相補的核酸配列を含む核酸プローブを含む。いくつかの実施の形態において、検出する手段は、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされるポリペプチドを特異的に検出する結合リガンドを含む。いくつかの実施の形態において、アッセイシステムの表面は、チップ、アレイ、又は流動性カード(fluidity card)を備えている。いくつかの実施の形態において、アッセイシステムは、1又は複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する応答と関連付けられた、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の予め決定された対照レベルを含有する情報、及び1又は複数のキナーゼ阻害剤を含む化学療法計画の実施に対する応答の欠如と関連付けられた、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体によりコードされる遺伝子転写産物の予め決定された対照レベルを含有する情報からなる群から選択される対照を更に含む。
【0015】
別の実施の形態において、本発明は、対象における特定のタイプの肺がんを診断する方法を含み、この方法は、対象からの細胞のサンプルにおいて、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーの存在を検出することを含み、ここで、マーカーの存在は、対象が特定のタイプの肺がんを有するかどうかを示す。いくつかの実施の形態において、遺伝子融合体マーカーの存在は、RT−PCR又はFISHにより検出される。いくつかの実施の形態において、遺伝子融合体マーカーの存在は、遺伝子融合体マーカーによりコードされるポリペプチドを検出することにより検出される。いくつかの実施の形態において、ポリ
ペプチドは、ポリペプチド又はその断片に特異的に結合する試薬を用いて検出される。
【0016】
本発明のその他の特徴及び利点は以下の詳細な説明から当業者に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】MPRIP遺伝子の染色体マップ及びエクソンマップを示す。
図2】NTRK1遺伝子の染色体マップ及びエクソンマップを示す。
図3A】肺がんサンプルにおけるNTRK1遺伝子融合体の配置及び肺がんサンプルにおけるNTRK1遺伝子融合体を確認するデータを示す。NTRK1−MPRIPを持つ腫瘍サンプルからのゲノム再編成の模式図である。
図3B】肺がんサンプルにおけるNTRK1遺伝子融合体の配置及び肺がんサンプルにおけるNTRK1遺伝子融合体を確認するデータを示す。新規な融合体転写産物のmRNA発現を実証するRT−PCRを示す。NTRK1−MPRIPを持つホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍サンプルから抽出したRNAをRT−PCR、次いでアガロースゲル電気泳動及びDNAシークエンシングに供した。以下の略語が使用される:MPRIP(M)、CD74(C)、NTRK1(N)、及びエクソン(ex)。NTRK1−MPRIP融合体を有する腫瘍サンプルから単離したRNAのRT−PCR産物のサンガーシークエンシングクロマトグラムを得た。配列番号1はNTRK1−MPRIP融合体(M21;N14)の完全なcDNA配列である。cDNAをこの融合体が最初に同定された患者からの凍結腫瘍サンプルからクローニングした。大文字はオープンリーディングフレーム内に含有されるヌクレオチドを表す。
図4A】NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の検出のためのRT−PCRプライマーリード配列を示す。MPRIP CC3F1プライマーによるフォワードリード配列を示す。
図4B】NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の検出のためのRT−PCRプライマーリード配列を示す。NTRK1 Y490R1プライマーによるリバースリード配列を示す。
図5】NTRK1−MPRIP融合体FISHプローブの設計を示す。
図6】染色体1q23.1のNTRK1コード領域に対して整列された5’→3’NTRK1ブレイクアパートFISHプローブセットの設計を示す。
図7】NTRK1−MPRIP遺伝子融合体プローブを用いて正常細胞株GM09948から得られたFISH画像を示し、正常細胞株(二倍体、2N)における単一クローン確証を提供する。図7A:クローンRP11−1038N13(3’NTRK1)及びRP11−125116(5’MPRIP)。図7B:クローンRP11−1059C21(3’NTRK1)及びRp11−796J19(5’MPRIP)。
図8】NTRK1−MPRIP遺伝子融合体プローブを用いてNTRK1−MPRIP遺伝子融合体について陰性である組織切片から得られたFISH画像を示す。図8Aは、両方の遺伝子についての低コピー数を示す、検体S−12−047486を示す。図8Bは、3’NTRK1についての高コピー数及び5’MPRIPについての中程度/低コピー数を示す、検体S−12−047098を示す。
図9】NTRK1−MPRIP遺伝子融合体プローブを用いてNTRK1−MPRIP遺伝子融合体について陽性である組織切片から得られたFISH画像を示す。図9Aは、1つの腫瘍細胞あたりおよそ1つの赤色/緑色融合(陽性パターン)を有する両方の遺伝子についての低コピー数を示す。図9Bは、1つの腫瘍細胞あたり単一の赤色及び単一の緑色の中程度/低コピー数を有する融合した(fused)赤色/緑色の遺伝子増幅を示す。
図10】NTRK1ブレイクアパートFISHプローブの試験を示す。図10aは、中期スプレッド及び間期核を示す正常核型を有する細胞株GM09948を示し、インタクトなNTRK1遺伝子を示す5’シグナルと3’シグナルとの近接を実証している。図10bは、5’シグナルと3’シグナルとの明白な分離を示す、TPM3−NTRK1遺伝子融合体を持つKM12細胞を示し、NTRK1遺伝子の再編成を示している。図10cは、NTRK1遺伝子に対応する5’シグナルと3’シグナルとの明白な分離を示す、NTRK1−MPRIPサンプルのブレイクアパートFISH分析を示す。図10dは、NTRK1遺伝子再編成を有さない腫瘍サンプルのブレイクアパートFISH分析を示し、緑色/赤色シグナルの接近を示している(矢印により示される)。
図11】NTRK1ブレイクアパートプローブを用いてNTRK1遺伝子再編成について陽性である組織切片から得られたFISH画像を示す。5’NTRK1/3’NTRK1ブレイクアパートプローブセットとハイブリダイズした検体S12−6889B1。細胞は開裂(split)の「陽性」パターンと融合したシグナルの「正常」パターンとの両方を示す。
図12A】TRKAを発現する293T細胞からの細胞溶解液のイムノブロット分析を示す。TRKA(HAタグ付き)又は空ベクターの発現は、HA特異的抗体(左側、Cell Signaling)及びTRKA特異的抗体(右側、Santa Cruz、SC−118)によって検出された約115kD〜120kDのタンパク質の発現を実証する。
図12B】TRKAを発現する293T細胞からの細胞溶解液のイムノブロット分析を示す。1μΜの示された阻害剤若しくはDMSO(対照)による5時間の処理後の、HA特異的抗体(Cell Signaling)を用いる免疫沈降、次いで同抗体(左側)又はホスホチロシン特異的抗体(右側、Miilipore、4G10)を用いるイムノブロット。
図12C】NTRK1−MPRIPの発現が、自己リン酸化されるキメラタンパク質を生じることを示す。NTRK1−MPRIP融合遺伝子を有する指標患者からの、凍結胸水サンプルからの腫瘍細胞又は培養物中の初期継代細胞(CUTO−3)と比較した、空ベクター(EV)、全長NTRK1 cDNA、NTRK1−MPRIP cDNAにより一過性にトランスフェクトされた293T細胞のイムノブロット分析。
図12D】予測される融合体タンパク質産物の融合体切断点及び重要なドメインを実証する模式図である。
図13A】チロシンキナーゼ阻害剤による処理後のTRKAの下流シグナル伝達のイムノブロット分析を示す。NGF(10分間)の存在下若しくは非存在下、1μΜの示されたチロシンキナーゼ阻害剤の5時間の存在下若しくは非存在下で、TRKA−HA又は空ベクターを発現させた293T細胞溶解液のSDS−PAGE。膜を、TRKAホスホチロシン490、674、及び675(Cell Signaling)、全TRKA(抗HA、Cell Signaling)、AKTホスホセリン473(Cell Signaling)、全AKT(Cell Signaling)、リン酸化ERK p42/44(Cell Signaling)、全ERK p42/44(Cell Signaling)、並びにガンマ−チューブリン(Santa Cruz、SC−8035)に対する抗体でプローブした。
図13B】NTRK1−MPRIPの発現は、下流のMAPK、AKT、及びSTAT3経路の活性化を誘導することを示す。TRKA(NTRK1)融合体は自己リン酸化されて重要な下流のシグナル伝達経路を活性化する。NTRK1−MPRIPのタンパク質産物であるがそのキナーゼ活性欠損(kinase dead)(KD)変異体ではないRIP−TRKAを発現するBa/F3細胞からの細胞溶解液の代表的なイムノブロット分析(n=3)は、IL−3の非存在下で重要なチロシン残基のリン酸化並びにpAKT、pERK及びpSTAT3の活性化を示す。
図14】NTRK1遺伝子融合体はIL−3の非存在下でBa/F3細胞の細胞増殖を支持することを実証する。Ba/F3のMTSアッセイは、RIP−TRKA、CD74−TRKA、EML4−ALK、又はNGFを追加した全長TRKAを発現する細胞はIL−3の非存在下で増殖し、一方EV又はRIP−TRKAのキナーゼ活性欠損変異体を発現するBa/F3細胞は増殖しないことを実証する(n=3)。値は平均±SEMである。
図15】NTRK1融合体は足場非依存性増殖を支持することを実証する。軟寒天中でEV、RIP−TRKA−キナーゼ活性欠損(KD)、又はRIP−TRKAを発現するNIH3T3細胞の足場非依存性増殖アッセイからの代表的な画像(n=4)である。
図16】NTRK1−MPRIP融合タンパク質は腫瘍発生を誘導することを示す。NTRK1−MPRIP(「RIP−TRKA」)、NTRK1−MPRIPキナーゼ活性欠損(「RIP−TRKA−キナーゼ活性欠損」)、EML4−ALK又は空ベクターを発現するNIH3T3細胞をヌードマウスの側腹部に注射し、腫瘍増殖について観察した。注射を受けた全マウス数と比較した腫瘍を有するマウスの数を示す。
図17】NTRK1のRNAiノックダウンはTPM3−NTRK1を持つ細胞株における細胞増殖を阻害することを示す。KM12細胞をsiRNAトランスフェクションの96時間後にMTS増殖アッセイによって分析した(n=3)。ANOVA分析、次いで、ボンフェローニの多重比較検定は、siRNA1により誘導される増殖の有意な阻害を示した(p<0.05)。値は平均±SEMを表す。KM12細胞を、NTRK1を標的とするsiRNAによりトランスフェクトし、次いで48時間後に収集した。細胞溶解液をイムノブロットにより分析し、TRKA、pERK1/2及びERK1/2を検出した。
図18】TRKA及び下流シグナル伝達の活性化の薬物阻害を示す。NTRK1−MPRIP(RIP−TRKA)又は空ベクター(EV)を発現するBa/F3細胞を、示された用量の薬物(ARRY−470、クリゾチニブ、CEP−701、ARRY−772、又はARRY−523)又はDMSO対照(C)による5時間の処理後に溶解した。
図19】薬物処理はNTRK1融合体に媒介されるBa/F3細胞増殖を阻害することを示し、指標患者のクリゾチニブによる処理を示す。NTRK1融合体を発現するBa/F3細胞のTRKA阻害剤による処理は、MTSアッセイにより測定した細胞増殖を阻害する(n=5)。図19(a):値は平均±SEMを表す。NTRK1−MPRIPを発現するBa/F3細胞は、汎(pan)TRK阻害剤である、ARRY−470、−523、及び−772並びに多標的キナーゼ阻害剤である、CEP−701によって増殖は阻害されるが、EGFR阻害剤であるゲフィチニブによっては、増殖は阻害されないことを実証する。図19(b):クリゾチニブは、ALK又はROS1融合体コンストラクトを発現するBa/F3細胞と同様に、NTRK1融合体を発現するBa/F3の阻害を導く。半数阻害濃度(IC50)値が列挙される(nM)。
図20】IL−3の存在下でのBa/F3細胞の薬物処理を示す。空ベクターを発現するBa/F3細胞をIL−3の存在下で培養し、広範な用量の、ARRY−470、CEP−701、クリゾチニブ、又はゲフィチニブにより処理した。IC50値が列挙される(n=3)。値は平均±SEMを表す。
図21】NIH3T3細胞におけるNTRK1融合体の発現及び薬物阻害を示す。RIP−TRKAを発現するNIH3T3細胞を示された用量の薬物で5時間処理した後、細胞溶解と、pTRKA、TRKA、pAKT、AKT、pERK1/2、ERK1/2、pSTAT3、及びSTAT3のイムノブロット分析とを示されたように行った。
図22】TRKA活性を有する薬物による足場非依存性増殖の阻害を示す。図22a:空RIP−TRKAを発現するNIH3T3細胞を3連で軟寒天に播種し、DMSO(対照)又は200nMの、ARRY−470、クリゾチニブ、若しくはCEP−701により2週間処理した(n=4)。代表的な画像を示す。図22b:各プレートについての全コロニー面積を、MetaMorphソフトウェアを用いて定量し、各条件についてプロットした。値は平均±SEMを表す。
図23】NTRK1−MPRIP融合体を示す指標患者からの短期細胞培養物を示す。コロラド大学胸部腫瘍学(Colorado University Thoracic Oncology)(CUTO)3細胞はNTRK1−MPRIP遺伝子融合体を持つ指標患者からの胸水に由来するものであった。左側:陽性シグナル(開裂緑色/赤色シグナル)を示すCUTO−3細胞のNTRK1 FISH分析。右側:汎TRK阻害剤であるARRY−470による、pTRKA及びpERKの阻害を実証するCUTO−3細胞のイムノブロット分析。
図24】KM12細胞の薬物処理を示す。TPM3−NTRK1融合体を持つKM12細胞を、示された用量の阻害剤による5時間の処理の後に溶解し、イムノブロット分析に供した(n=3)。
図25】KM12細胞の薬物処理は増殖を阻害することを示す。示された薬物及び用量により処理されたKM12細胞の増殖を、MTSアッセイにより細胞増殖についてアッセイした。KM12細胞は、ARRY−470、CEP−701、及びクリゾチニブによって阻害されるが、ゲフィチニブによっては阻害されない。
図26】TRKA阻害の結果、KM12細胞のG1期における蓄積がもたらされることを示す。KM12細胞を示された用量の薬物により24時間処理した。細胞を次いでヨウ化プロピジウムにより染色し、フローサイトメトリーにより分析した。ModFit分析を用いて細胞周期プロファイルを定量した(n=3)。値は平均±SEMである。
図27A】TRKA阻害剤による薬物処理は、KM12細胞におけるアポトーシスを誘導することを示す。KM12細胞を示された薬物及び用量で24時間処理し、トリプシン処理し、YO−PRO(商標)及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。アポトーシスを起こしている細胞(YO−PRO(商標)陽性及びPI陰性)のパーセントをプロットしている(n=4)。値は平均±SEMを表す。
図27B】TRKA阻害剤による薬物処理は、KM12細胞におけるアポトーシスを誘導することを示す。TRKA阻害剤はPARP−1の切断を誘導する。KM12細胞を示された薬物及び用量で24時間処理した。細胞を溶解し、SDS−PAGEにより分離し、示された抗体を用いるイムノブロット分析に供した。
図28】肺腺癌を実証する、NTRK1−MPRIPを持つ指標患者からの病理組織学を示す。図28(a):腺がんを示す原発性肺左下肺腫瘤のコア針生検材料。図28(b):腫瘍細胞を示す、同じ手順からの細針吸引液の細胞塊。図28(c):腫瘍細胞における強い核染色を実証するTTF−1免疫組織化学(IHC)。図28(d):腫瘍細胞における陰性染色を実証する、サイログロブリンIHC。代表的な画像を示す。
図29A】その他の治療選択肢がなく、指標患者(NTRK1−MPRIP)がクリゾチニブ250mgの1日2回経口投与(オフプロトコル(off-protocol)、オフラベル)による治療に同意した場合の治療の結果を示す。クリゾチニブの前及び28日後の胸部のCTスキャン。
図29B】その他の治療選択肢がなく、指標患者(NTRK1−MPRIP)がクリゾチニブ250mgの1日2回経口投与(オフプロトコル、オフラベル)による治療に同意した場合の治療の結果を示す。クリゾチニブ治療の間の連続的CA125腫瘍マーカーレベル。
図30】典型的な円形でコンパクトなシグナルである、シグナル配置「ドット」と、その他のシグナルとの比較とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、MPRIP遺伝子とNTRK1遺伝子との融合体が特定のタイプの肺がんの存在を示すことを見出した。この遺伝子融合体はまた、チロシンキナーゼ阻害剤による治療に対する患者の臨床応答も示す。この遺伝子融合体、及びこの遺伝子融合体によりコードされるタンパク質のレベルは、臨床パラメーターとともに、特定のタイプの肺がんを診断し、チロシンキナーゼ阻害剤による治療に対するがん患者の応答を評価する、生物学的マーカーとして使用することができる。
【0019】
1つの定義によると、生物学的マーカーは、「正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、又は治療介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定及び評価される特徴」である(NIH Marker Definitions Working Group (1998))。生物学的マーカーはまた、特定の生物学的プロセスを示す特徴のパターン又はアンサンブル(「マーカーのパネル」)も含むことができる。マーカー測定値は、特定の生物学的現象若しくはプロセスを示すために、上昇するものである場合もあり、又は低下するものである場合もある。さらに、
マーカー測定値が特定の生物学的プロセスの非存在下で典型的に変化する場合、一定の測定値が、その生物学的プロセスの出現を示すこともある。
【0020】
マーカー測定値は、絶対値のものである場合もあり(例えば、生物サンプル中の或る分子のモル濃度)、又は相対値のものである場合もある(例えば、生物サンプル中の2種類の分子の相対濃度)。2以上の測定値の商又は積もまた、マーカーとして使用することができる。例えば、冠動脈疾患を発症するリスクのマーカーとして血中総コレステロールを使用する医師もいるが、一方、冠動脈疾患を発症するリスクのマーカーとして総コレステロールとHDLコレステロールとの比を使用する医師もいる。
【0021】
本発明において、マーカーは、診断目的、予後診断目的、治療目的、薬物スクリーニング目的及び患者層別化(例えば、評価についての多数の「サブセット」に患者をグループ化する)目的、並びに、潜在的がん療法の有効性の評価を含む本明細書に記載するその他の目的のために、使用することができる。
【0022】
本発明の実施には、特に断りのない限り、当該技術分野の技術範囲内の一般に既知の技法である、分析生化学、微生物学、分子生物学及び組換えDNAの従来の方法を用いる。かかる技法は文献に十分に説明されている(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2000; DNA Cloning: A Practical Approach, Vol. I & II (Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis (Gait, ed., Current Edition); Nucleic Acid Hybridization (Hames & Higgins, eds., Current Edition); Transcription and Translation (Hames & Higgins, eds., Current Edition); CRC Handbook of Parvoviruses, Vol. I & II (Tijessen, ed.); Fundamental Virology, 2nd Edition, Vol. I & II (Fields and Knipe, eds.)を参照されたい)。
【0023】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであり、限定する意図のものではない。本明細書において使用される場合、単数形である「或る」、「1つの」及び「その」は、内容及び文脈が明らかに別のことを示さない限り複数の指示物を含む。したがって、例えば、「或るマーカー」についての言及は、2以上のかかるマーカーの組合せを含む。別のように定義されない限り、すべての科学用語及び技術用語はそれらの用語が属する技術分野において一般に使用されている意味と同じ意味を有すると理解すべきである。本発明の目的のために、以下の用語が以下に定義される。
【0024】
本明細書において使用される場合、「マーカー」という用語は、ポリペプチドマーカー及びポリヌクレオチドマーカーを含む。開示の明確性のために、本発明の態様は、「ポリペプチドマーカー」及び「ポリヌクレオチドマーカー」に関して記載する。しかしながら、「ポリペプチドマーカー」に関して本明細書においてなされる記載は、本発明のその他のポリペプチドにも適用する意図である。同様に、「ポリヌクレオチド」マーカーに関して本明細書においてなされる記載はそれぞれ本発明のその他のポリヌクレオチドにも適用する意図である。したがって、例えば、「ポリペプチドマーカー」をコードするとして記載されるポリヌクレオチドは、ポリペプチドマーカー、ポリペプチドマーカーに対してかなりの配列同一性を有するポリペプチド、修飾ポリペプチドマーカー、ポリペプチドマーカーの断片、ポリペプチドマーカーの前駆体及びポリペプチドマーカーの後続体(successors)、並びにポリペプチドマーカー、相同ポリペプチド、修飾ポリペプチドマーカー又は断片、ポリペプチドマーカーの前駆体又は後続体を含む分子(例えば、融合タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む意図である。
【0025】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、少なくとも5つの連続アミノ酸残基、例えば、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長
、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長又は12以上のアミノ酸長を有し、各整数からポリペプチドの全長までを含むアミノ酸残基のポリマーのことをいう。ポリペプチドは2以上のポリペプチド鎖から構成されるものとすることができる。ポリペプチドは、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、及びアミノ酸を含む。ポリペプチドは、直鎖状又は分枝状のものとすることができる。ポリペプチドは、修飾アミノ酸残基、アミノ酸類似体又は非天然アミノ酸残基を含むことができ、非アミノ酸残基によって中断されたものとすることもできる。天然に、又は介入、例えば、ジスルフィド結合の形成、糖鎖付加、脂質付加、メチル化、アセチル化、リン酸化によって、又は、標識化成分との接合等の操作によって、修飾されたアミノ酸ポリマーが定義に含まれる。過剰発現されたポリペプチドマーカーに応答して対象によって産生された抗体もまた含まれる。
【0026】
本明細書において使用される場合、ポリペプチドの「断片」とは、1つのアミノ酸又はポリペプチドの配列の少なくとも5つの連続アミノ酸残基、少なくとも10の連続アミノ酸残基、少なくとも20の連続アミノ酸残基若しくは少なくとも30の連続アミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む複数のアミノ酸残基のことをいう。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドの「断片」とは、1つの核酸又はポリヌクレオチドの配列の少なくとも15の連続核酸残基、少なくとも30の連続核酸残基、少なくとも60の連続核酸残基、若しくは少なくとも90%を有する核酸配列を含む核酸残基のポリマーのことをいう。いくつかの実施形態において、断片は抗原性断片であり、断片のサイズは、抗体によって認識されるエピトープが直鎖状エピトープであるか又は立体構造エピトープであるか等の因子に依存するであろう。したがって、抗原性断片によっては、より長いセグメントからなるものもあるであろうし、一方、より短いセグメント(例えば、各整数からポリペプチドの全長までを含む、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長又は12以上のアミノ酸長)からなるものもあるであろう。当業者であればタンパク質の抗原性断片を選択する方法に十分に精通している。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドマーカーは生物学的経路の成員である。本明細書において使用される場合、「前駆体」又は「後続体」という用語は、生物学的経路においてポリペプチドマーカー又はポリヌクレオチドマーカーの先にある、又は後にある分子のことをいう。したがって、いったんポリペプチドマーカー又はポリヌクレオチドマーカーが、1若しくは複数の生物学的経路の成員であるとして同定されると、本発明は、生物学的経路の更なる前駆体成員又は後続体成員を含むことができる。生物学的経路及びその成員のかかる同定は、当業者の技術範囲内である。
【0028】
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、1つのヌクレオチド又はあらゆる長さの核酸残基のポリマーのことをいう。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又はそれらの類似体を含有することができ、二本鎖若しくは一本鎖とすることができる。ポリヌクレオチドは、修飾核酸(例えば、メチル化)、核酸類似体又は非天然核酸を含むことができ、非核酸残基によって中断されたものとすることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、あらゆる配列の、遺伝子、遺伝子断片、cDNA、単離されたDNA、mRNA、tRNA、rRNA、単離されたRNA、組換えポリヌクレオチド、プライマー、プローブ、プラスミド、及びベクターを含む。天然に、又は介入によって、修飾された核酸ポリマーも定義に含まれる。
【0029】
本明細書において使用される場合、2つのサンプルに適用された場合に、成分を検出するのに用いられた方法が異なるレベル又は活性を提供する場合に、成分(例えば、マーカー)は、別のサンプルと比較して1つのサンプルにおいて「示差的に発現されている」といわれる。成分を検出する方法が、成分のレベル若しくは活性が第1のサンプルにおけるほうが第2のサンプルにおけるよりも高いことを示す場合に(又は成分が第1のサンプル
において検出可能であるが、第2のサンプルにおいては検出可能でない場合)、成分は第1のサンプルにおいて「上昇」しているといわれる。逆に、成分を検出する方法が、成分のレベル若しくは活性が第1のサンプルにおけるほうが第2のサンプルにおけるよりも低いことを示す場合に(又は成分が第2のサンプルにおいて検出可能であるが、第1のサンプルにおいては検出可能でない場合)、成分は第1のサンプルにおいて「低下」しているといわれる。特に、マーカーのレベル若しくは活性が、非肺がん対象から得たサンプル(又はサンプルのセット)におけるマーカーのレベル、又は基準値若しくは基準範囲と比較して、それぞれより高い、又はより低い場合に、肺がん対象(又は肺がんを有すると疑われる対象、若しくは肺がんを発症するリスクがある対象)から得たサンプル(又はサンプルのセット)において、マーカーは「上昇」又は「低下」しているといわれる。
【0030】
本発明の新規な遺伝子融合体マーカーは以下のようにして同定された:癌遺伝子ドライバー遺伝子異常の存在を、肺腺癌を有する非喫煙者である患者において調査した。この患者は肺がんと関連する既知の突然変異、遺伝子増幅又は遺伝子融合体の証拠を示さなかった。その他の可能性のある遺伝子標的を探究するために、腫瘍生検サンプルからのゲノムDNAを標的化次世代シークエンシングにより分析し、これにより新規なNTRK1遺伝子融合体の存在を同定した。遺伝子融合体マーカーをNTRK1−MPRIP遺伝子融合体であると決定した。
【0031】
NTRK1遺伝子はTRKA受容体型チロシンキナーゼをコードする。NTRK1遺伝子を、ヒト、チンパンジー、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ及びゼブラフィッシュ等の多数の種から単離し、配列を決定した。これらすべての遺伝子配列は当業者に知られており、本発明に包含されることが意図される。NTRK1が関与する遺伝子融合体は甲状腺乳頭癌において以前に報告されているが、肺がん又はその他の悪性腫瘍においては報告されていない。
【0032】
MPRIP遺伝子はミオシンホスファターゼRho相互作用タンパク質をコードする。MPRIP遺伝子は、ヒト、チンパンジー、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ及びシノラブダイティス・エレガンス(C. elegans:線虫)等の多数の種から単離され、配列が決定されている。これらすべての遺伝子配列は当業者に知られており、本発明に包含されることが意図される。
【0033】
本発明は、あらゆる悪性腫瘍においてNTRK1−MPRIP遺伝子融合体を同定する最初の例であると考えられる。新規なプライマーを含む特別注文RT−PCRアッセイを、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体のmRNA転写産物を検出するために開発した。このRT−PCRでは、MPRIPとNTRK1との両方からの配列を含有する小さな産物を増幅することに成功し、MPRIPのエクソン1〜21及びNTRK1のエクソン14〜20を含んでいた新規な遺伝子融合体の発現が確認された(実施例1を参照されたい)。新規なFISHアッセイもまた、臨床検体においてNTRK1−MPRIP遺伝子融合体の存在を検出するために開発した(実施例2及び3を参照されたい)。
【0034】
さらに、その特定の5’遺伝子融合体パートナーにかかわらず、その他のNTRK1遺伝子融合体を検出するFISHプローブもまた開発した(実施例2及び4を参照されたい)。
【0035】
本明細書において同定されたマーカーは生物学的に大変興味深い。NTRK1が関与する遺伝子融合体は甲状腺乳頭癌において以前に報告されているが、肺がん又はその他の悪性腫瘍においては報告されていない。したがってNTRK1融合遺伝子は、がんの新規な診断マーカーとして役立つ。NTRK1遺伝子はTRKA受容体型チロシンキナーゼをコードする。この遺伝子融合体の存在を、肺がん及び結腸直腸がんを含む様々ながんモデル
から得た腫瘍サンプルにおいて調べ、腫瘍のチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を調査した。目的は、この遺伝子融合体マーカーを、チロシンキナーゼ阻害剤治療に対するがん患者の応答の臨床的に関連するマーカーを同定するために使用することであった。使用した方法は本開示の実施例のセクションに詳細に記載されている。限定されないが、クリゾチニブ、ポナチニブ、ドビチニブ、レバスチニブ、CEP−701、AZD−7451、ARRY−470、ARRY−523、及びARRY−772並びに当該技術分野において既知のTRKAを阻害すると予測されるその他のチロシンキナーゼ阻害剤化合物、又はNTRK1融合タンパク質等のTRKAキナーゼドメインを含有する発癌性融合体タンパク質を含むいくつかのチロシンキナーゼ阻害剤が現在臨床開発の様々な段階にある。実施例5に示すデータは低分子チロシンキナーゼ阻害剤が活性化されたTRKAを阻害することを実証する。
【0036】
がんの診断、予後診断、又はその他の評価若しくは研究に使用することができるNTRK1遺伝子融合体マーカーの発見に加えて、このマーカーはまた、更に詳細に研究することができ、及び/又は、その他の疾患の修飾薬若しくは治療薬の発見のための標的として使用することができる。
【0037】
NTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーを含むNTRK1遺伝子融合体マーカーは、チロシンキナーゼ阻害剤に対するがん患者の応答の指標であると考えられる。したがって、1つの態様において、本発明は、マーカーの存在又は発現レベルがチロシンキナーゼ阻害剤に対するがん患者の応答を示すマーカーを提供する。
【0038】
別の態様において、本発明の遺伝子融合体マーカーは、HSP90阻害剤(又はその他のシャペロン阻害剤)又は下流シグナル伝達カスケードを標的とする作用剤の投与等のその他の標的化がん療法に対するがん患者の応答の指標として役立つことができる。かかる阻害剤は当該技術分野においてよく知られており、市販されている。かかる阻害剤のすべてが本発明に包含される。HSP90阻害剤の例としては、限定されないが、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、17−AAG、PU24FCl、STA−9090、IPI−504、及びAUY−922が挙げられる。下流シグナル伝達カスケードを標的とする作用剤の例としては、セルメチニブ(AZD−6244)及びMK2206が挙げられる。
【0039】
マーカーの存在は、ポリヌクレオチドを検出することによって検出することができる。1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、NTRK1遺伝子配列に特異的にハイブリダイズし、NTRK1遺伝子が関与する染色体再編成を同定するプローブとすることができる。別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーを含む、NTRK1遺伝子が関与する遺伝子融合体の存在を示すポリヌクレオチド配列に特異的に結合し、かかる配列を増幅するプライマーとすることができる。
【0040】
いくらかの変動が本発明のマーカーの物理的及び化学的特徴の測定に固有である。変動の大きさは、分離手段の再現性並びに測定を行うために用いる検出手段の特異性及び感受性に或る程度依存する。マーカーを測定するために使用する方法及び技法は高感度かつ再現性のあるものが好ましい。
【0041】
遺伝子融合体マーカーの存在はまた、ポリヌクレオチドを検出することによっても検出することができる。NTRK1遺伝子融合体マーカーに対応するポリペプチドは、NTRK1遺伝子融合体マーカーによりコードされるタンパク質の、断片、前駆体、後続体又は修飾型を含むことができる。別の実施形態において、本発明は、NTRK1遺伝子融合体マーカーによりコードされる、断片、前駆体、後続体又は修飾ポリペプチドを含む分子を含む。
【0042】
本発明の別の実施形態は、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーの発現の検出のための、複数の抗体、又はその抗原結合断片、又はアプタマーを含むアッセイシステムに関する。複数の抗体、又はその抗原結合断片、又はアプタマーは、NTRK1遺伝子融合体マーカーによりコードされるタンパク質に選択的に結合する。
【0043】
本明細書において使用される場合、「患者」、「対象」、「がんを有する対象」及び「がん患者」という用語は、がんを有すると診断された対象又はがんを有すると疑われる対象のことをいう意図である。「非対象」及び「がんを有さない対象」という用語は、がんであると診断されたことのない対象、又は1若しくは複数の腫瘍を切除する手術の結果、がんを有さなくなった対象のことをいう意図である。非がん対象は、健康であってその他の疾患を患っていないものであってもよく、又はがん以外の疾患を患うものであってもよい。NTRK1遺伝子は、チンパンジー、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、及びゼブラフィッシュ等の多数の種において保存されていることが判明し、それらの配列は既知である。いくつかの実施形態において、患者又は対象は哺乳類とすることができる。好ましい実施形態において、患者又は対象はヒトである。
【0044】
NTRK1遺伝子融合体によりコードされるポリペプチドは、当該技術分野において既知のいずれかの好適な方法によって単離することができる。NTRK1遺伝子融合体によりコードされるネイティブなポリペプチドは、当該技術分野において既知の標準的方法(例えば、クロマトグラフィー、遠心分離、溶解度差(differential solubility)、イムノアッセイ)により天然源から精製することができる。1つの実施形態において、ポリペプチドは腫瘍サンプルから単離することができる。別の実施形態において、ポリペプチドは、サンプルとマーカーに特異的に結合する基体結合抗体又はアプタマーとを接触させることによりサンプルから単離することができる。
【0045】
本発明はまた、本発明の遺伝子融合体マーカーに関連するポリヌクレオチドも含む。1つの態様において、本発明は、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーを含むポリヌクレオチドを提供する。これらはポリヌクレオチドマーカーと称することができる。ポリヌクレオチドマーカーは、ゲノムDNA、cDNA、又はmRNA転写産物とすることができる。別の実施形態において、本発明は、NTRK1−遺伝子融合体マーカーを含む、NTRK1遺伝子融合体マーカー又はその変異体を含むポリヌクレオチドに対してかなりの配列類似性を有するポリヌクレオチドを提供する。
【0046】
いくつかの実施形態において、NTRK1遺伝子融合体マーカーによりコードされるポリペプチド、即ち、ポリペプチドマーカーは、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体の代替マーカーとして使用することができる。したがって、例えば、NTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーによりコードされるポリペプチドががん患者中に存在する場合、(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤に対して応答すると期待されるがん患者を同定するために)ポリペプチドの存在又はレベル又は活性を調べることができる。
【0047】
遺伝子融合体マーカーを含むポリヌクレオチドマーカーは、当該技術分野において既知のいずれかの好適な方法によって単離することができる。ネイティブなポリヌクレオチドマーカーは当該技術分野において既知の標準的方法(例えば、クロマトグラフィー、遠心分離、溶解度差、イムノアッセイ)によって天然源から精製することができる。1つの実施形態において、ポリヌクレオチドマーカーは、混合物とポリヌクレオチドマーカーに相補的な基体結合プローブとを、ハイブリダイゼーション条件下で接触させることによって、混合物から単離することができる。
【0048】
代替的に、NTRK1遺伝子融合体を含むポリヌクレオチドマーカーは、当該技術分野において既知のいずれかの好適な化学的又は組換え方法によって合成することができる。
1つの実施形態において、例えば、マーカーは、有機化学の方法及び技法を用いて合成することができる。別の実施形態において、ポリヌクレオチドマーカーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生することができる。
【0049】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドマーカーに特異的に結合する分子も包含する。1つの態様において、本発明は、ポリペプチドマーカー又はポリヌクレオチドマーカーに特異的に結合する分子を提供する。本明細書において使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、結合対(例えば、抗体と抗原、又はアプタマーとその標的)の間の相互作用のことをいう。いくつかの実施形態において、相互作用は、最大で10−6モル/リットル、最大で10−7モル/リットル、又は最大で10−8モル/リットルの親和定数を有する。他の実施形態において、「特異的に結合する」という表現は、1つのタンパク質ともう1つのタンパク質との(例えば、抗体、その断片、又は結合パートナーと抗原の)特異的結合であって、ここで、いずれかの標準的アッセイ(例えば、イムノアッセイ)により測定した結合のレベルが、アッセイについてのバックグラウンド対照よりも統計的に有意に高い特異的結合のことをいう。例えば、イムノアッセイを実施する場合、対照は、抗体又は抗原結合断片のみを含有する反応ウェル/チューブを典型的には含み(即ち、抗原の非存在下)、ここで、抗体又はその抗原結合断片による、抗原の非存在下での反応性(例えば、ウェルに対する非特異的結合)の量はバックグラウンドであるとみなされる。結合は、酵素免疫測定法(例えば、ELISA、イムノブロットアッセイ等)を含む、当該技術分野において標準的な様々な方法を用いて測定することができる。
【0050】
結合分子には、抗体、アプタマー及び抗体断片が含まれる。本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、抗原上に存在するエピトープに結合することができる免疫グロブリン分子のことをいう。この用語は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体等のインタクトな免疫グロブリン分子のみならず、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗イディオタイプ(抗ID)抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、融合タンパク質並びに要求される特異性の抗原認識部位を含む上記のあらゆる修飾体(modifications)も包含する意図である。本明細書において使用される場合、アプタマーは、標的に対する望ましい作用を有する非天然核酸である。望ましい作用としては、これらに限定されないが、標的の結合、標的を触媒的に変化させること、標的又は標的の機能活性を修飾/改変させるように標的と反応すること、自殺型阻害剤におけるように標的に共有結合すること、標的と別の分子との間の反応を促進することが挙げられる。好ましい実施形態において、作用は標的分子についての特異的結合親和性であり、かかる標的分子は、ワトソンクリック塩基対形成又は三重らせん結合に主に依存する機構を介して核酸リガンドに結合するポリヌクレオチド以外の三次元化学構造のものであり、ここで、核酸リガンドは、標的分子により結合されるという既知の生理機能を有する核酸ではない。
【0051】
本発明のポリペプチドマーカー又はポリヌクレオチドマーカーに特異的に結合する或る特定の抗体は、既知及び/又は市販源から購入して入手することができる。いずれにしても、本発明の抗体は当該技術分野において既知のいずれかの好適な手段によって調製することができる。例えば、抗体は、(必要であれば、担体に接合した)マーカー又はその免疫原性断片によって動物宿主を免疫することによって調製することができる。アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)を任意に使用して免疫応答を上昇させることができる。抗原決定基に対して高い親和性を有するポリクローナル抗体を含有する血清を次いで免疫された動物から単離して、精製することができる。
【0052】
代替的に、免疫された宿主からの抗体産生組織を収集することができ、臓器から調製した細胞ホモジネートを培養がん細胞と融合させることができる。マーカーに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリッド細胞を選択することができる。代替的に、本発明
の抗体は、化学合成又は組換え発現によって産生することができる。例えば、抗体をコードするポリヌクレオチドを使用して抗体の産生のための発現ベクターを構築することができる。本発明の抗体はまた、当該技術分野において既知の様々なファージディスプレイ方法を用いて作製することもできる。
【0053】
本発明のマーカーに特異的に結合する抗体又はアプタマーは、例えば、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーによりコードされるタンパク質産物を検出する方法において使用することができる。1つの実施形態において、本発明のポリペプチドマーカー又はポリヌクレオチドマーカーに対する抗体又はアプタマーは、マーカーについて、組織サンプル(例えば、薄い大脳皮質スライス)をアッセイするのに使用することができる。抗体又はアプタマーは、存在する場合は、組織切片中に存在するマーカーに特異的に結合することができ、組織におけるマーカーの局在化を可能とする。同様に、放射性同位元素で標識された抗体又はアプタマーは、in vivoイメージング又は治療用途に使用することができる。
【0054】
本発明はまた、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーを検出する方法も提供する。本発明の実施には、特に断りのない限り、当該技術分野の技術範囲内である分析生化学、微生物学、分子生物学及び組換えDNA技法の従来の方法を用いる。かかる技法は文献に十分に説明されている(例えば、Sambrook, J. et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory
Press, Cold Spring Harbor, NY, 2000; DNA Cloning: A Practical Approach, Vol. I & II (D. Glover, ed.); Oligonucleotide Synthesis (N. Gait, ed., Current Edition); Nucleic Acid Hybridization (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition); Transcription and Translation (B. Hames & S. Higgins, eds., Current Edition); CRC Handbook of Parvoviruses, Vol. I & II (P. Tijessen, ed.); Fundamental Virology, 2nd Edition, Vol. I & II (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds.)を参照されたい)。
【0055】
本発明のマーカーは、限定されないが、LC−MS、GC−MS、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーション及び酵素アッセイを含む、当業者に既知のいずれかの方法によって検出することができる。検出は定量的又は定性的とすることができる。質量分析、クロマトグラフィー分離、2Dゲル分離、結合アッセイ(例えば、イムノアッセイ)、競合阻害アッセイ等を含む多様な従来の技法が利用可能である。ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドの存在/非存在、レベル又は活性を測定する当該技術分野におけるあらゆる有効な方法が本発明に含まれる。どの方法が特定のマーカーを測定するのに最も適切であるかを決定することは当業者の能力の範囲内である。したがって、例えば、ELISAアッセイは病院における使用に最も適している可能性があり、一方、より複雑な計測手段を必要とする測定は臨床検査室における使用に最も適している可能性がある。選択される方法にかかわらず、測定は再現性のあるものであることが重要である。
【0056】
タンパク質マーカーのためには、定量は、同位体コード化アフィニティータグ(isotope coded affinity tags)(「ICAT」)と称される、同位体標識と組み合わせた誘導体化に基づくものとすることができる。この方法並びにその他の関連する方法において、2つのサンプルにおける特定のアミノ酸が示差的に及び同位体標識され、次いで、ペプチドバックグラウンドから固相捕獲、洗浄及び遊離により分離される。異なる同位体標識を有する2つの源からの分子の強度を次いで互いに関して正確に定量することができる。定量はまた、測定されるものに類似した同位体標識したペプチド又はタンパク質を添加すること(spiking in)による同位体希釈方法に基づくものとすることもできる。さらに、定量は類似のマトリックスにおいて標準の別の測定と比較して分析物の直接強度を用いて同位体標準を用いずに決定することもできる。
【0057】
さらに、一次元及び二次元ゲルが、銀染色、蛍光又は放射性標識によるタンパク質の分離及びゲルスポットの定量に使用されている。これらの異なるように染色されたスポットは質量分析を用いて検出されており、タンデム質量分析技法により同定されている。
【0058】
上記に論じた多数のアッセイは、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーに特異的に結合する試薬を用いる。本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーに特異的に結合することができるあらゆる分子が本発明の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態において、結合分子は抗体又は抗体断片である。他の実施形態において、結合分子は、アプタマー又はヌクレオチドプローブ等の非抗体種である。
【0059】
上記のように、結合分子は当該技術分野に受け入れられているいずれかの方法によって同定及び産生することができる。分析物に特異的な抗体及び抗体断片を同定及び産生する方法はよく知られている。
【0060】
本発明のマーカーはまた、当該技術分野において既知の多数の化学的誘導体化又は反応技法を用いて検出又は測定することもできる。或る特定のクラスの標的分子についてのかかる技法に使用する試薬は当該技術分野において既知であり、市販されている。
【0061】
本発明のRNA又はタンパク質マーカーの相対量の測定は当該技術分野において既知のいずれかの方法によって行うことができる(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F., and
Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989;及びCurrent Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubel et al. John Wiley & Sons: 1992を参照されたい)。RNA検出のための典型的な方法論には、細胞又は組織サンプルからのRNA抽出、次いで、標的RNAに特異的な標識化プローブ(例えば、相補的ポリヌクレオチド)と抽出したRNAとのハイブリダイゼーション、及びプローブの検出(例えば、ノーザンブロッティング)が含まれる。タンパク質検出のための典型的な方法論には、細胞又は組織サンプルからのタンパク質抽出、次いで、標的タンパク質に特異的な標識化プローブ(例えば、抗体)とのタンパク質サンプルとのハイブリダイゼーション、及びプローブの検出が含まれる。標識基は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子とすることができる。特異的タンパク質及びポリヌクレオチドの検出はまた、当業者によく知られている多くのその他の技法のなかでも、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、直接シークエンシング、又は定量的PCR(ポリヌクレオチドの場合)によって評価することができる。
【0062】
本発明のマーカー遺伝子の全部又は一部の存在又はコピー数の検出は当該技術分野において既知のいずれかの方法を用いて行うことができる。典型的には、DNA又はcDNAの存在及び/又は量をサザン分析によって評価するのが便利であり、ここで、細胞又は組織サンプルからの全DNAを抽出し、標識化プローブ(例えば、相補的DNA分子)とハイブリダイズさせ、プローブを検出する。標識基は、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子とすることができる。DNA検出及び/又は定量のその他の有用な方法には、当業者に知られているように、直接シークエンシング、ゲル電気泳動、カラムクロマトグラフィー、及び定量的PCRが含まれる。
【0063】
ポリヌクレオチド類似性は一本鎖核酸と相補的又は部分的に相補的な配列とのハイブリダイゼーションによって評価することができる。かかる実験は当該技術分野においてよく知られている。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、本明細書において言及する場合、ハイブリダイゼーション反応においてプローブするのに使用される核酸分子と少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件(即ち、ヌクレオチドの約20%以下のミスマッチを許容する条件)をいう。非
常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、本明細書において言及する場合、ハイブリダイゼーション反応においてプローブするのに使用される核酸分子と少なくとも約90%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能とする条件(即ち、ヌクレオチドの約10%以下のミスマッチを許容する条件)をいう。当業者であればこれらの特定のレベルのヌクレオチドミスマッチを達成するのに適切なハイブリダイゼーション及び洗浄条件を計算することができる。かかる条件は、DNA:RNAハイブリッドが形成されるか又はDNA:DNAハイブリッドが形成されるかに依存して変動するであろう。DNA:DNAハイブリッドについて計算された融解温度はDNA:RNAハイブリッドについてよりも10℃低い。特定の実施形態において、DNA:DNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×SSC(0.9M Na)のイオン強度で約20℃〜約35℃(より低いストリンジェンシー)、より好ましくは約28℃〜約40℃(よりストリンジェント)、及び更により好ましくは約35℃〜約45℃(更によりストリンジェント)の温度でのハイブリダイゼーションと、適切な洗浄条件とを含む。特定の実施形態において、DNA:RNAハイブリッドについてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、6×SSC(0.9M Na)のイオン強度で約30℃〜約45℃、より好ましくは約38℃〜約50℃及び更により好ましくは約45℃〜約55℃の温度のハイブリダイゼーションと、同様にストリンジェントな洗浄条件とが含まれる。これらの値は約100ヌクレオチドよりも大きい分子、0%ホルムアミド及び約40%のG+C含量についての融解温度の計算に基づく。代替的に、Tは、Sambrook et al., 前掲、9.31〜9.62頁に示されるように経験的に計算することができる。一般に、洗浄条件はできる限りストリンジェントなものとすべきであり、選択したハイブリダイゼーション条件に適切なものとすべきである。例えば、ハイブリダイゼーション条件は、塩条件と特定のハイブリッドの計算Tよりおよそ20℃〜25℃低い温度条件との組合せを含むことができ、洗浄条件は典型的には塩条件と特定のハイブリッドの計算Tよりおよそ12℃〜20℃低い温度条件との組合せを含むことができる。DNA:DNAハイブリッドでの使用に好適なハイブリダイゼーション条件の一例としては、6×SSC(50%ホルムアミド)中、約42℃で2時間〜24時間のハイブリダイゼーション、次いで、室温で約2×SSC中での1回又は複数回の洗浄、次いで、より高い温度及びより低いイオン強度での追加の洗浄を含む洗浄工程(例えば、約37℃で約0.1×SSC〜0.5×SSC中での少なくとも1回の洗浄、次いで約68℃で約0.1×SSC〜0.5×SSC中での少なくとも1回の洗浄)が挙げられる。その他のハイブリダイゼーション条件、及び、例えば、核酸アレイに最も有用なハイブリダイゼーション条件は、当業者に既知であろう。
【0064】
本発明の方法を用いて、化学療法薬又は薬物の組合せの投与を、本発明のアッセイ結果を考慮して評価又は再評価することができる。例えば、チロシンキナーゼ阻害薬(複数の場合もあり)を、試験される対象による腫瘍サンプルにおける本発明のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーの存在に応じて、異なる対象集団に異なるようにして投与することができる。異なる薬物投与計画からの結果はまた、直接的に互いに比較することもできる。代替的に、アッセイ結果は、1つの薬物投与計画の別の薬物投与計画と比べての望ましさを示すことができるか、又は特定の薬物投与計画をがん患者に実施すべきか若しくは実施すべきでないかを示すことができる。1つの好ましい実施形態において、本発明のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーの存在を見出すことは、チロシンキナーゼ阻害剤を含む化学療法薬(「チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬」)による治療に対する応答についての良好な予後を示す。別の好ましい実施形態において、がん患者における本発明のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーの非存在はチロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬による治療に対する応答についての予後不良を示し、チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬薬物投与計画を実施しないことを更に推奨することができる。
【0065】
別の態様において、本発明は、本開示のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカー
の存在又は非存在に基づく、チロシンキナーゼ阻害薬に応答する、又はチロシンキナーゼ阻害薬に応答しないと予測されるがん患者を同定するキットを提供する。
【0066】
本発明のキットは以下の1又は複数を含むことができる:ポリペプチドマーカーに特異的に結合するものである抗体、抗体に対する標識化結合パートナー、抗体又はその結合パートナーが固定化された固相、ポリヌクレオチドマーカーにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブ、(例えば、PCRによって)適切な反応条件下で遺伝子融合体ポリヌクレオチドマーカーの少なくとも一部の増幅をプライムすることができるプライマー対、キットをどのようにして使用するかについての説明書、及び診断又は治療的使用についての規制当局の承認を示すラベル又は挿入物。
【0067】
本発明は更に、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のポリペプチド若しくはポリヌクレオチドに特異的に結合する抗体等の分子を含む、ポリヌクレオチドマイクロアレイ又はポリペプチドマイクロアレイを含む。本発明のこの態様において、マイクロアレイ技術の標準的技法が、ポリペプチドマーカーの発現の評価及び/又はかかるポリペプチドに結合する生物学的成分の同定に用いられる。タンパク質マイクロアレイ技術は当業者によく知られており、これらに限定されないが、固定基体上の同定されたペプチド又はタンパク質のアレイの取得、標的分子又は生物学的成分のペプチドへの結合、及びかかる結合の評価に基づく。ポリヌクレオチドアレイ、特に本発明のポリペプチドに結合するアレイはまた、ポリペプチドマーカーの発現を特徴とする状態、例えば、がんを有する対象を同定すること等といった診断用途にも使用することができる。
【0068】
本発明のアッセイシステムは、腫瘍細胞のサンプルにおいて、本発明のNTRK1遺伝子融合体マーカーの存在、及び/又は本発明のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーの発現のレベル、及び/又は本発明のNTRK1−MPRIP遺伝子融合体マーカーのタンパク質産物のレベルを検出する手段を含むことができる。
【0069】
アッセイシステムはまた、1又は複数の対照も含むのが好ましい。対照は、(i)チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対する感受性を検出するための対照サンプル、(ii)チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対する耐性を検出するための対照サンプル、(iii)チロシンキナーゼ阻害剤感受性又は耐性に関して測定されるマーカーの予め決定された対照レベル(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対する感受性又はチロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対する耐性と関連付けられた本発明のNTRK1遺伝子融合体のマーカーの予め決定された対照レベル)を含有する情報を含むことができる。
【0070】
別の実施形態において、本開示のNTRK1遺伝子融合体マーカーを検出する手段は概して、これらに限定されないが、ポリヌクレオチド、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー、抗体及びその抗原結合断片、ペプチド、結合パートナー、アプタマー、酵素、並びに小分子を含むことができるあらゆるタイプの試薬とすることができる。免疫組織化学、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)又は好ましい結合アッセイを実施するための試薬等のかかる検出手段を使用するアッセイの実施に有用な更なる試薬もまた含めることができる。
【0071】
本発明のアッセイシステムの検出する手段は検出可能なタグ又は検出可能な標識と接合させることができる。かかるタグは目的の遺伝子又はタンパク質を検出するために使用される試薬の検出を可能とするいずれかの好適なタグとすることができ、例えば、これらに限定されないが、分光学的、光化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能ないずれかの組成物又は標識が挙げられる。本発明において有用な標識としては、標識化ストレプトアビジン接合体による染色用のビオチン、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質等)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、又は32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAにおいて一般的に使用されているその他の酵素)、及びコロイド金又は色ガラス又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズ等の比色標識が挙げられる。
【0072】
さらに、本発明のアッセイシステムの検出する手段は基体上に固定化することができる。かかる基体は、以前に記載された検出の方法のいずれかにおいて使用されるであろうもの等の検出試薬の固定化に好適ないずれかの基体を含むことができる。簡単に言えば、検出する手段の固定化に好適な基体としては、所望の標的分子を検出する検出手段の活性及び/又は能力に著しく影響せずに、検出する手段と結合を形成することができるいずれかの固体有機支持体、生体高分子支持体又は無機支持体等のいずれかの固体支持体が挙げられる。例示的な有機固体支持体としては、ポリスチレン、ナイロン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及びアクリル系共重合体(例えば、ポリアクリルアミド)等のポリマーが挙げられる。キットはまた、試薬の検出及び/又は陽性若しくは陰性対照の標識化に好適な試薬、洗浄溶液、希釈バッファー等を含むこともできる。アッセイシステムはまた、系を使用し、結果を解釈するための記載された説明書のセットも含むことができる。
【0073】
アッセイシステムはまた、サンプリングされる細胞型の特徴である対照マーカーを検出する手段を含むこともでき、概して本明細書において先に記載したマーカーの存在を検出する方法等によるサンプルにおける既知のマーカーの(核酸又はタンパク質レベルでの)存在を検出する方法において使用することができるいずれかのタイプの試薬とすることができる。具体的には、上記手段は、細胞型を陽性に同定する、分析される細胞型の特異的マーカーを同定することを特徴とする。例えば、肺腫瘍アッセイにおいては、マーカー発現及び/又は生物学的活性のレベルについて肺がん細胞をスクリーニングすることが望ましい。それゆえ、対照マーカーを検出する手段は、例えば、肺細胞の特徴であるマーカーを同定することにより、その細胞を結合組織又は炎症細胞等のその他の細胞型から区別する。かかる手段は本発明のアッセイの正確性及び特異性を上昇させる。かかる対照マーカーを検出する手段としては、これらに限定されないが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でタンパク質マーカーをコードする核酸分子にハイブリダイズするプローブ、かかる核酸分子を増幅するPCRプライマー、標的分子上の立体構造的に異なる部位に特異的に結合するアプタマー、及び/又はサンプルにおける対照マーカーに選択的に結合する抗体、その抗原結合断片、若しくは抗原結合ペプチドが挙げられる。多くの細胞マーカーについての核酸及びアミノ酸配列は当該技術分野において既知であり、検出のためのかかる試薬を産生するために使用することができる。
【0074】
本発明のアッセイシステム及び方法は、チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対して応答すると予測される患者を同定するのに使用することができるだけでなく、チロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬に対して耐性のがん細胞の応答性を向上させることができる治療を同定すること、及びがん患者のチロシンキナーゼ阻害剤化学療法薬(複数の場合もあり)に対する応答を強化するアジュバント治療を開発することにも使用することができる。
(訂正の理由1の説明に必要な資料 国際出願PCT/US2013/057495の明細書35−36頁の請求項14−18の写し)
【0075】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態及びそれらの様々な使用を例示するものである。実施例は、説明の目的でのみ示されるものであり、本発明を限定するものとみなしてはならない。
【実施例】
【0076】
実施例1:
本実施例はNTRK1−MPRIP融合遺伝子の存在を検出するために行ったRT−PCRアッセイを説明する。
【0077】
ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)腫瘍切片サンプルのRNA抽出の後、遺伝子特異的RT−PCR法を用いてNTRK1−MPRIP融合遺伝子を同定した。その結果、RT−PCR反応はおよそ280bpの断片(図3Bを参照されたい)を作製し、このシークエンシングにより、MPRIPのエクソン21がNTRK1のエクソン14に融合した新規なインフレームのNTRK1−MPRIP融合遺伝子の存在が確認された。RT PCR及びクローニングのプライマー配列は以下の通りであった:
プライマー名:プライマー配列(5’→3’)
MPRIPStart:ACCATGTCGGCAGCCAAGGAGAACCCGTGC(配列番号2)
MPRIP CC1F1:ACACACGAGCTGACCTCTCTGC(配列番号3)
MPRIP CC2F1:GTGCCTGGAGAATGCCCATCTG(配列番号4)
MPRIP CC3F1:GCGAAGGCTAAGGCTGACTGTG(配列番号5)
MPRIP XhoR1:CCATTGCTGCAAACCCTCGCTC(配列番号6)
EcoRI MPRIP−Kozak ATG:GAATTCGCCGCCGCGCCGACCATGTCGG(配列番号7)
NTRK1Y490R1:CGGCGCTTGATGTGGTGAAC(配列番号8)
NTRKlstopR1:TATTCCGGCTAACCACTCCCAG(配列番号9)
NTRKlstopR2:CCTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号10)NTRK1 HAstop Not1:
CGCGGCCGCTTAAGCGTAGTCTGGGACGTCGTATGGGTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号11)
【0078】
FFPE及び凍結組織からのRNA抽出:FFPEからのRNAを、RECOVERALL(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit[Ambion(テキサス州オースティン)]を用いて処理した。切片をはじめにキシレン中で脱パラフィンし、100%エタノールで洗浄した後、プロテアーゼK消化に供した。プロテアーゼK消化の後、サンプルを製造業者の説明書に従ってRNA単離のために処理した。
【0079】
NTRK1−MPRIP RT−PCR:RNAサンプルからのMPRIPとNTRK1との融合体切断点を同定するために、SUPERSCRIPT(商標)III First−Strand Synthesis System(Invitrogen)をNTRK1のエクソン15に位置するNTRK1プライマー(NTRK Y490R1)とともに用いてRT−PCRを行った。第1鎖合成のために、RNA、dNTP及びNTRK1 Y490F1プライマーをはじめに65℃で5分間変性させ、次いで氷上に2分間置いた。SUPERSCRIPT(商標)III逆転写酵素、RNasin、DTT及び反応バッファーを次いで変性させたサンプルに添加し、第1鎖合成をPCR装置で以下の条件下で行った:55℃、l0分;50℃、120分;70℃、15分;4℃、保持。第1鎖合成の後、二本鎖RNAを37℃で20分間のRNaseH消化により除去した。RT−PCRを次いで同じNTRK1リバースプライマーである、NTRK1 Y490R1及びその第3コイルドコイルドメインに位置するMPRIPに対するプライマー(MPRIP CC3F1)を用いて行ってNTRK1−MPRIP融合体を増幅した。NTRK1融合体を検出するためのPCR条件は以下の通りであった:95℃、5分の最初の変性;40サイクルのPCR(95℃、30秒、58℃、30秒のアニーリング及び72℃で30秒の伸長)。PCR産物を1.5%アガロースゲルで分離し、断片をEXOSAPIT(商標
)(Affymetrix)で処理して反応プライマー及び取り込まれていないdNTPを除いた。RT−PCR産物をRT−PCR反応におけるものと同じフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてコロラド大学がんセンターDNAシークエンシング及び分析コア(the University of Colorado Cancer Center DNA Sequencing and Analysis Core)によってシークエンシングした。エクソンアラインメントのために用いた参照配列はNCBI参照配列:NM_002529.3(NTRK1)及びNM_015134.3(MPRIP)である。
【0080】
実施例2:
本実施例は、t(1;17)(q23.1;p11.2)転座により作られたNTRK1遺伝子及びMPRIP遺伝子が関与する染色体再編成を検出するためのFISH遺伝子融合体プローブセット並びに1q23.1にマッピングするNTRK1遺伝子の5’末端及び3’末端が関与する染色体再編成を検出するためのブレイクアパートプローブセットの設計を説明する。FISH NTRK1−MPRIP融合体プローブ及びNTRK1ブレイクアパートプローブセットを以下に記載するようにして開発し、確証した。
【0081】
【表1】
【0082】
プローブ開発:クローン選択、PCR検証、DNA抽出、増幅、及び標識化:NTRK1−MPRIP融合体プローブセットについて、4つのBACクローンを選択した:2つのBACクローンは、NTRK1遺伝子のエクソン20の配列とその下流(3’)の配列とを認識する3’NTRK1プローブ(SpectrumRed、SRで標識)用であり(RP11−1038N13及びRP11−1059C21)、2つのBACクローンは、MPRIP遺伝子のエクソン29の配列とその上流(5’)の配列とを認識する5’MPRIPプローブ(SpectrumGreen、SGで標識)用であった(RP11−796J19、及びRP11−125I16)。ブレイクアパートNTRK1プローブセットについて、NTRK1切断点の5’末端とその下流とにマッピングされる2つの更なるBAC(RP11−711O18及びRP11−891L18)を選択した。6つのすべてのクローンについての詳細な情報は表1に列挙し、融合体プローブセット及びブレイクアパートプローブセットの模式表示はそれぞれ図5及び図6に示す。
【0083】
すべてのBACクローンはBACPAC Resources(CHORI、カリフォルニア州オークランド)から購入した。BACクローンが関心領域を包含することを検証するために、特異的なプライマーを設計し、Integrated DNA Technologiesにより合成させた。グリセロール穿刺を選択した抗生物質の入った寒天プレートに平板培養し、各BACクローンから10個の単一細胞コロニーをPCR検証のために選択した。1つのBACクローンあたり2つのPCRにより確証されたシングルコロニーをグリセロールストック中でアリコートとして−86℃で凍結した。
【0084】
各BACクローンからの1又は2の確証した単一細胞コロニーの微小培養物(Mini-cultures)を抗生物質の入ったLB培地中で培養し、ゲノムDNAをQiagenからのQIAAMP(商標)DNA Mini Kitを用いて抽出し、精製した。各BACクローンから精製したゲノムDNAをQiagenからのREPLI−g Midi Kitを用いる全ゲノム増幅に供した。
【0085】
各BACクローンから増幅したヒトDNAを、1μgのアリコート中でSpectrumRedと接合したdUTP(すべての3’NTRK1プローブクローン)、及びSpectrumGreenと接合したdUTP(すべての5’MPRIPプローブクローン及びすべての5’NTRK1プローブクローン)により、Vysis Nick翻訳キット(カタログ番号32−801300)を用いて、製造業者の説明書に従って標識した。各反応液を次いで単一クローン又は組合せについての確証アッセイにおいて計画した使用に従って処理した。標識化DNAをキャリア(1:50)としてのニシン精子DNA及び反復配列をブロックするためのヒトCot−1 DNA(1:10)と共沈させ、各ペレットをInsitus Biotechnologiesからの10μlのTDENHYB(商標)−2ハイブリダイゼーションバッファー中に終濃度が100ng/μlとなるように希釈した。
【0086】
スコアリングシステムの定義:予想されるシグナルパターン:5’MPRIP−3’NTRK1 FISH融合体プローブにおいて、3’NTRK1プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1遺伝子の切断点から3’側のゲノム領域の331.8Kbをカバーした。5’MPRIPプローブは染色体17におけるMPRIP遺伝子の切断点から5’側のゲノム領域の341.4Kbをカバーした。正常二倍体(2N)細胞は、単一の赤色(R)シグナルの2コピーと、単一の緑色(G)シグナルの2コピーとを有するはずである。転座t(1;17)(q23.1;p11.2)を担持する細胞において、(G)プローブによって認識される5’MPRIP配列は、(R)プローブによって認識される3’NTRK1配列と分子的に融合し、融合したR/Gシグナルを生じるはずである。正常細胞において、最終的な物理的共局在により、1コピーのRシグナルと1コピーのGシグナルとが互いに隣接する可能性があり、それによりt(1;17)についての陽性シグ
ナルを模倣する融合したR/Gシグナルが生じる。5’NTRK1−3’NTRK1 FISHブレイクアパートプローブにおいて、5’プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の上流の339.4kbをカバーし、3’NTRK1プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の下流の331.8Kbをカバーした。正常二倍体(2N)細胞は2コピーの融合したR/Gシグナルを有するはずであり、転座t(1;17)(q23.1;p11.2)を担持する細胞は単一のGシグナルと単一のRシグナルの少なくとも1つのコピーを示すはずである。
【0087】
正常検体上のシグナル配置の分析:典型的な蛍光シグナルは円形でコンパクトなスポットとして見られ、「ドット」と名付けた(図30を参照されたい)。非典型的なシグナルパターンは、技術的変動、プローブの質及びクロマチン伸展により核においてみられる可能性がある。融合体5’MPRIP−3’NTRK1プローブセットとブレイクアパート5’NTRK1−3’NTRK1プローブセットとは、腫瘍細胞において正常遺伝子と再編成された遺伝子との識別のために設計されているため、あらゆる非定型のシグナル配置又はセットにおける両プローブの間の関連性(シグナルパターン)を正常検体において詳細に評価すべきである。
【0088】
配置「ドット」は上記に記載のように典型的な円形でコンパクトなシグナルである(図30も参照されたい)。開裂、パッチ状(patchy)、及び紐状(stringy)のその他の分類はコンパクトでないシグナルである:開裂は、通常2又は3の断片に分裂したシグナルであり、パッチ状は、不規則に表れる複数の小さいスポットを有する拡散したシグナルであり、紐状は、細長い線維状のシグナルである。これら4つのシグナル配置すべてが細胞懸濁液アッセイにおいて現れた。シグナルスコアリングのために、1つのドットを1シグナルとカウントし、開裂、パッチ状又は紐状配置を有する1つのシグナルもまた、たとえ2以上の小さなスポットからなる場合であっても、1シグナルとカウントした。
【0089】
実施例3:
本実施例は、MPRIP/NTRK1遺伝子融合体の検出のためのFISH融合体プローブセットが細胞懸濁液とFFPE検体との両方において効率的に働くことを説明する。
【0090】
単一BACクローンからのDNA並びに5’MPRIP、5’NTRK1及び3’NTRK1のセットのそれぞれについての確証:融合体プローブセットについての単一BACクローンの確証のために、二色FISHアッセイを、1つの3’NTRK1プローブと1つの5’MPRIPプローブとの組合せ[クローン(RP11−1038N13+RP11−125I16)及び(RP11−1059C21+RP11−796J19)]を用いて細胞株GM09948(正常核型46、XY)において行った。すべてのプローブ混合物は100ngの関与する各クローンから構成され、全体積はCDENHYB(商標)−2ハイブリダイゼーションバッファーを用いて113mmのハイブリダイゼーション面積について4.5μlとした。
【0091】
FISHアッセイ:細胞懸濁液におけるすべてのFISHアッセイは標準的プロトコルに従って行った。簡単に説明すると、スライドを70%の酢酸溶液中で20秒間〜30秒間処理し、0.008%ペプシン/0.01M HCL中にて37℃で3分間〜5分間インキュベートし、1%のホルムアルデヒド溶液中で10分間固定し、段階的エタノール系列中で脱水した。プローブ混合物を、選択した12mmの径のハイブリダイゼーション面積に適用し、これにカバーガラスを被せ、ゴム接着剤で密封した。DNA共変性(co-denaturation)を85℃の乾燥機中で8分間行い、ハイブリダイゼーションを湿室中にて37℃で40時間起こさせた。ハイブリダイゼーション後の洗浄を、2×SSC/0.3%NP−40を用いて72℃で2分間、2×SSCを用いて室温で2分間行い、段階的エタノール系列中で脱水した。クロマチンをDAPI(Vectashield Moun
ting Medium中0.3μg/ml、Vector Laboratories)で対比染色した。
【0092】
FFPE検体におけるFISHアッセイもまた標準的研究室プロトコルに従って行った。検体を56℃で4時間インキュベートし、CitriSolv中で脱脂し、脱水して風乾し、次いでスライドを2×SSC中に75℃で13分間〜14分間浸漬し、0.6mg/mlのプロテイナーゼKで14分間〜16分間消化した。脱水の後、4.5μlのハイブリダイゼーションバッファー中に4つのBACクローンのそれぞれを100ng含有する融合体プローブセット5’MPRIP−3’NTRK1を、選択した113mmのハイブリダイゼーション面積に適用し、ハイブリダイゼーションを加湿チャンバー中にて37℃で約40時間起こさせた。ハイブリダイゼーション後の洗浄を細胞株について上記のようにして行った。
【0093】
非再編成細胞株における単一BACクローンプローブの評価
染色体マッピング:標品の質と蛍光シグナルの強度とはすべてのスライドにおいて優れていた。染色体マッピングを25の核型が正常な中期スプレッドにおいて調査し、個々のBACクローンのすべてが正しくマッピングされた:3’NTRK1についてのBACクローンであるRP11−1038N13及びRP11−1059C21は1q23.1にマッピングされ、5’MPRIPについてのBACクローンであるRP11−796J19、及びRP11−125I16は17p11.2にマッピングされ、5’NTRK1についてのBACクローンであるRP11−711O18/RP11−891L18もまた1q23.1にマッピングされた。GM09948細胞株は約99%の二倍体(2N)染色体含量を有する細胞と1%の四倍体(4N)染色体含量を有する細胞とを有していた。これらの細胞はそれぞれ、試験したクローンのそれぞれの2コピー及び4コピーを有していた。図7及び図8を参照されたい。
【0094】
シグナル配置の分析:シグナルの質とパターン分類とを100の二倍体間期核(2N)において調査し、結果を表2に要約する。
【0095】
【表2】
【0096】
3つの非小細胞肺がん検体をNTRK1−MPRIP融合体プローブセットを用いて試験し、分析の結果を表3に示す。
【0097】
2つの検体は融合体の存在について陰性であり、それら細胞の8%及び9%が陽性についての典型的なパターンを示した。検体S−12−047486(図8A)は低コピー数の各DNA標的を有しており、検体S−12−047098(図8B)は、NTRK1に
ついての方がMPRIPについてよりも多かったが、両方の試験した標的についてかなりより多いコピー数を有していた。逆に、第3の検体S−12−6988B1では88%の細胞がNTRK1−MPRIP遺伝子融合体についての典型的なパターンを有することを示し、陽性の結果を明確に支持している。興味深いことに、図10に示されるように、この検体は不均一であり(heterogenous)、腫瘍の核のサイズが中程度から非常に大きい範囲に及び、それぞれ、1コピーのNTRK1−MPRIP融合体を有する各DNA標的の非常に少ないコピーを持つものから、NTRK1−MPRIP融合体の遺伝子増幅を持つものまでに及んだ。これら2つの極端なパターンをそれぞれ、図9A及び9Bに示す。
【0098】
実施例4:
本実施例は、5’NTRK1/3’NTRK1遺伝子再編成の検出のためのFISHブレイクアパートプローブセットが細胞懸濁液とFFPE検体との両方において効率的に働くことを説明する。
【0099】
各セットの1つのみのクローンを使用すると、開裂シグナルが生じるため、遺伝子融合体プローブについて上記のものと同じ方法論を用いて、5’NTRK1/3’NTRK1ブレイクアパートプローブセットを、2つの3’NTRK1プローブと2つの5’NTRK1プローブとを使用することにより(クローンRP11−1038N13/RP11−1059C21+RP11−711O18/RP11−891L18)、細胞株GM09948(正常核型46、XY)において確証した。図10a〜図10dに結果を示す。5’NTRK1(緑色シグナル)はセントロメアに対して遺伝子の近位端であり、3’NTRK1(赤色シグナル)はセントロメアに対して遺伝子の遠位端である。両方のプローブは1q23.1に正しくマッピングされた。
【0100】
5’NTRK1/3’NTRK1ブレイクアパートプローブセットをGM09948細胞株及び検体S12−6988B1において実施例3に記載したようにして試験した。分析は緑色(FITC)、赤色(テキサスレッド)及び青色(DAPI)について単色(single)干渉フィルターのセットを用いて落射蛍光顕微鏡にて行った。各干渉フィルターについて、単色光画像を獲得し、CytoVision(Leica Microsystems Inc)を用いて重ね合わせた。
【0101】
標品の質と蛍光シグナルの強度とはすべてのスライドにおいて適切であった。染色体マッピングを中期スプレッドにて調査し、個々のBACクローンは1q23.1に正しくマッピングされた(図10a〜図10d)。FFPE肺がん切片における評価は検体S12−6988B1(実施例3において5’MPRIP−3’NTRK1再編成を有することが示された検体)を用いて行い、陽性パターンを観察した(図11)。図11に示すように、細胞は開裂の赤色及び緑色の「陽性」パターンと、融合した赤色及び緑色シグナルの「正常」パターンとの両方を示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例5:
本実施例は、活性化TRKA(NTRK1遺伝子のタンパク質産物)はいくつかの低分子チロシンキナーゼ阻害剤によって阻害することができることを実証する。
【0104】
遺伝子融合現象は、融合体における5’遺伝子のプロモーターを介する発現上昇を導くことにより、そしてしばしば5’遺伝子融合体パートナー内にコードされる(コイルドコイルドメイン等の)ドメインを介する二量体形成を誘導することによって、融合遺伝子の3’末端にコードされるキナーゼドメインの活性化を導く。この強化された二量体形成は、この場合はTRKAのキナーゼドメインである、キナーゼドメインの構成的活性化を導く。
【0105】
低分子チロシンキナーゼ阻害剤がTRKAを阻害するかどうかを決定するために、本発明者らは293T細胞において全長TRKAを発現させた(図12及び図13)。NTRK1遺伝子をpCDH−MCS1−EF1−puroにクローニングし、ヘマグルチニン(HA)タグを3’(C末端側)末端に付加した。このベクターを293T細胞に一過性にトランスフェクトし、イムノブロット分析においてHA(Cell Signaling、C29F4)とTRKA(Santa Cruz、C−118)との両方に対する抗体を用いて、空ベクター対照と比較してのTRKAの発現を実証した(図12A)。図12Aは、HA特異的抗体(左側、Cell Signaling)及びTRKA特異的抗体(右側、Santa Cruz、SC−118)により検出されるおよそ115kD〜120kDのタンパク質の発現を示す。HA特異的抗体を用いるTRKAの免疫沈降、次いで抗ホスホチロシン抗体(Millipore、4G10)によるイムノブロットは、DMSO処理(対照)サンプルにおけるTRKAの有意なリン酸化を実証した(図12B)。TRKAのリン酸化は1μMのK252A、クリゾチニブ、又はCEP−701(すべてSelleck Chemicalから購入)のいずれかによる5時間の細胞の処理の後に有意に低下し、TRKA活性の阻害を示した。図12Bは、HA特異的抗体(Cell Signaling)を用いた免疫沈降、次いで1μMの示された阻害剤又はDMSO(対照)による5時間の処理後の同じ抗体(左側)又はホスホチロシン特異的抗体(右側)を用いるイムノブロットを示す。図12CはNTRK1−MPRIPの発現により自己リン酸化されるキメラタンパク質が生じることを示す。NTRK1−MPRIP融合遺伝子を有する指標患者からの凍結胸水サンプルからの腫瘍細胞又は培養物(CUTO−3)中の初期継代細胞と比較しての、空ベクター(EV)、全長NTRK1 cDNA、NTRK1−MPRIP cDNAにより一過性にトランスフェクトされた293T細胞のイムノブロット分析。
【0106】
TRKAの発現を細胞溶解液において検出し、このタンパク質は、TRKAのアミノ酸位置490、674及び675におけるホスホチロシンに対する抗体(Cell Signaling)を用いたイムノブロット分析により検出したところ、そのリガンドである神経成長因子(NGF)の非存在下又は存在下で活性化された(図13A)。TRKA活性の更なる証拠がAKT(Cell Signaling、S473)又はERK(Cell Signaling)等の下流シグナル伝達経路のリン酸化の上昇によりみられた。細胞の1μMのK252A又はクリゾチニブによる処理により、TRKA及びERKのリン酸化の低下が導かれ、一方、CEP−701はTRKA及びERKに加えてAKTのリン酸化も阻害した。図13はNGFの存在下又は非存在下(10分間)及び1μΜの示されたチロシンキナーゼ阻害剤の5時間の存在下又は非存在下でのTRKA−HA又は空ベクターを発現する293T細胞溶解液のSDS−PAGEを示す。膜を、TRKAホスホチロシン490、674、及び675に対する抗体(Cell Signaling)、全TRKAに対する抗体(抗HA、Cell Signaling)、AKTホスホセリン473に対する抗体(Cell Signaling)、全AKTに対する抗体(Cell Signaling)、リン酸化ERK p42/44に対する抗体(Cell Signaling)、全ERK
p42/44に対する抗体(Cell Signaling)、並びにチューブリンに対する抗体(Sa
nta Cruz、SC−8035)でプローブした。
【0107】
当業者であれば、ルーチン的にすぎない実験を用いて上記の実施形態に基づく本発明の更なる特徴及び利点を理解するであろうし、又は確認することができるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に示されるもの以外には、具体的に示し、記載してきたものに限定されない。すべての刊行物及び引用文献は、引用することにより、それらの全体が明示的に本明細書の一部をなすものとする。
【0108】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図30
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]