【実施例】
【0076】
実施例1:
本実施例はNTRK1−MPRIP融合遺伝子の存在を検出するために行ったRT−PCRアッセイを説明する。
【0077】
ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)腫瘍切片サンプルのRNA抽出の後、遺伝子特異的RT−PCR法を用いてNTRK1−MPRIP融合遺伝子を同定した。その結果、RT−PCR反応はおよそ280bpの断片(
図3Bを参照されたい)を作製し、このシークエンシングにより、MPRIPのエクソン21がNTRK1のエクソン14に融合した新規なインフレームのNTRK1−MPRIP融合遺伝子の存在が確認された。RT PCR及びクローニングのプライマー配列は以下の通りであった:
プライマー名:プライマー配列(5’→3’)
MPRIPStart:ACCATGTCGGCAGCCAAGGAGAACCCGTGC(配列番号2)
MPRIP CC1F1:ACACACGAGCTGACCTCTCTGC(配列番号3)
MPRIP CC2F1:GTGCCTGGAGAATGCCCATCTG(配列番号4)
MPRIP CC3F1:GCGAAGGCTAAGGCTGACTGTG(配列番号5)
MPRIP XhoR1:CCATTGCTGCAAACCCTCGCTC(配列番号6)
EcoRI MPRIP−Kozak ATG:GAATTCGCCGCCGCGCCGACCATGTCGG(配列番号7)
NTRK1Y490R1:CGGCGCTTGATGTGGTGAAC(配列番号8)
NTRKlstopR1:TATTCCGGCTAACCACTCCCAG(配列番号9)
NTRKlstopR2:CCTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号10)NTRK1 HAstop Not1:
CGCGGCCGCTTAAGCGTAGTCTGGGACGTCGTATGGGTAGCCCAGGACATCCAGG(配列番号11)
【0078】
FFPE及び凍結組織からのRNA抽出:FFPEからのRNAを、RECOVERALL(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit[Ambion(テキサス州オースティン)]を用いて処理した。切片をはじめにキシレン中で脱パラフィンし、100%エタノールで洗浄した後、プロテアーゼK消化に供した。プロテアーゼK消化の後、サンプルを製造業者の説明書に従ってRNA単離のために処理した。
【0079】
NTRK1−MPRIP RT−PCR:RNAサンプルからのMPRIPとNTRK1との融合体切断点を同定するために、SUPERSCRIPT(商標)III First−Strand Synthesis System(Invitrogen)をNTRK1のエクソン15に位置するNTRK1プライマー(NTRK Y490R1)とともに用いてRT−PCRを行った。第1鎖合成のために、RNA、dNTP及びNTRK1 Y490F1プライマーをはじめに65℃で5分間変性させ、次いで氷上に2分間置いた。SUPERSCRIPT(商標)III逆転写酵素、RNasin、DTT及び反応バッファーを次いで変性させたサンプルに添加し、第1鎖合成をPCR装置で以下の条件下で行った:55℃、l0分;50℃、120分;70℃、15分;4℃、保持。第1鎖合成の後、二本鎖RNAを37℃で20分間のRNaseH消化により除去した。RT−PCRを次いで同じNTRK1リバースプライマーである、NTRK1 Y490R1及びその第3コイルドコイルドメインに位置するMPRIPに対するプライマー(MPRIP CC3F1)を用いて行ってNTRK1−MPRIP融合体を増幅した。NTRK1融合体を検出するためのPCR条件は以下の通りであった:95℃、5分の最初の変性;40サイクルのPCR(95℃、30秒、58℃、30秒のアニーリング及び72℃で30秒の伸長)。PCR産物を1.5%アガロースゲルで分離し、断片をEXOSAPIT(商標
)(Affymetrix)で処理して反応プライマー及び取り込まれていないdNTPを除いた。RT−PCR産物をRT−PCR反応におけるものと同じフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いてコロラド大学がんセンターDNAシークエンシング及び分析コア(the University of Colorado Cancer Center DNA Sequencing and Analysis Core)によってシークエンシングした。エクソンアラインメントのために用いた参照配列はNCBI参照配列:NM_002529.3(NTRK1)及びNM_015134.3(MPRIP)である。
【0080】
実施例2:
本実施例は、t(1;17)(q23.1;p11.2)転座により作られたNTRK1遺伝子及びMPRIP遺伝子が関与する染色体再編成を検出するためのFISH遺伝子融合体プローブセット並びに1q23.1にマッピングするNTRK1遺伝子の5’末端及び3’末端が関与する染色体再編成を検出するためのブレイクアパートプローブセットの設計を説明する。FISH NTRK1−MPRIP融合体プローブ及びNTRK1ブレイクアパートプローブセットを以下に記載するようにして開発し、確証した。
【0081】
【表1】
【0082】
プローブ開発:クローン選択、PCR検証、DNA抽出、増幅、及び標識化:NTRK1−MPRIP融合体プローブセットについて、4つのBACクローンを選択した:2つのBACクローンは、NTRK1遺伝子のエクソン20の配列とその下流(3’)の配列とを認識する3’NTRK1プローブ(SpectrumRed、SRで標識)用であり(RP11−1038N13及びRP11−1059C21)、2つのBACクローンは、MPRIP遺伝子のエクソン29の配列とその上流(5’)の配列とを認識する5’MPRIPプローブ(SpectrumGreen、SGで標識)用であった(RP11−796J19、及びRP11−125I16)。ブレイクアパートNTRK1プローブセットについて、NTRK1切断点の5’末端とその下流とにマッピングされる2つの更なるBAC(RP11−711O18及びRP11−891L18)を選択した。6つのすべてのクローンについての詳細な情報は表1に列挙し、融合体プローブセット及びブレイクアパートプローブセットの模式表示はそれぞれ
図5及び
図6に示す。
【0083】
すべてのBACクローンはBACPAC Resources(CHORI、カリフォルニア州オークランド)から購入した。BACクローンが関心領域を包含することを検証するために、特異的なプライマーを設計し、Integrated DNA Technologiesにより合成させた。グリセロール穿刺を選択した抗生物質の入った寒天プレートに平板培養し、各BACクローンから10個の単一細胞コロニーをPCR検証のために選択した。1つのBACクローンあたり2つのPCRにより確証されたシングルコロニーをグリセロールストック中でアリコートとして−86℃で凍結した。
【0084】
各BACクローンからの1又は2の確証した単一細胞コロニーの微小培養物(Mini-cultures)を抗生物質の入ったLB培地中で培養し、ゲノムDNAをQiagenからのQIAAMP(商標)DNA Mini Kitを用いて抽出し、精製した。各BACクローンから精製したゲノムDNAをQiagenからのREPLI−g Midi Kitを用いる全ゲノム増幅に供した。
【0085】
各BACクローンから増幅したヒトDNAを、1μgのアリコート中でSpectrumRedと接合したdUTP(すべての3’NTRK1プローブクローン)、及びSpectrumGreenと接合したdUTP(すべての5’MPRIPプローブクローン及びすべての5’NTRK1プローブクローン)により、Vysis Nick翻訳キット(カタログ番号32−801300)を用いて、製造業者の説明書に従って標識した。各反応液を次いで単一クローン又は組合せについての確証アッセイにおいて計画した使用に従って処理した。標識化DNAをキャリア(1:50)としてのニシン精子DNA及び反復配列をブロックするためのヒトCot−1 DNA(1:10)と共沈させ、各ペレットをInsitus Biotechnologiesからの10μlのTDENHYB(商標)−2ハイブリダイゼーションバッファー中に終濃度が100ng/μlとなるように希釈した。
【0086】
スコアリングシステムの定義:予想されるシグナルパターン:5’MPRIP−3’NTRK1 FISH融合体プローブにおいて、3’NTRK1プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1遺伝子の切断点から3’側のゲノム領域の331.8Kbをカバーした。5’MPRIPプローブは染色体17におけるMPRIP遺伝子の切断点から5’側のゲノム領域の341.4Kbをカバーした。正常二倍体(2N)細胞は、単一の赤色(R)シグナルの2コピーと、単一の緑色(G)シグナルの2コピーとを有するはずである。転座t(1;17)(q23.1;p11.2)を担持する細胞において、(G)プローブによって認識される5’MPRIP配列は、(R)プローブによって認識される3’NTRK1配列と分子的に融合し、融合したR/Gシグナルを生じるはずである。正常細胞において、最終的な物理的共局在により、1コピーのRシグナルと1コピーのGシグナルとが互いに隣接する可能性があり、それによりt(1;17)についての陽性シグ
ナルを模倣する融合したR/Gシグナルが生じる。5’NTRK1−3’NTRK1 FISHブレイクアパートプローブにおいて、5’プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の上流の339.4kbをカバーし、3’NTRK1プローブは染色体1q23.1におけるNTRK1の切断点の下流の331.8Kbをカバーした。正常二倍体(2N)細胞は2コピーの融合したR/Gシグナルを有するはずであり、転座t(1;17)(q23.1;p11.2)を担持する細胞は単一のGシグナルと単一のRシグナルの少なくとも1つのコピーを示すはずである。
【0087】
正常検体上のシグナル配置の分析:典型的な蛍光シグナルは円形でコンパクトなスポットとして見られ、「ドット」と名付けた(
図30を参照されたい)。非典型的なシグナルパターンは、技術的変動、プローブの質及びクロマチン伸展により核においてみられる可能性がある。融合体5’MPRIP−3’NTRK1プローブセットとブレイクアパート5’NTRK1−3’NTRK1プローブセットとは、腫瘍細胞において正常遺伝子と再編成された遺伝子との識別のために設計されているため、あらゆる非定型のシグナル配置又はセットにおける両プローブの間の関連性(シグナルパターン)を正常検体において詳細に評価すべきである。
【0088】
配置「ドット」は上記に記載のように典型的な円形でコンパクトなシグナルである(
図30も参照されたい)。開裂、パッチ状(patchy)、及び紐状(stringy)のその他の分類はコンパクトでないシグナルである:開裂は、通常2又は3の断片に分裂したシグナルであり、パッチ状は、不規則に表れる複数の小さいスポットを有する拡散したシグナルであり、紐状は、細長い線維状のシグナルである。これら4つのシグナル配置すべてが細胞懸濁液アッセイにおいて現れた。シグナルスコアリングのために、1つのドットを1シグナルとカウントし、開裂、パッチ状又は紐状配置を有する1つのシグナルもまた、たとえ2以上の小さなスポットからなる場合であっても、1シグナルとカウントした。
【0089】
実施例3:
本実施例は、MPRIP/NTRK1遺伝子融合体の検出のためのFISH融合体プローブセットが細胞懸濁液とFFPE検体との両方において効率的に働くことを説明する。
【0090】
単一BACクローンからのDNA並びに5’MPRIP、5’NTRK1及び3’NTRK1のセットのそれぞれについての確証:融合体プローブセットについての単一BACクローンの確証のために、二色FISHアッセイを、1つの3’NTRK1プローブと1つの5’MPRIPプローブとの組合せ[クローン(RP11−1038N13+RP11−125I16)及び(RP11−1059C21+RP11−796J19)]を用いて細胞株GM09948(正常核型46、XY)において行った。すべてのプローブ混合物は100ngの関与する各クローンから構成され、全体積はCDENHYB(商標)−2ハイブリダイゼーションバッファーを用いて113mm
2のハイブリダイゼーション面積について4.5μlとした。
【0091】
FISHアッセイ:細胞懸濁液におけるすべてのFISHアッセイは標準的プロトコルに従って行った。簡単に説明すると、スライドを70%の酢酸溶液中で20秒間〜30秒間処理し、0.008%ペプシン/0.01M HCL中にて37℃で3分間〜5分間インキュベートし、1%のホルムアルデヒド溶液中で10分間固定し、段階的エタノール系列中で脱水した。プローブ混合物を、選択した12mm
2の径のハイブリダイゼーション面積に適用し、これにカバーガラスを被せ、ゴム接着剤で密封した。DNA共変性(co-denaturation)を85℃の乾燥機中で8分間行い、ハイブリダイゼーションを湿室中にて37℃で40時間起こさせた。ハイブリダイゼーション後の洗浄を、2×SSC/0.3%NP−40を用いて72℃で2分間、2×SSCを用いて室温で2分間行い、段階的エタノール系列中で脱水した。クロマチンをDAPI(Vectashield Moun
ting Medium中0.3μg/ml、Vector Laboratories)で対比染色した。
【0092】
FFPE検体におけるFISHアッセイもまた標準的研究室プロトコルに従って行った。検体を56℃で4時間インキュベートし、CitriSolv中で脱脂し、脱水して風乾し、次いでスライドを2×SSC中に75℃で13分間〜14分間浸漬し、0.6mg/mlのプロテイナーゼKで14分間〜16分間消化した。脱水の後、4.5μlのハイブリダイゼーションバッファー中に4つのBACクローンのそれぞれを100ng含有する融合体プローブセット5’MPRIP−3’NTRK1を、選択した113mm
2のハイブリダイゼーション面積に適用し、ハイブリダイゼーションを加湿チャンバー中にて37℃で約40時間起こさせた。ハイブリダイゼーション後の洗浄を細胞株について上記のようにして行った。
【0093】
非再編成細胞株における単一BACクローンプローブの評価
染色体マッピング:標品の質と蛍光シグナルの強度とはすべてのスライドにおいて優れていた。染色体マッピングを25の核型が正常な中期スプレッドにおいて調査し、個々のBACクローンのすべてが正しくマッピングされた:3’NTRK1についてのBACクローンであるRP11−1038N13及びRP11−1059C21は1q23.1にマッピングされ、5’MPRIPについてのBACクローンであるRP11−796J19、及びRP11−125I16は17p11.2にマッピングされ、5’NTRK1についてのBACクローンであるRP11−711O18/RP11−891L18もまた1q23.1にマッピングされた。GM09948細胞株は約99%の二倍体(2N)染色体含量を有する細胞と1%の四倍体(4N)染色体含量を有する細胞とを有していた。これらの細胞はそれぞれ、試験したクローンのそれぞれの2コピー及び4コピーを有していた。
図7及び
図8を参照されたい。
【0094】
シグナル配置の分析:シグナルの質とパターン分類とを100の二倍体間期核(2N)において調査し、結果を表2に要約する。
【0095】
【表2】
【0096】
3つの非小細胞肺がん検体をNTRK1−MPRIP融合体プローブセットを用いて試験し、分析の結果を表3に示す。
【0097】
2つの検体は融合体の存在について陰性であり、それら細胞の8%及び9%が陽性についての典型的なパターンを示した。検体S−12−047486(
図8A)は低コピー数の各DNA標的を有しており、検体S−12−047098(
図8B)は、NTRK1に
ついての方がMPRIPについてよりも多かったが、両方の試験した標的についてかなりより多いコピー数を有していた。逆に、第3の検体S−12−6988B1では88%の細胞がNTRK1−MPRIP遺伝子融合体についての典型的なパターンを有することを示し、陽性の結果を明確に支持している。興味深いことに、
図10に示されるように、この検体は不均一であり(heterogenous)、腫瘍の核のサイズが中程度から非常に大きい範囲に及び、それぞれ、1コピーのNTRK1−MPRIP融合体を有する各DNA標的の非常に少ないコピーを持つものから、NTRK1−MPRIP融合体の遺伝子増幅を持つものまでに及んだ。これら2つの極端なパターンをそれぞれ、
図9A及び9Bに示す。
【0098】
実施例4:
本実施例は、5’NTRK1/3’NTRK1遺伝子再編成の検出のためのFISHブレイクアパートプローブセットが細胞懸濁液とFFPE検体との両方において効率的に働くことを説明する。
【0099】
各セットの1つのみのクローンを使用すると、開裂シグナルが生じるため、遺伝子融合体プローブについて上記のものと同じ方法論を用いて、5’NTRK1/3’NTRK1ブレイクアパートプローブセットを、2つの3’NTRK1プローブと2つの5’NTRK1プローブとを使用することにより(クローンRP11−1038N13/RP11−1059C21+RP11−711O18/RP11−891L18)、細胞株GM09948(正常核型46、XY)において確証した。
図10a〜
図10dに結果を示す。5’NTRK1(緑色シグナル)はセントロメアに対して遺伝子の近位端であり、3’NTRK1(赤色シグナル)はセントロメアに対して遺伝子の遠位端である。両方のプローブは1q23.1に正しくマッピングされた。
【0100】
5’NTRK1/3’NTRK1ブレイクアパートプローブセットをGM09948細胞株及び検体S12−6988B1において実施例3に記載したようにして試験した。分析は緑色(FITC)、赤色(テキサスレッド)及び青色(DAPI)について単色(single)干渉フィルターのセットを用いて落射蛍光顕微鏡にて行った。各干渉フィルターについて、単色光画像を獲得し、CytoVision(Leica Microsystems Inc)を用いて重ね合わせた。
【0101】
標品の質と蛍光シグナルの強度とはすべてのスライドにおいて適切であった。染色体マッピングを中期スプレッドにて調査し、個々のBACクローンは1q23.1に正しくマッピングされた(
図10a〜
図10d)。FFPE肺がん切片における評価は検体S12−6988B1(実施例3において5’MPRIP−3’NTRK1再編成を有することが示された検体)を用いて行い、陽性パターンを観察した(
図11)。
図11に示すように、細胞は開裂の赤色及び緑色の「陽性」パターンと、融合した赤色及び緑色シグナルの「正常」パターンとの両方を示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例5:
本実施例は、活性化TRKA(NTRK1遺伝子のタンパク質産物)はいくつかの低分子チロシンキナーゼ阻害剤によって阻害することができることを実証する。
【0104】
遺伝子融合現象は、融合体における5’遺伝子のプロモーターを介する発現上昇を導くことにより、そしてしばしば5’遺伝子融合体パートナー内にコードされる(コイルドコイルドメイン等の)ドメインを介する二量体形成を誘導することによって、融合遺伝子の3’末端にコードされるキナーゼドメインの活性化を導く。この強化された二量体形成は、この場合はTRKAのキナーゼドメインである、キナーゼドメインの構成的活性化を導く。
【0105】
低分子チロシンキナーゼ阻害剤がTRKAを阻害するかどうかを決定するために、本発明者らは293T細胞において全長TRKAを発現させた(
図12及び
図13)。NTRK1遺伝子をpCDH−MCS1−EF1−puroにクローニングし、ヘマグルチニン(HA)タグを3’(C末端側)末端に付加した。このベクターを293T細胞に一過性にトランスフェクトし、イムノブロット分析においてHA(Cell Signaling、C29F4)とTRKA(Santa Cruz、C−118)との両方に対する抗体を用いて、空ベクター対照と比較してのTRKAの発現を実証した(
図12A)。
図12Aは、HA特異的抗体(左側、Cell Signaling)及びTRKA特異的抗体(右側、Santa Cruz、SC−118)により検出されるおよそ115kD〜120kDのタンパク質の発現を示す。HA特異的抗体を用いるTRKAの免疫沈降、次いで抗ホスホチロシン抗体(Millipore、4G10)によるイムノブロットは、DMSO処理(対照)サンプルにおけるTRKAの有意なリン酸化を実証した(
図12B)。TRKAのリン酸化は1μMのK252A、クリゾチニブ、又はCEP−701(すべてSelleck Chemicalから購入)のいずれかによる5時間の細胞の処理の後に有意に低下し、TRKA活性の阻害を示した。
図12Bは、HA特異的抗体(Cell Signaling)を用いた免疫沈降、次いで1μMの示された阻害剤又はDMSO(対照)による5時間の処理後の同じ抗体(左側)又はホスホチロシン特異的抗体(右側)を用いるイムノブロットを示す。
図12CはNTRK1−MPRIPの発現により自己リン酸化されるキメラタンパク質が生じることを示す。NTRK1−MPRIP融合遺伝子を有する指標患者からの凍結胸水サンプルからの腫瘍細胞又は培養物(CUTO−3)中の初期継代細胞と比較しての、空ベクター(EV)、全長NTRK1 cDNA、NTRK1−MPRIP cDNAにより一過性にトランスフェクトされた293T細胞のイムノブロット分析。
【0106】
TRKAの発現を細胞溶解液において検出し、このタンパク質は、TRKAのアミノ酸位置490、674及び675におけるホスホチロシンに対する抗体(Cell Signaling)を用いたイムノブロット分析により検出したところ、そのリガンドである神経成長因子(NGF)の非存在下又は存在下で活性化された(
図13A)。TRKA活性の更なる証拠がAKT(Cell Signaling、S473)又はERK(Cell Signaling)等の下流シグナル伝達経路のリン酸化の上昇によりみられた。細胞の1μMのK252A又はクリゾチニブによる処理により、TRKA及びERKのリン酸化の低下が導かれ、一方、CEP−701はTRKA及びERKに加えてAKTのリン酸化も阻害した。
図13はNGFの存在下又は非存在下(10分間)及び1μΜの示されたチロシンキナーゼ阻害剤の5時間の存在下又は非存在下でのTRKA−HA又は空ベクターを発現する293T細胞溶解液のSDS−PAGEを示す。膜を、TRKAホスホチロシン490、674、及び675に対する抗体(Cell Signaling)、全TRKAに対する抗体(抗HA、Cell Signaling)、AKTホスホセリン473に対する抗体(Cell Signaling)、全AKTに対する抗体(Cell Signaling)、リン酸化ERK p42/44に対する抗体(Cell Signaling)、全ERK
p42/44に対する抗体(Cell Signaling)、並びにチューブリンに対する抗体(Sa
nta Cruz、SC−8035)でプローブした。
【0107】
当業者であれば、ルーチン的にすぎない実験を用いて上記の実施形態に基づく本発明の更なる特徴及び利点を理解するであろうし、又は確認することができるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に示されるもの以外には、具体的に示し、記載してきたものに限定されない。すべての刊行物及び引用文献は、引用することにより、それらの全体が明示的に本明細書の一部をなすものとする。
【0108】
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