(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの光学活性中心が、希土類元素イオンおよび遷移金属イオンからなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の多結晶セラミックス。
前記多孔質相形成剤が、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、サッカロース、ジャガイモデンプン、ジャガイモ粉、米デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンおよびそれらの混合物から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、適切に調節された散乱性を有する多結晶セラミックスである。このために、多結晶セラミックスはオプトセラミックス相および多孔質相を含む。かかるセラミックスの製造方法およびその使用も本発明による。
【0002】
該多結晶セラミックスは、有利には変換部材(Konverter)として使用される。変換部材は、特定の波長の光を吸収し、且つ他の波長の光を放出するために適している。
【0003】
セラミックス変換部材は、従来技術から原理的に公知である。ただし、従来の変換部材の材料は多孔質相を含まない。最終的には、セラミックスが孔を有さないように製造方法が最適化された。さらに、従来技術から公知の変換部材は、通常、透過における動作が意図されており、それに応じて構成されている。これに対し、本発明による変換部材の材料は、反射における動作が意図されている。
【0004】
透明セラミックスは、一連の用途から広く知られている。半透明の六方晶系のAl
2O
3は、高圧放電ランプのための放電体の製造のために使用される。Sc
2O
3およびY
2O
3も使用される。Euドープされた(Y,Gd)
2O
3、Pr:Ce:Gd
2O
2S、Ceドープされたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)およびドープされたパイロクロアは、CT装置用のシンチレーション材料として公知である。三窒化アルミニウム、スピネル、およびナノスケールAl
2O
3は、防弾保護媒体としての高強度材料として使用される。Y
2O
3は、VIS〜中赤外領域用のIR透過性媒体として、並びに被覆装置における化学薬品耐性窓のために役立つ。
【0005】
透明な希土類ドープイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)セラミックスは、例えばレーザーロッドとして、またはセリウムでドープされた場合には変換部材の材料として使用される。
【0006】
一般に、高透過性セラミックスを製造するためには、2つの前提条件を満たさなければならない。一方では、粉末の適した選択によって、且つ工程の流れ(粉末の準備、成形、焼結、随意に熱間等方圧プレス)と連係して、無孔の構造が製造されなければならない。そうでなければ、光線がグレインバウンダリ領域内またはグレイン内に閉じ込められた孔で散乱されることがある。また、グレインバウンダリ領域においては、制御されないままである二次的な相が配置されていてはならない。適宜、使用される焼結助剤が、理論的には、単に単相の混晶構造内に成分として取り込まれる。
【0007】
他方では、半透明のセラミックスの使用が公知であり、この場合、非常に意図的に散乱が調節されるべきである。CTスキャナーのためには、できるだけ短距離(数mm)で、できるだけ多くの高エネルギー励起光が吸収されなければならない。
【0008】
LED用の変換部材の場合には、短距離での高い吸収という要請がさらに大きい。LEDの変換部材の材料は、比較的低い波長を有するLED光源の光線(一次光)を、直接的に、または多数の中間段階を介して部分的に吸収し、その際、電子・ホール対を生成する、活性媒質である。その再結合が、近くにある活性中心の励起をみちびく。その場合、後者は、励起された準安定状態に持ち上げられる。その緩和は、活性体の選択次第で、より長波長の光(二次光)の放出をみちびく。放出された光が励起光よりも低いエネルギーを有するので、この変換は「ダウンコンバージョン」とも称される。さらに、吸収されない一次光の一部が変換部材を通過し、その際、一次光および二次光は他方で一次光とは異なる色を生じる。
【0009】
照明の目的のために、多くの場合、青色LEDと、多くの場合セリウムでドープされたイットリウム・アルミニウム・ガーネット粉末である黄色の発光体とが組み合わせられる。部分的に透過する青色光と、黄色の蛍光光線との混合によって、白色光が生成される。この場合、適したセラミックス変換部材、例えばCe:YAG変換部材は、<1mmの距離で、理想的には<0.5mmの距離で励起青色LEDの青色光をできるだけ強く吸収しなければならず、他方で、放射された光線が順方向に放出され得る(低反射)。この場合、材料構成または材料組成による吸収、放射および反射の適した調整が必要とされる。
【0010】
殊に高い量子収率、高いストークス効率、高い吸収効率および高い光収量の観点は、さらに、変換部材の材料のために極めて重要である。その上、該材料は経済的に製造可能でなければならない。
【0011】
従来技術において、少なくとも2つの相からなるLED用のセラミックス変換部材の材料が公知である。US2006/0124951号A1、US2006/0250069号A1およびEP1980606号A1は、青色LED光からの白色光変換のための少なくとも2つの相、例えばAl
2O
3およびCe:YAGからのセラミックスを開示している。その製造は、Al
2O
3で適切に濃化されたYAG溶融物からの偶発的な結晶化を介して行われる。Al
2O
3のグレインは最終的にCe:YAGの間に埋め込まれて配置される。ただし、この溶融プロセスは、グレイン構造の適切且つ再現性のある調整のために適していない。従来技術において記載されている変換部材の材料は、無孔性が達成されるように製造される。従って、変換部材は多孔質相を有さない。
【0012】
US4174973号には、イットリア並びに0.1〜5質量%のMgOもしくはMgAl
2O
4からなるセラミックスが開示されている。MgO含有化合物は、焼結の際に助剤としてはたらき、その焼結自体は、1850℃を上回る非常に高い温度で、好ましくは2100℃で行われる。この温度で、例えばMgOがイットリアの格子内に組み込まれることができ、従って混合系が存在する。しかしながら、サブソリダスを下回る冷却の際、MgOとイットリアへの分解が起きる。2相混合系は、恐らく、材料の透過性減少の原因であり、なぜなら、この2つの相は異なる屈折率を有するからである。どのように適切に制御された構造を有する混合を生じるかという教示は与えられていない。US4174973号は、無孔であることを、開発された変換部材の材料の利点として指摘している。
【0013】
オプトセラミックス変換部材の提供も公知である。例えば、US2004/0145308号A1は、青色励起源の領域に配置された少なくとも1つの多結晶の変換部材を有するLEDを記載している。しかしながら、個々の変換部材は単相である。US2004/0145308号A1は、孔の存在の可能性を指摘しているが、ただし、その大きさ、形状および体積は特徴付けられていない。さらに、孔を有する変換部材の材料の詳細な製造は記載されていない。そこに記載された材料では、孔は主に材料表面近傍に集中している。
【0014】
従来技術によるセラミックスは、殊にレーザーダイオードの変換部材として反射動作用に適しているようには構成されていない。
【0015】
従って、本発明の課題は、散乱範囲が適切に調節できるように製造できるセラミックスを提供することである。本発明のさらなる課題は、レーザーダイオードでの励起に対して安定である、即ち、>180℃の温度でも機能できるセラミックスを提供することである。さらに、それらのセラミックスは安価に製造可能であるべきである。
【0016】
本発明の課題は、特許請求の範囲の対象によって解決される。前記課題は、少なくとも1つの多孔質相および少なくとも1つのオプトセラミックス相を含む、有利にはそれらからなる、多結晶セラミックスによって解決される。このセラミックスを含む、またはそれらからなる変換部材、並びに該セラミックスの有利には反射における、および殊にレーザーダイオードにおける変換部材としての使用も、本発明による。
【0017】
オプトセラミックス相は結晶質であり、それは有利には密に配列された微結晶からなる。オプトセラミックス相は、殊に、それぞれの材料の理論密度に対して好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%の密度を有する。オプトセラミックス相は、殊に、それぞれの材料の理論密度に対して、最高99%、さらに好ましくは最高97%、さらに好ましくは最高95%の密度を有する。
【0018】
多孔質相は、適切に調節された大きさ、体積および形状を有する散乱中心を含む。多孔質相は、本発明の多結晶セラミックスの少なくとも1体積%、好ましくは少なくとも2.5体積%、さらに好ましくは少なくとも5体積%、および特に好ましくは少なくとも10体積%の割合を有する。多孔質相の割合が少なくなると、望ましい散乱が達成できない。
【0019】
多結晶セラミックスの多孔質相の割合は、有利には50体積%、さらに好ましくは40体積%、および特に好ましくは30体積%を超えるべきではない。セラミックス内に有利な割合の多孔質相を組み込むことによって、材料の重要な特性、例えば反射を、極めて高い光学品質で制御することができる。
【0020】
意外なことに、本発明によるセラミックスは、多孔質相にもかかわらず、温度安定性である。孔内に蓄積する熱は、グレインバウンダリおよびセラミックスグレインを通じて外に輸送されることができ、その際セラミックスは粉砕しない。従って、該セラミックスは、高温での使用のためにも適している。
【0021】
本発明の多結晶セラミックスは、殊に、散乱が必要な用途、例えば殊にレーザーダイオード用の変換部材のために適している。殊に、本発明によるセラミックスは、例えば反射の構成におけるLD用の変換部材の際に生じ得る高温での使用のためにも適している。医療用のイメージングにおいて、殊に、CT装置においても、本発明の材料を使用できる。従って、本発明の多結晶セラミックスを含む発光体(Leuchtkoerper)も、本発明による。さらには、本発明の多結晶セラミックスを含むCTスキャナーも、本発明による。
【0022】
オプトセラミックス相は、有利には立方晶の結晶構造を有する微結晶を含む。好ましくは、オプトセラミックス相はこの微結晶からなる。微結晶は、ガーネット、立方晶の三二酸化物、スピネル、ペロブスカイト、パイロクロア、フルオライト、三窒化物、および上記の材料の2つまたはそれより多くの混晶から選択できる。微結晶は、立方晶ではない構造を有することもできる。微結晶は有利には酸化物である。
【0023】
微結晶は、好ましくは最高50μm、さらに好ましくは最高20μm、なおもさらに好ましくは最高10μm、なおもさらに好ましくは最高8μm、なおもさらに好ましくは最高7.5μm、なおもさらに好ましくは最高5μm、特に好ましくは最高3μmの直径を有する。微結晶が大きすぎると、オプトセラミックス相の光学特性が悪影響を受ける。微結晶は好ましくは少なくとも0.2μm、さらに好ましくは少なくとも0.5μm、なおもさらに好ましくは少なくとも1μm、なおもさらに好ましくは少なくとも2μm、特に好ましくは少なくとも2.5μmの直径を有する。微結晶が小さすぎると、オプトセラミックス相が充分に安定ではない。記載された微結晶の直径はマーチン径である。直径の測定は、好ましくは顕微鏡法、殊に光学顕微鏡法によって行われる。
【0024】
微結晶は好ましくは化学実験式A
xB
yO
z (前記x≧1且つy≧0且つx+y=2/3z)を有する。ここで、Aは好ましくはスカンジウムの族からのものであるか、またはランタノイドに属する。Bは、ホウ素の族からのものである。さらに好ましくは、Aはイットリウム、スカンジウム、ガドリニウム、イッテルビウム、ルテチウム、およびそれらの混合物を含む群から選択される。Bは、有利にはアルミニウム、ガリウムおよびそれらの混合物から選択される。なおもさらに好ましくは、Aはイットリウムに相応し、且つBはアルミニウムに相応し、x=3且つy=5である。Aは上記の元素の混合物、例えばYおよびGdまたはYおよびLuの混合物であってもよい。Bは上記の元素の混合物、即ちAlおよびGaの混合物であってもよい。
【0025】
化学実験式A
xB
yC
wO
z (前記x、y、w≧1且つx+y+w≧2/3z)の組成を有する微結晶も、本発明の可能な実施態様である。
【0026】
本発明の選択的な実施態様の微結晶は、A
xB
yO
z (前記x、y≧1且つy=2x且つx+y=3/4z)の形の化学組成を有する。この実施態様の場合、Aは好ましくはアルカリ土類金属の族、または亜鉛の族からのものであり、且つBは好ましくはホウ素の族からのものである。特に好ましくは、Aはマグネシウムまたは亜鉛に相応し、且つBはアルミニウムに相応する。
【0027】
好ましいガーネットは、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、イットリウム・ガドリニウム・アルミニウム−ガーネット(YGAG)、ガドリニウム・ガリウム・ガーネット(GGG)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)、ルテチウム・アルミニウム・ガリウム・ガーネット(LuAGG)、イットリウム・スカンジウム・アルミニウム・ガーネット(YSAG)およびそれらの混合物である。
【0028】
好ましい立方晶の三二酸化物は、Y
2O
3、Gd
2O
3、Sc
2O
3、Lu
2O
3、Yb
2O
3およびそれらの混合物である。好ましい三窒化物は、AlON、BaSiON、SrSiONおよびそれらの混合物である。好ましいスピネルは、ZnAl
2O
4、MgAl
2O
4およびそれらの混合相である。
【0029】
選択的な実施態様において、オプトセラミックス相の微結晶は、立方晶ではない結晶構造を有する。立方晶ではない三二酸化物、例えば殊にGd
2O
3、La
2O
3、Al
2O
3、Lu
2Si
2O
7およびそれらの混合物が好ましい。
【0030】
オプトセラミックス相は、1つまたはそれより多くの光学活性中心を含むことができる。活性中心は、好ましくは希土類元素イオンおよび遷移金属イオンからなる群から選択される。好ましくは、活性中心は希土類元素イオンの群から選択される。以下の元素のイオンが特に好ましい: Ce、Cr、Eu、Nd、Tb、Er、Pr、Smおよびそれらの混合物。Ce、Cr、Eu、Tb、Pr、Smおよびそれらの混合物がさらに好ましい。特に好ましい活性中心はCeである。活性中心は、ある波長の入射光を他の波長の光に変換するために役立つ。
【0031】
オプトセラミックス相は、有利には少なくとも0.01質量%、さらに好ましくは少なくとも0.03質量%および特に好ましくは少なくとも0.045質量%の質量割合で活性中心を含む。活性中心は、有利には1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下、および特に好ましくは0.55質量%以下の割合で存在すべきである。この値を守った場合、抜群の変換が達成される。
【0032】
オプトセラミックス相は、半透明または透明であってよい。好ましくは、オプトセラミックス相は可視光に対して透明である。
【0033】
本発明に関して、セラミックスまたは相が「可視光に対して透明」であるとは、可視光のスペクトル(380nm〜800nm)内の50nm幅の領域において25%より高い純透過率を有する場合である。オプトセラミックス相のこの純透過率は、有利にはさらに、60%より上、さらに好ましくは80%より上、さらに好ましくは90%より上、および特に好ましくは95%より上である。純透過率は、層厚2mmの場合のものを意味する。
【0034】
多孔質相は、少なくとも1つの散乱中心を含み、且つ、オプトセラミックス相内に埋め込まれている。好ましくは、多孔質相は、オプトセラミックス相内に埋め込まれている多数の散乱中心を含む。本発明に関して「散乱中心」とは、有利には孔であると理解される。好ましくは、孔は、0.1〜100μm、さらに好ましくは0.5〜50μm、および特に好ましくは3〜5μmの大きさを有する。
【0035】
本発明によるセラミックスは、好ましくは断面内の面積割合で少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3%およびなおもさらに好ましくは少なくとも4%の孔を有する。本発明によるセラミックスは、好ましくは断面内の面積割合で最高25%、より好ましくは最高15%およびなおもさらに好ましくは最高10%の孔を有する。孔の割合が高すぎると、セラミックスが充分に安定ではなく、且つ望ましい反射値を達成できない。
【0036】
孔は、本発明によれば、球状の孔、卵形の孔、および長形の孔から選択される形状を有する。好ましくは、孔は、卵形の孔、および長形の孔から選択される形状を有する。卵形の孔がとりわけ特に好ましい。卵形の孔の場合、望ましい散乱が特に良好に達成できる。
【0037】
その際、孔の大きさ、孔の体積および孔の形状は、製造方法および使用される多孔質相形成剤を介して適切に調整される。一方では、焼結温度の高まりが孔の大きさと正の相関を有する。他方では、孔は、使用される多孔質相形成剤によっても大きさおよび形態が変化する。この場合、球状の孔、卵形の孔、および長形の孔を区別することができる。
【0038】
球状の孔の各々の孔の最大直径と最小直径との比は、1:1〜1.09:1の範囲である。卵形の孔の最大直径と最小直径との比は、1.1:1〜2.9:1の範囲である。長形の孔の最大直径と最小直径との比は、3:1〜15:1の範囲である。2.5:1の比を有する卵形の孔が特に好ましい。上記の比の測定について、最大の直径は孔の最も大きい直径であり、最小は同じ孔の最も小さい直径である。
【0039】
卵形の孔も長形の孔も、本発明の態様によってその大きさを変更することができる。大きな卵形の孔は、最大直径20〜50μm、および最小直径10〜20μmを有する。小さな卵形の孔は、最大直径2〜6μm、および最小直径1〜3μmを有する。大きな長形の孔は、最大直径20〜50μm、および最小直径2〜8μmを有する。小さな長形の孔は、最大直径5〜15μm、および最小直径1〜5μmを有する。
【0040】
本発明の好ましい実施態様は、とりわけ、最大直径<10μmの孔を含有する。大きすぎる孔は変換過程の量子収率を低下させ、なぜならその際、変換された光がその中にトラップされるからである。
【0041】
本発明によれば、孔の大きさの他に、単位体積あたりの孔の数も調節できる。単位体積あたりの孔の数の減少は、殊に、焼結助剤濃度を高めることおよび/または多孔質相形成剤の添加によって達成される。
【0042】
セラミックスの密度は、好ましくは理論密度の少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、なおもさらに好ましくは少なくとも93%である。セラミックスの密度は、好ましくは最高で理論密度の96.5%、さらに好ましくは95.5%である。本発明によれば、セラミックスの密度は、多孔質相形成剤の種類および濃度、および/または焼結助剤の濃度によって調節される。セラミックスの密度は、焼結温度および/または加熱速度によっても影響され得る。加熱速度が速いと、より高密度のセラミックスが得られる。より低い密度のセラミックスの場合、より高い散乱を達成することができる。
【0043】
加熱速度は好ましくは少なくとも0.5K/分、さらに好ましくは少なくとも1K/分、なおもさらに好ましくは少なくとも2K/分、特に好ましくは少なくとも4K/分である。しかしながら、あまりにも高すぎる加熱速度を選択すべきではない。そうでなければ、熱応力が増加して発生することがある。さらには、高密度過ぎるセラミックスが得られることがある。加熱速度は好ましくは最高50K/分、さらに好ましくは最高20K/分、なおもさらに好ましくは最高10K/分、特に好ましくは最高5K/分である。
【0044】
孔は、製造工程において多孔質相形成剤を適切に添加することによって生じる。
【0045】
プラスチック、殊に熱可塑性プラスチックは、糖類と比べて、本発明による多孔質相形成剤としてよく適していないことが判明している。殊に、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルおよびポリカーボネートは、有利には多孔質相形成剤として使用されない。
【0046】
多孔質相形成剤は、好ましくは、天然または合成の糖類を含む。特に好ましくは、多孔質相形成剤は、天然または合成の糖類からなる。とりわけ特に好ましくは、多孔質相形成剤は、天然の糖類からなる。好ましくは、多孔質相形成剤は、単糖類、二糖類、または多糖類から、殊に、砂糖またはデンプンから選択される。本発明によれば、種々の糖類の混合物も、多孔質相形成剤として使用できる。好ましい多孔質相形成剤は、例えば粉砂糖である。好ましい粉砂糖は、二糖類の他に、約1〜10質量%のトウモロコシデンプンを含有する。特に好ましい粉砂糖は、二糖類の他に、約3質量%のトウモロコシデンプンを含有する。
【0047】
天然の多孔質相形成剤が使用される場合、有利には、セラミックス材料の焼結挙動自体は影響されない。従って、好ましくは、焼結挙動は多孔質相形成剤を用いても用いなくても同じである。合成の多孔質相形成剤に対する天然の多孔質相形成剤の利点はそこにある。
【0048】
好ましくは、単糖類は、フルクトース、グルコース、マンノースおよびガラクトースから選択される。特に好ましい単糖類はグルコースおよびフルクトースである。二糖類は、好ましくはラクトース、マルトースおよびサッカロースから選択される。二糖類は、水中で易溶性であり、エタノール中では難溶性であり、且つ大抵の有機溶剤中では不溶性である。変換部材のセラミックスの製造のための混合物が有利にはアルコール性溶液中で作られるので、多孔質相形成剤として二糖類が特に適している。特に好ましい二糖類は、サッカロースである。好ましい多糖類は、10より多くの単糖類単位を有する。適した単糖類単位として、ペントースおよびヘキソースが判明しており、さらに好ましくは、グルコース、ガラクトース、キシロース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マンヌロン酸、グルロン酸、グロースおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、多糖類はグルコースモノマーからの重縮合物である。さらに好ましくは、グルコースモノマーはα−1,4−および/またはα−1,6−グリコシド結合によって結合されており、特に好ましくは、多糖類は一般式(C
6H
10O
5)
nを有する。多糖類のモル質量は、好ましくは>10
5g/molである。多糖類は、好ましくはジャガイモデンプン、ジャガイモ粉、米デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンおよびそれらの混合物から選択され、さらに好ましくは米デンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンおよびそれらの混合物から選択される。多孔質相形成剤として特に好ましいのは米デンプンである。米デンプンが最も均質な孔の分布をもたらす。
【0049】
多糖類の粒径は有利には200μm未満である。さらに好ましくは、多糖類の粒径は185μm未満、さらに好ましくは180μm未満である。粒径は有利には、光学顕微鏡で測定され、その際、マーチン径が測定される。
【0050】
デンプンは熱の作用下で自重の何倍もの水を物理的に結合し、膨潤し且つ糊化することができる。水を用いた加熱に際して、デンプンは47〜57℃で膨潤し、その層が破裂し、且つ55〜87℃(ジャガイモデンプン:62.5℃、小麦デンプン:67.5℃)でデンプン糊が生じ、前記デンプン糊は、デンプンの種類によって異なる硬化力を有する。トウモロコシデンプン糊は、小麦デンプン糊よりも大きい硬化力を有する。小麦デンプン糊は、ジャガイモデンプン糊よりも大きい硬化力を有する。デンプンの種類によって、デンプン糊は酸性下で幾分容易に分解する。多孔質相形成剤の適した選択によって、孔の形状および孔の分布の均質性を調節することができる。
【0051】
球状の孔を製造するためには、好ましくはジャガイモ粉、ジャガイモデンプンまたはそれらの混合物を使用する。卵形の孔を得るためには、好ましくは米デンプンを使用する。長形の孔を取得するためには、好ましくはトウモロコシデンプンを使用する。
【0052】
多孔質相形成剤として二糖類および/または多糖類を使用すると、製造のために多孔質相形成剤として単糖類を使用したセラミックスと比較してより低密度のセラミックスを得ることができる。より低い密度は、通常、より高い散乱と相関する。従って、多孔質相形成剤として二糖類および/または多糖類を用いると、より高い散乱を達成できるセラミックスを得ることができる。
【0053】
他方で、単糖類は通常、二糖類および多糖類よりもセラミックスから良好に焼却されることができる。焼却後、場合によってはセラミックス中に残っている炭素残留物は、量子収率に悪影響することがある。従って、多孔質相形成剤として単糖類を使用すると、製造のために多孔質相形成剤として二糖類および/または多糖類を使用したセラミックスと比較してより高い量子収率を有するセラミックスを得ることができる。
【0054】
本発明の好ましい実施態様において、多孔質相はオプトセラミックス相内に均質に埋め込まれている。孔の不均質な分布は、変換過程の量子収率を低下させる。使用される多孔質相形成剤によって、孔の分布の均質性を適切に調節することができる。多孔質相形成剤としてのジャガイモデンプンの使用は、孔の不均質な分布をもたらす。多孔質相形成剤としての小麦デンプンの使用は、焼結体にわたって孔のより均質な分布をもたらす。孔の最も均質な分布は、多孔質相形成剤としての米デンプンを用いて達成される。孔の分布の均質性は、走査型電子顕微鏡を用いて測定される。
【0055】
変換部材の材料のために好ましい高い量子収率は、有利にはオプトセラミックス相の立方晶の結晶構造およびそこから生じる透過性によって達成される。量子収率はさらに、本発明による製造方法および本発明による多結晶セラミックス中の孔の存在によって高く保たれる。その際、本発明に関する量子収率は、吸収されたフォトンの数あたりの放射されたフォトン(光量子)の数の割合である。本発明による多結晶セラミックスの量子収率は、好ましくは60%超、さらに好ましくは70%超、なおもさらに好ましくは80%超、なおもさらに好ましくは85%超、なおもさらに好ましくは88%超、および特に好ましくは90%超である。多孔質相形成剤として単糖類が使用される場合、量子収率が特に高い。
【0056】
好ましくは、多結晶セラミックスは、波長600nm且つ試料厚さ1mmの場合、70〜100%、好ましくは75〜95%、特に好ましくは75〜90%の反射率を有する。前記の反射率を有する多結晶セラミックスは、後方散乱方式における変換部材として、殊にHBLED変換部材およびLD変換部材として特に良く適している。
【0057】
反射は、積分球を用いた分光光度計において、有利にはフレネル反射を含めて測定できる。この場合、試料厚1mmが有利であることが判明している。600nmでの反射は、材料の散乱についての尺度である。散乱の評価は、励起スペクトル外であるができれば放射スペクトル内で行われるべきである。評価波長600nmという選択は、この条件を満たしている。散乱が大きいほど、材料は、600nmでより強く反射する。
【0058】
多孔質相形成剤として糖類を使用することよって、製造の際に多孔質相形成剤を使用しなかったセラミックスと比較して青色の反射を高めることができる。
【0059】
本発明の課題は、さらに、本発明による多結晶セラミックスの製造方法によって解決される。この方法は、好ましくは以下の段階を含む:
a. オプトセラミックス相の出発材料の混合物を準備する段階、
b. 少なくとも1つの糖類を含む多孔質相形成剤、および随意に焼結助剤を前記混合物に添加する段階、
c. 前記混合物から成形体を製造する段階、
d. 前記成形体を焼結する段階。
【0060】
好ましい実施態様において、段階c)において製造された成形体をさらに、有利には500〜1200℃の温度で予備焼結する。これは、多孔質相形成剤から出る炭酸塩が未焼結体から完全に焼却されるという利点を有する。残留する炭酸塩は、変換の効率の妨げになる。最も良いのは、ガスの流れの下で結合剤の除去を行うことであり、その際、ガスは好ましくは酸素、フォーミングガス、アルゴン、窒素およびそれらの混合物から選択される。特に好ましくは酸素であり、なぜなら、還元された成分が再度酸化され得るからである。
【0061】
出発材料の混合物は、有利には光学活性成分も含有する。この方法で、特に均質なドーピングが達成される。さらに、煩雑な後付けのドーピング方法、例えば「ディップコーティング法」を省略できる。
【0062】
直径<1μm、好ましくはナノスケールのサイズ(<300nm)を有する一次粒子を有する、特に好ましくは一次粒子直径50〜250nmを有する粉末が、目標組成による割合で計量される。上記の直径は、好ましくは動的光散乱を用いて測定される。目標組成は、ガーネット組成の化学量村組成比の範囲周辺で変化できる、即ち、Y
2O
3を多く含むもしくはGd
2O
3を多く含む側で約0.01〜10mol%突出しているか、またはAl
2O
3を多く含むもしくはAl
2O
3−Gd
2O
3を多く含む側で0.01〜10mol%突出しているかのいずれかである。分散剤および結合剤の添加後、該混合物を有利にはエタノールと混合する。これは、有利にはAl
2O
3球を用いて、ボールミル内で、且つ特に好ましくは12〜16時間行われる。有利には10〜24時間の、タンブラー(Taumler)内での随意の第二の混合の前に、混合物に焼結助剤および/または多孔質相形成剤を選択的に添加する。
【0063】
焼結助剤は好ましくはTEOS、コロイド状SiO
2、SiO
2ナノ粉末、SiO
2のμm粉末およびCaCO
3から選択される。特に好ましい焼結助剤はTEOSである。TEOSは、好ましくは0〜1質量%の濃度、特に好ましくは0.1〜0.5質量%の濃度で使用される。TEOSは孔の数の最適な調節に役立つ。
【0064】
粉砕懸濁液は選択的に、回転蒸発器で乾燥されるか、または噴霧乾燥機内で顆粒化される。
【0065】
粉末は引き続き、有利には一軸方向に円板またはロッド状にプレスされる。一軸加圧条件は、有利には10〜50MPa、加圧時間は有利には数秒〜1分である。予備成形された成形物を有利には冷間等方圧プレスでさらに圧縮し、その際、プレス圧は有利には100〜300MPaである。圧力伝達媒体は、有利には水またはオイルである。
【0066】
引き続き、有利には第一の熱段階で随意に結合剤を焼却する。熱処理時間は有利には1〜24時間である。温度は有利には600〜1000℃である。未焼結体が焼かれたものを、引き続き、有利には室窯内で、好ましくは酸素流下で、選択的に直接的に空気、窒素、アルゴンまたはヘリウム中で、または真空焼結炉内(殊に10
-5〜10
-6mbarの減圧下)で焼結する。焼結温度と時間は混合物の焼結挙動による、即ち、組成物の形成後、さらなる圧密化を行って定義され調節された孔を有するセラミックスにする。Ce:Y
3Al
5O
12の場合、ガーネット相は約1350〜1450℃から形成される。セラミックス体への焼結は、より高い温度、有利には1550〜1800℃で2〜24時間行われる。
【0067】
還元における系の化学作用および感度によって、焼結後にさらなる熱段階において試料を再度酸化することがある(例えば1000℃、5時間、O
2流)。有利には光学的に半透明且つ均質な物体が得られ、それを、変換部材材料へとさらに加工することができる。
【0068】
混合物における多孔質相形成剤の体積割合は、有利には少なくとも1%、さらに好ましくは少なくとも2.5%、およびより好ましくは少なくとも10%である。多孔質相形成剤の割合は、有利には50体積%の値を超えるべきではない。前記体積割合が少な過ぎると、望ましい反射が達成できない。体積割合が高すぎる場合には、機械的な安定性が阻害される。
【0069】
本発明による製造方法は、オプトセラミックス相と多孔質相とを有する多結晶セラミックスの製造を可能にする。多孔質相形成剤および多孔質相の体積割合の適切な選択によって、多結晶セラミックスの反射特性を適切に調節することができる。
【0070】
前記の製造方法の条件を保持することによって、上記の卓越した特性を有する本発明による多結晶セラミックスが得られる。
【実施例】
【0072】
以下の表にいくつかの実験の詳細を示す
【表1】
【0073】
例1
0.05質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
2.5molのAl
2O
3、1.4965molのY
2O
3および0.0863molのCeO
2の、直径<1μm直径の一次粒子を有する粉末を、目標組成に従う比で計量する。分散剤および結合剤の添加後、該混合物を、ボールミル内でエタノールおよびAl
2O
3球と12〜16時間混合する。
【0074】
該粉砕懸濁液は選択的に、回転蒸発器で乾燥されるか、または噴霧乾燥機内で顆粒化される。
【0075】
引き続き、粉末を一軸方向に円板またはロッド状にプレスする。一軸加圧条件は、10MPaの場合に加圧時間30秒である。予備成形された成形物を冷間等方圧プレスでさらに圧縮し、その際、プレス圧は200MPaで1分間である。圧力伝達媒体は水である。
【0076】
引き続き、第一の熱段階で結合剤を焼却する。熱処理時間は6時間で、温度は700℃である。未焼結体が焼かれたものを、引き続き、室窯内、濃縮O
2雰囲気下で、即ち、酸素流下で通常の室窯内で焼結する。焼結温度と時間は混合物の焼結挙動による、即ち、組成物の形成後、さらなる圧密化を行って定義され調節された孔を有するセラミックスにする。Ce:Y
3Al
5O
12の場合、ガーネット相は約1350〜1450℃から形成される。セラミックス体への焼結は、より高い温度、1650〜1700℃で3時間行われる。
【0077】
光学的に半透明且つ均質な物体が得られ、それを、変換部材の材料へとさらに加工することができる。
【0078】
例2
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例1と同様に行ったが、ボールミル内での混合後にタンブラー内での第二の混合を10〜24時間行った点で異なる。タンブラー内での混合によって、均質性の向上が生じ、且つ、わずかな未反応Al
2O
3グレインしか有さない単相のYAG構造が形成される。
【0079】
例3
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例2と同様に行い、その際、タンブラー内での第二の混合の前に、混合物に0.15質量%のTEOSを焼結助剤として添加した。TEOSは水の添加によって活性化される:
Si(OC
2H
5)
4+4H
2O=Si(OH)
4+4C
2H
5OH
Si(OH)
4=Si(OH)
2O+H
2O=SiO
2+H
2O
焼結助剤の使用によって孔の数が減少されたことがSEMにより観察された。
【0080】
例4
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例3と同様に実施したが、0.3質量%のTEOSを使用した点で異なる。
【0081】
より多量の焼結助剤の使用によって孔の数がさらに減少されたことがSEMにより観察された。
【0082】
例5
0.2質量%のCeO
2を有する(Y,Gd)
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例4と同様に実施したが、TEOSと共に(混合物に対して)20体積%の米デンプンを添加した点で異なる。
【0083】
米デンプンを添加した場合、孔が非常に均質に分布し、且つ卵形の形態を有したことがSEMにより観察された。
【0084】
例6
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例5と同様に行うが、米デンプンの代わりに10体積%のジャガイモデンプンを使用した点で異なる。
【0085】
ジャガイモデンプンを添加した場合、孔が非常に大きく且つ長形であったことがSEMにより観察された。
【0086】
例7
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例6と同様に実施するが、ジャガイモデンプンの代わりに10体積%の小麦デンプンを使用した点で異なる。
【0087】
小麦デンプンを添加した場合、孔が長形で且つジャガイモデンプンの場合よりも小さいことがSEMにより観察された。孔はジャガイモデンプンの場合よりも均質に分布した。
【0088】
例8
0.2質量%のCeO
2を有するY
3Al
5O
12からの半透明セラミックスの一軸プレスによる製造(反応性焼結を用いる)
該方法を例5と同様に実施したが、10体積%の米デンプンのみを使用した点で異なる。
【0089】
米デンプンを使用した場合、孔が非常に均質に分布し、且つ卵形の形態を有したことがSEMにより観察された。