特許第6223473号(P6223473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223473金属プラスチックハイブリッド部材用の定着剤組成物及びプライマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223473
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】金属プラスチックハイブリッド部材用の定着剤組成物及びプライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/00 20060101AFI20171023BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20171023BHJP
   C09D 161/04 20060101ALI20171023BHJP
   C09D 177/00 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 177/00 20060101ALI20171023BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   C09D5/00 D
   C09D163/00
   C09D161/04
   C09D177/00
   C09J177/00
   C09J167/00
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-555688(P2015-555688)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公表番号】特表2016-505087(P2016-505087A)
(43)【公表日】2016年2月18日
(86)【国際出願番号】EP2014051695
(87)【国際公開番号】WO2014118213
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】102013201392.2
(32)【優先日】2013年1月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】515207547
【氏名又は名称】エス・アイ−コーティングズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SI−Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリ ヘンケンヨハン
(72)【発明者】
【氏名】カール クーマン
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン グルーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス パヴリク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン リストハウス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヴェルシュ
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン マング
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−071772(JP,A)
【文献】 特開昭55−147580(JP,A)
【文献】 特開2006−117824(JP,A)
【文献】 特開2006−057043(JP,A)
【文献】 特開2011−195840(JP,A)
【文献】 特開2007−190917(JP,A)
【文献】 特表2012−528211(JP,A)
【文献】 特表2012−502153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 5/00
C09D 161/04
C09D 163/00
C09D 177/00
C09J 167/00
C09J 177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、ポリアミドイミド樹脂、及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種のポリマーA、並びに、
b. アミドモノマーとコモノマーとを材料とするコポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤であって、前記アミドモノマーは、ラウリンラクタム、アミノウンデカン酸及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記コモノマーは、脂肪族又は脂環式ジアミン、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、ラウリンラクタム以外のラクタム、及びこれらの混合物から選択される前記溶融接着剤
を含有する、金属とプラスチックとのハイブリッド部材の接着に使用するための定着剤組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記組成物の全質量を基準としてそれぞれ、
a. 少なくとも1種のポリマーA 5〜25質量%、
b. コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤 5〜50質量%、及び
c. 少なくとも1種の有機溶剤 30〜80質量%
を含有し、前記組成物中に含まれる全ての成分のパーセント割合は合計で100質量%である、ことを特徴とする、請求項1に記載の定着剤組成物。
【請求項3】
前記組成物は、メラミン樹脂、ブロックされたイソシアナート樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の架橋剤樹脂を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着剤組成物。
【請求項4】
a. 飽和ポリエステル樹脂、エポキシ−フェノール樹脂−予備縮合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、並びにこれらの混合物から選択される、少なくとも1種のポリマーB、
b. ロックされたイソシアナート樹脂及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の架橋剤樹脂、及び
c. コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤
を含有する、金属とプラスチックとのハイブリッド部材の接着に使用するためのプライマー組成物。
【請求項5】
前記組成物が、プライマーの全質量を基準としてそれぞれ、
a. 少なくとも1種のポリマーB 8〜23質量%、
b. 少なくとも1種の架橋剤樹脂 1.5〜15質量%、
c. コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤 10〜40質量%、及び
d. 少なくとも1種の有機溶剤30〜80質量%
を含有し、全ての成分のパーセント割合は合計で100質量%であることを特徴とする、請求項4に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の定着剤組成物の少なくとも1つの層を有する被覆。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のプライマー組成物の少なくとも1つの層を有する被覆。
【請求項8】
金属とプラスチックとを有するハイブリッド部材において、前記金属が、前記プラスチックと、請求項6又は7に記載の被覆によって少なくとも結合されている、ハイブリッド部材。
【請求項9】
金属及びプラスチックを有するハイブリッド部材の製造方法において、
a. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の定着剤組成物の少なくとも1つの層を、前記金属に塗布し、
b. 引き続き、前記組成物を熱により架橋させ、かつ
c. その後、前記プラスチックを、前記被覆された金属に適用し、かつ前記金属と前記プラスチックとを結合することを特徴とする、ハイブリッド部材の製造方法。
【請求項10】
金属及びプラスチックを有するハイブリッド部材の製造方法において、
a. 請求項4又は5に記載のプライマー組成物の少なくとも1つの層を、前記金属に塗布し、
b. 引き続き、前記プライマー組成物を熱により架橋させ、かつ
c. その後、前記プラスチックを、前記被覆された金属に適用し、かつ前記金属と前記プラスチックとを結合することを特徴とする、ハイブリッド部材の製造方法。
【請求項11】
熱により架橋したプライマー組成物に、定着剤組成物の少なくとも1つの層を塗布し、かつ前記定着剤組成物を熱により架橋し、その後、前記プラスチックを前記被覆された金属に適用し、かつ前記金属を前記プラスチックと結合することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の定着剤組成物を使用することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラスチックを、前記被覆された金属に、射出成形、圧縮成形、ラミネーション、インサート射出成形又は(同時)押出によって適用することを特徴とする、請求項9から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ハイブリッド部材の金属とプラスチックとの間の定着剤としての、請求項6又は7に記載の被覆の使用。
【請求項15】
請求項4又は5に記載の少なくとも1種のプライマー組成物、請求項1から3までのいずれか1項に記載の少なくとも1種の定着剤組成物、又は前記プライマー組成物と前記定着剤組成物との両方で被覆された、金属支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着剤組成物及びプライマー組成物、並びにその使用、被覆及びその使用、ハイブリッド部材、その製法並びに金属支持体に関する。
【0002】
金属プラスチックハイブリッド部材(構造部材)は、金属とプラスチックとの2種の材料の複合材料である。このハイブリッド部材は、射出成形法によって得ることができる。
【0003】
ハイブリッド部材は、特に、車両製造及び航空機製造において、並びに電子工学及び電気工学において、荷重を支える部分の領域で、力を吸収する部分の領域で又はハウジングの部分として、例えば装飾目的で使用されるコンポーネントである。このハイブリッド部材は、大抵は、車両製造及び航空機製造において、荷重を支える部分並びに力を吸収する部分の領域で使用される見栄えがあまり重要でないコンポーネントである。このコンポーネントは、特に、部材に特別な機械特性を付与する局所的又は平面的な補強を有することを特徴としている。特に、今まで使用されていたコンポーネントと比較して、付加的な重量の軽減で、例えばねじり強さ又は曲げ強さの向上が際立っている。
【0004】
車両製造及び航空機製造において、質量の軽減と同時に最適な機械特性を得るために、ハイブリッド部材の使用が増加している。これらのハイブリッド部材の欠点は、金属とプラスチックとの間の付着が欠けるか又は不十分であることにある。この点で、今までは、プラスチックを金属に機械的に固定することが実施されていた。
【0005】
金属とプラスチックとの間の付着は、定着剤によって改善することができる。EP-A-1808468及びEP-A-2435246から、定着剤として、付加的にイソシアナート基及びエポキシ基を含むコポリアミドを基礎とする溶融接着剤により金属とプラスチックとを結合しているハイブリッド部材が公知である。
【0006】
ハイブリッド部材の迅速でかつ大量生産に適した準備のために、例えば自動車分野用に準備するために、コイルコーティングによる金属の被覆が望ましい。このために、適切な粘度、再現可能な層厚及び焼き付け条件が必要な前提条件である。しかしながら、先行技術からは今までに、この目的に適している定着剤は公知でない。
【0007】
従って、この課題は、先行技術の欠点を有していない新規定着剤を提供することにある。従って、この新規定着剤は、コイルコーティングに適するために、連続的に塗布可能であるのが好ましい。更に、この定着剤は、車両製造及び航空機製造の要求を満たし、その際、先行技術と比べて長期間の付着及び高い付着のような通常の要求は少なくとも維持されるのが好ましい。更に良好な耐候性、特に腐食防止が付与されるのが好ましい。ハイブリッド部材の金属とプラスチックとは、素材の結びつき(stoffschluessig)により相互に結合すべきである。
【0008】
従って、特許請求の範囲に記載の定着剤組成物が見出された。好ましい実施態様は、従属請求項から明らかとなる。
【0009】
本発明による定着剤組成物は、エポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、ポリアミド樹脂又はこれらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーAと、コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤とを有する。好ましくは、この溶融接着剤は更にブロックされたポリイソシアナート及びエポキシド成分を含む。このポリマーAは、溶融接着剤に対して、好ましくは1:0.4〜1:10の質量比で存在する。
【0010】
本発明の好ましい実施態様の場合に、本発明による定着剤組成物は、組成物の全質量を基準としてそれぞれ、
a. 少なくとも1種のポリマーA 5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%、
b. コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤 5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、特に20〜40質量%、及び
c. 少なくとも1種の有機溶剤 30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%
を有し、全ての成分のパーセント割合は合計で100質量%である。
【0011】
好ましい実施態様の場合に、ポリマーAは、少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、又はこれらの混合物から選択され、この場合、エポキシド−フェノール樹脂−予備縮合物又は少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物が特に好ましい。
【0012】
好ましくは、定着剤組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。このエポキシ樹脂は、例えば溶融接着剤を介して又はポリマーAを介して組成物中にもたらすことができる。
【0013】
更に、この定着剤組成物は、メラミン樹脂、ブロックされたイソシアナート樹脂又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤樹脂を含んでいてもよい、この架橋剤樹脂は、好ましくは1.5〜15質量%の割合で、特に2〜10質量%の割合で含まれている。
【0014】
この定着剤組成物は、溶液又は分散液として存在してもよい。溶融接着剤がポリマーA中に分散されているのが好ましい。
【0015】
本発明による定着剤組成物は、黒鉛、カーボンブラック、亜鉛粉末又はこれらの物質の混合物から選択される導電性物質を含むことができ、それにより導電性の定着剤組成物が得られる。
【0016】
本発明の他の主題は、少なくとも1種のポリマーB、少なくとも1種の架橋剤樹脂、少なくとも1種の触媒及び、既に上記された少なくとも1種の溶融接着剤を有するプライマー組成物である。溶融接着剤は、ブロックされたポリイソシアナート及びエポキシド成分を有していてもよい。好ましくは、プライマー組成物中の溶融接着剤は、溶融接着剤の全質量を基準としてそれぞれ、ブロックされたポリイソシアナート及びエポキシドを5質量%未満、好ましくはブロックされたポリイソシアナート及びエポキシドを2質量%未満、特に好ましくはブロックされたポリイソシアナート及びエポキシドを1質量%未満含有する。ブロックされたポリイソシアナート及びエポキシドを含まないのが特に全く好ましい。
【0017】
ポリマーBは、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、エポキシド−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物(これらは既に上述されている)及びこれらの混合物の群から選択され、その際、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0018】
好ましくは、プライマー組成物は、プライマーの全質量を基準としてそれぞれ、
a. 少なくとも1種のポリマーB 8〜23質量%、好ましくは12〜20質量%、
b. メラミン樹脂、ブロックされたイソシアナート樹脂又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の架橋剤樹脂 1.5〜15質量%、好ましくは3〜9質量%、
c. コポリアミドを基礎とする少なくとも1種の溶融接着剤 10〜40質量%及び
d. 有機溶剤 30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%
を有し、全ての成分のパーセント割合は合計で100質量%である。
プライマー組成物は、更に少なくとも1種の触媒を、好ましくは、プライマーの全質量を基準として0.5〜4質量%の割合で含有してもよい。架橋剤樹脂に依存する適切な触媒の選択は当業者に公知である。
【0019】
架橋剤樹脂としてメラミン樹脂を使用する場合には、触媒として、好ましくは非イオノゲンのブロックされた酸触媒が選択される。この場合、触媒を好ましくは0.5〜3質量%、特に好ましくは0.7〜2.2質量%使用することができる。
【0020】
架橋剤樹脂としてイソシアナート樹脂を有する系について、好ましくは触媒として金属有機化合物が使用される。好ましくはこの触媒を0.7〜2.5質量%使用する。
【0021】
よって、本発明による組成物は定着剤組成物及びプライマー組成物である。
【0022】
本発明による組成物は、更に、硬化剤、例えばジシアンジアミド(DCD)を、エポキシ樹脂の全質量を基準として、好ましくは3〜6質量%の割合で含んでいてもよい。硬化促進のために、尿素誘導体、例えばモヌロン又はフェヌロンが添加されてもよく、それにより、硬化温度を低減することができ又は硬化時間を短縮することができる。
【0023】
本発明による定着剤組成物の少なくとも1つの層を含む被覆は、他の本発明の主題である。この定着剤組成物は、このために金属に塗布され、その際、金属は塗布前に清浄化及び/又は化成層で前処理されていてもよい。金属清浄化及び化成層組成物は、当業者に公知である。少なくとも1種の本発明による定着剤組成物は、先行技術のプライマー組成物上に塗布されていてもよい。
【0024】
本発明によるプライマー組成物の少なくとも1つの層を含む被覆は、他の本発明の主題である。プライマー組成物は、このために金属に塗布され、その際、金属は塗布前に清浄化及び/又は化成層で前処理されていてもよい。
【0025】
好ましくは、本発明によるプライマー組成物の少なくとも1つの層を有する被覆は、更に定着剤の少なくとも1つの層を有し、この場合、本発明による定着剤組成物の少なくとも1つの層が好ましい。定着剤層は(金属−場合により化成層−プライマー層−定着剤層の順序で)プライマー層上に配置されているか又はプライマー層上に塗布される。一般にリン酸塩処理又はクロム酸塩処理により得られる化成層は、その上に塗布された被覆の特に均質でかつ改善された付着を生じさせる。適切な化成処理剤は、当業者に公知である。
【0026】
導電性プライマー組成物及び/又は定着剤組成物の被覆を有するハイブリッド部材は、陰極電着塗装(KTL)で設けられていてもよい。
【0027】
本発明による定着剤組成物を有する被覆又はプライマー組成物を有する被覆は、本発明による被覆として定義される。
【0028】
本発明による被覆は、本発明の他の主題として、ハイブリッド部材の金属とプラスチックとの間の定着剤として使用される。
【0029】
本発明の他の主題は、金属とプラスチックとを有するハイブリッド部材であり、その際、この金属はプラスチックと少なくとも本発明による被覆によって結合されている。
【0030】
ハイブリッド部材の製造方法の場合に、本発明による定着剤組成物の少なくとも1つの層を、全面的に又は部分的に金属上に塗布する。この定着剤組成物は、引き続き熱により架橋される。この架橋は、120℃〜250℃の対象物温度で、1〜30分の時間で行うことができる。当業者は、適切な時間/温度条件を予備試験により調査できる。
【0031】
コイルコーティングの場合、180℃〜250℃、好ましくは190℃〜220℃の典型的なピークメタル温度(PMT)が調節される。当業者は、PMTの実現のために、装置速度又はベルト速度を相応して調節する。
【0032】
その後、プラスチックを例えば射出成形プロセス又はホットプレスにより金属上に適用し、金属をプラスチックと物理的及び/又は化学的に結合する。引き続き、金属とプラスチックとの組合せ物を5分〜70分、好ましくは10分〜60分で、120℃〜150℃、好ましくは150℃〜230℃で、複合材付着及び架橋度の向上のために熱処理(tempern)することができる。それにより、プラスチックと金属との、素材の結びつきによる結合(stoffschluessiger Verbund)が達成される。この種の得られたハイブリッド部材は、予備被覆された金属とプラスチックとの間の持続的な結合を有し、かつ高い機械的又は動力学的な荷重能力を示す。この方法は本発明の他の主題である。
【0033】
ハイブリッド部材の他の本発明による製造方法の場合に、本発明によるプライマー組成物の少なくとも1つの層を、全面的に又は部分的に金属上に塗布する。まず、プライマー組成物の塗布及び架橋が行われ、このプライマー組成物は120℃〜250℃の対象物温度で1〜30分の時間にわたり架橋される。当業者は、適切な時間/温度条件を予備試験により調査できる。
【0034】
コイルコーティングの場合、190℃〜250℃、好ましくは200℃〜230℃の典型的なピークメタル温度が調節される。当業者は、PMTの実現のために、装置速度又はベルト速度を相応して調節する。
【0035】
ハイブリッド部材の好ましい製造方法の場合に、本発明によるプライマー組成物の少なくとも1つの層を、引き続き定着剤組成物の少なくとも1つの層を、それぞれ全面的に又は部分的に金属上に塗布する。本発明による定着剤組成物が好ましい。まず、架橋のためにコイルコーティングで典型的な190℃〜250℃、好ましくは200℃〜230℃のピークメタル温度に加熱することができるプライマー組成物の塗布及び架橋を行う。その後で、定着剤組成物を塗布しかつ熱により架橋し、この場合、コイルコーティングに典型的な180℃〜250℃、好ましくは190℃〜230℃のピークメタル温度が好ましい。この塗布が、コイルコーティングによって行われない場合には、架橋は150℃〜200℃の対象物温度で5〜30分の時間で行うことができる。
【0036】
その後、上述の方法で、プラスチックを例えば射出成形プロセス又はホットプレスにより金属上に適用し、金属をプラスチックと物理的及び/又は化学的に結合する。引き続き、金属とプラスチックとの組合せ物を5分〜70分、好ましくは10分〜60分で、120℃〜230℃、好ましくは150℃〜230℃で、複合材付着及び架橋度の向上のために熱処理(tempern)することができる。それにより、プラスチックと金属との、素材の結びつきによる結合(stoffschluessiger Verbund)が達成される。この種の得られたハイブリッド部材は、予備被覆された金属とプラスチックとの間の持続的な結合を有し、かつ高い機械的又は動力学的な荷重能力を示す。この方法は、本発明の他の主題である。
【0037】
本発明による方法の場合の組成物の塗布は、連続的に又は不連続的に行うことができる。この組成物は、好ましくは熱により硬化される。
【0038】
本発明による組成物は、連続的に又は不連続的に、電着塗装、ローラ塗布、流延塗布、吹き付け塗布及びスプレー塗布により塗布することができ、この場合、コイルコーティング法によるローラ塗布が好ましい。この場合、本発明による組成物は、片側又は両側に塗布することができる。定着剤組成物の未乾燥塗膜の厚さは20μm〜250μm、コイルコーティングについては好ましくは40μm〜120μmであることができ、プライマー組成物の未乾燥塗膜の厚さは10μm〜90μm、コイルコーティングについては好ましくは10μm〜40μm、他の塗布法については30μm〜90μmであることができる。
【0039】
適切な金属は、例えば鉄含有の合金、例えば鋼、アルミニウム、マグネシウム、チタン並びに上述の金属の合金である。好ましい金属は、鋼、チタン、アルミニウム並びにここに挙げられた金属の合金、特に好ましくは、鋼及びアルミニウム並びにアルミニウム合金である。
【0040】
好ましい鋼は、非合金鋼又は特殊鋼である。保護被膜を備えた鋼が特に好ましい。適切な被膜は、例えば亜鉛、アルミニウム−ケイ素、アルミニウム−亜鉛、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−鉄又は亜鉛−マグネシウムからなる被膜であり、この場合、アルミニウム−ケイ素、亜鉛−アルミニウム及び亜鉛が好ましく、特に亜鉛が好ましい。被膜の組成は、例えばStahl-Informations-Zentrums im Stahl-Zentrumの「Schmelztauchveredeltes Band und Blech」、デュッセルドルフ、ドイツ国、2010年発行のパンフレットに定義されている。
【0041】
プラスチックの適用の前に、この被覆された金属は成形又は変形されていてもよい。この成形及び変形は、上述の組成物の塗布の前又は後で行うことができる。
【0042】
被覆された金属上にプラスチックを適用することは、公知の方法で、例えば射出成形、圧縮成形、ラミネーション、インサート射出成形(Hinterspritzen)、又は(同時)押出により行うことができる。好ましくは、プラスチックは射出成形技術によって射出成形される。このために、被覆された金属部材を射出成形用金型中に挿入し、この金型を閉じた後にプラスチックでインサート射出成形する。プラスチック融液と被覆された金属表面との接触時に、これらの構成要素の間での素材の結びつきによる結合又は付着が形成される。この素材の結びつきにより結合されたハイブリッド部材は、次いで射出成形金型から取り出され、更に処理又は加工することができる。
【0043】
本発明による被覆を備えた金属は、プラスチックとの接触領域の温度を、例えばインサート射出成形又は(同時)押出の際に、定着剤とプラスチックとの間の良好な結合を開始させるために、50℃〜250℃の範囲内で予備熱処理してもよい。
【0044】
適切なプラスチックは、例えば、プロピレンを基礎とするポリオレフィンホモポリマー及びポリオレフィンコポリマー、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタラート、ポリカルボナート、脂肪族又は部分芳香族のポリアミド、ポリアミドとポリスチレンとの混合物、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体又は他のポリアミド含有ポリマーである。ポリカルボナートとアクリルニトリル−ブタジエン−スチレンとの混合物も同様に適している。脂肪族又は部分芳香族のポリアミドが好ましい。特に、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0045】
これらのプラスチックは強化されていてもよく(強化材料)、例えば繊維強化されていてもよく、この場合ガラス繊維(GF)強化又は炭素繊維(CF)強化されたプラスチックが好ましい。更に、プラスチックは、充填剤、例えばタルク又はチョークを含んでいてもよい。これらのプラスチックは、例えば安定剤、耐衝撃改良剤、流動助剤及び顔料のような添加剤を更に含んでいてもよい。
【0046】
好ましいポリアミド(PA)は、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、ポリアミド614、ポリアミド106、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリフタルアミド又はこれらのポリアミドを基礎とする混合物からなる群から選択される。特に好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6.6並びにこれらの混合物から選択される。このポリアミドは、強化剤、充填剤又はこれらの材料の混合物を含んでいてもよい。
【0047】
本発明によるハイブリッド部材は、機械製造、プラント製造、車両製造、航空機産業、鉄道車両製造などにおいて使用される。典型的には、荷重を支える構造の範囲内で、例えばフロント−エンド(バンパ)又は他のボデー部分及びフレーム部分の範囲内で、フロントエンドキャリア、ドアコンポーネント、フールコンポーネント、フロアコンポーネント又はシャーシコンポーネントのようなフレーム部分及びボデー部分又はバンパとして使用される。住宅建造及び建築の範囲内のフレーム、異形材、ファサード構成部材又は窓及びドアのガイドストリップも同様に適した使用分野である。
【0048】
本発明の他の主題は、少なくとも1つの本発明による定着剤組成物、少なくとも1つの本発明によるプライマー組成物又はこれら2つの混合物で被覆されている金属支持体である。この支持体は、例えば金属半製品又は金属成形品であってもよい。好ましくは、この支持体は金属製の帯材又は金属製の線材である。
【0049】
ポリマーA
ポリマーAは、少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、少なくとも1種のエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物、ポリアミド樹脂又はこれらの混合物から選択される。
【0050】
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂
適切なポリマーAは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物である。更に、この樹脂は互いに反応していてもよいので、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種のフェノール樹脂とを含む予備縮合物を使用することができる。この種の予備縮合物は、例えばD. Stoye, W. Freitag著: Lackharze, Carl Hanser Verlag Muenchen 1996, ISBN 978-3446174757, 第6.3.8.2.2章に記載されている。
【0051】
好ましくは、エポキシ樹脂のエポキシ基の、フェノール樹脂のヒドロキシ基に対するモル比は、40:60〜15:85、好ましくは50:50〜80:20である。フェノール樹脂のヒドロキシ基が過剰である場合には、エポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物は、好ましくは他のエポキシ樹脂と混合される。
【0052】
使用されたエポキシ樹脂のエポキシ当量は、400〜4000g/mol、好ましくは700〜3000g/molであることができる(SMS2026により測定)。
【0053】
使用されたエポキシ樹脂のOH基の割合は、好ましくは2000〜4500mmol/kg、好ましくは2300〜4000mmol/kgである。(SMS2367法)。
【0054】
エポキシ樹脂として、例えば、ジオール、ポリオール又はジカルボン酸を基礎とする化合物を使用することができ、ジオールが好ましく、相応してフェノール−ジオール−誘導体が特に好ましい。特に全く好ましいフェノール−ジオール−誘導体は、ビスフェノール、特にビスフェノールAである。このエポキシ樹脂は、通常では、エピクロロヒドリンとの反応によって得られる。
【0055】
適切なエポキシ樹脂は、1〜1.3kg/Lの密度を有する(25℃;ASTM D792により測定)。ガラス転移温度(Tg)は、20℃〜100℃であり、好ましくは25℃〜90℃である(ASTM D3418により測定)。溶融範囲は、通常では45℃〜150℃の範囲内にある(DIN53181による)。適切なエポキシ樹脂は、例えばHexion Special Chemicals, Inc.社のEPIKOTE樹脂、例えばEPIKOTE樹脂1001又は1009の商品名で得られる。
【0056】
このフェノール樹脂は、部分的にアルキル化、好ましくはメチル化、エチル化又はブチル化、特にブチル化されていてもよい。この粘度は23℃で340〜390mPa・sである(方法02−ARによる)。ガードナーによる色数は0〜4の範囲内にあることができる。固体含有率は、通常では40〜70質量%、好ましくは55〜60質量%である(方法01−DK)。密度は0.9〜1.1kg/L(23℃)であることができる。適切なフェノール樹脂は、例えばBakelite樹脂(Bakelite AG)、Haerter(Ciby-Geigy)、Ilmtalor(Ilmtal Kunstharz Beier)又はSantolink(Monsanto)の商品名で提供されている。
【0057】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との反応から、予備縮合物を得ることができる。これは、粘度1500〜2100mPa・s、ガードナーによる色数4、予備縮合物の全質量を基準にして固体含有率30〜60質量%、好ましくは40〜50質量%、及び密度0.9〜1.1kg/L(23℃)を有することができる。
【0058】
ポリアミド樹脂
適切なポリアミド樹脂は、例えばポリアミドイミド樹脂である。これらのポリアミド樹脂は、有機溶剤中に存在することができ、この場合、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、又はN−メチルピロリドンとN−エチルピロリドンとの混合物が好ましい。ここに挙げられた溶剤はキシレンと混合されていてもよい。
【0059】
これらのポリアミドイミド樹脂溶液は、30〜50質量%、好ましくは35〜45質量%の固体含有率(DIN EN ISO 3251により測定)、23℃で1500〜3500mPa・sの粘度(DIN EN ISO 3219/A.3により測定)を有する。この密度は、1〜1.25g/cm3であることができる(DIN 51757により測定)。
【0060】
溶融接着剤
この溶融接着剤は、少なくとも1種のコポリアミドを含む。このコポリアミドは、アミドモノマー及びコモノマーから製造できる。コモノマーによって、好ましくは95℃〜175℃の間に融点を有するコポリアミドが得られる。
【0061】
アミドモノマーは、好ましくは、ラウリンラクタム、アミノウンデカン酸又はこれらの混合物からなる群から選択される。ラウリンラクタムを基礎とするコポリアミドは、特に好ましい。
【0062】
このコモノマーは、好ましくは、脂肪族又は脂環式ジアミン、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、ラクタム及びこれらの混合物から選択される。このコモノマーは、相互に無関係に、好ましくは4〜18個のC原子を有する。適切なジカルボン酸は、例えばアジピン酸、セバシン酸又はドデカン二酸である。適切なジアミンは、例えばヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン又はドデカメチレンジアミンである。カプロラクタムのようなラクタムも同様にコモノマーとして使用できる。
【0063】
好ましいコモノマーは、カプロラクタム及びアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる、好ましくは1:1の質量比のポリマーである。
【0064】
ジアミンのアミン基の過剰により、反応性アミノ末端基を有するコポリマーが生じる。
【0065】
このコポリアミドは、好ましくは75〜400mmol/kgのアミン価を有する。
【0066】
コポリアミドの質量平均分子量は、好ましくは15000〜70000g/molの範囲内にある(スチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)。相対溶液粘度は、好ましくは1.2〜1.8である(ISO 307により測定)。
【0067】
コポリアミド又は溶融接着剤は、本発明による組成物中で、溶液、分散液又は粉末の形で使用することができ、粉末の形が好ましい。適切な溶剤は、例えばm−クレゾールである。
【0068】
粉末の形は、例えば粉砕によって得ることができ、この粒子直径は、好ましくは<100μm、特に<80μm、特に好ましくは<70μmである(篩分析)。
【0069】
前記コポリアミドに、溶融接着剤の他の成分として、少なくとも1種のエポキシド成分及び少なくとも1種のブロックされたポリイソシアナートが添加されていてもよい。
【0070】
エポキシド成分として、上述のエポキシ樹脂を使用することができる。典型的には、好ましいエポキシド成分は、1〜2Eq/kgのエポキシインデックス(Epoxy-Index)を有する。エポキシ当量は、好ましくは875〜1000g/molである。密度は、1.1〜1.3kg/L、好ましくは1.15〜1.25kg/Lであることができる。ガラス転移温度は、通常では40〜60℃、好ましくは45〜55℃の範囲内にある。この溶融接着剤は、溶融接着剤の全質量を基準としてそれぞれ、エポキシド成分を好ましくは2.5〜10質量%、特に4〜6質量%の割合で含有する。
【0071】
ブロックされたポリイソシアナートの割合は、溶融接着剤の全質量を基準としてそれぞれ、好ましくは2.5〜15質量%、好ましくは4〜6質量%である。
【0072】
このブロックされたポリイソシアナート成分は、芳香族、脂肪族又は脂環式であることができ、この場合、脂肪族又は脂環式ポリイソシアナートが好ましい。オキシム、フェノール又はカプロラクタムのようなイソシアナート用のブロック剤は、当業者に公知である。好ましくは、ポリイソシアナート成分はブロックされるために、ウレトジオンとして存在する。典型的な例は、商品名VESTAGON(Evonik Industries、ドイツ国)又はDesmodur(Bayer、ドイツ国)のもとで販売されている。
【0073】
適切な溶融接着剤は、例えばドイツ国のEvonik Industries社から、VESTAMELTの商品名で提供されている。例えば、X1027−P1、X1038−P1、X1316−P1及びX1333−P1のタイプが挙げられる。
【0074】
溶融接着剤の他に、EP1065236A2に記載されているような、更にポリアミン及びポリアミド形成するモノマー、例えばラクタム又はω−アミノカルボン酸からなるグラフトコポリマーを有することができる:
グラフトコポリマーの場合に、アミノ基濃度は好ましくは100〜2500mmol/kgの範囲内にある。
【0075】
ポリアミンとして、例えば次の種類の物質を使用することができる:
− ポリビニルアミン(Roempp Chemie Lexikon, 第9版, 第6巻, 4921頁, Georg Thieme Verlag Stuttgart 1992);
− 交互のポリケトン(alternierenden Polyketonen)から製造されたポリアミン(DE-OS 196 54 058);
− デンドリマー、例えば((H2N−(CH232N−(CH232−N(CH22−N((CH22−N((CH23−NH222(DE-A-196 54 179)又は
トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(2−アミノエチル)−N′,N′−ビス[2−[ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−1,2−エタンジアミン、3,15−ビス−(2−アミノエチル)−6,12−ビス[2−[ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]−9−[2−[ビス[2−ビス(2−アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]3,6,9,12,15−ペンタアザヘプタデカン−1,17−ジアミン(J. M. Warakomski, Chem. Mat. 1992, 4, 1000 - 1004);
− 4,5−ジヒドロ−1,3−オキサゾールの重合及び引き続く加水分解により製造することができる線状ポリエチレンイミン(Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, E20巻, 第1482 - 1487頁, Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1987);
− アジリジンの重合(Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, E20巻, 第1482 - 1487頁, Georg Thieme Verlag Stuttgart, 1987)によって得られかつ一般に次のアミノ基分布:
第1級アミノ基 25〜46%
第2級アミノ基 30〜45%及び
第3級アミノ基 16〜40%
を有する分枝ポリエチレンイミン。
【0076】
ポリアミンは、好ましい場合に、最大20000g/mol、特に好ましくは最大10000g/mol、殊に好ましくは最大5000g/molの数平均分子量Mnを有する。
【0077】
ポリアミドを形成するモノマーとして使用されるラクタム又はω−アミノカルボン酸は、4〜19個の、特に6〜12個の炭素原子を有する。特に好ましくは、ε−カプロラクタム及びラウロラクタム又はそれに所属するω−アミノカルボン酸が使用される。C12/C6構成要素のモル比は、好ましくは4:1〜1:4である。溶融接着剤対グラフトポリマーの質量比は、好ましくは19:1〜1:1である。
【0078】
官能化されたポリオレフィンは、最も簡単な場合に、ポリプロピレンを基礎としている。しかしながらエチレン/C3〜C12−αオレフィンコポリマーも適している。C3〜C12−α−オレフィンとして、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン又は1−ドデセンが使用される。更に、エチレン/C3〜C12−α−オレフィンコポリマーは、最大で約10質量%までオレフィンジエン、例えばエチリデンノルボルネン又は1,4−ヘキサジエンを含んでいてもよい。官能化として、好ましくは酸無水物原子団が用いられ、この原子団は、公知のように不飽和ジカルボン酸無水物又は不飽和ジカルボン酸による主鎖ポリマーの熱反応又はラジカル反応によって導入される。適切な試薬は、例えば無水マレイン酸又はイタコン酸無水物である。このように、官能化されたポリオレフィンの全質量を基準として、0.1〜4質量%がグラフトされ、これは他のモノマー、例えばスチレンと一緒に行うこともできる。
【0079】
マレイン酸がグラフトされたポリオレフィンの使用は、工業的適用のため、特に耐衝撃性の改質又はブレンド中の相溶性媒介剤及び機械的に強化された系(Polymer, 2001, 42, 3649-3655及びそこに引用された文献)のために広く普及している。上述の出典は、例えばこの種の官能化されたポリオレフィンの製造も記載する。
【0080】
官能化されたポリオレフィンの典型的な代表例は、ポリプロピレンを基礎とする酸無水物がグラフトされたAdmer QB 520 E(三井化学)である。原則的に、Kometra社の容易に流動する、マレイン酸がグラフトされたポリプロピレン(例えばSCONA TPPP 8012)も使用可能である。
【0081】
他の官能化方法は、官能化されていないポリオレフィンの、エポキシド原子団又はカルボン酸無水物原子団を有する反応性相溶性媒介剤との溶融混合である。典型的な例は、エチレン、マレイン酸無水物を有する1種以上の非反応性アクリル性モノマー又はグリシジルメタクリラートからなるコポリマーである。Lotader AX8900(Arkema)は、グリシジルメタクリラート単位を有する典型的な代表例である。
【0082】
ポリアミド成分対ポリオレフィン成分の比率は、9:1〜2:3である。
【0083】
有機溶剤
適切な溶剤は、極性又は無極性有機溶剤である。極性及び無極性溶剤からなる混合物も同様に使用できる。好ましい溶剤は、ケトン、グリコール、ソルベントナフサ、n−アルカン又はイソアルカンであり、アルカンは特に12〜20個のC原子を有する。
【0084】
ポリマーB
ポリマーBは、飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、エポキシド−フェノール樹脂−予備縮合物とエポキシ樹脂との混合物、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物(これらは既に上述されている)及びこれらの混合物の群から選択され、その際、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
【0085】
ポリエステル樹脂
ポリエステル樹脂は、好ましくは芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるコポリマーである。それにより、線状の、高分子量のコポリエステルが得られる。数平均分子量は、好ましくは10000〜20000g/molの範囲内にある。14000〜16000g/molの数平均分子量が好ましい(スチレン標準に対するGPC)。
【0086】
1.2〜1.3kg/Lの密度、40℃〜105℃、好ましくは60℃〜80℃のガラス転移温度、及び140〜150℃の軟化温度が特徴的である。このポリエステル樹脂のヒドロキシル価は、好ましくは10mg KOH/g、特に5〜10mg KOH/gである(DIN53240により測定)。酸価は、好ましくは0〜3mg KOH/gである(DIN53402)。
【0087】
エポキシ樹脂
ポリマーBのエポキシ樹脂は、ポリマーAのエポキシ樹脂の定義に一致する。ポリマーBのエポキシ樹脂は、本発明による被覆中で、ポリマーAのエポキシ樹脂と同じ又は異なることができる。
【0088】
架橋剤樹脂
架橋剤樹脂は、メラミン樹脂、ブロックされたイソシアナート樹脂又はこれらの混合物からなる群から選択される。メラミン樹脂が好ましく、この場合、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。アルキル基、例えばメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド樹脂がエーテル化されているのが特に全く好ましい。特にヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)が使用される。
【0089】
ブロックされたイソシアナート樹脂は、好ましくはフェノール、オキシム、ε−カプロラクタム、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アルコール又は第二級アミン、好ましくはオキシムでブロックされている。適切なイソシアナートは、脂肪族ポリイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナート、例えばBayer社(ドイツ国)のDesmodur BL 3175である。ポリエステルとイソシアナート樹脂との反応によりポリウレタンが生じる。
【0090】
ブロックされたイソシアナート樹脂は、溶融接着剤と混合されるか又か個別に組成物に添加されていてもよい。
【0091】
触媒
触媒は、通常では、市場で提供されているように1〜20%の溶液として添加される。
【0092】
a) 酸触媒
ポリエステルのメラミン樹脂を用いた架橋のために、好ましくは、非イオノゲンの、ブロックされた触媒が使用される。好ましくは、DNNSS(ジノニルナフタレンモノスルホン酸)及びフェルザチック酸を基礎とするエポキシドブロックされた酸が使用され、この場合ブロックされたフェルザチック酸が特に好ましい。この触媒は、通常では40〜60質量%、好ましくは45〜55質量%の固体含有率を有する。
【0093】
b) 金属有機触媒
ポリエステル、エポキシ樹脂−フェノール樹脂予備縮合物、並びにエポキシ樹脂とフェノール樹脂との混合物の、ブロックされたイソシアナート樹脂による架橋のために、金属有機化合物を使用することができる。有機スズ化合物が好ましい。DBTL(ジブチルスズジラウラート)を基礎とする触媒が特に好ましい。
【0094】
他の内容物質
本発明による組成物は、更に着色剤、好ましくは顔料を含むことができる。更に、機能性顔料、例えば防食顔料又は導電性顔料、例えば金属顔料、レベリング剤、充填剤又は弾性剤樹脂が含まれていてもよい。
【0095】
更なる説明がないのは、当業者が、上述の記載を最も広い範囲で利用できることを前提としている。これらの好ましい実施態様及び実施例は、従って、記載されるだけで、決して何らかの限定する開示ではないと解釈される。
【0096】
次に、本発明を、実施例によって詳細に説明する。本発明の別の実施態様も同じように得られる。
【0097】
実施例
ハイブリッド部材中での金属上でのプラスチックの付着を調査した。このために、多様な金属及びプラスチックを使用した。金属は、プライマー組成物又は定着剤組成物を塗布する前に清浄化し、化成層Vとしてクロム酸塩V2を設けた。
【0098】
温度調査は、達成された温度を変色(黒色)によって示す温度測定ストリップを用いて行った。
【0099】
熱処理条件は:190℃で30分である。
【0100】
付着の測定のために、引張剪断試験を実施した。
【0101】
使用された材料:
プライマー組成物
ポリマーB、顔料及び充填剤を、15μm未満の平均粒子直径に調節し;引き続き溶融接着剤を添加する
P1:ポリエステル樹脂(数平均分子量15000g/mol)、メラミン樹脂、耐食顔料、充填剤、着色剤、酸触媒、溶剤、並びにエポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートなしのコポリアミド溶融接着剤
P2:エポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物、耐食顔料、充填剤、着色剤、溶剤、並びにエポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートなしのコポリアミド溶融接着剤
P3:ポリエステル(数平均分子量20000g/mol)、ポリイソシアナート架橋剤、スズ触媒、溶剤、並びにエポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートなしのコポリアミド溶融接着剤
P4:2のポリエステル樹脂(数平均分子量15000〜20000g/mol)と、ブロックされたイソシアナート樹脂、スズ触媒、溶剤、並びにエポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートなしのコポリアミド溶融接着剤と組み合わせたポリエステル混合物
P5:ポリエステル(数平均分子量20000g/mol)、ポリイソシアナート架橋剤、スズ触媒、溶剤
定着剤組成物
L1:エポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートを有するコポリアミド溶融接着剤を有するエポキシ樹脂−フェノール樹脂−混合物
L2:エポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートを有するコポリアミド溶融接着剤を有するエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物
L3:エポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートなしのコポリアミド溶融接着剤を有するエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物
L4:エポキシド成分及びブロックされたポリイソシアナートを有するコポリアミド溶融接着剤を有するエポキシ樹脂−フェノール樹脂−予備縮合物(このコポリアミド溶融接着剤は、L2のコポリアミド溶融接着剤と比べて低い分子量を有する)
金属バリエーションM1:DX56D Z140 MBO 1.0mm
M2:DX53D Z140 MBO 0.6mm
M4:AW-5754 AlMg3 H22 DIN EN 485-2
M5:DIN EN 17670 T1によるCuZn37
M6:EN 988によるチタン亜鉛
プラスチックバリエーション
K1:LANXESS Deutschland GmbH社のPA6GF30 Durethan BKV30 H2.0
K2:LANXESS Deutschland GmbH社のPA6.6 Durethan A30 S
K3:Evonik Industries AG社のPA1010 VESTAMID Terra DS18
K4:Evonik Industries AG社のPA1010GF65 VESTAMID Terra BS1429
K5:Evonik Industries AG社のPA1010CF30 VESTAMID HTplus TGP3561
K6:Evonik Industries AG社のPA6T VESTAMID HTplus M1000
K7:Evonik Industries AG社のPA6TGF50 VESTAMID HTplus M1035
K8:Evonik Industries AG社のPBTGF30 VESTODUR GF30
K9:Bayer AG社のPC Makrolon 2205
K10:Evonik社のPA12CF 複合材料、これは、VESTAMID L1600(ポリアミド12)とエンドレス繊維を有する炭素繊維織物とからなる1.0mmの厚さの繊維複合材料プレートを使用した。この織物は、約285g/m2の重量で、0°/90°の配向を有する。この繊維複合材料プレートは圧縮法により製造された。
【0102】
A) ブレード塗布による実験室試験
このために、実験室でプライマーのバリエーションを、スパイラルブレードを用いて、DIN A4の形式の化成層(リン酸塩化)を備えた鋼DX56D Z140 MBO、厚さ1mm(M1)のプレートに塗布し、引き続き連続式乾燥器中で55秒で熱架橋させた。ピークメタル温度(PMT)は、216℃又は232℃の範囲内に設定した。プライマーで被覆されたDIN A4ボードの冷却を、室温で行った。
【表1】
【0103】
その後で、このプレートに、スパイラルブレード番号42を用いて、定着剤組成物を塗布し、連続式乾燥器中で70秒で熱架橋させた(PMT=216℃)。この試料を引き続き室温で冷却した。乾燥塗膜の厚さは、それぞれ35μmであった。
【0104】
こうして被覆された1mmの厚さのプレートサンプルを、50mm×36mmに裁断し、射出成形金型中で、Arburg 370 S型の射出成形機で110℃の金型温度及び280℃の溶融物温度でプラスチック(厚さ2mm)で片面にインサート射出成形した。この試験体の全体の長さは60mmであった。プラスチックと金属プレートとの間のオーバーラップ領域は、18mm×50mmであった。引き続き、この引張剪断試料を、ISO527に準拠したユニバーサル引張試験機で、10mm/分の試験速度で、23℃及び50%の相対湿度で試験し、この試料の破壊荷重を測定した。このために、この試料をインサート射出成形後に場合により熱処理し、熱処理ありの試料と熱処理なしの試料との引張剪断強度(付着強度)比較した。
【表2】
【0105】
ブレード−実験室試験による実験室試験において、熱処理工程ありの、被覆されかつインサート射出成形されたハイブリッド複合材試料は、熱処理なしの試料と比較して、より高い接着強度(破壊荷重)を有する。
【0106】
更に、多様な金属合金に対する付着を、上述の試験と同様に調査し、この場合、プレートサンプルを約25mm×60mmに裁断した。
【表3】
【0107】
B) 装置試験
組成物の塗布を、ローラ塗布によって、コイルコーティングプロセス中で相応する被覆装置で行い、引き続き、塗布された塗装層を連続式加熱炉中で熱により架橋(熱硬化)を行った。本来の塗料又はプライマーを塗布する前に、金属表面の前処理を行った(清浄化、化成層の作製V1−リン酸塩処理又はV2−クロム酸塩処理)。金属として、層厚0.6mm及び幅390mmの亜鉛めっきした帯鋼DX53D Z140 MBO(鋼S2)を使用した。プライマー組成物の乾燥塗膜の厚さは9〜13μm、定着剤組成物の乾燥塗膜の厚さは18〜28μmであった。ピークメタル温度(PMT)は、216℃〜224℃の範囲内に設定した。
【0108】
このプレートから、鋼プレートストランド(約25mm×60mm)をインサート射出成形試験のために裁断した。この被覆された鋼プレートストランドを、射出成形金型中に挿入後に、プラスチックK1〜K9でインサート射出成形し、それにより付着試験のための引張剪断試料を製造した。
【0109】
このプラスチックの片面の処理は、Arburg射出成形機Allrounder 420C型で、280℃の材料温度及び80℃及び120℃の金型温度で、約30ccm/秒の射出速度で行った。ここで重要なのは、約15秒の射出遅延を予定することであり、それにより、挿入されたプレートストランドは金型温度に予熱することができ、それにより、付着に好ましく作用した。プラスチックと金属とのオーバーラップ領域は25mm×25mmであった。インサート射出成形されたプラスチックの厚さは4mmであった。離型後に、個々の引張剪断試験体とゲートとを分離した。
【0110】
このように作製された試験体を、均一な空調条件を保証するために、50%の相対空気湿度で、少なくとも23℃で24時間貯蔵した。これらの試験体を、次いで標準引張試験機Zwick/Roell Z-020中に設置し、23℃で5mm/分の速度で、クリップとO−場ラップ領域との間の距離約25mm/幅で試験した。
【0111】
測定された引張剪断強度(MPa)を、次の表中に、プライマー組成物及び定着剤組成物からなる被覆について記載している。
【表4】
【0112】
プライマー組成物及び定着剤組成物からなる被覆は、この場合、インサート射出成形後の試料の後からの熱処理工程なしで、特に高い金型温度(120℃)で既に付着の高い値を達成した。この後からの熱処理は、特に80℃の低い金型温度で付着を改善した。
【0113】
C)圧縮成形試験
プラスチックと被覆された金属との間の結合を、水圧ホットプレス(製造元Paul Weber、商品名TEMPRESS)中での圧縮工程によって得た。この場合、ホットプレスの片側に、約60×25×0.6mmの寸法の被覆された金属プレートを型内に挿入し、その上に、60×25×4mmの寸法の射出成形されたプラスチックプレートを配置した。このプレスのプレート側の部分を約200℃から230℃に加熱した。引き続き、このプラスチック部材及び被覆された金属プレートを、約32barの圧力で、約5分間の保持時間で複合体(引張剪断ロッド)に圧縮成形した(オーバーラップ面は25mm×25mm)。
【0114】
定着剤組成物の塗布及び接着強度試験は、装置試験と同様に実施した。
【表5】