特許第6223472号(P6223472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223472共振型電力伝送システム及び共振型電力送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223472
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】共振型電力伝送システム及び共振型電力送信装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20171023BHJP
【FI】
   H02J50/12
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-554399(P2015-554399)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2013084839
(87)【国際公開番号】WO2015097810
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 好幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 清秀
(72)【発明者】
【氏名】江副 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有基
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−072074(JP,A)
【文献】 特開2011−229265(JP,A)
【文献】 特開2009−131039(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/080285(WO,A1)
【文献】 特開2012−044735(JP,A)
【文献】 特開2012−016171(JP,A)
【文献】 特開2012−175824(JP,A)
【文献】 特開2013−212034(JP,A)
【文献】 特開2013−126307(JP,A)
【文献】 特開2009−033782(JP,A)
【文献】 特開2008−236917(JP,A)
【文献】 特開2008−237007(JP,A)
【文献】 特開2008−237006(JP,A)
【文献】 特開2006−230032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信アンテナ、第1の受信アンテナ、及び前記第1の送信アンテナへの電力供給を制御する第1の共振型送信電源装置を有する電力伝送用の送受信系と、
発生する電磁界の範囲が前記第1の送信アンテナから発生される電磁界と重複する第2の送信アンテナ、第2の受信アンテナ、及び前記第2の送信アンテナへ定常的又は断続的な小電力を供給する第2の共振型送信電源装置を有する異物検出用の送受信系と、
前記第2の受信アンテナからの小電力を受信して起動する起動回路、及び前記起動回路により起動され、前記第1の受信アンテナからの電力を受信する受信電源装置とを備え、
前記第2の共振型送信電源装置は、
前記第2の送信アンテナの送信電力状態を検出する送信電力状態検出回路と、
前記送信電力状態検出回路による検出結果に基づいて、前記重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出する異物検出回路とを備え、
前記異物検出回路により異物が検出された場合に、当該異物が誘電体であるか否かを判別する
ことを特徴とする共振型電力伝送システム。
【請求項2】
前記異物が誘電体であるか否かに応じて、前記第1の送信アンテナへの電力の供給を低減又は停止させるよう前記第1の共振型送信電源装置を制御する電力制御回路をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送システム。
【請求項3】
前記異物が誘電体であると判定された場合は、前記電力制御回路は、前記第1の送信アンテナへの電力の供給を停止する
ことを特徴とする請求項2記載の共振型電力伝送システム。
【請求項4】
前記送信電力状態検出回路は、送信電力状態として、前記第2の送信アンテナからの反射電力、当該第2の送信アンテナに入力される電圧と電流との位相差、当該電圧及び当該電流の振幅のうち少なくとも1つ以上を検出する
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送システム。
【請求項5】
前記異物検出用の送受信系は、複数系統設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送システム。
【請求項6】
前記電力伝送用の送受信系と前記異物検出用の送受信系の伝送周波数は、同一の固定周波数である
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送システム。
【請求項7】
前記電力伝送用の送受信系と前記異物検出用の送受信系の伝送周波数は、異なる固定周波数である
ことを特徴とする請求項1記載の共振型電力伝送システム。
【請求項8】
前記受信電源装置は、
自機の識別情報を示す信号を発生して前記異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳する識別信号発生回路と、
自機の受信状態を示す信号を発生して前記異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳する状態信号発生回路とを備え、
前記第2の共振型送信電源装置は、
前記送信電力状態検出回路は、検出結果から前記識別信号発生回路又は前記状態信号発生回路により重畳された信号を抽出し、
前記電力制御回路は、前記送信電力状態検出回路により抽出された信号に基づいて、前記第1の共振型送信電源装置を制御する
ことを特徴とする請求項記載の共振型電力伝送システム。
【請求項9】
第1の送信アンテナ、第1の受信アンテナ、及び前記第1の送信アンテナへの電力供給を制御する第1の共振型送信電源装置を有する電力伝送用の送受信系と、
発生する電磁界の範囲が前記第1の送信アンテナから発生される電磁界と重複する第2の送信アンテナ、第2の受信アンテナ、及び前記第2の送信アンテナへ定常的又は断続的な小電力を供給する第2の共振型送信電源装置を有する異物検出用の送受信系とを備え、
前記第2の共振型送信電源装置は、
前記第2の送信アンテナの送信電力状態を検出する送信電力状態検出回路と、
前記送信電力状態検出回路による検出結果に基づいて、前記重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出する異物検出回路とを備え
前記異物検出回路により異物が検出された場合に、当該異物が誘電体であるか否かを判別する
ことを特徴とする共振型電力送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、送信アンテナから発生される電磁界における異物の有無を検出し、異物を検出した場合に電力伝送の低減又は停止を行う共振型電力伝送システム及び共振型電力送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、従来の電源装置において、異物の有無を検出する機能を有するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示された電源装置では、送信アンテナ101に対し、巻き軸が直交するセンサコイル102を複数設け(図5では1つのみ図示)、当該センサコイル102の周囲103に存在する異物を検出している。受信アンテナ(不図示)側についても同様に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−215073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構成では、異物検出用のセンサコイル102を、送信アンテナ101、受信アンテナとは別に設ける構成であるため、以下のような課題がある。まず、装置全体がセンサコイル102分大型化してしまうという課題がある。すなわち、送信アンテナ101、受信アンテナ上にセンサコイル102を配置するため、特に高さ(厚み)が増加し、また、質量も増加してしまう。また、送信アンテナ101から発生される電磁界の範囲内であっても、送信アンテナ101、受信アンテナから離れた遠方に存在する異物、又は送信アンテナ101と受信アンテナとの間の中心付近に存在する異物を検出することが困難であるという課題がある。また、異物検出用のセンサコイル102を多数必要とするため、コスト増加の原因となるという課題がある。また、異物検出用のセンサコイル102を多数駆動する必要があるため、消費電力増加の原因となるという課題がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、送信アンテナから発生される電磁界における異物の有無を検出することができる共振型電力伝送システム及び共振型電力送信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る共振型電力伝送システムは、第1の送信アンテナ、第1の受信アンテナ、及び第1の送信アンテナへの電力供給を制御する第1の共振型送信電源装置を有する電力伝送用の送受信系と、発生する電磁界の範囲が第1の送信アンテナから発生される電磁界と重複する第2の送信アンテナ、第2の受信アンテナ、及び第2の送信アンテナへ定常的又は断続的な小電力を供給する第2の共振型送信電源装置を有する異物検出用の送受信系と、第2の受信アンテナからの小電力を受信して起動する起動回路、及び起動回路により起動され、第1の受信アンテナからの電力を受信する受信電源装置とを備え、第2の共振型送信電源装置は、第2の送信アンテナの送信電力状態を検出する送信電力状態検出回路と、送信電力状態検出回路による検出結果に基づいて、重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出する異物検出回路とを備え、異物検出回路により異物が検出された場合に、当該異物が誘電体であるか否かを判別するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、送信アンテナ(第1の送信アンテナ)から発生される電磁界における異物の有無を検出することができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの構成を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの動作を説明する図であり、(a)異物がない場合での異物検出用の送受信系の電圧の振幅(破線)、電力伝送用の送受信系の電圧の振幅(実線)を示す図であり、(b)異物がある場合での異物検出用の送受信系の電圧の振幅(破線)、電力制御後の電力伝送用の送受信系の電圧の振幅(実線)を示す図である。
図3】この発明の実施の形態2に係る共振型電力伝送システムの構成を示す図である。
図4】この発明の実施の形態2に係る共振型電力伝送システムの動作を説明する図であり、(a)第1の共振型送信電源装置に対する制御信号を示す図であり、(b)受信電源装置による負荷電流を示す図であり、(c)異物検出用の送受信系の電流の振幅を示す図である。
図5】従来の電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る共振型電力伝送システムの構成を示す図である。
共振型電力伝送システムは、電気信号を含む電力を伝送するものである。この共振型電力伝送システムは、図1に示すように、第1,2の共振型送信電源装置1a,1b、第1,2の送信アンテナ2a,2b、第1,2の受信アンテナ3a,3b及び受信電源装置4から構成されている。ここで、第1の共振型送信電源装置1a、第1の送信アンテナ2a及び第1の受信アンテナ3aは、主電力伝送を行う電力伝送用の送受信系である。また、第2の共振型送信電源装置1b、第2の送信アンテナ2b及び第2の受信アンテナ3bは、異物検出を行う異物検出用の送受信系である。また、第1,2の共振型送信電源装置1a,1b及び第1,2の送信アンテナ2a,2bは共振型電力送信装置を構成し、第1,2の受信アンテナ3a,3b及び受信電源装置4は共振型電力受信装置を構成する。
なお図1では、各送受信系が伝送周波数として異なる固定周波数を用いて電力伝送を行う場合を示しているが、これに限るものではなく、同一の固定周波数を用いてもよい。
【0010】
第1の共振型送信電源装置1aは、第1の送信アンテナ2aの前段に配置され、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を制御するものである。この第1の共振型送信電源装置1aは、電源制御回路11aから構成されている。
電源制御回路11aは、高周波の交流出力をするインバータ回路111aと、その出力を制御する制御回路112aとから構成されている。インバータ回路111aは、AC入力−AC出力型又はDC入力−AC出力型のインバータ電源回路である。
【0011】
第1の送信アンテナ2aは、第1の共振型送信電源装置1aからの電力を、第1の受信アンテナ3aに伝送するものである(非接触に限定されない)。
第1の受信アンテナ3aは、第1の送信アンテナ2aからの電力を受信するものである(非接触に限定されない)。この第1の受信アンテナ3aにより受信された電力は受信電源装置4を介して負荷機器等(不図示)に供給される。
【0012】
第2の共振型送信電源装置1bは、第2の送信アンテナ2bの前段に配置され、第2の送信アンテナ2bへの電力の供給を制御するものである。この第2の共振型送信電源装置1bは、第2の送信アンテナ2bへの電力として、人体防護指針規格以下かつ受信電源装置4の後述する起動回路41を起動できる程度の小電力を定常的又は断続的に供給する。また、第2の共振型送信電源装置1bは、図1に破線で示す第1の送信アンテナ2aから発生される電磁界(第1の送受信アンテナ2a,3a間の電力伝送空間及びその近傍を含む空間)における異物の有無を検出する機能と、異物を検出した場合に第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減又は停止させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御する機能も有している。異物には、誘電体系の異物(人の手、動物等)と、磁性体系の異物(金属等)が含まれる。この第2の共振型送信電源装置1bの詳細については後述する。
【0013】
第2の送信アンテナ2bは、第2の共振型送信電源装置1bからの電力を、第2の受信アンテナ3bに伝送するものである(非接触に限定されない)。この第2の送信アンテナ2bは、自身から発生する電磁界が第1の送信アンテナ2aから発生される電磁界の範囲と重複するような位置に配置される。すなわち、電力伝送用の送受信系では、伝送電力が大きいと広範囲に電磁波が漏洩し、そのレベルは人体防護指針規格を超えるものとなる。そのため、上記範囲に存在する異物を検出し、安全な状態に制御(電力伝送の低減又は停止)することができるよう異物検出用の送受信系は配置される。
第2の受信アンテナ3bは、第2の送信アンテナ2bからの電力を受信するものである(非接触に限定されない)。
【0014】
受信電源装置4は、第1,2の受信アンテナ3a,3bと負荷機器等間に配置され、第2の受信アンテナ3bからの電力により起動し、第1の受信アンテナ3aからの電力(交流出力)を整流するものである。この受信電源装置4は、AC入力−DC出力型又はAC入力−AC出力型の電源回路である。この受信電源装置4の詳細については後述する。
なお、無線電力伝送の場合における共振型電力伝送システムの伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式のいずれであってもよい。
【0015】
次に、第2の共振型送信電源装置1bの構成について説明する。
第2の共振型送信電源装置1bは、送信電力状態検出回路11b及び電源制御回路12bから構成されている。
【0016】
送信電力状態検出回路11bは、第2の送信アンテナ2bの送信電力状態を検出するものである。この送信電力状態検出回路11bは、送信電力状態として、第2の送信アンテナ2bから電力伝送できずに戻ってくる電力(反射電力)、第2の送信アンテナ2bに入力される電圧と電流との位相差、電圧及び電流の各振幅を検出する。
【0017】
電源制御回路12bは、送信電力状態検出回路11bによる検出結果に基づいて第1,2の送信アンテナ2a,2bで重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出し、異物を検出した場合に第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減又は停止させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御するものである。この電源制御回路12bは、高周波の交流出力をするインバータ回路121bと、その出力を制御する制御回路122bとから構成されている。インバータ回路121bは、AC入力−AC出力型又はDC入力−AC出力型のインバータ電源回路である。制御回路122bは、制御パターン記憶回路123b、異物検出回路124b及び電力制御回路125bから構成されている。
【0018】
制御パターン記憶回路123bは、異物検出及び電力制御に関する情報を記憶するメモリである。この制御パターン記憶回路123bに記憶される情報には、異物検出回路124bで異物検出を行う際に用いる送信電力状態(反射電力、電圧と電流との位相差、電圧及び電流の各振幅)に対する閾値を示す情報、当該送信電力状態を用いて検出可能な異物の種別(誘電体系、磁性体系)を示す情報、異物の種別に応じた第1の共振型送信電源装置1aに対する制御内容(誘電体系の異物の場合には電力供給停止、磁性体系の異物の場合には電力供給低減等)を示す情報が含まれる。
【0019】
異物検出回路124bは、制御パターン記憶回路123bに記憶された情報に従い、送信電力状態検出回路11bによる検出結果に基づいて、第1,2の送信アンテナ2a,2bで重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出するものである。
電力制御回路125bは、異物検出回路124bにより異物が検出された場合に、制御パターン記憶回路123bに記憶された情報に従い、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減又は停止させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御するものである。この際、電力制御回路125bは、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減又は停止させるための制御信号を発生し、第1の共振型送信電源装置1aに出力する。
【0020】
次に、受信電源装置4の構成について説明する。
受信電源装置4は、起動回路41及びパワーライン電源回路42から構成されている。
起動回路41は、第2の受信アンテナ3bからの小電力を受信して起動し、パワーライン電源回路42を起動するものである。
パワーライン電源回路42は、起動回路41により起動し、第1の受信アンテナ3aからの電力を受信するものである。
【0021】
また図1では、異物検出用の送受信系を1系統のみ図示した場合を示している。しかしながら、これに限るものではなく、電力伝送用の送受信系の周囲に小型の異物検出用の送受信系(第2の送受信アンテナ2b,3bは楕円型、丸型等)を複数系統配置してもよい。また、図1のように送受信アンテナ2a,3aが対向した送受信対向型の構成に限らず、送受信アンテナ2a,3aが嵌合した送受信嵌合型の構成を用いてもよい。この送受信嵌合型の場合には、第1の送信アンテナ2aを内側に配置し、第2の送信アンテナ2bを外側に配置してもよいし、その逆に配置してもよい。
【0022】
次に、上記のように構成された共振型電力伝送システムの動作について、図2を参照しながら説明する。なお図2では、電力伝送用の送受信系の第1の送信アンテナ2aに入力される電圧の振幅を実線で示し、異物検出用の送受信系の第2の送信アンテナ2bに入力される電圧の振幅を破線で示している。
【0023】
共振型電力伝送システムでは、まず、異物検出用の送受信系が人体防護指針規格以下かつ起動回路41を起動できる程度の小電力で電力伝送を行う。すなわち、AC又はDC電力(小電力)が第2の共振型送信電源装置1bの電源制御回路12bに供給され、電源制御回路12bのインバータ回路121bは高周波の交流出力を第2の送信アンテナ2bへ供給する。第2の送信アンテナ2bへ供給された電力は、その交流周波数に共振して、第2の送信アンテナ2bから第2の受信アンテナ3bへ伝送される。第2の受信アンテナ3bで受信された電力は、受信電源装置4へ交流出力され、起動回路41が起動する。
その後、パワーライン電源回路42が起動し、電力伝送用の送受信系が主電力の伝送を開始する。すなわち、AC又はDC電力(主電力)が第1の共振型送信電源装置1aの電源制御回路11aに供給され、電源制御回路11aのインバータ回路111aは高周波の交流出力を第1の送信アンテナ2aへ供給する。第1の送信アンテナ2aへ供給された電力は、その交流周波数に共振して、第1の送信アンテナ2aから第1の受信アンテナ3aへ伝送される。第1の受信アンテナ3aで受信された電力は、受信電源装置4へ交流出力される。そして、受信電源装置4は、その電力を整流して、DC又はAC出力する。
【0024】
一方、異物検出用の送受信系は、定常的又は断続的に小電力の電力伝送を行っている。そして、第2の共振型送信電源装置1bでは、第2の送信アンテナ2bの送信電力状態を、送信電力状態検出回路11bにより検出し、電源制御回路12bへその状態を示す信号を送っている。そして、電源制御回路12bの制御回路122bでは、第1,2の送信アンテナ2a,2bの重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出することで、第1の送信アンテナ2aへの交流出力を制御させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御している。
【0025】
ここで、第1,2の送信アンテナ2a,2bの重複する電磁界の範囲に異物が存在しない場合には、第2の送信アンテナ2bへ入力される電圧の振幅は、図2(a)の破線で示すようになる。なお、異物が存在しない場合での電力伝送用の送受信系の第1の送信アンテナ2aへ入力される電圧の振幅は、図2(a)の実線で示すようになる。
【0026】
一方、上記範囲に異物が存在する場合には、異物検出用の送受信系の送信電力状態検出回路11bで検出される電圧の振幅は、図2(b)の破線で示すようになる。すなわち、異物が存在する場合での電圧の振幅は、異物による反射の影響により、異物が存在しない場合での電圧の振幅に対して下がる。この例では、振幅が下がる場合の異物を示したが、異物の種類によって振幅の変化方向は異なる。よって、この振幅の変化を監視することで、異物の有無を検出することができる。なお図2では、送信電力状態のうちの電圧の振幅のみを示しているが、他についても同様である。
【0027】
そして、異物検出回路124bにより異物が検出された場合には、電力制御回路125bは、制御パターン記憶回路123bに記憶された情報に従い制御信号を第1の共振型送信電源装置1aに出力する。そして、第1の共振型送信電源装置1aは、上記制御信号に従い、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減(異物検出用の送受信系での小電力以下の電力へ下げる)又は停止する(図2(b)の実線)。これにより、電力伝送用の送受信系による電力伝送を、上記異物に対して安全な状態に制御することができる。
その後、異物の種別・大きさ等の程度によっては、異物検出用の送受信系からの電力が受信電源装置4の起動回路41へ伝わらなくなる。そのため、起動回路41が停止し、受信電源装置4全体が停止する。
【0028】
以上のように、この実施の形態1によれば、電力伝送用の送受信系と異物検出用の送受信系を備え、第2の送信アンテナ2bの送信電力状態の変化を監視するように構成したので、第1,2の送信アンテナ2a,2bで重複する電磁界の範囲における異物の有無を検出することができ、異物を検出した場合に第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を低減又は停止することができる。
また、異物検出において従来構成のような異物検出用のセンサコイル102等が不要なため、第1の送受信アンテナ2a,3aを小型・軽量に構成することができる。また、第1の送信アンテナ2aから発生される電磁界における第1の送信アンテナ2aから離れた遠方、又は第1の送受信アンテナ2a,3aの中心付近に存在する異物も検出することができる。
【0029】
なお図1に示す送信電力状態検出回路11bでは、送信電力状態として、反射電力、電圧と電流との位相差、電圧及び電流の各振幅を全て検出する場合について示したが、これに限るものではなく、異物の検出精度は低下するが検出項目を削除しても構わない。
【0030】
また図1に示す送信電力状態検出回路11bは、第2の受信アンテナ3bの入力インピーダンスの変化に応じて第2の送受信アンテナ2b,3bの共振結合インピーダンスを調整する際の検出回路として共通化が可能であり、低コスト化を図ることができる。この場合には、送信電力状態検出回路11bによる検出結果に基づいて、第2の送信アンテナ2bの共振インピーダンスを調整する(第2の送受信アンテナ2b,3b間の共振条件を合わせる)共振インピーダンス調整回路が別途設けられる。
【0031】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2に係る共振型電力伝送システムの構成を示す図である。この図3に示す実施の形態2に係る共振型電力伝送システムは、受信電源装置4の起動回路41に識別信号発生回路411及び状態信号発生回路412を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付して異なる部分についてのみ説明を行う。
【0032】
なお図3に示す例では、電力伝送用の送受信系は伝送周波数として6.78MHz帯を用いて電力伝送を行い、異物検出用の送受信系は伝送周波数として13.56MHz帯で電力伝送を行う場合を示しているが、これに限るものではない。なお、上記各周波数帯は商用電源で用いられる周波数帯である。
【0033】
識別信号発生回路411は、受信電源装置4の識別情報を示す信号(識別信号)を発生して異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳するものである。この際、識別信号発生回路411は、識別信号として、パルス負荷等によりシリアル信号等を発生する。
状態信号発生回路412は、受信電源装置4の受信状態を示す信号(状態信号)を発生して異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳するものである。受信状態としては、例えば受信電源装置4の過充電状態や動作異常状態、大きな電力を必要とする電力要求状態等が挙げられる。また、状態信号発生回路412は、状態信号として、パルス負荷等によりシリアル信号等を発生する。
【0034】
送信電力状態検出回路11bは、実施の形態1における機能に加え、自身の検出結果から識別信号発生回路411又は状態信号発生回路412により重畳された信号(識別信号、状態信号)を抽出する機能を有している。
また、電力制御回路125bは、実施の形態1における機能に加え、送信電力状態検出回路11bにより抽出された信号に基づいて、第1の共振型送信電源装置1aを制御する機能を有している。ここで、上記信号が識別信号の場合には、電力制御回路125bは、その識別信号に基づいて受信電源装置4の認証を行い、認証できた場合に第1の送信アンテナ2aへ電力を供給させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御する。また、上記信号が状態信号の場合には、電力制御回路125bは、その状態信号が示す受信状態に基づいて第1の共振型送信電源装置1aを制御する。
【0035】
次に、上記のように構成された共振型電力伝送システムの動作について、図4を参照しながら説明する。なお図4において、(a)は第1の共振型送信電源装置1aに対する制御信号の有無を示し、(b)は受信電源装置4から異物検出用の送受系に対して重畳される識別信号を示し、(c)は異物検出用の送受信系の第2の送信アンテナ2bに入力される電流の振幅を示している。
【0036】
共振型電力伝送システムでは、まず、異物検出用の送受信系が人体防護指針規格以下かつ起動回路41を起動できる程度の小電力で電力伝送を行う。すなわち、AC又はDC電力(小電力)が第2の共振型送信電源装置1bの電源制御回路12bに供給され、電源制御回路12bのインバータ回路121bは高周波の交流出力を第2の送信アンテナ2bへ供給する。第2の送信アンテナ2bへ供給された電力は、その交流周波数に共振して、第2の送信アンテナ2bから第2の受信アンテナ3bへ伝送される。第2の受信アンテナ3bで受信された電力は、受信電源装置4へ交流出力され、起動回路41が起動する。
【0037】
次いで、起動回路41の識別信号発生回路411は、図4(b)に示すように、受信電源装置4の識別信号を発生して異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳する。そして、図4(c)に示すように、送信電力状態検出回路11bは識別信号を電流リップル等により抽出する。そして、電力制御回路125bは、この識別信号に基づき受信電源装置4の認証を行い、認証できた場合には第1の送信アンテナ2aへ電力を供給させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御する(図4(a))。
【0038】
その後、パワーライン電源回路42が起動し、電力伝送用の送受信系が主電力の伝送を開始する。すなわち、AC又はDC電力(主電力)が第1の共振型送信電源装置1aの電源制御回路11aに供給され、電源制御回路11aのインバータ回路111aは高周波の交流出力を第1の送信アンテナ2aへ供給する。第1の送信アンテナ2aへ供給された電力は、その交流周波数に共振して、第1の送信アンテナ2aから第1の受信アンテナ3aへ伝送される。第1の受信アンテナ3aで受信された電力は、受信電源装置4へ交流出力される。そして、受信電源装置4は、その電力を整流して、DC又はAC出力する。
【0039】
一方、異物検出用の送受信系は、定常的又は断続的に小電力の電力伝送を行い、異物検出を行う。この異物検出用の送受信系による異物検出動作は、実施の形態1と同様でありその説明を省略する。
【0040】
また、受信電源装置4の状態信号発生回路412は、受信電源装置4の状態信号を発生して異物検出用の送受信系の伝送周波数上に重畳する。そして、送信電力状態検出回路11bは状態信号を電流リップル等により抽出する。そして、電力制御回路125bは、状態信号に基づいて第1の共振型送信電源装置1aを制御する。この際、状態信号が過充電状態や動作異常状態等を示している場合には、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を停止させるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御する。また、状態信号が電源要求状態等を示している場合には、第1の送信アンテナ2aへの電力の供給を最大にさせるよう第1の共振型送信電源装置1aを制御する。
【0041】
以上のように、この実施の形態2によれば、受信電源装置4と異物検出用の送受信系との間で通信を行うように構成したので、実施の形態1の効果に加え、受信電源装置4の認証、状態検出を行うことができる。また、受信電源装置4の認証を行うことができるため、本発明を用いて受信電源装置4に対する課金システムを構成することができる。
【0042】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明に係る共振型電力伝送システムは、送信アンテナから発生される電磁界における異物の有無を検出することができ、異物を検出した場合に電力伝送の低減又は停止を行うことができ、送信アンテナへの電力の供給を制御する共振型電力伝送システム等に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0044】
1a,1b 第1,2の共振型送信電源装置、2a,2b 第1,2の送信アンテナ、3a,3b 第1,2の受信アンテナ、4 受信電源装置、11b 送信電力状態検出回路、11a,12b 電源制御回路、41 起動回路、42 パワーライン電源回路、111a,121b インバータ回路、112a,122b 制御回路、123b 制御パターン記憶回路、124b 異物検出回路、125b 電力制御回路、411 識別信号発生回路、412 状態信号発生回路。
図1
図2
図3
図4
図5