(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態1〕
図1の(a)〜(c)は、本実施の形態に係る照明器具の構成を示す断面図である。
【0012】
図1に示す蛍光灯器具(照明器具)1は、蛍光ランプ2、蛍光体3、口金部4Rおよび4L、レーザー51および52、走査部61および62を備えている。
【0013】
なお、以下、口金部4Rと口金部4Lとの総称を「口金部4」とし、レーザー51とレーザー52との総称を「レーザー5」とし、走査部61と走査部62との総称を「走査部6」とする。
【0014】
また、
図1の(a)においては口金部4が透視されておらず、
図1の(b)および
図1の(c)においては口金部4が透視されている。
図1の(b)はレーザー51および走査部61を含む断面を示しており、
図1の(c)はレーザー52および走査部62を含む断面を示している。
【0015】
蛍光ランプ(構造物)2は、透明または半透明の筒状の部材である。蛍光ランプ2の内面には蛍光体3が塗布されている。蛍光ランプ2は、一般的な蛍光ランプと同様のガラス管を用いることができるがこれに限定されず、例えばプラスチック製の管であってもよいし、その他の樹脂製の管であってもよい。
【0016】
蛍光体3は、照射された光によって励起され、この光と異なる波長の光を放出するものである。先に述べたとおり、蛍光体3は蛍光ランプ2の内面に塗布されている。
【0017】
口金部4は、蛍光ランプ2の両端にそれぞれ設けられている。具体的に、口金部4Rは蛍光ランプ2の一端(
図1では右側の端部)に設けられており、口金部4Lは蛍光ランプ2の他端(
図1では左側の端部)に設けられている。
【0018】
口金部4には、通常2つの端子が設けられている。口金部4の外部(ひいては蛍光灯器具1の外部)から、この2つの端子を介して、口金部4に設けられた回路に電源電圧等を供給することができる。
【0019】
レーザー(光源)5は、ビームを出射するものである。レーザー5として例えば、紫外線レーザーを用いることができる。白色LEDまたは紫外線LED等を用いてレーザーを作成することができれば、そのレーザーを用いても勿論構わない。
【0020】
レーザー5が出射するビームの波長は、特に限定されないが、UVB(UltraViolet radiation B:紫外線B)の波長であるのが好ましい。UVBの波長は、280〜320nmである。一般に、蛍光体は、UVBの波長を有する光によって励起されるものが多い。従って、該ビームの波長をUVBとすることにより、蛍光体3の選択の幅を広げることができる。レーザー5の出射光自体の波長がUVBの波長ではなくても、SHGにより蛍光体3への入射光の波長をUVBの波長に変換してもよい。また、レーザー5のワット数は例えば、10mWである。
【0021】
また、レーザー5は、パルス信号によって駆動されるのが好ましく、特にPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号によって駆動(以下、「PWM駆動」と称する)されるのが好ましい。PWMとは、パルスの大きさは一定で、パルス幅を信号に応じて変化させる変調方式である。例えば、レーザー5として一般的なレーザーダイオードを用いた場合、これを連続発振により駆動すると、蛍光灯器具1の寿命は数十時間程度と非常に短くなる。一方、レーザー5をPWM駆動することによって、蛍光灯器具1の寿命を延ばすことができる。一例として、パルスのオン時間1μs、パルスのオフ時間1msにて、レーザー5がPWM駆動される場合、蛍光灯器具1の寿命は、連続発振により駆動する場合のおよそ1000倍(2万時間程度)とすることが可能である。但し、パルスのオン時間およびオフ時間はこれに限定されず、例えば人間の目から見て蛍光灯器具1による照明が継続的に行われていると認識できるか(すなわち、人間の目に点灯しているように見えないか)否かに応じて、オン時間およびオフ時間を適宜調整すればよい。レーザー5のPWM駆動は、口金部4にPWM変調回路(図示しない)を設け、該PWM変調回路によりレーザー5の駆動を制御すれば容易に実現することができる。
【0022】
レーザー(第1光源)51は口金部4Rの中に設けられており、レーザー(第2光源)52は口金部4Lの中に設けられている。換言すれば、レーザー51は蛍光ランプ2の一端に設けられており(
図1の(b)参照)、レーザー52は蛍光ランプ2の他端に設けられている(
図1の(c)参照)。
【0023】
走査部6は、蛍光ランプ2の内面に塗布された蛍光体3に入射するレーザー5からのビームの同内面上の位置が移動するように該ビームを走査するものである。走査部6の典型的な例は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。MEMSミラーとは、シリコン上に銀合金を用いて1個のミラーを形成し、このミラーをPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)薄膜の圧電効果を用いて動かせるようにしたデバイスである。MEMSミラー以外の走査部6の例として、ポリゴンミラー、ガルバノミラーが挙げられる。さらに、屈折率にもよるが走査部6としてレンズを用いることも考えられるし、レーザー5のワット数が十分高ければ(例えば1W以上)走査部6として回折格子を用いることも考えられる。走査部6によるビームの走査の速度は例えば、μsのオーダーである。
【0024】
走査部(第1走査部)61は口金部4Lの中に設けられており、走査部(第2走査部)62は口金部4Rの中に設けられている。換言すれば、走査部61は蛍光ランプ2の他端に設けられており(
図1の(b)参照)、走査部62は蛍光ランプ2の一端に設けられている(
図1の(c)参照)。口金部4R内にはレーザー51および走査部62が蛍光ランプ2の開口方向に対して垂直な方向に並んで配置されており、口金部4L内にはレーザー52および走査部61が蛍光ランプ2の開口方向に対して垂直な方向に並んで配置されている。そして、走査部61はレーザー51から出射されたビームを走査し、走査部62はレーザー52から出射されたビームを走査する。
【0025】
このとき、レーザー51から出射されたビームは、走査部61により走査された後、蛍光ランプ2の一端側(
図1では右側半分)の内面に塗布された蛍光体3に入射する。これにより、蛍光ランプ2の一端側の内面に塗布された蛍光体3が励起され、蛍光灯器具1の一端側からの照明が得られる。また、レーザー52から出射されたビームは、走査部62により走査された後、蛍光ランプ2の他端側(
図1では左側半分)の内面に塗布された蛍光体3に入射する。これにより、蛍光ランプ2の他端側の内面に塗布された蛍光体3が励起され、蛍光灯器具1の他端側からの照明が得られる。言うまでもないが、蛍光灯器具1全体としての照明は、蛍光灯器具1の一端側からの照明と、蛍光灯器具1の他端側からの照明との組み合わせとなる。
【0026】
換言すれば、レーザー51および走査部61は、蛍光ランプ2の右側半分の管内全体を高速スキャンして発光させている(
図1の(b)参照)。同様に、レーザー52および走査部62は、蛍光ランプ2の左側半分の管内全体を高速スキャンして発光させている(
図1の(c)参照)。そして、これらの発光の組み合わせが、蛍光灯器具1による照明に対応すると言える。
【0027】
図2〜
図13は、蛍光灯器具1の動作原理を示す断面図である。ここでは、走査部6としてMEMSミラーを用いた例について説明する。
【0028】
なお、以下では説明を簡潔にするために、蛍光ランプ2を
図1のA−A断面(
図18)から見て、最下部26、下部27、準下部28、および中〜上部29に分割し、この順で発光領域を形成して蛍光灯器具1全体としての照明を得るものとして説明している。しかしながら、蛍光灯器具1全体としての照明を得るにあたり、蛍光ランプ2をどの位置からどの順序で発光させるかについては任意である。
【0029】
レーザー5から出射されたビームが、走査部6に導かれる。
【0030】
図2〜
図4には、蛍光ランプ2の最下部26から発光を得る原理を示している。説明を簡潔にするために、
図2〜
図4に示す経過に係る説明において、蛍光ランプ2の最下部26である旨の表現は省略している。
【0031】
図2に示す経過(第1経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部において、蛍光灯器具1の発光領域7が形成される。
【0032】
図3に示す経過(第2経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部と蛍光ランプ2の中央との中間地点に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7に加え、発光領域7の走査部6側の端部から、該中間地点まで、蛍光灯器具1の発光領域8が形成される。
【0033】
図4に示す経過(第3経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、蛍光ランプ2の中央に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7および8に加え、発光領域8の走査部6側の端部から、蛍光ランプ2の中央まで、蛍光灯器具1の発光領域9が形成される。
【0034】
図2〜
図4に示す経過の間、走査部6は徐々に、ビームの反射角θaが大きくなるようにミラーの角度を変化させ、反射させたビームを導く位置を、蛍光ランプ2の内面上において、徐々に走査部6に近づける。これにより、発光領域7、発光領域8、発光領域9という具合に、走査部6から遠い位置から順に蛍光灯器具1の発光領域が形成されていく。
【0035】
図5〜
図7には、蛍光ランプ2の下部27から発光を得る原理を示している。説明を簡潔にするために、
図5〜
図7に示す経過に係る説明において、蛍光ランプ2の下部27である旨の表現は省略している。
【0036】
図5に示す経過(第4経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜9に加え、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部において、蛍光灯器具1の発光領域10が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域8および9については図示を省略した。
【0037】
図6に示す経過(第5経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部と蛍光ランプ2の中央との中間地点に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜10に加え、発光領域10の走査部6側の端部から、該中間地点まで、蛍光灯器具1の発光領域11が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域9については図示を省略した。
【0038】
図7に示す経過(第6経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、蛍光ランプ2の中央に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜11に加え、発光領域11の走査部6側の端部から、蛍光ランプ2の中央まで、蛍光灯器具1の発光領域12が形成される。
【0039】
図5〜
図7に示す経過の間、走査部6は徐々に、ビームの反射角θbが大きくなるようにミラーの角度を変化させ、反射させたビームを導く位置を、蛍光ランプ2の内面上において、徐々に走査部6に近づける。これにより、発光領域10、発光領域11、発光領域12という具合に、走査部6から遠い位置から順に蛍光灯器具1の発光領域が形成されていく。
【0040】
図8〜
図10には、蛍光ランプ2の準下部28から発光を得る原理を示している。説明を簡潔にするために、
図8〜
図10に示す経過に係る説明において、蛍光ランプ2の準下部28である旨の表現は省略している。
【0041】
図8に示す経過(第7経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜12に加え、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部において、蛍光灯器具1の発光領域13が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域8、9、11、および12については図示を省略した。
【0042】
図9に示す経過(第8経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部と蛍光ランプ2の中央との中間地点に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜13に加え、発光領域13の走査部6側の端部から、該中間地点まで、蛍光灯器具1の発光領域14が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域9および12については図示を省略した。
【0043】
図10に示す経過(第9経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、蛍光ランプ2の中央に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜14に加え、発光領域14の走査部6側の端部から、蛍光ランプ2の中央まで、蛍光灯器具1の発光領域15が形成される。
【0044】
図8〜
図10に示す経過の間、走査部6は徐々に、ビームの反射角θcが大きくなるようにミラーの角度を変化させ、反射させたビームを導く位置を、蛍光ランプ2の内面上において、徐々に走査部6に近づける。これにより、発光領域13、発光領域14、発光領域15という具合に、走査部6から遠い位置から順に蛍光灯器具1の発光領域が形成されていく。
【0045】
図11〜
図13には、蛍光ランプ2の中〜上部29から発光を得る原理を示している。説明を簡潔にするために、
図11〜
図13に示す経過に係る説明において、蛍光ランプ2の中〜上部29である旨の表現は省略している。また、中〜上部29全体にビームを導くためには、ビームを導くべき位置の高さに応じて走査を多数回行う必要があるが、図示を簡潔にするために、
図11〜
図13には、そのうち最後の走査を行う場合を図示している。
【0046】
図11に示す経過(第10経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜15に加え、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部において、蛍光灯器具1の発光領域16が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域8、9、11、12、14、および15については図示を省略した。
【0047】
図12に示す経過(第11経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、走査部6から遠い側の蛍光ランプ2の端部と蛍光ランプ2の中央との中間地点に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜16に加え、発光領域16の走査部6側の端部から、該中間地点まで、蛍光灯器具1の発光領域17が形成される。なお、ビームの進行経路を分かりやすく示すという観点から、発光領域9、12、および15については図示を省略した。
【0048】
図13に示す経過(第12経過)において、走査部6は、レーザー5から出射されたビームを反射させ、蛍光ランプ2の内面上であって、蛍光ランプ2の中央に導く。該ビームが導かれた位置に塗布された蛍光体3が励起され、励起された蛍光体3から発光が得られる。この時点では、発光領域7〜17に加え、発光領域17の走査部6側の端部から、蛍光ランプ2の中央まで、蛍光灯器具1の発光領域18が形成される。
【0049】
図11〜
図13に示す経過の間、走査部6は徐々に、ビームの反射角θdが大きくなるようにミラーの角度を変化させ、反射させたビームを導く位置を、蛍光ランプ2の内面上において、徐々に走査部6に近づける。これにより、発光領域16、発光領域17、発光領域18という具合に、走査部6から遠い位置から順に蛍光灯器具1の発光領域が形成されていく。発光領域7〜18を総合すると、走査部6から遠い側に位置する、蛍光ランプ2の半分に相当している。
【0050】
ここで、MEMSミラーの角度の可動範囲は小さい。このため、走査部6としてMEMSミラーを用いた場合、走査したビームを走査部6の近くに導くことが難しい。このため、
図1の(a)〜(c)に示すとおり、蛍光灯器具1は、走査部61が、レーザー51から出射されたビームが蛍光ランプ2の一端側(すなわち、走査部61から遠い側)の内面に塗布された蛍光体3に入射するように、レーザー51から出射されたビームを走査する構成としている。同様に、
図1の(a)〜(c)に示すとおり、蛍光灯器具1は、走査部62が、レーザー52から出射されたビームが蛍光ランプ2の他端側(すなわち、走査部62から遠い側)の内面に塗布された蛍光体3に入射するように、レーザー52から出射されたビームを走査する構成としている。これにより、蛍光ランプ2全体において、蛍光ランプ2の内面に塗布された蛍光体3にビームを入射させることが容易となる。
【0051】
なお、レーザー5から出射されたビームは、LED等が発光する光に比べ、単位面積あたりのフォトンの数が多い。このため、ビームを走査しつつ蛍光体3を励起させたとき、蛍光体3は、速やかに励起される一方、長い時間をかけて緩和される。この結果、例えばμsのオーダーでビームの走査を繰り返すことにより、人間の目には蛍光灯器具1による照明が継続的に行われているように見える。
【0052】
こうして、蛍光灯器具1では、レーザー5から出射されたビームを走査部6によって走査し、走査後のビームによって蛍光ランプ2の内面に塗布された蛍光体3を励起させて発光を得る。これにより、蛍光灯器具1では、照射範囲の全体に亘って、光量を多くすることができ、十分な明るさを得ることが可能となる。なお、一例として、ワット数10mWのレーザー5を用いて蛍光灯器具1を構成した場合、蛍光灯器具1のワット数としては40mW以上が見込める。
【0053】
さらに、蛍光灯器具1は、一般に廃棄が困難であるとされる水銀を用いることなく構成することが可能である。このため、蛍光灯器具1の廃棄は容易であり、地球環境にもやさしい。
【0054】
蛍光灯器具1は、レーザー5および走査部6を備えた照明装置であると解釈することもできる。照明装置の詳細については、後述する実施の形態において説明する。
【0055】
〔実施の形態2〕
蛍光灯器具1は、レーザー5および走査部6に加え、蛍光ランプ2と、蛍光ランプ2の内面に塗布された蛍光体3とを備えた照明器具であった。
【0056】
一方、レーザー5および走査部6とは別に、蛍光ランプ2および蛍光体3と同様の機能を有する部材を用意すれば、レーザー5および走査部6により照明装置を構成することも可能である。
【0057】
図14は、本実施の形態に係る照明装置の構成を示す断面図である。前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明は繰り返さない。
【0058】
図14に示す照明装置は、レーザー5と、走査部6とを備えている。レーザー5は、ビームを出射するものであり、走査部6は、部屋(構造物)19の内面に塗布された蛍光体3に入射するレーザー5からのビームの同内面上の位置が移動するように該ビームを走査するものである。
【0059】
上述したとおり、部屋19には内面に蛍光体3が塗布されている。そして、レーザー5から出射されたビームは、走査部6により走査された後、部屋19の内面に塗布された蛍光体3に入射する。これにより、部屋19の内面に塗布された蛍光体3が励起され、照明が得られる。換言すれば、レーザー5および走査部6は部屋19全体を高速スキャンして発光させている。
【0060】
レーザー5および走査部6は、内面に蛍光体3が塗布された部屋19に取り付け可能な照明装置であると言える。
【0061】
〔効果の検証1〕
図1〜
図13に示す蛍光灯器具1および
図14に示す照明装置により、十分な明るさを実現することができるという効果について検証を行った。
【0062】
図15は、前記効果の検証装置およびメカニズムを示す図である。
【0063】
図15に示す検証装置は、蛍光ランプ2、紫外線LED20、および蛍光ランプチャック21により構成されている。
【0064】
紫外線LED20は、レーザー5の代用品である。
【0065】
蛍光ランプチャック21は、蛍光ランプ2を把持するものであり、蛍光ランプ2を中心軸22の周りに矢印の方向に回転させることができるものである。
【0066】
ここで、
図15に示す検証装置により蛍光灯器具1の動作原理を再現すべく、該検証装置を下記(1)および(2)のように動作させた。
【0067】
(1)紫外線LED20を蛍光ランプ2の内部に挿入し、蛍光ランプ2の内面に十分近づけた。これは、紫外線LED20は出射光23の単位面積あたりのフォトンの量が少ないが、紫外線LED20と蛍光ランプ2の内面とを十分近づければ、十分な光量の光(出射光23)が蛍光体3に入射され、紫外線LED20からの出射光23により走査後のビームを再現することができるためである。
【0068】
(2)紫外線LED20を中心軸22に沿って前後させつつ、蛍光ランプチャック21により蛍光ランプ2を回転させた。これは、紫外線LED20の出射光23を、蛍光ランプ2の内面全体に導くことができ、ビームの走査を再現することができるためである。
【0069】
そして、紫外線LED20の出射光23を蛍光体3に入射して得られた発光スポット24を視認して、その明るさを確認した。
【0070】
図16は、前記効果の検証結果を示す図である。
【0071】
発光スポット24は蛍光ランプ2との間に十分鮮明なコントラストを有しており、発光スポット24が十分明るいものであることが分かる。
【0072】
図17は、前記効果の検証結果を示す別の図である。
【0073】
前記検証装置を前記(1)および(2)のように動作させて得られた発光部分25は、蛍光ランプ2の中心軸22の周りに得られている。走査(ここでは、紫外線LED20を中心軸22に沿って前後させること)により、このような発光部分25を蛍光ランプ2の一端から他端まで形成すれば、蛍光ランプ2の全面から照明を得ることが可能である。
【0074】
〔効果の検証2〕
続いて、
図1〜
図13に示す蛍光灯器具1および
図14に示す照明装置により、構造物(
図1に示す蛍光ランプ2および
図14に示す部屋19)の内面全体から発光が得られることを確認するために、以下に示す検証を行った。
【0075】
図19は、前記効果の検証装置およびメカニズムを示す図である。
【0076】
図19に示す検証装置は、紫外線LED20、回転軸体30、および板状部材31により構成されている。
【0077】
紫外線LED20は、固定されている。
【0078】
回転軸体30は、円柱状または円筒状の部材である。回転軸体30における紫外線LED20側の端部には、板状部材31が取り付けられている。回転軸体30は、板状部材31を中心軸32の周りに矢印の方向に回転させることができるものである。
【0079】
板状部材31は、透明または半透明の板であり、紫外線LED20と対向する面に蛍光体3が塗布されている。紫外線LED20から出射された光は、板状部材31に塗布された蛍光体3に入射される。
【0080】
図19に示す検証装置による検証では、回転軸体30により板状部材31を回転させつつ、紫外線LED20から出射された光を予め定められた照射域33に照射して板状部材31に塗布された蛍光体3を励起させた。
【0081】
このとき、励起された蛍光体3からの発光により、板状部材31上に、照射域33と略同形状の発光スポット34が形成される。上述したとおり、板状部材31は回転軸体30により回転されるため、板状部材31の回転方向と反対方向に、複数個の発光スポット34が中心軸32の周りに円を描くように順次形成されることとなる(
図20参照)。
【0082】
また、各発光スポット34は、しばらくの間(具体的には、自身の発光の基となる蛍光体3が励起されてから緩和されるまでの間)消えずに発光を続ける。この結果、
図19に示す検証装置では、板状部材31上に複数個の発光スポット34を形成し、これにより帯状の発光領域を形成することが可能となっている。
【0083】
そして、この複数個の発光スポット34により、板状部材31上に円環状の発光領域を形成することができるかどうかを確認した。
【0084】
図20は、前記効果の検証結果を示す図である。
【0085】
図20から明らかであるとおり、複数個の発光スポット34により、板状部材31上に円環状の発光領域35を形成することができた。
【0086】
本発明の態様2に係る照明装置は、前記態様1において、前記光源がレーザーである。
【0087】
前記の構成によれば、ビームを容易に実現することができる。
【0088】
本発明の態様3に係る照明装置は、前記態様2において、前記レーザーがPWM信号によって駆動される。
【0089】
例えば、レーザーとして一般的なレーザーダイオードを用いた場合、これを連続発振により駆動すると、照明装置の寿命は数十時間程度と非常に短くなる。一方、レーザーをPWM信号により駆動することによって、照明装置の寿命を延ばすことができる。
【0090】
本発明の態様4に係る照明装置は、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記ビームの波長がUVBの波長である。
【0091】
一般に、蛍光体は、UVBの波長を有する光によって励起されるものが多い。前記の構成によれば、ビームの波長をUVBの波長とすることにより、蛍光体の選択の幅を広げることができる。光源の出射光自体の波長がUVBの波長ではなくても、SHG(Second Harmonic Generation)により蛍光体への入射光の波長をUVBの波長に変換してもよい。SHGとは、入射光の半波長の光の発生、すなわち第2次高調波の発生である。
【0092】
本発明の態様5に係る照明装置は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記走査部が、MEMSミラー、ポリゴンミラー、ガルバノミラーのいずれかである。
【0093】
前記の構成によれば、走査部を容易に実現することができる。
【0094】
本発明の態様6に係る照明器具は、前記態様1から5のいずれかの照明装置と、前記構造物と、前記蛍光体とを備えていることを特徴としている。
【0095】
前記の構成によれば、前記照明装置と同様の効果を奏する照明器具を実現することができる。
【0096】
本発明の態様7に係る照明器具は、前記態様6において、前記構造物が筒状の部材であり、前記光源が前記構造物の一端に配置されており、前記走査部が前記構造物の他端に配置されている。
【0097】
本発明の態様8に係る照明器具は、前記態様6において、前記構造物が筒状の部材であり、前記光源および前記走査部を2つ備えており、一方の前記光源である第1光源が前記構造物の一端に配置されており、他方の前記光源である第2光源が前記構造物の他端に配置されており、一方の前記走査部である第1走査部が前記構造物の他端に配置されており、他方の前記走査部である第2走査部が前記構造物の一端に配置されており、前記第1走査部は、前記第1光源から出射されたビームが前記構造物の一端側の内面に塗布された蛍光体に入射するように、前記第1光源から出射されたビームを走査し、前記第2走査部は、前記第2光源から出射されたビームが前記構造物の他端側の内面に塗布された蛍光体に入射するように、前記第2光源から出射されたビームを走査する。
【0098】
例えば、走査部としてMEMSミラーを用いた場合、走査したビームを走査部の近くに導くことが難しい。このため、前記の構成によれば、第1走査部が、第1光源から出射されたビームが構造物の一端側の内面に塗布された蛍光体に入射するように、第1光源から出射されたビームを走査する。同様に、前記の構成によれば、第2走査部が、第2光源から出射されたビームが構造物の他端側の内面に塗布された蛍光体に入射するように、第2光源から出射されたビームを走査する。これにより、構造物全体において、構造物の内面に塗布された蛍光体にビームを入射させることが容易となる。
【0099】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。