(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る電動車両のモータ制御装置では、回生により得られた回生電力は、バッテリ等の蓄電装置に蓄電されて回収されるのが原則である。しかし、蓄電装置の蓄電容量が満充電状態になると、蓄電装置は回生電力を回収することができなくなる。つまり、蓄電装置が満充電状態の際に、アクセルペダルのオフ操作を試みた場合、回生制動トルクを発生させることができない。その結果、回生制動トルクに基づく回生制動力が得られないため、じゅうぶんな制動力が得られないという課題があった。
【0006】
かかる課題を解決するために、例えば、アクセルペダルのオフ操作によって生じさせる制動力として、回生制動力に代えて摩擦制動力を採用するケースを想定してみる。ところが、かかるケースでは、例えば、アクセルペダルのオフ操作が長時間にわたり継続すると、アクセルペダルのオフ操作に基づく摩擦制動力が長時間にわたり作用する結果、摩擦制動力を発生させるブレーキパッドやディスクロータ等の摩擦制動部材の過熱により摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態が懸念される。
【0007】
しかも、アクセルペダルのオフ操作に基づき摩擦制動力が作用するケースでは、運転者はブレーキペダルの踏込み操作を行っていない(制動操作を行っている旨の意識が薄い)ため、摩擦制動部材がフェード状態に陥っている事態に気づかない。こうしたケースに、いざブレーキペダルを踏込み操作して摩擦制動力を得ようとしても、本来なら得られる筈の大きさの摩擦制動力が得られないため、運転者に違和感を抱かせるおそれがあった。
【0008】
ちなみに、例えば下り坂でブレーキペダルの踏込み操作を長時間にわたり継続すると、摩擦制動部材がフェード状態に陥るおそれがあることについては一般的に周知されている。ところが、アクセルペダルのオフ操作に基づき摩擦制動力が作用するケースでは、運転者の積極的な制動意図を伴なっていない。このため、摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態は、運転者にとって想定の埒外である。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、加減速操作子の減速操作に基づく制動力として回生制動力及び摩擦制動力の少なくとも一方の実制動力を適用する際に、摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態を抑制可能な電動車両用制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、(1)に係る発明は、車両を制動する際に操作される制動操作子と、前記車両の車輪に摩擦制動部材を作用させることで摩擦制動力を発生させる摩擦制動部と、前記車両を加減速する際に操作され、当該加減速に係る操作範囲に加速領域及び減速領域が設定された、前記制動操作子とは別個の加減速操作子と、蓄電装置からの電力供給を受けて前記車輪に駆動力を発生させるとともに、当該車輪の回転エネルギを回生電力に変換し前記蓄電装置に回収させることで前記車輪に回生制動力を発生させるモータジェネレータと、前記加減速操作子が減速操作された際に、当該減速操作に基づく目標減速度を設定する目標減速度設定部と、前記加減速操作子が減速操作された際に、前記車両に作用する実制動力が、前記目標減速度設定部により設定された目標減速度に基づく大きさの目標制動力に追従するように、前記摩擦制動部に係る前記摩擦制動力及び前記モータジェネレータに係る前記回生制動力のうち少なくとも一方の実制動力を用いて前記車両の制動制御を行う制動制御部と、前記蓄電装置の充電状態に係る充電度情報を取得する充電度情報取得部と、を備え、前記制動制御部は、前記充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が所定の第1閾値を超える場合、前記加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを、前記目標制動力の大きさと比べて減少させることを最も主要な特徴とする。
【0011】
(1)に係る発明では、制動制御部は、充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が所定の第1閾値を超える場合、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させる構成を採用することとした。目標減速度に基づく大きさの目標制動力は、目標減速度に車両の質量を乗算することで求めればよい。充電度情報に基づく充電度としては、満充電容量に対する残存容量の比率や残存容量の情報を適宜採用すればよい。また、所定の第1閾値としては、例えば、蓄電装置が満充電状態となるまでには少し猶予があるものの、満充電状態に近い充電度(特に限定されないが、例えば70%程度等の、適宜変更可能な値)を採用すればよい。
【0012】
(1)に係る発明によれば、蓄電装置が満充電状態となる前に、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させるため、加減速操作子の減速操作に基づく制動力として回生制動力及び摩擦制動力の少なくとも一方の実制動力を適用する際に、摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態を抑制することができる。
また、実制動力の不足を認識した運転者に対し、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の確保から、制動操作子の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(加減速操作子から制動操作子への踏み替え操作)を促すことができる。その結果、仮に、摩擦制動部材がフェード状態に陥っていたとしても、そのことを制動操作子の制動操作を通じて運転者に気づかせることができるため、車両が有する制動能力(回生制動力及び摩擦制動力)の実情を把握しやすくすることができる。
【0013】
また、(2)に係る発明は、(1)に記載の電動車両用制動装置であって、前記制動制御部は、前記充電度が前記第1閾値を超える度合いが増すほど、前記加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の減少度合いを段階的に促進させることを特徴とする。
【0014】
(2)に係る発明によれば、制動制御部は、充電度が第1閾値を超える度合いが増すほど(蓄電装置が満充電状態に近づくほど)、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の減少度合いを段階的に促進させるため、運転者に対し、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の減少変化を早期かつ適確に認識させることができる。その結果、実制動力の不足を認識した運転者に対し、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の確保から、制動操作子の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(加減速操作子から制動操作子への踏み替え操作)を早期かつ適確に促す効果を期待することができる。
【0015】
また、(3)に係る発明は、(1)又は(2)に記載の電動車両用制動装置であって、前記加減速操作子では、運転者による操作が解除された状態の初期位置において最大となる目標減速度が対応付けられる一方、当該初期位置を起点とする前記減速領域では踏込み度合いが増すほど下がるように、当該加減速操作子の踏込み度合いに対する目標減速度の関係が設定され、前記制動制御部は、前記加減速操作子が減速操作された際に、当該加減速操作子の踏込み度合いが所定値を超える領域では前記回生制動力を用いる一方、当該加減速操作子の踏込み度合いが前記所定値以下の領域では前記回生制動力及び前記摩擦制動力を用いて制動制御を行い、前記加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを減少させるに際し、前記摩擦制動力を優先して減少させることを特徴とする。
【0016】
(3)に係る発明では、制動制御部は、加減速操作子が減速操作された際に、加減速操作子の踏込み度合いが所定値を超える領域(目標制動力が比較的小さい領域)では回生制動力を用いる一方、加減速操作子の踏込み度合いが所定値以下の領域(目標制動力が比較的大きい領域)では回生制動力及び前記摩擦制動力を用いて制動制御を行う。また、制動制御部は、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを減少させるに際し、摩擦制動力を優先して減少させる。
【0017】
(3)に係る発明によれば、制動制御部は、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の大きさを減少させるに際し、フェード状態に陥るおそれのある摩擦制動部材を用いた摩擦制動力を優先して減少させるため、加減速操作子の減速操作時において、運転者において想定の埒外である、摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態を抑制することができる。
【0018】
また、(4)に係る発明は、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電動車両用制動装置であって、前記制動制御部は、前記充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が前記第1閾値と比べて大きい所定の第2閾値を超える場合、前記加減速操作子の減速操作に基づく制動制御を中断させることを特徴とする。
【0019】
(4)に係る発明では、制動制御部は、充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が第1閾値と比べて大きい所定の第2閾値を超える場合、加減速操作子の減速操作に基づく制動制御を中断させる構成を採用することとした。所定の第2閾値としては、例えば、蓄電装置が満充電状態である際の充電度にごく近い充電度(特に限定されないが、例えば90%程度等の、適宜変更可能な値)を採用すればよい。
【0020】
(4)に係る発明によれば、蓄電装置が満充電状態にごく近い充電度となった場合に、加減速操作子の減速操作に基づく制動制御を中断させるため、運転者に対し、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の減少変化を早期かつ適確に認識させることができる。その結果、実制動力の不足を認識した運転者に対し、加減速操作子の減速操作に基づく実制動力の確保から、制動操作子の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(加減速操作子から制動操作子への踏み替え操作)を早期かつ適確に促す効果を期待することができる。
【0021】
また、(5)に係る発明は、(4)に記載の電動車両用制動装置であって、前記制動制御部は、前記充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が前記第2閾値を超えた後、前記第1閾値未満となった場合、前記加減速操作子の減速操作に基づく制動制御を再開させることを特徴とする。
【0022】
(5)に係る発明によれば、制動制御部は、充電度情報取得部により取得される充電度情報に基づく充電度が第2閾値を超えた後、第1閾値未満となった場合、(中断していた)加減速操作子の減速操作に基づく制動制御を再開させるため、加減速操作子の減速操作に基づく制動制御の適正化及び安定化に貢献することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電動車両用制動装置によれば、加減速操作子の減速操作に基づく制動力として回生制動力及び摩擦制動力の少なくとも一方の実制動力を適用する際に、摩擦制動部材がフェード状態に陥る事態を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、または、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズおよび形状は、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0026】
〔本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11〕
本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11について、電動車両12として、内燃機関エンジン41及びモータジェネレータ49(いずれも
図1参照)を有するハイブリッド車両を例示して、
図1を参照して説明する。
図1は、電動車両用制動装置11の概要を表すブロック構成図である。
【0027】
電動車両用制動装置11は、
図1に示すように、加減速ECU(Electronic Control Unit)13、ABS−ECU15、及びVSA−ECU17の間を、CAN(Control Area Network)等の通信媒体19を介して、相互にデータ交換可能に接続して構成されている。
加減速ECU13、ABS−ECU15、及びVSA−ECU17の各々は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、加減速ECU13、ABS−ECU15、及びVSA−ECU17の各々が有する各種機能の実行制御を行うように動作する。
【0028】
加減速ECU(Electronic Control Unit)13は、電動車両12の加減速制御を行う機能を有する。加減速ECU13の内部構成について、詳しくは後記する。ABS−ECU15は、電動車両12の制動操作時における車輪(不図示)のロックを防ぐ機能を有する。VSA(「VSA」は登録商標)−ECU17は、電動車両12に係る挙動安定化を支援する機能を有する。
【0029】
通信媒体19には、
図1に示すように、アクセルペダル21の初期位置(運転者による操作が解除された状態)からの踏込み操作量を検出するアクセルペダルセンサ23、ブレーキペダル25の踏込み操作量を検出するブレーキペダルセンサ27、電動車両12の速度(車速)を検出する車速センサ29、電動車両12に生じている前後方向の加減速度を検出する前後Gセンサ31、モード切替スイッチ33、エンジン機構35、制動機構37、及び、モータ機構39が接続されている。
アクセルペダルセンサ23、ブレーキペダルセンサ27、車速センサ29、前後Gセンサ31により検出された各種データ、モード切替スイッチ33に係るモード切替データは、通信媒体19を介して、加減速ECU13、ABS−ECU15、VSA−ECU17に送られる。
なお、電動車両12を加減速する際に操作されるアクセルペダル21は、本発明の「加減速操作子」に相当する。また、電動車両12を制動する際に操作されるブレーキペダル25は、本発明の「制動操作子」に相当する。
【0030】
モード切替スイッチ33は、アクセルペダル21の操作モード(以下「AP操作モード」という。)を切り替える際に操作されるスイッチである。モード切替スイッチ33は、車室内のインストルメントパネル(不図示)等に設けられる。AP操作モードとしては、アクセルペダル21の踏込み操作量に応じた加速制御のみを行う通常モードと、アクセルペダル21の踏込み/踏戻し操作量に応じた加減速制御を行うワンペダルモードとが設定されている。ワンペダルモードについて、詳しくは後記する。
なお、モード切替スイッチ33は、デフォルトでワンペダルモードに設定することで、運転者の操作を省略する構成を採用してもよい。
【0031】
エンジン機構35は、
図1に示すように、電動車両(ハイブリッド車両)12の一駆動源である内燃機関エンジン41と、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)43とを備えて構成される。ただし、無段変速機43は、ふつう(有段)の変速機であってもよい。エンジン機構35は、加減速ECU13の制御指令に基づいて、電動車両12を駆動するとともに、必要に応じてエンジンブレーキを作用させる機能を有する。
【0032】
制動機構37は、ブレーキパッド及びディスクロータを含む摩擦制動部材45、油圧系統47等の摩擦制動に係る構成要素を備えて構成される。制動機構37は、加減速ECU13の制御指令に基づいて、電動車両12の車輪に摩擦制動力を発生させる機能を有する。制動機構37は、本発明の「摩擦制動部」に相当する。
【0033】
モータ機構39は、電動車両12の一駆動源であるモータジェネレータ49と、モータジェネレータ49の駆動制御を行うインバータ51と、インバータ51を介してモータジェネレータ49に電力を供給するバッテリ(本発明の「蓄電装置」に相当する。)53と、バッテリ53の満充電容量に対する残存容量の比率である充電度SOCを取得するSOCセンサ55とを備えて構成される。
SOCセンサ55は、例えば、充電度SOCの値に応じてバッテリ53の起 電力が変化する特性を利用して、予め実験的に求めたバッテリ53の端子間電圧と 充電度SOCとの関係特性に基づいて、バッテリ53の端子間電圧に基づき充電度SOCを推測すればよい。
【0034】
〔加減速ECU13の内部構成〕
次に、加減速ECU13の内部構成について、
図1を参照して説明する。
加減速ECU13は、
図1に示すように、入出力部61と、演算部63と、記憶部65と、を備えて構成されている。
【0035】
入出力部61は、入力データとして、アクセルペダルセンサ23に係る加減速操作量データ(AP加減速操作量データ)、ブレーキペダルセンサ27に係る制動操作量データ(BP制動操作量データ)、車速センサ29に係る車速データ、前後Gセンサ31に係る前後Gデータ、モード切替スイッチ33に係るモード切替データ、SOCセンサ55に係る充電度SOCデータ等を入力する一方、出力データとして、内燃機関エンジン41に係る駆動制御データ、摩擦制動部材45に係る制動制御データ、モータジェネレータ49に係る駆動制御データ等を出力する機能を有する。入出力部61は、本発明の「充電度情報取得部」に相当する。
【0036】
演算部63は、AP加減速操作量データ、BP制動操作量データ、車速データ、前後Gデータ、モード切替データ、充電度データ等に基づいて、内燃機関エンジン41に係る駆動制御データ、摩擦制動部材45に係る制動制御データ、モータジェネレータ49に係る駆動制御データ等を演算する機能を有する。詳しく述べると、演算部63は、目標加減速度設定部71と、加減速制御部73と、を有する。
【0037】
目標加減速度設定部71は、AP加減速操作量データ、BP制動操作量データ等の入力データに基づいて、電動車両12の加減速度に係る目標値(「目標加減速度」と呼ぶ場合がある。)を設定する機能を有する。
【0038】
具体的には、通常モードでは、目標加減速度設定部71は、BP制動操作量データに基づいて目標減速度を設定する一方、AP加減速操作量データに基づいて目標加速度を設定する。すなわち、通常モードでは、AP加減速操作量データに応じて電動車両12の加速のみが制御される。その結果、アクセルペダル21の踏込み/踏戻し操作範囲(AP加減速操作量データが取り得る範囲)の全てが、原則として、電動車両12の加速に用いられる。ただし、通常モードにおいて、アクセルペダル21を初期位置付近まで踏戻した際に生じるエンジンブレーキは、通常通り作用する。
【0039】
これに対し、ワンペダルモードでは、目標加減速度設定部71は、BP制動操作量データに基づいて目標減速度を設定する点は通常モードと同様であるが、AP加減速操作量データに基づいて、目標となる加速度及び減速度の両方(目標加減速度)を設定する点が、通常モードでのケースと相違している。
【0040】
単一のペダル(アクセルペダル21)操作によって加速度及び減速度の両方を設定するために、アクセルペダル21に係る踏込み操作量(AP加減速操作量データ)に対応する目標加減速度の関係は、運転者によるアクセルペダル21の操作が解除された状態の初期位置において最大となる目標減速度が対応付けられる一方、初期位置を起点とする減速領域では踏込み度合いが増すほど目標減速度が下がるように設定されている。その結果、ワンペダルモードでは、AP加減速操作量データに応じて、電動車両12の加速及び減速の両方が制御される。
【0041】
アクセルペダル21の踏込み/踏戻しに係る操作範囲(AP加減速操作量データが取り得る範囲)のうち、例えば
図3に示すように、アクセルペダル23の初期位置に対応する初期値P0を起点として境界閾値P1を終点とする減速のための領域を「減速領域」と呼ぶ。また、境界閾値P1を超えてアクセルペダル23が踏込み操作される加速のための領域を「加速領域」と呼ぶ。なお、減速領域及び加速領域のそれぞれの範囲の広狭(境界閾値P1の大小)は、車速の増減に応じて可変となる。
【0042】
加減速制御部73は、車速データ、前後Gデータ等の入力データ、目標加減速度設定部71で設定された目標加減速度に基づいて電動車両12の加減速制御を行う機能を有する。こうした加減速制御を実現するために、加減速制御部73は、エンジン制御部75、ブレーキ制御部77、及びモータ制御部79を備える。加減速制御部73は、本発明の「制動制御部」に相当する。
【0043】
エンジン制御部75は、目標加減速度設定部71で設定された目標加減速度に基づいて、内燃機関エンジン41に係る駆動力及びエンジンブレーキを発揮するエンジン機構35の制御を行う。ブレーキ制御部77は、目標加減速度設定部71で設定された目標加減速度に基づいて、摩擦制動力を発揮する制動機構37を制御する。モータ制御部79は、目標加減速度設定部71で設定された目標加減速度に基づいて、モータジェネレータ49に係る駆動力及び回生制動力を発揮するモータ機構39を制御する。
【0044】
記憶部65は、不図示の不揮発性メモリ及び揮発性メモリからなる。不揮発性メモリは、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)であり、演算部63における各種処理を実行するためのプログラム等が記憶される。揮発性メモリは、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)であり、演算部63における各種処理を実行する際に、入出力データや演算結果が一時的に記憶される。
また、記憶部65には、SOC第1閾値SOCth1、及びSOC第2閾値SOCth2が記憶されている。SOC第1閾値SOCth1、及びSOC第2閾値SOCth2は、加減速ECU13において、ワンペダルモードを継続するか、ワンペダルモードを中断するかを判定する際に参照される。SOC第1閾値SOCth1、及びSOC第2閾値SOCth2について、詳しくは後記する。
【0045】
〔本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11の動作〕
次に、本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11の動作について、
図2を参照して説明する。
図2は、電動車両用制動装置の動作説明に供するフローチャート図である。
ただし、前提として、AP操作モードはワンペダルモードに設定されているものとする。
【0046】
図2に示すステップS11において、加減速ECU13は、通信媒体19を介して、AP加減速操作量データ、SOCセンサ55に係る充電度SOCデータを含む各種データを入力する。
【0047】
ステップS12において、加減速ECU13は、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第1閾値SOCth1を超えるか否かを判定する。なお、SOC第1閾値SOCth1としては、例えば、バッテリ53が満充電状態となるまでには少し猶予があるものの、満充電状態に近い充電度SOC値(特に限定されないが、例えば70%程度等の、適宜変更可能な値)を採用すればよい。
【0048】
ステップS12の判定の結果、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第1閾値SOCth1を超えない(ステップS12の「No」)旨の判定が下された場合、加減速ECU13は、ワンペダルモードを継続させる(ステップS13)。次いで、加減速ECU13は、処理の流れをステップS11に戻し、以降の処理を順次実行する。
【0049】
一方、ステップS12の判定の結果、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第1閾値SOCth1を超えた(ステップS12の「Yes」)旨の判定が下された場合、ステップS14において、加減速ECU13は、さらに、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第2閾値SOCth2未満か否かを判定する。なお、SOC第2閾値SOCth2としては、例えば、バッテリ53が満充電状態である際の充電度にごく近い充電度SOC値(特に限定されないが、例えば90%程度等の、適宜変更可能な値)を採用すればよい。
【0050】
ステップS14の判定の結果、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第2閾値SOCth2未満でない(ステップS14の「No」:SOC>=SOCth2)旨の判定が下された場合、加減速ECU13は、バッテリ53が満充電状態にごく近いとみなして、ワンペダルモードを中断させる(ステップS15)。
次いで、加減速ECU13は、処理の流れをステップS11に戻し、以降の処理を順次実行する。
【0051】
一方、ステップS14の判定の結果、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第2閾値SOCth1未満である(ステップS14の「Yes」:SOCth1<SOC<SOCth2)旨の判定が下された場合、加減速ECU13は、バッテリ53が満充電状態となるまでには少し猶予があるものの、満充電状態に近いとみなして、実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させる。具体的には、加減速ECU13は、充電度SOC値に応じて減少させた目標減速度に基づく目標制動力を用いて減速制御を実行する(ステップS16)。
次いで、加減速ECU13は、処理の流れをステップS11に戻し、以降の処理を順次実行する。
【0052】
〔タイムチャートに基づく電動車両用制動装置11の動作説明〕
次に、本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11の動作について、ワンペダルモードがオン設定されている状態で、定速走行を行っていた電動車両12がアクセルペダル21を踏戻し操作することで減速する例を例示して、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は電動車両用制動装置11の動作説明に供するタイムチャート図であり、(a)はアクセルペダル操作量(AP加減速操作量)の時間推移を、(b)はバッテリ53の充電度SOCの時間推移を、(c)は制動力の時間推移を、それぞれ表す。
図4は、バッテリ53の充電度SOCと制動力の対応関係を表す説明図である。
【0053】
図3に示す時刻t0〜t1において、アクセルペダル21は徐々に踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t0〜t1において、バッテリ53の充電度SOCは一定の値を維持している(
図3(b)参照)。電動車両12に対して制動力は作用していない(
図3(c)参照)。
図3に示す時刻t0〜t1は、本発明の「加速領域」に相当する。また、時刻t1時におけるAP加減速操作量P1は、本発明の「境界閾値」に相当する。
【0054】
図3に示す時刻t1〜t2において、アクセルペダル21は引き続き徐々に踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t1〜t2において、バッテリ53の充電度SOCは漸増している(
図3(b)参照)。
同時刻t1〜t2において、電動車両12に対して制動力が作用している(
図3(c)参照)。時刻t1〜t5では、AP加減速操作量に基づく目標減速度が設定されるとともに、目標減速度に基づく大きさの目標制動力が設定される。
同時刻t1〜t2では、目標制動力と実制動力が一致している。バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1以下であり、本発明に係る摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態の想定を要しない(目標制動力に対して実制動力を減少させる制御を要しない)からである。
また、同時刻t1〜t2に作用する実制動力は、回生制動力である。目標制動力が比較的小さい減速領域では、回生制動力を優先的に用いる方が、電費(バッテリ53の単位容量当たりの走行距離)を稼ぐ観点から好ましいためである。
【0055】
図3に示す時刻t2〜t3において、アクセルペダル21は引き続き徐々に踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t2〜t3において、バッテリ53の充電度SOCは引き続き漸増している(
図3(b)参照)。その結果、時刻t3では、バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1に達している。
同時刻t2〜t3において、電動車両12に対して制動力が作用している(
図3(c)参照)。同時刻t2〜t3でも、時刻t1〜t2と同様に、目標制動力と実制動力が一致している。バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1以下であり、本発明に係る摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態の想定を要しない(目標制動力に対して実制動力を減少させる制御を要しない)からである。
また、同時刻t2〜t3に作用する実制動力は、回生制動力に摩擦制動力が加算されている。目標制動力がある程度大きい減速領域では、回生制動力に加えて補助的に摩擦制動力を用いる方が、目標制動力に追従する大きさの制動力を確保する観点から好ましいためである。
【0056】
図3に示す時刻t3〜t4において、アクセルペダル21は引き続き徐々に踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t3〜t4において、バッテリ53の充電度SOCも引き続き漸増している(
図3(b)参照)。
同時刻t3〜t4において、電動車両12に対して制動力が作用している(
図3(c)参照)。同時刻t3〜t4では、目標制動力に対して実制動力が減少している。バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1を超えており、本発明に係る摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態の想定を要する(目標制動力に対して実制動力を減少させる制御を要する)からである。
また、同時刻t3〜t4に作用する実制動力は、回生制動力に摩擦制動力が加算されている。ただし、同時刻t3〜t4では、回生制動力の大きさを一定に維持した状態で、摩擦制動力の大きさが徐々に減少している。仮に、摩擦制動力の大きさを一定に維持すると、摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態を早期に招来するおそれがあるためである。
【0057】
ここで、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第1閾値SOCth1を超えており、かつ、SOC第2閾値SOCth2以下である(SOCth1<SOC<=SOCth2)際の、バッテリ53の充電度SOCに対する実制動力の関係の一例について、
図4を参照して説明する。なお、バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1以下である際の実制動力は、
図4に例示するような回生制動力及び摩擦制動力の配分比に設定されているものとする。
【0058】
バッテリ53の充電度SOCが、SOC第1閾値SOCth1を超えており、かつ、SOC第3閾値SOCth3以下である(SOCth1<SOC<=SOCth3;ただし、SOCth3<SOCth2)際には、回生制動力の大きさを一定に維持した状態で、摩擦制動力の大きさが徐々に減少している。
【0059】
また、バッテリ53の充電度SOCが、SOC第3閾値SOCth3を超えており、かつ、SOC第2閾値SOCth2以下である(SOCth3<SOC<=SOCth2)際には、摩擦制動力の大きさをゼロに維持した状態で、回生制動力の大きさが徐々に減少している。
【0060】
図3に示す時刻t4〜t5において、アクセルペダル21は初期位置に至るまで踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t4〜t5におけるAP加減速操作量P0を「初期値」と呼ぶ。同時刻t4〜t5において、バッテリ53の充電度SOCは引き続き漸増している(
図3(b)参照)。その結果、時刻t5では、バッテリ53の充電度SOCがSOC第2閾値SOCth2に達している。
同時刻t4〜t5において、電動車両12に対して制動力が作用している(
図3(c)参照)。同時刻t4〜t5では、時刻t3〜t4と同様に、目標制動力に対して実制動力が減少している。バッテリ53の充電度SOCがSOC第1閾値SOCth1を超えており、本発明に係る摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態の想定を要する(目標制動力に対して実制動力を減少させる制御を要する)からである。
また、同時刻t4〜t5に作用する実制動力は、回生制動力に摩擦制動力が加算されている。ただし、同時刻t4〜t5では、時刻t3〜t4と同様に、回生制動力の大きさを一定に維持した状態で、摩擦制動力の大きさが徐々に減少している。仮に、摩擦制動力の大きさを一定に維持すると、摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態を早期に招来するおそれがあるためである。
【0061】
図3に示す時刻t5以降において、時刻t4〜t5と同様に、アクセルペダル21は初期位置に至るまで踏戻し操作されている(
図3(a)参照)。同時刻t5以降において、バッテリ53の充電度SOCは一定の値(第2閾値SOCth2)を維持している(
図3(b)参照)。電動車両12に対して制動力は作用していない(
図3(c)参照)。
図3に示す時刻t5以降では、バッテリ53の充電度SOCがSOC第2閾値SOCth2を超えており、本発明に係る摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態が間近に迫っているからである。
【0062】
〔本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11の作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11の作用効果について説明する。
第1の観点に基づく電動車両用制動装置11は、電動車両12を制動する際に操作されるブレーキペダル(制動操作子)25と、電動車両12の車輪に摩擦制動部材45を作用させることで摩擦制動力を発生させる摩擦制動部(制動機構)37と、電動車両12を加減速する際に操作され、当該加減速に係る操作範囲に加速領域及び減速領域が境界閾値P1を挟んで設定された、ブレーキペダル(制動操作子)25とは別個のアクセルペダル(加減速操作子)21と、バッテリ(蓄電装置)53からの電力供給を受けて車輪に駆動力を発生させるとともに、車輪の回転エネルギを回生電力に変換しバッテリ53に回収させることで車輪に回生制動力を発生させるモータジェネレータ49と、アクセルペダル21が減速操作された際に、当該減速操作に基づく目標減速度を設定する目標加減速度設定部(目標減速度設定部)71と、アクセルペダル21が減速操作された際に、車両に作用する実制動力が、目標加減速度設定部71により設定された目標減速度に基づく大きさの目標制動力に追従するように、制動機構37に係る摩擦制動力及びモータジェネレータ49に係る回生制動力のうち少なくとも一方の実制動力を用いて電動車両12の制動制御を行う加減速制御部(制動制御部)73と、バッテリ53の充電状態に係る充電度情報(SOCデータ)を取得する入出力部(充電度情報取得部)61と、を備え、加減速制御部73は、入出力部61により取得されるSOCデータに基づく充電度SOCが所定の第1閾値SOCth1を超える場合、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させる構成を採用することとした。
【0063】
アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させるに際しては、例えば、目標制動力に対して適宜のゲイン(1より小さい)を乗算することで、目標制動力の大きさを、通常のケースの目標制動力の大きさと比べて小さくなるように補正すればよい。
【0064】
第1の観点に基づく電動車両用制動装置11によれば、バッテリ53が満充電状態となる前に、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の大きさを、目標制動力の大きさと比べて減少させるため、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力として回生制動力及び摩擦制動力の少なくとも一方の実制動力を適用する際に、摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態を抑制することができる。
【0065】
また、実制動力の不足を認識した運転者に対し、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の確保から、ブレーキペダル25の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(アクセルペダル21からブレーキペダル25への踏み替え操作)を促すことができる。その結果、仮に、摩擦制動部材45がフェード状態に陥っていたとしても、そのことをブレーキペダル25の制動操作を通じて運転者に気づかせることができるため、電動車両12が有する制動能力(回生制動力及び摩擦制動力)の実情を把握しやすくすることができる。
【0066】
第2の観点に基づく電動車両用制動装置11は、第1の観点に基づく電動車両用制動装置11であって、加減速制御部(制動制御部)73は、バッテリ53の充電度SOCが第1閾値SOCth1を超える度合いが増すほど、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の減少度合いを段階的に促進させる構成を採用してもよい。
【0067】
第2の観点に基づく電動車両用制動装置11によれば、加減速制御部73は、バッテリ53の充電度SOCが第1閾値SOCth1を超える度合いが増すほど(バッテリ53が満充電状態に近づくほど)、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の減少度合いを段階的に促進させるため、運転者に対し、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の減少変化を早期かつ適確に認識させることができる。その結果、実制動力の不足を認識した運転者に対し、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の確保から、ブレーキペダル25の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(アクセルペダル21からブレーキペダル25への踏み替え操作)を早期かつ適確に促す効果を期待することができる。
【0068】
第3の観点に基づく電動車両用制動装置11は、第1又は第2の観点に基づく電動車両用制動装置11であって、アクセルペダル21では、運転者による操作が解除された状態の初期位置において最大となる目標減速度が対応付けられる一方、当該初期位置を起点とする減速領域では踏込み度合いが増すほど下がるように、アクセルペダル21の踏込み度合いに対する目標減速度の関係が設定され、加減速制御部73は、アクセルペダル21が減速操作された際に、アクセルペダル21の踏込み度合いが所定値を超える領域では回生制動力を用いる一方、アクセルペダル21の踏込み度合いが前記所定値以下の領域では回生制動力及び前記摩擦制動力を用いて制動制御を行い、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の大きさを減少させるに際し、摩擦制動力を優先して減少させる構成を採用してもよい。
【0069】
第3の観点に基づく電動車両用制動装置11によれば、加減速制御部73は、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の大きさを減少させるに際し、フェード状態に陥るおそれのある摩擦制動部材45を用いた摩擦制動力を優先して減少させるため、アクセルペダル21の減速操作時において、運転者において想定の埒外である、摩擦制動部材45がフェード状態に陥る事態を抑制することができる。
【0070】
第4の観点に基づく電動車両用制動装置11は、第1〜第3のいずれかの観点に基づく電動車両用制動装置11であって、加減速制御部73は、入出力部(充電度情報取得部)61により取得されるSOCデータ(充電度情報)に基づく充電度SOCが第1閾値SOCth1と比べて大きい所定の第2閾値SOCth2を超える場合、アクセルペダル21の減速操作に基づく制動制御を中断させる構成を採用してもよい。
【0071】
第4の観点に基づく電動車両用制動装置11によれば、バッテリ53が満充電状態にごく近い充電度SOCとなった場合に、アクセルペダル21の減速操作に基づく制動制御を中断させるため、運転者に対し、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の減少変化を早期かつ適確に認識させることができる。その結果、実制動力の不足を認識した運転者に対し、アクセルペダル21の減速操作に基づく実制動力の確保から、ブレーキペダル25の制動操作に基づく実制動力の確保への切り替え(アクセルペダル21からブレーキペダル25への踏み替え操作)を早期かつ適確に促す効果を期待することができる。
【0072】
第5の観点に基づく電動車両用制動装置11は、第4の観点に基づく電動車両用制動装置11であって、加減速制御部73は、入出力部(充電度情報取得部)61により取得されるSOCデータ(充電度情報)に基づく充電度SOCが第2閾値SOCth2を超えた後、第1閾値SOCth1未満となった場合、アクセルペダル21の減速操作に基づく制動制御を再開させる構成を採用してもよい。
【0073】
第5の観点に基づく電動車両用制動装置11によれば、加減速制御部73は、入出力部61により取得されるSOCデータに基づく充電度SOCが第2閾値SOCth2を超えた後、第1閾値SOCth1未満となった場合、(中断していた)アクセルペダル21の減速操作に基づく制動制御を再開させるため、アクセルペダル21の減速操作に基づく制動制御の適正化及び安定化に貢献することができる。
【0074】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0075】
例えば、本発明に係る実施形態において、目標制動力を実現するための実制動力を設定するに際し、摩擦制動力に優先させて回生制動力を採用する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。目標制動力を実現するための実制動力を設定するに際し、回生制動力に優先させて摩擦制動力を採用する態様にも、本発明を適用することができる。
【0076】
また、本発明に係る実施形態において、動力源として内燃機関エンジン41及びモータジェネレータ49を搭載したハイブリッド車両に対して、本発明の実施形態に係る電動車両用制動装置11を適用する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。動力源としてモータジェネレータのみを搭載(内燃機関エンジンを搭載しない)した電動車両に対して、本発明を適用してもよいことはもちろんである。