特許第6223492号(P6223492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223492自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223492
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/05 20060101AFI20171023BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20171023BHJP
【FI】
   C22F1/05
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 631A
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-64655(P2016-64655)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-179413(P2017-179413A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅是
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/146654(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0252460(US,A1)
【文献】 特開平09−176769(JP,A)
【文献】 特開平10−081946(JP,A)
【文献】 特開平07−034130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/04− 1/057
C22C 21/00−21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を溶解して成分を調整し、6000系アルミニウム合金とする溶解工程と、
前記溶解工程後、鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
前記鋳造工程後、前記鋳塊に対し均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理工程後、前記鋳塊を所定の形状のアルミニウム合金鍛造材に鍛造する鍛造工程と、
前記鍛造工程後、前記アルミニウム合金鍛造材に対して溶体化熱処理を行う溶体化熱処理工程と、
前記溶体化熱処理工程後、前記アルミニウム合金鍛造材に対して焼入れを行う焼入れ工程と、
前記焼入れ工程後、人工時効処理を行う人工時効処理工程と、を含み、
前記焼入れ工程で焼入れ時間が1〜5分である焼入れを行うことを特徴とする自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法。
【請求項2】
前記焼入れ工程において、前記アルミニウム合金鍛造材の表面積をSAとし、前記焼入れを行うための水と平行な断面の断面積をSBとした場合に、SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400となる姿勢で焼入れを行うことを特徴とする請求項1に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法。
【請求項3】
前記焼入れを行うための水の温度が30〜70℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームなどの自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションアームなどの自動車部品の材料としてJISに規定されている6000系アルミニウム合金(「Al−Mg−Si系合金」と呼称されることもある。)が好適に用いられている。6000系アルミニウム合金は熱処理型合金などとも呼ばれており、溶体化熱処理、焼入れ、人工時効処理からなる一連の熱処理(例えば、T6調質)が施される。
【0003】
近年、車両や自動車部品といった自動車用アルミニウム合金鍛造材については、車重を軽くして燃費向上を図るなどの理由から、軽量化が強く望まれている。自動車用アルミニウム合金鍛造材の軽量化のためには高強度化が必要であり、そのような素材の開発が強く望まれている。
【0004】
自動車用アルミニウム合金鍛造材を高強度化するため、前記した熱処理のうち、溶体化熱処理や人工時効処理についてはこれまでにも多くの提案がなされている。しかし、焼入れについてはそのような提案がなされていないのが現状である。
【0005】
焼入れについては、例えば、非特許文献1の第652頁の10.5.2に、アルミニウム合金鍛造材の焼入れ処理について、冷却能は冷水が優れているが、焼入れ時の残留応力のために歪が発生し易くなる旨、これを防止するため50〜60℃の温水で焼入れしたり、焼入れ剤を添加して焼入れしたりする旨が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人軽金属協会 アルミニウム技術便覧 編集委員会 編、「アルミニウム技術便覧」、カロス出版株式会社、1985年6月16日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1をはじめとして、前記したように、従来、自動車用アルミニウム合金鍛造材のさらなる高強度化を図るにあたって、焼入れは検討事項の対象ではなかった。つまり、自動車用アルミニウム合金鍛造材は、焼入れの条件に関して、さらなる高強度化を図るための改善の余地が残されていた。
【0008】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、高い強度を付与することのできる自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決した本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、原料を溶解して成分を調整し、6000系アルミニウム合金とする溶解工程と、前記溶解工程後、鋳塊を鋳造する鋳造工程と、前記鋳造工程後、前記鋳塊に対し均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、前記均質化熱処理工程後、前記鋳塊を所定の形状のアルミニウム合金鍛造材に鍛造する鍛造工程と、前記鍛造工程後、前記アルミニウム合金鍛造材に対して溶体化熱処理を行う溶体化熱処理工程と、前記溶体化熱処理工程後、前記アルミニウム合金鍛造材に対して焼入れを行う焼入れ工程と、前記焼入れ工程後、人工時効処理を行う人工時効処理工程と、を含み、前記焼入れ工程で焼入れ時間が1〜5分である焼入れを行うこととした。
このように、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、焼入れ時間を従来よりも短くするとともに、予め解析した強度が高くなる所定の範囲としているので、自動車用アルミニウム合金鍛造材の強度を高くすることができる。
【0010】
本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、前記焼入れ工程において、アルミニウム合金鍛造材の表面積をSAとし、前記焼入れを行うための水と平行な断面の断面積をSBとした場合に、SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400となる姿勢で焼入れを行うことが好ましい。
このように、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、SB/SAで算出される値を所定の範囲となる姿勢で焼入れを行っているので、焼入れ歪を生じ難くすることができる。
【0011】
本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、焼入れを行うための水の温度が30〜70℃であることが好ましい。
このように、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、焼入れを行う水の温度を所定の範囲としているので、より確実に自動車用アルミニウム合金鍛造材の強度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法は、自動車用アルミニウム合金鍛造材に高い強度を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】自動車用アルミニウム合金鍛造材の表面積をSAとし、焼入れを行うための水と平行な断面の断面積をSBとした場合におけるSB/SAで算出される値について説明する概念図である。
図1B】自動車用アルミニウム合金鍛造材の表面積をSAとし、焼入れを行うための水と平行な断面の断面積をSBとした場合におけるSB/SAで算出される値について説明する概念図である。
図2A】本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法を適用することのできるサスペンションアームの一例を示す概略図である。
図2B】本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法を適用することのできるサスペンションアームの一例を示す概略図である。
図3】I型アームの形状と試験部位T1の位置とを示す概略説明図である。
図4A】実施例において焼入れ歪が生じているか否かを確認する様子を説明する説明図である。
図4B】実施例において焼入れ歪が生じているか否かを確認する様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法を実施するための形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る自動車用アルミニウム合金鍛造材の製造方法(以下、「本方法」と呼称することもある)は、原料を溶解して成分を調整し、6000系アルミニウム合金とする溶解工程と、溶解工程後、鋳塊を鋳造する鋳造工程と、鋳造工程後、鋳塊に対し均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、均質化熱処理工程後、鋳塊を所定の形状のアルミニウム合金鍛造材(以下、「Al合金鍛造材」と呼称することもある)に鍛造する鍛造工程と、鍛造工程後、Al合金鍛造材に対して溶体化熱処理を行う溶体化熱処理工程と、溶体化熱処理工程後、Al合金鍛造材に対して焼入れを行う焼入れ工程と、焼入れ工程後、人工時効処理を行う人工時効処理工程と、を含み、前記した焼入れ工程で焼入れ時間が1〜5分である焼入れを行うというものである。
【0015】
このように、本方法は、焼入れ工程における焼入れ時間を1〜5分としているので、Al合金鍛造材の強度を高くすることができる。
焼入れ時間が1分未満であると、焼入れが十分に行われないので、強度を高くすることができない。他方、焼入れ時間が5分を超えると、焼入れの効果が飽和するだけでなく、強度が若干低下する傾向にある。よって、焼入れ時間は1〜5分とする。強度をより高くする観点から、焼入れ時間は4分以下とするのが好ましく、3分以下とするのがより好ましい。
【0016】
本方法は、焼入れを行うための水の温度を30〜70℃とするのが好ましい。水の温度をこの範囲とすると、より確実にAl合金鍛造材の強度を高くすることができる。なお、水の温度は、前記温度範囲内において、6000系アルミニウム合金の合金種に適した温度+5℃以内で行うのが好ましい。例えば、後記する表1に示す化学成分のAl合金の場合、40〜45℃で行うのが好ましい。その他の合金種の場合、前記温度範囲内において、適宜実験等することにより、容易に適切な温度を把握することができる。
水の温度は、焼入れを行う焼入れ槽の内部に1個又は複数個の温度計を設置し、コンピュータなどにより管理するのが好ましい。水の温度が70℃を超える場合、新たに温度の低い水を追加して温度を下げるのが好ましい。また、水の温度が30℃未満である場合、ヒータなどで温度を上げるのが好ましい。
【0017】
また、本方法は、焼入れを行うための水をバブリングしていることが好ましい。このように、水をバブリングすると、ソフトスポットを生じ難くすることができる。ここで、「ソフトスポット」とは、Al合金鍛造材に部分的(局所的)に発生する焼入れ不良部分、未焼入れ部分をいう。ソフトスポットは、Al合金鍛造材を多数、密に配列したり、段積みしたりした場合に生じ易い。ソフトスポットが生じた部分は、他の正常な焼入れ部分に比して強度が低くなり、Al合金鍛造材の機械的性質などの均質性を阻害する。
【0018】
前記したように、ソフトスポットは、Al合金鍛造材を多数、密に配列したり、段積みしたりした場合に生じ易い。このようになるのは、隣り合うAl合金鍛造材同士の間隔が狭いと、Al合金鍛造材を冷却して温められた水がその位置から動き難いことが理由であると考えられる。従って、焼入れ時に隣り合うAl合金鍛造材同士の間隔が十分に開いていればバブリングを行う必要はないが、そうでない場合はバブリングを行うことが好ましい。バブリングで生じた気泡は、隣り合うAl合金鍛造材同士の間隔の広狭に関係なく上方に移動する性質を有している。気泡は、上方に移動する際に水を引き連れて移動する。そのため、隣り合うAl合金鍛造材同士の間隔が狭くても水の循環を促すことができる。その結果、前記したようにソフトスポットを生じ難くすることができる。
【0019】
バブリングは、焼入れ槽内の下部に設置されたエアノズルやスパージャなどの排気部と、排気部と接続されたエア配管と、エア配管と接続されたエアポンプと、で行うことができる。なお、排気部は、焼入れ槽内の水にエアを吹き込み、バブルを発生させる。エア配管は、排気部にエアを供給する。エアポンプは、圧力をかけてエアをエア配管に供給する。これらは従来公知のものを用い、一般的な条件で実施することができる。
バブリングのエア圧力は、例えば、2〜10kg/cmとするのが好ましいが、ソフトスポットを生じ難くすることができればよく、これに限定されない。
【0020】
また、本方法においては、Al合金鍛造材の表面積をSAとし、焼入れを行うための水と平行な断面の断面積をSBとした場合に、SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400となる姿勢で焼入れを行うことが好ましい。なお、図1A及び図1Bは、Al合金鍛造材の表面積をSAとし、焼入れを行うための水と平行な断面CSの断面積をSBとした場合におけるSB/SAで算出される値について説明する概念図である。図1Aは、SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400となる姿勢、すなわち、Al合金鍛造材をなるべく立てた状態にしていることを示している。また、図1Bは、SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400とならない姿勢、すなわち、Al合金鍛造材を寝かした状態にしていることを示している。
SB/SAで算出される値を前記した範囲とすることによって、焼入れ歪を生じ難くすることができる。
【0021】
Al合金鍛造材の水への投入角度θは、Al合金鍛造材の中心軸Cを基準にして把握すると簡便である。SB/SAで算出される値が0.0040〜0.0400の場合、中心軸Cを基準とした水への投入角度θは0〜45°の範囲に収まる。
なお、Al合金鍛造材の一部が所定の角度をもって屈曲している場合は、屈曲しているところを基準にそれぞれの端部を結んだ中心軸Cの長さの長い方を基準にするのが好ましい。
【0022】
Al合金鍛造材の表面積や、焼入れを行うための水と平行な断面の断面積は、例えば、Al合金鍛造材の形状を3Dスキャナで読み込み、任意のソフトで解析することによって容易に把握することができる。また、例えば、3D−CAD(Computer-Aided Design)などで形状を設計したものであれば、当該3D−CADから容易に把握することができる。
【0023】
焼入れ槽で焼入れを行う際は、溶体化熱処理したAl合金鍛造材を保持・支持するための保持具を用いたり、篭(金網のケース)に入れたりして行う。そのため、焼入れを行う際は、SB/SAで算出される値が前記した範囲となるように、用いる保持具の形状を工夫したり、篭の向きを調整したりするとよい。
【0024】
本方法で用いるアルミニウム合金は、6000系アルミニウム合金であることが好ましい。このようにすると、例えば、高い強度を有する自動車部品を提供することが可能となる。6000系アルミニウム合金として、具体的には、6061合金、6110合金、6111合金、6003合金、6151合金、6061合金、6N01合金、6063合金、6082合金、6182合金などが挙げられる。
【0025】
また、本方法を好適に適用できるAl合金鍛造材として、例えば、サスペンションアームを挙げることができる。すなわち、本方法は、サスペンションアームとして好適に適用することができる。サスペンションアームとは、車輪と車体をつなぐ部品で、路面からの衝撃や振動が車室に直接伝わるのを防ぐ装置をいう。サスペンションアームには、ストラット式やダブルウィッシュボーン式サスペンションのアッパーアームとロワアームをはじめ、トレーリングアームやスイングアームなど各種の形式や配置に応じたアームがある。本方法は、これらのアームのいずれにも適用することができる。本方法は、特に、I字形をしたI型アーム1(図2A参照)及びL字形をしたL型アーム2(図2B参照)と呼ばれるサスペンションアームに好適に適用することができる。なお、図2A及び図2Bは、本方法を適用することのできるサスペンションアームの一例を示す概略図である。また、本方法は、A字形をしたA型アーム(図示せず)と呼ばれるサスペンションアームに好適に適用することもできる。
【0026】
本発明においては、焼入れ工程以外の各工程は、すなわち、溶解工程、鋳造工程、均質化熱処理工程、鍛造工程、溶体化熱処理工程、及び人工時効処理工程の各工程は、Al合金鍛造材を製造する一般的な設備及び条件で実施することができる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例と比較例とを対比して、本方法についてさらに詳細に説明する。
表1に示す化学成分(質量%)の6000系アルミニウム合金を用い、溶解工程、鋳造工程、均質化熱処理工程、及び鍛造工程を順次行って、I型アームを鍛造した。そして、鍛造したI型アームに対して550℃×240分の溶体化熱処理を行い、表2のNo.1〜8に示す焼入れ時間で焼入れを行った。焼入れ水温は40℃とし、焼入れ水量は溶体化熱処理を行ったI型アームを入れた後、その上昇温度が5℃以内となる十分な量とした。焼入れは、I型アームの最大肉厚部の中心温度が40〜45℃となるようにして行った。中心温度は、I型アームの最大肉厚部の中心まで穴をあけ、当該穴に熱電対を挿入して確認した(表2には示さず)。
【0028】
そして、表2のNo.1〜8に示す各焼入れ時間で焼入れを行った後、175℃×8時間の人工時効処理を行った。このようにして製造したNo.1〜8に係るI型アームの試験部位T1(図3参照)から、JIS Z 2241:2011に準拠して試験片を作製し、金属材料引張試験を行うことにより、引張強度(MPa)、耐力(MPa)、伸び(%)を測定した。
引張強度が390MPa以上であるものを高い強度を有していると判断した。
焼入れ時間とともに金属材料引張試験の結果を表2に示す。表2中、下線は本発明の要件を満たしていないことを示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示すように、No.2〜5に係るI型アームは、焼入れ時間が10〜30分であるNo.6〜8と比較して1〜5分と短かったので、引張強度及び耐力が高くなった(いずれも実施例)。特に、No.2〜4に係るI型アームは焼入れ時間が適度に短かったので、引張強度及び耐力がより高くなった。
【0032】
これに対し、No.1、6〜8に係るI型アームは、本発明の要件を満たしていなかったので、引張強度及び耐力が高くならなかった(いずれも比較例)。
具体的には、No.1に係るI型アームは焼入れ時間が短すぎたため、中心温度が40〜45℃まで下がらず、粗大な析出物が出て高強度化できなかった。従って、No.1に係るI型アームは引張強度及び耐力が高くならなかった。
No.6〜8に係るI型アームは焼入れ時間が長すぎたため、強度に寄与しない析出が起こり、人工時効処理工程での析出量を低下させるため、高強度化しなかった。従って、No.6〜8に係るI型アームは引張強度及び耐力が高くならなかった。
【0033】
また、焼入れを行う際のI型アーム及びL型アームの姿勢と、焼入れ歪との関係を次のようにして検証した。
表3のNo.9〜32に示すように、Al合金鍛造材の表面積の異なる6種類のサスペンションアーム(I型アーム3種類、L型アーム3種類)を用意した。
なお、No.9〜32に係るサスペンションアームは、前記と同様、表1に示す化学成分(質量%)の6000系アルミニウム合金を用い、溶解工程、鋳造工程、均質化熱処理工程、及び鍛造工程を順次行って作製した。
次に、No.9〜32に係るサスペンションアームに対して、前記と同様550℃×240分の溶体化熱処理を行い、前記した表2のNo.3に示す焼入れ時間で焼入れを行った後(すなわち、2分の焼入れを行った後)、175℃×8時間の人工時効処理を行った。なお、焼入れの際、表3に示すように、焼入れを行うための水への投入角度θを0〜45°に設定して行った。
そして、各サスペンションアームの形状を3Dスキャナで読み込んで任意のソフトで解析し、サスペンションアームの表面積SAと、各投入角度θにおける、焼入れを行うための水と平行な断面の断面積SBと、を算出した。また、算出したSAとSBから各投入角度θにおけるSB/SAを算出した。
【0034】
次いで、前記したようにして製造したNo.9〜32に係るサスペンションアームに対して、それぞれ図4A及び図4Bに示す所定の治具3やダイヤルゲージ4を用いて焼入れ歪が生じているか否か確認した。焼入れ歪が公差として許容されている範囲内(公差1.0mmを基準にしている)であるものを“○”とし、許容されている範囲を超えるものを“×”とした。表3にその結果を示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3に示すように、No.10〜25、27〜30に係るサスペンションアームは、サスペンションアームの表面積SAに対する焼入れを行うための水と平行な断面の断面積SBの比SB/SAが適切であったので、焼入れ歪は公差として許容できる範囲内であった。
No.9、26、31、32に係るサスペンションアームは、サスペンションアームの表面積SAに対する焼入れを行うための水と平行な断面の断面積SBの比SB/SAが適切ではなかったので、焼入れ歪が公差として許容できる範囲を超えていた。
なお、No.9〜32に係るいずれのサスペンションアームの引張強度、耐力、伸びも、表2のNo.3と同じであった。
【符号の説明】
【0037】
SA アルミニウム合金鍛造材の表面積
SB 焼入れを行うための水と平行な断面の断面積
CS 焼入れを行うための水と平行な断面
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B