(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂
本発明の実施形態で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0024】
耐熱性の観点から、PPS樹脂は、上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また、(a)PPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位で構成されていてもよい。
【0026】
上記構造を一部有するPPS共重合体は、融点が低くなる。このため、このような樹脂組成物は、成形性の点で有利となる。
【0027】
本発明の実施形態で用いられる(a)PPS樹脂の溶融粘度に制限はないが、薄肉の射出成形体が得られやすい観点から、300Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)以下であることが好ましく、200Pa・s以下がより好ましく、100Pa・s以下がさらに好ましい。下限については、溶融成形加工性やガス発生量の観点から1Pa・s以上であることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の実施形態における溶融粘度は、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
【0029】
以下に、本発明の実施形態に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造の(a)PPS樹脂が得られれば下記方法に限定されるものではない。
【0030】
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
【0031】
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
「ポリハロゲン化芳香族化合物」とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ-p-キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0032】
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度の(a)PPS樹脂を得る点から、下限としては、スルフィド化剤1モル当たり0.9モル以上、好ましくは0.95モル以上、更に好ましくは1.005モル以上であり、上限としては、スルフィド化剤1モル当たり2.0モル以下、好ましくは1.5モル以下、更に好ましくは1.2モル以下である。
【0033】
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
【0034】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0035】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0036】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0037】
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0038】
「仕込み」スルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味する。
【0039】
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0040】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合は、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し、下限としては、0.95モル以上、好ましくは1.00モル以上、更に好ましくは1.005モル以上であり、上限としては、1.20モル以下、好ましくは1.15モル以下、更に好ましくは1.100モル以下である。
【0041】
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いるのが好ましい。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物が挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
【0042】
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり、下限としては、2.0モル以上、好ましくは2.25モル以上、より好ましくは2.5モル以上であり、上限としては、10モル以下、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.5モル以下である。
【0043】
[分子量調節剤]
生成する(a)PPS樹脂の末端を形成させる目的、あるいは重合反応や分子量を調節する目的などにより、分子量調節剤としてモノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
【0044】
[重合助剤]
比較的高重合度の(a)PPS樹脂をより短時間で得るために、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで「重合助剤」とは、得られる(a)PPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩が挙げられる。これらは単独でも用い、また2種以上を同時に用いることもできる。上記物質のなかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムがより好ましい。
【0045】
「アルカリ金属カルボン酸塩」とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液として用いてもよい。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は、反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが、高価である。また、上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、カリウム塩、ルビジウム塩およびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われる。このため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムがアルカリ金属カルボン酸塩として最も好ましく用いられる。
【0047】
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル以上であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル以上が好ましく、0.2モル以上がより好ましい。一方、アルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常2モル以下であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル以下が好ましく、0.5モル以下がより好ましい。
【0048】
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル以上であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル以上が好ましく、1モル以上がより好ましい。一方、水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常15モル以下であり、より高い重合度を得る意味においては10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましい。
【0049】
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、アルカリ金属カルボン酸塩と水がより少量で、高分子量化が可能となる。
【0050】
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよい。重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
【0051】
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いてもよい。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つとしては、チオフェノールの生成が挙げられる。しかし、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。上記物質のなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するため、重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述した。スルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
【0052】
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02モル以上、好ましくは0.03モル以上、より好ましくは0.04モル以上の割合で使用することが好ましい。一方、重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.2モル以下、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.09モル以下の割合で使用することが好ましい。重合安定剤の割合が少ないと安定化効果が不十分である。一方、重合安定剤が多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
【0053】
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが容易である点からより好ましい。
【0054】
次に、本発明の実施形態に用いる(a)PPS樹脂の好ましい製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
【0055】
[前工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるところ、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤とを含む混合物を昇温させ、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
【0056】
また、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを用いる場合、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で、調製されるスルフィド化剤を用いてもよい。この方法には特に制限はないが、例えば、以下の方法が望ましい。つまり、不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを加える。その後、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる。なお、この前工程において重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進させるために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
【0057】
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。「重合系内の水分量」とは、重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
【0058】
[重合反応工程]
有機極性溶媒中において、スルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることにより、(a)PPS樹脂を製造する。
【0059】
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。このときの温度は、常温以上、好ましくは100℃以上で、240℃以下、好ましくは230℃以下の温度範囲である。重合反応工程で重合助剤を加えてもよい。これらの原料を仕込む順序は、特に制限はない。
【0060】
次に、上記混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、下限として、通常0.01℃/分以上の速度が選択され、0.1℃/分以上の速度がより好ましく、上限として、通常5℃/分以下の速度が選択され、3℃/分以下がより好ましい。
【0061】
一般に、250〜290℃の温度まで最終的には昇温させる。その温度での反応時間は、下限として、通常0.25時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、上限として、通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。
【0062】
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選ばれる。
【0063】
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効な場合がある。複数段階で重合を行う場合、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
【0064】
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(A)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(B)上記(A)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
【0065】
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
【0066】
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はない。例えば、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは徐冷速度を0.1〜1℃/分とし、その後1℃/分以上の徐冷速度で徐冷する方法を採用しても良い。
【0067】
また、上記の固形物回収を急冷条件下において行うことも好ましい方法の一つである。この回収方法としては、例えば、フラッシュ法が挙げられる。「フラッシュ法」とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm
2以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法である。「フラッシュ」とは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、例えば、常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選ばれる。
【0068】
[後処理工程]
(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属処理やアルカリ土類金属処理を施してもよい。
【0069】
酸処理を以下に詳述する。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、(a)PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はない。(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のような(a)PPS樹脂を分解、劣化させるものは、(a)PPS樹脂の酸処理に用いる酸として好ましくない。
【0070】
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液に(a)PPS樹脂を浸漬させる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の酢酸水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは、例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施された(a)PPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない理由から、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0071】
熱水処理を以下に詳述する。(a)PPS樹脂を熱水処理する場合、熱水の温度は、100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満の温度では、(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため、好ましくない。
【0072】
熱水洗浄による(a)PPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は、蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。熱水処理方法としては、例えば、所定量の水に所定量の(a)PPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法がある。(a)PPS樹脂と水との割合は、水が多い方が好ましい。通常、水1リットルに対し、(a)PPS樹脂200g以下の浴比(水に対する(a)PPS樹脂重量)が選ばれる。
【0073】
また、処理の雰囲気は、末端基の分解を回避するため、不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えた(a)PPS樹脂は、残留している成分を除去するため、温水で数回洗浄することが好ましい。
【0074】
有機溶媒で洗浄する場合を以下に詳述する。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、(a)PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。(a)PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用してもよい。
【0075】
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中に(a)PPS樹脂を浸漬させる方法があり、浸漬の際に必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒で(a)PPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で加圧することにより、有機溶媒の沸点以上の温度で有機溶媒による洗浄を行うことも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式洗浄で、有機溶媒による洗浄を行うことも可能である。
【0076】
アルカリ金属処理する方法、アルカリ土類金属処理する方法としては、例えば、(i)上記前工程の前、前工程中、前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、(ii)重合行程前、重合行程中、重合行程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、(iii)あるいは上記洗浄工程の最初、中間、最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。上記方法の中で最も容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。
【0077】
アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入時のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から、通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては、0.5以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。
【0078】
本発明の実施形態においては、光沢感のある配光性能に優れた反射板を得る観点から、有機溶媒洗浄と80℃程度の温水洗浄または前記した熱水洗浄とを数回繰り返すことが好ましい。これにより、曇りや表面固着などの原因となる残留オリゴマーを除去する。また、相溶化剤である(c)イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物との反応性が向上する観点から、酸処理することが好ましい。
【0079】
その他、(a)PPS樹脂は、熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。「熱酸化架橋処理」とは、重合終了後に酸素雰囲気下において過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱処理をいう。
【0080】
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合、その温度の下限としては、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。一方、その温度の上限としては、260℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。また、酸素濃度は、5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間の下限として、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。一方、処理時間の上限としては、100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましく、25時間以下がさらに好ましい。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、回転式加熱装置あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合、加熱処理の装置は、回転式加熱装置あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0081】
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発成分の除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間の下限として、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。一方、処理時間の上限としては、50時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、回転式加熱装置あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよい。効率よく、より均一に処理する場合、加熱処理の装置は、回転式加熱装置あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0082】
高度な表面平滑性、高耐熱性を得るために、本発明の実施形態に用いる(a)PPS樹脂は、高温剛性に優れる熱酸化架橋処理により高分子量化したPPS樹脂と残留オリゴマーの少ない直鎖状PPS樹脂とを混合して使用しても良い。また、溶融粘度の異なる複数の(a)PPS樹脂を混合して使用することも可能である。
【0083】
(b)マイカ
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、アスペクト比が80以上であるマイカを含有する。マイカのアスペクト比が80未満であると、PPS樹脂組成物の耐熱性向上効果が乏しい。この結果として、PPS樹脂100重量部に対して30重量部を超える多量のマイカを配合しなくてはならない。この場合、PPS樹脂組成物の流動性が低下すると共に、得られる成形品の表面平滑性が顕著に損なわれるため、好ましくない。少量のマイカで耐熱性を向上する観点から、マイカのアスペクト比は80以上が好ましく、90以上がより好ましく、100以上がさらに好ましい。マイカのアスペクト比の上限は、溶融加工時のマイカの破損抑制およびハンドリング性の観点から、200以下が好ましく、180以下がより好ましく、150以下がさらに好ましい。
【0084】
ここで、「マイカのアスペクト比」は、マイカの体積平均粒子径と数平均厚みを求め、「体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)」により算出する。「体積平均粒子径」は、マイカを100mg秤量して、水中に分散させた後、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製LA−300)を用いて求める。また、「数平均厚み」は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)により2000倍の倍率で観察したマイカの画像から無作為に選んだ10個の厚みを測定し、その数平均値をいう。
【0085】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物において、アスペクト比が80以上であるマイカの含有量は、PPS樹脂100重量部に対して1〜30重量部である。マイカの含有量が1重量部未満であると、PPS樹脂組成物の耐熱性向上が不十分となる。一方、マイカの含有量が30重量部を越えると、PPS樹脂組成物の流動性、表面平滑性が著しく低下し、材料比重も大きくなってしまう。このため、マイカの含有量が30重量部を越えると、PPS樹脂組成物の薄肉成形性、金属膜を形成した反射板の配向性能および軽量化効果が損なわれる。耐熱性と、流動性と、低比重な特性とを両立するため、マイカの含有量は、27重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましく、20重量部以下がさらに好ましい。
【0086】
本発明の実施形態に用いられるマイカの体積平均粒子径は、表面平滑性を損なわない観点から、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。体積平均粒子径が30μm以下のマイカを用いることで、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物から得られる成形品の表面平滑性にすぐれる成形品を得ることができるので好ましい。体積平均粒子径の下限は特に限定しないが、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましい。
【0087】
また、少量のマイカの配合で、高耐熱性付与およびフィラー浮きによる表面平滑性の悪化を抑制する観点から、本発明の実施形態に用いられるマイカの数平均厚みは、0.5μm以下が好ましく、0.35μm以下がより好ましく、0.25μm以下がさらに好ましい。本発明の実施形態に用いられるマイカの数平均厚みの下限については、0.05μm以上が好ましく、0.06μm以上がより好ましく、0.08μm以上がさらに好ましい。
【0088】
本発明の実施形態において使用されるアスペクト比が80以上であるマイカは、天然に産出される白雲母、黒雲母、金雲母、セリサイトでもよく、人工的に製造される合成マイカでもよい。これらのマイカを2種以上含んでもよい。
【0089】
マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、石臼による湿式粉砕や、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕が挙げられる。
【0090】
また、本発明の実施形態において、マイカとPPS樹脂との密着性を向上させる目的で、マイカの表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。また、不純物の除去、マイカの硬質化を目的に、熱処理加工をしたマイカを用いてもよい。
【0091】
(c)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂
良流動性、高耐熱性、低比重な特性、高度な表面平滑性に加え、熱処理前後で高度な表面平滑性を保持させる目的および耐衝撃性を付与する目的から、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を含有することが好ましい。
【0092】
本発明の実施形態で言う「ポリエーテルイミド」とは、脂肪族系、脂環族系または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基とを繰り返し単位として含有するポリマーである。ポリエーテルイミドは、溶融成形性を有するポリマーで有れば特に限定されない。また、本発明の実施形態の効果を阻害しない範囲で有れば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル結合以外の構造単位が含有されていてもよい。環状イミド、エーテル結合以外の構造単位としては、例えば、芳香族エステル単位、脂肪族エステル単位、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位が挙げられる。
【0093】
具体的なポリエーテルイミドとしては、下記一般式で示されるポリマーが好ましく使用される。
【0095】
但し、上記式中R1は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基である。R2は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を有するものが好ましく使用される。
【0097】
本発明の実施形態では、ポリエーテルイミドは、溶融成形性やコストの観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましく使用される。このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商標でSABICイノベーティブプラスチックス社から市販されている。
【0100】
本発明の実施形態で言う「ポリエーテルスルホン」とは、繰り返し骨格中に、スルホン結合とエーテル結合を有する樹脂である。代表的な構造として下記を例示できる。ポリエーテルスルホンは、一般に“ビクトレックス”PES、“スミカエクセル”の商標で市販されている。
【0102】
ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂の配合量は、(a)PPS樹脂100重量部に対して、下限は1重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましく、10重量部以上であることがさらに好ましく、上限は100重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることがより好ましく、50重量部以下であることがさらに好ましい。非晶性樹脂の配合量が、(a)PPS樹脂100重量部に対して1重量部未満の場合、表面性の向上、十分な反り変形の抑制効果は得られない。非晶性樹脂の配合量が、(a)PPS樹脂100重量部に対して100重量部を越える場合、溶融流動性が著しく阻害される他、材料コストが上昇してしまう。
【0103】
(d)エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の基を有する相溶化剤
本発明の実施形態では、(c)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を微分散化させる。高温処理時の反り変形抑制と、優れた表面性、耐衝撃性を得るため、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の基を有する化合物を、相溶化剤としてPPS樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0104】
エポキシ基含有化合物としてはビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの替わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系化合物、N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油等の線状エポキシ化合物、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0105】
またその他のエポキシ基含有化合物として、ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られる。また、ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる。原料のフェノール類としては特に制限はないが、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p−ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびこれらの縮合物が挙げられる。
【0106】
またその他のエポキシ基含有化合物として、エポキシ基を有するオレフィン共重合体も挙げられる。エポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体に、エポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も、エポキシ基含有化合物として使用することができる。
【0107】
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
【0108】
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は、特に制限なく、α−オレフィンなどとともに共重合させる方法や、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入する方法などが挙げられる。
【0109】
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して下限として0.001モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であるのが適当であり、上限として40モル%以下、好ましくは35モル%以下であるのが適当である。
【0110】
本発明の実施形態で特に有用なエポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとを共重合成分とするオレフィン系共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
【0111】
またかかるオレフィン共重合体の共重合様式は、ランダム、交互、ブロック、グラフトのいずれの共重合様式でも良い。
【0112】
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとを共重合してなるオレフィン共重合体は、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン共重合体が特に好ましい。
【0113】
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
【0114】
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−アクリロニトリルースチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体−g−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
【0115】
さらに、エポキシ基含有化合物としては、エポキシ基を有するアルコキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するアルコキシシランの具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0116】
アミノ基含有化合物としては、アミノ基を有するアルコキシシランが挙げられる。アミノ基を有するアルコキシシランの具体例としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0117】
イソシアネート基を1個以上含む化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのイソシアネート化合物やγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を例示することができる。
【0118】
中でも(c)非晶性樹脂をより微分散化させる効果を得る上で、イソシアネート基を1個以上含む化合物またはエポキシ基を2個以上含む化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、イソシアネート基を含有するアルコキシシランであることがより好ましい。
【0119】
エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の基を有する相溶化剤の配合量は、PPS樹脂100重量部に対し、下限として、1重量部以上であることが好ましく、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、上限としては、30重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種以上の基を有する相溶化剤の配合量が1重量部未満では、(c)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を、1nm以上1000nm未満の数平均分散径で微分散化することが難しくなる。一方、この相溶化剤の配合量が、30重量部を越える範囲では、溶融流動性が著しく阻害されてしまう他、材料コストが上昇してしまうために好ましくない。
【0120】
良流動性、高耐熱性、低比重な特性、高度な表面平滑性に加え、熱処理前後で高度な表面平滑性を保持させる目的や耐衝撃性を付与する目的から、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、そのモルフォロジー(相構造)において、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(c)非晶性樹脂が島相(分散相)を形成することが望ましい。
【0121】
さらに、(c)非晶性樹脂の数平均分散径の下限としては、1nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、更には50nm以上であることが特に好ましい。一方、(c)非晶性樹脂の数平均分散径の上限としては、1000nm未満であることが好ましく、より好ましくは500nm未満、更には300nm未満であることが特に好ましい。この様に(c)非晶性樹脂が微分散化することにより、得られた成形品の熱処理前後の表面平滑性の悪化を抑制でき、高度な表面平滑性を保持できる。
【0122】
(c)非晶性樹脂の数平均分散径が1000nm以上であると、十分な表面平滑性向上効果が得られないばかりか、PPS樹脂組成物を成形した成形品の表面平滑性が悪化するとともに、寸法安定性向上効果が不十分となるため、熱処理した際に反り変形が起こり易くなる。また、(c)非晶性樹脂の数平均分散径が1000nm以上であると、十分な衝撃強度向上効果が得られないために、落下や衝撃が加わった際に割れ易くなってしまう欠点が生じる。一方、(c)非晶性樹脂の数平均分散径が1nm未満である場合は、生産性の観点から好ましくない。
【0123】
なおここでいう「数平均分散径」は、以下の方法により求める。PPS樹脂の融解ピーク温度+40℃の成形温度で(縦)150mm×(横)150mm×(厚み)1mm(ゲート形状:ファンゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面角板を成形する。その鏡面角板の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断した断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削する。日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍にその薄片を拡大して観察した際の任意の100個の、(c)非晶性樹脂の分散相について、それぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散径とする。その後、その分散径の平均値を求め、その値を数平均分散径とする。
【0124】
さらに本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、(c)非晶性樹脂の分散相について、分散径1000nm以上の分散相の数が全分散相の1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、さらには0%であることが最も好ましい。(c)非晶性樹脂の分散不十分や溶融成形加工時の凝集・合体により、分散径1000nm以上の分散相の数が1.0%を越える範囲になってしまうと、仮に数平均分散径が1nm以上1000nm未満の範囲であっても、成形品の寸法安定性向上効果は不十分となってしまう。この結果、特に熱処理した際の反り変形が起こり易くなるばかりか、耐熱性向上効果も減退してしまう。
【0125】
なお、分散径1000nm以上の(c)非晶性樹脂分散相の数は以下の方法により求める。前述した数平均分散径同様、PPS樹脂の融解ピーク温度+40℃の成形温度で(縦)150mm×(横)150mm×(厚み)1mm(ゲート形状:ファンゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面角板を成形する。その鏡面角板の中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断した断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削する。日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍にその薄片を拡大して観察した際の任意の100個の、(c)非晶性樹脂の分散相について、それぞれの最大径と最小径を測定してその平均値を分散径とする。100個の(c)非晶性樹脂の分散相のうち、分散径が1000nm以上である分散相の数の、全分散相に対する百分率を求める。
【0126】
その他、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物では、そのモルフォロジー(相構造)が安定していることが望ましい。即ち、一度PPS樹脂組成物を射出成形した後に、その成形片を粉砕し、再び射出成形を行った成形片においても、(a)PPS樹脂が海相(連続相あるいはマトリックス)を形成し、(c)非晶性樹脂が島相(分散相)を形成することが好ましい。また、(c)非晶性樹脂の数平均分散径の下限が1nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、更には50nm以上であることが特に好ましい。一方、(c)非晶性樹脂の数平均分散径の上限が1000nm未満であることが好ましく、より好ましくは500nm未満、更には300nm未満であることが特に好ましい。さらに、(c)非晶性樹脂の分散相について、分散径1000nm以上の分散相の数が全分散相の1.0%以下、より好ましくは0.5%以下であり、さらには0%で有ることが最も好ましい。
【0127】
本発明の実施形態に用いられるPPS樹脂組成物の相構造は、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂に共通する可溶溶媒などに溶解して一旦分子相溶させた後、スピノーダル分解することにより、(c)非晶性樹脂の分散径を均一に制御してもよい。一方、生産性の観点からは、スピノーダル分解を経由せず、溶融混練によって(c)非晶性樹脂の分散径が特定の分布を有するように相構造を制御してもよい。
【0128】
(e)その他の無機フィラー
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物には、本発明の実施形態の効果を損なわない範囲でさらに無機フィラーを配合することも可能である。かかる無機フィラーの具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が挙げられ、中でもシリカ、炭酸カルシウム、タルクが好ましく、さらに炭酸カルシウム、タルクが、樹脂成形品の表面平滑性と機械物性のバランスを両立する観点から好ましい。またこれらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理した後に使用してもよい。
【0129】
かかる無機フィラーの配合量は、(a)PPS樹脂100重量部に対して、下限として、1重量部以上が好ましく、2重量部以上がより好ましく、5重量部以上が更に好ましく、上限として、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、20重量部以下が更に好ましい。
【0130】
(f)その他の添加物
さらに、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、(c)非晶性樹脂以外の樹脂を配合しても良い。その具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エチレン・1−ブテン共重合体などのエポキシ基を含有しないオレフィン系重合体、共重合体が挙げられる。
【0131】
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、(3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などの様なフェノール系酸化防止剤、(ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)などのようなリン系酸化防止剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤をPPS樹脂組成物に配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えると(a)PPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
【0132】
樹脂組成物の製造方法
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の製造方法としては、単軸もしくは二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原料を供給して、PPS樹脂の融解ピーク温度+5〜100℃の加工温度で溶融混練する方法を代表例として挙げることができる。製造の際、二軸の押出機を使用し、せん断力を比較的強くすることが、(b)マイカや(c)非晶性樹脂を微分散化させる点で好ましい。具体的には、L/D(L:スクリュー長さ、D:スクリュー直径)が20以上、好ましくは30以上であり、ニーディング部をスクリュー1本当たり3箇所以上、更に好ましくは5箇所以上有する二軸押出機を使用し、スクリュー回転数を200〜1000回転/分、好ましくは300〜1000回転/分として、混合時の樹脂温度がPPS樹脂の融解ピーク温度+10〜70℃となるように混練する方法を用いることができる。L/Dの上限については特に制限しないが、60以下が経済性の観点から好ましい。また、ニーディング部箇所の上限についても特に制限しないが、生産性の観点から10箇所以下であることが好ましい。
【0133】
また、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の製造方法として、伸張流動しつつ溶融混練することも好ましい手法として例示することが出来る。ここで、「伸張流動」とは、反対方向に流れる2つの流れの中で、溶融した樹脂が引き伸ばされる流動方法のことである。一方、一般的に用いられる剪断流動とは、同一方向で速度の異なる2つの流れの中で、溶融した樹脂が変形を受ける流動方法のことである。
【0134】
伸張流動しつつ溶融混練させる方法としては、押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられる。押出機の例としては、単軸押出機、二軸押出機、三軸以上の多軸押出機が挙げられるが、中でも単軸押出機と二軸押出機が好ましく用いられ、特に二軸押出機が好ましく用いられる。また二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューが使用できるが、混練性、反応性の観点から、完全噛み合い型が好ましい。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでも良いが、混練性、反応性の観点から、同方向回転が好ましい。
【0135】
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下が10〜1000kg/cm
2であることが好ましい。「伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下」とは、伸張流動ゾーン手前の圧力差(ΔP)から、伸張流動ゾーン内での圧力差(ΔP
0)を差し引くことで求める。伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が10kg/cm
2未満である場合には、伸張流動ゾーン内での伸張流動の形成される割合が低く、また圧力分布の不均一化が生じるため好ましくない。また伸張流動ゾーンの前後での流入効果圧力降下が1000kg/cm
2より大きい場合には、押出機内での背圧が大きくなりすぎるため安定的な製造が困難となるため好ましくない。また伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の前後での流入効果圧力降下は、下限が30kg/cm
2以上が好ましく、50kg/cm
2以上がより好ましく、さらには100kg/cm
2以上が最も好ましく、上限が、600kg/cm
2以下が好ましく、500kg/cm
2以下がより好ましい。
【0136】
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、本発明に適した伸張流動場を付与するためには、押出機のスクリューの全長に対する伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の合計の長さの割合が、下限は、5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは、15%以上であり、上限は、60%以下が好ましく、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは、50%以下である。
【0137】
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、押出機のスクリューにおける一つの伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)の長さをLkとし、スクリュー直径をDとすると、混練性、反応性の観点から、Lk/Dの下限は、0.2以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、Lk/Dの上限は、10以下であることが好ましく、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。また、本発明の実施形態において、二軸押出機の伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)は、スクリュー内の特定の位置に偏在することなく、全域に渡って配置されることが好ましい。特に伸張流動しつつ溶融混練するゾーン(伸張流動ゾーン)は押出機スクリュー内の3箇所以上に配置されることが、混練性、反応性の観点からより好ましい。
【0138】
押出機を用いて溶融混練を行う場合、伸張流動しつつ溶融混練するゾーンは、ニーディングディスクで形成され、かかるニーディングディスクのディスク先端側の頂部とその後面側の頂部との角度である螺旋角度θが、スクリューの半回転方向に0°<θ<90°の範囲内にあるツイストニーディングディスクであるものや、フライトスクリューから形成され、かかるフライトスクリューのフライト部にスクリュー先端側から後端側に向けて断面積が縮小された樹脂通路が形成されているものや、押出機中に溶融樹脂の通過する断面積が暫時減少させた樹脂通路が形成されているものが好ましい例として挙げられる。
【0139】
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、スクリュー1rpmに対する熱可塑性樹脂組成物の押出量が、0.01kg/h以上であることが好ましい。「押出量」とは、押出機から吐出される熱可塑性樹脂組成物の押出速度のことであり、1時間当たりに押出される重量(kg)のことである。スクリュー1rpmに対する熱可塑性樹脂組成物の押出量が、0.01kg/h未満であると、回転数に対する押出量が十分ではなく、押出機中での滞留時間が長くなりすぎて、熱劣化の原因となると共に、押出機中での樹脂の充満率が小さくなり、十分な混練ができない可能性がある。また、スクリューの回転速度は、上記範囲内であれば特に制限はないが、通常10rpm以上、好ましくは50rpm以上、さらに好ましくは80rpm以上である。また、押出量としては、上記範囲内であれば特に制限はないが、通常0.1kg/h以上、好ましくは0.15kg/h以上、さらに好ましくは0.2kg/h以上である。
【0140】
また、押出機を用いて溶融混練を行う場合、熱可塑性樹脂組成物の押出機中での滞留時間が0.1〜20分であることが好ましい。「滞留時間」とは、原料が供給されるスクリュー根本の位置から、原料と共に着色剤等を投入した時点から、熱可塑性樹脂組成物が押出機の吐出口より押出され、その押出物への着色剤による着色度が最大となる時点までの時間のことである。滞留時間が0.1分未満である場合、押出機中での反応時間が短く、十分に反応が促進されず、熱可塑性樹脂組成物の特性(寸法安定性、機械特性など)の向上が実現されにくい。一方、滞留時間が20分より長い場合、滞留時間が長いことによる樹脂の熱劣化が起こる可能性がある。本発明の実施形態における滞留時間としては、下限として、好ましくは0.3分以上、さらに好ましくは0.5分以上であり、上限として、好ましくは15分以下、さらに好ましくは5分以下である。
【0141】
原料の混合順序については、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、これと更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などが挙げられる。本発明の耐熱性、流動性、軽量性と共に、寸法安定性、表面性が飛躍的に向上したPPS樹脂組成物を得るためには、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、(b)マイカとさらに溶融混練する方法が好ましい。(a)PPS樹脂、(b)マイカ、(c)非晶性樹脂、(d)相溶化剤を一括して混練した場合、(c)非晶性樹脂の分散相が粗大化してしまうため好ましくない。
【0142】
また、(c)非晶性樹脂を数平均分散径1nm以上1000nm未満で分散させると共に、分散径1000nm以上の分散相の数を全分散相の1.0%以下とするためには、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練して、非晶性樹脂の高濃度物を調製した後、(a)PPS樹脂と(b)マイカをさらに溶融混練して希釈する方法がさらに好ましい方法である。単純に、(a)PPS樹脂、(b)マイカ、(c)非晶性樹脂、(d)相溶化剤を一括して混練した後、さらにもう一度混練した場合、(c)非晶性樹脂の数平均分散径を1nm以上1000nm未満とすることは可能な場合もある。一方、このPPS樹脂組成物を溶融成形加工した場合には、(c)非晶樹脂の凝集・合体が起こり、分散径1000nm以上の(c)非晶樹脂分散相の数が1.0%を越えてしまうため、十分な反り変形抑制効果が得られないため好ましくない。
【0143】
(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂の配合割合は、(a)と(c)の合計を100重量%として、(a)/(c)=90〜1重量%/10〜99重量%の範囲であり、(a)/(c)=85〜10重量%/15〜90重量%の範囲が好ましく、(a)/(c)=80〜30重量%/20〜70重量%の範囲がより好ましく、(a)/(c)=70〜50重量%/30〜50重量%の範囲がさらに好ましい。(c)非晶性樹脂が10重量%未満では、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤との反応が十分に進行せず、(c)非晶性樹脂の分散相について、分散径1000nm以上の分散相の数が全分散相の1.0%を越えやすくなるため好ましくない。
【0144】
また、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(a)PPS樹脂の溶融粘度については特に制限しないが、混練時に剪断力が係りやすくなる観点から、150Pa・s以上であることが好ましく、200Pa・s以上であることが更に好ましい。なお、ここで言う「溶融粘度」とは、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
【0145】
(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練する際の(d)相溶化剤の配合割合は、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂の合計100重量部に対し、下限として、0.05重量部以上であり、0.1重量部以上がより好ましく、0.2重量部以上がさらに好ましく、上限として、10重量部以下であり、5重量部以下がより好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。(d)相溶化剤の配合量を上記の好ましい量以上とすることで、(c)非晶性樹脂を1nm以上1000nm未満の数平均分散粒子径で微分散化させることができる。さらに、(d)相溶化剤の配合量を上記の好ましい量以下とすることで、ガスの発生量をおさえ、溶融流動性にすぐれる組成物とすることができるので好ましい。
【0146】
予め溶融混練した樹脂組成物とさらに溶融混練する(a)PPS樹脂の溶融粘度は自由に選択でき、これによって最終的に生成するPPS樹脂組成物の流動性を制御することも可能である。良流動化により薄肉成形性を向上する観点から、さらに溶融混練する際の(a)PPS樹脂の溶融粘度は、150Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下が更に好ましい。なお、ここで言う「溶融粘度」とは、300℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
【0147】
なお、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練した後、(a)PPS樹脂と(b)マイカとをさらに溶融混練するのに際し、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練してペレット化した後、(a)PPS樹脂と(b)マイカとを配合してさらに溶融混練しても良く、(a)PPS樹脂と(c)非晶性樹脂と(d)相溶化剤からなる樹脂組成物を予め溶融混練中に、サイドフィーダーを用いて(a)PPS樹脂と(b)マイカを押出機の途中から供給してさらに溶融混練してもよい。
【0148】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物を成形した成形品は、良流動性、高耐熱性、高度な表面平滑性を有し、熱処理前後で良好な表面平滑性を保持できる。このことから、アンダーコート等の下地処理無しに金属膜を直接的に形成して、ガスやフィラー浮きによる白化のない光沢感がある反射板が得られ、成形品厚みの薄肉化による軽量化効果も期待できる。
【0149】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の良流動性、低比重による軽量化効果を最大限に発現させるためには、流動性の指標である棒流動長が70mm以上である必要があり、好ましくは80mm以上であり、90mm以上であることがさらに好ましい。一方、材料比重としては1.50以下である必要があり、好ましくは1.47以下であり、1.45以下であることがさらに好ましい。本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の棒流動長が70mm以上で、材料比重が1.50以下の場合、材料比重が2.0以上ある熱硬化性樹脂および金属から本発明の実施形態のPPS樹脂組成物への代替による軽量化効果が期待できるため、より好ましい。
【0150】
本発明の実施形態の「棒流動長」は、住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃、射出速度設定99%、射出圧力設定45%(実測:射出圧98MPa)とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)12.6mm×(厚み)0.5mm(ゲート位置:成形片の幅側、ゲート形状:サイドゲート)の成形片を連続的に10回射出成形した際の、成形片のゲート位置側から長手方向における充填末端長さを測定し、その平均値をいう。
【0151】
本発明の実施形態の「材料比重」は、PPS樹脂組成物から得られた(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mmの成形品を(長さ)30mm×(幅)10mmの大きさに切削加工し、ミラージュ社製電子比重計ED−120Tを用い、水上置換法により測定した比重である。
【0152】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、優れた薄肉耐熱性を有するため、薄肉耐熱性の指標であるヒートサグ変形量が18mm以下のものが得られる。好ましくは15mm以下であり、12mm以下であることがさらに好ましい。尚、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物のヒートサグ変形量が18mm以下である場合、製品厚み2〜3mmの自動車部品、電気電子部品の薄肉化による軽量化および小型化といった製品設計が可能になる実用耐熱性をPPS樹脂組成物に付与できる。本発明の実施形態のPPS樹脂組成物は、アスペクト比80以上の高アスペクト比マイカを配合することで少量添加でもヒートサグ変形量が大幅に低減する。その要因としては、マイカのアスペクト比を大きくすること、つまりマイカを薄片化することにより、補強効果が高まり、同一添加量でマイカ粒子数が増加することもあいまって、熱変形抑制効果が最大限に発現したことが考えられる。
【0153】
本発明の実施形態の「ヒートサグ変形量」は、(長さ)130mm×(幅)12.7mm×(厚み)0.7mmのヒートサグ試験片の片端30mmを保持し、試験片が水平になるように片持ち状態で固定しながら、180℃の熱風オーブンで60分処理した後、保持した部分と反対側の先端が、水平状態から自重によって垂れ下がった距離をハイトゲージにて測定したものである。
【0154】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物を用いて、優れた配向性や光沢感のある反射板を得るためには、成形品表面のフィラー浮きや溶融樹脂の流動方向うねりを最大限に抑制する必要がある。フィラー浮きは成形品表面の中心線平均粗さRaと明瞭な相関があることを見出した。一方で溶融樹脂の流動方向うねりは成形品表面の算術平均うねりWa、非ニュートン指数Nと明瞭な相関があることを見出した。
【0155】
本発明の実施形態の「中心線平均粗さRa」は、フィルムゲート形状で(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mmのプレートを用い、JISB0601に準拠して測定した数値である。中心線平均粗さRaは1.2μm以下である必要があり、好ましくは0.5μm以下であり、0.1μm以下であることがさらに好ましい。特に、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の中心線平均粗さRaが0.1μm以下である場合、成形品表面に直接的に金属膜蒸着処理してもフィラー浮きによる白化がなく、極めて光沢感のある反射板を得ることが可能になる。
【0156】
本発明の実施形態の「算術平均うねりWa」は、フィルムゲート形状で(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mmのプレートを用い、JISB0601に準拠して測定した数値である。算術平均うねりWaは6.5μm以下である必要があり、好ましくは3.0μm以下であり、1.0μm以下であることがさらに好ましい。特に、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物の算術平均うねりWaが1.0μm以下である場合、薄肉成形品で発生しやすい溶融樹脂の流動方向うねりによるフローマークやヒケが大幅に解消され、金属膜蒸着処理をした反射板の配光性(写像性)を格段に向上させることが可能である。なお、「フローマーク」とは、成形品表面にできる樹脂の流れ模様をいう。「ヒケ」とは、固化する際の材料の収縮により成形品表面に発生する窪みをいう。
【0157】
本発明の実施形態の(a)PPS樹脂の非ニュートン指数Nは成形品表面の溶融樹脂の流動方向うねりと相関があり、フィラー浮き抑制以外に(a)PPS樹脂の非ニュートン指数を制御することでも高度な表面平滑性を得ることが可能なことを見出した。非ニュートン指数Nは、下限として、1.25以上が好ましく、さらに好ましくは1.30以上であり、1.32以上がさらに好ましい。一方、非ニュートン指数Nは、上限として、1.40以下が好ましく、さらに好ましくは1.38以下であり、1.36以下がさらに好ましい。本発明の実施形態の(a)PPS樹脂の非ニュートン指数Nが1.40以下とすることで、溶融樹脂の流動方向うねりによるフローマークを抑制し、反射板の配光性を良好に保つことができるので好ましい。一方で非ニュートン指数Nを1.25より小さくしても流動方向のうねり抑制効果はあまり期待できず、バリが発生しやすくなるので好ましくない。なお、「バリ」とは、金型の隙間に溶融状態の成形材料が流れ込んで固化した余剰の薄い樹脂膜である。本発明の実施形態の(a)PPS樹脂の非ニュートン指数が大きくなると成形品表面の溶融樹脂の流動方向うねりが大きくなる要因としては、非ニュートン指数は溶融樹脂のせん断速度依存性と関係があり、溶融樹脂のせん断速度依存性が大きくなることで金型内のゲート通過時に流動方向にうねり(周期的な凹凸)が発生しやすくなったことが考えられる。
【0158】
本発明の実施形態の「非ニュートン指数」は、本発明の実施形態の(a)PPS樹脂を溶融混練してストランドカッターによりペレタイズし、大気下120℃で8時間乾燥した後、さらに130℃で3時間予備乾燥した後、キャピログラフを用いて320℃、オリフィスの長さを「L」、直径を「D」としてL/D=10の条件下、剪断速度および剪断応力を測定して、下記式を用いて算出する。
・式SR=K・SS・N
(ここで、Nは非ニュートン指数、SRはせん断速度(1/秒)、SSはせん断応力(ダイン/cm
2)、Kは定数を示す。)
【0159】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物から得られた鏡面成形品(金型鏡面粗度:0.03s)に金属膜蒸着処理を直接的に形成して、自動車照明部品用途などに展開するためには、正反射率が85%以上、拡散反射率が1.5%以下である必要があり、好ましくは正反射率が87%以上、拡散反射率が1.3%以下であり、正反射率が89%以上、拡散反射率が1.0以下であることがさらに好ましい。尚、本発明の実施形態のPPS樹脂組成物から得られた直接的に金属膜蒸着処理を施した反射板の正反射率が85%未満、拡散反射率が1.5%より大きくなる場合は、金属蒸着面にガスやフィラー浮きによる白化が多く観察され、配光性も実使用上満足できるレベルではなく、光沢感のない反射板しか得ることができない。
【0160】
本発明の実施形態の「正反射率」(全反射率−拡散反射率)、「拡散反射率」は、以下の方法で求める。(長さ)150mm×(幅)150mm×(厚み)1.0mm(ゲート形状:ファンゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面プレートの鏡面部分について、イソプロピルアルコールで脱脂した後、日立製作所社製真空蒸着装置を用い、金属アルミニウムの蒸着(蒸着膜厚は約0.1μm)を行い、ゲート部、中央部および充填末端部の3箇所について、島津製作所製紫外・可視分光光度計(SoldSpec−3700DUV)を用い、全反射率、拡散反射率、正反射率(全反射率−拡散反射率)を測定し、その平均値を求める。
【0161】
金属膜の形成
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板は、前述したPPS樹脂組成物を射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形などの公知の方法により成形した成形品に金属膜を形成した反射板である。280℃〜340℃の温度範囲で射出成形により成形した成形品に金属膜を形成した反射板であることが、反射板として好ましい。
【0162】
金属膜を形成する方法としては、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、ニッケル−コバルト合金、銀などの金属を、電気めっき、無電解めっきなどの湿式法や、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの乾式法により膜形成する方法が挙げられる。金属膜を形成する方法の中でも、イソプロピルアルコールなどで成形品表面を脱脂した後、真空蒸着する手法がコストや作業性の観点から好ましい。
【0163】
本発明の実施形態の金属膜を形成した反射板に用いるPPS樹脂組成物成形品は、表面平滑性に優れることから、直接金属膜を形成することが可能であるが、必要に応じてプライマー(アンダーコート)処理や表面粗化処理を行っても良い。プライマーとしては、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、メラミン系などが挙げられる。表面粗化処理としては、UV処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などが例示できる。
【0164】
また、必要によっては、金属膜の上に耐熱性が良好な透明保護膜を施しても良い。具体的な保護膜としては、塗装タイプのトップコート、プラズマ重合膜、蒸着膜が挙げられる。
【0165】
本発明の実施形態のPPS樹脂組成物を成形した成形品に金属膜を形成した反射板は、耐熱性に優れると共に、流動性、耐衝撃性、表面性に優れる。このため、反射板は、家電照明器具用のダウンライトカバーやリフレクター、投影機等の反射板やランプカバー、LEDパッケージ内に用いるリフレクターやランプ部品、液晶テレビや液晶表示板などのバックライト集光用リフレクター、誘導灯や広告灯などの表示灯に用いるリフレクター、自動四輪車や自動二輪車のヘッドランプ、フォグランプあるいはリヤランプ用のランプリフレクター、ルームランプ用のリフレクター、ランプハウジング、ランプユニット、医療機器の照明用リフレクター、UVスポット照射器などの理化学機器用のリフレクター、撮影用照明器具(ストロボ)のリフレクター、照光式プッシュスイッチや光電スイッチ用のリフレクターなどに用いることができる。
【実施例】
【0166】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明の実施形態は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例1,4,14は、参考例とする。
【0167】
以下の実施例において、材料特性については下記の方法により評価した。
【0168】
[ヒートサグ試験片の射出成形]
住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする成形条件にて、(長さ)130mm×(幅)12.7mm×(厚み)0.7mmのヒートサグ試験片を成形した。
【0169】
[反射板評価用鏡面プレートの射出成形]
住友重機械社製射出成形機SE220HSZを用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)150mm×(厚み)1.0mm(ゲート形状:ファンゲート、金型鏡面粗度:0.03s)の鏡面プレートを成形した。
【0170】
〔表面平滑性評価用プレートの射出成形〕
住友重機械社製射出成形機SE75DUZを用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃とする条件にて、(長さ)70mm×(幅)70mm×(厚み)1.0mm(ゲート形状:フィルムゲート)のプレートを成形した。
【0171】
〔ヒートサグ変形量〕
前記射出成形したヒートサグ試験片の片端30mmを保持し、試験片が水平になるように片持ち状態で固定しながら、180℃の熱風オーブンで60分処理した後、保持した部分と反対側の先端が、水平状態から自重によって垂れ下がった距離をハイトゲージにて測定してヒートサグ変形量とした。この値は、2サンプルの平均値である。尚、この熱変形量が小さいほど、薄肉耐熱性に優れているといえる。
【0172】
[棒流動長]
住友重機械社製射出成形機プロマット40/20を用い、樹脂温度320℃、金型温度150℃、射出速度設定99%、射出圧力設定45%(実測:射出圧98MPa)とする条件にて、(長さ)150mm×(幅)12.6mm×(厚み)0.5mm(ゲート位置:成形片の幅側、ゲート形状:サイドゲート)の成形片を連続的に10回射出成形した。得られた成形片それぞれの、ゲート位置側から長手方向における充填末端長さを定規にて測定し、その平均値を棒流動長とした。尚、この値が大きいほど、薄肉流動性に優れているといえる。
【0173】
[材料比重]
前記射出成形した表面平滑性評価用プレート(ゲート形状:フィルムゲート)を(長さ)30mm×(幅)10mmの大きさに切削加工し、ミラージュ社製電子比重計ED−120Tを用い、水上置換法により比重を測定した。この値は、2サンプルの平均値である。尚、この値が小さいほど軽量化効果が期待できるといえる。
【0174】
〔溶融粘度測定方法〕
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂の粉末を大気下120℃で8時間予備乾燥して、キャピログラフを用いて、測定温度300℃、せん断速度1000/s、オリフィス長さL/オリフィス直径D=10の条件下で(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度を測定した。尚、この値が小さいほど流動性に優れたPPS樹脂といえる。
【0175】
〔非ニュートン指数〕
(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂を溶融混練してストランドカッターでペレタイズした後、大気下120℃で8時間乾燥して、さらに130℃で3時間予備乾燥した後、キャピログラフを用いて320℃、L/D=10の条件下、剪断速度および剪断応力を測定して、下記式を用いて非ニュートン指数Nを算出した。尚、この値が1.25≦N≦1.40の範囲にある場合は、表面平滑性に優れた材料が得られやすいといえる。
・式SR=K・SS・N
(ここで、Nは非ニュートン指数、SRはせん断速度(1/秒)、SSはせん断応力(ダイン/cm
2)、Kは定数を示す。)
【0176】
〔表面平滑性〕
前記射出成形した表面平滑性評価用プレート(ゲート形状:フィルムゲート)について、ミツトヨ(株)製表面粗さ測定器を用い、測定端子を樹脂流動方向(ゲート部→充填末端部)に2cm走査させて、JISB0601に規定されている中心線平均粗さRa、算術平均うねりWaを測定し、n=3の平均値を採用した。尚、これらの値が小さいほど表面平滑性に優れているといえる。
【0177】
[ダイレクト金属膜蒸着/熱処理前反射板評価]
前記射出成形した反射鏡評価用鏡面プレートの鏡面部分について、イソプロピルアルコールで脱脂した後、日立製作所社製真空蒸着装置を用い、金属アルミニウムの蒸着を行った。金属膜の厚みはおよそ0.1μmであった。アルミ蒸着処理した鏡面プレートのゲート部、中央部および充填末端部について、島津製作所製紫外・可視分光光度計(SoldSpec−3700DUV)を用い、全反射率、拡散反射率、正反射率(全反射率−拡散反射率)を測定し、n=3の平均値を採用した。尚、この値が大きいほど初期反射特性に優れているといえる。
【0178】
〔ダイレクト金属膜蒸着/熱処理後反射板評価〕
前記のアルミニウム蒸着処理を施した鏡面プレートを熱風オーブンに仕込み、180℃×240hr熱処理した後に、当該鏡面プレートのゲート部、中央部および充填末端部について、島津製作所製紫外・可視分光光度計(SoldSpec−3700DUV)を用い、全反射率、拡散反射率、正反射率(全反射率−拡散反射率)を測定し、n=3の平均値を採用した。尚、正反射率の値が大きい程、高温環境下における反射特性に優れているといえる。
【0179】
〔ダイレクト金属膜蒸着/熱処理後の成形品外観〕
前記、アルミニウム蒸着処理した鏡面プレートの180℃×240hr熱処理後の成形品外観を目視観察することにより、以下に示すような優劣の判断をした。サンプル数は3である。
○:金属膜蒸着面に光沢感があり、ガスやフィラー浮きによる白化が殆どなし。
△:金属膜蒸着面の光沢感にかけるが、ガスやフィラー浮きによる白化は殆どなし
×:金属膜蒸着面に光沢感なく、ガスやフィラー浮きによる白化がかなり多い。
【0180】
[落球衝撃試験]
前記アルミニウム蒸着処理した厚み1mmの鏡面プレートを、(縦)70mm×(横)70mm×(高さ)50mmの受け台上に置き、100cmの高さより150gの剛球を前記成形品の真ん中に落下させ、割れや亀裂発生の有無を確認することにより、以下の通り優劣を判断した。サンプル数は3である。
○:破壊無し。
△:ひびのみ。
×:ひびと共に破壊。
【0181】
〔高温剛性評価〕
前記射出成形したヒートサグ試験片を(長さ)40mm×(幅)8mm×(厚み)0.7mmに切削加工し、セイコーインスツルメンツ社製動的粘弾性測定装置(DMS6100)を用いて、下記に示す測定条件で貯蔵弾性率E'を測定した。この値は、3サンプルの平均値である。尚、この値が大きいほど材料の高温剛性が優れており、且つ耐熱性が向上しているといえる。
・測定モード:引張モード
・温度条件:第1ステップ50℃×2分保持、第2ステップ50℃→270℃まで昇温
・昇温速度:2℃/min
・測定周波数:1Hz
・最小張力:200mN
・歪振幅:10μm
・張力ゲイン:1.5
・力振幅初期値:2000mN
【0182】
[数平均分散径]
前記射出成形した反射板評価用鏡面プレートの中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃で0.1μm以下の薄片を切削した。日立製作所社製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に薄片を拡大して観察した際の任意の100個の(c)非晶性樹脂の分散相について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散径とし、その後それらの平均値である数平均分散径を求めた。
【0183】
[分散径1000nm以上の非晶性樹脂分散相(%)]
前記射出成形した鏡面プレートの中央部を樹脂の流れ方向に対して直角方向に切断し、その断面の中心部から、−20℃にて0.1μm以下の薄片を切削した。日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50〜60万倍)にて、2万倍に薄片を拡大して観察した際の任意の100個の、(c)非晶性樹脂の分散相について、まずそれぞれの最大径と最小径を測定して平均値をその分散径とし、そのうち前記分散径が1000nm以上である分散相の数の、全分散相に対する百分率を求めた。
【0184】
(a)PPS樹脂の重合(a−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0185】
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
【0186】
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂a−1は、溶融粘度が60Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
【0187】
(a)PPS樹脂の重合(a−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム2583.00g(31.50モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0188】
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
【0189】
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPS樹脂a−2は、溶融粘度が200Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。
【0190】
(a)PPS樹脂の重合(a−3)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0191】
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
【0192】
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
【0193】
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。その後、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
【0194】
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。
【0195】
得られたPPS樹脂は、溶融粘度が50Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)であった。得られたPPS樹脂を、溶融粘度が130Pa・s(300℃、剪断速度1000/s)となるまで酸素気流下、220℃で熱酸化処理してPPS樹脂a−3が得られた。
【0196】
(b)マイカ
(b−1)マイカ、体積平均粒子径:40μm、数平均厚み:0.50μm、アスペクト比:80
(b−2)マイカ、体積平均粒子径:24μm、数平均厚み:0.30μm、アスペクト比:80
(b−3)マイカ、体積平均粒子径:24μm、数平均厚み:0.20μm、アスペクト比:120
(b−4)マイカ、体積平均粒子径:40μm、数平均厚み:0.33μm、アスペクト比:120
(b−5)マイカ、体積平均粒子径:20μm、数平均厚み:0.5μm、アスペクト比:40
(b−6)マイカ、体積平均粒子径:10μm、数平均厚み:0.075μm、アスペクト比:133
(b−7)マイカ、体積平均粒子径:35μm、数平均厚み:0.8μm、アスペクト比:44
(b−8)マイカ、体積平均粒子径:18μm、数平均厚み:0.12μm、アスペクト比:150
(b−9)マイカ、体積平均粒子径:8μm、数平均厚み:0.045μm、アスペクト比:177
(b−10)マイカ、体積平均粒子径:64μm、数平均厚み:0.30μm、アスペクト比:213
【0197】
上記体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置HORIBA社製LA−300により求めた。厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製JSM−6360LV)を用いて2000倍の倍率で観察した。画像から無作為に10個のマイカ粒子を選び、厚みを測定し、その数平均値を求めた。アスペクト比は体積平均粒子径(μm)/数平均厚み(μm)として算出した。
【0198】
(c)ポリエーテルイミド樹脂およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂
c−1:ポリエーテルイミド樹脂(SABICイノベーティブプラスチックス社製“ULTEM”1010)
c−2:ポリエーテルスルホン樹脂(住友化学社製“スミカエクセル”3600G)
【0199】
(d)エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種の基を有する相溶化剤
d−1:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製KBE−9007)
d−2:2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM−303)
【0200】
[実施例1〜14、比較例1〜4]
表1、2、3中の各成分を、表1、2、3に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が310℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。130℃で8時間乾燥したペレットを射出成形に供し、ヒートサグ変形量、棒流動長、材料比重、表面平滑性、反射板特性、成形品外観、衝撃特性および高温剛性を評価した。結果は表1、2、3に示す通りであった。
【0201】
[実施例15〜19]
表4、5、6中の1回目混練に示す各成分を、表4、5、6に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。次いでこのペレット(1回目混練樹脂組成物)と(a)PPS樹脂、(b)マイカを表4、5、6の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした後、前記した同様の条件でさらに溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表4、5、6中の最終組成に示す通りであった。130℃で8時間乾燥したペレットを射出成形に供し、ヒートサグ変形量、棒流動長、材料比重、表面平滑性、反射板特性、成形品外観、衝撃特性、高温剛性、(c)非晶性樹脂の数平均分散径、1000nm超の分散相を評価した。結果は表4、5、6に示す通りであった。
【0202】
[実施例20]
表7中の各成分を、表7に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。130℃で8時間乾燥したペレットを射出成形に供し、ヒートサグ変形量、棒流動長、材料比重、表面平滑性、反射板特性、成形品外観、衝撃特性、高温剛性、(c)非晶性樹脂の数平均分散径、1000nm超の分散相を評価した。結果は表7に示す通りであった。
【0203】
[実施例21]
表7中の各成分を、表7に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。次いでこのペレットをそのまま、前記した条件でさらに溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。130℃で8時間乾燥したペレットを射出成形に供し、ヒートサグ変形量、棒流動長、材料比重、表面平滑性、反射板特性、成形品外観、衝撃特性、高温剛性、(c)非晶性樹脂の数平均分散径、1000nm超の分散相を評価した。結果は表7に示す通りであった。
【0204】
[実施例22]
表7中の1回目混練に示す各成分を、表7に示す割合でドライブレンドした後、真空ベントを具備した日本製鋼所社製TEX30α型二軸押出機(スクリュー径30mm、L/D=45、ニーディング部5箇所、同方向回転完全噛み合い型スクリュー)を用い、スクリュー回転数300rpm、吐出量20Kg/hrにて、ダイス出樹脂温度が330℃となるようにシリンダー温度を設定して溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。次いでこのペレット(1回目混練樹脂組成物)と(a)PPS樹脂を表7の2回目混練に示す割合になるようドライブレンドした後、前記した同様の条件でさらに溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。最終的に得られたPPS樹脂組成物の組成は表7中の最終組成に示す通りであった。130℃で8時間乾燥したペレットを射出成形に供し、ヒートサグ変形量、棒流動長、材料比重、表面平滑性、反射板特性、成形品外観、衝撃特性、高温剛性、(c)非晶性樹脂の数平均分散径、1000nm超の分散相を評価した。結果は表7に示す通りであった。
【0205】
【表1】
【0206】
【表2】
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
【表5】
【0210】
【表6】
【0211】
【表7】
【0212】
上記実施例1〜22と比較例1〜4の結果を比較して説明する。
【0213】
アスペクト比が80以上の(b)マイカを(a)PPS樹脂に配合した実施例1〜14については、(b)マイカを配合していない比較例1に比較して、いずれもヒートサグ変形量低減、高温剛性向上が見られ薄肉耐熱性に優れており、さらに金属膜蒸着後に熱処理しても顕著な反射率低下が発生せず、ガスやフィラー浮きによる白化がない金属膜蒸着を直接的に形成した反射板を得ることができた。特に、マイカのアスペクト比が133と大きく、粒子径も10μmと小さいb−6を用いた実施例5〜11では、ヒートサグ変形量低減効果が一層大きくなり、高温剛性もさらに改良されることで、高温環境下での拡散反射率増加が抑制でき、極めて優れた配光性と光沢感を有する金属膜蒸着を直接的に形成した反射板を得ることができた。特に、実施例8から11は、非ニュートン指数Nが1.25≦N≦1.40であるため、薄肉耐熱性と表面平滑性に優れる。また、アスペクト比を150、177、213と限りなく大きくした(b)マイカを用いた実施例12〜14は、アスペクト比133の(b)マイカを用いた実施例5よりも若干耐熱性が向上するものの、さらなる表面平滑性向上効果は付与されない結果であった。
【0214】
このようにアスペクト比80以上の(b)マイカ用いることで、比較的少量で薄肉耐熱性、高温剛性の向上が図れる。このため、フィラー未配合の比較例1とほぼ同等レベルの薄肉流動性を維持しつつ、材料比重増加、フィラー浮きによる表面平滑性への悪影響を最小限に抑えることができ、成形品の薄肉化も可能なために軽量化効果も期待できる。
【0215】
一方、(b)マイカとしてアスペクト比が40、44と小さいb−5、b−7を用いた比較例2、4では、ヒートサグ変形量低減効果は小さく、薄肉耐熱性もフィラー未配合の比較例1と同等レベルであった。比較例2、4は、金属膜蒸着した反射板を熱処理すると、フィラー浮きによる白化が多くなり正反射率が顕著に低下し、光沢感がない反射板しか得られなかった。b−5を35重量部に増やした比較例3では、ヒートサグ変形量が小さくなり薄肉耐熱性は向上するものの、(b)マイカの添加量が多いために薄肉流動性、材料比重が損なわれ、表面平滑性が顕著に悪化すると共に、低靱性による落球衝撃性低下が見られた。
【0216】
実施例15〜19から、(a)PPS樹脂、アスペクト比が80以上の(b)マイカに加え、さらに(c)非晶性樹脂を配合すると、耐熱性のみならず表面外観、耐落球衝撃性が向上することがわかる。また、熱処理前後で成形品表面のRa、Waの変化が少なく、良好な表面平滑性を保持できることにより拡散反射率の変化が小さくなった。また、熱処理による反射特性低下が抑制されることで白化がなく光沢感のある反射板を得ることができる。
【0217】
一方、実施例20〜22では、実施例17と同様に(b)マイカとしてb−6を同量配合しているが、ヒートサグ変形量は比較的大きく、耐熱性向上効果が減退している。また、実施例20〜22は、実施例17に比較して(c)非晶性樹脂の分散粒径が大きく、1000nmを越える(c)非晶性樹脂の分散相も増加する。このため、金属膜蒸着後の外観が低下すると共に、熱処理前後の拡散反射率の変化が大きくなり、熱処理による反射特性低下が見られ、フィラー浮きによる白化が多い光沢感に欠ける反射板しか得られなかった。